令和3(ワ)523 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月11日 水戸地方裁判所
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判決文本文16,044 文字)

主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して、9256万7377円及びうち8888万9737円に対する平成29年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。 4 本判決は、上記1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して、1億0219万4063円及びうち9813万3949円に対する平成29年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体である原告が、被告らに対し、原告が県内の涸沼川浄水 場で使用する活性炭の再生業務について平成27年3月13日に実施した一般競争入札において、被告らを含む16の事業者が、事前に再生業務の供給予定者及び入札価格を調整する談合行為をし、原告は、かかる談合行為がなければ形成されたであろう落札価格と、現実の落札価格との差額分につき損害を被ったなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害金合計1億0219万4063円(損 害金元本8921万3949円、確定遅延損害金406万0114円、弁護士費用892万円)及びうち損害金元本と弁護士費用の合計額に対する不法行為の日より後の日である平成29年3月17日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実 次の事実は、括弧内に掲げた証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 。 1 前提事実 次の事実は、括弧内に掲げた証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は、地方自治法1条の3第1項及び第2項の定める普通地方公共団体 であり、茨城県公営企業の設置等に関する条例1条1項1号に基づき、地方公営企業として、地方公営企業法2条1項1号の定める水道事業を設置し、経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長であり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 原告は、水道事業用施設として、涸沼川浄水場(以下「本件浄水場」という。)を含む10の浄水場を所有している。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告フタムラは、活性炭の研究並びに製造販売業及び廃炭等産業廃棄物再 生業等を目的とする株式会社である。被告フタムラは、令和3年4月1日、株式会社ツルミコールを吸収合併し、その権利義務を承継した(以下、「被告フタムラ」には吸収合併前の株式会社ツルミコールを含むものとする。)。 (2) 原告による浄水場用活性炭の調達原告は、次のとおり、一般競争入札の方法により業者を決定した上で、年度 ごとに粉末活性炭の購入単価契約や粒状活性炭再生業務の委託単価契約を締結し、これに基づき、原告が所有する浄水場で使用する活性炭を随時調達していた。 ア原告は、毎年2月、ホームページ上に、入札参加資格や委託する業務内容等(活性炭の仕様、契約期間中の予定数量等)に関する入札公告を行い、そ の掲載後速やかに入札説明書を配布する。その後、業者から入札参加 毎年2月、ホームページ上に、入札参加資格や委託する業務内容等(活性炭の仕様、契約期間中の予定数量等)に関する入札公告を行い、そ の掲載後速やかに入札説明書を配布する。その後、業者から入札参加資格等 の確認申請、原告による入札参加資格等の確認決定を行い、3月中に入札参加資格者による入札を行って、落札者を決定する。かかる入札において、参加者は、粉末活性炭の購入については1kg当たりの単価、粒状活性炭の再生業務については1池当たりの単価を入札価格として提示して入札に参加する。 イ入札にかかる調達期間(入札後に締結する単価契約の期間)は、原則として、粉末活性炭の購入は毎年4月1日から翌年3月31日まで、粒状活性炭の再生業務は毎年4月1日から翌年5月31日までであるが、これよりも長い調達期間を設定することもあった。 ウ原告は、入札により、粉末活性炭の購入単価(1kg当たり)、粒状活性 炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状活性炭の再生業務量に応じた代金を、落札業者に対して支払う。 (3) 窓口業者 浄水場向けの活性炭の納入や再生等を行う業者(メーカー)は、これらの業務に関して地方公共団体等が実施する入札に、自ら参加するほか、各地方公共団体等の有資格者名簿に登録のある他の業者を自社の代理店として入札に参加させている(以下、代理店として入札に参加する業者を「窓口業者」という。)。 (4) 平成27年度及び平成28年度の本件浄水場に関する入札 原告は、平成27年度及び平成28年度の2年間の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年3月 業者」という。)。 (4) 平成27年度及び平成28年度の本件浄水場に関する入札 原告は、平成27年度及び平成28年度の2年間の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年3月13日、一般競争入札(以下「本件入札」という。)を実施した。本件入札は、被告フタムラの窓口業者である大和化成株式会社(以下「大和化成」という。)が、1池当たり935万円の単価で落札し、原告は、大和化成との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を100 9万8000円(うち74万8000円は消費税及び地方消費税)、契約期間 を同日から平成29年3月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲3から甲6)。 (5) 原告による委託料の支払原告は、大和化成に対し、本件契約に基づき、別紙業務委託費の支払一覧中 「支払日」欄記載の日に、同「支払額(円)」欄記載の額の業務委託費を支払った(甲7)。 (6) 課徴金納付命令等ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15、16の業者に対し、 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、立入検査を行った。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定 者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、被告本町化学に対して課 を決定し、供給予定 者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、被告本町化学に対して課徴金1億6143万円、被告フタムラに対して課徴金3068万円の納付を命じた(甲1、甲2)。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、 8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令をした(甲1、甲2)。 エ被告本町化学は、公正取引委員会の上記各命令を不服として、東京地方裁 判所に対し、上記各命令の取消しを求める訴えを提起した。 (7) 本件入札以降の本件浄水場に関する入札ア原告は、平成29年度及び平成30年度の2年間の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成29年3月22日、一般競争入札(以下、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札を指すものとして、その実施年ごとに「平成29年入札」などという。)を実施し、株式会社東邦薬品が1池 当たり180万円で落札した(甲8の1)。 イ原告は、平成31年度(令和元年度)及び令和2年度の2年間の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月14日、一般競争入札(平成31年入札)を実施し、株式会社小西安が1池当たり310万円で落札した(甲8の2)。 2 争点本件の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。) は、 の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。) は、原告が実施する活性炭の入札に、自社が供給する活性炭(自社の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保するため、自社の活性炭を供給する供給予定者を事前 に決定し、その他の業者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意(以下「本件基本合意」という。)をした。そして、遅くとも平成25年10月24日以降、かかる合意の下に、①被告本町化学は、活性炭の入札に先立ち、16社のうち被告本町化学を除く他の15社(以下「15社」という。)と個別に面談をし、15社に対して、入札物件、自社の活性炭を供給した者、 受注者となった窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめ た入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物件の供給予定者として割り振り、④供給予定者の窓口業者が提示する入札価格を、供給予定者若しくは被告本町化学が単独で、又は両者の 協議により決定し、⑤供給予定者以外の業者は、供給予定者の窓口業者の入札予定価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イ被告らを含む16社は、本件入札についても、上記同様に、事前に被告フタムラを供給予定者と決定し、その入札予定価格を935万円として、大和 価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イ被告らを含む16社は、本件入札についても、上記同様に、事前に被告フタムラを供給予定者と決定し、その入札予定価格を935万円として、大和化成にその額で入札するように指示し、他の窓口業者にそれよりも高い価格 で入札をさせた。 ウこのように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本件入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの行為は、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達することを妨げる談合行為であり、不法行為を構成する。 (被告本町化学の主張)ア供給予定者は、従来から活性炭メーカーの間で定められたルールによって決定されていた。被告本町化学は、当該ルールに従って供給予定者が決定されるに当たって、活性炭メーカーからの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者と なることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果を他の活性炭メーカーに連絡していた。被告本町化学が行った行為は、事務的、機械的な連絡に過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定したり、主体 的に連絡を取ったりしたことはない。 イ活性炭メーカーは、被告本町化学が連絡行為等をしなくとも、メーカー間で直接連絡を取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なもので 行為をすることができた。活性炭メーカーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なものではなかった。被告本町化学は、活性炭メーカーに手 足として利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不法行為責任を負わない。 (被告フタムラの主張) 争う。 (2) 原告の損害額(原告の主張)ア被告らの行為により原告が被った損害は、現実の落札価格(以下「現実落札価格」という。)から、当該不法行為がなければ形成されたであろう落札価 格(以下「想定落札価格」という。)を差し引いた額である。