主文 一原告が被告に対し、労働契約上の権利を有することを確認する。二被告は原告に対し、金一七二万六、二二四円及び内金五〇万円に対する昭和四五年一二月一七日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員並びに昭和四九年二月一日以降本判決確定に至るまで毎月二五日限り、月額金三万二、一〇四円の割合による金員を支払え。三原告の請求のうち、本判決確定の日の翌日から毎月二五日限り月額金三万三、五〇〇円の割合による金員の支払を求める部分は、これを却下する。四原告のその余の請求を棄却する。五訴訟費用は被告の負担とする。六この判決は、主文二項に限り、仮に執行することができる。事実 第一当事者の求めた裁判一原告 1 主文第一項と同旨。2 被告は原告に対し、金一七八万一、〇三二円及び内金五〇万円に対する昭和四五年一二月一七日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員並びに昭和四九年二月一日以降毎月二五日限り、金三万三、五〇〇円を支払え。3 主文第五項と同旨。との判決並びに第2項につき仮執行の宣言。二被告 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決。第二当事者の主張一原告の請求原因 1 当事者(一) 被告は、肩書地に本社を設け、横浜市<以下略>所在ソフトウエア工場他の工場を有する株式会社である。(二) 原告は、昭和二六年(一九五一年)一一月二四日愛知県西尾市<以下略>にて、父A(日本名B)母C(日本名D)の間に生れ育つたいわゆる在日朝鮮人である。原告は、昭和三三年四月西尾市立中畑小学校に入学し、同三九年三月同校を卒業し、同年四月西尾市立平坂中学校に入学し、同四二年三月同校を卒業し、同年四月愛知県立碧南高等学校に入学し、同四五年三月同校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社 小学校に入学し、同三九年三月同校を卒業し、同年四月西尾市立平坂中学校に入学し、同四二年三月同校を卒業し、同年四月愛知県立碧南高等学校に入学し、同四五年三月同校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社津田鈑に入社したが、同月同社を退社し、同年四月に訴外株式会社ヒカリ製作所に入社した。 し、同四二年三月同校を卒業し、同年四月愛知県立碧南高等学校に入学し、同四五年三月同校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社 小学校に入学し、同三九年三月同校を卒業し、同年四月西尾市立平坂中学校に入学し、同四二年三月同校を卒業し、同年四月愛知県立碧南高等学校に入学し、同四五年三月同校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社津田鈑に入社したが、同月同社を退社し、同年四月に訴外株式会社ヒカリ製作所に入社した。2 採用決定に至るまでの経緯(一) 原告は、右株式会社ヒカリ製作所に在勤中の昭和四五年八月末頃、同月一九日付朝日新聞名古屋版朝刊の広告欄を見て被告がソフトウエア工場従業員を募集していることを知り、これに応募した。(二) 原告は、同月二三日被告会社名古屋営業所において、被告会社採用試験(筆記試験、面接試験)を受験したところ、その結果被告は原告を採用することに決定し、同年九月二日付で原告を被告会社従業員に採用する旨記載した採用通知書を原告宛に発送し、右通知書は同月四日原告に到達した。また被告は原告に対し電話によつても採用する旨通知した。そこで原告は同月一五日限り右ヒカリ製作所を退職した。3 労働契約の成立(一) 右事実からすると、被告が新聞広告を掲載したことは労働契約の申込の誘因であり、原告がこれに応募して昭和四五年八月二三日に被告会社の従業員採用試験を受験したことは原告から被告に対する労働契約締結の申込であり、さらに被告が原告に対し同年九月二日付で採用通知書を発信したことは右申込に対する被告の承諾であつて、ここに原告、被告間の労働契約が成立したと解すべきである。けだし、右採用通知書の文言自体、赴任日、赴任場所、携行品(特に寝具)等を明定していること、採用通知書の発送と現実の就労日までの間には何らの手続が残されていないこと、厳しい採用試験を課してすでに試験の段階で受験者の能力判定に必要な資料をほとんど得ていること及び被告会社の従来の取扱慣例等を総合的に判 発送と現実の就労日までの間には何らの手続が残されていないこと、厳しい採用試験を課してすでに試験の段階で受験者の能力判定に必要な資料をほとんど得ていること及び被告会社の従来の取扱慣例等を総合的に判断するならば、右採用通知書を発送した段階において、原告、被告間に労働契約が締結されたと見るのが合理的だからである。(二) ところが被告は、原告に対する採用内定を取消したとして、原告の就労を拒否している。 判 発送と現実の就労日までの間には何らの手続が残されていないこと、厳しい採用試験を課してすでに試験の段階で受験者の能力判定に必要な資料をほとんど得ていること及び被告会社の従来の取扱慣例等を総合的に判断するならば、右採用通知書を発送した段階において、原告、被告間に労働契約が締結されたと見るのが合理的だからである。(二) ところが被告は、原告に対する採用内定を取消したとして、原告の就労を拒否している。4 賃金請求権(一) 所員としての地位原告は、被告会社の所員(正社員)として採用されたものである。すなわち、被告は原告との労働契約締結に当つて、雇傭期間ないしは臨時員であるとの点については、原告に対しては明示していないのであるから、右契約は期間の定めのないものであり、そうだとすれば原告は被告会社において所員としての地位を有するものである。仮に被告が臨時員として雇入れをなすとの意思を有していたとしても、その点については何ら原告に表示していないのであるから、民法九三条によつて同様の結論になる。(二) 賃金額以上のとおり、原告は被告に対し、労働契約上の権利を有し、所員としての賃金請求権を有するものであるから、被告から賃金として、昭和四五年一〇月以降同四六年三月まで毎月金三万〇、一二〇円、小計金一八万〇、七二〇円昭和四六年四月以降同四七年三月まで、毎月金三万一、四七二円、小計金三七万七、六六四円昭和四七年四月以降同四八年三月まで、毎月金三万二、三〇四円、小計金三八万七、六四八円昭和四八年四月以降同四九年一月まで、毎月金三万三、五〇〇円、小計金三三万五、〇〇〇円合計金一二八万一、〇三二円並びに同年二月一日以降毎月二五日限り金三万三、五〇〇円の支払を受ける権利を取得したものというべきである。5 民族差別による不当 万三、五〇〇円、小計金三三万五、〇〇〇円合計金一二八万一、〇三二円並びに同年二月一日以降毎月二五日限り金三万三、五〇〇円の支払を受ける権利を取得したものというべきである。5 民族差別による不当な就労拒否被告は、原告が履歴書、身上書および身上調書に虚偽の氏名、本籍等を記載したとして採用内定を取消した旨主張し、原告の就労を拒否しているが、後記のとおり被告のいう採用内定の取消は解雇にほかならないところ、右解雇は次のとおり、原告が朝鮮人であることを唯一決定的な理由とする不当な民族差別である。 毎月二五日限り金三万三、五〇〇円の支払を受ける権利を取得したものというべきである。5 民族差別による不当な就労拒否被告は、原告が履歴書、身上書および身上調書に虚偽の氏名、本籍等を記載したとして採用内定を取消した旨主張し、原告の就労を拒否しているが、後記のとおり被告のいう採用内定の取消は解雇にほかならないところ、右解雇は次のとおり、原告が朝鮮人であることを唯一決定的な理由とする不当な民族差別である。すなわち、被告の原告に対する不当な解雇処分の背景には、在日朝鮮人に対する民族差別の歴史と現実がある。この差別の実体を究明して行かない限り、本件の問題性を正しくとらえることは不可能である。以下在日朝鮮人に対して加えられている差別の実体を要約すると、(一) 在日朝鮮人の形成六〇万人を越える在日朝鮮人形成の要因は、一言にして言えば近代日本の朝鮮に対する植民地支配の結果である。一九一〇年八月日韓併合を成し遂げた日本は、土地調査事業を通じて朝鮮農民の土地を奪い、彼らが日本に渡航せざるを得ない立場に陥れ、朝鮮を日本に対する食糧供給基地とすべく一九一八年から実施された産米増殖計画は、朝鮮農村の社会的、経済的崩壊と農民層の没落に拍車をかけ、渡日者数を激増せしめる結果となつた。しかしながら、日本経済が恐慌状態に陥り、日本国内に大量の失業者が発生するようになると日本への渡航が制限され、日本経済が好況期を迎え低賃金労働力を要求するようになると日本への渡航が緩和されるというように、日本の国内事情によつて渡航の制限と緩和が反覆され、朝鮮人には一貫して渡航の自由すらほとんどない状態であつた。その後日本が本格的な戦時体制に入るに従つて労働力の不足を来し、朝鮮人労働 うように、日本の国内事情によつて渡航の制限と緩和が反覆され、朝鮮人には一貫して渡航の自由すらほとんどない状態であつた。その後日本が本格的な戦時体制に入るに従つて労働力の不足を来し、朝鮮人労働者を積極的に導入するようになり、さらに強制徴用にまで政策の変化をもたらすようになつた。すなわち、日本政府は一九三九年「国民総動員計画」を樹立し、その一翼として、日本の重要産業部門に朝鮮人労働者を動員、移入することを決定し、まさに「野犬狩り」に等しい方法で朝鮮人の日本への強制連行がなされたのである。このようにして渡航した在日朝鮮人に与えられた労働の場は低賃金、長時間重労働の最下層労働部門のみであつたことから、在日朝鮮人が人間として最低限の物的、精神的生活を営むことさえ不可能にし、このような状況の中で日本民衆の朝鮮人に対する偏見、差別意識が芽ばえ、広く深く浸透していつた。 部門に朝鮮人労働者を動員、移入することを決定し、まさに「野犬狩り」に等しい方法で朝鮮人の日本への強制連行がなされたのである。このようにして渡航した在日朝鮮人に与えられた労働の場は低賃金、長時間重労働の最下層労働部門のみであつたことから、在日朝鮮人が人間として最低限の物的、精神的生活を営むことさえ不可能にし、このような状況の中で日本民衆の朝鮮人に対する偏見、差別意識が芽ばえ、広く深く浸透していつた。そして一方では「内鮮一体」等のスローガンの下に朝鮮人からその名前を、言語を、文化を、民族性をも奪い、戦争期に行なわれた「皇民化政策」は、朝鮮人に対して、差別を前提にして日本国家の中で自己の位置づけを精神的にまで強要した。このような事態は戦後においても異ならない。日本国家は、在日朝鮮人に対して、国籍選択の自由さえ奪い、一般外国人並みの処遇すら与えず、無国籍者に等しい状態に放置し、義務のみあつて権利を享受できないようにしてその生活を圧迫し、さまざまな差別と抑圧を加え続けてきている。日本国家は朝鮮人の民族教育を弾圧し同化教育を推し進め、そして一たび社会に出るや朝鮮人を就職差別等によつて日本社会から排除しているのである。(二) 在日朝鮮人にとつての氏名在日朝鮮人と「氏名」との関係をみる場合、「本名」か「偽名」かという単なる二者択一の形式論理に解消することはできない。在日朝鮮人が 本社会から排除しているのである。(二) 在日朝鮮人にとつての氏名在日朝鮮人と「氏名」との関係をみる場合、「本名」か「偽名」かという単なる二者択一の形式論理に解消することはできない。在日朝鮮人が自己の氏名の他に「日本名」を持たされている事実は、現実に生きている一人ひとりの在日朝鮮人が、人間としての存在を真二つに分断させられていることに他ならないからである。そうした事柄の端的な表現として「二つの氏名」がある限り、「二つの氏名」を生み出し強要し続けてきた歴史過程や、現在この「二つの氏名」が負わされている社会的な役割、そして何よりも、この役割が在日朝鮮人の人格形成に与える致命的な傷、さらにこのような傷を与えながらも全く痛みを覚えない日本人そのものの問題を明らかにしない限り、在日朝鮮人にとつての「氏名」が持つ意味は理解できない。日韓併合後、朝鮮が日本の大陸兵站基地の様相を呈し、朝鮮人を「皇国臣民」として動員することが目論まれ始めると、朝鮮人を法的義務においてのみ日本政府の統治下におく「内地融和」政策が開始された。 