【DRY-RUN】○ 主文 一 原告らの被告横浜市長に対する請求にかかる訴えを却下する。 二 原告らの被告横浜市開発審査会に対する請求を棄却する。 三 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判
○ 主文一原告らの被告横浜市長に対する請求にかかる訴えを却下する。 二原告らの被告横浜市開発審査会に対する請求を棄却する。 三訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一請求の趣旨 1 被告横浜市長が、昭和五三年二月二八日付で京浜急行電鉄株式会社に対してなした横浜市建指令第五二開一〇〇三号開発行為の許可処分を取消す。 2 被告横浜市開発審査会が、昭和五三年六月三〇日付でした第一項の許可処分に対する原告らの審査請求を棄却する旨の裁決を取消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 二本案前の答弁(被告横浜市長)主文第一、第三項と同旨。 (被告横浜市開発審査会) 1 原告らの被告横浜市開発審査会に対する請求にかかる訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 三本案の答弁(被告横浜市長) 1 原告らの被告横浜市長に対する請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 (被告横浜市開発審査会)主文第二、第三項と同旨。 第二当事者の主張一請求原因 1 原告らの地位原告らは、いずれも横浜市<地名略>、<地名略>地区及び<地名略>地区に居住している者であり、原告らの居住地域は、後記開発許可処分にかかる開発区域に隣接しており、後記開発行為による被害を最も受ける立場にあるものである。 2 本件許可処分の存在と本件開発行為の概要(一) 訴外京浜急行電鉄株式会社(以下「京急」という。)がなした横浜市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>及び<地名略>、同市<地名略>、<地名略>及び<地名略>並びに同市<地名略>の各地区にわたつて所在する一八〇・三一七九ヘクタールの土地(以下「本件開発地域」という。)についての開発行為の許可申請に対し、被告横浜市長(以下「被告市長」という。)は、昭和五三年二月二八日付横 の各地区にわたつて所在する一八〇・三一七九ヘクタールの土地(以下「本件開発地域」という。)についての開発行為の許可申請に対し、被告横浜市長(以下「被告市長」という。)は、昭和五三年二月二八日付横浜市建指令第五二開一〇〇三号をもつて、都市計画法二九条に基づく許可処分(以下「本件許可処分」という。)をなした。 (二) 本件許可処分にかかる京急の開発行為(以下「本件開発行為」という。)の概要は、次のとおりである。 (1) 開発区域横浜市<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>及び<地名略>、同市<地名略>、<地名略>及び<地名略>並びに同市<地名略>(2) 計画規模宅地開発面積約一八〇ヘクタール市民の森等緑地面積約一三一ヘクタール合計約三一一ヘクタールうち市街化区域約四九・七ヘクタール市街化調整区域約二六一・三ヘクタール計画戸数約五〇〇〇戸計画人口約一万八五〇〇人 3 本件裁決の存在原告らは、本件許可処分を不服として、被告横浜市開発審査会(以下「被告審査会」という。)に対し、同年五月一日、行政不服審査法に基づいて審査請求をしたところ、同被告は、同年六月三〇日審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をなした。 4 本件許可処分の違法性(一) 本件許可処分の対象となつた本件開発区域約一八〇ヘクタールのうち、市街化区域はわずか約四九・七ヘクタールで、全体の約二七・六パーセントにすぎず、本件開発区域の大部分にあたる約一三〇ヘクタールは都市計画法上開発行為が原則として禁止されている市街化調整区域である。更に、右市街化調整区域に隣接する約一七〇ヘクタールは、首都圏近郊緑地保全法により近郊緑地保全区域に指定されており、本件開発区域及び隣接地域 開発行為が原則として禁止されている市街化調整区域である。更に、右市街化調整区域に隣接する約一七〇ヘクタールは、首都圏近郊緑地保全法により近郊緑地保全区域に指定されており、本件開発区域及び隣接地域は開発については二重の規制が加えられている。このような規制区域内の大規模開発である本件開発行為は、都市計画法の趣旨からして許されるものではなく、これを許可した本件許可処分は違法である。 (二) 都市計画法は、開発行為を許可するに当たつては、当該開発行為が、その対象となるべき地域及びその周辺地域の自然的環境歴史的環境を含む文化的環境の保全に配慮しているものであること、及び開発行為の対象となるべき地域の周辺の地域に居住する住民の人格権及び環境権を侵害することのないよう配慮しているものであることを許可の基準としていると解されるところ、以下に述べるとおり本件開発行為は開発行為の対象となるべき地域及びその周辺地域の自然的環境、歴史的環境を含む文化的環境を破壊し、開発行為の対象となるべき地域の周辺地域に居住する原告ら住民の人格権及び環境権を侵害することが明白であるから、本件許可処分には、本件開発行為が都市計画法の要求する右の基準を充足していないのにこれを許可した違法がある。 (1) 本件開発行為により、次のとおり本件開発区域を含む<地名略>地区の自然的環境は破壊され、原告らは緑の喪失による被害を被る結果となり、原告らの人格権、環境権が侵害される。 (ア) 本件開発区域を含む<地名略>地区の山林緑地は、円海山を中心に横浜市南部から鎌倉、逗子、横須賀に続く大規模な山林の一部を形成し、背後に歴史的風土特別保存地区に指定された鎌倉をひかえているというだけではなく、横浜市にとつて残された唯一の大規模な自然緑地として重要であり、かつ、最も活力の旺盛な森林地帯である。