主文 一本件控訴をいずれも棄却する。 二控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。 事実及び争点第一申立(控訴人天理市長)一本案前 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの控訴人天理市長に対する訴えを却下する。 二本案 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの控訴人天理市長に対する請求を棄却する。 (その余の控訴人ら)一原判決を取り消す。 二被控訴人らの控訴人A、同B、同C、同D及び同Q株式会社に対する請求を、いずれも棄却する。 第二事案の概要一争いのない事実等(証拠を摘示した以外は争いのない事実) 1 当事者(一) 被控訴人らは、奈良県天理市の住民であって、被控訴人E及びFは、平成四年三月一八日に天理市監査委員に対して本件につき監査請求を行ったが、監査委員が同年五月一二日に右請求を棄却したため、同年六月九日に本訴を提起し、その余の被控訴人らは、同年九月一八日に同委員に対して同じく監査請求を行ったが、同委員が同年一一月一三日に右請求を棄却したため、同年一二月一一日に共同訴訟参加したものである。なお、右各監査請求は後記の天理市の本件土地処分の日から一年を経過した後になされたものであるが、被控訴人らにはこの点につき地方自治法(以下「法」という。)二四二条二項但書にいう「正当な理由」がある。 (二) 承継前の原審被告Gは、昭和六三年八月二八日から平成四年四月一日までの間天理市長の職にあり、天理市の財産を処分する権限を有していた(法一四九条六号)。 Gは、平成五年一二月一〇日に死亡し、妻の控訴人A、子の控訴人B及び同Cが、Gの権利義務を相続により承継した。なお、Gの子のH及びIは相続放棄した。 (三) 控訴人Dは、昭和六三年一〇月一六日から平成四年五月三一日までの間天理市助役の職にあった者であり、Gを補佐する義 が、Gの権利義務を相続により承継した。なお、Gの子のH及びIは相続放棄した。 (三) 控訴人Dは、昭和六三年一〇月一六日から平成四年五月三一日までの間天理市助役の職にあった者であり、Gを補佐する義務を負っていた(法一六七条)。 (四) 控訴人Q株式会社は、建設請負業等を目的とする資本金四八〇〇万円(平成三年二月五日に一二〇〇万円から増資された。)、従業員約一〇名の株式会社である(当審記録に添付の登記簿謄本、控訴人Q代表者)。 2 本件土地売却の経緯(一) 天理市が奈良県から購入した経緯天理市は、昭和四八年に、奈良県に対し、原判決別紙一覧表1の合筆前の本件土地欄記載の各土地(公簿上の地積合計一万四三〇八・八八平方メートル、以下「本件土地」という。)を代金二億二一二六万円余りで売却したが、その後本件土地が遊休地となっていた。天理市は奈良県に対し、平成二年八月三〇日付けで、温水プール及び付属スポーツ施設、テニスコート、公園等の整備計画に利用する目的であるとして本件土地の譲受を依頼し、同年九月二一日、天理市議会の議決(同月一一日議案提出、取得目的・民間活力による温水プール等施設用地)を経て、平成二年九月二八日、奈良県から本件土地を代金七億四五八二万七九五四円で購入した。本件土地は、平成二年一一月一日に合筆されて、原判決別紙一覧表1の合筆後の本件土地欄記載の二筆の土地となった。(甲一、三の3ないし5、七、四九、五五の1、2)(二) 天理市が控訴人Qに売却した経緯(1) Gは、天理市長として、平成三年二月二七日、控訴人Qとの間で、次の本件土地売買仮契約を締結した。(甲六)① 売買代金九億七九九四万四五五四円② 権利義務の譲渡等の禁止控訴人Qは、この契約によって生じる一切の権利義務を、同社代表取締役J以外の第三者に譲渡し、又は履行を委任 約を締結した。(甲六)① 売買代金九億七九九四万四五五四円② 権利義務の譲渡等の禁止控訴人Qは、この契約によって生じる一切の権利義務を、同社代表取締役J以外の第三者に譲渡し、又は履行を委任することができない。ただし、天理市の書面による承認を得たときはこの限りではない。 ③ 用途指定控訴人Qは、本件土地を経営する民間活力による温水プールを核としたレクリエーションゾーンの整備用地に供するものとし、天理市の承認を得た場合を除くほか、この用途以外に使用してはならない。 ④ 指定用途の変更控訴人Qは、やむをえない理由により、右指定用途を変更しようとするときは、変更を必要とする理由及び変更後の計画を記載した書面をもって天理市の承認を受けるものとする。 ⑤ 契約の効力の発生この契約は、天理市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分の議決に関する条例(昭和三九年三月天理市条例第一一号)三条の規定による議会の議決があったときに、この契約と同一の内容により本件契約を締結したものとする。 (2) 天理市議会は、平成三年三月一五日、右控訴人Qに対する本件土地売却を承認する議決(以下「本件議決」という。)をした(甲二、五一、乙一二、丙五一)。 (3) 本件議決は、法九六条一項八号に規定する財産処分に関する議決である。 (三) 転売及び指定用途変更の承諾平成三年五月一七日付けで、控訴人Qから天理市に対し、①本件土地のうち一万一六九九・〇九平方メートルを分筆し、株式会社近鉄百貨店(以下「近鉄百貨店」という。)へ建築条件付きで譲渡し、同年七月下旬予定にて所有権移転を行うこと、②当初申請した集合住宅計画の部分を、住宅市況の悪化により、事業が困難と判断し、右本件土地の一部を譲渡先である近鉄百貨店の物流センターの用途とすること、との変更申請が書面でさ 所有権移転を行うこと、②当初申請した集合住宅計画の部分を、住宅市況の悪化により、事業が困難と判断し、右本件土地の一部を譲渡先である近鉄百貨店の物流センターの用途とすること、との変更申請が書面でされた。Gは、その三日後の同年五月二〇日、天理市長としてこれを承諾し、その旨の承諾書が作成されて、控訴人Qに交付された。右の承諾について、天理市議会の議決はなく、また、同市議会に報告もなされなかった。(甲四二、四三、乙七、弁論の全趣旨)(四) 土地交換契約(1) 控訴人Qは、平成三年八月一三日、本件土地を、原判決別紙一覧表2記載のとおり分筆し、更に、同月二七日、原判決別紙一覧表3記載のとおり分筆した。 そして、同控訴人は天理市との間で、同月一九日、本件土地の一部である天理市<以下略>(一七三・六八平方メートル)及び同番<以下略>(二一・四七平方メートル)の合計一九五・一五平方メートルと、天理市所有の同所<以下略>(一一八・二九平方メートル)、同所<以下略>(一〇四・七二平方メートル)及び同所<以下略>(四七・九七平方メートル)の合計二七〇・九八平方メートルを交換した。更に、同控訴人は、同年九月一一日、同所<以下略>を同番<以下略>(五〇・九〇平方メートル)と同番<以下略>(六七・三八平方メートル)に、同所<以下略>を同番<以下略>(二四・九一平方メートル)と同番<以下略>(七九・八〇平方メートル)にそれぞれ分筆し、右交換用地の差七五・八三平方メートルについて、同月二五日、右<以下略>、<以下略>の各二の土地を、同年八月一九日付け寄附を原因として天理市に所有権移転登記した。(甲七、四五、五五の1、2、五六の1ないし5、丙七七、八一の3、4)(2) 以上の結果、<地名略>(一七三・六八平方メートル)及び同番<以下略>(二一・四七平方メートル)の合 所有権移転登記した。(甲七、四五、五五の1、2、五六の1ないし5、丙七七、八一の3、4)(2) 以上の結果、<地名略>(一七三・六八平方メートル)及び同番<以下略>(二一・四七平方メートル)の合計一九五・一五方メートルと同所<以下略>(六七・三八平方メートル)、同所<以下略>(七九・八〇平方メートル)及び同所<以下略>(四七・九七平方メートル)の合計一九五・一五平方メートルが交換されたこととなる。 (五) 本件土地の一部転売(1) 控訴人Qは、平成三年一〇月二一日、T住宅販賣株式会社の仲介により、U興産株式会社に対し、本件土地中の天理市<以下略>、同番<以下略>、同番<以下略>及び前記の交換により同控訴人が取得した同所<以下略>、同所<以下略>並びに国から同控訴人が買い受けた<地名略>(一八・四九平方メートル)の合計六筆の土地(合計一万一六九九・〇七平方メートル)を、代金四〇億円で売却した(丙一一ないし一六、二七ないし二九、五二、五四、六八、七一、七五、七六、七八、七九、八一の3、4)。 (2) 同日、U興産は近鉄百貨店に対し、右土地を代金四〇億円で転売した。近鉄百貨店は、右土地上に建物を建築し、物流センターとして利用している。(甲二一二、二一三、検甲一ないし一〇)(3) その結果、控訴人Qには、本件土地のうち、<地名略>(分筆後の登記簿上の地積二二〇六・七九平方メートル。なお、平成四年一一月二四日付けで錯誤を原因として三三八六・五七平方メートルと更正された。)