そして何よりも、この役割が在日朝鮮人の人格形成に与える致命的な傷、さらにこのような傷を与えながらも全く痛みを覚えない日本人そのものの問題を明らかにしない限り、在日朝鮮人にとつての「氏名」が持つ意味は理解できない。日韓併合後、朝鮮が日本の大陸兵站基地の様相を呈し、朝鮮人を「皇国臣民」として動員することが目論まれ始めると、朝鮮人を法的義務においてのみ日本政府の統治下におく「内地融和」政策が開始された。これは国籍を一方的に日本籍にするのみならず、その姓名をも日本式に改めることを強要し(「創氏改名政策」)、さらにはその精神をも「皇国臣民」化しようとするものであつた。ここにおいて、朝鮮人は朝鮮人たる人格の一切を剥奪されることになり、その大きな武器とされたのが、「内地」渡航不許可というような罰則をもつてなされた「創氏改名政策」であり、在日朝鮮人の二つの「氏名」もここに端を発する。そして戦前、戦中を通じて日本社会のあらゆる領域で拡大再生産された「日本名」の強要は、戦後も依然として温存され続け、現在では非常に陰湿な形をとつて、差別のための一つの武器にまでなつている。すなわち、「日本名」を使わず「日本人らしく」振舞わない朝鮮人を日本社会 た「日本名」の強要は、戦後も依然として温存され続け、現在では非常に陰湿な形をとつて、差別のための一つの武器にまでなつている。すなわち、「日本名」を使わず「日本人らしく」振舞わない朝鮮人を日本社会は一切拒絶し、受け入れた者についても、主要生産部門からは排除し、スクラツプ業や単純肉体労働者としてしか認めないというように、「日本名」の使用を差別のための踏絵として在日朝鮮人に強要している。このような現実の中で、ほとんどの在日朝鮮人の親は、自らの子供の生活を思えばその子供に「日本名」をつけざるを得ないという苦境に直面している。右のとおり、在日朝鮮人における「日本名」は、自ら意図して積極的に選びとつたものではなく、日本社会が一方的に強制したものに他ならない。「日本名」を用いなければその存在を認めないという日本社会の論理は、裏返せば「日本名」こそその存在の証しということになり、「日本名」は単なる通称というような域を逸脱して、在日朝鮮人の存在をさし示す呼称としての役割を日本社会自らによつて負わされているのである。(三) 在日朝鮮人における本籍在日朝鮮人は外国人であるから、日本国に本籍地がないのは当然である。 く、日本社会が一方的に強制したものに他ならない。「日本名」を用いなければその存在を認めないという日本社会の論理は、裏返せば「日本名」こそその存在の証しということになり、「日本名」は単なる通称というような域を逸脱して、在日朝鮮人の存在をさし示す呼称としての役割を日本社会自らによつて負わされているのである。(三) 在日朝鮮人における本籍在日朝鮮人は外国人であるから、日本国に本籍地がないのは当然である。「本籍」とは日本国戸籍法における法概念であり、その言葉が意味をもつのは、日本に本籍地を有する日本国民についてのみである。在日朝鮮人にとつて、外国人登録原票の記載事項が日本国の戸籍に相当するようにも見做されるが、外国人登録原票の記載事項はその内容からも明らかなとおり元来短期の旅行者用のものであつて、長期滞留者なかんずく在日朝鮮人のような人々にとつて必要な事項は網羅されていない。しかも外国人登録原票には、「国籍」「出生地」欄はあつても、「本籍」欄は存在していない。ともかく日常的な有形無形の在日朝鮮人に対する差別は、氏名とともにその国籍、戸 要な事項は網羅されていない。しかも外国人登録原票には、「国籍」「出生地」欄はあつても、「本籍」欄は存在していない。ともかく日常的な有形無形の在日朝鮮人に対する差別は、氏名とともにその国籍、戸籍が判明した時に最も露骨にあらわれる。日本社会の朝鮮人に対する差別が厳存する現実にあつて、就職の際要求される「戸籍謄本」は、在日朝鮮人に対する差別の武器として使われているのである。(四) 在日朝鮮人にとつての教育日本社会は、一方で朝鮮人を朝鮮人たらしめる民族教育を弾圧すると同時に、「同化」という徹底した「日本人化」を教育のなかで行なつている。戦前の「皇民化」教育の歴史の中で、朝鮮人は日韓併合以来「同化」教育によつて「日本帝国臣民」として生きるべく強要され続け、太平洋戦争の拡大とともに「日本帝国臣民」として直接戦争に組み込まれていつた。それでは「内鮮一体」のスローガンの下で朝鮮人は日本人と平等であつたかといえばそうではなく、就職をはじめ賃金その他ありとあらゆる点で徹底した差別が行なわれていたのである。戦後における「同化」教育もこの延長線上にある。一面には、戦後続出した民族学校に対し一九四九年の団体等規正令とともに閉鎖の命令を下し、日韓条約以後も朝鮮人の日本人学校入学は認めるが、朝鮮人を朝鮮人たらしめる民族学校は各種学校としても認めないという民族教育に対する弾圧があり、他面には、日本人学校にいる一〇万人の朝鮮人子弟を日本人子弟と同じに取り扱うという新たな「同化」教育がある。 なわれていたのである。戦後における「同化」教育もこの延長線上にある。一面には、戦後続出した民族学校に対し一九四九年の団体等規正令とともに閉鎖の命令を下し、日韓条約以後も朝鮮人の日本人学校入学は認めるが、朝鮮人を朝鮮人たらしめる民族学校は各種学校としても認めないという民族教育に対する弾圧があり、他面には、日本人学校にいる一〇万人の朝鮮人子弟を日本人子弟と同じに取り扱うという新たな「同化」教育がある。在日朝鮮人は、学校教育において「日本人化」され、社会では朝鮮人であるということで差別される。前者は民族性の剥奪により朝鮮人の人間性を蝕むものであり、後者は生活のうえでの人間としての基本的な権利を剥奪するものであり、両者は深く結びついているのである。(五) 在日朝鮮人 うことで差別される。前者は民族性の剥奪により朝鮮人の人間性を蝕むものであり、後者は生活のうえでの人間としての基本的な権利を剥奪するものであり、両者は深く結びついているのである。(五) 在日朝鮮人にとつての就職日本社会は在日朝鮮人を拒み、さまざまな差別を加えている。なかんずく就職差別の問題は、生活手段を剥奪するという点で、在日朝鮮人が日本社会で生活していくうえで、致命的な困難をもたらしている。また、この就職における差別が戦前から続く在日朝鮮人の経済的貧困を生み出し、この経済的貧困が多くの日本人の朝鮮人に対する蔑視感覚、差別意識を生み出す挺子になつているのである。前記(一)において述べたとおり、戦前の在日朝鮮人の職業は最下層労働としての産業労働か、産業労働予備軍としての失業的労働であつた。ところが敗戦にともない麻痺状態の産業界と未曾有の日本人失業者の前に、純粋な筋肉労働のみの未熟練労働力である朝鮮人労働者は、どんな下層労働にも割込む余地はなかつた。そして死活の道として生まれたのが、小売商や闇であつた。日本の一切の職場から追い出された在日朝鮮人は、小生産か、小売商か、闇をやるか、その種の同胞経営に雇われるか途がなかつた。その後日本経済の立ち直りとともに闇のような浮草的職業は駆逐されていつたが、敗戦時の在日朝鮮人の生活を支えた、零細企業の経営か又はその種の同胞のもとへの就職という形は、現在に至るまで一つの具体的性格として残されている。在日朝鮮人にとつては、日本の企業に就職差別が存在することは常識である。日本の企業に朝鮮人として就職しようとした在日朝鮮人は、そのほとんどが就職差別の経験を持つているからである。 かつた。その後日本経済の立ち直りとともに闇のような浮草的職業は駆逐されていつたが、敗戦時の在日朝鮮人の生活を支えた、零細企業の経営か又はその種の同胞のもとへの就職という形は、現在に至るまで一つの具体的性格として残されている。在日朝鮮人にとつては、日本の企業に就職差別が存在することは常識である。日本の企業に朝鮮人として就職しようとした在日朝鮮人は、そのほとんどが就職差別の経験を持つているからである。朝鮮人であることを明らかにして日本の企業に入社している朝鮮人も、会社や仕事においては、そのほとんどが「日本名」を使わざるを得な た在日朝鮮人は、そのほとんどが就職差別の経験を持つているからである。朝鮮人であることを明らかにして日本の企業に入社している朝鮮人も、会社や仕事においては、そのほとんどが「日本名」を使わざるを得ない状況にある。このように在日朝鮮人に対し、日本社会は、戦前、戦中、戦後を通じ、彼らが朝鮮人として生きることのできないような生活を強い続けてきているのである。(六) 原告Eについて原告は、前記1の(二)のとおり、日本で生まれ、日本からまだ一度も出たことがない在日朝鮮人である。原告は、朝鮮人であるにもかかわらず、「日本人」のように育てられ、母国語のみならず、自分の名前の読み方や、また、祖国の歴史や、在日朝鮮人が形成されるに至つた朝鮮と日本の歴史的関係を正しく識る機会がなく、このような中で日本人と同様に小学校、中学校、高等学校生活を送つていつた。高校三年の冬、友人がすべて就職先の決定した中で、原告はひとり進学か就職か迷つていた。進学の実現に希望があつたからではない。原告は在日朝鮮人に対する就職差別の現実を知るがゆえに、多数の就職先からの求人票を見ても応募することができなかつたのである。担任教師の紹介によつて原告は株式会社津田鈑に就職した。商業科出身、珠算三級、簿記一級の原告は、その意に反しプレス工の仕事を与えられ全く希望のない生活を続けていた。こんな折、株式会社ヒカリ製作所で経理用員が不足していることを聞き、同社に入社した。しかし小企業であるヒカリ製作所では、単純な事務作業しか与えられず、自らの能力を生かすことはできなかつた。将来性のない小企業での勤務に耐えられず常に既得の能力を生かしたいという希望を抱いていた原告は、その時たまたま新聞広告によつて被告会社の従業員募集を知つたのである。 ス工の仕事を与えられ全く希望のない生活を続けていた。こんな折、株式会社ヒカリ製作所で経理用員が不足していることを聞き、同社に入社した。しかし小企業であるヒカリ製作所では、単純な事務作業しか与えられず、自らの能力を生かすことはできなかつた。将来性のない小企業での勤務に耐えられず常に既得の能力を生かしたいという希望を抱いていた原告は、その時たまたま新聞広告によつて被告会社の従業員募集を知つたのである。これまでの原告の生活は、常に日本社会の差別に苦しみながら に耐えられず常に既得の能力を生かしたいという希望を抱いていた原告は、その時たまたま新聞広告によつて被告会社の従業員募集を知つたのである。これまでの原告の生活は、常に日本社会の差別に苦しみながら、新たな人間関係に移る度ごとに、朝鮮人という原告にとつての秘密を守るための努力を続け、公私からもたらされるその暴露への不安におびえることの繰り返しであつた。6 慰謝料(一) 被告は、昭和四五年九月一五日、原告に対し、先に採用通知書を発送しているにもかかわらず、原告が在日朝鮮人であることを知るや突如として「あなたの採用通知は保留にしておいてくれ。」と言い、さらに同月一七日「やつぱりだめです。当社では一般外国人はやとわない方針だ。あなたが最初から本当のことを書いていたらこんなことにならなかつた。」と申し向けた。(二) 憲法一四条及び労働基準法三条の趣旨に照し、被告会社は、原告をはじめとする在日朝鮮人が入社することをその国籍を理由としては拒否できないし、又一たび成立した労働関係から排除することは許されない。ところで、被告会社の前記行為は、原告が朝鮮人であつて日本に国籍がないことを唯一の理由とするものであり、朝鮮民族であることによつて差別した行為である。このことは、原告が被告会社に事実を打ち明けた直後に解雇されたこと、右九月一七日被告会社F主任が「一般外国人はやとわないことになつている。」と述べたこと、同日同人が原告の母校碧南高校に電話をかけ、原告が本当に朝鮮人かどうか確認していること等から明白である。そうであるとすれば、被告の右行為は前記法規範の下では違法である。(三) 原告は、在日朝鮮人であることを唯一の理由として被告会社から排除され、労働者としての生活基盤を奪われたことにより、多大なる精神的苦痛を蒙つた。右苦痛は金銭に置き換えるならば少 外国人はやとわないことになつている。」と述べたこと、同日同人が原告の母校碧南高校に電話をかけ、原告が本当に朝鮮人かどうか確認していること等から明白である。そうであるとすれば、被告の右行為は前記法規範の下では違法である。(三) 原告は、在日朝鮮人であることを唯一の理由として被告会社から排除され、労働者としての生活基盤を奪われたことにより、多大なる精神的苦痛を蒙つた。