○ 主文一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実一控訴人は、「原判決を取り消す。控訴人が原判決別紙米穀小売販売業(営業所増設)許可申請一覧表記載の各申請日に食糧管理法に基づいて被控訴人に対してなした米穀販売小売業者(営業所増設)許可申請について、被控訴人のなした不許可処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。 二当事者双方の主張は、次項に付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであり、証拠の関係は、原審訴訟記録中の書証目録、証人等目録及び当審訴訟記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これらを引用する。 三当審における当事者双方の主張 1 控訴人(一) 米穀小売業につき都道府県知事による許可制度を採用した食糧管理法八条ノ三の規定及びこの許可の要件を定めた食糧管理法施行令(以下「施行令」という。)五条の一二、食糧管理法施行規則(以下「施行規則」という。)五五条の各規定は、憲法二二条一項所定の職業選択の自由の保障に違反し無効である。従って、右各規定に基づく本件処分は、憲法に違反する無効なものであるから、その無効を確認する意味において取り消されるべきものである。 (二) 仮に、右の許可制度が合憲であるとしても、許可の要件のうち規模要件を定めた施行令五条の一二・一項六号及びこれを受けた施行規則五五条の「年間販売見込数量」について、被控訴人はこれを二二トンと設定しているところ、この数量には合理的根拠がないから、このような規定を適用してなされた本件処分は、結局は合理的な理由もなく控訴人の職業選択の自由を侵害したことにほかならない。この点においても、本件処分は取り消されるべきである。 (三) すなわち、食糧管理法は、昭和一八年に我国の戦時体 件処分は、結局は合理的な理由もなく控訴人の職業選択の自由を侵害したことにほかならない。この点においても、本件処分は取り消されるべきである。 (三) すなわち、食糧管理法は、昭和一八年に我国の戦時体制下において統制経済体制を整える必要性が急務となったために制定された法律であり、この目的を実現するために米穀卸業、小売業についての許可制度を設けるなど流通に対する規制をした。 しかし、今日、戦時体制にないことはもちろんのこと、食糧不足による食糧確保の必要性もなく、米穀の流通に対する右のような規制をすべき合理的根拠もなくなった。そのため、食糧管理法は現実には適用されずあるいは適用されない状況にあり、もはやその目的とする国民の食糧の確保及び国民経済の安定を、憲法で保障されている職業選択の自由を制約してまで、同法によって図らねばならない理由などない。 2 被控訴人(一) 食糧管理制度は、昭和一七年に食糧管理法が制定されて以来、主食である米について、国が責任をもって国民に安定的に供給するとともにその必要量を確保するという役割を通じて、国民の食生活の安定を図り、わが国農業の基幹である稲作農業をも支えるという重要な役割を果たしている。 食糧管理法は、昭和五六年に前後の需給事情や経済情勢の変化に対応して政府が米穀を管理するという制度の基本を維持しつつ、需給動向や流通実態に即応し、過剰、不足いかなる需給事情の変動にも的確に対応しうるように大改正されたが、米穀の流通業者の地位と責任の明確化(八条ノ二、八条ノ三)は、改正の主要点のひとつである。 すなわち、米穀の販売業者については、従来、販売業者の登録制度がとられていた(旧八条ノ二)が、米が本来的に有する投機性を排除するほか、在庫の不足時や端境期においても、米の地域的偏在を防ぎ、消費者に対し、その需要に対応して米 については、従来、販売業者の登録制度がとられていた(旧八条ノ二)が、米が本来的に有する投機性を排除するほか、在庫の不足時や端境期においても、米の地域的偏在を防ぎ、消費者に対し、その需要に対応して米穀を安定的かつ円滑に供給するうえで、適正な販売活動を確保することが極めて重要であることにかんがみ、右の改正により都道府県知事の許可を要するものと改めて、その米穀の流通を担う者としての地位と責任を明確にした(八条ノ三)。このように登録制から許可制に改めることによって、販売業者の日常の業務活動について、右法改正の趣旨に即した適切な指導監督が可能となり、消費者たる国民に対する米の安定供給の確保も可能となるのである。 