令和5(ネ)328 配転命令無効等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月25日 札幌高等裁判所 棄却 函館地方裁判所 令和4(ワ)14
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判決文本文10,416 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 原判決を次のとおり更正する。 ⑴ 原判決主文3項中「109万4915円及びうち108万9128円」とあるのを「110万3969円及びうち109万8218円」と更正する。 ⑵ 原判決別紙2「確定遅延損害金計算書(原告B)」中、未払金額欄末尾の「¥1,089,128」とあるのを「¥1,317,677」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥1,094,915」とあるのを「¥1,323,464」とそれぞれ更正する。 ⑶ 原判決別紙3「確定遅延損害金計算書(原告E)」中、未払金額欄末尾の「¥2,877,254」とあるのを「¥3,099,754」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥2,915,587」とあるのを「¥3,138,087」とそれぞれ更正する。 3 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき、被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(以下、略語等は原判決の例による。原判決を引用する場合は、「被告」を「控訴人」、「原告」を「被控訴人」、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替える。)1⑴ 被控訴人らは、控訴人会社の従業員であったところ、控訴人会社は、被控訴人Bに対して函館営業所から鹿部出張所へ、被控訴人Eに対して函館営業所から江差営業所へ、被控訴人Cに対して日吉営業所から森出張所へ、被控訴人Dに対して函館営業所から江差営業所への配置転換をそれぞれ命じた。これに対し、被控訴人Cは一旦森出張所での勤務をしたものの、その後、控訴人会社を 退職し、被控訴人Dは江差営業所では勤務できないとして控訴人会社を退職し、被控訴人B及び被控訴人Eは、自 じた。これに対し、被控訴人Cは一旦森出張所での勤務をしたものの、その後、控訴人会社を 退職し、被控訴人Dは江差営業所では勤務できないとして控訴人会社を退職し、被控訴人B及び被控訴人Eは、自らに対する配転命令が無効であるとして配転先での勤務をしなかったところ、無断欠勤を理由に懲戒解雇された。 本件は、被控訴人らが、控訴人会社が被控訴人らに行った各配転命令は違法・無効であるところ、配転命令に従わなかったことが無断欠勤に該当するとしてされた被控訴人B及び被控訴人Eに対する懲戒解雇も違法・無効であり、被控訴人C及び被控訴人Dは違法な配転命令によって控訴人会社を退職せざるを得なくなったと主張して、控訴人会社及びその代表取締役である控訴人Aに対し、それぞれ、控訴人会社に対しては労働契約又は不法行為に基づき、控訴人Aに対しては会社法429条1項に基づき、以下の請求をする事案である。 ⑵ 被控訴人Bの請求ア控訴人会社に対して、①労働契約上の権利を有する地位にあること及び②配転先である鹿部出張所において勤務する労働契約上の義務がないことの確認、③令和4年11月分から令和5年1月分までの未払賃金及び令和4年12月分の冬期賞与の合計109万8128円及びこれらに対する各支払日の翌日から令和5年2月25日までの民法所定の年3%の割合による遅延損害金(以下、遅延損害金は全て民法所定の年3%の割合によるものである。)5841円の合計110万3969円並びにうち109万8128円に対する同月26日から支払済みまでの遅延損害金の支払、④令和5年2月分から本判決確定の日まで、毎月25日限り、1か月当たりの賃金(令和5年2月分及び3月分については22万8550円、令和5年4月分以降については22万9050円)及びこれらに対する各支払日の翌日である毎月 本判決確定の日まで、毎月25日限り、1か月当たりの賃金(令和5年2月分及び3月分については22万8550円、令和5年4月分以降については22万9050円)及びこれらに対する各支払日の翌日である毎月26日から各支払済みまでの遅延損害金の支払、⑤令和5年2月末から本判決確定の日まで、毎年7月10日限り夏期手当40万3290円及び毎年12月15日限り冬期手当44万8100円並びにこれらに対する各支払日の翌日(夏期手当について毎年7月11日、冬期手当について毎年12月16 日)から各支払済みまでの遅延損害金の支払(選択的請求として、団体交渉拒否を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済みまでの遅延損害金の支払)、⑥控訴人Aと連帯して、不法行為に基づく550万円の損害賠償及びこれに対する令和4年12月19日(懲戒解雇の日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 