- 1 - 令和5年5月25日判決言渡令和2年(ワ)第6993号損害賠償請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求別紙2請求目録記載のとおり第2 事案の概要 大阪市長は、別紙3物件目録記載の各土地(以下、同目録における番号順に「本件土地1」などといい、併せて「本件各土地」という。)につき、別紙4損害額計算表(以下「別紙計算表」という。)記載のとおり、別紙計算表中の「差額(損害額元本)」欄が着色された年度(以下「本件各年度」という。)の所有者に対し、本件各年度の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」と いう。)の各賦課決定(以下「本件各賦課決定」という。)をした。 本件は、上記所有者又はその相続人である原告らが、本件各賦課決定には、本件各土地の評価において、大阪市の固定資産評価実施要領(以下「本件要領」という。)が定める、容積率の異なる地域にわたる土地(以下「容積率混在土地」といい、かかる事情を「容積率混在」という。)を対象とする補正(以下「本件 補正」という。)をしなかった違法があり、別紙計算表の本件各年度の各「差額(損害額元本)」欄の金額につき過納が生じていると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、別紙計算表の「請求合計(確定利息含む)」欄記載の額(複数の相続人が承継したものについては「請求金額」欄記載の額)及び「請求元本」欄記載の額に対する「全体最終起算時」欄の日から支払済みまで 平成29年法律第44号(以下「改正法」という。)による改正前の民法所定の- 2 - 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案 の額に対する「全体最終起算時」欄の日から支払済みまで 平成29年法律第44号(以下「改正法」という。)による改正前の民法所定の- 2 - 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 固定資産評価基準等の定め(1) 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)評価基準第1章第3節一は、宅地の評価について、各筆の宅地について評 点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるものとする旨規定し、同二は、評点数の付設について、各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって付設するものとする旨規定する。 そして、評価基準第1章第3節二(一)は、「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設について、その順序(同1)、標準宅地の選定(同2)、路線価の付設(同3)について規定した上で、評価基準第1章第3節二(一)4は、各筆の宅地の評点数の付設として、「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、『画地計算法』を適用して付設するものとする。この場合にお いて、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、『画地計算法』の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」と規定する。 (2) 本件要領(甲A1、2)大阪市(平成9年度及び平成12年度は財政局固定資産税課、平成15年 度及び平成18年度は大阪市財政局主税部固定資産税課、平成21年度は大阪市財政局税務部固定資産税担当、平成24年度、平成27年度及び平成30年度は大阪市財政局税務部課税課(固定資産税(土地)グループ))は、3年ご 度は大阪市財政局主税部固定資産税課、平成21年度は大阪市財政局税務部固定資産税担当、平成24年度、平成27年度及び平成30年度は大阪市財政局税務部課税課(固定資産税(土地)グループ))は、3年ごとに固定資産評価実施要領(本件要領)を策定している。 平成30年度の本件要領第1の9(13)は、画地計算法における「所要の補 正」として、「オ容積率の異なる地域にわたる土地の評価」につき、次のと- 3 - おり定める。なお、これと同旨の定めは、平成9年度から平成27年度までの本件要領にも存在する(以下、これらの定めを「本件補正の定め」という。)。 容積率の異なる地域にわたる土地(容積率混在土地)については、正面路線に接する部分の容積率に対する他の部分の容積率の割合及び当該土地の面積に対する他の部分の面積の割合に応じて、次に定める補正率表により求 めた補正率によって補正することができる。ただし、正面路線に接する部分の容積率が他の部分の容積率よりも低い場合については、補正を適用しない。 他の部分の容積率の割合他の部分の面積の割合40%未満40%以上60%未満60%以上10%未満96%97%97%10%以上20%未満92%93%95%20%以上30%未満88%89%93%30%以上40%未満84%86%91%40%以上50%未満80%83%89%50%以上60%未満76%80%87%60%以上70%未満70%77%85%70%以上66%74%83% 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を 77%85%70%以上66%74%83% 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 原告ら 本件各年度の賦課期日(1月1日)における本件各土地の固定資産税等の納税義務者(地方税法343条の1項、2項)は、別紙計算表の「各年1月1日時点所有者」欄に記載のとおりである。なお、登記簿上の権利関係の推移は下記のとおり。 - 4 - ア原告A1(本件土地1関係)原告A1は、平成24年▲月▲日、亡A2が死亡したことに伴い、亡A2が昭和53年以降所有していた本件土地1を相続し、平成29年7月6日、本件土地1を、訴外A3に売却した(甲B1)。 イ原告A4、原告A5、原告A6及び原告A7(本件土地2、3関係) (ア) 原告A4及び原告A5は、昭和63年2月29日、相続を原因として、本件土地2、3をそれぞれ2分の1の持分割合で相続した(甲C1)。 (イ) 原告A4は、平成22年2月5日、原告A6に対して本件土地2の共有持分2分の1を、原告A7に対して本件土地3の共有持分2分の1を、それぞれ贈与した(甲C1)。 原告A5は、平成23年3月27日、原告A6に対して本件土地2の共有持分2分の1を、原告A7に対して本件土地3の共有持分2分の1を、それぞれ贈与した(甲C1)。 ウ原告A8(本件土地4~6関係)原告A8は、平成27年▲月▲日、亡A9が死亡したことに伴い、亡A9 が平成9年よりも前から所有していた本件土地4ないし6を相続した(甲D1)。 エ原告A10及び原告A11(本件土地7、8関係 、平成27年▲月▲日、亡A9が死亡したことに伴い、亡A9 が平成9年よりも前から所有していた本件土地4ないし6を相続した(甲D1)。 エ原告A10及び原告A11(本件土地7、8関係)(ア) 原告A10は、昭和62 年11 月16 日、亡A12とともに、相続を原因として、本件土地7を各共有持分2分の1の持分割合により相続した。な お、亡A12の同共有持分(本件土地7の共有持分2分の1)は、亡A12が平成27年▲月▲日に死亡したことに伴い、原告A11が相続した。 (甲E1の1)原告A10は、令和2年2月10日、共有物分割を原因として、原告A11の本件土地7の共有持分(2分の1)全部を取得した(甲E1の1)。 (イ) 原告A11は、昭和62 年11 月16 日、原告A10及び亡A12と共に、- 5 - 相続を原因として、本件土地8を、順に8分の3、8分の1、8分の4の共有持分割合により相続した。なお、亡A12の同共有持分(本件土地8の共有持分8分の4)は、亡A12が平成27年▲月▲日に死亡したことに伴い、原告A11が相続した。(甲E1の2)原告A11は、令和元年10月7日、売買を原因として、原告A10の 本件土地8の共有持分(8分の1)全部を取得した(甲E1の2)。 オ亡A13訴訟承継人原告A14及び原告A15(本件土地9関係)亡A13(令和2年▲月▲日死亡)及び原告A15は、昭和63年3月3日、亡A16と共に、相続により、本件土地9を、順に10分の2、10分の7、10分の1の各共有持分割合により相続した(甲F1)。 亡A13訴訟承継人原告A14は、亡A16が平成28年▲月▲日に死亡したことから、亡A16の上記共 10分の2、10分の7、10分の1の各共有持分割合により相続した(甲F1)。 亡A13訴訟承継人原告A14は、亡A16が平成28年▲月▲日に死亡したことから、亡A16の上記共有持分(本件土地9の共有持分10分の1)を相続した(甲F1)。 カ原告A17(本件土地10関係)原告A17は、平成26年▲月▲日、亡A18が死亡したことに伴い、亡 A18が昭和22年以降所有していた本件土地10を相続した(甲G1)。 キ原告A19社(本件土地11関係)原告A19社(当時の商号はA20社)は、平成15年4月16日、本件土地11を売買により取得した(甲H1)。 ク原告A21社(本件土地12~16関係) 原告A21社(当時の商号はA22社)は、平成14年5月23日、本件土地12、14ないし16をいずれも売買により取得した(甲I1の1、1の3~1の5)。 原告A21社は、平成20年4月8日、本件土地13を売買により取得した(甲I1の2)。 (2) 本件各土地の位置等- 6 - ア本件土地1ないし11(以下「本件A23土地」という。)は、別紙5図面の物件1ないし9(以下、単に「物件1」などという。)であり、対応関係は以下のとおりである。 物件1 本件土地1物件2 本件土地2 物件3 本件土地4物件4 本件土地8物件5 本件土地3物件6 本件土地5及び6物件7 本件土地7 物件8 本件土地9及び10物件9 本件土地11イ本件土地12ないし16(以下「本件A24土地」という。)は、別紙6図面の物件10である 物件7 本件土地7 物件8 本件土地9及び10物件9 本件土地11イ本件土地12ないし16(以下「本件A24土地」という。)は、別紙6図面の物件10である。 (3) 本件各土地の指定容積率等及び本件補正による補正率 ア本件A23土地物件1ないし4(本件土地1、2、4及び8)は、いずれも市街化区域に所在し、A25線(A23)の道路境界から25mを境に、同境の内側(府道側)は商業地域、指定建ぺい率80%、指定容積率400%であり、同境の外側は第2種中高層住居専用地域、指定建ぺい率60%、指定容積 率200%である(甲A34の1、B1、2、C1の1、2の2、D1の1、2の1、E1の2、2の2)。 物件5及び6(本件土地3、5及び6)は、いずれも市街化区域に所在し、A25線(A23)の道路境界から25mを境に、同境の内側(府道側)は商業地域、指定建ぺい率80%、指定容積率400%であり、同境 の外側は、第1種住居地域、指定建ぺい率80%(ただし、平成16年3- 7 - 月までは60%)、指定容積率200%である(甲A34の1、C1の2、2の1、D1の2、1の3、2の2)。 物件7(本件土地7)は、市街化区域に所在し、国道〇号の道路境界から25mを境に、同境の内側(国道側)は準住居地域、指定建ぺい率80%、指定容積率300%であり、同境の外側は第1種住居地域、指定建ぺい率 80%(ただし、平成16年3月までは60%)、指定容積率200%である(甲A34の1、E1の1、2の1)。 物件8及び9(本件土地9ないし11)は、いずれも市街化区域に所在し、国道〇号(A23)の道路境界から25mを境に、同境の内側(国道側)は商業 ある(甲A34の1、E1の1、2の1)。 物件8及び9(本件土地9ないし11)は、いずれも市街化区域に所在し、国道〇号(A23)の道路境界から25mを境に、同境の内側(国道側)は商業地域、指定建ぺい率80%、指定容積率400%であり、同境 の外側は第1種住居地域、指定建ぺい率80%(ただし、平成16年3月までは60%)、指定容積率200%である(甲A34の1、F1、2、G1、2、H1、2)。 イ本件A24土地本件A24土地(物件10・本件土地12ないし16)は、いずれも市 街化区域に所在し、国道〇号(A27)の道路境界から25mを境に、同境の内側(国道側)は商業地域、指定建ぺい率80%、指定容積率600%であり、同境の外側は第1種住居地域、指定建ぺい率80%(ただし、平成16年3月までは60%)、指定容積率300%である(甲A34の1、I1、2)。 ウ本件補正による補正率本件各土地は、いずれも容積率混在土地であり、現在、本件補正が適用されているところ、その補正率は次のとおりである(なお、別紙計算表において、本件土地7〔大阪市α区βの土地〕に係る容積率混在による補正率として「80%」とあるのは、「83%」の誤りである。)。 本件土地1、2、5~7 83%- 8 - 本件土地3、4、12~16 80%本件土地8 77%本件土地9、10 86%本件土地11 89%(4) 土地評価研究報告書(乙4) 大阪市(財政局主税部固定資産税課)は、平成8年3月、「土地評価研究報告書No.12」(以下「本件報告書」とい 地11 89%(4) 土地評価研究報告書(乙4) 大阪市(財政局主税部固定資産税課)は、平成8年3月、「土地評価研究報告書No.12」(以下「本件報告書」という。)を作成し、同年8月2日開催の平成8年度土地評価研修会において、これを用いて研修を行った。本件報告書には、「事案4 容積率の異なる地域にわたる宅地の評価について」として、容積率混在土地に係る評価(補正)に関する検討内容が記載されてお り、その理論編(容積率と地価の関係)のまとめ(Ⅰの2(3))には、次のとおり記載されている。 「以上の通り、容積率と地価の関係については、一般的に次の様な事項が指摘される。 ① 現実に、容積率の差による地価の格差が問題となるのは、当該土地の最 有効使用建物が、通常、許容容積率の上限まで利用した建物となる地域であり、用途種別上は、商業系地域、及びマンション地域に限定される。 ② 上記用途種別においても、路線商業地域、店舗・事務所に対する需要が低い地域等、許容容積率を上限まで利用する建物が、必ずしも最有効使用建物とは考えられない地域については、標準的な実容積率以上の容積率の 格差による地価の差は認められない。 上記観点より、以下、商業系用途若しくはマンション地域で、かつ当該土地の最有効使用建物が、許容容積率をフルに利用した建物であることを前提に、容積率の格差による補正率を検討することとする。」(5) 本件各賦課決定等の経緯等 大阪市長は、本件各年度の本件各土地の所有者(原告ら又はその被相続人)- 9 - に対し、別紙計算表記載のとおり本件各賦課決定をした。上記各所有者は、その頃、本件各賦課決定により賦課された固定資産税等を納付した。 なお、 有者(原告ら又はその被相続人)- 9 - に対し、別紙計算表記載のとおり本件各賦課決定をした。上記各所有者は、その頃、本件各賦課決定により賦課された固定資産税等を納付した。 なお、原告A1は、本件土地1に係る亡A2名義で賦課された平成24年度分の固定資産税等を、原告A17は、本件土地10に係る亡A18名義で賦課された平成26年度分の固定資産税等を、それぞれ納付した。 (6) 税額変更決定等ア原告A1は、平成30年4月9日、大阪市A26市税事務所課税担当に対し、弁護士を介して、本件土地1の容積率混在土地の評価に係る本件補正の適用について連絡した。大阪市A26市税事務所課税担当は、同年8月9日、①本件土地1について本件補正が適用されていないことは違法と はいえず、大阪市の市税に係る返還金要綱の「瑕疵ある課税処分」には該当しないこと、②現在の本件土地1及び周辺の利用状況を考慮したところ、容積率の異なる地域にわたることが申出土地の利用に影響がないとはいい難く、本件補正を適用した場合と比較して評価額に一定のかい離が認められるため、地方税法417条1項、17条の5第5項に基づき、平成26 年度分まで遡って価格を修正することなどを書面で回答した(以下、この回答書面を「本件回答書面」という。)。(甲A14)イ大阪市長は、平成30年8月から令和2年1月にかけて、原告らに対し、土地の評価見直しを変更事由とする税額変更決定をし、別紙計算表の「(実際の返金額)」欄記載の各金額を原告らに支払った(甲B3、C3、D3、 E3、F3、G3、H3、I3)。 (7) 本件訴えの提起等原告らは、令和2年7月30日、本件訴え(平成13年度以降の年度分の損害賠償請求)を提起し、同年11月25 、D3、 E3、F3、G3、H3、I3)。 (7) 本件訴えの提起等原告らは、令和2年7月30日、本件訴え(平成13年度以降の年度分の損害賠償請求)を提起し、同年11月25日、平成10年度ないし平成12年度分の損害賠償請求も対象とする旨の訴えの変更(請求の拡張)をした。 なお、上記(1)オのとおり、亡A13は本件訴え提起後に死亡し、その相続人- 10 - である亡A13訴訟承継人原告A14が亡A13の原告の地位を承継した。 被告は、令和5年2月14日の第3回口頭弁論期日において、被告第6準備書面を陳述し、原告らに対し、原告らの平成12年度分の損害賠償請求について、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 3 争点 (1) 本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性等(争点1)(2) 平成10年度及び平成11年度分につき除斥期間が経過したか否か(争点2)(3) 平成12年度分につき消滅時効が成立したか否か(争点3)(4) 損害賠償請求権の取得並びに損害の有無及び額(争点4) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性等(争点1)について(原告らの主張)ア本件各賦課決定の客観的な違法性(ア) 本件補正の定めの解釈 a 本件補正の定めにいう「補正することができる」との文言は、裁量的規定のごとく読める規定となっている。しかし、租税法律主義から導かれる課税要件明確主義の観点からすれば、課税庁による恣意的解釈、自由裁量を認める規定を設けることは原則として許されないのであり、何ら適用するかどうかの指針も規定せずに、「できる」との記載 があることをもって、本件補正を行うかどうかに 庁による恣意的解釈、自由裁量を認める規定を設けることは原則として許されないのであり、何ら適用するかどうかの指針も規定せずに、「できる」との記載 があることをもって、本件補正を行うかどうかにつき自由裁量があると解することはできない。また、租税公平主義の観点からしても、容積率混在土地の所有者間において、ある者には本件補正を適用し、ある者には適用しないとの処理をした場合、当該処理の区別に合理性を見いだすことはできないのであり、容積率混在土地につき本件補正を 適用しないことは許されない。 - 11 - 各市町村における固定資産評価実施要領等(以下「実施要領等」という。)は、評価基準の「所要の補正」に関する規定が抽象的なものであることから、固定資産税の公平な賦課徴収のため、定型的な基準に基づいて画一的に行うために作成されているものである。また、本件補正の前提とされた本件報告書(乙4)は、各土地の最有効使用を個 別に検討することは不可能であるから、現実的に採用し得る方法として一定の基準によって画一的に判断する方法を提唱している。 したがって、本件補正の定めにいう「補正することができる」とは、課税庁の裁量を認めたものではなく、本件補正は容積率混在土地に必ず適用しなければならない。 b 仮に本件補正が容積率混在土地に適用されない場合があり得るとしても、容積率混在土地には原則として本件補正が適用されるというべきであり、容積率混在が当該土地の利用に影響しない場合に限り、本件補正が適用されないにすぎない。 (イ) 本件各土地の事情について a 本件A23土地の周辺状況について検討するに当たっては、容積率が緩和された地域(A23土地沿い)における土地の活用 ないにすぎない。 (イ) 本件各土地の事情について a 本件A23土地の周辺状況について検討するに当たっては、容積率が緩和された地域(A23土地沿い)における土地の活用方法を検討すべきである。 本件A23土地は、A23土地沿いの土地であるところ、平成9年から令和3年にかけて同条件の基準地の土地(住居表示・大阪市α区 γ)には、その期間中、鉄骨造5階建の建物が存在しているのであって、これはこの地域において容積率を最大限使用することが最有効使用であったことを示している。そして、本件A23土地の周辺を写した航空写真によれば、全体としてみると特段高層利用の変化がないなど、実質的な土地利用方法の変化はない。本件A23土地について、 平成10年当時と平成29年当時の土地の利用状況に大きな変化はな- 12 - く、平成19年当時と平成29年当時を比較して土地の使用状況に変化があったかの如く主張する被告の主張は失当である。 