と同町<以下略>(三七三・五一平方メートル。なお、平成四年一一月二四日付けで錯誤を原因として一八九・九二平方メートルと更正された。)が残された(甲五五の1、2)。 (六) 本件土地の一部返還等(1) 天理市は控訴人Qを相手に、平成七年、右(五)の(3)記載の二筆の土地の所有 を原因として一八九・九二平方メートルと更正された。)が残された(甲五五の1、2)。 (六) 本件土地の一部返還等(1) 天理市は控訴人Qを相手に、平成七年、右(五)の(3)記載の二筆の土地の所有権移転登記の抹消等を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起した(乙一六)。 (2) 控訴人Qは同天理市長に対し、平成八年四月三〇日、右訴訟について和解を受け入れられたい旨の書面を提出した。右書面の内容は、控訴人Qの力では温水プールのオープンをすることができないため、有限会社Rに同控訴人の債務処理及び温水プール建物及びその敷地の扱い一切を委任し、同社が天理市と右土地、建物の返還等にかかる契約を締結した上、天理市が全国各地でプールを経営している株式会社Vと建物賃貸借契約を締結することにより温水プールのオープンをしていただくという方法をとることを前提に、訴訟上の和解をお願いしたいというものである。(乙一四)(3) 右同日、天理市は控訴人Qから一切の権限委任を受けた有限会社Rとの間で、右(五)の(3)記載の天理市<地名略>、<地名略>筆の土地及び(四)の(1)記載の<地名略>の土地の所有権を天理市に返還すること、控訴人Qが国から払下げを受けた同町七四八番の土地を天理市に譲渡すること、右各土地上に建築された温水プールを中心とする鉄筋コンクリート造四階建建物も同控訴人から天理市に譲渡すること、右各土地の返還及び譲渡代金を二億五〇〇〇万円とし、右建物譲渡代金を七億円とすること等を内容とする「土地及び建物の返還、譲渡に関する仮契約」を締結した(乙一五)。 (4) 右(3)、(4)の経過を経て、平成八年五月一三日、大阪地方裁判所において、天理市と控訴人Qとの間に訴訟上の和解が成立した。その内容は、右(五)の(3)記載の二筆の土地の売買契約が解除されたことを確認し、所 、(4)の経過を経て、平成八年五月一三日、大阪地方裁判所において、天理市と控訴人Qとの間に訴訟上の和解が成立した。その内容は、右(五)の(3)記載の二筆の土地の売買契約が解除されたことを確認し、所有権移転登記の抹消をすること、右(四)の(1)記載の二一〇番三の土地についても同控訴人は所有権移転登記の抹消をすること、右温水プール用建物及びその敷地のうち三筆の土地を除く部分を同控訴人が天理市に売り渡すこと、その譲渡代金と右解除に伴う返還金との合計を九億五〇〇〇万円とし、これを天理市は有限会社Rに支払うこと等であり、右(3)の仮契約に沿ったものである。 二争点 1 本案前の争点(一) 控訴人Dの被告適格(1) 控訴人Dの主張控訴人Dは、法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当しないから、同控訴人には被告適格がない。 (2) 被控訴人らの主張被控訴人らは、控訴人DがGとの共同不法行為により天理市に損害賠償義務を負っているところ、天理市がその損害賠償請求を怠っているものであるから、同控訴人は、法二四二条の二第一項四号の「怠る事実に係る相手方」に該当するものであるから、被告適格がある。 (二) 法二四二条の二第一項三号請求と四号請求との関係(1) 控訴人天理市長の主張住民が、天理市に代位して法二四二条の二第一項四号の請求訴訟を提起している本件においては、当該事項について既に請求権が行使されているのと同視できるから、同一事実について請求権の行使を怠っている事実の確認を求める必要はなく、右四号請求とともになされた同項三号の請求訴訟には訴えの利益がない。 四号請求が目的を達成するための抜本的手段であるのに対し、三号請求は、執行機関を通じて権利を間接的に行使しようとするもので、四号請求との関係では補完的なものであるし、四号請求の相手方が 益がない。 四号請求が目的を達成するための抜本的手段であるのに対し、三号請求は、執行機関を通じて権利を間接的に行使しようとするもので、四号請求との関係では補完的なものであるし、四号請求の相手方が地方公共団体の長である場合に、同じ地方公共団体の長が自ら被告となっている訴訟への参加を強要されることは、実際上不都合である。 (2) 被控訴人らの主張四号請求は、住民としての固有の立場において、財務会計上の違法な行為又は怠る事実に係る職員等に対し損害の填補を求めることが訴訟の中心的目的となっており、この目的を実現するための手段として、訴訟技術的な配慮から代位請求の形式によることとされたものであって、民法四二三条の規定に基づく債権者代位訴訟とは異質のものである。地方公共団体の長は、職員が当該地方公共団体に違法に損害を発生させた場合には、不法行為ないし債務不履行に基づく損害賠償請求権を行使できるとともに、法二四三条の二の規定に基づき監査委員に対する請求手続を経た上賠償命令を行うことができるところ、四号請求は、地方公共団体の損害賠償請求権を代位行使するに過ぎず、四号請求の提訴によって、地方公共団体の長が賠償命令を発する方法を失うものではないし、四号請求に係る訴訟に行政事件訴訟法四三条三項、四一条一項、二三条による訴訟参加することも可能である。 また、法二四二条の二第一項は、住民訴訟の形態として一号から四号までの請求を認めており、複数の請求が成り立つ場合も想定できるのにかかわらず、複数の請求を許さないとも定めていないし、各請求の優先順位も定めていない。控訴人天理市長は、四号請求の相手方が地方公共団体の長である場合に同じ地方公共団体の長が自ら被告となっている訴訟に参加することは実際的ではない旨主張するが、四号請求の相手方はあくまで個人としての地方公 人天理市長は、四号請求の相手方が地方公共団体の長である場合に同じ地方公共団体の長が自ら被告となっている訴訟に参加することは実際的ではない旨主張するが、四号請求の相手方はあくまで個人としての地方公共団体の長であるのに対し、訴訟参加する地方公共団体の長は、地方公共団体の代表者としての公的な立場に基づく訴訟参加をするものである上、地方公共団体の長が交替することもありうるのであるから、公的立場と私的立場を混同した右主張には理由がない。 以上のとおり、四号請求と三号請求の複数の請求は是認されるべきである。 2 本案の争点(一) 本件土地の価格の相当性及び損害(1) 被控訴人らの主張① 控訴人ら主張の後記①ないし③の事由は、本件土地の時価算定の際の減価要因になるものではない。本件土地に構造物を建築するためには、地盤の強度に影響がない限り控訴人ら主張の廃棄物等は無関係であり、土壌改良の必要性はないところ、本件土地の支持基盤に問題はなく、また、廃棄物も地中に埋設されていたわけではないので、地盤の強度とは無関係であったのであるから、本件土地について土壌改良の必要はなかった。したがって、本件土地上に建物等の構造物を構築するにあたり、擁壁工事、盛土工事以外の土壌改良工事は不要であり、必要とされる擁壁工事、盛土工事に要する費用は二億円を超えることはない。 ② 前記交換後の土地を含む本件土地(一部)のうち一万一六九九・〇七平方メートルは、整地された後、平成三年一〇月二一日に代金四〇億円で売却されており、天理市から控訴人Qへの売買も右時点に近接しているから、天理市から同控訴人への売買時点における整地後の本件土地の適正価格(時価)は、右の価格(四〇億円、一平方メートルあたり三四万一九〇七円)であると考えるべきである。仮に、右主張に理由がないとしても、平成三年八 同控訴人への売買時点における整地後の本件土地の適正価格(時価)は、右の価格(四〇億円、一平方メートルあたり三四万一九〇七円)であると考えるべきである。仮に、右主張に理由がないとしても、平成三年八月一七日時点での大和不動産鑑定株式会社のKの鑑定によれば、「擁壁及び整地工事等にかかる費用」として二〇パーセントを減額補正し、本件土地の価格を一平方メートルあたり一五万六〇〇〇円としているから、整地後の本件土地の時価は少なくとも一平方メートルあたり一九万五〇〇〇円であったと考えられる。 ③ 本件土地の公簿上の地積(更正後)は一万五三〇五・〇四平方メートルであるから、本件土地の控訴人Qへの売却時点における時価は、五二億三二九〇万八二五七円であり、K鑑定を基礎にしても、少なくとも二九億八四四八万二八〇〇円であった。 ④ したがって、天理市は、本件土地の控訴人Qに対する売却により、右売却代金九億七九九四万四五五四円及び擁壁工事、盛土工事二億円を時価から控除した四〇億五二九六万三七〇三円ないしは、少なくとも一八億〇四五三万八二四六円の損害を被った。 ⑤ 後記控訴人天理市長が主張する天理市と控訴人Q間に訴訟上の和解が成立したことは認めるが、損害の一部が消滅したことは争う。 (2) 控訴人らの主張① 土壌改良本件土地には、三ないし五メートル程の厚さで、ビニール、プラスチック、木片、鉄片、瓦礫、焼却灰等の廃棄物が存在し、また、し尿、糞尿等の汚物が投棄されていた。そのため、天理市が控訴人Qに本件土地を売却した際、約四万立方メートルの残土処理が予定され、同控訴人は、実際に土壌改良工事のため八億四五〇〇万円余り(同控訴人の主張では、土壌改良、造成、外構工事等に一四億八四〇〇万円余り)を要した。 ② 温水プールの建設天理市と控訴人Q間の本件土地売買契約におい 実際に土壌改良工事のため八億四五〇〇万円余り(同控訴人の主張では、土壌改良、造成、外構工事等に一四億八四〇〇万円余り)を要した。 ② 温水プールの建設天理市と控訴人Q間の本件土地売買契約において、同控訴人には本件土地に温水プールを建設し、天理市民に低料金で利用できるようにする義務が課せられていたところ、同控訴人は温水プール完成のため約一五億円を要した。 ③ 土地転がしの非難回避天理市が本件土地を売却した当時の不動産市況からすると、本件土地を高額の代金で処分した場合、自治体が土地転がしをしているとの非難を受けたり、周辺土地の地価を吊り上げたとの非難を受けることになりかねなかったので、Gは、奈良県からの取得価格に約二億円を加算した価格に止めて、本件土地を売却することとした。 ④ K鑑定は、右①、②の事由を考慮しておらず、鑑定の価格時点もバブル最盛期であったのであるから、これにより時価を算定することは相当でない。 ⑤ 以上によれば、本件土地は適正な価格で処分されたというべきであり、また、奈良県から取得した価格より高額で処分されたのであるから、天理市に損害は発生していない。 (3) 控訴人天理市長の損害の一部消滅の主張前記一の2(六)の(4)記載のとおり、平成八年五月一三日に天理市と控訴人Qとの間に訴訟上の和解が成立した結果、天理市は、控訴人Qから本件土地の一部三六五二・二三平方メートルを取り戻したから、天理市に損害が発生していたとしても、そのうちの二五・五二四二パーセントの損害は消滅した。 (二) 本件議決について(1) 本件議決の有効性① 被控訴人らの主張本件議決に至る過程で、市長であるGには、適正な対価、譲渡の必要性及び妥当性について、虚偽ないし重大な説明義務違反があり、右の審査には重大な瑕疵があるから、本件議決には重大な瑕 被控訴人らの主張本件議決に至る過程で、市長であるGには、適正な対価、譲渡の必要性及び妥当性について、虚偽ないし重大な説明義務違反があり、右の審査には重大な瑕疵があるから、本件議決には重大な瑕疵がある。 ② 控訴人らの主張本件議決を無効とすべき法令違反ないしそれに準じるほどの重大、明白な瑕疵は存在しない。 (2) 本件議決が無効な場合の売買契約の効力① 被控訴人らの主張本件議決の瑕疵は、Gらによって意図的に隠蔽されており、外部から認識することは極めて困難であり、本件土地の大半が既に第三者に転売され、買主により建物が建築され使用されているなどの事情に照らすと、天理市から控訴人Qに対する本件土地売買契約の私法上の効力を否定することは、取引の安全を著しく害することになるから、同契約を無効と解するべきではない。 ② 控訴人らの主張議会の議決を必要とする契約において、有効な議決がなければ、同契約は無効とされるべきである。 (3) 議決があった場合の地方公共団体の長等の責任① 控訴人らの主張地方公共団体の財産処分権限は、本来地方公共団体の執行機関である長に帰属している(法一四九条六号)が、法九六条一項八号の規定は、条例で定める重要な財産の処分が当該地方公共団体の財政的基礎、住民の利害に重大な影響を及ぼすため、議会の議決を経ることを要することとして長の財産処分権限を喪失させ、この権限を議会に帰属させることとしたのであるから、地方公共団体の長はその議決に拘束されるものである。地方公共団体の長等の執行機関は、法一三八条の二の規定により、議会の議決に基づく事務を誠実に管理・執行する義務を負い、長の補助機関たる職員は長の指揮監督の下に事務を処理しなければならないのであるから、議決が法令又は条例に違反するか、重大かつ明白な瑕疵があることにより 決に基づく事務を誠実に管理・執行する義務を負い、長の補助機関たる職員は長の指揮監督の下に事務を処理しなければならないのであるから、議決が法令又は条例に違反するか、重大かつ明白な瑕疵があることにより無効とされる場合でない限り、これら長、職員に責任はない。 ② 被控訴人らの主張法九六条一項八号の規定は、財産の処分権限が地方公共団体の長にあることを前提に、地方公共団体の財産が不当に減少することを防止するため、議会の同意(許可)を得るよう求めたものであり、議会の議決の性格は執行機関に対する関係で許可的なものであり、本件土地の譲渡につき、Gに後記のとおり裁量権の濫用又は逸脱があり違法と評価される限り、Gらの責任は免れない。 仮に、議会の議決の性格を地方公共団体の意思を決定して執行機関に執行を義務づけるもので、地方公共団体の長は議会の議決の単なる執行者に過ぎないと解するとしても、適正な対価なくして財産を処分した長の責任が阻却されるのは、法九六条一項六号の議決の場合のみであり、適正な対価を下回る価格による処分を前提とはしていない同項八号の議決の場合は、議決があるという理由だけで当然に長の責任が阻却されるものではない。また、Gの前記説明義務違反による天理市議会の審査の瑕疵に鑑みると、Gらの責任は阻却されないと解するべきである。 (三) 控訴人らの責任(1) 被控訴人らの主張① Gの背任ないし任務違反行為Gは、天理市長として天理市に対してその事務を誠実に管理・執行する義務を負っており(法一三八条の二)、本件土地を適正な価格で譲渡すべき義務を負っていた(法二三七条二項)。しかるに、Gは、控訴人D及び同Q代表者Jと共謀の上、その任務に違反し、かつ、市長としての裁量の範囲を逸脱して、控訴人Qの利益を図るため、本件土地を、時価を著しく下回る九億七九九四 法二三七条二項)。しかるに、Gは、控訴人D及び同Q代表者Jと共謀の上、その任務に違反し、かつ、市長としての裁量の範囲を逸脱して、控訴人Qの利益を図るため、本件土地を、時価を著しく下回る九億七九九四万四五五四円という極めて低廉な価格で同控訴人に売却し、その結果、天理市に対し、前記の損害を与えた。 ② 控訴人D及び同Qの加担右のGの背任ないし任務違反行為について、控訴人D及びJは、Gと共謀して、控訴人QとT住宅販賣の架空の共同事業体の外観を作出したり、実体のない本件土地に関する企画コンペを実施するなどして議会工作をして議会の審査を誤らせる等の行為に加担したものであるから、同人らには共同不法行為に基づく責任がある。 共同不法行為の成立のためには、行為者の共謀や共同の認識は必ずしも必要ではなく、その行為が客観的に関連共同していれば足りると解するべきである。そして、控訴人Dは、右企画コンペの発案と実施、Jに対する共同事業体名義での企画コンペ参加の指示、これに基づく議会での虚偽説明等本件土地譲渡について重要な行為を行っている。また、Jは、Gや控訴人Dと緊密に意思疎通を図りつつ、見切り発車的に多額の請負代金を支払うなど契約前から本件土地の低価格での取得を前提に行動し、実体のない共同事業体名義での基本計画書(甲一〇)や引受書(甲四の2)を提出するなどして議会対策に加功したものである。したがって、控訴人DやJに、Gとの共謀や共同の認識がない場合にも、共同不法行為は成立するというべきである。 ③ 天理市長の怠る事実の違法性以上のとおり、G及び控訴人D、同Qには天理市に対する損害賠償責任があることは明らかであり、控訴人天理市長は、訴訟外の請求や訴訟手続を通じて損害賠償請求権を行使できたはずであり、本件訴訟に訴訟参加することも可能であった上、法二四三 には天理市に対する損害賠償責任があることは明らかであり、控訴人天理市長は、訴訟外の請求や訴訟手続を通じて損害賠償請求権を行使できたはずであり、本件訴訟に訴訟参加することも可能であった上、法二四三条の二の規定に基づく賠償命令の手続も履践しなかった。 (2) 控訴人らの主張控訴人D及びJがGの背任行為の共同不法行為者であるというためには、同人らはGが天理市から与えられた任務を負っていたわけではない(刑法の構成要件上の身分がない)から、これらの者の間で共同不法行為関係が成立するためには、①控訴人D及びJにおいて、本件土地譲渡がGの市長としての任務に違反することを知っていたこと、②同人らが、本件土地譲渡の結果、控訴人Qが利益を得る反面、天理市が損害を被ることを知っていたこと、③同人らが、本件土地譲渡をGに積極的に働きかけ、積極的に本件土地譲渡に加功したことを要するところ、同人らに右のような事実はない。 (3) 控訴人A、同B及び同Cの主張Gは、本件土地を改良し、温水プール等を建設して環境整備をしようという公益を図る目的の政策を実行しようとしたもので、天理市に損害を与える目的も、控訴人Qの利益を図る目的もなかったものであり、かつ、損害発生の具体的認識もなかったものであるから、同人の行為は何ら違法ではない。 (4) 控訴人D助役は、市長の補助機関に過ぎず、市長の指揮監督を受け、市長に絶対服従の関係にあり、本件土地の代金額決定等は、Gが控訴人Dに相談することなく、市長独自の職務権限に基づいてなしたものであるから、同控訴人には不法行為責任はない。 (四) 被控訴人らの請求(1) 法二四二条の二第一項四号に基づき、G及び控訴人D並びにJの天理市を被害者とする共同不法行為による損害賠償代位請求として、控訴人Aに対し二〇億二六四八万一八五一円、同 四) 被控訴人らの請求(1) 法二四二条の二第一項四号に基づき、G及び控訴人D並びにJの天理市を被害者とする共同不法行為による損害賠償代位請求として、控訴人Aに対し二〇億二六四八万一八五一円、同B及び同Cに対し各一〇億一三二四万〇九二五円、控訴人D及び同Qに対し各金四〇億五二九六万三七〇三円と遅延損害金の支払の請求(2) 予備的請求① 控訴人A、同B及び同Cに対し、同号の「当該職員」の任務違反による損害賠償代位請求として、右(1)と各同額の金員と遅延損害金の支払の請求② 控訴人Qに対し、同号に基づき、本件土地売買契約の無効を理由とする不当利得返還請求権の相手方に対する代位請求として、右(1)と同額の金員と遅延損害金の支払の請求(3) 控訴人天理市長に対し、同項三号に基づき、右の各請求を怠っている事実が違法であることの確認請求 理由 第一本案前の争点について一控訴人Dの被告適格被控訴人らは、控訴人Dが、Gとの共同不法行為によって天理市に対し損害賠償義務を負うべき者であると主張して本訴を提起しているのであるから、同控訴人は、法二四二条の二第一項四号の「怠る事実に係る相手方」に該当するということができる。したがって、控訴人Dには被告適格があるというべきであり、同控訴人のこの点に関する主張は理由がない。 二三号請求と四号請求の関係法二四二条の二第一項三号請求と四号請求の関係について、法は、同一の条項で住民訴訟の形態として右両請求を認めているところ、複数の請求を同時になすことを許さないとも規定していないし、右各請求の一方が他方に優先し、他方が補充的な請求に過ぎないとするような規定も設けていない。控訴人天理市長は、住民が四号請求訴訟を提起したことをもって、地方公共団体の長が地方公共団体を代表して損害賠償請求等 一方が他方に優先し、他方が補充的な請求に過ぎないとするような規定も設けていない。控訴人天理市長は、住民が四号請求訴訟を提起したことをもって、地方公共団体の長が地方公共団体を代表して損害賠償請求等の訴訟を提起したことと法律上同視できる旨の主張をするが、四号請求と三号請求の関係、すなわち右両請求の併合提起を許すか否かを判断するにあたって、右のように解することは、法が四号請求のほかに三号請求を認めた趣旨を没却するものであり、相当ではない。右両請求の併合提起を認めることに何ら不都合はないというべきである。 そして、控訴人天理市長は、本訴で求められているような天理市の債権は存しないと主張しているから、本件において被控訴人らが控訴人天理市長に対し違法確認の請求をする利益がある。 したがって、この点に関する控訴人天理市長の主張は理由がない。 第二本案の争点について一本件土地売却の経過 1 前記争いのない事実等及び証拠と弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (一) 昭和六三年夏ころ、奈良県から天理市に対し、本件土地が遊休地となっているので購入しないかとの打診があったが、その際は、天理市としては時価では購入できないということで、一旦話は立ち消えとなった(控訴人D)。 (二) 平成元年ころ、奈良県議会議員LからGを紹介されたS住宅株式会社は、Gに対し、天理市内でプールを経営したいとの話をし、Gは本件土地のことを話した。Gは、民間で本件土地を天理市から譲り受けるところがあることを前提に、本件土地譲渡を奈良県に要望することとした。(証人L、G、控訴人D)(三) 控訴人Q代表者Jも、平成元年ころ本件土地の話を業務上の関係者から聞いたことがあったが、その際は価格が三五億円程度であるとのことで、さしたる進展はなく終わった。そして、平成二年春ころ、Lか (三) 控訴人Q代表者Jも、平成元年ころ本件土地の話を業務上の関係者から聞いたことがあったが、その際は価格が三五億円程度であるとのことで、さしたる進展はなく終わった。そして、平成二年春ころ、LからGの紹介を受けて、JはGに会い、本件土地を控訴人Qが天理市から買い受ける話をもちかけた。(乙五、証人L、G、J)(四) 天理市は奈良県に対し、平成元年一一月ころから本件土地を市民のため有効活用したいので譲り渡してほしい旨の要望を出していた。そして、平成二年八月三〇日、天理市は奈良県に対し、本件土地の譲受を正式に依頼したが、その際添付した「天理市ごみ処理センター周辺整備計画」と題する書面には、前記争いのない事実等2の(一)に記載の整備計画を記載してあり、本件土地及びこれに隣接するし尿処理施設の改築に伴うコンパクト化により生ずる不用地約五〇〇〇平方メートルの計約二万平方メートルの用地を有効利用を図りながら整備するもので、譲渡を受ける県有地については天理市有地とし、民間活力を導入して温水プール等の整備をするとの記載があった。また、同じく添付の計画図には、各施設の配置が記載されていた。(甲三の3、4、七、三五の1、2)(五) 天理市は、控訴人Dの提案で、本件土地の奈良県からの取得の際の参考とし、併せて転売の際の参考とするため、平成二年八月大和不動産鑑定株式会社に本件土地の価格鑑定を依頼し、同年九月初旬ころ、鑑定書(K鑑定)が提出された。 これによると、本件土地の時価は、同年八月一七日時点で、二二億三〇八〇万円(一平方あたり一五万六〇〇〇円)とされていた。G及び控訴人Dとも、右鑑定結果を知っていた。(甲五、証人K、G、控訴人D)(六) 平成二年九月一一日、天理市議会全体協議会において、本件土地を奈良県から取得する議案に関して、控訴人Dは、民間活力を 及び控訴人Dとも、右鑑定結果を知っていた。(甲五、証人K、G、控訴人D)(六) 平成二年九月一一日、天理市議会全体協議会において、本件土地を奈良県から取得する議案に関して、控訴人Dは、民間活力を導入して温水プールを経営させること、廃棄物の処理もさせること、譲渡先の選定についてはコンペを行うこと等を説明した。また、同月一九日、同市議会総務財政委員会において、右議案に関する報告がなされたが、その中で、控訴人D及びM総務部長は、右(四)の整備計画を記載した書面を配付の上、これに基づく説明をし、控訴人Dは、本件土地を民間に譲渡して温水プールを経営させて本件土地を整備させることを説明した。また、控訴人Dは、議員の入札についての質問に対し、現在三社程度考えている専門業者があるが、これに計画案に提出させて、その中から天理市にとって有利で、立派なものを選定していきたいと考えている旨答弁した。(甲四八)(七) 平成二年九月二一日の市議会において、総務財政委員長から、本件土地取得についての議案に関して、民間活力による温水プール及び付属スポーツ施設用地として取得すること、民間活力導入にあたっては、実績等を踏まえ、優秀な業者を選定し、本年一一月末日までに同用地の処分を予定していること、同用地の処分後の活用については、温水プール及び付属スポーツ施設と業種を指定するため、低廉な価格での処分が予定されているが、同用地の処分については慎重に対処するよう特に要望するものであることの説明がなされた。これに対し、一議員から、民間活力導入ということで、用地そのものも民間事業者に売払い、原則としてすべて民間に任せるということでは疑問と不安が残るとして反対意見が出されたが、結局右議案は賛成多数で可決された。 そして、同月二八日、天理市は奈良県から、本件土地を買い受けたが、そ 払い、原則としてすべて民間に任せるということでは疑問と不安が残るとして反対意見が出されたが、結局右議案は賛成多数で可決された。 そして、同月二八日、天理市は奈良県から、本件土地を買い受けたが、その価格は、本件土地が元天理市所有地で遊休地であったことや天理市の有効活用したいとの目的等を勘案して、時価によらず、奈良県が天理市から取得した価格に契約日までの利息を加えて算定された。なお、平成四年二月に開催された奈良県総務警察常任委員会において、同県総務部長は、本件土地は、一八年前に奈良県が購入したときに、既に天理市がゴミ関係の廃棄物などを投入していた土地であるが、天理市に譲渡するについて廃棄物の処理費用を考慮して価格を定めたものではないし、右の処理費用を計算したこともない旨の説明をしている。 奈良県では、前記(四)の整備計画に沿った利用が行われると理解して、本件土地を天理市に譲渡したものである。一方、Gは、当初から、本件土地を奈良県から取得した後、これを民間に譲渡することを予定していたが、これを奈良県側に明確に伝えたことはなかった。