イ控訴人Aに対して、控訴人会社と連帯して、会社法429条1項に基づく550万円の損害賠償及びこれに対する令和4年12月19日(懲戒解雇の日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 ⑶ 被控訴人Eの請求ア控訴人会社に対して、①労働契約上の権利を有する地位にあること及び②配転先である江差営業所において勤務する労働契約上の義務がないことの確認、③令和4年3月分から令和5年1月分までの未払賃金、令和4年7月分の夏期賞与及び同年12月分の冬期賞与の合計287万7254円及びこれに対する令和5年2月25日までの確定遅延損害金3万8333円の合計291万5587円並びにうち287万7254円に対する同月26日から支払済みまでの遅延損害金の支払、④本判決確定の日まで、毎月25日限り1か月あたり22万2500円の賃金及びこれに対する各支払日の翌日であ 587円並びにうち287万7254円に対する同月26日から支払済みまでの遅延損害金の支払、④本判決確定の日まで、毎月25日限り1か月あたり22万2500円の賃金及びこれに対する各支払日の翌日である毎月26日から各支払済みまでの遅延損害金の支払、⑤令和5年2月末から本判決確定の日まで、毎年7月10日限り夏期手当38万2500円及び毎年12月15日限り冬期手当42万5000円並びにこれらに対する各支払日の翌日から各支払済みまでの遅延損害金の支払(選択的請求として、団体交渉拒否を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済みまでの遅延損害金の支払)、⑥控訴人Aと連帯して、不法行為に基づく550万円の損害賠償及びこれに対する令和4年12月19日(懲戒解雇の日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 イ控訴人Aに対して、控訴人会社と連帯して、会社法429条1項に基づく550万円の損害賠償請求及びこれに対する令和4年12月19日(懲戒解雇の日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 ⑷ 被控訴人Cの請求ア控訴人会社に対し、控訴人Aと連帯して、不法行為に基づく165万円の損害賠償及びこれに対する令和4年3月1日(不法行為後である訴状送達の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 イ控訴人Aに対して、控訴人会社と連帯して、会社法429条1項に基づく165万円の損害賠償請求及びこれに対する令和4年3月1日(訴状送達の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 ⑸ 被控訴人Dの請求ア控訴人会社に対し、控訴人Aと連帯して、不法行為に基づく165万円の損害賠償及びこれに対する令和4年3月1日(不法行為後である訴状送達の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 イ控訴人Aに対して、控訴人会社 、控訴人Aと連帯して、不法行為に基づく165万円の損害賠償及びこれに対する令和4年3月1日(不法行為後である訴状送達の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 イ控訴人Aに対して、控訴人会社と連帯して、会社法429条1項に基づく165万円の損害賠償請求及びこれに対する令和4年3月1日(訴状送達の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払。 2 原審は、原判決主文1項ないし17項の限度で被控訴人らの請求を認容し、その余の請求を棄却した。 これに対し、控訴人らは、本件控訴を提起し、敗訴部分の取消し、同部分の請求棄却を求めた。 また、被控訴人らは、本判決主文2項⑴ないし⑶のとおり、原判決の更正を申し立てた。 3 前提事実、本件の争点及びこれに対する当事者の主張の要旨については、次のとおり原判決を補正し、後記3のとおり控訴人らの当審における補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」の第2の2及び3記載のとおりであるから これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決7頁12行目の「令和3年12月15日」を「令和4年1月15日」に改める。 ⑵ 原判決9頁2行目の「事業場」を「事業上」に改める。 ⑶ 原判決9頁22行目の「賃金」を「運賃」に改める。 ⑷ 原判決11頁22行目の「本件D配転命令に応じず、」の次に「令和4年2月9日、」を加える。 ⑸ 原判決12頁16行目末尾に「(甲105)」を加える。 ⑹ 原判決40頁16行目末尾を改行し、次のとおり加える。 「7 被控訴人らが主張する未払の給与及び賞与は、原判決別紙2及び3(ただし、当審で更正後のもの)のとおりである。」 4 控訴人らの当審における補充主張⑴ 本件各配転命令が有効であること本件協約書7条2項に基づく協議は、平成28年4月1日から令和2 び3(ただし、当審で更正後のもの)のとおりである。」 4 控訴人らの当審における補充主張⑴ 本件各配転命令が有効であること本件協約書7条2項に基づく協議は、平成28年4月1日から令和2年10月1日までの人事異動71件中わずか1件であり、その1件についても、同条2項が予定している控訴人会社の労働組合との協議ではなく、発令の打診に対して、控訴人会社の労働組合を通じて控訴人会社に意向を伝えたというにとどまる。