b 本件A24土地の周辺状況について検討するに当たっては、容積率が緩和された地域(A27沿い)における土地の活用方法を検討すべきである。 本件A24土地は、A24周辺のA27沿いの土地であるところ、平成9年から平成13年にかけて同条件の公示地の土地(住居表示・大阪市δ区ε)には、その全期間を通じ鉄骨造6階建及び9階建の建物が存在していたのであって、これは、この地域において容積率を最大限使用することが最有効使用であったことを示している。そして、 本件A24土地を含むA27沿いの各土地の利用状況は、平成15年の時点から平成27年の時点まで、何ら違いはない。 cA28作成の意見書(甲A34。以下「本件意見書」という。)にお 本件A24土地を含むA27沿いの各土地の利用状況は、平成15年の時点から平成27年の時点まで、何ら違いはない。 cA28作成の意見書(甲A34。以下「本件意見書」という。)においては、オーナーチェンジを生じた物件の調査等により把握した不動産の正常価格や、マンションデベロッパーからのヒアリング等を踏ま えて検討した結果、本件各土地に係る各状況類似地域における標準的画地の標準的使用は「高層の店舗付共同住宅の敷地」であるとされ、また、本件各土地に係る各状況類似地域につき、土地残余法を用いて現況建物の賃貸と高層の店舗付共同住宅の賃貸における土地の収益価格を比較するといずれも後者が前者を大幅に上回るとされている。そ して、本件各土地の最有効使用は「高層の店舗付共同住宅の敷地」であると結論付けられている。 d したがって、本件各土地は、上記(ア)の主位的主張、予備的主張のいずれによっても、また、仮に「価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に限り本件補正を適用するという被告の主張によった としても、本件補正がされるべき土地である。 - 13 - イ本件各賦課決定は国家賠償法上違法であること(ア) 本件要領は、「所要の補正」を定型的な基準に基づき画一的に行うために制定されたものであり、本件要領に記載のない例外処理(本件補正をしないとの処理)は許されない。そうすると、本件各土地は、いずれも容積率混在土地に該当するから、本件各賦課決定をするに当たり、本件 要領に記載のない例外処理(本件補正をしないとの処理)をしたことは、国家賠償法上違法である。 (イ) 容積率混在土地には原則として本件補正が適用され、容積率混在が当該土地の利用に影響しない場合に限り適用し 例外処理(本件補正をしないとの処理)をしたことは、国家賠償法上違法である。 (イ) 容積率混在土地には原則として本件補正が適用され、容積率混在が当該土地の利用に影響しない場合に限り適用しないとの解釈(原告らの予備的主張)を前提としたとしても、次のとおり、本件各土地は、いずれ も容積率混在土地に当たり、容積率混在が本件各土地の利用に影響しないとはいえないから、本件各賦課決定に当たり、本件要領に記載のない例外処理(本件補正をしないとの処理)をしたことは、国家賠償法上違法である。 大阪市長は、①本件要領についての確認を行う義務(変更や改正があ ればそれを適切に確認する義務を含む。)、②固定資産評価の見直し対象地を適切に特定すべき義務、③課税対象地に対する調査(実地調査)義務(地方税法408条参照)、④本件要領を適用して固定資産税額の算出を適切に行う義務を負っていた。しかし、①につき、平成9年度の本件要領で追加された本件補正の周知を怠り、課税担当者や補助者がこれを 適切に把握しておらず、内部マニュアル等の作成もないこと、②につき、平成9年度の本件要領から追加された本件補正の適用対象となる土地の調査確認をしていないこと、③につき、本件各土地は、A23及びA27というメインストリートに面し、大阪市が公開している用途地域図等により、本件補正の適用の有無や容積率混在土地か否かの判別ができ たこと、④につき、本件訴え提起の前後において、本件補正の適用基準- 14 - に関する被告側の説明が一貫しないことなどの事情によれば、本件各土地は、いずれも容積率混在土地に当たり、容積率混在が当該土地の利用に影響しないとはいえず、本件補正をしないとの処理をすることは、上記のとおり国家賠償法上の違法がある。 どの事情によれば、本件各土地は、いずれも容積率混在土地に当たり、容積率混在が当該土地の利用に影響しないとはいえず、本件補正をしないとの処理をすることは、上記のとおり国家賠償法上の違法がある。 (ウ) 仮に本件補正の定めの解釈につき被告の主張を前提としたとしても、 原告らが前提事実(6)アの申出を行った後速やかに過納付分が還付されたことに加え、上記(イ)の事情からすると、本件各土地については、本件補正が適用されるべきであったにもかかわらず大阪市長は本件補正を適用しなかったことになる。本件補正をした年と本件補正をしていない年とで土地の状況等にさしたる変化がないのであれば、当該事実は、大 阪市長が本件補正をしなかったことが注意義務違反に当たることを強く推認させるというべきところ、本件各土地は、平成10年(本件A23土地)又は平成15年(本件A24土地)から利用状況に特段の変化はなく、判断の元となる事実や状況にさしたる変化はない。 したがって、大阪市長が本件各賦課決定をするに当たり、本件要領に 記載のない例外処理(本件補正をしないとの処理)をしたことは、国家賠償法上違法である。 (被告の主張)ア本件各賦課決定の客観的な違法性について(ア) 本件補正の定めの解釈 評価基準においては、宅地の容積率の大小は路線価を付設する際に既に考慮されており、容積率混在土地について何らかの配慮をするか否かについては、具体的な規定を置いていない。一方、評価基準は、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは画地計算法の附表等について、「所要の補正」をし、これを適用すると規定している。この「所要の 補正」は、価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること、またそ- 状況に応じ、必要があるときは画地計算法の附表等について、「所要の補正」をし、これを適用すると規定している。この「所要の 補正」は、価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること、またそ- 15 - の影響が局地的であること等の理由から、その価格事情を路線価の付設又は状況類似地区の設定によっては評価に反映させることができない場合があるので、その価格事情が特に著しい影響があると認められるときに限り、個々の画地ごとに特別の価格事情に見合った所要の補正を行うことができることとしたものである。このように、地方税法や評価基 準は、市町村長に対し、具体的に容積率混在土地を評価する際に何らかの補正を施すべきことを義務付けてはおらず、何らの規定も置いていない。 地方税法や評価基準が、容積率混在土地が存在するとき、常に一律に補正をしなければならないことを前提にしているとは考えられず、この ような場合であっても、「所要の補正」は、個別の事情に応じ、必要があると認められるときに限って行われるべきものである。本件補正の定めが、「補正する」とせず「補正することができる」としているのも、容積率混在土地に係る「所要の補正」については、それによる価格事情が特に著しい影響があると認められる場合に限って、個々の画地ごとに特別 の価格事情に応じて行われるべきという地方税法や評価基準の趣旨が反映されたものであって、容積率混在土地が存在するときには必ず本件補正を行わなければならない旨を定めたものではない。本件報告書も、容積率混在土地について本件補正を一律に適用することを前提とするものではない。 そして、容積率の差による地価の格差が問題となるのは、当該土地の最有効使用建物が、通常、許容容積率の上限まで利用した建物 本件補正を一律に適用することを前提とするものではない。 そして、容積率の差による地価の格差が問題となるのは、当該土地の最有効使用建物が、通常、許容容積率の上限まで利用した建物となる地域であり、許容容積率を上限まで利用する建物が必ずしも最有効使用建物とは考えられない地域については、標準的な実容積率以上の容積率の格差による地価の差は認められないから、本件補正を行うべきでない。 被告においては、容積率混在土地が、①容積率が小さい方の地域に属- 16 - する面積が小さく、ほとんど影響がない土地、②地区計画等の指定を受けている等により容積率の緩和を受けており、減価補正の必要がない土地、③前面道路の幅員による容積率の限度が指定容積率を下回っており、指定容積率が異なる地域にまたがること(容積率混在)による影響がない土地、④低層利用を主としている地域(戸建て住宅地域や路線商業地 域など)にあり、容積率の大小が価格に影響しない土地である場合には、「価格事情が特に著しい影響があると認められない」と判断し、本件補正を行わないという運用を行っていた(以下、上記④の土地につき本件補正を行わない運用を「運用④」という。)。 なお、本件回答書面は、上記運用を前提とした説明をしたものであっ て、原告らからの申出を受け、改めて対象土地及び周辺状況の調査を行ったところ、低層利用を主としている地域であるなど容積率の大小が価格に影響しない土地とはいい難く、現時点においては本件補正を適用すべきであると判断したことを指摘するものである。 (イ) 本件各土地の事情について a 本件A23土地(本件土地1ないし11)周辺には、平成10年当時、駐車場や田畑等として利用されている土地が多く存在し るものである。 (イ) 本件各土地の事情について a 本件A23土地(本件土地1ないし11)周辺には、平成10年当時、駐車場や田畑等として利用されている土地が多く存在し、客観的に許容容積率を上限まで利用する土地利用とはなっていなかった。そして、標準宅地上に建てられている建物は許容容積率の上限まで利用したものではない。このように、低層利用がされていたこと、この地 域が路線商業地域に当たることを踏まえると、平成10年当時、この地域について、許容容積率を上限まで利用する建物が必ずしも最有効使用建物とは考えられず、ひいては、容積率混在土地であることが、土地の評価額に大きな影響を及ぼすとはいい難いものであった。なお、被告は、原告らからの申出を受けて、改めて対象土地及び周辺状況の 調査を行った時点で、本件A23土地は容積率の大小が価格に影響を- 17 - 及ぼし得る土地であると判断したものである。 b 本件A24土地(本件土地12ないし16)周辺は、平成10年当時、駐車場として用いられるなど、一見して容積率を上限まで利用していないと考えられる土地が多く存在していた(原告らが主張する公示地は、A27に面しておらず、本件A24土地とは利用実態を異に する。)