な 一部を形成し、背後に歴史的風土特別保存地区に指定された鎌倉をひかえているというだけではなく、横浜市にとつて残された唯一の大規模な自然緑地として重要であり、かつ、最も活力の旺盛な森林地帯である。なお、この地区の大部分が昭和四四年三月に近郊緑地保全区域に指定されている。 また<地名略>地区の山林緑地は、スギ、ヒノキ、サワラの植林、オニシバリ-コナラ群集、アズマザサ-ススキ群集等の代償植物及びわずかながら自然植生(ヤブコウジ-スダジイ群集)が生い茂り、多くの種類の樹木が生育し、カケス、アオバズク、ミソサザイ、トビ、モズ等多数の鳥類、昆虫、ヘビ、ウサギ等もみられるなど、自然の宝庫である。 (イ) ところで、森林緑地は、土や水とともに人間生活に不可欠の要因であり、それがもつ機能は極めて多様であるが、とくに近年における高密度社会の出現、都市化現象の進展等、新しい社会状況は、森林に対する社会的要請の一層の多様化(緑のトータル機能)をもたらした。そして、現代における森林の機能として、治山治水及び水資源●養のほか、生活環境保全機能(気象緩和、防火、防音、大気浄化など)、厚生機能(リクレーシヨン機能)、教育的機能(情緒的あるいは情操的機能など)などが考えられ、その意義は今後ますます重要なものとなる。 <地名略>地区の森林緑地も、右のような重要な機能を果してきた。 (ウ) 本件開発区域の周辺に居住する原告らは、(ア)、(イ)記載のような意義を有する<地名略>地区の森林によつて、健康で文化的で良好な生活環境を享受してきたのであるが、本件開発行為は、この<地名略>地区の森林のほとんどを破壊するものであり、その結果次のとおり原告らの享受していた良好な生活環境が破壊されることとなる。 (a) 原告ら本件開発区域の周辺に居住する者の生活環境が悪化するだけでなく、横浜市 林のほとんどを破壊するものであり、その結果次のとおり原告らの享受していた良好な生活環境が破壊されることとなる。 (a) 原告ら本件開発区域の周辺に居住する者の生活環境が悪化するだけでなく、横浜市民にとつてもかけがえのない自然を永久に失うことになり、都市全体の環境悪化がもたらされる。 現在横浜市において屈指の環境を誇る釜利谷地区に突如として約一八〇ヘクタールの宅地に約五〇〇〇戸、約一万八〇〇〇人の都市が出現したならば、その住環境が根本的に改変させられ、また、既に横浜市による金沢地先の埋立及び同所の工場等の立地により、自然環境の破壊と公害の発生が予想されているのに、更にその背後地たる釜利谷地区における本件開発行為による大規模開発によつて、自然、環境の破壊は決定的なものとなり、原告らの居住環境は相乗的に侵害される。 (b) また、<地名略>の森は、原告らのみならず、横浜市民、神奈川県民に自然に囲まれたハイキングコースという憩いの場を提供しており、このハイキングコースは、歴史的には鎌倉と金沢とを結ぶ主要路としての貴重な史跡としての意味をも有しているが、釜利谷地区の開発による森林緑地の喪失は、釜利谷地区にあるハイキングコースの右のような価値を決定的に損なうことになる。 (c) 更に、<地名略>地区に生育する草木、棲息する鳥獣、昆虫などのすべての生態が破壊される。 (エ) このように、本件開発行為は、横浜市に残された唯一かつ最大の森林を破壊して緑の喪失による被害、環境悪化をもたらし、原告らの人格権、環境権を侵害するものである。 (2) 本件開発行為に含まれる高速道路の開設により原告らの人格権、環境権が侵害される。 (ア) 被告市長は、京急に対し、本件開発区域内に高速道路(横浜-小田原線)予定地を確保させて、本件許可処分をなしたものであるから、右高速 る高速道路の開設により原告らの人格権、環境権が侵害される。 (ア) 被告市長は、京急に対し、本件開発区域内に高速道路(横浜-小田原線)予定地を確保させて、本件許可処分をなしたものであるから、右高速道路の開設を抜きにして、本件許可処分を考えることはできない。 (イ) そして、右高速道路が開設されるならば、一日当たり一〇数万台の自動車の通行が予定されている湾岸道路に接続されるものであり、相当の交通量が予想され、大気汚染「窒素酸化物、浮遊粒子状物質等)が深刻化し、更に騒音、振動等の被害が生じて、原告らの居住環境が悪化し、ゼンソク等の公害被害に見舞われることは明らかであり、身体、生命への侵害の蓋然性が強い。 (3) 本件開発行為に伴う工事によつて、本件開発区域の周辺地域において、既に受忍しがたい騒音、振動による被害が生じ、かつ、砂塵等の被害も発生している。 (4) 本件開発行為により<地名略>地区における歴史的環境が破壊される。 <地名略>地区には、古来より鎌倉を結ぶ古道がいくつか作られ、これらの古道のなかには朝比奈切通し(国の指定史跡となつている。)などの切通しもあり、歴史的に価値のあるものであるが、これらの古道の一部は、釜利谷の森を通つて鎌倉へ抜けるハイキングコースとなつている。 また、能見堂跡地は、釜利谷の森のハイキングコースの中途にあり、一息入れる絶好の場所であり、かつては金沢八景を眺望する最良の場所であつた。 このような釜利谷の森のもつ歴史的環境は、それ自体保全すべき重要な対象と考えるべきであり、本件<地名略>地区の開発は、この歴史的環境を破壊するものである。 (三) 本件許可処分には、以下に述べるとおり、都市計画法(昭和五五年法律第三四号による改正前のもの、以下同じ。)三三条の定める開発許可の基準に違反する違法がある。 (1) 都市計 るものである。 (三) 本件許可処分には、以下に述べるとおり、都市計画法(昭和五五年法律第三四号による改正前のもの、以下同じ。)三三条の定める開発許可の基準に違反する違法がある。 (1) 都市計画法三三条一項八号は、一定規模以上の開発行為にあつては、開発区域及び周辺地域における環境を保全するため、開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全その他の措置が講ぜられるよう設計が定められていなければならない旨規定する。しかるに、本件開発行為にかかる設計においては、前記のとおり釜利谷地区の森林をほとんど破壊し、また表土の大半を廃棄物として捨てるなど、これらの措置が講じられておらず、右規定に定める基準を充たしていないのであるから、これに許可を与えた本件許可処分には、右規定に違反する違法がある。 (2) 都市計画法三三条一項九号は、一定規模以上の開発行為にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されるよう設計が定められていなければならない旨規定する。 しかるに、本件開発行為にかかる設計においては、前記のとおり、その開発区域内に高速道路の建設を予定してその敷地を確保しているが、環境悪化をもたらすことの明らかな高速道路予定地を住宅地内の真中に確保し、それに対する環境保全のための措置もなされておらず、また高速道路予定地に隣接して高層住宅が計画されているなど右規定に定める基準を充たしていないのであるから、これに許可を与えた本件許可処分には右規定に違反する違法がある。 (3) また、本件開発行為に伴う工事によつて、原告らの居住する建物等の一部に亀裂等の被害が生じているが、本件開発区域内にも、かつて谷であつたところを埋めた区域もあり、開発区域内の造成 違法がある。 (3) また、本件開発行為に伴う工事によつて、原告らの居住する建物等の一部に亀裂等の被害が生じているが、本件開発区域内にも、かつて谷であつたところを埋めた区域もあり、開発区域内の造成のために土盛をすることによつて、地盤の変化が生じ、都市計画法三三条一項七号に違反するおそれも十分ある。 (四) 本件許可処分は住民の同意を欠くもので手続的に違法である。 (1) 開発にかかわる行政権の行使については、当該行政庁は、開発主体が民主的手続(開発計画とそれが環境に及ぼす影響の事前の公表、計画そのものの是非を含めた住民との誠実な協議、住民の開発計画に対する同意を得るための最大限の努力等)を履践したか否かを調査し、これが欠如している場合は、許認可の要件を欠くものとしてこれを許可してはならない。 そうして、住民は、開発行為の許可につき同意権を有するものであり、住民の同意を欠く場合には、開発行為の許可をしてはならない。 すなわち、住民の右同意権は、国民主権、民主主義の原理、憲法三一条、一三条に基づく手続的権利の保障、地域の環境は地域の住民が自ら支配し決定するという住民自治の権利、住民主権、憲法二五条、一三条、九二条によつて認められる。また、開発行為の許可をするには住民の同意を要するとの理念は、一つの社会的規範であるのみならず、法的確信を付与され、法規範にまで高められており、法例二条によつても、住民の右同意権が認められる。 (2) 被告市長は、京急との間で、本件開発行為を許可するには、京急において本件開発行為に対する周辺地域の住民の同意を得ることを要件とする旨合意をした。これは、公法上の合同行為類似の行為であり、これによつて周辺地域の住民の同意を許可の要件とする具体的法規が定立されたというべきである。 また、被告市長は、住民の陳情に対し、昭和五一年 る旨合意をした。これは、公法上の合同行為類似の行為であり、これによつて周辺地域の住民の同意を許可の要件とする具体的法規が定立されたというべきである。 また、被告市長は、住民の陳情に対し、昭和五一年一月二四日付、同年五月一〇日付、同月二七日付等の文書で、京急の<地名略>地区開発については、周辺地域住民らの同意がなければ許可しない旨表明し、同趣旨の発言を繰り返してきており、同年九月二六日に、横浜市、京急、「釜利谷開発による環境破壊から住民を守る会」の三者の話合いが行われた際にも、横浜市の担当者は、右「守る会」に対し、住民の同意がなければ釜利谷開発は許可しない旨言明した。 原告らは、右「守る会一の会員である。このように、被告市長と原告らを含む住民との間には、住民の同意を本件開発行為を許可するための要件とする旨の合意がなされ、公法上の権利義務関係が形成された。 (3) ところが、京急は、住民の反対運動を切り崩し、形の上の住民同意を得るべく、あらゆる手段をもつて地域住民を分断する策謀をおしすすめ、横浜市はこれを制止することなく、かえつて陰に陽に助勢した、-被告市長は、このような状況のもとで、しかも本件開発行為によつて最も深刻な影響を受ける近隣住民の大多数及び自治会等が本件開発計画に同意していないにもかかわらず、本件許可処分をなしたものであり、行政手続における適正、民主的手続の要請に反し、住民の同意権を侵害し、かつ、前記住民同意を要するとの約定に反するものであるから、本件許可処分は違法である。 (五) 本件許可処分は情報公開を欠くもので違法である。 手続的権利ないし適法手続の保障の原理によれば、前記(四)の同意権を実効あらしめるために、開発行為によつて、環境に対しいかなる影響が予測され、その保全についていかなる措置が講ぜられるかなどの情報が事前に公 権利ないし適法手続の保障の原理によれば、前記(四)の同意権を実効あらしめるために、開発行為によつて、環境に対しいかなる影響が予測され、その保全についていかなる措置が講ぜられるかなどの情報が事前に公開されるべきであり、環境の主体である住民はこれを知る権利がある。 しかるに、本件許可処分は、これらの資料、情報が全く示されないままなされたものであり、違法である。 5 本件裁決の違法性被告審査会のなした本件裁決には、前記4において指摘した本件許可処分の違法を看過してなされた本件許可処分と同様の違法があるばかりでなく、昭和五三年六月二九日に開催された口頭審査において、被告審査会から、原告ら及び処分庁に対して資料の提出を求めていたにもかかわらず、原告らからの資料の提出を受けないまま、翌三〇日審査請求を棄却する旨の裁決をなしたもので審査手続上の違法がある。 6 結論よつて、原告らは、本件許可処分及び本件裁決をそれぞれ取り消すことを求める。 二本案前の主張(被告市長) 1 本件許可処分は、一般的、抽象的性質を有するいわば中間段階の処分にすぎず、それ自体原告らに対しては、その具体的な権利義務ないし法律上の利益に法律的変動をひきおこすものではないから、原告らが本件許可処分の取消訴訟を提起しうるだけの事件の成熟性を欠き、本件訴えは却下されるべきである。 