右苦痛は金銭に置き換えるならば少 は違法である。(三) 原告は、在日朝鮮人であることを唯一の理由として被告会社から排除され、労働者としての生活基盤を奪われたことにより、多大なる精神的苦痛を蒙つた。右苦痛は金銭に置き換えるならば少なくとも金五〇万円に相当する。7 結論従つて、原告は被告に対し、原告が労働契約上の権利を有することの確認を求め、さらに前記昭和四五年一〇月以降同四九年一月までの賃金金一二八万一、〇三二円及び慰謝料金五〇万円の合計金一七八万一、〇三二円及び内金五〇万円に対する昭和四五年一二月一七日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員並びに昭和四九年二月一日以降毎月二五日限り金三万三、五〇〇円の賃金の支払を求める。二請求原因に対する認否及び反論 1 請求原因第1項(一)の事実は認める。同(二)の事実のうち、原告が在日朝鮮人であることは認めるが、その余の事実は不知。2 同第2項(一)の中、被告が原告主張のような新聞広告を出したこと及び原告が被告の従業員募集に応募したことは認めるが、その余の事実は不知。3 同第2項(二)の中、原告が被告会社の採用試験を受験して合格したこと、被告が原告宛に昭和四五年九月二日付採用通知書と表題のある書面を発送したこと及び右通知書には原告主張の如き記載がなされていることは認めるが、右通知書が原告の許に同月四日に到達したこと及び原告が同月一五日ヒカリ製作所を退職したことは不知、被告が原告に電話で採用通知をなしたとの主張は否認する。4 同第3項(一)は争う。5 同第3項(二)の事実は認める。6 同第4項の各事実は否認する。7 同第5項の事実のうち、被告が採用内定の取消を主張し原告の就労を拒否していることを認め、被告が原告を朝鮮人であることを唯一決定的な理由として採用内定を取消したとの点は否認、その余の事実は不知。8 同第6項 の事実のうち、被告が採用内定の取消を主張し原告の就労を拒否していることを認め、被告が原告を朝鮮人であることを唯一決定的な理由として採用内定を取消したとの点は否認、その余の事実は不知。 否認する。7 同第5項の事実のうち、被告が採用内定の取消を主張し原告の就労を拒否していることを認め、被告が原告を朝鮮人であることを唯一決定的な理由として採用内定を取消したとの点は否認、その余の事実は不知。8 同第6項 の事実のうち、被告が採用内定の取消を主張し原告の就労を拒否していることを認め、被告が原告を朝鮮人であることを唯一決定的な理由として採用内定を取消したとの点は否認、その余の事実は不知。8 同第6項の中、昭和四五年九月一五日、被告会社ソフトウエア工場総務部勤労課主任Fが、原告に対し、採用内定の通知は保留にしておいてほしい旨伝えたこと、同月一七日右Fが原告に対し、「最初から本当のことを書いていたらこんなことにならなかつた。」と言つたことは認めるが、その余の事実は否認する。9 同第7項は争う。10 なお原告は、請求原因第3項(一)および第4項(一)において、原告・被告間で、原告が被告会社の所員とする労働契約が成立した旨主張するので、次のとおり反論する。(一) 被告会社では、臨時従業員を雇傭しようとする場合、通常は新聞広告等で募集し、応募者に対し筆記及び面接の採用試験を行なつて詮衡し、一定の者を合格者として、それらの者に対し、一定の日時、場所を指定し、会社が必要とする戸籍謄本等の書類を携行して出社するように指示する。かくして、被告会社の指示通りの書面を持つて、右指定日時、場所に出社した者について、被告会社は、採用の要件を満していれば、その者と書面により労働契約を締結することになつている。従つて、右「採用」決定並びにそれに続く採用通知書の発送がなされても、それは労働契約締結の承諾としての意思表示でなく、右の如き一連の手続の終了を以つて労働契約が成立する旨の通知であり、労働契約の予約にすぎない。なお、仮に原告主張のように採用通知書の発送をもつて労働契約が成立したと解すると、この段階で会社と原告との間で確認されているのは賃金が約二万八、〇〇〇円であること等に過ぎず、具体的な就労条件は何ら合意に達していないのであるから、まことに奇妙な労働契約と 約が成立したと解すると、この段階で会社と原告との間で確認されているのは賃金が約二万八、〇〇〇円であること等に過ぎず、具体的な就労条件は何ら合意に達していないのであるから、まことに奇妙な労働契約ということになる。さらに、被告会社における従来の例によれば、採用通知書を受け取つた者のうち約半数は指定日に出頭しないのであつて、そのため被告会社においては、指定日に出頭した者を最終的に入社の意思あるものとして取り扱うことにしているのである。 で会社と原告との間で確認されているのは賃金が約二万八、〇〇〇円であること等に過ぎず、具体的な就労条件は何ら合意に達していないのであるから、まことに奇妙な労働契約ということになる。さらに、被告会社における従来の例によれば、採用通知書を受け取つた者のうち約半数は指定日に出頭しないのであつて、そのため被告会社においては、指定日に出頭した者を最終的に入社の意思あるものとして取り扱うことにしているのである。(二) 次に本件は臨時員の採用募集である。すなわち、被告会社には基幹的労働力として、長期的人員計画に基づいて採用され、生涯雇傭が建前となつている正社員たる所員と、その時々の労働力の所要状況に応じて採用計画を立て、短期有期の契約をなして雇入れる臨時社員たる臨時員との二種の従業員が存在し、両者の間には、就業規則の適用面はもとより、労働契約の期間、賃金、賞与、退職金その他の労働条件等についても多くの相違がある。右の所員と臨時員との相違は、その採用手順の上でも多くの相違を伴なつている。前者は、その採用人員は長期人員計画に則つて本社において決定され、新規学校卒業者を対象に、学校経由によりその推薦を経るものであつて、特殊な場合を除き卒業時に採用されるのに対し、後者は、その採用人員は工場独自の必要に応じ随時各事業所において決定され、新規学校卒業者以外を対象に、一般には新聞等の広告による公募、又は職業安定所の紹介等により随時採用されるが如くである。これを本件における従業員採用の経緯についてみるに、被告会社ソフトウエア工場は、昭和四五年八月ころ臨時員を約二〇〇名採用する計画をたて、同月一九日付新聞に臨時員募集広告を掲載して募集し、右募集広告には、臨時員募集であることを示す言葉として一般的慣行的に使われている「登用制度あ 昭和四五年八月ころ臨時員を約二〇〇名採用する計画をたて、同月一九日付新聞に臨時員募集広告を掲載して募集し、右募集広告には、臨時員募集であることを示す言葉として一般的慣行的に使われている「登用制度あり」という文言で臨時員募集であることを明示した。さらに同月二三日被告会社名古屋営業所において実施された採用試験の際、午前の筆記試験の開始に先立ち、被告会社ソフトウエア工場総務部勤労課員が、右採用試験は臨時員の採用試験であり、契約期間は二ケ月である旨説明し、又原告に対する面接試験を担当した同工場総務部庶務課長も、原告に対し、同旨の説明をしている。 を示す言葉として一般的慣行的に使われている「登用制度あり」という文言で臨時員募集であることを明示した。さらに同月二三日被告会社名古屋営業所において実施された採用試験の際、午前の筆記試験の開始に先立ち、被告会社ソフトウエア工場総務部勤労課員が、右採用試験は臨時員の採用試験であり、契約期間は二ケ月である旨説明し、又原告に対する面接試験を担当した同工場総務部庶務課長も、原告に対し、同旨の説明をしている。以上のことから明らかなように、被告会社の手続上はもとより、募集広告並びに採用試験においても、期間二ケ月の臨時員募集であることを明示しているのであつて、本件従業員採用募集が臨時員の採用募集であることは疑いのないところである。なおこのことは、原告とともに右採用試験を受験し、被告会社に採用された六名の者がすべて臨時員として入社していることからも裏付けられる。三被告の主張 1 労働契約の予約取消(一) 昭和四五年八月二三日被告会社名古屋営業所における被告会社ソフトウエア工場従業員採用面接試験を担当した同工場総務部庶務課長Gは、原告が予め記入持参した市販の履歴書、身上書並びに当日筆記試験前に原告が記入した身上調書に基づき、原告に対し、その記載事項その他関連事項等について質問したが、その際現住所及び職歴については、履歴書、身上書の記載と身上調書の記載に齟齬があつたので、その場で問い質した。しかし、本籍については、履歴書に「愛知県西尾市<以下略>」と記載され、又氏名については、履歴書、身上書及び身上調書に「H」と記載されていたので、それが原告の本籍ではなく原告の両親の現住所にすぎないということ又原告の本名が「 書に「愛知県西尾市<以下略>」と記載され、又氏名については、履歴書、身上書及び身上調書に「H」と記載されていたので、それが原告の本籍ではなく原告の両親の現住所にすぎないということ又原告の本名が「E」であるということは知るに至らず、原告の本籍、氏名は右書類に記載されたとおりであると誤信したまま面接試験を終了した。なお、原告が試験当日に記載した前記身上調書の末尾には「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありません。もし、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありました場合は採用取消解雇の処置を受けても異議を申し立てません。」と明記されており、原告もこのことは充分承知していたものである。 告の本籍、氏名は右書類に記載されたとおりであると誤信したまま面接試験を終了した。なお、原告が試験当日に記載した前記身上調書の末尾には「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありません。もし、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありました場合は採用取消解雇の処置を受けても異議を申し立てません。」と明記されており、原告もこのことは充分承知していたものである。そこで被告会社は、右筆記試験並びに面接試験の結果、原告を被告会社ソフトウエア工場の従業員として採用することを内定し、同年九月二日付で通知書を原告に発送した。なお、その際、原告に戸籍謄本等の必要書類の提出を指示した。(二) その後同月一五日、原告から被告会社ソフトウエア工場へ電話で、原告は在日朝鮮人で本名はEであり、戸籍謄本はとれない旨通知してきた。そこで、被告は、面接時に問い質した事項以外にも、原告が履歴書等に事実を隠し、虚偽の記載をして応募していたことが判明したので、右Fから、同月二一日の出社は一応見合わせるよう伝えた。(三) さらに同月一七日、右Fから原告に対し、電話で、原告が本籍を故意に偽わつて応募したものであることが明白であるとともに、虚偽の記載をしたために、採用に際し会社が必要とする書類の提出ができず、結局採用の要件の充足が不可能であることが判明したので、先の採用内定を取消す旨伝えたものである。2 懲戒解雇仮に原告と被告との間の労働契約が成立しているとしても、原告は日本国戸籍法にいう本籍が 結局採用の要件の充足が不可能であることが判明したので、先の採用内定を取消す旨伝えたものである。2 懲戒解雇仮に原告と被告との間の労働契約が成立しているとしても、原告は日本国戸籍法にいう本籍がなく、従つて会社が必要とする戸籍謄本等の書類を提出することを不可能であることを熟知しながら、あたかもその本籍があるかの如く偽つて履歴書等を作成提出し、会社はこれを信じて原告との間に労働契約を締結した。さらに原告は職歴に関する身上調書の記載をも偽り、身上調書記載の株式会社ヒカリ製作所の前に株式会社津田鈑に就職していた事実をも隠蔽している点を併せ考慮すると、原告の右各所為は、被告臨時員就業規則七二条二四号にいう「経歴を詐り又は詐術を用いて雇い入れられたとき」に準ずるものとして同条二七号に該当するものであり、かつその情状は重いものといわなければならないので、被告は原告を昭和四七年三月三〇日付準備書面(同日の第九回口頭弁論期日で陳述)をもつて懲戒解雇処分に付する旨の意思表示をなした。 