このように、控訴人会社における配置転換については、本件協約書7条2項に基づく協議はなされておらず、控訴人会社の労働組合もこれを是認してきたのであるから、本件協約書7条2項は死文化し、協議がされていないからといって、本件各配転命令が無効であるとはいえない。また、上記の実態に照らすと、本件協約書7条2項は時効により消滅し、又は同項に基づく主張は権利濫用に当たるというべきである。 ⑵ 本件各解雇が有効であることア被控訴人B及び被控訴人Eは、本件各解雇に際し、令和4年12月12日、 長期間の就業拒否に対する告知聴聞の機会が与えられたのに、これに出席しなかった。同人らは、弁解の機会を放棄したのであり、そのような者が後の訴訟で懲戒事由を争うことは信義則に反する。したがって、本件各解雇は有効である。 イ被控訴人らへの本件各配転命令は、労使協議を経て、平成24年頃から控訴人会社の全営業所で運用されている適正配置基準を満たすために発せられており、業務上の必要性があった。 また、被控訴人らは、控訴人会社の労働組合の副執行委員長であった訴外Fの弾劾に関与していたかもしれないが、本件各配転命令は、これを理由に被控訴人らを狙い撃ちにしたものではない。例として、被控訴人E及び被控訴人Dが委員長又は委員を務めた選挙管理委員会は、選 った訴外Fの弾劾に関与していたかもしれないが、本件各配転命令は、これを理由に被控訴人らを狙い撃ちにしたものではない。例として、被控訴人E及び被控訴人Dが委員長又は委員を務めた選挙管理委員会は、選挙の中立性を保つための機関であり、同委員会の委員は、訴外Fの弾劾に関与していない。被控訴人らを本件各配置命令の対象にしたことにより、控訴人会社の労働組合を弱体化させることにもならない。 ⑶ 被控訴人Bに対する一部の弁済控訴人会社は、令和5年10月30日付けで、被控訴人Bに対し、令和4年冬期手当26万6387円を支払った。 ⑷ 被控訴人らに生じた損害について仮に被控訴人らに損害が生じているとしても、被控訴人らは、控訴人会社の労働組合から毎月30万円の支払を受けているのであって、この範囲では、損害が生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、被控訴人らに対する本件各配転命令は無効であり、かつ、不当労働行為を構成するので、被控訴人B及び被控訴人Eの控訴人会社に対する労働契約上の地位の確認請求、本件各配転命令に基づく配置転換先で就労する義務がないことの確認請求、既発生及び本判決確定の日までの賃金支払請求、夏期手当及 び冬期手当の支払請求は理由があり、被控訴人B及び被控訴人Eの控訴人らに対する損害賠償請求は上記各被控訴人につきそれぞれ控訴人らの連帯により165万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で、被控訴人C及び被控訴人Dの控訴人らに対する損害賠償請求は上記各被控訴人につきそれぞれ控訴人らの連帯により110万円及びこれに対する遅延損害金を求める限度で理由があると判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、後記2のとおり控訴人らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」 びこれに対する遅延損害金を求める限度で理由があると判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、後記2のとおり控訴人らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」の第3の1ないし6のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決16頁25行目の「42の1及び2」を「資料42の1及び2」に改める。 ⑵ 原判決17頁3行目から4行目にかけての「甲45の1及び2、46の1及び2」を「甲46・資料46の1及び2」に改める。 ⑶ 原判決17頁16行目の「資料49の1、同49の252の1及び2」を「資料49~52の各1及び2」に改める。 ⑷ 原判決17頁24行目の「54の1及び2」を「資料54の1及び2」に改める。 ⑸ 原判決19頁21行目の「昭和30年協約は」から23行目の「ことに照らせば」までを、「両当事者は、昭和30年協約を合意し、「労仂協約書」と題する書面を作成し、「控訴人会社」「控訴人会社の労働組合」と記載し、各頁にまたがる形でそれぞれの印鑑を押印していることに照らせば(乙18の2)、代表者が記されていないとしても、労働者と使用者の労働条件にかかる協約が合意されたと認められる。そして、両当事者は、昭和30年協約の内容を改める場合には、昭和30年協約による労働協約書を改定するとの合意をして、その旨の「協定書」を作成し、両当事者とその代表者が記名し、それぞれの印鑑を押印していることが認められる(乙18の4等)。これらは、昭和30年協 約による労働協約書と一体となるものであるから、同労働協約書についても、両当事者の代表者が記されたと解することができる。そうすると、昭和30年協約は、両当事者の記名押印がある書面として作成されたものであって、」に改める。 ⑹ 原判決22頁26行目末 約書についても、両当事者の代表者が記されたと解することができる。そうすると、昭和30年協約は、両当事者の記名押印がある書面として作成されたものであって、」に改める。 ⑹ 原判決22頁26行目末尾に「なお、未払額については、本判決主文2⑵のとおり、原判決別紙2「確定遅延損害金計算書(原告B)」中、未払金額欄末尾の「¥1,089,128」とあるのを「¥1,317,677」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥1,094,915」とあるのを「¥1,323,464」と、本判決主文2⑶のとおり、原判決別紙3「確定遅延損害金計算書(原告E)」中、未払金額欄末尾の「¥2,877,254」とあるのを「¥3,099,754」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥2,915,587」とあるのを「¥3,138,087」とそれぞれ更正された額となる。」を加える。 ⑺ 原判決23頁1行目冒頭から3行目末尾までを「被控訴人B及び被控訴人Eの未払給与及び未払賞与は上記のとおりであるが、被控訴人Bは、110万3969円及びうち109万8128円に対する令和5年2月26日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を、被控訴人Eは、291万5587円及びうち287万7254円に対する令和5年2月26日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を求めているから、この限度で認容することになる。」に改める。 ⑻ 原判決23頁9行目の「原告ら」を「被控訴人B、被控訴人C、訴外G及び訴外H」に改める。 ⑼ 原判決24頁25行目から26行目にかけての「解雇は予定していないとしていた従前の方針(甲146)を翻し」を「別件の被控訴人Eと控訴人会社間の配転無効確認等仮処分命令申立事件(函館地方裁判所令和▲年(▲)第▲▲号)等の答弁書では、控訴人会 「解雇は予定していないとしていた従前の方針(甲146)を翻し」を「別件の被控訴人Eと控訴人会社間の配転無効確認等仮処分命令申立事件(函館地方裁判所令和▲年(▲)第▲▲号)等の答弁書では、控訴人会社としては現時点(上記答弁書提出時(令和4年6 月3日))では被控訴人Eについて懲戒解雇を行う予定はないから保全の必要性はないと主張していた(甲146)にもかかわらず」に改める。 2 控訴人らの当審における補充主張に対する判断⑴ 控訴人らは、前記第2の4⑴のとおり主張する。 しかしながら、労働協約について定める労働条件その他労働者の待遇に関する基準については、規範としての効力を与えられており(労働組合法16条参照)、このような機能及び効力に照らすと、当該労働条件等の改廃には労働協約の改正が必要であると解される。本件協約書7条2項は、労働協約である昭和30年協約10条と同義の内容が、双方の労使協議により改定を重ねる中で、廃止されず存続したものであることは補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の2(1)イのとおりであり、このような事情に照らすと、運用上、配置転換についての協議がなされていなかったことが多かったとしても、それだけでは当該規程の適用を除外すべき事情があったとはいえない。そして、配置転換については、配置転換を受ける従業員の事情や希望が大きく影響し、控訴人会社が従業員の意向や状況を十分に考慮して配置転換していた場合には、労働組合としては、これについて協議をしたり不服を申し立てたりする必要性は必ずしもないから、このような事情についても検討が必要であるが、控訴人会社において、配置転換対象者の意向に明確に反する異動が多数行われていたことを裏付ける的確な証拠がなく、労働組合側で協議をする必要性がなかったといえる。 むしろ、配置転 ても検討が必要であるが、控訴人会社において、配置転換対象者の意向に明確に反する異動が多数行われていたことを裏付ける的確な証拠がなく、労働組合側で協議をする必要性がなかったといえる。 むしろ、配置転換対象者の異議があったにもかかわらずなされた配転命令(令和2年10月1日付け訴外Iに対する配転命令)に対しては、控訴人会社の労働組合が抗議をしており、従業員の意思に反する配置転換がなされた場合には、控訴人会社の労働組合が抗議等の対応をしていて、従業員の意思に反する配置転換をする場合には、労使協議を経る必要性があると認識されていたのであるから、本件協約書7条2項が効力を有していたと解するのが合理的である。 また、消滅時効については、規範性のある労働協約の条項が消滅時効の対象 となるとの法律上の根拠はうかがえない。また、上記認定の経過に照らすと、本訴において被控訴人らが本条項違反を主張することが信義則に反するともいえない。 したがって、これらの点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ 控訴人らは前記第2の4⑵アのとおり主張する。しかしながら、告知と聴聞は不利益処分を課する上での手続的な要件であるものの、これに応じなかった場合にその後の訴訟手続において不服主張ができなくなるといった失権効を有するとの法律上の根拠や合理的な理由はうかがえない。