そして、16社は、本件入札以前から、活性炭の入札案件について供給予定者及び入札価格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなくなった平成29年以降、令和2年までに実施された、本件浄水場にかかる粒状活性炭再生業務の入札における落札価格の平均をもって、本件入札における 想定落札価格と推認するのが相当である。 イ損害額元本は、8921万3949円である。その計算方法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、想定落札価格(平均落札価格)と現実落札価格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害額元本となる。 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、406万0114円である。その計算 方法は、別紙業務委託費の支払一覧及び別紙確定損害金の計算書のとおりである。原告は、別紙業務委託費の支払一覧中「 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、406万0114円である。その計算 方法は、別紙業務委託費の支払一覧及び別紙確定損害金の計算書のとおりである。原告は、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に同別紙中「支払額(円)」欄記載の金額の業務委託費を支払っており、これに上記損害割合を乗じた金額が同別紙中「請求額(円)」欄記載の金額である。そして、かかる各金額について、各支払日から平成29年3月16日までの年5分の 割合の日割り計算をした金額が、別紙確定損害金の計算書中「損害金合計(円)(円未満切捨)」欄記載の金額であり、これが原告が請求する確定遅延損害金である。 エ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、弁護士費用892万円 は、本件と相当因果関係のある損害である。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」という。)産の活性炭の輸入価格が下落し、重油価格が変動するなど、本件入札以降、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等に顕著な変動があり、平成29年度以降の現実落札価格の平均を もって想定落札価格を推認するのは相当ではない。 イ平成29年入札は、公正取引委員会による立入検査直後に実施されたものであり、談合あるいはその継続の疑いを避けるために低額で入札するという委縮効果が働き、落札価格が大きく下落したものであるから、想定落札価格算定の基礎とするべきではない。 ウ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成29年度以降の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札率(予定価格と落札価格の比率。なお、予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、 べきであり、仮に平成29年度以降の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札率(予定価格と落札価格の比率。なお、予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができない。)をもって想定落札価格を推認するべきである。また、平成29年度入札 は、落札率が異常に低く、想定落札価格算定の基礎とするべきではない。そ して、落札率をもって想定落札価格を推認し、損害を算定すると、2826万7956円となり、本件の損害はこれを超えるものではない。 エ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される場合であっても、上記同様に、損害の算定は控えめにするべきである。 (被告フタムラの主張) ア一般競争入札においては、基本合意に参加していない第三者(アウトサイダー)が入札に参加してくる可能性がある以上、アウトサイダーとの間で競争原理が働いている(あるいは働く可能性がある)。そのため、本件で原告の損害が認められるためには、①本件基本合意参加者側において、アウトサイダーの参加がないことを認識していたか、②本件基本合意参加者とアウトサ イダーとの間で調整行為があったことの立証が必要であるが、本件でそのような事実はなく、立証もされていない。 イ本件入札以降、入札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等の変動がなかったことの立証が不十分である。 ウ平成29年入札は予定価格と落札価格の差が著しいから、これを想定落札 価格算定の基礎とすることはできない。そして、平成31年入札の落札率は約73.11パーセントであるから、本件入札の想定落札価格は716万4780円(980万円×73.11パーセント)である。これを前提に損害を算定すると、2826万7957円であり、本件の損 落札率は約73.11パーセントであるから、本件入札の想定落札価格は716万4780円(980万円×73.11パーセント)である。これを前提に損害を算定すると、2826万7957円であり、本件の損害はこれを上回るものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告らの不法行為の成否)について(1) 認定事実括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア基本合意 16社は、遅くとも平成25年10月24日以降、次のとおり、東日本地 区所在の地方公共団体が発注する浄水場(本件浄水場を含む。)における粉末活性炭の納入、粒状活性炭の再生等の業務の入札について、事前に供給予定者を決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるよ うにしていた(甲10、甲11、甲19)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者は、15社の担当者と、毎年11月頃から翌年1月あるいは2月頃までの間に、面談を実施していた。かかる面談において、被告本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方 自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況等を取りまとめたもの。)