このようにして、米穀の販売業者の許可制度は、米穀の正規の流通ルートを特定・確保するため、これらの流通を担う販売業者の地位と責任を明確にし、もって食糧管理法の定める「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並規制」(一条)の目的を達成するため、極めて重要な役割を果たしているのであって、その必要性及び合理性は明らかである。 (二) 米穀小売業を含も販売業者の許可制度は、前記のとおり、食糧管理制度のなかで、正規の流通ルートを特定・確保して、米穀を消費者に安定的かつ円滑に供給し、もって国民生活の安定を図ろうとするものであるから、この制度の維持は公共の福祉に合致するものである。従って、この制度によって職業選択の自由になんらかの制約が生じるとしても、この規制の目的が前記のようなものであるからには、その規制の目的において一応の合理性が認められるうえ、その規制の手段・態様においても十分な合理性があるから、右の許可制度は、重要な公共の利益のため必要かつ合理的な措置であり、職業選択の自由に対する法的規制措置が食糧管理制度につい 性が認められるうえ、その規制の手段・態様においても十分な合理性があるから、右の許可制度は、重要な公共の利益のため必要かつ合理的な措置であり、職業選択の自由に対する法的規制措置が食糧管理制度について認められた立法府の裁量権を逸脱し著しく不合理であることが明白であるとは到底いえない。 右の許可制度は、合憲である。 ○ 理由一当裁判所も控訴人の本訴請求を棄却すべきものと認定判断するが、その理由は、次項に付加するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。 当審において取り調べた証拠によっても、右の認定判断を左右することはできない。 二当審における主張(米穀販売業の許可制度と憲法二二条一項)について 1 憲法二二条一項は、何人も公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有すると規定しているが、これには職業活動の自由をも保障する趣旨が含まれていると解されるところ、これらの職業の自由は、右規定に公共の福祉に反しない限りという留保が付されていることにかんがみると、いわゆる精神的自由に比して、公権力による規制を可能ならしめるものと解すべきである。 ところで、職業というのは多種多様であるから、これに対する規制もこれに対応してさまざまな形態となるものである。従って、この規制が憲法二二条一項に適合するかどうかについては、それぞれの具体的規制についてその規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容、これに対する制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで、当該規制に必要性、合理性があるかどうかを見極めて決定すべきである。そして、この合憲性の司法審査に当たっては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容、必要性、合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどま して、この合憲性の司法審査に当たっては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容、必要性、合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、これを立法政策上の問題として尊重すべきであるが、この合理的裁量の範囲については、ことがらの性質上おのずと広狭があり得る。一般に本件のような許可制は、多くの場合法定の許可基準を設定してこれに照らし行政庁が許否を決定し、許可を得てはじめてその職業を行なうことができるものであるから、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課す強力な規制である。従って、右の許可制の合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する(最高裁昭和四三年(行ツ)第一二〇号昭和五〇年四月三〇日大法廷判決・民集二九巻四号五七二頁、同昭和六三年(行ツ)第五六号平成四年一二月一五日第三小法廷判決・民集四六巻九号二八二九頁各参照)。 ところで、国民の食糧、とりわけ主食たる米穀を確保しこれを安定的に供給することは、国民の生存のみならず国民の諸活動の根源をなすもので、国政上極めて重要な課題であることは論をまたない。