。平成10年当時、本件A24土地について、許容容積率を上限まで利用する建物が必ずしも最有効使用建物とは考えられず、ひいては容積率混在土地であることが土地の評価額に大きな影響を及ぼすとはいい難いものであった。なお、被告は、原告らからの申出を受けて、改めて対象土地及び周辺状況の調査を行った時点で、本件A24 土地は容積率の大小が価格に影響を及ぼし得る土地であると判断したものである。 c 本件意見書が認定する土地の利用状 て、改めて対象土地及び周辺状況の調査を行った時点で、本件A24 土地は容積率の大小が価格に影響を及ぼし得る土地であると判断したものである。 c 本件意見書が認定する土地の利用状況からは、当該土地の近隣地域の典型的な需要者が中堅のマンションデベロッパー等であるとは認定できず、本件意見書が挙げる検討要素から近隣地域における標準的画 地の標準的使用を「高層の店舗付共同住宅の敷地」と判定することはできない。本件意見書の内容は全く合理性に欠ける。 d 本件各年度において、本件各土地は、いずれも上記(ア)の運用④の土地に該当するものであり、許容容積率を上限まで利用する建物が必ずしも最有効使用建物とは考えられず、ひいては、容積率混在土地であ ることが、土地の評価額に大きな影響を及ぼすとはいい難いものであった。 イ本件各賦課決定は国家賠償法上違法ではないこと(ア) 被告に国家賠償法上の違法性が認められるためには、大阪市長による固定資産税等の課税が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことな く漫然とされたものであると認められなければならない。 - 18 - 上記アのとおり、本件補正の定めの内容や趣旨からすると、容積率混在土地について、一律にその補正率表に沿った補正を行わなければならない旨が定められてはいないのであって、容積率混在土地について補正率表に基づいた補正を行わなかったこと自体が租税公平主義に反し、あるいは職務上通常尽くすべき注意義務が尽くされていないとは認めら れない。また、大阪市のように、本件要領において、具体的に容積率混在土地について所要の補正を行うことができる旨を定めている市町村は稀有であり、そのような定めのない市町村において容積率混在土地を れない。また、大阪市のように、本件要領において、具体的に容積率混在土地について所要の補正を行うことができる旨を定めている市町村は稀有であり、そのような定めのない市町村において容積率混在土地を所有する者に対しては、当然、一律に「所要の補正」が行われているとは考えられない。加えて、「所要の補正」を行うべきか否かは評価を伴う 判断であり、本件補正は評価基準が定める原則的な土地の評価に対して、納税者を有利に扱うべき例外的措置である。これらの事情によれば、本件補正をしないという判断が不合理であることが客観的に明白である場合に、その判断が職務上通常尽くすべき注意義務に違反すると解すべきである。 原告らは、被告の注意義務違反として前記(原告らの主張)イ(イ)①ないし④を主張するが、被告においては、平成8年当時に研修会を実施しており、本件要領を超えてマニュアルを作成すべきとは考えられず(仮に作成していたとしても本件各土地に本件補正がされていたとは認められない。)、被告の担当者(固定資産税担当職員)は複数の指定容積率 にまたがる土地(容積率混在土地)を抽出し、周辺状況の確認を行い、本件補正を行うべき土地を適切に特定し、基準年度ないし第三年度において調査をし、本件各土地やその周辺土地の利用状況を適切に把握し、それを踏まえて本件補正が不要であると判断し、適切に本件各土地の評価額を算出し、固定資産税等の税額を算出したものであって、原告らが 主張するような注意義務違反は存在しない。 - 19 - (イ) 本件A23土地のうち、本件土地1ないし8の各土地については平成25年度分、本件土地9ないし11の各土地については平成26年度分について、本件補正をしていないものの、これらは固定資産課税台帳に登録さ 件A23土地のうち、本件土地1ないし8の各土地については平成25年度分、本件土地9ないし11の各土地については平成26年度分について、本件補正をしていないものの、これらは固定資産課税台帳に登録された価格の基準年度(平成24年度)との関係でみると、第二年度、第三年度に相当する。これらの平成25年度分及び平成26年度分 の固定資産税等は、平成24年度分固定資産税の課税標準の基礎となった土地の価格を据え置いて決定したものであり、この点に注意義務違反はない。そして、平成24年当時、本件A23土地付近の利用状況を前提としたとき、低層利用されている土地も相当存在していると考えられたことにより、その時点において、大阪市長が「低層利用を主としてい る地域にあり、容積率の大小が価格に影響しない土地」であるとして運用④により本件補正をしないと判断したことが不合理であることが客観的に明白であるとはいえない。 他方、本件A24土地(本件土地12ないし16)は、本件土地13につき、平成24年度以前は本件土地12、14ないし16とは別の画 地として評価していたが、平成24年度中に土地上の建物が滅失したことから、平成25年度からその評価を見直し、以後、本件土地12ないし16を一画地として評価している。平成26年度分の固定資産税等は本件補正をしていないものの、平成26年度において、本件A24土地について、地目の変換、家屋の改築又は損壊等はなく、上記のとおり、 第二年度である平成25年度の土地の価格を据え置いて平成26年度分の固定資産税等の賦課決定をしたことについて、被告には何らの注意義務違反も認められない。 そして、本件A23土地付近及び本件A24土地付近において、平成10年から平成29年までの間に大規模開発や駅 等の賦課決定をしたことについて、被告には何らの注意義務違反も認められない。 そして、本件A23土地付近及び本件A24土地付近において、平成10年から平成29年までの間に大規模開発や駅の創設などの土地の 利用状況を変化させ得る特段の出来事があったわけではなく、その間、- 20 - 土地の利用状況は徐々に変化していったのであって、このことから想定される平成24年、平成25年時点の本件A23土地付近及び本件A24土地付近の利用状況を前提としたとき、低層利用されている土地も相当存在していると考えられることから、これらの土地が「低層利用を主としている地域にあり、容積率の大小が価格に影響しない土地」である として本件補正をしないと判断したことが不合理であることが客観的に明白であるとはいえない。 なお、原告らは、基準地や公示地の利用状況を問題とすべきと主張するが、本件補正をすべきか否かは、容積率混在土地であることが価格事情に特に著しい影響があると認められるか否かにより判断されるもの であり、原告らの主張は理由がない。 (ウ) 上記によれば、本件各年度において、本件各土地につき本件補正をしないという判断が不合理であることが客観的に明白であるとはいえず、その判断が職務上通常尽くすべき注意義務に違反するとはいえないから、本件各賦課決定が国家賠償法上違法であるとはいえない。 (2) 平成10年度及び平成11年度分につき除斥期間が経過したか否か(争点2)について(被告の主張)原告らの請求(令和2年11月25日付け訴えの変更申立書により拡張されたもの)のうち、平成10年度及び平成11年度分の固定資産税等の賦課 決定に関する部分は、訴えの変更時において20年以上が 原告らの請求(令和2年11月25日付け訴えの変更申立書により拡張されたもの)のうち、平成10年度及び平成11年度分の固定資産税等の賦課 決定に関する部分は、訴えの変更時において20年以上が経過していたから、既に除斥期間が経過している。この点に係る原告らの主張は、次のア、イのとおり、認められない。なお、令和2年4月1日施行の改正法により、民法724条後段は消滅時効の規定となったが、改正後の民法が適用されるのは、その施行日において除斥期間が経過していない場合である(改正法附則35 条1項)。 - 21 - ア除斥期間経過による権利失効が信義則違反・権利濫用により制限されるものではないこと原告らは、市民は固定資産税等の賦課決定の根拠等に精通しておらず、また、固定資産税等の賦課決定には当然間違いがないものと考えているなどとして、除斥期間による権利失効を認めることが、著しく正義公平の理 念に反し、信義則違反・権利濫用であると主張する。しかし、原告らが主張する上記事情は一般論というべき事情であって、最高裁令和2年3月24日第三小法廷判決・民集74巻3号292頁はこのような一般論を前提としつつ固定資産税等の賦課決定について20年の除斥期間に服するものと判断したのであって、原告らが主張する最高裁平成10年6月12日第 二小法廷判決・民集52巻4号1087頁や最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・民集63巻4号853頁とは事案を異にする。したがって、本件において著しく正義公平の理念に反する事情はなく、除斥期間の経過による権利失効が信義則違反・権利濫用により制限されるものではない。 イ債務承認により除斥期間経過による権利失効の効力が生じないとはいえないこと原告らは 斥期間の経過による権利失効が信義則違反・権利濫用により制限されるものではない。 イ債務承認により除斥期間経過による権利失効の効力が生じないとはいえないこと原告らは、債務承認により除斥期間経過による権利失効の効力が生じない旨主張するが、改正前の民法724条後段は除斥期間であるから、仮に債務者(被告)による債務の承認があったとしても、除斥期間経過による 権利失効の効力に影響はない。 固定資産税等の賦課決定に係る損害賠償請求権は、年度ごとに発生しているから、各年度の損害賠償請求権は別個の請求権である。本件において、被告は5年分の固定資産税等の過徴収分について還付しただけであって、それ以前のものについて、その損害賠償請求権の存在を認識している旨を 表示したことはない。5年分の過徴収分の返還が、それ以外の年度の損害- 22 - 賠償請求権に係る債務承認に当たるとはいえない。 (原告らの主張)改正前の民法724条後段に定める20年の期間は、除斥期間を定めたものであるとしても、前掲最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決及び前掲最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決は事案に応じて期間制限の 主張の妥当性を検討していた上、改正法による民法改正により同条後段が消滅時効に関する規定であることが明確にされた経緯からすると、次のア、イのとおり、本件において同条後段を適用することは正義公平の理念に反するから、同条後段は適用されないと解すべきである。 