を示すなどしながら、15社から、どの物件において活性炭の納入及び再生業務を行う業者(供給予定者)となりたいかの希望を聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、 各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各 いかの希望を聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、 各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各業者にこれを伝えて了承を取っていた。 (イ) 供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定者が相談して決めていた。かかる入札価格については、被告本町化学又は供給予定者が、当該窓口業者に連絡していた。 (ウ) 被告本町化学は、供給予定者の窓口業者の入札価格を基に、それよりも高い価格を協力価格として定め、供給予定者以外の業者に伝達し、他の業者は自社の窓口業者に当該協力価格で入札に参加させ、供給予定者が落札できるよう協力していた。 イ個別調整行為 被告らは、本件基本合意に基づき、本件入札について、次のとおり、被告 フタムラの窓口業者が落札できるよう調整行為(以下「本件個別調整行為」という。)をした(甲10、甲11)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者と被告フタムラの営業担当者は、本件入札の前年である平成26年12月頃から翌年1月頃に面談をした。かかる面談において、被告フタムラが供給予定者となる入札案件について双方の意向 が確認され、その中で、被告本町化学の営業担当者は、被告フタムラの営業担当者に対し、本件入札の供給予定者となることを打診し、被告フタムラの営業担当者はこれを了承した。 (イ) 被告本町化学の営業担当者と被告フタムラの営業担当者は、本件入札の数日前に、本件入札における被告フタムラの窓口業者の入札価格を935 万円と決め、被告フタムラの営業担当者は、窓口業者である大和化成に同額で入札をするように連絡し、被告本町化学の営業担当者は、他の入札参加業者に対して、同額よりも高 窓口業者の入札価格を935 万円と決め、被告フタムラの営業担当者は、窓口業者である大和化成に同額で入札をするように連絡し、被告本町化学の営業担当者は、他の入札参加業者に対して、同額よりも高い協力価格で入札するよう連絡した。 (2) 検討ア被告らの不法行為責任について 上記(1)アのとおり、被告らを含む16社は、東日本地区に所在する地方公共団体が発注する浄水場用活性炭の納入、再生等の業務の入札案件について、供給予定者及び入札価格を事前に調整する旨合意(本件基本合意)し、これに基づき、上記(1)イのとおり、本件入札においても、供給予定者を被告フタムラとし、その窓口業者である大和化成の入札価格を事前に決めていた (本件個別調整行為)ものであり、被告らのかかる行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害する不法行為に当たるというべきである。 イ被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、自社が行った行為は、活性炭メーカー間のルールによ って決定された供給予定者等の情報を、他のメーカーに連絡する事務的、 機械的なものに過ぎず、被告本町化学において供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない旨、被告本町化学は、活性炭メーカーに利用されたものであり、自社が行った行為は本件の談合において重要なものではなく、違法性を欠く旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲10) 中には、上記(1)アに沿う記載部分がある一方で、被告本町化学の上記主張に沿う記載部分はなく、その他上記主張を裏付ける証拠はない。また、本件入札について、被告本町化学が上記主張のとおりの連絡をしていたのであれば、かかる行為は、活性炭メーカー で、被告本町化学の上記主張に沿う記載部分はなく、その他上記主張を裏付ける証拠はない。また、本件入札について、被告本町化学が上記主張のとおりの連絡をしていたのであれば、かかる行為は、活性炭メーカー間での供給予定者及び入札価格の事前調整の一端を担うものであり、上記ア同様に不法行為に該当するも のというべきである。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、自社が独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらず、独占禁止法に反する行為はしていない旨主張するが、独占禁止法に違反することが不法行為責任を負う要件となるものではなく、仮に被告本町化学 が上記「事業者」に当たらないとしても、上記に認定した被告本町化学の不法行為責任の成否が左右されるものではない。 (3) 小括以上によれば、被告らは、共同不法行為者として、連帯して不法行為責任を負うと認めるのが相当である。 2 争点(2)(原告の損害額)(1) 総論入札談合によって当該入札の発注者に生じる損害は、談合が行われなければ当該入札において形成されたであろう想定落札価格と、実際の落札価格(現実落札価格)との差額をもって算定することができると解され、本件入札のよう に単価契約を前提とするものについては、上記差額が現実落札価格に占める割 合(損害割合)を算出し、単価契約に基づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許され、一般的には、入札価格形成の前提と なる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に り、これを直接に推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許され、一般的には、入札価格形成の前提と なる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該入札の直前の入札における落札価格(以下「直前価格」という。)