昭和26(う)2164 麻薬取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和26年9月26日 東京高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴は、いずれもこれを棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は本判決の末尾に添附した、被告人Aの弁護人塩原時三郎、被 告人Bの弁護人堀込俊夫、被告

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判決文本文2,595 文字)

主文 本件各控訴は、いずれもこれを棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は本判決の末尾に添附した、被告人Aの弁護人塩原時三郎、被告人Bの弁護人堀込俊夫、被告人Cの弁護人斎藤元秀各作成名義の各控訴趣意書記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次に示すとおりである。 一、 被告人Bの弁護人堀込俊夫の論旨第一点について、所論は原判決は事実の誤認があると主帳するものである。 訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠、すなわち司法巡査作成のDの参考人供述調書原審第三回公判調書中の証人E、同Fの各供述記載並びに被告人等の原審公判廷における各供述等を綜合すると、被告人Aは韓国人Gから本件麻薬の売却方の依頼を受けてこれを承諾し、被告人Bに右麻薬の買手を物色紹介してくれと依頼したところ、被告人Bはこれを承諾して更に原審相被告人Hに対し、同様の依頼をした結果、原審相被告人Hはこれを承諾してDに対し麻薬を売りたいという人があるから買手を世話してくれないかと依頼したところ、Dは右Hより依頼された次第を警視庁巡査部長麹町警察署勤務Eに密告したため、E巡査部長はDの協力を得てHに対し、麻薬を買いたいからと申込み、買人を装つて、昭和二十五年一月十日東京都台東区a町b番地のc号所在I社被告人C方に赴き、他方註文を受けたHはE巡査部長等を真実の買人であると誤信し、被告人Bに連絡し、被告人Bは被告人Aに連絡した結果被告人AがB、Hと共に本件麻薬約百瓦を持参して右I社に到り、E巡査部長等と会見し、麻薬売買の交渉を始めたところを検挙されたものであることは所論のとおりである。 所論は本件被告人等は右のようにE巡査部長にだまされて本件麻薬を運搬したものである。被告人等の所為すなわち運搬は総てE巡査部長の誘導、欺罔による誘発 検挙されたものであることは所論のとおりである。 所論は本件被告人等は右のようにE巡査部長にだまされて本件麻薬を運搬したものである。被告人等の所為すなわち運搬は総てE巡査部長の誘導、欺罔による誘発であつて、麻薬所持者Gの所持をE巡査部長の所持に移行せしめたに止り、法に規定する独立の所持とは云い得ないものである。所持が罰せられる理由は一般的流通状態におかれる危険があるからであるが、本件の場合はその危険がないのであつて必然的にE巡査部長の手に渡る決定的運命にあつたものであると主張するけれども、<要旨第一>(一) 麻薬取締法が麻薬の輸出入、製造、販売、研究、施用の全部を政府の統制下におき、麻薬の不正所持又は取</要旨第一>引を一切禁じようとしている法意等より考慮すれば、同法において認められる場合以外の麻薬の所持はすべて不法所持として禁止され処罰を免れないものであると解するを相当し、所論のように所持が処罰されるには一般的流通状態におかれる危険が存在することを必要とするものとは認められない。従つて被告人島山和夫等の本件所為を麻薬を不法に所持したものとして処断した原判決は正当であつて、原判決には所論のような違法は存しない。 (二) 仮りに所論のように麻薬の所持が処罰されるには一般的流通状態におかれる危険が存在することを必要とするものとしても原判決の挙示した各証拠を綜合すると被告人A、同B及び原審相被告人HはいずれもDがE巡査部長に密告する以前に本件麻薬の買受人を物色して麻薬を売却しようと奔走していた事実を認めることができるからもし本件の検挙が遲れたら本件麻薬が一般的流通状態におかれる危険が多分にあつたことが窺はれる。従つて偶本件が前記密告によつて麻薬が警察職員の手に渡つたからと云つて被告人等において麻薬不法所持の責任がないものとは認められ ら本件麻薬が一般的流通状態におかれる危険が多分にあつたことが窺はれる。従つて偶本件が前記密告によつて麻薬が警察職員の手に渡つたからと云つて被告人等において麻薬不法所持の責任がないものとは認められない。論旨はいずれの点から見ても理由がない。 一、 同第二点について、所論は本件被告人等は前記の如くE巡査部長に「だまされて」麻薬約百瓦を所持者Gの所持からE巡査部長の所持に移転したものであるが、同巡査部長等は被告人等をだまして斯る行為を為さしめそれを目して麻薬所持者なりとして検挙し遂に原審において有罪の判決を受けた次第であつて、被告人等は方便に使用された上「わな」にかけられたのである。かかる警察官の措置は明かに人権蹂躙であつて憲法第十三条に規定する「自由権」の保障に違反するものであるから本件被告人等の所為は処罰すべき限りでないと信ずる。しかるに被告人等に対し有罪の言渡をした原判決は法令の適用に誤があるというにある。 <要旨第二>よつて審按するに本件被告人等が検挙されるに至つた経過は前記のとおりであるが、原判決の挙示した各証</要旨第二>拠を綜合すると被告人A、同B及び原審相被告人Hは、DがE巡査部長に密告する以前に、既にいずれも本件麻薬の買受人の物色につとめ、買受人に交付し代金を受領する意図であつたことが窺知されるのみならず、本件はDの密告に因つてE巡査部長等が恰も真実の麻薬買受人であるかのように装つて被告人等と売買についての交渉をすすめて被告人等を逮捕したものであるけれども、被告人等としては同巡査部長等を警察官であるとは知らず、普通一般人に売るつもりで麻薬を所持して行つたものであることが明らかである。本件において警察職員が使つたトリツクは単に警察職員たる身分を隠して麻薬を買い受けたいと申出でただけであるから、被告人等にもし売却する意思 るつもりで麻薬を所持して行つたものであることが明らかである。本件において警察職員が使つたトリツクは単に警察職員たる身分を隠して麻薬を買い受けたいと申出でただけであるから、被告人等にもし売却する意思がないならば、自由にこれを拒絶して犯行を避けられるのであるから本件の場合警察職員の執つた手段を目して憲法第十三条に規定する自由権の保障に違反するものとは認められない。されば被告人等に麻薬不法所持の責任を認めて有罪の言渡をした原判決には所論のような違法は存しない。論旨は理由がない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事大塚今比古判事早野儀三郎中野次雄)

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