そうであれば、この課題をいかに克服するかは国家的レベルにおいて検討、立案さるべきことがらであり、それには刻々推移する食糧事情や経済事情に即応しながら、米穀の生産から流通、供給、消費に至る過程を、食糧の確保とその安定的な供給という目的のためによく制御することが肝要であり、従ってこれにはおのずと右の過程に何らかの公権力の介入、すなわち公権力による規制が要請される契機がある。そして、この規制の目的、必要性、内容、程度については、ことがらの性質上、極めて専門的、政策的、技術的 これにはおのずと右の過程に何らかの公権力の介入、すなわち公権力による規制が要請される契機がある。そして、この規制の目的、必要性、内容、程度については、ことがらの性質上、極めて専門的、政策的、技術的な判断が必要であると考えられるから、右の規制のあり方に関してはまずもって立法府の判断に委ねるほかはなく、従ってその判断をまず尊重するのが相当である(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五号昭和六〇年三月二七日大法廷判決・民集三九巻二号二四七頁、前掲最高裁平成四年一二月一五日判決各参照)。 このようにして、国民の食糧の確保とこれの安定的な供給を目的のために、米穀の販売業について許可制による規制を設けるという立法府の判断が、その必要性と合理性について合理的裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理なものでない限り、右の規制を憲法二二条一項に違反するものとはいえないと認めるのが相当である。 2 そこで、米穀の販売業について許可制を採用した経緯を検討する。 証拠(甲四、乙九)によれば、次の事実を認めることができる。 (一) 食糧管理法は、昭和一七年に制定されたが、これは、折からの戦時下にあって、食糧の絶対的不足の事態を念頭におきながら国民の食糧の確保と食糧を巡る国民経済(生産者である農家の経済と消費者としての国民の経済)の安定を目的として、政府が国民の必要とする主食たる米穀を管理するといういわゆる食糧管理制度を採用した法律である。すなわち、この法律によって政府が国民の必要とする米穀を管理し、わが国農業の基幹をなす稲作農業の安定を図りつつ、国民の必要とする主食の米穀を安定的に供給しようとするものであって、この法律は、その後、その時々の食糧事情等の変化に対応しながらその役割を果してきた。 しかし、同法は、前記のとおり食糧の絶対的不足時を念頭において制定されたため、戦後のわが国の うとするものであって、この法律は、その後、その時々の食糧事情等の変化に対応しながらその役割を果してきた。 しかし、同法は、前記のとおり食糧の絶対的不足時を念頭において制定されたため、戦後のわが国の経済環境の変化に対応し難い側面が顕在化するとともに、規制内容と経済的実態とのかい離を生じ、法律の条項が遵守され難いという問題が生じてきた。そこで、同法は、昭和五六年、旧来の右の問題点に対処するとともに、政府が国民の必要とする主食たる米穀を自主流通米を含めて管理するというこれまでの食糧管理制度の基本を維持しつつ、需要動向や流通実態に即応し、不足の場合のみならず過剰の場合も含めていかなる需給事情の変動にも対応できるように食糧管理制度を再編成するために、改正された。 (二) 米穀の販売業者制度の改定は、右改正における主要な改正点のひとつである。 すなわち、米穀の流通を担う米穀の販売業者については、従来旧法八条ノ二によって販売業者の登録制度が採られていたが、食糧管理法の目的を考慮するとき、消費者たる国民に対し、その需要に的確に対応して米穀を安定的かつ円滑に供給するためには適正な販売活動(投機性の排除、地域的偏在の是正等)を確保することが重要であることにかんがみ、販売業者について都道府県知事の許可を要するものとして米穀の流通を担う者としての位置付けを法律上明確にした(法八条ノ三)。このように登録制度を廃止して許可制度を採用したのは、これによって法改正の趣旨に沿った販売業者の日常の業務活動について必要かつ適切な指導監督が行えること、またこれまでの登録制度の運用が実質的には許可制度とかわらないものであったことも理由のひとつであった。 また、この許可の権限を都道府県知事に委ねたのは、従来の登録制度における都道府県知事の役割との連続性に配慮し、法改正により策定す 質的には許可制度とかわらないものであったことも理由のひとつであった。 また、この許可の権限を都道府県知事に委ねたのは、従来の登録制度における都道府県知事の役割との連続性に配慮し、法改正により策定すべき供給計画(法八条一、二項)において定める都道府県別の米穀の数量の供給は、各都道府県内の販売業者の適正な活動を通じて行うこととしていることにかんがみ、都道府県知事が販売業の許可とその指導監督を行うのが適切であると考えられたからである。 