をもって想定落札価格を推認するのが相当である(最高裁平成元年12月8日第二小法廷判決・民集43巻11号1259頁参照)。しかしながら、談合行為が相当長期にわたる場合や、当該入札の前においても同様の談合行為が行われていた疑いがある 場合には、直前価格をもって想定落札価格を推認することは相当でなく、談合行為終了後、公正かつ自由な競争によって行われた入札における現実の落札価格をもって想定落札価格を合理的に推認することができると解するのが相当である。 (2) 本件入札の想定落札価格 ア証拠(甲10の3、甲10の6)及び弁論の全趣旨によれば、16社の全部又は一部の業者は、本件入札以前においても、長期間にわたり、東日本地区に所在する地方公共団体の浄水場向け活性炭の納入及び再生業務について、事前に供給予定者やその入札価格を調整していたことが認められ、本件入札における原告の損害について、本件入札の直前に実施された入札におけ る落札価格(直前価格)をもって想定落札価格を推認することは相当でない。 イそこで、本件入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。 本件入札以降、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札として、平 成29年入札及び平成31年入札が実施されているところ(前提事実(7))、 これらの入札は、同一浄水場における同種業務につ 以降、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札として、平 成29年入札及び平成31年入札が実施されているところ(前提事実(7))、 これらの入札は、同一浄水場における同種業務についての入札であり、証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば、本件入札における発注業務の仕様と、平成29年入札及び平成31年入札における発注業務の仕様は、その基本部分が共通していることが認められ、かかる仕様において、入札価格形成に影響を及ぼす顕著な点に変更があるとの事情はうかがわれない。また、平成2 9年入札及び平成31年入札について、本件の証拠上、想定落札価格推認の基礎とすることができないほどに、価格形成の前提となる経済条件等に著しい変動があったとまでは認められない。 以上によれば、平成29年入札及び平成31年入札の落札価格をもって、本件入札の想定落札価格を推認することができると解するのが相当である。 ウその上で、原告は、上記2回の入札における落札価格の平均をもって、想定落札価格とするべきであると主張する。この点、談合解消以降相当数の入札が行われている場合には、価格形成の前提となる事情にさしたる変動がなくとも、入札参加者の経営判断等種々の要因により、入札ごとに落札価格に一定の変動があり得ることを前提に、その変動を平準化するべく、平均値を 求めて、これをもって想定落札価格と推認することは合理的といえる。しかしながら、本件においては、上記のとおり、平成29年入札と平成31年入札の2回の入札をもって想定落札価格を推認しようとしているのであり、平均値をもって想定落札価格と合理的に推認するには、その基礎となる入札の数が不足しているといわざるを得ない。 そして、想定落札価格は現実には存在しなかった価格であり、あくまで想 であり、平均値をもって想定落札価格と合理的に推認するには、その基礎となる入札の数が不足しているといわざるを得ない。 そして、想定落札価格は現実には存在しなかった価格であり、あくまで想定されるものに過ぎず、その額における落札が相当程度の蓋然性をもって想定できる範囲においてのみ認定されるべきである。そこで、本件入札の想定落札価格は、平成29年入札及び平成31年入札のうち、落札価格の高い平成31年入札の310万円と認めるのが相当である。 (3) 被告らの主張について ア被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、平成29年以降の入札は、中国産の活性炭の輸入価格や重油価格(A重油価格)の下落の影響を受けており、本件各入札時との比較において、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成29年以降の入札における落札価格をもって、本件各入札 の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 しかしながら、本件の入札は、粒状活性炭の再生業務を対象とするものであって、新たな活性炭を納入することを主たる内容とするものではなく、活性炭の輸入価格の変動が、再生業務の価格形成にどのような影響を及ぼすのかは明らかでない。また、被告本町化学は、中国産の活性炭の輸入価 格の平均単価につき、平成28年度に前年度比で約20パーセント下落しており、平成29年以降の入札にもその影響が残っている旨主張するが、そのような影響を裏付ける証拠はない。 その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することを不相当とするほ どに、活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 また、重油価格(A 入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することを不相当とするほ どに、活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 また、重油価格(A重油価格)の変動についても、これが活性炭の再生業務の価格にどのような影響を及ぼすのかは証拠上明らかでなく、これが活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認 めるに足りる証拠はない。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、平成29年入札は公正取引委員会による立入検査の委縮効果が及んでいるものであり、想定落札価格算定の基礎とすることはできないと主張するが、平成29年入札が公正取引委員会の立入検査の直後 に実施されていることから、入札参加者らが平成29年入札において入札 価格を控えめに設定した可能性は否定できないとしても、現にそのような萎縮効果が働いたことや、その程度を裏付ける証拠はなく、平成29年入札が公正取引委員会の立入検査の直後に実施されていることをもって、直ちに、平成29年入札を想定落札価格算定の基礎とすることができないとはいえない。