すなわち、本件許可処分は、その相手方たる京急に対しその計画した開発行為をなしうる資格を付与したにすぎないか、若しくは京急の計画を承認したともいうべきものであつて、京急が現実に宅地造成や建築物の建築、森林の開発、道路工事等の個々具体的な行為をしようとするときは、本件許可処分とは別に、その行為の性質、種類等に応じ、宅地造成等規制法、建築基準法、森林法、農地法、道路法、下水道法等多数の関係法令の規制を受け、こ 工事等の個々具体的な行為をしようとするときは、本件許可処分とは別に、その行為の性質、種類等に応じ、宅地造成等規制法、建築基準法、森林法、農地法、道路法、下水道法等多数の関係法令の規制を受け、これらの法令所定の許可、確認等の行政処分を受けなければならないし、私法上の行為をも必要とするのである。 したがつて、原告らの権利救済は、本件許可処分に後続する各別の処分ないし私法上の行為に対して認めれば足りるのである。 2 原告らは、本件許可処分取消訴訟の原告適格を有しないから、本件訴えは却下されるべきである。 (一) 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格の要件として、取消を求めるにつき法律上の利益を有する者と定めているところ、右法律上の利益がある者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限られるものと解すべきである。 (二) 原告らは、本件処分によつて、本件開発区域の周辺地域に居住する住民として、環境権及び人格権が侵害される旨主張するが、原告の主張する環境権は、その法的根拠が明確ではないうえ、権利の内容、各個人が環境権として享受しうる利益の対象となるべき環境の範囲、かかる意味での「環境」を構成する自然上ないし生活上の諸要素等の具体的な内容などが不明確であつて法的概念たりえず、また、人格権は、名誉毀損の場合に私権性を肯認することができる場合があるにせよ、実体行政法規の保護する法的利益とはいえない。 したがつて、原告らの主張する環境権、人格権は、いずれも本件許可処分の取消を求める原告適格を基礎づけることはできない。 (三) 原告らの主張によると、原告らは、本件許可処分にかかる開発区域の周辺地域に居住する者であつて、本件許可処分の直接の相手方ではないが、良好な環境を享受することによつて 礎づけることはできない。 (三) 原告らの主張によると、原告らは、本件許可処分にかかる開発区域の周辺地域に居住する者であつて、本件許可処分の直接の相手方ではないが、良好な環境を享受することによつて受ける生活上の利益を有するという。 しかしながら、本件許可処分の根拠法である都市計画法は、開発区域の周辺地域に居住する住民に対し、環境保全上の具体的、個別的かつ直接的な利益を保障しているものと解することはできない。すなわち、都市計画法上の開発許可制度は、乱開発によつてもたらされる都市機能の低下、都市環境の悪化等の弊害を除去するため、長期的かつ総合的見地から土地利用の合理化を図るための対策を確立し、住みよい、働きよい良好な都市環境と都市機能を計画的に形成することが都市に居住する住民全体の利益であるとともに、国家的要請でもあるとの観点から創設されたものであつて、秩序と調和のある良好な都市環境の形成という公共の利益、住民全体の利益を図ることを目的とするものである。 開発許可の基準を定める同法三三条、三四条には、開発区域及びその周辺地域における環境保護上の基準をも規定しているが、右のような公益目的のためめに定められているものであつて、住民の個別的権利ないし利益を保護する趣旨のものではない。 このように、都市計画法は、住民の環境上の利益を個別的、具体的かつ直接的な利益として保障しているものではなく、一般的、抽象的性質の公共的利益の確保を図つているのであり、このことは、環境保全上の利益の多義性、その主体の範囲の不明確性等に照らしても当然である。 なお、都市計画法三条二項は、都市住民の一般的協力義務を宣言したにとどまり、住民に具体的、個別的権利を保障したものではない。 (四) 原告らの主張する高速道路建設による被害は、本件許可処分の効果として高速道路が建設さ 条二項は、都市住民の一般的協力義務を宣言したにとどまり、住民に具体的、個別的権利を保障したものではない。 (四) 原告らの主張する高速道路建設による被害は、本件許可処分の効果として高速道路が建設されるものではないから、本件許可処分の取消を求める原告適格を基礎づけるものではなく、また工事被害についても、京急の工事施工上の問題であつて本件許可処分とは関係がないのであるから、同様に考えるべきである。 更に、原告らの主張する公共下水道の処理方式の変更に伴う被害についても、本件許可処分とは関係がないのであるから、同様である。 3 本件訴えは、原告らの請求について裁判所が判断を与えるだけの具体的利益(権利保護の利益)を有しない。 すなわち、具体的な開発行為を行うためには、本件許可処分のほかに、その行為の種類、性質等に応じ建築基準法、道路法、森林法等所定の各手続を必要とするのであるから、仮に原告らに法律上保護される利益が存するとしても、本件許可処分を具体化するための右のような各手続に伴う各別の行政処分ないし具体的な工事等を対象として具体的な利益侵害を理由とする直截的な救済手段を利用すれば足り、本件許可処分の取消の訴えは権利保護の利益を欠くものというべきである。 (被告審査会)処分の取消の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消の訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消の訴えにおいては、処分の違法を理由として取消を求めることはできない(行政事件訴訟法一〇条二項)ところ、原告らは、本件裁決には本件許可処分の違法を看過してなされた本件許可処分と同様の違法がある旨主張するのであるから、このような主張は右の行政事件訴訟法の規定に反し許されない。 また、被告審査会が、資料の提出を求めたのは、資料があれば参考資料として提出してほしいという程度の 様の違法がある旨主張するのであるから、このような主張は右の行政事件訴訟法の規定に反し許されない。 