控訴人会社が発出した事情聴取書には「正当な理由なく出頭しない場合は、権利を放棄したとみなし処分します」と記載されているものの、被控訴人B及び被控訴人Eがこれに同意したと認めることはできないし、これにより訴訟手続において不服の主張ができなくなると解することもできない。そうすると、被控訴人B及び被控訴人Eが告知と聴聞の手続に出席しなかったからといって、両名が訴訟において不服の主張をすることが信義に反す 手続において不服の主張ができなくなると解することもできない。そうすると、被控訴人B及び被控訴人Eが告知と聴聞の手続に出席しなかったからといって、両名が訴訟において不服の主張をすることが信義に反するとはいえない。 控訴人らは、第2の4⑶イのとおり主張する。しかしながら、適正配置基準についての適切な裏付けを欠き、訴外Fの弾劾請求に直接的に関与した組合員に不本意な配置転換が行われた経過や、控訴人会社の労働組合との団体交渉を拒むなどしたことから、業務上の必要性はなかったし、被控訴人ら組合員を対象として本件各配置命令がされたといえることは、補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の4⑵のとおりである。 ⑶ 控訴人らは、前記第2の4⑶のとおり主張する。 しかしながら、控訴人会社は原判決が言い渡された令和5年10月24日の後に、被控訴人Bに対して冬期手当相当額を支払っており、同人に対する令和4年冬期手当相当額を命じる判決部分については、仮執行宣言が付されている(原判決主文3項、20項)。一審被告が、仮執行宣言付一審判決に対して上訴を提起した後に、同判決によって履行を命じられた債務の存否を争いながら、 同判決で命じられた債務につきその弁済としてした給付については、それが全くの任意弁済であると認められる特別の事情のない限り、民訴法260条2項にいう「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」に当たる(最高裁昭和44年(オ)第993号同47年6月15日第一小法廷判決・民集26巻5号1000頁参照)。控訴人会社は、労働委員会からの助言により、上記手当相当額を支払っており、その後、同部分を含めて控訴していることから、上記の特段の事情に当たる事情はないといえる。そうすると、上記手当相当額の支払は、民訴法260条2項の「仮執行の宣言に基づき被告が 相当額を支払っており、その後、同部分を含めて控訴していることから、上記の特段の事情に当たる事情はないといえる。そうすると、上記手当相当額の支払は、民訴法260条2項の「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」に当たるといえ、本判決においてこれを考慮することはできない。したがって、この点に関する控訴人らの主張には理由がない。 ⑷ 控訴人らは、前記第2の4⑷のとおり主張する。 この点、被控訴人B及び被控訴人Eは、控訴人会社の労働組合から毎月30万円の借入れをしている旨の事実は認めている。しかし、借入れは、損害に対する弁済とは別の事柄であるから、借入れをもって被控訴人B及び被控訴人Eの損害の補填がされたと認めることはできず、上記事情は被控訴人B及び被控訴人Eに生じた損害の認定を左右しない。被控訴人C及び被控訴人Dについては、控訴人ら主張の損害補填がされた事実が認められない。したがって、この点に関する控訴人らの主張には理由がない。 第4 結論よって、原判決は相当であり、本件控訴には理由がないからこれを棄却することとする。なお、原判決中、原判決別紙2「確定遅延損害金計算書(原告B)」中の未払金額欄末尾、原判決別紙3「確定遅延損害金計算書(原告E)」中の未払金額欄末尾は、いずれも合計額の計算に誤りがあることが明らかであるから、①原判決主文3項中「109万4915円及びうち108万9128円」とあるのを「110万3969円及びうち109万8218円」と、②原判決別紙2「確定遅延損害金計算書(原告B)」中、未払金額欄末尾の「¥1,089,128」と あるのを「¥1,317,677」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥1,094,915」とあるのを「¥1,323,464」と、③原判決別紙3「確定遅延損害金計算書(原告 と あるのを「¥1,317,677」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾の「¥1,094,915」とあるのを「¥1,323,464」と、③原判決別紙3「確定遅延損害金計算書(原告E)」中、未払金額欄末尾の「¥2,877,254」とあるのを「¥3,099,754」と、確定遅延損害金及び未払賃金額元本合計欄末尾「¥2,915,587」とあるのを「¥3,138,087」とそれぞれ更正し、その旨を明らかにすることとする。また、これにより被控訴人Bと被控訴人Eに生じた未払金は上記のとおりとなるが、これら被控訴人らの請求額は、本判決第2「事案の概要」の1⑵及び⑶のとおりであり、これを超える額を認容することはできない。上記被控訴人らの本訴請求は一部請求と解される。 よって、主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官齋藤清文 裁判官戸畑賢太 裁判官伊藤康博

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