3 右2の認定事実に基づき検討する。 前記のように、食糧管理法の目的は、国民の食糧の確保と国民経済の安定を図るため、政府において国民の食糧、とりわけ主食たる米穀を管理し、その需給、価格の調整、流通の規制を行うことにある(同法一条)が、このように食糧を確保しこれを安定的に供給することの重要性は、食糧、とりわけ主食である米穀が国民の生存と諸活動の根源であることに由来する。そうであるから、食糧の確保とその安定的供給は国家的課題であり、この課題克服のためには、米穀の食糧についてその生産から流通、供給、消費に至る過程をこれらが相互に関連するものとして総合的な立場から制御することが必要であるといわねばならない。そして、右の流通過程を担う販売業者について一定の資格要件を設定して、これを充足する者に対してのみ販売業者たり得るとすることは、販売業者が米穀の流通過程を担う者であること、かつ、この流通が適正、円滑に行われないならば、米穀の生産から消費に至る一連の過程の一端に支障が生じ、米穀の安定的供給が阻害されることにもなりかねないことにかんがみると、適正、円滑な流通過程を確保、維持するために、一概に不要な規制というわけにはいかず、目的においても合理性がないとはいえない。 従って、米穀の販売業者について許可制を採用した(法八条ノ三)立 んがみると、適正、円滑な流通過程を確保、維持するために、一概に不要な規制というわけにはいかず、目的においても合理性がないとはいえない。 従って、米穀の販売業者について許可制を採用した(法八条ノ三)立法府の判断が、その専門的、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であるとは未だいうことができない。 4 このように、米穀の販売業者について許可制度を採用したことが直ちに憲法二二条一項に違反するとはいえないとしても、右のような職業選択の自由に対する規制については、当該許可制度の下における具体的な許可基準との関係においても、その必要性と合理性が認められなければならない(前掲最高裁昭和五〇年四月三〇日判決、同平成四年一二月一五日判決参照)。 そこで、本件処分の理由とされた控訴人が米穀小売業の許可のための規模要件を充足していないという規模要件の必要性と合理性について、検討する。 前記引用の原判決理由説示のとおり、食糧管理法八条ノ三・第一項によれば、米穀の小売業を行わんとする者は政令の定めるところにより都道府県知事の許可を受けることを要するところ、右の政令である施行令五条の一二第一項六号には、本件の控訴人のように既に米穀の小売業の許可を受けている者がその営業所の所在する市町村の区域で新たに営業所を設けて小売業を行おうとして分店設置の許可の申請をする場合、申請に係る営業所における米穀の年間販売見込数量が農林水産省令で定める数量を超えると認められることが許可の要件とされ、さらにこれを受けた施行規則五五条但書、昭和六〇年五月一一日熊本県告示第四一〇号(乙一三)によれば、本件処分時の同年一〇月五日当時、分店を設置するための規模要件として、既存の現営業所及び新たに設けようとする新営業者における年間販売見込数量が、いずれも四四精米トンを超えることを要求して によれば、本件処分時の同年一〇月五日当時、分店を設置するための規模要件として、既存の現営業所及び新たに設けようとする新営業者における年間販売見込数量が、いずれも四四精米トンを超えることを要求している。 引用に係る原判決の理由説示(原判決一〇枚目裏末行の「食糧管理法施行規則」から同一一枚目表五行目の「解されるところ、」まで)のとおり、分店設置の許可は、取扱数量が極めて多くなった営業所が消費者の利便を考慮して従来の営業所の営業を分割するのが直接の目的ではある。しかし、そもそも分店設置を許可に係らしめた理由は次のように考えるのが相当である。 米穀の小売業が米穀の安定的な供給を維持するうえで重要な役割を担っていることは、既に繰り返し説示しなところである。従って、小売業が右の役割を果すためには、なにはともあれ小売業がそれ自体経済合理性を保ちながら事業として成立し継続していくことが不可欠の前提であるというべきである。そうすると、新規に参入しようとする場合や既存の許可を受けた小売業者が分店を設置しようとする場合に、新たな営業所あるいは分店が経済合理性を保ちながら存続し得る見込のあるときに営業の許可を与えようとすることは、必ずしも不合理な考えとはいえず、この許可の要件のひとつに、事業が成立し継続し得る目安として年間販売見込数量という指標を設定することも、また合理性がないとはいえない。