前に株式会社津田鈑に就職していた事実をも隠蔽している点を併せ考慮すると、原告の右各所為は、被告臨時員就業規則七二条二四号にいう「経歴を詐り又は詐術を用いて雇い入れられたとき」に準ずるものとして同条二七号に該当するものであり、かつその情状は重いものといわなければならないので、被告は原告を昭和四七年三月三〇日付準備書面(同日の第九回口頭弁論期日で陳述)をもつて懲戒解雇処分に付する旨の意思表示をなした。四被告の主張に対する認否 1 被告の主張第1項の中、原告が履歴書、身上書、身上調書を作成して被告に提出したこと、履歴書中の本籍記入欄に被告主張のとおりの記載がなされ、履歴書、身上書、身上調書の氏名欄に「H」と記載されていること、被告が採用通知書を原告に発送したこと及び右通知書に被告主張の書類を赴任時に携行すべき旨の記載があることは認めるが、その余は争う。2 同第1項(二)の中、原告が被告会社に電話をかけ戸籍謄本がとれない旨申し出たことは認めるが、その余の事実は否認する。3 同第1項(三)の中、Fが原告に採用を取消す旨伝えたことは認めるが、その余の事実は否認する。4 同第2項の中、原告がヒカリ製作所に勤務する以前に株式会社津田鈑に就職していたこと及びその旨を身上調書に 第1項(三)の中、Fが原告に採用を取消す旨伝えたことは認めるが、その余の事実は否認する。4 同第2項の中、原告がヒカリ製作所に勤務する以前に株式会社津田鈑に就職していたこと及びその旨を身上調書に記載しなかつたことは認めるが、その余は争う。五原告の主張 1 解雇無効前記のとおり、昭和四五年九月二日付採用通知書の発送をもつて、原告・被告間には労働契約が成立したというべきであるから、被告のいう原告に対する採用取消は、被告による労働契約の解約であつて、被告の原告に対する解雇と解すべきものである。しかしながら、右解雇の意思表示は以下の理由により無効なものである。(一) 原告に対する解雇は、前記のとおり、原告が在日朝鮮人であることを唯一の理由としてなされたものである。従つて右解雇は、公序良俗に反し且つ国籍ないしは社会的身分を理由として労働条件につき差別的取扱をなすものであるから労働基準法三条、民法九〇条に違反し無効である。(二) 被告は、原告が被告会社への応募に際し、本籍及び氏名を偽つたことが、本件解雇(被告の主張によれば労働契約の予約取消)の理由であると主張する。 告に対する解雇は、前記のとおり、原告が在日朝鮮人であることを唯一の理由としてなされたものである。従つて右解雇は、公序良俗に反し且つ国籍ないしは社会的身分を理由として労働条件につき差別的取扱をなすものであるから労働基準法三条、民法九〇条に違反し無効である。(二) 被告は、原告が被告会社への応募に際し、本籍及び氏名を偽つたことが、本件解雇(被告の主張によれば労働契約の予約取消)の理由であると主張する。しかし右が形式的に虚偽であるとしても、本件解雇は次の理由により無効である。(1) 在日朝鮮人が日本社会で生活を営む場合には、「日本名」及び「出生地」を氏名及び本籍として使用することは事実たる慣習となつている。従つて原告のなした本件記載も右事実たる慣習に沿つたもので、解雇事由たる虚偽とは評価し得ない。(2) 原告に対し、「朝鮮名」を氏名として記載し、本籍欄に「なし」と記載することの期待可能性がない。すなわち、前記のとおり、在日朝鮮人であるというそれだけの理由で、日本企業が差別して採用を拒否するという現実が存在する状況の下においては、在日朝鮮人に対し「朝鮮名」「本籍(あるいは本 待可能性がない。すなわち、前記のとおり、在日朝鮮人であるというそれだけの理由で、日本企業が差別して採用を拒否するという現実が存在する状況の下においては、在日朝鮮人に対し「朝鮮名」「本籍(あるいは本籍のないこと)」を申告、記載することを要求し、又はこれを期待することは公序良俗に反し許されず、又は無意味である。このことは裏を返せば、在日朝鮮人にとつては右申告、記載をなすべき法的義務はなく、右申告、記載をしなかつたからといつて解雇の対象とはなし得ない。従つて本件解雇は無効である。(三) 本件解雇は解雇権の濫用であつて無効である。被告会社は、在日朝鮮人たる原告を雇傭することによつて、職場規律が乱れるとか、能率あるいは生産性が落ちるとか、同僚労働者や会社の信用に対し影響があるとかいつた事情は一切ないし、そのようなおそれも全く存在するはずがないのに解雇したのであるから本件解雇は解雇権の濫用であつて無効といわなければならない。2 懲戒解雇無効(一) 被告の懲戒解雇の意思表示は、前記1(一)乃至(三)に述べたとおり、無効である。(二) 被告の主張する懲戒解雇事由は、被告所員就業規則五一条一〇号、一四号(原告は、所員として労働契約が成立したと主張するので、理論上臨時員就業規則七二条二四号、二七号は適用の余地はないこととなるが、右条項と同一の事項を規定したものである。 本件解雇は解雇権の濫用であつて無効といわなければならない。2 懲戒解雇無効(一) 被告の懲戒解雇の意思表示は、前記1(一)乃至(三)に述べたとおり、無効である。(二) 被告の主張する懲戒解雇事由は、被告所員就業規則五一条一〇号、一四号(原告は、所員として労働契約が成立したと主張するので、理論上臨時員就業規則七二条二四号、二七号は適用の余地はないこととなるが、右条項と同一の事項を規定したものである。)に該当しない。すなわち、懲戒理由となる経歴詐称ないし虚偽申告は、その相違した事実が使用者にとつての「重要な経歴」でなければならないのであつて、相違した事実の申告によつて採用したことが使用者に相当程度の損害を与え又は与える惧れのある具体的危険性を発生せしめたときに始めて懲戒解雇の理由とし得る、と考えなければならないところ、被告主張の本件懲戒解雇の理由は、次のとおり重要な経歴といえる に相当程度の損害を与え又は与える惧れのある具体的危険性を発生せしめたときに始めて懲戒解雇の理由とし得る、と考えなければならないところ、被告主張の本件懲戒解雇の理由は、次のとおり重要な経歴といえるものではなく、相違した事実の申告によつて原告を採用したとしても被告に前記のような損害を与え又は与える惧れのある具体的危険性を発生せしめたとはいえない。(1) 職歴について原告は、履歴書および身上調書に株式会社津田鈑勤務を記載しなかつたが、右勤務はわずか二週間という短期間であり、その業務も原告が被告会社入社にあたつて希望した職種である経理事務ではなかつたのであるから、職歴が労働力評価にかかわる問題であるとしても、原告の経理事務能力について何ら影響を及ぼさないわけであり、被告の入社試験担当者もとりたてて職歴を重要視していない発言をしているし、原告が採用されたのは一般の従業員としてであること等の事情からみると、原告の津田鈑の職歴は被告にとつて「重要な経歴」にあたらないことは明らかである。(2) 本籍について被告が詐つたという「本籍」は年令、学歴、職歴等と異なり使用者の労働者評価にとつて全く意味がないものであるばかりでなく、前記のとおり現代の日本の状況のなかにあつて被差別部落民および在日朝鮮人を企業から締め出す手段以外の何物でもない。しかも被告は一貫して、原告が在日朝鮮人であることを理由に採用を取消したものではない旨主張しているのであるから、原告が朝鮮人であることを知つていても原告を採用しないという因果関係は認められないし、被告主張の真意が原告の主張のごとく「原告が当初から在日朝鮮人であることを知つていれば採用しなかつた。 とおり現代の日本の状況のなかにあつて被差別部落民および在日朝鮮人を企業から締め出す手段以外の何物でもない。しかも被告は一貫して、原告が在日朝鮮人であることを理由に採用を取消したものではない旨主張しているのであるから、原告が朝鮮人であることを知つていても原告を採用しないという因果関係は認められないし、被告主張の真意が原告の主張のごとく「原告が当初から在日朝鮮人であることを知つていれば採用しなかつた。」というものであつたにせよ、そのような因果関係は全く不条理であり、社会的相当性を欠くものである。原告が、本籍欄に出生地を 張のごとく「原告が当初から在日朝鮮人であることを知つていれば採用しなかつた。」というものであつたにせよ、そのような因果関係は全く不条理であり、社会的相当性を欠くものである。原告が、本籍欄に出生地を記載して採用されたことによつて被告会社には損害もしくは損害発生の具体的危険性は全く生じていない。(三) また被告が、原告の本籍記載自体ないしそのような行為から窺うことのできる不信義性を懲戒解雇の理由にしているとしても、前記のとおり被告が原告に対して本籍地がないことの開示を期待することは不可能あるいは開示を要求することさえ許されないものであり、また採用決定後原告から積極的に在日朝鮮人であり戸籍謄本が取れないことを申告しており、しかも原告が本籍を秘匿しなければならない動機、理由について検討しても、前記のとおり、日本社会、日本人、日本の企業が非難すべき資格など存在しないことは明らかであり、いかなる観点からみても、原告が本籍欄に出生地を記載したことが被告会社従業員としての適格性を否定する客観的に合理的な理由とならない。したがつて、被告の懲戒解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効である。六原告の主張に対する認否 1 原告の主張第1項(一)の事実は否認する。2 同第1項(二)の中、在日朝鮮人が「日本名」及び出生地を氏名及び本籍として使用することは事実たる慣習となつていることは不知、その余は争う。3 同第1項(三)は争う。4 同第2項(一)については、右1乃至3に同じ。5 同第2項(二)の事実のうち、被告会社の臨時員就業規則と所員就業規則にその主張のような条項があることは認めるが、その余の事実は争う。第三証拠 (省略) 理由 一 (労働契約の成立) 原告、被告間の労働契約の成否について判断する。 」及び出生地を氏名及び本籍として使用することは事実たる慣習となつていることは不知、その余は争う。3 同第1項(三)は争う。4 同第2項(一)については、右1乃至3に同じ。5 同第2項(二)の事実のうち、被告会社の臨時員就業規則と所員就業規則にその主張のような条項があることは認めるが、その余の事実は争う。第三証拠 (省略) 理由 一 (労働契約の成立) 原告、被告間の労働契約の成否について判断する。1 被告が、肩書地に本社を設 うな条項があることは認めるが、その余の事実は争う。第三証拠 (省略) 理由 一 (労働契約の成立) 原告、被告間の労働契約の成否について判断する。1 被告が、肩書地に本社を設け、横浜市<以下略>所在ソフトウエア工場等を有する株式会社であり、昭和四五年八月一九日付朝日新聞名古屋版朝刊の広告欄に、被告会社ソフトウエア工場従業員募集の新聞広告を掲載したこと、原告がこれに応募し、同月二三日被告会社名古屋営業所において、筆記、面接の採用試験を受験して合格したこと、被告は原告宛に同年九月二日付で採用通知書なる書面を発送したことは、いずれも当事者間に争いがない。また成立に争いのない甲第二号証の一乃至四、同第三号証の一乃至三、乙第一号証の一、二、同第二号証の一、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第四号証、原告作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については証人G、同Fの各証言によつて真正に成立したと認められる乙第二号証の二、証人Fの証言によつて真正に成立したと認められる乙第六号証の一、同第七号証、証人G、同Fの各証言及び原告本人尋問の結果を総合すると、原告が前記採用通知書を受けるまでの経緯は次のとおりであつたことが認められる。(一) 原告は、昭和二六年(一九五一年)一一月二四日愛知県西尾市<以下略>にて、父A(日本名B)、母C(日本名D)の間に生れ、その後西尾市立中畑小学校、同平坂中学校を卒業後、昭和四五年三月愛知県立碧南高等学校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社津田鈑に入社したが、二週間ばかりで退職し、同年四月訴外株式会社ヒカリ製作所(以下「ヒカリ製作所」という。)に入社した。(二) ところが原告は、昭和四五年八月一九日付朝日新聞朝刊の前記従業員募集広告欄を見て、被告が同会社ソフトウエア工場の 同年四月訴外株式会社ヒカリ製作所(以下「ヒカリ製作所」という。 