また、被告審査会が、資料の提出を求めたのは、資料があれば参考資料として提出してほしいという程度のものにすぎず、審査の基礎とするための資料の収集を怠つたり、その提出を妨害したものではないから、資料が提出されないうちに裁決をしたことを理由として本件裁決の取消を求めることは許されない。 よつて、原告らの本件裁決の取消を求める訴えは却下されるべきである。 三請求原因に対する認否(被告市長) 1 請求原因1の事実は知らない。 2 同2及び3の各事実はいずれも認める。 3 (一)同4(一)のうち、本件開発区域のうち約四九・七ヘクタールが市街化区域であり、約一三〇ヘクタールが市街化調整区域であること、その市街化調整区域に隣接して近郊緑地保全区域が存在することは認めるが、その余の事実は否認し、本件許可処分が違法であるとの主張は争う。 (二) (1)同4(二)(1)のうち、本件許可処分が原告らの人格権、環境権を侵害し、違法であるとの主張は争う。 (2) 同4(二)(1)(ア)前段のうち、<地名略>地区の山林緑地が円海山を中心に横浜市南部から鎌倉、逗子、横須賀に続く大規模な山林の一部を形成し、背後に歴史的風土特別保存地区に指定された鎌倉をひかえていること、<地名略>の一部が近郊緑地保全区域に指定されていることは認め、その余の事実は否認する。 (3) 同4(二)(1)(イ)のうち、森林、緑地の機能に関する原告らの主張は、一般論としては認め、森林の機能が今後ますます重要なものとなるとの主張は争う。 (4) (ア)同4(二)(1)(ウ)の本文の主張は争う。 (イ) 同4(二)(1)(ウ)(a)及び(b)の主張は争う。 (5) 同4(二)(1)(エ)の主張は争う。 (三) のとなるとの主張は争う。 (4) (ア)同4(二)(1)(ウ)の本文の主張は争う。 (イ) 同4(二)(1)(ウ)(a)及び(b)の主張は争う。 (5) 同4(二)(1)(エ)の主張は争う。 (三) (1)同4(二)(2)(ア)のうち、被告市長が京急に対し、本件開発区域内に高速道路予定地を確保させたことは認め、その余の主張は争う。 (2) 同4(二)(2)(イ)の主張は争う。 (四) 同4(二)(3)及び(4)の各主張はいずれも争う。 (五) 同4(三)の主張は争う。 (六) (1)同4(四)(1)の主張は争う。 (2) 同4(四)(2)のうち、被告市長と京急との間で原告ら主張の合意がなされたこと、同被告が周辺住民に対し、住民の同意を得ることを開発許可の要件とする旨確約したことは否認する。同被告が、原告ら主張の文書、会合で言明したのは、住民全員の同意ということではなく、大多数の住民の了解を得るよう京急に行政指導をしているという趣旨のものである。原告らの、被告市長と京急との行為が公法上の合同行為類似の行為であるとの主張は争う。 (3) 同4(四)(3)のうち、京急に関する点は知らない。横浜市が制止することなく助勢したとの点は否認し、その余の主張は争う。 (七) 同4(五)の主張は争う。 (被告審査会) 1 請求原因1の事実は知らない。 2 同2(一)及び3の各事実はいずれも認める。 3 同5のうち、被告審査会のなした本件裁決に、本件許可処分と同様の違法があるとの主張及び本件裁決に手続上の違法があるとの主張はいずれも争い、その余の事実は認める。被告審査会が資料の提出を求めたのは、環境測定をしたデータがあれば参考資料として提出してほしい旨の希望を表明したにすぎないから、資料の提出をまたずに裁決をしたことが審査手続の違法事由となるものではない。 四被告市 の提出を求めたのは、環境測定をしたデータがあれば参考資料として提出してほしい旨の希望を表明したにすぎないから、資料の提出をまたずに裁決をしたことが審査手続の違法事由となるものではない。 四被告市長の本案前の主張に対する原告らの反論 1 原告適格について(一) 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格について、処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者と規定するが、右の法律上の利益は、いわゆる法律上保護された利益に限定することなく、より広く原告適格を認めるべきであつて、違法な行政行為により、その個人的利益領域について、一般公衆からは区別された何らかの特別のマイナスの影響を受ける者に原告適格を認めるべきである。 (二) 人格権、環境権の侵害(1) 憲法二五条、一三条によれば、環境権が保障されており、また現行法上人格権が認められている。 (2) 原告らは、請求原因4(二)(1)ないし(3)のとおり、本件許可処分によつて、その人格権、環境権が侵害される。 (三) 都市計画法上保護されている利益の侵害(1) 開発区域の周辺地域に居住する者の、良好な環境を享受し、良好な環境の中で生活するという利益は、都市計画法上まさに保護されている利益であり、行政事件訴訟法九条の法律上保護された利益に該当する。 すなわち、都市計画法三三条は開発許可の基準を規定するが、同条一項五号は、開発区域の周辺の地域における環境の保全が図られるように公共施設等を配分すること、同項七号は、開発区域の周辺の地域の状況等により支障があれば、建築基準法三九条一項の地域等を含む開発はできないこと、都市計画法三三条一項八号及び九号は、一定規模以上の開発にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、樹木の保存、表土の保全、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑 こと、都市計画法三三条一項八号及び九号は、一定規模以上の開発にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、樹木の保存、表土の保全、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯の配置をすることなどを定めるところ、これらの規定は、劣悪な市街化の形成を防止し、良好な都市環境と都市機能を維持、確保し、健康で文化的な都市環境の保全を図ろうとする都市計画法の目的、都市計画の基本理念及び同法の定める開発許可制度の趣旨の現れである。 