そしてまた、右の指標について、新規に参入しようとする場合と分店設置の場合とでこれを後者により重くすることは、後者が既に許可を受けているいわば既得権者であることにかんがみ、新規参入の阻害とならないように配慮するものと考えられ、格別非難すべきことではない。 そこで、右の分店設置の場合に販売見込数量が年間四四精米トンを超えるべく要求していることの当否について考えるのに、この数量 の阻害とならないように配慮するものと考えられ、格別非難すべきことではない。 そこで、右の分店設置の場合に販売見込数量が年間四四精米トンを超えるべく要求していることの当否について考えるのに、この数量制限のため、およそ分店設置がまったく不可能か著しく困難であるならば、それは職業選択の自由に対する規制として合理性が認められないといい得るかも知れない。しかし、証拠(乙一二、一三、二四ないし二七の各枝番一ないし三)によれば、少なくとも本件処分がなされた前後において、右の数量制限によって分店設置が不可能ないし著しく困難になっていた情況にはないことが認められる。そうすると、年間販売見込数量を四四精米トンと設定していることが不合理であるとは断定し難い。 5 以上のようにして、控訴人の当審における主張は採用できないというほかはない。 三よって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官緒賀恒雄近藤敬夫木下順太郎)(原裁判等の表示)○ 主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 原告が、別紙米穀小売販売業(営業所増設)許可申請一覧表記載の各申請日に、食糧管理法に基づいて被告に対してなした米穀販売小売業者(営業所増設)許可申請について、被告のなした不許可処分を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文同旨第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、米穀小売業を営んでいる。 2 原告は、別紙米穀小売販売業(営業所増設)許可申請一覧表記載の各申請日に、被告に対し、米穀販売小売業者(営業所増設)許可申請(以下、本件各申請という。)をなした。 3 本件各申請は、いずれも食糧管理法八条ノ 別紙米穀小売販売業(営業所増設)許可申請一覧表記載の各申請日に、被告に対し、米穀販売小売業者(営業所増設)許可申請(以下、本件各申請という。)をなした。 3 本件各申請は、いずれも食糧管理法八条ノ三、同施行令五条の一二、同施行規則五五条但書(以下、規則五五条但書という。)、熊本県制定の米穀販売業者許可事務取扱要領第四に準拠したものであって、いずれも許可要件を充たしていた。 4 被告は、昭和六〇年一〇月五日付で本件各申請についていずれも不許可処分(以下、本件処分という。)をなした。よって、本件処分は違法であるから、その取消を求める。 二請求原因に対する認否及び被告の主張l請求原因事実のうち、3は争い、その余の事実はいずれも認める。 2 被告の主張(一) 規模要件の不充足(1) 分店設置の許可の申請にあたっては、申請者がその申請に係る営業所における米穀の年間販売見込数量が農林水産省令で定める数量を超えると認められる者に該当することを許可の要件とし、申請書にこれを証する書面を添付すべきものとされているところ、熊本県においては、添付書類の様式を定め(取扱要領様式第一一号)、さらにその根拠を証明するための附帯資料(以下、附帯資料という。)の提出を求めることとし、これによって、規則五五条但書に定める要件を具備しているか否かについて審査することとしている。 ところが、本件各申請については、いずれも原告から附帯資料の提出がなされていないのであって、不適法である。 (2) 仮りに附帯資料の提出がなくても、様式第一一号による「販売実績数量及び販売見込数量証明書」及び被告において収集可能なその他の資料によって、規模要件具備の有無につき審査し、申請につき許可または不許可の処分をすべきであるとしても、米穀小売業の許可は、市町村の区域ごとに営業所または販売所につ 及び被告において収集可能なその他の資料によって、規模要件具備の有無につき審査し、申請につき許可または不許可の処分をすべきであるとしても、米穀小売業の許可は、市町村の区域ごとに営業所または販売所について行われるものであるところ、被告は、原告が昭和五八年七月に分店設置の許可を得た七分店中五分店において、昭和五九年の販売量が許可要件である四四精米トンを下回っていたことから、本件各申請についても、規模要件を充たしていると認めることはできないと判断した。 (3) したがって、本件各申請はいずれも規模要件を充たしていると認めることができないから、本件処分をしたのであって、本件処分は適法である。 (二) 裁量による不許可(1) 米穀の販売業者の許可に関し、食糧管理法八条ノ三第二項は許可制度の運用に関する基本方針を定めているが、この規定によれば、販売業の許可に関しては、許可要件をすべて備えているからといって必ず許可しなければならないものではなく、あくまでも消費者に対する米穀の適正かつ円滑な供給の確保についての支障の有無に配慮しながら許可の可否を判断すべきである。すなわち、許可要件を充足している場合であっても、「消費者に対する米穀の適正かつ円滑な供給を確保する」見地から、許可権者たる都道府県知事は裁量により許可しないことができる。 (2) 原告は、本件各申請に係る三分店のうち、熊本市<地名略>及び熊本市<地名略>の二分店において、昭和六〇年三月から、被告の許可を受けていないのにもかかわらず米穀の販売を開始し、被告の再三にわたる販売中止の指導を無視し、販売を継続しているが、原告の右行為は、それ自体が流通秩序を乱して地域の商活動に著しい支障を与えるばかりか、他の小売業者の経営安定を害する行為である。それに対して、許可を行うことになれば、他の小売業者の無許可 ているが、原告の右行為は、それ自体が流通秩序を乱して地域の商活動に著しい支障を与えるばかりか、他の小売業者の経営安定を害する行為である。それに対して、許可を行うことになれば、他の小売業者の無許可分店設置販売行為を招来し、業者間に無用の混乱を生ぜしめ、ひいては利潤の低下、経営の行き詰まりにつながり、販売業者の経営の安定の上に立った的確な業務運営を通じて国民に対する米穀の適正かつ円滑な供給を図ろうとする法の趣旨にも大きく反するばかりか、政府の責任において国民の必要とする主食たる米穀を安定的に供給するという食糧管理制度の基本的役割をも完全に行うことができなくなるおそれが生ずる。 (3) したがって、被告は、原告の右行為に照らし、本件各申請に対し許可をすることは、米穀の適正かつ円滑な供給の確保に支障があると判断し、本件処分をなしたのであって、本件処分は適法である。 三被告の主張に対する反論 1 本件処分の理由について本件処分は、相当の期間たなざらしにされ、ついに不作為違法確認訴訟を提起された結果なされたものであり、その根拠は本訴訟において初めて示されたものであって、本件処分の理由は本訴訟になってからつくられたものである。 2 規模要件についての被告の判断について(一) 附帯資料について(1) 附帯資料は、昭和五九年二月二五日、被告の担当者から原告の代理人に対して提出を要求されたものであるが、附帯資料は被告自身が定めた事務取扱要領中にも必要書類としてあげられておらず、過去に一度も使用されたことのないものであった。 (2) 附帯資料の内容は、新営業所における配達分世帯数を明記させるなど、これから始める営業という見地からして不明なことを記入させるものであり、仮に適当に数字を記入したところで、被告がその数字の真否について調査がしようがないことは明 おける配達分世帯数を明記させるなど、これから始める営業という見地からして不明なことを記入させるものであり、仮に適当に数字を記入したところで、被告がその数字の真否について調査がしようがないことは明白であって、証明資料とはいえない。 (3) 以上の点から、原告は提出を拒否したのであって、このような附帯資料の有無で憲法上保障された営業の自由を制限することは、憲法に違反し、また、原告についてだけ附帯資料の提出を要求することは、恣意的意図的で裁量権の濫用である。 (二) 既設の分店の販売実績から判断することの当否について(1) 本件申請に係る分店の立地条件、分店の従業員の能力、当該地域の人口移動状況などは当然異なるのであるから、過去の例から一律に被告のように推計することが合理的であると考えることは論理的に飛躍がある。 (2) 規模要件は、分店ごとにその要件を充たしているか否かを判断する必要があることは関連法規上明らかであるところ、過去七分の五は不足しているから、本件各申請に係る三分店とも不足すると判断することは、法の適用を誤っており、誤った方法論であって、合理的であるとはいえない。 (3) 他の申請において右のような判断方法がとられたことはないのに、原告についてだけ持ち出し、本件処分をなした被告の行為は、不公平、不公正な行政処分であって、裁量権の濫用である。 (4) 被告側は原告が昭和五八年合計七店舗の分店の営業を始めるに際し、原告が自己の営業の理念に従い、少しでも安い価格で、多くの消費者にお米を買ってもらい、かつ同時に原告自身の利益をあげるため、値引き販売しようとしたところ、値引き販売はするなと強く要求し、その結果、やむなく原告は被告側の要求に従った。