(甲三の1、七、九の1、三五の1、2、四九、G)(八) Jは、本件土地譲受をGに申し入れた当初から、温水プール建設の負担付きであることは了解していたが、温水プール建設用地は本件土地の一部とし、大半をマンション建設用地として利用することを考えており、Gもこれを了解していた。控訴人Qでは、平成二年一〇月に本件土地買受を社内で決定していた。また、同控訴人の本件土地開発等に関する予算規模は四〇億円までであり、その中で収益を上げることをJは考えていた。(乙五、G、J)(九) 控訴人Dが中心となって、同人の発案により、本件土地の民間に対する譲渡につき、本件土地の利用計画企画書を提出させてコンペを行うこととなり、平成三年一 ることをJは考えていた。(乙五、G、J)(九) 控訴人Dが中心となって、同人の発案により、本件土地の民間に対する譲渡につき、本件土地の利用計画企画書を提出させてコンペを行うこととなり、平成三年一月一〇日、天理市長Gは、控訴人Q及びS住宅ほか二社にその旨の通知書を発した。右通知書では、企画書の提出期限は同月末日とし、応募する場合は同月一六日までに天理市に通知すべきこととされていた。これに対し、控訴人Qを除く三社からは、相次いで辞退する旨の通知があり、同控訴人のみが同月一四日に企画書(嘉幡町地内開発事業基本計画書)を添付して引受書を提出した。右基本計画書によると、計画の規模は本件土地及び周辺の市有地の合計二万平方メートル余りを計画の対象土地とし、スポーツセンターと一二階建の建物(マンション)を建設し、テニスコートや公園も設けるという内容とされており、事業費概算の中で、造成工事費四億円と残土処理費七億円が計上されていた。ただし、温水プールを含むと考えられるスポーツセンターの用地は三一一〇平方メートルで、本件土地全体から見れば四分の一足らずに過ぎなかった。また、右引受書は、天理市の市民レクレーションゾーン建設構想については現代社会の要求に応える画期的な計画と存じ、当社は全力を挙げ期待にそうべく努力することを誓い、御下命を御引受致します旨の記載がなされていた。(甲四の1ないし5、一〇、控訴人D)(一〇) 右(九)の引受書及び基本計画書は、いずれも、「Q株式会社・T住宅販賣株式会社共同事業体代表者・Q株式会社代表取締役J」名義の文書で、控訴人Qの代表者印が押捺されていた。(甲四の2、一〇)右共同事業体について、実際は控訴人QとT住宅販賣との間では、平成三年一月一六日付けの「専任媒介契約書」で本件土地の売却について専任媒介契約が締結されていた 印が押捺されていた。(甲四の2、一〇)右共同事業体について、実際は控訴人QとT住宅販賣との間では、平成三年一月一六日付けの「専任媒介契約書」で本件土地の売却について専任媒介契約が締結されていただけであり、共同事業体と呼べるような実体は全く存在しなかった。右共同事業体の外観を作り出すことは控訴人Dの発案にかかるものであり、一般的に名の知られた企業の背景がある方が議会向けによいとの判断に基づくものであった。 この点に関して、Jは控訴人Dに対し、控訴人QがT住宅販賣と共同事業体を組んだことはない旨の説明をしたが、控訴人Dは議会対策である旨を答えて、Jに協力を要請した経緯があった。(甲四の6、一三、J、控訴人D)(一一) Gは、前記共同事業体代表者の控訴人Q代表取締役のJ宛に、平成三年一月二五日付けで、前記企画書の採用通知を出した。その中には、本件土地処分価格が九億七九九四万四五五四円であること、転売禁止であるが、計画案について今後社会、経済状況等により、やむを得ず用途変更の必要が生じたときは、天理市と協議すること等の記載があった。(甲一一)平成三年二月二七日、天理市と控訴人Qとの間で、前記の本件土地売買仮契約書が取り交わされたが、この際、天理市側からは控訴人DとM総務部長が立ち会った。同契約書上に記載のある指定用途は、「温水プールを核としたレクリエーションゾーンの整備用地」であるが、実際は分譲マンション中心であり、このことは、Gや控訴人Dも了承していた。(甲六、J)(一二) 平成三年三月一日、本件土地処分に関する議案がGから天理市議会に対して提出された。その中で、処分の目的は「民間活力による温水プール等施設用地」とされていた。同月四日、同市議会において、同議案に関して、一議員から、九億七九九四万四五五四円との価格は、周辺の実勢価格ある 提出された。その中で、処分の目的は「民間活力による温水プール等施設用地」とされていた。同月四日、同市議会において、同議案に関して、一議員から、九億七九九四万四五五四円との価格は、周辺の実勢価格あるいは国土法に基づく制限取引価格と比べても大きな開きがあるのではないか等の質問が出され、これに対しM総務部長は、処分予定価格は、奈良県から取得した元金分、売払いまでに要する借入利息分、測量調査に要する経費分のほか、周辺整備費を加えた額であり、ゴミが埋められている関係で、この残土処理に多額な経費を必要とする事情がある旨の説明をした。(甲二、五〇)(一三) 平成三年三月五日、天理市議会文教民生委員会において、本件土地処分に関する議員からの質問に対し、M総務部長は、残土処理、造成工事で約一三億円かかるように聞いているとの説明をした(乙一〇)。 (一四) 平成三年三月八日、天理市議会総務財政委員会において、本件土地処分に関する議案について、M総務部長は、民間活力により温水プール等施設用地として本件土地を控訴人Qに九億七九九四万四五五四円で処分すること、計画コンペの予定業者四社選定して参加通知を出したが、三社が辞退し、控訴人QとT住宅販賣の共同事業体のみから企画応募があり、プール建設計画のいい業者として決定したこと、共同事業体の登記ができないので、処分の相手方を控訴人Qとしたこととの冒頭説明をした。議員からの価額の根拠についての質問に対し、同総務部長は、ゴミが埋め立てられており、その処分に相当の金額が必要であること、温水プールを建設するという条件付きであることから、奈良県からの取得価格に利子相当分と周辺整備等を加えた金額でもって協議が整ったものである旨の回答をした。更に、同総務部長は、議員からの質問に対し、控訴人Qもプール建設の経験があること、共同事業 ら、奈良県からの取得価格に利子相当分と周辺整備等を加えた金額でもって協議が整ったものである旨の回答をした。更に、同総務部長は、議員からの質問に対し、控訴人Qもプール建設の経験があること、共同事業体がプール建設にあたること、控訴人Qの資本金は約一億九二〇〇万円であり、T住宅販賣との間で事業計画についての同意書を取り交わしていること等の説明をした。控訴人Dも、共同事業体について、商売上のノウハウを提供するのがT住宅販賣であり、建設等を手がけるのが控訴人Qである旨の説明をした。そして、同日、同委員会は本件土地処分に関する議案について原案どおり可決した。控訴人Dは、M総務部長から、当日の説明内容について、事前に相談を受けていた。なお、控訴人Qにはプールを建設した経験はなく、この点について天理市側から確認されたこともない上、Gや控訴人Dも控訴人Qの内容について詳しく知っているものですらなかった。また、同控訴人の資本金は前記のとおり四八〇〇万円であった。(乙三、G、控訴人D、J)(一五) 平成三年三月一五日、天理市議会において、総務財政委員長から、本件土地処分に関する議案について、その内容を説明の上、本件については仮契約が締結されているとのことであるが、目的以外に使用されないよう本契約において明記されるとともに、建設にあたり駐車場等の設置について施工者に指導され、利用者の利便をはかられるよう要望し、本案を原案どおり可決すべきものと決したとの説明がなされた。これに対し一議員から、民活導入そのものが公共サービスと直接関係ないところで運営されるものであり、市民らにとって本当に利用しやすいものになるのかどうか保障がない、しかも、処分価格が実勢価格に比べてあまりに低く、企業優遇であるとの立場から反対意見が述べられた。しかし、同議案は賛成多数で可決された 民らにとって本当に利用しやすいものになるのかどうか保障がない、しかも、処分価格が実勢価格に比べてあまりに低く、企業優遇であるとの立場から反対意見が述べられた。しかし、同議案は賛成多数で可決された。 以上の経過から明らかなように、控訴人Qから出された前記基本計画書には、温水プールを核としたスポーツ施設と高層住宅(分譲マンション)の計画が記載されていたのに、本件議決に至る経過の中で、Gら天理市当局から市議会に対して、右の点についての詳細な説明を欠いていた。また、K鑑定の結果を説明するなどの方法により、本件土地時価算定に有益な資料が市議会に開示されることもなかった。 (甲七、五一)(一六) 平成三年五月二三日、天理市長Gと控訴人Qは、同控訴人が経営する本件土地上に建設予定の温水プールに関して、天理市民が低料金で利用できるようにすること等を内容とする協定書を取り交わした(甲四四)。 (一七) 本件土地のボーリング調査の結果である平成元年一二月付けの株式会社三協エンジニア作成にかかる「天理市嘉幡町地内焼却土埋設物調査結果報告書」及び平成二年三月付けの株式会社阪神コンサルタンツ作成にかかる「地質調査結果報告書」並びに平成三年一月付けの関東基礎設計株式会社作成にかかる「(仮称)天理スポーツセンター新築工事に伴う地質調査報告書」によれば、本件土地上層部の盛土約三ないし五メートルに廃棄物(ビニール、鉄片、タイル、煉瓦、木片、布切れ、プラスチック、焼却灰、瓶等)が埋設されていたが、し尿、糞尿は確認されていない。株式会社阪神コンサルタンツは、平成二年二ないし三月の調査期間中にメタン濃度の測定も実施したが、問題となるような数値ではなかった。右各調査結果によっても、本件土地の支持基盤に格別の問題があるとはされていないし、本件土地上にある廃棄物の数量についての 調査期間中にメタン濃度の測定も実施したが、問題となるような数値ではなかった。右各調査結果によっても、本件土地の支持基盤に格別の問題があるとはされていないし、本件土地上にある廃棄物の数量についての具体的記載はない。(甲一九九、二一四、二一五、乙一一)京都教育大学名誉教授で理学博士のNは、右株式会社阪神コンサルタンツ作成の「地質調査結果報告書」に基づき、次のような意見を述べている。すなわち、本件土地の敷地地盤は、上位より、盛土・沖積層・上部洪積層・下部洪積層の層序で構成されており、各層の層厚は、盛土四ないし六メートル、沖積層六ないし八メートル、上部洪積層三ないし六メートルであり、下部洪積層はそれ以深に分布しており、盛土層を除けば奈良盆地の一般的な地盤構成であること、盛土の上位はビニール、鉄片等の廃棄物を主体とし、下位の〇・六ないし一・五五メートルは砂質土ないし粘性土からなっていること、過去にし尿、糞尿等が投棄されていても、近畿地方の気象条件からすると、標準的には五ないし一〇年で分解は終了するため、衛生上の問題はないこと、以上からすると、建築物の敷地として利用する場合、特に注意するべき特徴のある地盤ではないこと、四階建マンションの敷地とする場合は、下部洪積層の砂質土層を支持地盤の対象とする杭基礎を採用する必要があること、平家建倉庫の敷地として利用する場合、一般的には直接基礎方式を用いることができること、右のいずれの場合も、盛土の地盤改良は不必要であるが、廃棄物が存在するため、整地や植栽に必要な〇・五ないし一メートル程度の厚さの良質土による盛土が必要であると思われ、それに要する費用は敷地の周囲に高さ一メートルの擁壁を設ける費用を含めて二億円を超えることはないこと、仮に地盤改良を行うものとすれば、本件土地の場合上部一メートル程度をセメント が必要であると思われ、それに要する費用は敷地の周囲に高さ一メートルの擁壁を設ける費用を含めて二億円を超えることはないこと、仮に地盤改良を行うものとすれば、本件土地の場合上部一メートル程度をセメント系の固化剤を混合する浅層安定処理工法によるのが相当であり、掘削置換工法等による必要はないこと、右浅層安定処理工法による場合の費用は二億二五〇〇万円を超えることはないこと、右各費用の概算は、財団法人建設物価調査会発行の「建設物価・一九九四年一一月号」及び各メーカー製造業者並びに大手建設会社への聞き取り調査結果に基づき算出したものであること、以上のように述べている。(甲二二四)(一八) Gは、本件土地の処分に関して、終始自らの意思を控訴人Dに伝えていた(G)。 2 証人O、G、Jの各供述中には、本件土地にし尿があったとする趣旨の部分が存在するが、これを裏付けるに足りる的確な証拠はないし、右1の(一七)の認定に照らしても、採用できない。 控訴人Dは、控訴人QとT住宅販賣との共同事業体に関して、T住宅販賣が同控訴人に対して、プール経営のノウハウ提供や資金面で協力すると聞いた旨の供述をするが、同供述でもその確認をしたとはしていない上、証拠(甲一三)に照らすと右供述自体採用することができない。また、控訴人Dの供述中右1の(一八)の認定に反する部分は、Gの供述に照らして採用できない。 Jは、前記共同事業体名義の基本計画書(甲一〇)の一枚目には関知していない旨の供述をしているが、一方で同じ共同事業体名義の引受書(甲四の2)を作成して天理市に提出しているのであるから、例え同人が右の一枚目には関知せず、控訴人Dに対し、控訴人Qが共同事業体を組んでいないことを強く訴えたとしても、結局は、控訴人Qに本件土地が譲渡されるようにするためには、右共同事業体の外観を作り 、例え同人が右の一枚目には関知せず、控訴人Dに対し、控訴人Qが共同事業体を組んでいないことを強く訴えたとしても、結局は、控訴人Qに本件土地が譲渡されるようにするためには、右共同事業体の外観を作り出すことが必要であることを容認して、これに協力することとしたと評価されるべきものである。また、Jは、平成二年八月ころ、本件土地の造成工事を含む残土処理費用の概算を見積もったところ、最低でも一七、八億円は必要であることが判明した旨供述するが、同人の供述自体が、右費用について一定しない数字を挙げていること(前記基本計画書中の造成工事費四億円、残土処理費七億円との記載を参照)からも明らかなように、正確な資料が当時存在したものではないし、右1の(一七)の認定からも、廃棄物の数量は不明であったというほかなく、右の費用概算に根拠があったと認めることはできない。また、控訴人Dは、株式会社阪神コンサルタンツ作成の前記報告書から、処理を要する残土が八万立方メートルで、その費用として八億円を要すると判断したと主張するが、右報告書(甲一九九)から右主張のような判断が導き出されるものと認めることはできない。本件土地の廃棄物処理について、実際に要した費用については、後記四のとおりである。 二本件土地の価格の相当性及びG、控訴人D、Jの責任について 1 本件土地売買仮契約をすることの違法性後記四認定のとおり、本件土地の本件土地売買仮契約当時(平成三年二月二七日)の時価は二二億三〇八〇万円であるところ、Gはこれを著しく下回る九億七九九四万四五五四円で売却したものである。市長が市の財産をこのような低価で売却することは、市に損害を与える行為であるから、市長の善管義務に反するものであり、市に対する関係で違法行為となる。 2 Gの責任Gは、本件土地の平成二年八月当時の時価が二 財産をこのような低価で売却することは、市に損害を与える行為であるから、市長の善管義務に反するものであり、市に対する関係で違法行為となる。 2 Gの責任Gは、本件土地の平成二年八月当時の時価が二二億三〇八〇万円であるとの鑑定結果を知っていた(前記一1(五))のであるから、Gは本件土地売買契約が違法であることを知り、少なくとも容易に知ることができたものといえる。 なお、G自身が本件土地の処分にあたってはK鑑定を参考にはしていないし、時価に基づくという考えもなかった旨明確に述べていること、Jも、「土地の価額というのは最後まで自分自身分からんで、うちが予算書を出す金額、幾らぐらいだということを聞かれて、一三億から一五億ぐらいの範囲だということは答えておりました。」と供述(原審第九回口頭弁論期日の同人の本人調書二五丁表)していることからも明らかなように、時価による買受ではなく、自己の予算の範囲内での買受を考えており、この考えはGにも伝わっていたと認められることを総合すると、Gは、本件土地を時価によらず、これより低廉な価格で控訴人Qの資金面の都合も考慮に入れながら売却しようと考えて、これを実行したものであることが認められる。そのうえ、右売却が低価のものである以上、Gは、本件土地売却により控訴人Qが利益を得ることは当然認識していたと認められるうえ、奈良県から本件土地の譲渡を受ける際から本件土地を民間に(具体的には控訴人Qに)譲渡することを決めていたのに、これを奈良県側に明確に伝えず、かつ、天理市議会に対し、K鑑定の結果等の説明をしなかっただけでなく、後記3で認定、説示のように、虚偽説明までしたものであり、Gもこれら議会対策を当然知悉していたものと推認されることからすると、Gは同控訴人の利益を図る目的で本件土地譲渡をしたものと推認できる。 前 記3で認定、説示のように、虚偽説明までしたものであり、Gもこれら議会対策を当然知悉していたものと推認されることからすると、Gは同控訴人の利益を図る目的で本件土地譲渡をしたものと推認できる。 前記一の認定によれば、本件土地に廃棄物が存在し、これを処理する必要があったことは明らかであるが、後記四で認定のように、このことを考慮しても、K鑑定の結果が不合理であると認めることはできず、本件土地譲渡当時、他に的確な時価算定資料もなかったものであるから、Gは、K鑑定に基づき本件土地処分価格を決定するべきであったというべきである。また、控訴人Qの前記基本計画書によると、温水プールを含むスポーツセンター建設用地は本件土地全体の四分の一足らずに過ぎず、右基本計画全体を見れば、分譲マンションを中核とする営利目的のものであることが明らかであること、及び前記1の(一六)によれば、温水プールを天理市民に低料金で利用させるという条件についても、採算を度外視した料金で利用させるべきことまで求められていたものとは認められないことからすれば、温水プール建設の条件が付されていたことを、本件土地売却価格算定にあたって考慮すべきであったとまで認めることはできない。