小学校、同平坂中学校を卒業後、昭和四五年三月愛知県立碧南高等学校を卒業し、右卒業と同時に訴外株式会社津田鈑に入社したが、二週間ばかりで退職し、同年四月訴外株式会社ヒカリ製作所(以下「ヒカリ製作所」という。)に入社した。(二) ところが原告は、昭和四五年八月一九日付朝日新聞朝刊の前記従業員募集広告欄を見て、被告が同会社ソフトウエア工場の 同年四月訴外株式会社ヒカリ製作所(以下「ヒカリ製作所」という。)に入社した。(二) ところが原告は、昭和四五年八月一九日付朝日新聞朝刊の前記従業員募集広告欄を見て、被告が同会社ソフトウエア工場の従業員を募集していることを知り、そのころ当時勤務していた前記ヒカリ製作所を退職したい意向であつたので、右募集に応募することとし、同月二三日右広告で持参必要書類とされた履歴書、身上書を持参して被告会社名古屋営業所において、他の三二、三名の応募者とともに、英語、数学の筆記試験及び面接試験を受験した。(三) 同月三一日、被告会社は、右応募者中原告を含む七名の者を採用することとし、同年九月一日、原告に対し、原告提出の履歴書記載の現住所宛に「サイヨウナイテイス九ツキ二〇ヒフニンヨテイイサイフミ」ソフトヒタチ」との電報を打つたが、宛先に該当者がいないという理由で原告に届かなかつた。(四) そこで翌二日、被告会社は、前記受験当日原告に書かせた身上調書に記載されている原告住所宛にあらためて前記採用通知書を郵送すると同時に、電文の赴任予定日を訂正した「出社日時変更の件」と題する文書を発送したところ、これらは同月四日原告のもとに到達した。なお、右採用通知書には次のような内容が記載されていた。「前略、過日は遠いところ御足労頂き有難うございました。さて、学科試験、面接試験等種々の選考の結果あなたをソフトウエア工場(空白)として御採用申し上げることに決定致しましたので御通知致します。つきましては赴任につき下記によりおこなわれますよう宜敷くお願い申し上げます。記 1 赴任日時九月二一日(月)午後二時 2 赴任場所当工場勤労課(横須賀線戸塚駅西口下車徒歩三分) 3 出社日時九月二二日(火)午前八時四〇分まで 4 出社場所当工場勤労課 5 赴任携行品その他につ 赴任日時九月二一日(月)午後二時 2 赴任場所当工場勤労課(横須賀線戸塚駅西口下車徒歩三分) 3 出社日時九月二二日(火)午前八時四〇分まで き下記によりおこなわれますよう宜敷くお願い申し上げます。記 1 赴任日時九月二一日(月)午後二時 2 赴任場所当工場勤労課(横須賀線戸塚駅西口下車徒歩三分) 3 出社日時九月二二日(火)午前八時四〇分まで 4 出社場所当工場勤労課 5 赴任携行品その他につ 赴任日時九月二一日(月)午後二時 2 赴任場所当工場勤労課(横須賀線戸塚駅西口下車徒歩三分) 3 出社日時九月二二日(火)午前八時四〇分まで 4 出社場所当工場勤労課 5 赴任携行品その他について◎日常の身の廻り品(着替、ネマキ、日用品、洗面具、雨具、上履など)◎(必須品)印鑑、戸籍謄本、卒業証明書、成績証明書、筆記具、転出証明書(転出先は入寮先の住所にして下さい)、選挙人名簿登録証明書(二〇才以上の方のみ)◎(職歴のある方のみ)厚生年金保険証、失業保険証、退職証明書(前勤務先のものです)(当日持参が無理なものがありましたら出社後で結構です)◎当座の現金(約一ケ月間の生活費)◎寝具(寮には予備の寝具はありませんので早目にお送り下さい)◎荷物を送る際は次の宛名にし、必ず運賃領収書を受領の上持参下さい。(赴任日より前日に必着するよう手配すること)「横浜市<以下略>」(荷受人はあなた宛にしてください)◎当社旅費規定により支給します。6 当日赴任できない場合都合により当日赴任できなかつた揚合は、電報か速達で弊方へ御連絡下さい。後日改めて弊方から御指示致します。以上」(五) さらに同月四日、被告会社ソフトウエア工場総務部勤労課採用係Iは、入寮に関する書類を原告宛に送付しなかつたものと誤解し、原告に対し、入社試験に合格したので、入寮を希望するか否か確認する電話をしたところ、原告が入寮する旨回答したので、同日付の「入職日変更の件」と題する文書を原告宛に送付した。以上の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。2 しかして、以上の事実によると、被告が従業員募集の新聞広告を掲載したことは労働契約申込の誘引と解すべきであり、原告がこれに応募して被告会社の採用試験を受験したことは原告から被告に対する労働契約締結の申込になるものと 事実によると、被告が従業員募集の新聞広告を掲載したことは労働契約申込の誘引と解すべきであり、原告がこれに応募して被告会社の採用試験を受験したことは原告から被告に対する労働契約締結の申込になるものというべきである。 と、被告が従業員募集の新聞広告を掲載したことは労働契約申込の誘引と解すべきであり、原告がこれに応募して被告会社の採用試験を受験したことは原告から被告に対する労働契約締結の申込になるものと 事実によると、被告が従業員募集の新聞広告を掲載したことは労働契約申込の誘引と解すべきであり、原告がこれに応募して被告会社の採用試験を受験したことは原告から被告に対する労働契約締結の申込になるものというべきである。そして、前記認定の事実、とくに右採用通知書の記載によれば、「種々の選考の結果あなたをソフトウエア工場(空白)として御採用申し上げることに決定致しました」として、寝具等の送付を手配させ、転出先を入寮先の住所にした転出証明書等の持参を要求していること、被告会社においては、昭和四五年九月一日発信の電文では「サイヨウナイテイ」としながら、右採用通知書においては「御採用申し上げることに決定」として、「内定」と「決定」とを使い分けているとみられること及び被告会社は、かなり厳格な筆記面接の従業員採用試験を行ないこの試験の過程を通じて採否を決するに必要な資料を或程度蒐集し得ており、さらに本件採用が年度途中のいわゆる中途採用であり、採用試験と就労日の間隔が約一ケ月位しかなく、採用通知書発送から実際の就労日まで二〇日足らずの期間しか存しないなど、被告が労働力を緊急に必要としていた事情が推認できること等を考慮すると、被告から原告に対し前記採用通知書が発送されたことにより、被告の原告に対する労働契約締結承諾の意思表示がなされたものと解するのが相当である。したがつて、原告、被告間の労働契約は、承諾の通知を発した昭和四五年九月二日に成立したものというべきである。3(一) 被告は、被告会社においては、採用試験合格者のうちその指示した日時に必要書類を持参して出頭した者について、採用の要件を満していれば、その者との間に会社所定の労働契約書をとりかわし、ここにはじめて労働契約が成立する旨主張する。証人J、同Fの各証言及びそれによつて真正に成立したと認め 頭した者について、採用の要件を満していれば、その者との間に会社所定の労働契約書をとりかわし、ここにはじめて労働契約が成立する旨主張する。証人J、同Fの各証言及びそれによつて真正に成立したと認められる乙第三号証の一によれば、被告会社では、採用試験合格者中、指定日時に出頭した者から必要書類の提出を受けて係員がこれを確認し、その後労働契約書に署名捺印する慣行のあることが認められるが、一方前掲甲第二号証の一及び同第三号証の一によれば、右必要書類中、採用試験合格者において当日持参できないものがあれば出社後提出しても差しつかえないものとされていることが認められるのであるから、右必要書類の提出は労働契約締結の不可欠の要件であるとはみなすことはできず、さらに労働契約書の署名捺印も前記の採用通知書等の記載と対比すると、一種の確認行為に過ぎないというべきである。 行のあることが認められるが、一方前掲甲第二号証の一及び同第三号証の一によれば、右必要書類中、採用試験合格者において当日持参できないものがあれば出社後提出しても差しつかえないものとされていることが認められるのであるから、右必要書類の提出は労働契約締結の不可欠の要件であるとはみなすことはできず、さらに労働契約書の署名捺印も前記の採用通知書等の記載と対比すると、一種の確認行為に過ぎないというべきである。(二) 次に被告は、前記採用通知書を発送した段階で労働契約が成立したとすると、この段階では賃金額が定まつているだけで、労働条件の詳細は一切合意に達していない旨主張するけれども、成立に争いない甲第一号証、前掲甲第二号証の一および弁論の全趣旨によると、採用通知書発送までに、労働条件のうち最も重要な賃金額、職種、就業場所は既に決定していたものということができ、しかも、とくに被告会社のような大企業と一労働者との間の労働契約は、特殊な例外の場合を除いては、いわば一種の付合契約であつて、その詳細な内容が個々の労働者との間で区々に定められるものでないことは明らかであるから、その他の原告の労働条件の細目についてまでの合意がないからといつて、前記のとおり採用通知書発送時をもつて労働契約が成立したとすることの妨げとなるものではない。(三) さらに被告は、採用通知書受領者のうち約半数の者しか指定日時に出頭しない の合意がないからといつて、前記のとおり採用通知書発送時をもつて労働契約が成立したとすることの妨げとなるものではない。(三) さらに被告は、採用通知書受領者のうち約半数の者しか指定日時に出頭しないのであるから、右採用通知書発送時をもつて労働契約が成立したとするのは不合理である旨主張する。証人J、同Fの各証言によれば、従来から行つていた臨時員の募集の経験からすると、採用通知書受領者のうち約半数の者しか指定日時に出頭していないこと、不出頭の者については結果的に出てきてもらえないということでそれきりにしている事実を認めることができるけれども、本件採用が中途採用であることや前記採用手続の一連の経過から考えると、不出頭の応募者については、成立した労働契約に基づく権利を放棄したもの、あるいは義務を履行しなかつたとしても、被告はこれが責任を不問にする取扱いにしているものとも解し得ないわけではない。とくに本件の原告に関しては、原告本人尋問の結果によれば、当時稼働していたヒカリ製作所を退職したい気持が強く、被告会社の採用試験に合格すれば是非被告会社に就職したいと考えており、事実昭和四五年九月一五日限りで右ヒカリ製作所を退職していることが認められるのであるから、右被告主張のような事実があるからといつて、前記採用通知書の発送が労働契約締結の承諾であると解することに支障はない。 し得ないわけではない。とくに本件の原告に関しては、原告本人尋問の結果によれば、当時稼働していたヒカリ製作所を退職したい気持が強く、被告会社の採用試験に合格すれば是非被告会社に就職したいと考えており、事実昭和四五年九月一五日限りで右ヒカリ製作所を退職していることが認められるのであるから、右被告主張のような事実があるからといつて、前記採用通知書の発送が労働契約締結の承諾であると解することに支障はない。二 (臨時員) 次に、本件が所員としての労働契約か臨時員としての労働契約かの点について判断する。1 前掲乙第三号証の一、同第七号証、成立に争いのない乙第五号証の一、二、証人J、同G、同Fの各証言及びそれによつて真正に成立したと認められる乙第四号証によれば、被告会社には労働契約の相違により、所員としての従業員と臨時員としての従業員とが存在し、臨時員は① 日々雇入れられる者② 二ケ月 証言及びそれによつて真正に成立したと認められる乙第四号証によれば、被告会社には労働契約の相違により、所員としての従業員と臨時員としての従業員とが存在し、臨時員は① 日々雇入れられる者② 二ケ月以内の期間を定めて使用される者③ 前二号のほか特定された期間又は特定の期限まで使用される者で、通常は必要の都度新聞広告によつて公募し、学科、面接の採用試験に合格した者について出社日時を定めて出頭させ、必要書類等を点検したうえで臨時員としての労働契約書に署名捺印すること、所員と臨時員とは賃金体系等においても差異があり、所員は原則として学校新規卒業者を採用する関係から学校卒業年度を基準として賃金を定めるのに対し、臨時員は随時必要に応じて採用することからその者の実年令を基準として賃金を定めることになつていること、本件採用業務は、被告会社ソフトウエア工場に昭和四五年八月頃から同四六年三月頃までの期間に約二〇〇名の臨時員(契約期間前記②)を採用する計画の一環として行なわれたこと等を認めることができる。