更に、米の小売への割当てが前年度の販売実績にしたがって、小売店と結びついている卸(右七分店の場 売しようとしたところ、値引き販売はするなと強く要求し、その結果、やむなく原告は被告側の要求に従った。更に、米の小売への割当てが前年度の販売実績にしたがって、小売店と結びついている卸(右七分店の場合は熊本食糧事業共同組合)に食糧事務所が割り当てる仕組みとなっている関係上、右七分店については、昭和五八年の実績が八月、九月、一〇月の三か月分しかなかったため、通年の四分の一の割当てしか受けられず、その結果供給が需要に追いつかず、販売量が小さくならざるを得なかった事情もあった。 以上の事情からして、被告のいう七分の五が四四精米トンに達していなかったから不許可相当とするとの考えは、とても合理的であると考えることができない。 3 裁量による不許可について(一) 被告は、昭和六一年三月一〇日の口頭弁論期日において、本件処分の理由は規模要件違反の一点であると述べた。被告の不許可理由の追加は自白の撤回にあたるが、原告は同意しない。 (二) 原告が、本件各申請に係る三分店のうち、熊本市<地名略>及び熊本市<地名略>の二分店において、昭和六〇年三月から、被告の許可を受けることなく米穀の販売を開始したこと、被告から再三にわたって販売中止の指導を受けたこと、販売を継続していることは認めるが、食糧管理法八条ノ三第二項の規定は、行政庁が許可をするにあたって本来の法の目的に逆行するような許可をしないよう、法の趣旨に沿った許可を心掛けるよう訓示的に規定したものである。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1、2及び4の各事実については当事者間に争いがなく、証人Aの証言によれば、請求原因3の事実(許可要件)のうち、規模要件を除いた他の政令で定められた許可要件については、充足していたことが認められる。 二規摸要件について 1 食糧管理法施行令五条の一二第一項六号、同施行 ば、請求原因3の事実(許可要件)のうち、規模要件を除いた他の政令で定められた許可要件については、充足していたことが認められる。 二規摸要件について 1 食糧管理法施行令五条の一二第一項六号、同施行規則五五条但書、昭和六〇年五月一一日熊本県告示第四一〇号によれば、本件処分が行われた昭和六〇年一〇月五日当時においては、分店を設置するための規模要件として、現営業所及び新営業所における年間販売見込数量のいずれもが四四精米トンを超えることを要求していた。 2 被告が原告に対し、附帯資料の提出を求めるに至った経緯(一) 成立に争いのない甲第一三号証、乙第一四ないし一七号証、証人A、同B及び同Cの各証言並びに原告本人尋問の結果を総合すると、以下の事実が認められる。 (1) 熊本県は、米穀販売業者許可事務取扱要領(以下、取扱要領という。)及び熊本県米穀小売業分店設置許可実施要領(以下、実施要領という。)を定め、分店許可申請をするに際し、規模要件を証明する書面として、販売実績数量及び販売見込数量証明書(様式第一一号)の添付を求めている。 (2) 本件各申請には、いずれも右証明書が添付されていた。 (3) 昭和五八年に、原告からの七分店の許可申請に対し、これを許可したところ、原告の同業者から熊本県に対し、苦情とともに五〇件を超える申請が一気になされた。 (4) このため、熊本県は実施要領(昭和五八年一〇月一日付制定実施)の改定作業をしていたところ、本件各申請がなされたため、熊本県は、原告に対し、申請の取下げを要請する等の働きかけをしていたが、本件各申請において規模要件が充足されていない旨の告知はなされなかった。 (5) 昭和六〇年二月二五日、熊本県は、原告に対し、農政部長名で同日ヒヤリングを行うので出席されたい旨の通知をなした。 (6) 右ヒヤリングには、原 件が充足されていない旨の告知はなされなかった。 (5) 昭和六〇年二月二五日、熊本県は、原告に対し、農政部長名で同日ヒヤリングを行うので出席されたい旨の通知をなした。 (6) 右ヒヤリングには、原告は出席せず、原告の代理人として訴外Cが出席し、熊本県は、同人に対して、附帯資料の提出を依頼した。 (7) 附帯資料は、右ヒヤリングの直前に作成されたものであって、改足された実施要領(昭和六〇年三月二八日実施)においても、添付書類として明記されていない。 (二) 以上の事実によれば、熊本県は、昭和六〇年二月二五日の前までは提出を求めていなかった附帯資料を明確な理由を告げることなく、原告に求めたことが認められるのであって、原告から附帯資料の提出がなかったことをもって、本件各申請が不適法であるということはできない。 