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (ウ) また、被告本町化学は、落札率を用いて損害を算定するべきであると主張する。しかしながら、本件においては、本件入札以降、同一浄水場における同種業務についての入札が実施されており、前記のとおり、落札価格それ自体を比較することによって、想定落札価格を合理的に推認し、損害 を算定することができるのであるから、落札率を用いて損害を算定するべき理由はない。 イ被告フタムラの主張について(ア) 被告フタムラは、本件入札は一般競争入札であり、本件基本合意に参加し を算定することができるのであるから、落札率を用いて損害を算定するべき理由はない。 イ被告フタムラの主張について(ア) 被告フタムラは、本件入札は一般競争入札であり、本件基本合意に参加していないアウトサイダーが入札に参加することがあり得たのであるか ら、本件入札は競争原理が働いていたものであり、原告に損害は生じていない旨主張する。しかしながら、入札参加予定者らによって供給予定者や入札価格を事前に調整する談合行為が行われた入札については、少なくとも当該談合行為者ら間での競争は阻害されているのであるから、抽象的にアウトサイダーが入札に参加する可能性があったとしても、その一事をも って、直ちに当該入札において競争原理が働いていたということはできない。そして、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲10の2)中には、本件基本合意に関し、アウトサイダーの参加が見込まれる入札案件については、アウトサイダーよりも低い価格で入札するための調整をしていたとの旨の記載部分があるが、本件入札について、アウトサイダーが 入札に参加する可能性が具体的に見込まれており、被告らが、そのことを 前提に入札価格を決定したとの事情はうかがわれない。そうすると、本件入札について、入札参加可能性のあるアウトサイダーとの競争原理が現実に働いていたということはできない。 したがって、被告フタムラの上記主張は採用できない。 (イ) 被告フタムラは、平成29年入札は予定価格と落札価格の差が著しいか ら、想定落札価格算定の基礎とすることができない旨主張する。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができないこと、原告は、毎年、入札の3か い旨主張する。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができないこと、原告は、毎年、入札の3か月程前に、浄水場ごとに過去に入札に参加していた窓口業者5社を選定し、当該年度の入札に参加する 意向があるかを確認し、その意向がある業者から参考見積を徴取した上で、その中の最低見積額に基づき予定価格を定めていることが認められる。かかる事実に照らせば、原告が設定する予定価格についても、本件基本合意の影響が及んでいたものと推認され、本件基本合意の影響下において平成29年入札の予定価格が設定され、その後同年2月21日に公正取引委員 会による立入検査がされたことにより本件基本合意が解消し、同年3月22日に平成29年入札が実施されたのであるから、平成29年入札において予定価格と落札価格に大きな差が生じることは不自然なことではない。 そうすると、平成29年入札の予定価格と落札価格の差をもって、入札価格形成の前提となる経済条件等に変動があったと推認することはできず、 平成29年入札の落札価格を想定落札価格算定の基礎から除外するべき理由はない。 したがって、被告フタムラの上記主張は採用できない。 (4) 損害額の算定ア以上を前提に原告の損害を計算するに、本件入札における原告の損害割合 (現実落札価格に占める想定落札価格と現実落札価格の差額分の割合)は、 別紙損害額元本(認定)中「損害割合」欄記載のとおりである。そして、原告が本件契約に基づき支出した業務委託費の総額に、上記損害割合を乗じた額は、同別紙中「損害額」欄記載のとおりであり、かかる金額が、原告の損害金元本と認められる。 イまた、原告が本件契約に基づき支出した 件契約に基づき支出した業務委託費の総額に、上記損害割合を乗じた額は、同別紙中「損害額」欄記載のとおりであり、かかる金額が、原告の損害金元本と認められる。 イまた、原告が本件契約に基づき支出した個別の業務委託費に、それぞれ上 記損害割合を乗じた額は、別紙支払一覧(認定)中「認容額(円)」欄記載のとおりである。そして、かかる金額について、各支払日から、平成29年3月16日までに発生した遅延損害金は、別紙確定損害金(認定)中「損害金合計(円)(円未満切捨)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代 理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用として、上記アの損害金元本の約1割に相当する808万円は、本件個別調整行為と相当因果関係のある損害と認められる。 3 総括以上に説示したところによれば、被告らは、原告に対し、連帯して、次の金員 を支払う義務を負うものと認められる。 (1) 損害額元本:8080万9737円(2) 弁護士費用:808万円(3) 確定遅延損害金:367万7640円(4) 遅延損害金:損害金元本及び弁護士費用の合計8888万9737円に対す る平成29年3月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金第4 結論よって、原告の請求は、上記の限度で理由があるから、その限りでこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、訴訟費用の負担につき、民事 訴訟法61条、64条本文、65条1項本文を、仮執行宣言につき、同法259 条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は、相当でないから付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上 つき、同法259 条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は、相当でないから付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は、退官により、署名、押印することができない。 裁判長裁判官三上乃理子

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