しかして、都市環境の保全は、市民全体の利益であつて公益性を有すると同時に、環境はそれを享受する個人を離れては考えられないものであるから、住民一人ひとりの健康で安全な生活を守るという個別、具体的利益をも図るという性質をもつ。 前記の都市計画法三三条一項五号、七号ないし九号の各規定は、開発区域の周辺地域の環境の保全等の文言を用いてはいるが、右のとおり住民の利益を離れて環境を考えることはできないのであるから、右各規定は開発区域の周辺地域に居住する住民の環境上の利益をも保護しているものと解すべきである。 また都市計画法三条二項は、都市の住民の協力義務を規定し、同法一六条は公聴会を、同法一七条は都市計画案の縦覧、意見書の提出等を制度化して住民参加の規定を置いているが、これらは、都市開発の問題が居住住民の生活基盤そのものに直接影響を及ぼすため、住民の住環境等について保全しようとする趣旨から規定されたものであり、このことからも都市計画法が開発区域の周辺地域に居住する住民の環境利益を直接保護しているものということができる。 (2) ところで、原告らは、本件許可処分によつて、請求原因4(二)(1)ないし(3)及び(三)記載のとおり様々な被害を被るものであり、開発区域の周辺地域に居住する住民として都市計画法 とができる。 (2) ところで、原告らは、本件許可処分によつて、請求原因4(二)(1)ないし(3)及び(三)記載のとおり様々な被害を被るものであり、開発区域の周辺地域に居住する住民として都市計画法上保護されている環境上の利益が侵害されるものといわなければならない。 (四) 公共下水道処理方式の変更に伴う損害(1) 原告らの一部が居住する<地名略>、<地名略>地区は従来下水道につき合流式地区に指定されていたことから、右各地区に居住する原告らは合流式の排水管を設置していた。 (2) ところが、本件開発行為によつて大規模な町が計画され、下水の流水量の増加が見込まれるため、下水道を分流式に変更することとなつた。 これによつて、右の原告らは、排水管を分流式に変更せざるをえず、多額の費用を負担しなければならなくなるが、これは右の原告らが本件許可処分にようて被る不利益に他ならない。 (五) 同意権の侵害請求原因4(四)記載のとおり、原告らは、本件開発区域の付近住民として、被告市長が本件許可処分をするについて同意権を有しているにもかかわらず、同被告は、原告らの同意を得ることなく本件許可処分を行つた。したがつて、原告らは、その同意権を侵害された。 (六) 情報公開を受ける権利の侵害請求原因4(五)記載のとおり、原告らは、本件許可処分に先立ち、本件開発行為に関する情報の公開を受ける権利を有する。しかるに、右の情報公開がなされないまま本件許可処分がなされ、原告らの右権利が侵害された。 (七) 以上のように、原告らは、本件許可処分の取消を求める原告適格を有するものというべきであるが、判例の立場を前提としても、判例は、実質上保護に値する利益救済説に近いと解されるのであるから、右に述べたような権利ないし利益が侵害される原告らには、原告適格が認められるというべきであ うべきであるが、判例の立場を前提としても、判例は、実質上保護に値する利益救済説に近いと解されるのであるから、右に述べたような権利ないし利益が侵害される原告らには、原告適格が認められるというべきである。 2 事件の成熟性、権利保護の利益について(一) 事件の成熟性とは、抗告訴訟の対象たる行政処分たりうるか否かを区別するために考えられた一般的、抽象約概念にすぎず、ある行政処分が実定法規の解釈から抗告訴訟の対象となりうる場合には、右概念は不要である。 ところで、開発行為の許可処分については、都市計画法上不服申立前置が規定されており、このような場合には右処分について当然に行政訴訟を提起しうることを前提としているのであるから、更に事件の成熟性を考える必要はないというべきである。 (二) また、原告らには、本件許可処分の取消を求める権利保護の必要性ないし利益がある。 第三証拠(省略)○ 理由(被告市長に対する請求について)一被告市長が本件許可処分をなしたことは当事者間に争いがない。 二本案の判断に先立ち、原告らが本件許可処分取消訴訟の原告適格を有するかどうかを判断することとする。 1 取消訴訟は、行政庁の処分又は裁決によつて自己の権利、利益を侵害された者を救済することを目的とし、行政の適正な運営を確保することはその間接的な効果にすぎないと解すべく、それ故に行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格の要件として「取消を求めるにつき法律上の利益を有する者」に限定しているのである。したがつて、取消訴訟を提起することができる者は、法律に特別の定めがない限り、当該処分又は裁決により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消によつてこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られると解すべきである。ここにいう 当該処分又は裁決により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消によつてこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られると解すべきである。ここにいう法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であつて、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課ヒている結果たまたま一定の者が受けることとなる反的利益とは区別されるべきものである。 原告らはこの点に関し、「取消を求めるにつき法律上の利益を有する者」を右のように限定して解釈すべきではなく、広く、違法な行政行為により、その個人的利益領域について、一般公衆からは区別された何らかの特別のマイナスの影響を受ける者をいうと解すべきであると主張するが、前記の取消訴訟の目的、機能及び行政事件訴訟法九条の規定の趣旨にかんがみると、原告らの右主張を直ちに採用することはできないといわなければならない。 