3 そこで、本件各申請が、規模要件を充足していたと認められるか否かについて判断する。 (一) 成立に争いのない甲第一ないし第三号証、乙第一八号証の六、第二一号証の五及び第二二号証の五並びに原告本人尋問の結果を総合すると、本件各申請に係る新営業所の各販売見込数量について、規模要件を充足する旨の証明が、熊本食糧事業協同組合理事長D名でなされていること、右各販売見込数量は原告が過去の実績から判断して記載したものであることが認められる。 (二) 更に、成立に争いのない乙第三五号証の一及び二、証人A及び同Bの各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、昭和五五年からの不作によって、昭和五八年度の米の需給は逼迫していたものの、昭和五八年度、昭和五九年度ともに、原告が買受け登録予約をしている熊本食糧事業協同組合においては、売買実績が前年度よりも上回っているところ、昭和五八年に許可のあった七分店中五分店の昭和五八年度及び昭和五九年度における販売実績がともに 告が買受け登録予約をしている熊本食糧事業協同組合においては、売買実績が前年度よりも上回っているところ、昭和五八年に許可のあった七分店中五分店の昭和五八年度及び昭和五九年度における販売実績がともに規模要件に達しなかったことが認められる。 (三) 以上の事実を総合すると、販売実績数量及び販売見込数量証明書(乙第一八号証の六、第二一号証の五及び第二二号証の五)から、直ちに本件各申請が規模要件を充足していたと認めることはできず、他に、本件各申請が規模要件を充足していたと認めるに足りる証拠はない。 原告は、規模要件については分店ごとにその要件を充たしているか舌かを判断する必要があることは関連法規上明らかであるところ、過去七分の五は不足しているから、本件各申請に係る三分店とも不足すると判断することは、法の適用を誤っており、誤った方法論であって、合理的であるとはいえず、原告についてだけ持ち出し、本件処分をなした被告の行為は、不公平、不公正な行政処分であって、裁量権の濫用である旨主張するが、被告は、本件各申請に係る各販売実績数量及び販売見込数量証明書(乙第一八号証の六、第二一号証の五及び第二二号証の五)が過去の例からして規模要件を証明するものとは判断できなかったことから規模要件を証明するに足りる資料がないとして、本件処分をなしたものであって、被告の判断が法の適用を誤っているとか、誤った方法論であるとか、裁量権の濫用であるということはできない。 更に、原告は、昭和五八年合計七店舗の分店の営業を始めるに際し、値引き販売しようとしたところ、値引き販売はするなと被告側から強く要求され、やむなく被告の要求に従ったという事情及び右七分店については、昭和五八年の実績が八月、九月、一〇月の三か月分しかなかったため、通年の四分の一の割当てしか受けられず、その結果供給 側から強く要求され、やむなく被告の要求に従ったという事情及び右七分店については、昭和五八年の実績が八月、九月、一〇月の三か月分しかなかったため、通年の四分の一の割当てしか受けられず、その結果供給が需要に追いつかず、販売量が小さくならざるを得なかった事情からして、被告のいう七分の五が四四精米トンに達していなかったから不許可相当とするとの考えは、とても合理的であると考えることができない旨主張するが、右事情を裏付ける的確な証拠はない上、食糧管理法施行規則五五条但書が、新営業所(分店)だけなく、現営業所についても規模要件を要求している趣旨からすると、分店の設置は、本来消費者の利便等のために、従来の営業所の営業を分割する目的のためになされるものであって、新規の顧客の開拓を目的とするものではないと解されるところ、前認定のとおり、昭和五八年度、昭和五九年度ともに、原告が買受け登録予約をしている熊本食糧事業協同組合においては、売買実績が前年度よりも上回っていることに照らすと、昭和五八年に許可を受けた七分店のうちの五分店が昭和五八年度及び昭和五九年度における販売実績がともに規模要件に達しなかったことについて、相当の理由があったということはできず、したがって、原告のこの主張は採用しない。 三そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件請求はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 別紙(省略)
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