2 ところで原告は、被告が本件募集ないし労働契約締結に際して臨時員として採用する旨を明示していないから、原告は所員として採用されたと主張する。(一) なるほど前掲甲第一号証、同第二号証の一によれば、被告会社の従業員募集の新聞広告には「登用制度あり」とする以外、臨時員の募集であることは何ら明示されておらず、また前記採用通知書には、所員と臨時員との区別を表示する文言を挿入する予定であるとも解される部分が空白になつていて、他に臨時員であることを窺わせるに足りる記載が何らなされていないことを認めることができ、しかも、右新聞広告の「登用制度あり」という文言が、それのみによつて直ちにいわゆる「臨時社員」の募集であることを明瞭に表現する言葉として、社会一般に通用して 時員の募集であることは何ら明示されておらず、また前記採用通知書には、所員と臨時員との区別を表示する文言を挿入する予定であるとも解される部分が空白になつていて、他に臨時員であることを窺わせるに足りる記載が何らなされていないことを認めることができ、しかも、右新聞広告の「登用制度あり」という文言が、それのみによつて直ちにいわゆる「臨時社員」の募集であることを明瞭に表現する言葉として、社会一般に通用して らなされていないことを認めることができ、しかも、右新聞広告の「登用制度あり」という文言が、それのみによつて直ちにいわゆる「臨時社員」の募集であることを明瞭に表現する言葉として、社会一般に通用しているとは断定し難いところがある。(二) しかし、前記1項の認定事実によれば、被告会社の意図としては、原告ら学校既卒業者を臨時員として採用しようとしたものであることは明らかであるところ、証人G、同Fの各証言によれば、前記従業員採用試験の際、筆記試験の開始前に被告会社担当者が本件採用試験が臨時員のそれであつて契約期間は二ケ月である旨説明し、さらに面接試験中にも賃金等の説明に当つて面接試験担当者から原告に対し同旨の説明がなされていることが認められ(この点に反する原告本人尋問の結果は前掲各証言に照らし信用できない。)るのみならず、証人Jの証言及びそれによつて真正に成立したと認められる乙第六号証の二、三によれば、原告と同時に採用試験を受験し被告会社に採用された六名の者が、いずれも臨時員として被告会社に入社し、その後雇傭期間を更新されて従業していることを認めることができるから、これら事実から考えれば原告は傭用期間二ケ月の臨時員として採用されたものというべきである。三 (解雇無効) 1 昭和四五年九月一七日、被告が原告に対し、原告が本籍、氏名等を詐称したことを理由にその採用(被告の主張によれば採用内定)を取消す旨伝えたことは当事者間に争いがないが、それより以前の同月二日をもつて原告・被告間に労働契約が成立していることは前説示のとおりである。前記一の1項に認定の事実に原告本人尋問の結果および前掲乙第二号証の二を併せ考えると、原告が試験当日記載し被告に提出した身上調書には、その末尾に「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の に原告本人尋問の結果および前掲乙第二号証の二を併せ考えると、原告が試験当日記載し被告に提出した身上調書には、その末尾に「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありません。 問の結果および前掲乙第二号証の二を併せ考えると、原告が試験当日記載し被告に提出した身上調書には、その末尾に「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の に原告本人尋問の結果および前掲乙第二号証の二を併せ考えると、原告が試験当日記載し被告に提出した身上調書には、その末尾に「この調書に私が記載しました事項はすべて真実であり、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありません。もし、偽り、誤り、重要な事項の記入漏れがありました場合は採用取消解雇の処置を受けても異議を申し立てません。」旨明記されており、原告も右記載を承知で必要事項を記載し署名捺印したことが認められるので、これによれば、原告が被告に提出する身上調書等の書類に、労働力の評価基準であるべき諸般の事項につき被告企業に正当な認識を与えるよう真実を記載することを約し、もし右に反し虚偽の記載をし、真実を秘匿してこれを詐称したような場合は、後日これが判明したとき、被告においてこれを原因として原告との労働契約を解約しうる旨の合意があつたものと推認できる。そうすると、原・被告間の前記労働契約には右のような解約権が留保されていたもので、被告が前記採用(内定)取消の意思表示としているのは、右留保解約権の行使としての意思表示を主張しているものと、解すべきである。よつて、以下留保解約権行使に基く本件解雇の効力について検討を加える。(一) 昭和四五年八月二三日、原告が被告会社従業員採用試験を受験した際、履歴書の本籍記入欄に「愛知県西尾市<以下略>」と記入し、履歴書、身上書、身上調書の各氏名記入欄に「H」と記入して被告に提出したことは当事者間に争いがなく、また前掲乙第一号証の一、二によれば、原告は右履歴書、身上書の現住所記入欄に「愛知県名古屋市<以下略>」と記載し、右履歴書には職歴を何ら記載していないことを認めることができる。(二) ところで、原告が在日朝鮮人であることは当事者間に争いがないのであるから、原告には日本戸籍法にいう本籍が存しないことは明らかで 右履歴書には職歴を何ら記載していないことを認めることができる。(二) ところで、原告が在日朝鮮人であることは当事者間に争いがないのであるから、原告には日本戸籍法にいう本籍が存しないことは明らかであり(成立に争いない甲第一〇号証によると、外国人登録証明書中「国籍の属する国における住所又は居所」は慶尚北道達城郡<以下略>とされている。 のであるから、原告には日本戸籍法にいう本籍が存しないことは明らかで 右履歴書には職歴を何ら記載していないことを認めることができる。(二) ところで、原告が在日朝鮮人であることは当事者間に争いがないのであるから、原告には日本戸籍法にいう本籍が存しないことは明らかであり(成立に争いない甲第一〇号証によると、外国人登録証明書中「国籍の属する国における住所又は居所」は慶尚北道達城郡<以下略>とされている。)、又原告の本名が「E」であることは本件訴訟上明らかである。さらに原告本人尋問の結果によれば、右採用試験受験当時、原告の住所は「愛知県西加茂郡<以下略>」であつたことが認められ、前記一の1の(一)項のとおり原告は昭和四五年三月から二週間ばかり、株式会社津田鈑に勤務し、同四月からヒカリ製作所に勤務していたことが認められるのであるから、原告は履歴書、身上書および身上調書に右「本名」を記載せず、履歴書の「本籍」、履歴書と身上書の「現住所」に虚偽の記載をし、履歴書に右「職歴」を記載しなかつたことが一応明らかである。(三) しかして、被告会社が、右詐称等の事実を知つた経緯等は、前掲甲第二号証の一、甲第三号証の一ないし三、乙第二号証の二、証人J、同G、同Kの各証言、証人Fの証言及び原告本人尋問の結果を総合すると、次のとおりであつたことを認めることができる。(1) 被告会社面接試験担当官Gは、原告に面接した際、原告が前記のように記載した履歴書、身上書および身上調書の本籍、氏名等について、その各記載の真偽を問うたところ、原告はこれに対し右記載が真実である旨答えた。(2) ただ、右の際、Gは、身上調書と身上書および履歴書の現住所の記載に齟齬があることに気がつき、右の点を原告に質問したところ、原告は「現在ヒカリ製作所に勤務しており、同社の寮に住んでいる。」旨を答えた。そこで、Gは、「履歴書に右職歴を何故記載しなかつたのか。記載に齟齬があることに気がつき、右の点を原告に質問したところ、原告は「現在ヒカリ製作所に勤務しており、同社の寮に住んでいる。」旨を答えた。そこで、Gは、「履歴書に右職歴を何故記載しなかつたのか。」と問い質したのに対し、原告が「新しく入る企業にとつて職歴は良くないんではないかと思つて記載しなかつた。」旨答えたので、さらにGは「職歴の有無が採否に影響することがない。」旨を答え、続けて右ヒカリ製作所の規模、業務の内容、職場の構成、雰囲気等を質問し、原告の回答を得た。 告は「現在ヒカリ製作所に勤務しており、同社の寮に住んでいる。」旨を答えた。そこで、Gは、「履歴書に右職歴を何故記載しなかつたのか。」と問い質したのに対し、原告が「新しく入る企業にとつて職歴は良くないんではないかと思つて記載しなかつた。」旨答えたので、さらにGは「職歴の有無が採否に影響することがない。」旨を答え、続けて右ヒカリ製作所の規模、業務の内容、職場の構成、雰囲気等を質問し、原告の回答を得た。(3) その後、前記採用通知を受けた原告は、赴任の準備をしていたが、同年九月一五日右通知書と他の郵送書類とで入寮先が異つていることを発見し、同日、被告会社ソフトウエア工場に電話して、入寮先として「渡井寮」と「井上寮」との二種の通知を受けているがいずれへ入寮すべきか確認したところ、応待に出た同工場総務部勤労課採用係主任Fは「井上寮」へ入寮するよう指示した。その際原告は右Fに対し「自分は在日韓国人であるから、戸籍謄本はとれない。」旨告げたところ、これに対しFは即座に「採用通知は保留にしておいてほしい。あした連絡します。」と答えた。(4) 翌一六日、右Fは同工場総務部長Jに事態を報告したところ、結局被告会社は原告の採用を取消すことに決定した。(5) 翌一七日、被告会社から連絡がないので、原告が右Fに電話で先日の結果を問い合わせたところ、右Fが「当社は一般外国人は雇わない。社内規定にも書いてある。迷惑したのはお宅の方ではなく私の方です。あなたが本当のことを書いたらこんなことにならなかつた。」と答え、原告が「どうしても入社できないか。」と尋ねたのに対し、右Fが「今回は諦めて下さい。」と言つて、「採用を取消す」旨伝えた。(6) 同日被告会社は、右原告との電話の後、原告の高校時代の担任 」と答え、原告が「どうしても入社できないか。」と尋ねたのに対し、右Fが「今回は諦めて下さい。」と言つて、「採用を取消す」旨伝えた。(6) 同日被告会社は、右原告との電話の後、原告の高校時代の担任教師K教諭に電話して、原告が在日朝鮮人であることを確認したうえ、右K教諭に、原告が被告会社入社を断念するよう説得方を依頼した。以上の事実を認めることができ、証人F、同Kの各証言のうち右認定に反する部分は、前掲各証拠に対比してたやすく採用し得ず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。(四) また一方、成立に争いない甲第七号証、同第八号証、同第九号証の一ないし三、同第一〇号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一一号証、同第一二号証、同第二〇号証、同第二一号証、証人L(第一、二回)、同M、同N、同O、同P、同Q、同R、同S、同Tの各証言、原告本人尋問の結果および弁論の全趣旨を総合すると、原告が履歴書、身上書および身上調書に前記のような虚偽の本籍を記載し、本名を記載しなかつた動機ないしはその社会的背景には、次の事実があつたことが認められる。 の一ないし三、同第一〇号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一一号証、同第一二号証、同第二〇号証、同第二一号証、証人L(第一、二回)、同M、同N、同O、同P、同Q、同R、同S、同Tの各証言、原告本人尋問の結果および弁論の全趣旨を総合すると、原告が履歴書、身上書および身上調書に前記のような虚偽の本籍を記載し、本名を記載しなかつた動機ないしはその社会的背景には、次の事実があつたことが認められる。(1) 原告は、前記一の1の(一)項のとおり、終戦(第二次世界大戦、以下も同じ)前から、日本に居住する朝鮮人の両親の許に生れ、日本において育ち日本の学校を卒業した在日朝鮮人であるが、現在、日本には在日朝鮮人が約六〇万人居住し、その約七割が原告と同じような境遇にある。(2) これら在日朝鮮人は、現在日本国籍を有しない外国人となつているが、これらの人あるいはその両親は、その大部分が終戦前、とくに一九一〇年のいわゆる日韓併合条約(韓国併合に関する条約)締結のころから多く来日し、引続き日本に居住しているもので、その中にはなかば強制されて日本に連行されて来た人達もいる。