ア除斥期間経過による権利失効が信義則違反・権利濫用により制限される こと一般の市民は、固定資産税等の賦課決定の根拠等に精通しておらず、また、固定資産税等の賦課決定には当然間違いがないものと考えているか 失効が信義則違反・権利濫用により制限される こと一般の市民は、固定資産税等の賦課決定の根拠等に精通しておらず、また、固定資産税等の賦課決定には当然間違いがないものと考えているから、原告らにおいて、固定資産税等の賦課徴収に違法があることに気が付くことは極めて困難である。除斥期間の経過を認めると著しく正義公平の理念 に反することになる。 イ債務承認により除斥期間経過による権利失効の効力が生じないこと債務者が除斥期間の経過前にその債務を承認した場合には、そのことにより除斥期間の効果の発生は阻止され(損害及び加害者を知ってから3年の短期消滅時効に服する。)、債務者が除斥期間の経過後にその債務を承認 した場合には、その後に除斥期間の経過による権利消滅の主張をすることは信義則違反ないし権利濫用として許されないと解すべきである。そうすると、被告は、過去5年分の固定資産税等の過徴収分について税額変更決定をして自主的に還付し、債務の承認をしているところ、過去5年分の過徴収とそれ以前の過徴収は共通する発生原因によるものであるから、5年 分の過徴収分についての債務承認はそれ以前の過徴収分の債務承認と同視- 23 - することができる。したがって、本件において、改正前の民法724条後段の除斥期間は適用されない。 (3) 平成12年度分につき消滅時効が成立したか否か(争点3)について(被告の主張)平成12年度分の損害賠償請求権については、既に消滅時効期間が経過し ている。そして、上記(2)(被告の主張)イのとおり、被告がした5年分の固定資産税等の過徴収分についての還付が、それ以外の年度の損害賠償請求権に係る債務承認に当たるとはいえない。したがって、平成12年度分の損 して、上記(2)(被告の主張)イのとおり、被告がした5年分の固定資産税等の過徴収分についての還付が、それ以外の年度の損害賠償請求権に係る債務承認に当たるとはいえない。したがって、平成12年度分の損害賠償請求権について、消滅時効は中断しておらず、消滅時効が完成している。 (原告らの主張) 改正法の施行日である令和2年4月1日時点で除斥期間が経過していない平成12年度分(同年以降も同様)の賦課決定に係る損害賠償請求権については、改正前の民法724条後段の除斥期間の制限を受けず、消滅時効期間に服するというべきであり、被告がした5年分の過徴収分の還付決定が債務承認に当たる以上、その消滅時効も中断している。したがって、平成12年 度分の損害賠償請求権につき消滅時効は完成していない。 (4) 損害賠償請求権の取得並びに損害の有無及び額(争点4)について(原告らの主張)原告A1は、平成24年▲月▲日に亡A2が死亡したことにより、原告A8は、平成27年▲月▲日に亡A9が死亡したことにより、原告A10及び 原告A11は、同年▲月▲日に亡A12が死亡したことにより、亡A13は、平成28年▲月▲日に亡A16が死亡したことにより、亡A13訴訟承継人原告A14は、令和2 年▲月▲日に亡A13が死亡したことにより、原告A17は、平成26年▲月▲日に亡A18が死亡したことにより、違法な本件各賦課決定により発生した被告に対する損害賠償請求権を相続により取得 した。 - 24 - 原告ら又はその被相続人は、大阪市長による本件各賦課決定により、別紙計算表の「差額(損害額元本)」欄の着色部分の金額のとおり損害を被った。 また、原告らは、本件訴えの提起及び追行を弁護士に委任したところ、相当因果関係のあ は、大阪市長による本件各賦課決定により、別紙計算表の「差額(損害額元本)」欄の着色部分の金額のとおり損害を被った。 また、原告らは、本件訴えの提起及び追行を弁護士に委任したところ、相当因果関係のある弁護士費用は、別紙計算表の「弁護士費用」欄の金額(上記損害の10%)を下らない。これらの損害の合計額は、別紙計算表の「請求 元本」欄の金額のとおりである。 (被告の主張)本件各土地の相続については不知。その余は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性等(争点1)について (1) 判断枠組み国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負う旨を規定するものであって、公権力の行使に当たる公務員の職務上の行為が同項の適用上 違法と評価されるのは、当該公務員が、当該行為によって損害を受けたと主張する特定の国民との関係において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為を行ったと認め得るような事情がある場合に限るものと解するのが相当である(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成5年3月11日第一小法廷判 決・民集47巻4号2863頁等参照)。 (2) 本件補正の定めの解釈についてア評価基準の「所要の補正」について評価基準第1章第3節二(一)4は、市街地宅地評価法による宅地の評点数の付設につき、「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、『画地計 算法』を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、- 25 - 宅 市街地宅地評価法による宅地の評点数の付設につき、「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、『画地計 算法』を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、- 25 - 宅地の状況に応じ、必要があるときは、『画地計算法』の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」と定めている。このように、市町村長による「所要の補正」は、評価基準上、「宅地の状況に応じ、必要があるとき」に行うものとされており、それ以上の具体的な定めは設けられていない。 そして、この「所要の補正」については、令和3年発行の固定資産税務研究会編「固定資産評価基準解説(土地篇)」において、「(画地計算法の)附表等は実験値に基づき標準的なものが示されているものであり、そのまま適用した結果、各筆の宅地の評価額に不均衡が生ずると認められる場合には、このような不均衡が生じないように、実情に応じた方法に修正する 必要がある。つまり、市町村長は、評価の均衡を確保するために、宅地の状況に応じ必要があるときには、附表等に所要の補正を加えて、『画地計算法』を適用することができるものである」(同278頁)、「価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること、またその影響が局地的であること等の理由から、その価格事情を路線価の付設又は状況類似地区の設定によっ て評価に反映させることができない場合がある。このような場合には、その価格事情が特に著しい影響があると認められるときに限り、個々の画地ごとに特別の価格事情に見合った所要の補正を行うことができるものである。」(同313頁)などと解説されているところであり、全国の各市町村において、その実施要領等により、画地条件(接面道路との高低差、用排 水路等)、環境条件(騒音・振動、悪臭等)、 るものである。」(同313頁)などと解説されているところであり、全国の各市町村において、その実施要領等により、画地条件(接面道路との高低差、用排 水路等)、環境条件(騒音・振動、悪臭等)、法令上の規制・制限等(規制区域、高圧線下等)など、評価基準に具体的な定めのない様々な補正項目に基づく「所要の補正」が実施されている(同313~317頁)。 このような評価基準第1章第3節二(一)4の文言やその趣旨等に照らすと、評価基準にいう「所要の補正」とは、特別の価格事情により評価基 準の定める評価方法によっては評価の不均衡が生じる場合に、評価の均衡- 26 - を確保するために実施する特別の補正であって、その要件である「宅地の状況に応じ、必要があるとき」とは、その価格事情が特に著しい影響があると認められる場合をいうものと解される。 そして、この「所要の補正」については、評価基準上、「宅地の状況に応じ、必要があるとき」に行うとされているにとどまり、それ以外の具体的 な要件等は定められておらず、また、特別の価格事情による影響といった本来個別性の高い事柄であることも考慮すると、市町村長は、各市町村の実施要領等における所要の補正の定めがなくとも、宅地の状況に応じ必要があれば、直接評価基準に基づいて個々の画地につき所要の補正をすることができる(すなわち、所要の補正を実施する上で実施要領等の定めは必 要不可欠のものではなく、例えば、容積率混在土地につき実施要領等に補正の定めを設けていない市町村においても、容積率混在を理由とする所要の補正をすることができる。)と解するのが相当である。また、そのような所要の補正の性質等に鑑みると、各市町村の実施要領等でこれを定める場合においても、①どのような価格事情があれば所要の補正を実施す の補正をすることができる。)と解するのが相当である。また、そのような所要の補正の性質等に鑑みると、各市町村の実施要領等でこれを定める場合においても、①どのような価格事情があれば所要の補正を実施するかと いう点、及び②所要の補正を実施する場合にどのような補正率を適用するかという点につき、①と②の両方を定める手法だけではなく、②だけを定める手法(所要の補正を実施するかどうかは評価基準に基づいて判断し、実施する場合の補正率の基準や上限を実施要領等で定めること)も、所要の補正に係る評価要領等の定めとして許されるものと解される。 イ本件補正の定めの解釈について本件補正の定めは、「容積率の異なる地域にわたる土地については、正面路線に接する部分の容積率に対する他の部分の容積率の割合(中略)及び当該土地の面積に対する他の部分の面積の割合(中略)に応じて、次に定める補正率表により求めた補正率によって補正することができる。ただし、 正面路線に接する部分の容積率が他の部分の容積率よりも低い場合につい- 27 - ては、補正を適用しない。」としている。