更に、土地転がしとの非難回避のために処分価格を抑えた旨の主張は、法による時価での処分の要求を免れる正当な根拠になりえないものであることはいうまでもなく、採用できない。 控訴人Aらは、Gは公益を図る目的の政策を実行しようとしたもので、損害発生の具体的認識もなかった旨の主張をするが、以上の認定、説示によれば、Gが温水プールを中核とする環境整備という公益を図ることを主たる目的としていたと認めることはできないし、本件土地処分により天理市に時価との関係で損害が発生することは、Gとしても当然認識していたものと認められる。 中核とする環境整備という公益を図ることを主たる目的としていたと認めることはできないし、本件土地処分により天理市に時価との関係で損害が発生することは、Gとしても当然認識していたものと認められる。 3 控訴人Dの責任前記一の認定によれば、控訴人Dは、Gの本件土地を低い価格で譲渡しようとする方針を知悉しながら、天理市議会の本件土地譲渡に関する議決を取りつけるために、応募してくるのは控訴人Qのみであることを予想し、同控訴人以外の業者が応募することは実質的に困難な、ごく短い期間を定めて、形式的に企画コンペを実施し、架空の共同事業体をでっち上げ、これに基づき市議会で説明をしたもので、意図的に控訴人Qの本件土地利用計画の中心が分譲マンションであること等を秘したのみでなく、積極的に虚偽の説明をしたものであるというべきである。また、控訴人Dは、控訴人QとT住宅販賣との間に前記の専任媒介契約(甲四の6)が締結されたことを知っていた(控訴人D)のであり、そうすると、控訴人Qが本件土地を天理市から買い受けた後少なくともその一部を転売する予定であることを予め知っていたと認めるほかないところ、このような事実についても議会に秘していたということになる。本件土地譲渡の実行のためには、市議会による議決が必須の条件であることを控訴人Dは当然知っていたと認められることを前提に考えると、同控訴人は、Gの前記任務違反行為に、同人の意図を認識しながら積極的に加担したものと評価することが可能であるから、共同不法行為が成立すると認めるのが相当である。 控訴人Dは、Gに対し、もう少し高額で本件土地を処分してはどうかと進言した旨の供述をしているところ、前記認定の控訴人Dの行動をも考慮すると、この供述をたやすく採用はできない。 控訴人Dは、助役は市長の補助機関に過ぎないことを根拠に で本件土地を処分してはどうかと進言した旨の供述をしているところ、前記認定の控訴人Dの行動をも考慮すると、この供述をたやすく採用はできない。 控訴人Dは、助役は市長の補助機関に過ぎないことを根拠に責任がない旨の主張をするが、以上の認定によれば、右主張事実を根拠として同控訴人に不法行為責任がないということはできない。 4 Jの責任前記一の認定及び本項1の認定によれば、Jは、本件土地を時価によらないで取得することを当初から考えていたもので、Gが右意向に沿って協力してくれていることを認識しており、しかも、天理市議会との関係では、虚偽の共同事業体をでっち上げる等の工作が必要であるという状況であることも認識していたと認められる。更に、本件土地売買仮契約書上の指定用途も、分譲マンションが中核であるという実態とは異なる記載がされていたもので、また、同人は、少なくとも本件土地売買の仮契約締結直後に、いい企業相手なら転売を承諾するし、指定用途の変更も可能である旨の内諾を得ていたと供述しているところ、前記争いのない事実等2の(三)によれば、転売及び用途変更につき申請後わずか三日で天理市から承諾が与えられていることからすると、右供述は採用できるというべきである。 以上によれば、Jは、控訴人Qの利益を図り、その反面時価より低廉な価格で本件土地が処分されることにより天理市に損害が発生することを認識し、天理市議会に対して虚偽の共同事業体をでっち上げる等の工作が必要な状況であり、かつ、本件土地の用途指定についても、実態とは異なる記載をし、かつ、事実上意味をもたない転売禁止条項等も記載することが必要であったことも知っていたものであるところ、同人がこうした工作に追随する行動をとってきたのは、同控訴人の利益を図るため、Gや控訴人Dと少なくとも暗黙のうちに意思を通じて 禁止条項等も記載することが必要であったことも知っていたものであるところ、同人がこうした工作に追随する行動をとってきたのは、同控訴人の利益を図るため、Gや控訴人Dと少なくとも暗黙のうちに意思を通じて、違法な手段で市議会の議決を得ようとしたためであると推認することができる。 したがって、JはGが低価で本件土地を売却することに積極的に加功したものであるから、天理市に対し共同不法行為に基づく責任があるというべきである。 5 以上のとおりであり、G、控訴人D及びJには共同不法行為責任があり、G(その相続人である控訴人A、同B及び同Cは各相続分によることになる。)、控訴人D及びJが代表者である控訴人Qは、右共同不法行為により天理市に被らせた損害を不真正連帯の関係で賠償すべき義務がある。 三本件議決との関係について 1 本件議決の効力G、控訴人Dは天理市議会に対し、K鑑定の結果等の説明をしなかったばかりでなく、虚偽の説明までしたものであって、このようなG、控訴人Dの行為は不誠実なものといえる。しかし、市議会は市長等の説明を聞くだけでなく、更に説明を求め(法九九条)、自ら調査をする(法一〇〇条)こともできるわけである。そのうえ、現実の審議の中での反対意見の内容からも明らかなように、本件土地譲渡についての問題点は市議会における議論の中でも明らかにされていたのである。このことからすると、本件議決が市議会側が一方的に虚偽の説明等に騙された結果であるとまでいうことはできず、市議会が審議することが可能な程度の議案説明はあったということができるから、本件議決を無効とすべきほどの法令違反は存在しないと解するのが相当である。 2 本件議決と地方公共団体の長らの責任との関係法一四九条は、普通地方公共団体の長の担任事務の一つに「財産を取得し、管理し、及び処分するこ べきほどの法令違反は存在しないと解するのが相当である。 2 本件議決と地方公共団体の長らの責任との関係法一四九条は、普通地方公共団体の長の担任事務の一つに「財産を取得し、管理し、及び処分すること」を掲げているところ、法一三八条の二は、地方公共団体の長ら執行機関は、条例、予算その他の議会の議決に基づく事務並びに法令、規則その他の規程に基づく事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う旨定めており、議会の議決に基づく事務も「自らの判断と責任において」執行するべきこととしていることからすると、法九六条一項八号の議決がなされたからといって、地方公共団体の長は必ずこれに従うべきものではなく、同議決は長に財産処分の権限を付与するに過ぎない許可的なものであると解するのが相当である。 また、本件土地売却についての議会の議決は、適正な対価なくして譲渡することを許可する法九六条一項六号の決議ではないから、市長が低価で譲渡することを議会が認めたとすることはできない。 四損害 1 K鑑定について(一) 大和不動産鑑定株式会社奈良支社長取締役不動産鑑定士Kの鑑定(甲五)は、類似地域の事例等から価格水準を一平方メートルあたり二三万円とし、擁壁及び整地工事の必要性による減価率二〇パーセントと形状不整形による減価率一五パーセントの積数により三二パーセントの減価をした上、本件土地の平成二年八月一七日時点における価格を二二億三〇八〇万円(一平方メートルあたり一五万六〇〇〇円)との結論を導き出している。 (二) 証拠(甲三四、証人K)によると、大和不動産鑑定株式会社は過去にも天理市から鑑定依頼を請けたことがあること、同社の取締役Kは、控訴人Dと面談して本件土地の価格の鑑定を依頼された際、ニュアンスとして同控訴人が低いめの鑑定結果を期待してい 動産鑑定株式会社は過去にも天理市から鑑定依頼を請けたことがあること、同社の取締役Kは、控訴人Dと面談して本件土地の価格の鑑定を依頼された際、ニュアンスとして同控訴人が低いめの鑑定結果を期待していると感じたこと、この際、廃棄物が存在することは聞かされたが、鑑定にあたって特に条件が付されたことはなかったこと、Kは、現地に赴き、社内の他の専門家の意見も聴取した上、外部から確認の基づくものには過ぎないが、廃棄物処理等に五ないし六億円程度の費用は必要であるとの判断に達して、右(一)の減価の判断をしたことが認められ、控訴人Dのし尿や廃棄物の点は考慮に入れないで鑑定するように依頼したとの供述は、K証言に照らして採用できない。 (三) 右K鑑定の経過や手法に特に不合理な点があるとは認められない。擁壁及び整地工事の必要性等による減価につき、格別の根拠があるものでないことは、右(二)から肯定することができるが、これらの点については、もう一度検討することとする。 