これらの人達は、右条約によつて日本国によ 日韓併合条約(韓国併合に関する条約)締結のころから多く来日し、引続き日本に居住しているもので、その中にはなかば強制されて日本に連行されて来た人達もいる。これらの人達は、右条約によつて日本国により日本国籍が与えられたが、日本の国籍法上の日本国籍は有しないという特別な地位におかれ、法的にも内地人たる日本人と差別されていた。また、一九三九年一二月の当時の日本国政府の「創氏改名」の政策により、在日朝鮮人はすべて日本式氏名を名乗らせられ、また日本人と同じ学校に入り、日本人に同化する教育を受けた。こうしたなかで、在日朝鮮人は、日本人の中に入つて生活していくこととなつたが、少なくとも就職に関しては社会的地位の低い職種にしか就職できず、一般に極めて低い労働条件のもとで働かされるという差別を受けていた。(3) 終戦後の一九五一年九月八日日本国は連合国との間にいわゆるサン・フランシスコ平和条約を締結(一九五二年四月二八日発効)したが、右条約には朝鮮の独立に関連する国籍の問題について何らの規定もなく、その後一九六五年六月二二日に至り日本と韓国との間に「日本国と大韓民国間との基本関係に関する条約」が締結され、さらに「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定」がとりかわされたが、ここでも直接国籍の問題は触れられず、ただ後者においては大韓民国国籍の保有を前提としての在日韓国人の永住許可、法的待遇等の問題を定めていたことから、その後の行政解釈ないし裁判例は前記協約、協定の解釈として、少なくとも韓国国籍を持つ在日朝鮮人は、前記平和条約の発効する一九五二年四月二八日から日本国籍を喪失し、同時に公布施行された外国人登録法の適用を受けて法的に外国人としての扱いを受けるようになつた。 、ここでも直接国籍の問題は触れられず、ただ後者においては大韓民国国籍の保有を前提としての在日韓国人の永住許可、法的待遇等の問題を定めていたことから、その後の行政解釈ないし裁判例は前記協約、協定の解釈として、少なくとも韓国国籍を持つ在日朝鮮人は、前記平和条約の発効する一九五二年四月二八日から日本国籍を喪失し、同時に公布施行された外国人登録法の適用を受けて法的に外国人としての扱いを受けるようになつた。そして、前記協定により日本国で永住する 平和条約の発効する一九五二年四月二八日から日本国籍を喪失し、同時に公布施行された外国人登録法の適用を受けて法的に外国人としての扱いを受けるようになつた。そして、前記協定により日本国で永住することを許可されたが、戦後も現在に至るまで、在日朝鮮人は、就職に関して日本人と差別され、大企業にほとんど就職することができず、多くは零細企業や個人経営者の下に働き、その職種も肉体労働や店員が主で、一般に労働条件も劣悪の場所で働くことを余儀なくされている。また在日朝鮮人が朝鮮人であることを公示して大企業等に就職しようとしても受験の機会さえ与えられない場合もあり、そのため在日朝鮮人のなかには、本名を使わず日本名のみを使い、朝鮮人であることを秘匿して就職しているものも多い。右のような現状は、在日朝鮮人の間では、広く知れわたつている事実であり、いわば常識化していることである。そして、又、我国の一流と目される大企業の間においても、特殊の例外を除き、在日朝鮮人であるというだけの理由で、これが採用を拒み続けているという事実も、公式に或は積極的な表現こそ避けてはいるものの、当然のこととし常識化しているところである。(4) 原告は、右の多くの在日朝鮮人と同じように、生れたときから、日本名「H」を命名され、以後日本の小、中、高等学校でも終始、右日本名のみを使い、同僚や教師からも同様に呼ばれており(卒業証書等における氏名も同様である。)、本名の「E」は自ら使用した生活場面もなく、ただ外国人登録証明書や運転免許証などのわずかの公文書のうえで見かけたに過ぎない縁遠い名前となつていた。また、原告は、親兄弟や周囲の同胞の体験を知つて行く中で、前記の在日朝鮮人に対する就職差別の現実を知り、被告のような大企業に就職しようとする際、履歴書の本籍欄に「本籍なし」とか「慶尚北道 いた。また、原告は、親兄弟や周囲の同胞の体験を知つて行く中で、前記の在日朝鮮人に対する就職差別の現実を知り、被告のような大企業に就職しようとする際、履歴書の本籍欄に「本籍なし」とか「慶尚北道……」(外国人登録証明書中の国籍の属する国における住所、又は居所)と記載することは、とりもなおさず原告が在日朝鮮人であることを公示することとなり、そうなれば就職はおろか受験の機会すら奪われる心配があると思うようになつた。 、原告は、親兄弟や周囲の同胞の体験を知つて行く中で、前記の在日朝鮮人に対する就職差別の現実を知り、被告のような大企業に就職しようとする際、履歴書の本籍欄に「本籍なし」とか「慶尚北道……」(外国人登録証明書中の国籍の属する国における住所、又は居所)と記載することは、とりもなおさず原告が在日朝鮮人であることを公示することとなり、そうなれば就職はおろか受験の機会すら奪われる心配があると思うようになつた。そのため、原告は、履歴書、身上書および身上調書の氏名欄に通名となつている「H」を記載し、履歴書の本籍欄には自己の出生地(両親の現住所と同じ)を記載して、被告に提出した。なお、原告は、学校の成績も良く、簿記一級、珠算三級の資格を有していたので、採用された後被告に朝鮮人であることが判明されたとしても、真面目に働いてさえいれば、解雇されることはないものと予測していた。(五) ところで、一般には留保解約権に基く解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇事由が認められるのであるけれども、留保解約権の行使は解雇権留保の趣旨、目的に照らして、客観的合理的で社会通念上相当の場合にのみ許されるものといわなければならない。そして、本件では前記のとおり、身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或は真実を秘匿した場合における解約権留保が定められているのであるが、被告会社の臨時員就業規則には、後記2記載のとおり、同趣旨の労働者に経歴詐称等の不都合の行為があつたときは懲戒解雇の一事由とされているのであるから、右の解約権留保の特約は懲戒事由と同一或は類似の要件をもつて解約権行使の原因としたものと解することができる。したがつて、本件における解約権留保の趣旨、目的及びその解約権行使の要件は、単に形式上「身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或は真実を の要件をもつて解約権行使の原因としたものと解することができる。したがつて、本件における解約権留保の趣旨、目的及びその解約権行使の要件は、単に形式上「身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或は真実を秘匿した」事実があるだけでなく、その結果労働力の資質、能力を客観的合理的にみて誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるものとされたとき、又は企業の運営にあたり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠いていて企業内に留めておくことができないほどの不信義性が認められる場合に、解約権を行使できるものと解すべきである。 行使の要件は、単に形式上「身上調書等の書類に虚偽の事実を記載し或は真実を秘匿した」事実があるだけでなく、その結果労働力の資質、能力を客観的合理的にみて誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるものとされたとき、又は企業の運営にあたり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠いていて企業内に留めておくことができないほどの不信義性が認められる場合に、解約権を行使できるものと解すべきである。そして、右の不信義性は、詐称した事項、態様、程度、方法、詐称していたことが判明するに至つた経緯等を総合的に判断して、その程度を定めるべきものと解する。右の見地から本件を見るに、原告の労働力の資質、能力の誤認については問題がないというべきであるから、その不信義性について検討する。(1) 前記によれば、原告は、原告の本籍、氏名、現住所、職歴等について、一応真実でない記載をした履歴書等を被告会社に提出し、被告会社面接担当者に対し本籍及び氏名について、右記載を真実である旨真実とは異なつた回答をしたものというべきであり、その結果、被告会社は右本籍、氏名について原告の申告が真実でないことに気づかず、真実であると信じて、原告との間に労働契約を締結することにしたものであることを認めることができる。(2) しかし、原告が履歴書、身上書に真実の現住所及び職歴を記載しなかつた点について考えると、右は、その後原告自らが進んで前記「身上調書」に真実を記載してそのうえで採用面接試験を受験しており、しかも被告会社においてもこれを了解したうえで原告の採用を決定しているばかりでなく、真実の現住所(「ヒカり製作所三好寮内」)を記載しなかつたのは、真実の 載してそのうえで採用面接試験を受験しており、しかも被告会社においてもこれを了解したうえで原告の採用を決定しているばかりでなく、真実の現住所(「ヒカり製作所三好寮内」)を記載しなかつたのは、真実の職歴を記載しなかつたことに由来すると推認されるのであるから、右現住所及び職歴の問題は、結局真実の職歴を記載しなかつたことの一事に尽きることになる。ところで、原告が前記ヒカリ製作所に勤務していた期間は五ケ月有余、その前の株式会社津田鈑に勤務した期間は約二週間と比較的短期間であり、その職種も前者のときは経理要員、後者のときはプレス工であつて、いずれも被告会社において勤務を予定されているソフトウエア要員とは職種が異なるばかりでなく、前記採用面接試験担当者が前職歴は採否に影響しないと説明しているように、被告会社自身原告の前職歴をさして重要視していないこと等を考え合せると、原告が履歴書等に真実の現住所及び職歴を記載しなかつたことは、本件原告に対する解約権行使の事由としては重要性に乏しいものとせざるを得ない。 員、後者のときはプレス工であつて、いずれも被告会社において勤務を予定されているソフトウエア要員とは職種が異なるばかりでなく、前記採用面接試験担当者が前職歴は採否に影響しないと説明しているように、被告会社自身原告の前職歴をさして重要視していないこと等を考え合せると、原告が履歴書等に真実の現住所及び職歴を記載しなかつたことは、本件原告に対する解約権行使の事由としては重要性に乏しいものとせざるを得ない。(3) 次に、原告が履歴書等に本名、本籍について真実の記載をせず、採用試験受験に当つて真実を申告しなかつた点について検討すると、前記1の(四)項のとおり、在日朝鮮人である原告にとつて日本名「H」は、出生以来ごく日常的に用いて来た通用名であり、これを「偽名」とすることはできないばかりでなく、原告が氏名に本名「E」を使用し、本籍につき真実を申告することはとりもなおさず原告が在日朝鮮人であることを公示することになるのであるから、原告が被告会社に就職したい一心から、自己が在日朝鮮人であることを秘匿して、日本人らしく見せるために氏名に通用名を記載し、本籍に出生地を記載して申告したとしても、前記のように、原告を含む在日朝鮮人が置かれていた状況の歴史的社会的背景 、自己が在日朝鮮人であることを秘匿して、日本人らしく見せるために氏名に通用名を記載し、本籍に出生地を記載して申告したとしても、前記のように、原告を含む在日朝鮮人が置かれていた状況の歴史的社会的背景、特に、我が国の大企業が特殊の例外を除き、在日朝鮮人を朝鮮人であるというだけの理由で、これが採用を拒みつづけているという現実や、原告の生活環境等から考慮すると、原告が右詐称等に至つた動機には極めて同情すべき点が多い。一般に、私企業者には契約締結の自由があるから、立法、行政による措置や民法九〇条の解釈による制約がない限り労働者の国籍によつてその採用を拒否することも、必ずしも違法とはいえないのである。