このように、本件補正の定めは、容積率混在土地につき、所定の補正率によって「補正することができる」としているのであるから、その文言上、容積率混在土地につき常に所要の補正を行う旨を定めたものとは解し難く、所要の補正を実施することとした場合における補正率の基準を定めたもの(上記アの①と②の点のうち② だけを定めたもの)と解するのが自然である。このことは、本件要領が、評価基準所定の画地計算法の適用関係においては、全て「評点数を求める」や「評点数を補正する」といった個別判断の余地のない文言を用いていること(本件要領第1の9(1)~(12)参照)、日照被害に基づく所要の補正に の画地計算法の適用関係においては、全て「評点数を求める」や「評点数を補正する」といった個別判断の余地のない文言を用いていること(本件要領第1の9(1)~(12)参照)、日照被害に基づく所要の補正について、「次のA又はBに該当する土地で…日照被害…の影響により他の土 地に比して価格事情に著しい格差が生じていると認められる土地」を「日照被害土地」と定義した上で、日照被害土地につき所定の補正率を「適用する」としていること(同第1の9(13)サ。すなわち、日照被害土地については、所要の補正を義務的なものとする一方で、その定義の中に所要の補正を行うべき「価格事情に著しい格差が生じている」という要件を盛り 込んでいる。)など、文言を厳密に使い分けているとみられることからも裏付けられる。 また、本件補正の定めは、平成9年3月に大阪市財政局固定資産税課が策定した本件要領において初めて定められたものであるところ(甲A2の7)、同固定資産税課が平成8年3月に作成した本件報告書には、「① 現 実に、容積率の差による地価の格差が問題となるのは、当該土地の最有効使用建物が、通常、許容容積率の上限まで利用した建物となる地域であり、用途種別上は、商業系地域、及びマンション地域に限定される。」「② 上記用途種別においても、路線商業地域、店舗・事務所に対する需要が低い地域等、許容容積率を上限まで利用する建物が、必ずしも最有効使用建物 とは考えられない地域については、標準的な実容積率以上の容積率の格差- 28 - による地価の差は認められない。」として、これらの観点から、「商業系用途若しくはマンション地域で、かつ当該土地の最有効使用建物が、許容容積率をフルに利用した建物であることを前提に、容積率の格差による補正率を検討する」とされ い。」として、これらの観点から、「商業系用途若しくはマンション地域で、かつ当該土地の最有効使用建物が、許容容積率をフルに利用した建物であることを前提に、容積率の格差による補正率を検討する」とされており、同年8月の研修において本件報告書が使用されているのであって(前提事実(4))、このような本件報告書の内容から は、本件補正の定めは、容積率混在土地につき一律に所要の補正を行うのではなく、上記のような場合(当該土地の最有効使用建物が許容容積率を上限まで利用した建物である場合)に限って所要の補正を行うことを想定して定められたものと解するのが自然である。 以上の点に加え、容積率混在に基づく所要の補正について実施要領等で 定めている市町村は非常に少ないこと(すなわち、全国的にみれば、容積率混在という事情は所要の補正を要するような特別の価格事情であるとは一般的に認識されていないこと)も考慮すれば、本件補正の定めは、大阪市内の容積率混在土地につき一律に所要の補正を行うことを定めたものではなく、容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる 場合に限り、所定の補正率に基づく補正を行うことを定めたものと解するのが相当である。そして、このような本件補正の定めは、上記アで説示したところに照らし、所要の補正に係る評価基準第1章第3節二(一)4の定めに沿うものというべきである。 ウ原告らの主張について (ア) 原告らの主位的主張について原告らは、①租税法律主義から導かれる課税要件明確主義の観点から、本件補正を適用するか否かについて、課税庁に自由裁量を認めることは許されないとか、②租税公平主義の観点から、容積率混在土地の所有者間において本件補正の適用につき差異が生じることは許されないなど と 正を適用するか否かについて、課税庁に自由裁量を認めることは許されないとか、②租税公平主義の観点から、容積率混在土地の所有者間において本件補正の適用につき差異が生じることは許されないなど として、本件補正の定めにより、大阪市内の容積率混在土地については- 29 - 必ず本件補正を適用しなければならない旨主張する。 しかし、本件補正は、評価の均衡を確保するために行われる所要の補正として、容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合に限り行われるべきものと解され、評価的な認定が必要ではあるが、裁判所の判断代置方式による審査が可能であるから、本件補正の 定めは、課税庁に自由裁量を認めたものということはできず、原告らの課税要件明確主義に係る主張はその前提を誤るものというべきである。 また、本件補正は評価の均衡を確保するため必要な限度で行われるものであって、容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められるか否かに係る区別には合理的な理由があるというべきであり、本件 補正の定めが不合理な差別や恣意的な判断を許容するものとはいえないから、本件補正の定めが租税公平主義に反するとはいえない。また、原告らは、以上のほかにも、本件報告書の内容や被告の職員の対応など様々な観点から、容積率混在土地については必ず本件補正を適用しなければならない旨主張するが、いずれも上記判断を左右するものではなく、採 用することができない。 なお付言するに、課税要件明確主義や租税公平主義に係る原告らの主張は、本質的には、本件補正の定めの問題というよりは、そのような定め(本件要領に基づく運用)を許容する評価基準自体の問題であって、「所要の補正」という制度それ自体の問題というべきである。そして、 そのよう は、本件補正の定めの問題というよりは、そのような定め(本件要領に基づく運用)を許容する評価基準自体の問題であって、「所要の補正」という制度それ自体の問題というべきである。そして、 そのような「所要の補正」が不明確ないし不公平であるため許されないとするならば、これに基づく本件補正も許されないことになるというべきである。 (イ) 原告らの予備的主張について原告らは、本件補正の定めの解釈に係る予備的主張として、仮に本件 補正が容積率混在土地に適用されない場合があるとしても、容積率混在- 30 - 土地には原則として本件補正が適用されるというべきであり、例外的に容積率混在が当該土地の利用に影響しない場合に限り、本件補正が適用されないにすぎない旨主張する。 しかし、前述のとおり、本件補正の定めは、その文言等に照らせば、大阪市内の容積率混在土地につき一律に所要の補正を行うことを定め たものではなく、容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合に限り、所定の補正率による補正を行うことを定めたものと解するのが相当であり、原告らの上記予備的主張は採用することができない。 なお、大阪市A26市税事務所の課税担当が作成した本件回答書面に ついては、その記載内容が正しい解釈に基づくものか定かでなく、様々な事情に配慮して婉曲な表現が用いられたり、正確な表現が用いられなかったりすることもあり得るというべきであり、その記載内容の一部(容積率の異なる地域にわたることが申し出土地の利用に影響がないとはいい難く…)に上記予備的主張に沿う部分があるからといって、上 記判断が左右されるものとはいえない。 エ小括以上のとおり、本件補正の定めは、容積率混在土地 影響がないとはいい難く…)に上記予備的主張に沿う部分があるからといって、上 記判断が左右されるものとはいえない。 エ小括以上のとおり、本件補正の定めは、容積率混在土地について一律に所要の補正を行うことを定めたものではなく、容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合に限り、所定の補正率により補正を 行うことを定めたものと解するのが相当である。 (3) 本件各土地に本件補正を適用しないことの適否等についてア容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合について本件報告書(88頁)は、容積率と地価の関係につき、一般的に、「① 現 実に、容積率の差による地価の格差が問題となるのは、当該土地の最有効- 31 - 使用建物が、通常、許容容積率の上限まで利用した建物となる地域であり、用途種別上は、商業系地域、及びマンション地域に限定される。」「② 上記用途種別においても、路線商業地域、店舗・事務所に対する需要が低い地域等、許容容積率を上限まで利用する建物が、必ずしも最有効使用建物とは考えられない地域については、標準的な実容積率以上の容積率の格差 による地価の差は認められない。」として、これらの観点から、「商業系用途若しくはマンション地域で、かつ当該土地の最有効使用建物が、許容容積率をフルに利用した建物であることを前提に、容積率の格差による補正率を検討する」としている(乙4、36)。なお、「路線商業地域」とは、一般に、幹線道路沿いに立地し、主として自動車利用客を対象とする店舗 や施設等が連たんする地域のことであり、標準的な建物の実容積率は200%に満たないのが一般的であるため、この標準的な実容積率を超える容積率による地価への影響は認め 動車利用客を対象とする店舗 や施設等が連たんする地域のことであり、標準的な建物の実容積率は200%に満たないのが一般的であるため、この標準的な実容積率を超える容積率による地価への影響は認められない(本件報告書87頁参照)。 このような本件報告書の内容は、容積率と地価の関係に係る説明として、専門的な知見を踏まえた合理的なものと解される。そうすると、本件補正 を適用すべきか否か、すなわち、「容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当するためには、少なくとも、当該土地の最有効使用建物が許容容積率を上限まで利用した建物であることが必要と解するのが相当である(なお、被告が主張する運用④も、基本的に、上記と同様の理解に基づくものと解される。)。 そこで、以下、本件各年度に対応する期間(最も長いもので、本件A23土地につき平成10年から平成26年まで、本件A24土地につき平成15年から平成26年まで)の本件各土地の最有効使用建物が、許容容積率を上限まで利用した建物であるかどうかを中心に、本件補正を適用しなかったことの適否や注意義務違反の有無等について、以下検討する。 