2 廃棄物処理等の費用について(一) 控訴人QとW建設株式会社との取引について控訴人QとW建設間の平成二年一二月二九日付け工事請負仮契約書(丙七三)の内容は、注文者を同控訴人とし請負人をW建設とし、工期を平成三年一月一五日から平成五年三月三一日まで、請負代金を二四億五〇〇〇万円とするもので、工事名は天理スポーツセンター建設工事及びその他工事であるが、造成工事や残土処理工事も含んでおり、残土処分量が一万五〇〇〇平方メートルを超える場合は別途工事とされている。同仮契約書に添付の内訳書によると、造成工事が四億四〇〇〇万円、残土処理(一万五〇〇〇平方メートル)工事が七億五〇〇〇万円とされている。また、右両社間の平成三年三月二〇日付け工事請負契約書(丙六五)によると、工期は平成三年三月末日から一〇月末日 四〇〇〇万円、残土処理(一万五〇〇〇平方メートル)工事が七億五〇〇〇万円とされている。また、右両社間の平成三年三月二〇日付け工事請負契約書(丙六五)によると、工期は平成三年三月末日から一〇月末日で、工事内容は土壌改良工事であり、代金は八億四五〇〇万円、土壌改良の対象は八三〇〇平方メートル×三メートルの約二万五〇〇〇立方メートルとされているものである。 ところで、右仮契約書について、Jは、前記天理市の企画コンペに参加するにあたって作成したものであると供述しているが、W建設代表者の証人Oは、銀行から融資を受けるために作成したという趣旨の供述をしている。また、右土壌改良工事請負契約書について、Jは、実際は平成三年一一月ころに、日付を遡らせて作成したもので、土壌改良工事の実際の出来高を元にして作成したものであると供述しているのに対し、Oはその記憶はないと供述している。更に、日付の記載のない天理スポーツセンター新築工事及び天理市嘉幡町宅地造成工事にかかる工事請負仮契約書(丙六七)に関して、Jは、平成三年二月ころに作成したものであるが、銀行に提出するため作成したもので、正式のものではない旨供述している。 次に、平成二年一二月二八日付けのW建設の控訴人Qに対する金額五億円(内二億円は小切手、三億円は手形)の領収証に関して、J及びOは、本件土地上の廃棄物を捨てる場所を予め確保しておく必要があり、三重中央開発株式会社を処分業者とし、クリーン・エンジニアリングことPを収集・運搬業者とする産業廃棄物処理委託契約書(乙二二)をW建設が取り交わす必要があったので、前払金の趣旨で支払をしたものであること、同控訴人が本件土地を取得できなかつたときは、同金員を返還する旨の覚書(丙七四)を、W建設は同控訴人に差し入れている旨を供述している。そして、Oは、実際に廃棄 払金の趣旨で支払をしたものであること、同控訴人が本件土地を取得できなかつたときは、同金員を返還する旨の覚書(丙七四)を、W建設は同控訴人に差し入れている旨を供述している。そして、Oは、実際に廃棄物を含む不良残土約二・二万立方メートル、約三万トンの搬出をなし、平成三年六月下旬にはこれを終えた旨供述している。しかしながら、J及びOとも、実際にどれだけの数量の廃棄物が搬出されたかの確認はしていないと供述している。 以上の説示と証拠(乙二二、二五、二七)によると、控訴人QがW建設に対し、本件土地の廃棄物等の不良残土の搬出を含む造成工事を請け負わせ、W建設が三重中央開発株式会社等の協力を得て実際に搬出をしたことを認めることはできるが、その数量は不明であるといわざるをえないし、費用の額についても、その相当性には疑問があるといわざるをえない。前記のNの意見書は、その内容が具体的で論理過程に疑問を差し挟む余地の小さいもので、単なる机上の空論ではなく、これを採用するのが相当であると認められるところ、O証人によれば、本件土地の土壌改良については掘削置換工法を用いたものであると認められ、木村意見書が採用している方法を用いてはいない。また、控訴人QとW建設間の仮契約書を含む契約書の作成過程について、JとOの供述に不一致が見られることや、W建設の発起人にGがなっていたこと及びOはLの親戚であり、同人からJを紹介されたものである(O証人)という人間関係からすると、J及びOの供述の信用性を高く評価することは相当でないというべきであると解されるからである。そうすると、前記土壌改良工事請負契約書(丙六五)に基づく契約が真実締結されたものであるとしても、同工事に八億四五〇〇万円を要したことの相当性には疑問が残るというほかないものである。 (二) Jは、W建設以外にも 土壌改良工事請負契約書(丙六五)に基づく契約が真実締結されたものであるとしても、同工事に八億四五〇〇万円を要したことの相当性には疑問が残るというほかないものである。 (二) Jは、W建設以外にも株式会社X等に本件土地の土壌改良工事等を請け負わせたとの供述をし、これを裏付けるための書証を提出しているが、Oも、W建設は本件土地全体の土壌改良工事を請け負ったもので、株式会社Xは知らないと証言していることや、Jの供述自体が不明確で、かつ、株式会社X等の行ったという工事の内容を具体的に認めるに足りる証拠がないことに照らすと、W建設が請け負った工事以外に本件土地の土壌改良及び造成工事が必要であったと認めることはできない。 3 再びK鑑定について右2で検討した結果に、前述のとおり、Jが平成元年ころ本件土地の価格を三五億円程度であると考えていたこと、前記木村意見書を採用するべきであると考えられること及びK鑑定自体が、天理市からの依頼の趣旨が低めの価格を希望するものであったことから、その影響を受けている可能性もないとはいえないことを総合すると、K鑑定の結論をもって、その価格時点における時価であると認めるのが相当であると解される。 控訴人らは、K鑑定は、土壌改良の必要性や温水プール建設の条件を考慮していないと主張するが、前者についてはこれを考慮していないとはいえないことは本項1の説示から明らかであるし、後者についても、前述二2のとおり、これを考慮すべきであるとは認められないものである。また、K鑑定は、本件土地の控訴人Qに対する譲渡の約七か月前である平成二年八月を価格時点とするものではあるが、この約七か月の間に本件土地の価格が変動したことを認めるに足りる証拠はなく、右両時点は近接しているということができるから、同鑑定の結果をもって、本件土地の譲渡時 八月を価格時点とするものではあるが、この約七か月の間に本件土地の価格が変動したことを認めるに足りる証拠はなく、右両時点は近接しているということができるから、同鑑定の結果をもって、本件土地の譲渡時点での時価であると認めるのが相当である。 4 損害以上によれば、Gらの共同不法行為により天理市に生じた損害は、右売買契約当時の本件土地の価格の二二億三〇八〇万円から、右契約による譲渡価格の九億七九九四万四五五四円を控除した金一二億五〇八五万五四四六円であると認めることができる。前記二で説示したとおり、天理市が奈良県から取得した価格を基準に損害の有無を論ずることは相当ではない。なお、前記争いのない事実等の2(五)の(3)のとおり、本件土地は地積更正の結果その面積が増加しているが、Gらにおいて、本件土地の譲渡時点で右増加を予測することが可能であったと認めるに足りる証拠はないから、損害額の算定にあたっては、K鑑定を基準にするほかない。 5 控訴人天理市長の損害の一部消滅の主張について平成八年五月一三日に天理市と控訴人Qとの間に訴訟上の和解が成立したことは当事者間に争いがなく、和解に至る経過及び和解内容は前記「事実及び争点」第二の一の2の(六)記載のとおりである。 右の和解内容によると、天理市が本件土地譲渡により生じた前記損害を控訴人Qに賠償させたものであるということはできないし、無条件に本件土地の一部を取り戻したものでもないから、損害の一部が填補されたものであると認めるのも困難であり、他に右和解により損害の一部が消滅したことを認めるに足りる証拠もない。 五天理市長に対する請求について本訴において天理市長が怠る事実の違法性に関して、Gらに損害賠償責任がないこと以外の主張をしていないことによれば、被控訴人らの控訴人天理市長に対する請求には理由が 五天理市長に対する請求について本訴において天理市長が怠る事実の違法性に関して、Gらに損害賠償責任がないこと以外の主張をしていないことによれば、被控訴人らの控訴人天理市長に対する請求には理由があるものと認められる。 第三結論以上の次第で、控訴人Aに対する金六億二五四二万七七二三円の、同B及び同Cに対する各金三億一二七一万三八六一円の、控訴人D及び同Qに対する各金一二億五〇八五万五四四六円の損害賠償金の支払とこれらに対する平成四年六月二四日以降の民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払請求を認容し、控訴人天理市長が右各金員の支払を右各控訴人らに求める請求を怠る事実が違法であることの確認請求を認容した原判決は相当であるから、本件各控訴を棄却することとする。 大阪高等裁判所第五民事部裁判長裁判官井関正裕裁判官前坂光雄裁判官三代川俊一郎
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