しかし、被告は表面上、又本件訴訟における主張としても、原告が在日朝鮮人であることを採用拒否の理由としていない(しかし、被告の真意は後記認定のとおりである。)ほどであるから、原告が前記のように「氏名」、「本籍」を詐称したとしても(その結果、被告会社は原告が在日朝鮮人であることを知ることができなかつたとしても)、これをもつて被告会社の企業内に留めておくことができないほどの不信義性があり、とすることはできないものといわなければならない。 おける主張としても、原告が在日朝鮮人であることを採用拒否の理由としていない(しかし、被告の真意は後記認定のとおりである。)ほどであるから、原告が前記のように「氏名」、「本籍」を詐称したとしても(その結果、被告会社は原告が在日朝鮮人であることを知ることができなかつたとしても)、これをもつて被告会社の企業内に留めておくことができないほどの不信義性があり、とすることはできないものといわなければならない。(4) 以上によつて、原告に、被告の臨時員(ソフトウエア要員)として引続き留めておくことができないほどの不信義性がないこと明らかとなつたのであるから、前記留保解約権の行使は許されないというべきである。2 次に懲戒解雇の効力について検討するに、前掲乙第四号証によれば、被告会社の臨時員就業規則には七二条の二四号に「経歴を詐り又は詐術を用いて雇い入れられたとき」、二七号に「その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があつたとき」は懲戒解雇事由になりうるものと定められていることが認められる。しかしながら、前述のとおり、留保解約権 を用いて雇い入れられたとき」、二七号に「その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があつたとき」は懲戒解雇事由になりうるものと定められていることが認められる。しかしながら、前述のとおり、留保解約権に基く解雇は通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇事由が認められているのである。加うるに、留保解約権に基く解雇が許されないこと叙上の理由のとおりであるから、通常の解雇も懲戒解雇も許されないこと、これ又自明のことと言うべきである。よつて、被告のこの点に関する主張も採用の限りでない。3 被告は、原告が被告会社に応募した際、本籍等について虚偽の申告をなしたため、採用に当り会社が必要とする戸籍謄本等の書類を提出することができず、採用の要件を充足することが不可能であることが判明したので、原告の採用内定を取消した旨主張するが、戸籍謄本等の提出は、労働基準法等の定める人事管理上の必要から要請されることがあるは格別、前記に説示のとおり労働契約締結の要件とはいい難いことは明らかであるから、右主張はその前提において失当というべきである。4 そこでさらに進んで、被告会社がいかなる理由で原告を解雇するに至つたかという点について考察するに、右のとおり被告が原告を解雇するほどの客観的に合理的な理由が乏しいばかりでなく、右解雇に至る事情、とくに前記のとおり、昭和四五年九月一五日以降同月一七日までの間の原告と被告会社との電話による交渉の経緯、すなわち、原告が在日朝鮮人であることを告げるや直ちに被告は採用を留保しておいてほしい旨述べたこと、その後会社側から連絡する旨約束しておきながら被告は同月一七日原告から問い合せがあるまで回答せず、右回答の内容も一般外国人は雇わない旨告げて原告の採用を取消する旨話していること、さらに右採用取消をするについても、できうればこれを救済し 五日以降同月一七日までの間の原告と被告会社との電話による交渉の経緯、すなわち、原告が在日朝鮮人であることを告げるや直ちに被告は採用を留保しておいてほしい旨述べたこと、その後会社側から連絡する旨約束しておきながら被告は同月一七日原告から問い合せがあるまで回答せず、右回答の内容も一般外国人は雇わない旨告げて原告の採用を取消する旨話していること、さらに右採用取消をするについても、できうればこれを救済し ながら被告は同月一七日原告から問い合せがあるまで回答せず、右回答の内容も一般外国人は雇わない旨告げて原告の採用を取消する旨話していること、さらに右採用取消をするについても、できうればこれを救済して採用の取消を避けるよう配慮した形跡が見受けられないこと、及び同日被告会社は、原告に対し採用しないことにした旨告知した後に、原告の高校時代の担任教師に連絡をとつて原告が在日朝鮮人であることを確め、被告会社の入社を断念するよう説得方を依頼している等の事情を併せ考えると、被告が原告に対し採用取消の名のもとに解雇をし、あるいはその後格別の事情もないのに本訴において懲戒解雇をした真の決定的理由は、原告が在日朝鮮人であること、すなわち原告の「国籍」にあつたものと推認せざるを得ない。5 そうであるとすれば、被告の原告に対する前記留保解約権による解雇及び懲戒解雇の意思表示がいずれも許されないこと前述のとおりであるし、そのうえ、労働基準法三条に牴触し、公序に反するから、民法九〇条によりその効力を生ずるに由ないものというべきである。四 (賃金等)以上のとおり、昭和四五年九月二日に原告と被告との間の臨時社員としての労働契約が成立し、原告は被告会社の臨時社員としての従業員たる地位を取得したものというべきである。そして、原告が遅くとも同年一〇月一日以降被告に対し労務の提供を申出ていることは弁論の全趣旨から明らかであり、被告が原告を従業員でないとしてその就労を拒否していることは当事者間に争いがないから、原告が右従業員たる地位にあることの確認を求める利益がある。また、原告は被告に対し、少なくとも同日以降の賃金債権を有するところ(証人Gの証言と弁論の全趣旨とによると、前述の二ヶ月の雇傭期間は特段の事由がない限り更新されることが認められる。)、その額については、 、原告は被告に対し、少なくとも同日以降の賃金債権を有するところ(証人Gの証言と弁論の全趣旨とによると、前述の二ヶ月の雇傭期間は特段の事由がない限り更新されることが認められる。 確認を求める利益がある。また、原告は被告に対し、少なくとも同日以降の賃金債権を有するところ(証人Gの証言と弁論の全趣旨とによると、前述の二ヶ月の雇傭期間は特段の事由がない限り更新されることが認められる。)、その額については、 、原告は被告に対し、少なくとも同日以降の賃金債権を有するところ(証人Gの証言と弁論の全趣旨とによると、前述の二ヶ月の雇傭期間は特段の事由がない限り更新されることが認められる。)、その額については、前掲乙第七号証、同証人の証言および弁論の全趣旨によれば、昭和四五年一〇月以降同四六年三月まで月額金二万八、七三六円の割合で計金一七万二、四一六円、昭和四六年四月以降同四七年三月まで月額金三万〇、〇八三円の割合で計金三六万〇、九九六円昭和四七年四月以降同四八年三月まで月額金三万〇、九八一円の割合で計金三七万一、七七二円昭和四八年四月以降同四九年一月まで月額金三万二、一〇四円の割合で計金三二万一、〇四〇円右合計金一二二万六、二二四円であり、同年二月以降も少なくとも月額金三万二、一〇四円であることが認められ、その支払時期については、弁論の全趣旨によれば、毎月二五日限り支払われていることを認めることができる。五 (慰謝料)次に、原告の慰謝料請求について考えるに、原告と被告間の労働契約が成立し、原告が前職場を退職した直後に、被告は、合理的な顧雇理由がないのにかかわらず、原告が在日朝鮮人であることを理由にこれを解雇したのであるから、前述のとおり、労働基準法三条、民法九〇条に反する不法行為となることは明らかである。また、被告は、本件臨時員の募集採用にあたつて、合理的理由のない民族的偏見から在日朝鮮人を差別して、これを採用しない方針を定めておきながら、表面上外部に対しては、原告の解雇はもつぱら本籍氏名を詐称した形式的理由によるものと巧妙にいつわつているのであるから、原告は自己の正当な権利を被告に主張するには訴訟を提起する方法によらざるを得ないところである。そして、原告が本件訴訟を提起し維持してきたことについて相当の経済的負担と いつわつているのであるから、原告は自己の正当な権利を被告に主張するには訴訟を提起する方法によらざるを得ないところである。そして、原告が本件訴訟を提起し維持してきたことについて相当の経済的負担と精神的苦痛を重ねてきていることは推察するに余りがある。 正当な権利を被告に主張するには訴訟を提起する方法によらざるを得ないところである。そして、原告が本件訴訟を提起し維持してきたことについて相当の経済的負担と いつわつているのであるから、原告は自己の正当な権利を被告に主張するには訴訟を提起する方法によらざるを得ないところである。そして、原告が本件訴訟を提起し維持してきたことについて相当の経済的負担と精神的苦痛を重ねてきていることは推察するに余りがある。また、原告本人尋問の結果によると、原告はこれまで日本人の名前をもち日本人らしく装い、有能に真面目に働いていれば、被告に採用されたのち在日朝鮮人であることが判明しても解雇されることはない程度に甘い予測をしていたところ、被告の原告に対する本件解雇によつて、在日朝鮮人に対する民族的偏見が予想外に厳しいことを今更のように思い知らされ、そして、在日朝鮮人に対する就職差別、これに伴う経済的貧困、在日朝鮮人の生活苦を原因とする日本人の蔑視感覚は、在日朝鮮人の多数の者から真面目に生活する希望を奪い去り、時には人格の破壊にまで導いている現状にあつて、在日朝鮮人が人間性を回復するためには、朝鮮人の名前をもち、朝鮮人らしく振舞い、朝鮮の歴史を尊び、朝鮮民族としての誇りをもつて生きて行くほかにみちがないことを悟つた旨その心境を表明していることが認められるから民族的差別による原告の精神的苦痛に対しては、同情に余りあるものといわれなければならない。したがつて、本訴において原告の地位確認および賃金請求が認容され労働契約成立時以降の賃金相当額の支払を受けたとしても、なおその苦痛を償いきれるとは認められない。そこで、本件解雇に至つた前述の経緯等諸般の事情を斟酌するとき、その精神的損害を償うには、被告は原告に対し、原告の主張するとおり、少なくとも金五〇万円を慰謝料として支払うのが相当である。したがつて、被告は原告に対し、右金五〇万円及びこれに対する不法行為発生後であることが明らかな昭和四五年一二月一七日以降支払済に至る とおり、少なくとも金五〇万円を慰謝料として支払うのが相当である。したがつて、被告は原告に対し、右金五〇万円及びこれに対する不法行為発生後であることが明らかな昭和四五年一二月一七日以降支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。六 (むすび)以上のとおり、原告の本訴請求は、被告の従業員としての地位を有することの確認を求める点、前記四項の限度で賃金の支払を求める点及び慰謝料の支払を求める点のいずれについても理由がある。 のが相当である。したがつて、被告は原告に対し、右金五〇万円及びこれに対する不法行為発生後であることが明らかな昭和四五年一二月一七日以降支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。六 (むすび)以上のとおり、原告の本訴請求は、被告の従業員としての地位を有することの確認を求める点、前記四項の限度で賃金の支払を求める点及び慰謝料の支払を求める点のいずれについても理由がある。但し、右賃金請求のうち前記四項の認定額を超える部分(所員として賃金額)は理由がなく、また一部将来の賃金額の給付を求めているが、本判決が確定して原告が被告の従業員たる地位が定まれば、その時において、被告の任意の履行を十分期待できるしその可能性もあるのであるから、本件判決確定の日の翌日以後の分についてまで、現在において将来給付の請求を求める必要性がないと解するのが相当である。したがつて、賃金支払請求は、前記四項に認定の賃金額の限度で、かつ判決確定時までの分について認容して、右同日までその余の部分を棄却し、判決確定の日の翌日以後の分については訴の利益がないから却下する。よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条但書、八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。(裁判官石藤太郎佐藤歳二山野井勇作)
▼ クリックして全文を表示