イ本件A23土地(平成10年から平成26年まで)について- 32 - (ア) 本件A23土地付近の航空写真等平成10年に撮影された航空写真(乙16)をみると、不鮮明で必ずしも明確ではないが、A23に接する両側の土地のうち、少なくとも半分程度は、許容容積率の上限まで利用されていない土地(乙16の2のピンク色で塗りつぶされている土地)であることがうかがわれる。 平成19年に撮影された航空写真(甲A15)をみると、A23に接する両側の土地に、駐車場を併設する低層の店舗等が少なからず存在して ク色で塗りつぶされている土地)であることがうかがわれる。 平成19年に撮影された航空写真(甲A15)をみると、A23に接する両側の土地に、駐車場を併設する低層の店舗等が少なからず存在していることがうかがわれ、許容容積率を上限まで利用した建物(高層マンション等)が大半を占めるには至っていないようにみえる。 平成24年に撮影された航空写真(乙25の1~4枚目)をみると、 A23に接する両側の土地のうち、半分程度は、許容容積率の上限まで利用されていない土地(赤い枠線で囲まれている土地)であることがうかがわれ、平成24年時点でも、A23の両側に、駐車場など許容容積率の上限まで利用されていない土地が少なからずみられる。 平成29年に撮影された航空写真(甲A16)をみると、平成19年 当時の航空写真と比較して一部の土地につき使用状況の変化がみられるが(乙17、18のピンク色で塗りつぶされている土地)、全体として大きくは変わっていない。そして、平成29年時点でも、A23に接する両側の土地に、駐車場を併設する低層の店舗等が少なからず存在していることがうかがわれ、許容容積率を上限まで利用した建物(高層マン ション等)が大半を占めるには至っていないようにみえる。 令和3年に地上付近から撮影された写真(甲A17)や令和4年に撮影された本件A23土地付近の写真(本件意見書の現況写真)をみると、中高層マンションはそれほど多くはなく、せいぜい全体の数割程度であるようにみえる。他方、業務スーパー、ユニクロ、イエローハット、は ま寿司など、駐車場を併設した飲食店、食料品店、衣料品店等が相当数- 33 - 存在し、また、ガソリンスタンドや2階建ての建物も少なくないようにみえる。 (イ) 標準宅地の鑑定評価書に 寿司など、駐車場を併設した飲食店、食料品店、衣料品店等が相当数- 33 - 存在し、また、ガソリンスタンドや2階建ての建物も少なくないようにみえる。 (イ) 標準宅地の鑑定評価書における最有効使用欄の記載等物件1ないし4の状況類似地域の標準宅地(大阪市α区ζ外)に係る、価格時点平成23年1月1日の鑑定評価書(乙26)をみると、その標 準宅地調書(4枚目)の「1.近隣地域の状況」「(34) 標準的使用」欄には、「店舗又は店舗付共同住宅等の敷地」と記載されており、「2.評価対象地(対象標準宅地)の状況」「(43) 最有効使用」欄には、「標準的使用と同じ」と記載されている。なお、価格時点平成26年1月1日の鑑定評価書(乙39)の最有効使用欄には、「中低層店舗付共同住宅地」 と記載されており、価格時点平成29年1月1日の鑑定評価書(乙43)の最有効使用欄には、「中層店舗付共同住宅地」と記載されている。 物件5及び6の状況類似地域の標準宅地(大阪市α区η)に係る、価格時点平成23年1月1日の鑑定評価書(乙27)をみると、その標準宅地調書の「1.近隣地域の状況」「(34) 標準的使用」欄には、「中層の 店舗付共同住宅等の敷地」と記載されており、「2.評価対象地(対象標準宅地)の状況」「(43) 最有効使用」欄には、「標準的使用と同じ」と記載されている。なお、価格時点平成26年1月1日の鑑定評価書(乙40)及び価格時点平成29年1月1日の鑑定評価書(乙44)には、いずれも、最有効使用欄に「中低層店舗付共同住宅地」と記載されている。 物件7の状況類似地域の標準宅地(大阪市α区θ。別紙5図面の僅かに外側にある土地で、内環状線を南に進んだ西側にある。)に係る、価格時点平成23年1月1日の鑑定評価書(乙2 載されている。 物件7の状況類似地域の標準宅地(大阪市α区θ。別紙5図面の僅かに外側にある土地で、内環状線を南に進んだ西側にある。)に係る、価格時点平成23年1月1日の鑑定評価書(乙28)をみると、その標準宅地調書の「1.近隣地域の状況」「(34) 標準的使用」欄には、「低層普通住宅又は中低層共同住宅等の敷地」と記載されており、「2.評価対象地 (対象標準宅地)の状況」「(43) 最有効使用」欄には、「標準的使用と同- 34 - じ」と記載されている。なお、物件7の状況類似地域の標準宅地は、それ以後、大阪市α区ι外(別紙5図面参照。平成23年時点の標準宅地よりも北側(物件7に近い位置)にある。)とされており、価格時点平成26年1月1日の鑑定評価書(乙41)及び価格時点平成29年1月1日の鑑定評価書(乙45)には、いずれも、最有効使用欄に「中低層店 舗付共同住宅地」と記載されている。 物件8及び9の状況類似地域の標準宅地(大阪市κ)に係る、価格時点平成23年1月1日の鑑定評価書(乙29)をみると、その標準宅地調書の「1.近隣地域の状況」「(34) 標準的使用」欄には、「路線型商業施設又は中層共同住宅等の敷地」と記載されており、「2.評価対象地(対 象標準宅地)の状況」「(43) 最有効使用」欄には、「標準的使用と同じ」と記載されている。なお、価格時点平成26年1月1日の鑑定評価書(乙42)には、最有効使用欄に「沿道商業施設の敷地」と記載されており、価格時点平成29年1月1日の鑑定評価書(乙46)には、最有効使用欄に「路線型商業施設又は中層店舗付共同住宅等の敷地」と記載されて いる。 (ウ) 標準宅地上の建築物の実容積率等平成23年ないし平成29年時点における、物件1ないし4の 効使用欄に「路線型商業施設又は中層店舗付共同住宅等の敷地」と記載されて いる。 (ウ) 標準宅地上の建築物の実容積率等平成23年ないし平成29年時点における、物件1ないし4の標準宅地の許容容積率は400%であるが、同標準宅地上の建物の実容積率は125.49%である(乙26、39、43、弁論の全趣旨)。 平成23年ないし平成29年時点における、物件5及び6の標準宅地の許容容積率は400%であるが、同標準宅地上の建物の実容積率は304.14%である(乙27、31、40、44)。 平成23年時点における、物件7の標準宅地上の建物の実容積率は、135.99%である(乙28、弁論の全趣旨)。 平成23年ないし平成29年時点における、物件8及び9の標準宅地- 35 - の許容容積率は339.01%であるが、同標準宅地上の建物の実容積率は62.68%である(乙29、32、42、46)。 本件A23土地付近に所在する地価調査の基準地(大阪市α区λ。別紙5図面参照)の許容容積率は400%であるところ、同基準地上には、平成9年から現在に至るまで、鉄骨造5階建の建物が存在している(甲 A27、28)。 (エ) 検討上記(ア)のとおり、本件A23土地付近の航空写真等をみると、平成10年から令和3年に至るまで、多少の変化はあるものの、A23に接する両側の土地のうち相当な割合が、駐車場を併設する低層の店舗や施設 など、許容容積率の上限まで利用されていない土地で占められている。 また、上記(イ)のとおり、価格時点平成23年1月1日の各標準宅地の鑑定評価書における最有効使用欄の記載をみると、「店舗又は店舗付共同住宅等の敷地」、「中層の店舗付共同住宅等の敷地」、「路線型商業施設又は中層共同住宅等 り、価格時点平成23年1月1日の各標準宅地の鑑定評価書における最有効使用欄の記載をみると、「店舗又は店舗付共同住宅等の敷地」、「中層の店舗付共同住宅等の敷地」、「路線型商業施設又は中層共同住宅等の敷地」などとされており、平成26年及び平成29 年の鑑定評価書における最有効使用欄の記載(中低層店舗付共同住宅地など)を踏まえても、平成23年当時の本件A23土地付近の標準宅地の最有効使用建物が、許容容積率を上限まで利用した建物であったとは必ずしもいえない。さらに、上記(ウ)のとおり、上記標準宅地上の建物の実容積率をみても、必ずしも実容積率を上限まで利用しているとはいえ ず、かえって、商業施設については、許容容積率をはるかに下回る実容積率にとどまっている。 以上の事情を総合すると、本件A23土地付近のA23に接する土地(別紙5図面参照)については、平成10年から平成26年まで、その最有効使用建物が許容容積率を上限まで利用した建物であったとは必 ずしもいえず、このことは、本件A23土地についても同様である。そ- 36 - うすると、平成10年から平成26年までの本件A23土地が、「容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当することが明らかとはいい難く、本件A23土地に本件補正を行わなかったことにつき、それが評価基準の定めに反する(客観的に違法である)かどうかはともかく、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価 し得るような明らかな判断の誤りがあるとはいえない。 ウ本件A24土地(平成15年から平成26年まで)について(ア) 本件A24土地付近の航空写真等平成10年に撮影された航空写真(乙19)をみると、不鮮明で必ずしも明確ではないが、A27に接する両側の土地のう (平成15年から平成26年まで)について(ア) 本件A24土地付近の航空写真等平成10年に撮影された航空写真(乙19)をみると、不鮮明で必ずしも明確ではないが、A27に接する両側の土地のうち、おおよそ半分 程度は、許容容積率の上限まで利用されていない土地(乙19の2のピンク色で塗りつぶされている土地)であることがうかがわれる。 平成19年に撮影された航空写真(甲A18)をみると、A27に接する両側の土地には、中高層の建物が多いようにみえるが、物件10(本件土地12~16)のように、低層の店舗や駐車場等も散見される。 平成24年に撮影された航空写真(乙25の5枚目)をみると、A27に接する両側の土地のうち、数割程度は、許容容積率の上限まで利用されていない土地(赤い枠線で囲まれている土地)であることがうかがわれる。 平成29年に撮影された航空写真(甲A19)をみると、平成19年 当時の航空写真と比較してあまり変化はなく、A27に接する両側の土地には、中高層の建物が多いようにみえるが、物件10(本件土地12~16)のように、低層の店舗や駐車場等も散見される。 令和4年に撮影された本件A24土地付近の写真(本件意見書の現況写真)をみると、中高層の建物が比較的多くみられるが、セブンイレブ ンやジャパン(物件10の建物)など、駐車場を併設した低層の店舗等- 37 - も散見される。 (イ) 基準地上の建物本件A24土地の状況類似土地の標準宅地は、地価調査の基準地(大阪市δ区μ)と同一であり、同基準地上には、鉄骨造8階建の建物が存在している(乙30)。 (ウ) 検討上記(ア)のとおり、本件A24土地付近の航空写真等をみると、平成10年当時は、A27に接する両側の土地のうちおお 準地上には、鉄骨造8階建の建物が存在している(乙30)。 (ウ) 検討上記(ア)のとおり、本件A24土地付近の航空写真等をみると、平成10年当時は、A27に接する両側の土地のうちおおよそ半分程度は、許容容積率の上限まで利用されていないものとみられ、また、平成19年や平成29年頃においても、本件A24土地自体が低層の商業施設とし て使用されているほか、低層の店舗や駐車場も散見される。これらの一連の航空写真等に加えて、本件A24土地付近の指定容積率はA27との境から25m内は600%(その外側は300%)と高いことも考慮すると、平成15年から平成26年までの間、本件A24土地付近の地域は、必ずしも許容容積率の上限まで利用されているような土地ばかり ではなく、低層の店舗等の敷地や駐車場として利用されている土地も相当程度存在したものと推認される。 そうすると、上記(イ)のとおり、価格調査の基準地上の建物(8階建て)が許容容積率の上限(600%)近くまで利用した建物であると推認されることを考慮しても、本件A24土地付近のA27に接する土地(別 紙6図面参照)については、平成15年から平成26年まで、その最有効使用建物が許容容積率を上限まで利用した建物であったとは必ずしもいえず、このことは、本件A24土地についても同様である。そうすると、平成15年から平成26年までの本件A24土地が、「容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当する ことが明らかとはいい難く、本件A24土地に本件補正を行わなかった- 38 - ことにつき、それが評価基準の定めに反する(客観的に違法である)かどうかはともかく、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価し得るような明らかな判断の誤りがあ を行わなかった- 38 - ことにつき、それが評価基準の定めに反する(客観的に違法である)かどうかはともかく、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価し得るような明らかな判断の誤りがあるとはいえない。 エ原告らの主張について(ア) 本件意見書に基づく主張について 本件意見書は、本件A23土地については平成9年当時から、本件A24土地については平成15年当時から、いずれも最有効使用が「高層の店舗付共同住宅の敷地」であるとしている。そして、原告らは、本件意見書に依拠して、本件各年度の本件各土地につき「価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当する旨主張する。 しかし、仮に本件意見書の上記意見が客観的に正しいとしても、航空写真等からうかがわれる本件各土地やその周辺の利用状況等に照らせば、本件各土地の最有効使用建物が高層の店舗付共同住宅(許容容積率を上限まで利用した建物)であることが明らかとはいえず、本件補正を行わなかったことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと 評価し得るような明らかな誤りがあるとはいえない。 念のため、本件意見書の信用性について検討するに、本件意見書は、原告らの依頼により本件訴訟係属中に作成されたものであって、一般的類型的にみて信用性が高いものとはいい難い。また、本件意見書が用いる最有効使用の判定方法や調査対象が、不動産鑑定評価において一般的 で適切なものであるのか判然としない上、その内容においても、例えば、平成9年以降に建築された数は、物件5及び6についてはマンション1件、店舗10件であり、物件8及び9についてはマンション6件、店舗11件であって、明らかに店舗の方が多いにもかかわらず、典型的な需要者 成9年以降に建築された数は、物件5及び6についてはマンション1件、店舗10件であり、物件8及び9についてはマンション6件、店舗11件であって、明らかに店舗の方が多いにもかかわらず、典型的な需要者が「中堅のマンションデベロッパー等」であると結論付けられてい るのも、客観的な根拠に乏しいように見受けられ、全体としての信用性- 39 - にも疑念を抱かざるを得ない。 したがって、本件各土地の最有効使用を「高層の店舗付共同住宅の敷地」とする本件意見書は、その信用性に疑問があるといわざるを得ないし、仮に正しいとしても結論を左右するものではないから、本件意見書に基づく原告らの主張は、採用することができない。 (イ) 本件各土地の周辺の状況に大きな変化がない旨の主張について原告らは、時点の異なる航空写真の比較や、鑑定評価書の最有効使用欄の比較により、本件各土地の周辺の状況は大きく変化しておらず、本件各年度と本件補正がされた年度との間で、本件補正を行うべきか否かに関する事実や状況等にさしたる変化はないなどと主張する。 しかし、本件各土地に係る前記認定事実からすれば、そもそも令和3年ないし令和4年の時点においてもなお、本件各土地の周辺には低層利用されている土地が相当程度存在することがうかがわれるのであって、本件各土地につき「容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当することが明らかとはいい難い。したがって、 後日本件補正が行われることになった年度(平成26年度以降又は平成27年度以降)についても、当初本件補正をしなかったことにつき、それが客観的に違法であるかどうかはともかく、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価し得るような明らかな判断の誤りがある 又は平成27年度以降)についても、当初本件補正をしなかったことにつき、それが客観的に違法であるかどうかはともかく、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価し得るような明らかな判断の誤りがあるとはいえないというべきであり、本件各土地の周辺の状況に大きな変化がな いことは、本件の結論を左右するものではない。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) 基準地や公示地の利用状況に基づく主張について原告らは、本件A23土地付近の基準地や本件A24土地付近の公示地に、許容容積率を最大限使用したとみられる建物が存在することを指 摘し、本件各土地についても、許容容積率を上限まで利用することが最- 40 - 有効使用である旨主張する。 しかし、基準地や公示地の使用状況が常に最有効使用と一致するとは限らない上、本件A23土地付近の標準宅地上の建物はいずれも許容容積率の上限まで利用していないし、本件A24土地付近の公示地は、A27と接していない土地であって本件A24土地とは利用実態が異な るというべきであるから、原告らの上記主張は採用することができない。 (エ) その他の注意義務違反に関する主張について原告らは、大阪市長の具体的な注意義務の内容として、①本件要領についての確認を行う義務(変更や改正があればそれを適切に確認する義務を含む。)、②固定資産評価の見直し対象地を適切に特定すべき義務、 ③課税対象地に対する調査(実地調査)義務(地方税法408条参照)、④本件要領を適用して固定資産税額の算出を適切に行う義務を主張し、その評価根拠事実として様々な事実を指摘して、大阪市長はこれらの義務に違反した旨主張する。 しかし、前述のとおり、本件の証拠関係の下で 件要領を適用して固定資産税額の算出を適切に行う義務を主張し、その評価根拠事実として様々な事実を指摘して、大阪市長はこれらの義務に違反した旨主張する。 しかし、前述のとおり、本件の証拠関係の下では、本件各年度の本件 各土地につき、「容積率混在という価格事情が特に著しい影響があると認められる場合」に該当することが明らかとはいい難く、大阪市長が本件各年度において本件各土地につき本件補正を行わなかったことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したと評価し得るような明らかな判断の誤りがあるとはいえない。したがって、上記①ないし④の義 務違反があるとは認められないか、損害との因果関係(上記の義務違反がなければ本件補正が実施されていたという条件関係ないし因果関係)が認められないから、詳細に検討するまでもなく、原告らの上記主張は採用することができない。 また、原告らは、本件各土地が所在する区において本件補正がほとん ど適用されていなかったこと(乙38)は、本件補正の適用を失念して- 41 - いたとしか考えられないなどと主張する。しかし、大阪市長が一部の地域において本件補正の適用を失念していたかどうかは、上記の点を踏まえてもなお証拠上明らかでない。また、仮にそのような事情があったとしても、注意義務を尽くしてもなお本件補正がされないことも十分想定され、損害との因果関係があるともいえないから、いずれにしても、原 告らの上記主張は採用することができない。 2 まとめ以上によれば、大阪市長が本件各賦課決定をするに当たり、本件各土地について本件補正の定めを適用しなかったことに明らかな誤りがあるとはいえず、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各賦課決定を行 ったと認め得るような事情があ たり、本件各土地について本件補正の定めを適用しなかったことに明らかな誤りがあるとはいえず、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各賦課決定を行 ったと認め得るような事情があるとは認められないから、本件各賦課決定は国家賠償法上違法とはいえない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、 主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 裁判官新宮智之 - 42 - 裁判官関尭熙(別紙1~6 省略)
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