2 そこで、原告らの主張する、開発区域の周辺の地域に居住する住民として良好な環境を享受し、良好な環境の中で生活するという利益が本件許可処分の根拠法規である都市計画法によつて個人的利益として法律上保護されているかどうかを検討することとする。 (一) 都市計画法は、「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与すること」を目的とし(一条)、その目的達成の手段として都市計画を定めることとしており、その都市計画は、「農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきこと」が基本理念とされている は、「農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきこと」が基本理念とされている(二条)。ここにいう「健康で文化的な都市生活」とは、個別的、具体的な利益としての健康で文化的な生活を送る都市に居住する者の個人的利益をいうのではなく、同法の目的とする都市の健全な発展と秩序ある整備という公益の一環であり、かつ、一般的、抽象的利益としての「健康で文化的な都市生活」をさすものである。 そして、都市計画においては、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分して段階的かつ計画的に市街化を図つていくこととし、市街化区域、市街化調整区域の制度の実効性を担保し、都市計画区域内の宅地造成に一定の水準を確保するための手段として都市計画区域における開発行為を都道府県知事(地方自治法二五二条の.一九第一項の指定都市にあつては市長、都市計画法八七条二項)の許可にかからしめる開発許可制度が設けられた。 このように、都市計画法二九条の開発許可制度は、同法の目的とする都市の健全な発展と秩序ある整備、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動の確保という公共の利益の実現のためになされるものであつて、開発区域の周辺地域に居住する住民の権利若しくは具体的な利益を直接保護するものではないと解するのが相当である。 なお、都市計画法三条二項は、都市計画の目的を実現するためには、都市住民が積極的に協力することが不可欠であるところから、都市住民の協力義務を規定しているが、右は住民の一般的抽象的な協力義務を宣言したものにすぎないのであり、また、同法一六条及び一七条の各規定は、都市計画を決定するに当たり都市計画案に住民の意見を反映させるために当該行政庁が履践すべき手続を定め 民の一般的抽象的な協力義務を宣言したものにすぎないのであり、また、同法一六条及び一七条の各規定は、都市計画を決定するに当たり都市計画案に住民の意見を反映させるために当該行政庁が履践すべき手続を定めた規定であるにすぎず、これらの規定が置かれているからといつて、直ちに都市計画法ないし開発許可の制度が、開発区域の周辺地域に居住する住民の個人的な利益を保護したものと解することはできない。 (二) ところで、都市計画法三三条、三四条は、開発許可の基準を定めるが、同法三三条一項五号は、「開発区域における利便の増進と開発区域及びその周辺の地域における環境の保全とが図られるように」公共施設等及び予定される建築物の用途の配分が定められていること、同項八号及び九号は、「開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため」、開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全その池の必要な措置がとられるように(八号)、あるいは騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されるように(九号)設計されていることを、許可基準として規定し、環境の保全をうたうが、このことから直ちに、原告らの主張するように右の各規定が開発区域の周辺地域に居住する住民の環境的利益を個人的な利益として直接保護していると解することはできないものというべきである。 すなわち、右の各規定、都市計画法のその他の規定、同法施行令及び同法施行規則を通覧してみても、環境基準に関する具体的な規定は何らなく、また、何らかの環境基準によつて開発行為を規制しているものと考えられる規定も見当らないのであるから、結局、都市計画法は、開発行為による実際の環境被害の程度とは無関係に、開発行為の規模等によつて一定の措置をとることを要求しているにすぎないものといわざるをえない。 更に、 も見当らないのであるから、結局、都市計画法は、開発行為による実際の環境被害の程度とは無関係に、開発行為の規模等によつて一定の措置をとることを要求しているにすぎないものといわざるをえない。 更に、都市計画法三三条一項五号及び八号は、環境の具体的な内容を明確に定めているわけではなく、その定める環境の要件は抽象的である。このような規定の定め方並びに、前示のとおり都市計画法の目的及び開発許可制度の趣旨が、都市の健全な発展と秩序ある整備という公共性ないし公益の実現にあることを考えると、前記各規定は、公共の利益としての環境の保全をいうにすぎず、これらの規定によつて開発区域の周辺地域に居住する住民が受ける利益は、右公共の利益としての一般的、抽象的な利益であつて、行政事件訴訟法九条にいう個別的、具体的な法律上の利益として保護されていると解することはできない。 また、同法三三条一項七号は、開発区域内に建築基準法三九条一項の災害危険区域等を含んでいても、開発区域及びその周辺の地域の状況等により支障がないと認められるときは、開発行為を許可することができる旨規定するのであつて、同規定によつて、周辺地域の住民の環境的利益が保護されているものということはできない。 (三) したがつて、原告らの主張する環境上の利益は、都市計画法によつて個人的な利益として保護されているということはできず、同法の目的とする公共の利益の保護の結果として生ずる反射的利益ないし事実上の利益にすぎないものというべきである。 (四) なお、本件開発行為が高速道路予定地を確保していることは当事者間に争いがないが、原告らの主張する高速道路の開通に伴う環境悪化等は、本件許可処分の直接の効果として右高速道路が建設されるものではないから、このことを理由として原告らに本件許可処分取消訴訟の原告適格を認める がないが、原告らの主張する高速道路の開通に伴う環境悪化等は、本件許可処分の直接の効果として右高速道路が建設されるものではないから、このことを理由として原告らに本件許可処分取消訴訟の原告適格を認めることはできない。 また、開発行為に伴う工事被害についても、都市計画法が、開発行為の工事施工方法について具体的に規定しているわけではなく、原告らの主張する工事被害は、具体的な工事の施工方法によるもので、本件許可処分によるものとはいえないから、右のような工事被害について民事訴訟上の救済を求めるのは格別、右のような工事被害を被ることを理由として、本件許可処分取消訴訟の原告適格を基礎づけることはできない。 3 原告らの主張する人格権、環境権は、畢竟良好な環境を享受し、良好な環境の中で生活するという利益をその内容とするものであり、前示のとおり右のような利益は、本件許可処分の根拠法規である都市計画法が直接かつ具体的に保護しているものとはいえないのであるから、右の人格権、環境権もまた、同法によつて保護されている権利ということはできない。 なお、原告らの主張する環境権は、憲法二五条、一三条を根拠にかかる権利を直接構成することはできないし、他に、これを認むべき実定法上の根拠はなく、その内容が漠然としていること、それを享有しうべき者の範囲を限定し難いこと等に照らし、環境権なるものを法的権利性を有するものとして承認することは困難である。 したがつて環境権の侵害を理由として原告適格を認めることはできない。 ちなみに、高速道路の開設による被害、工事施工に伴う被害による人格権、環境権の侵害を理由に本件許可処分の取消を求める原告適格を認めることができないこと前示2(四)に説示したとおりである。 4 原告らの主張する下水道処理方式の変更に伴う被害についても、本件許可処分の直接の効 の侵害を理由に本件許可処分の取消を求める原告適格を認めることができないこと前示2(四)に説示したとおりである。 4 原告らの主張する下水道処理方式の変更に伴う被害についても、本件許可処分の直接の効果ではなく、かつ、都市計画法は、かかる利益を保護するものではないから、本件訴えの原告適格を認める事由とはなりえない。 5 次いで、原告らの主張する同意権、情報公開を受ける権利について検討する。 (一) 原告らの主張する国民主権、民主主義の原理、住民自治の権利、住民主権、憲法三一条、二五条、一三条、九二条は、いずれも抽象的な原則ないしは国政上のプログラム規定であつで、これらから直ちに、本件許可処分のごとき行政庁のなす個別的処分に対する住民の同意権なるものを認めることはできず、その他実定法上住民の同意権なるものを認むべき根拠はない。 原告らは、開発行為の許可のためには関係住民の同意を要するとの慣習法が存すると主張するが、原告らの主張するような内容の慣習法が存在することを認識する根拠となる事実を認めるに足りる証拠はない。 (二) 更に、原告らは、被告市長が京急及び原告らに対し、付近住民の同意を本件開発行為を許可するための要件とする旨言明し、京急もこれを承認したと主張するが、仮にかような事実があつたとしても、都市計画法は開発行為の許可に当たり関係住民の同意を要する旨の規定を何ら置いていないのであるから、被告市長の右のような行為は法律によらないで開発行為の許可の要件を加重するものであつて効力を有しないものといわざるをえず、したがつて、またこれにより原告ら住民に開発行為の許可に対する同意権が付与されるいわれもないといわなければならない。 また、原告らは、被告市長と京急の右行為を公法上の合同行為類似の行為であると主張するが、公法上の合同行為とは、公共組合の設立のよ 為の許可に対する同意権が付与されるいわれもないといわなければならない。 また、原告らは、被告市長と京急の右行為を公法上の合同行為類似の行為であると主張するが、公法上の合同行為とは、公共組合の設立のような公法的効果の発生を目的とする複数の当事者の同一方向の意思表示の合致によつて成立する公法行為を指称するものであるから、被告市長と京急との間に前記の合意がなされたとしても右行為をもつて公法上の合同行為類似のものと解することかできないのはいうまでもない。 (三) 原告らの主張する開発行為に関する資料、情報の公開を受ける権利ないし利益は、これを認めうべき法的根拠がなく、都市計画法もかかる権利ないし利益を保護していると解する余地はない。 6 以上によれば、原告らの主張する権利ないし利益は、いずれも行政事件訴訟法九条にいう法律上の利益に該当しないから、本件取消訴訟の訴えの利益の有無について判断するまでもなく、原告らは本件許可処分取消訴訟の原告適格を有しないものといわざるをえない。 (被告審査会に対する請求について)一本案前の主張について原告らが本件許可処分を不服として被告審査会に対し審査請求をしたことは、当事者間に争いがない。 被告審査会は、本件裁決の取消を求める訴えが不適法である旨主張するが、原告らは、本件裁決が原告らの資料の提出をまたずになされた違法がある旨主張し、その手続的違法を主張しているのであるから、本件裁決の取消を求める訴えを不適法ということはできず(被告審査会の資料の提出に関する主張は本案に関する主張である。)、また、行政事件訴訟法一〇条二項の規定に違反して原処分の違法を主張しても、そのことにより裁決取消の訴え自体が訴訟要件を欠くに至るものではないと解せられるから、被告審査会の右主張はいずれも理由がない。 二本案について請求原因2 の規定に違反して原処分の違法を主張しても、そのことにより裁決取消の訴え自体が訴訟要件を欠くに至るものではないと解せられるから、被告審査会の右主張はいずれも理由がない。 二本案について請求原因2(一)及び3の各事実はいずれも当事者間に争いがないところ、原告らは、被告審査会が、口頭審査期日において、処分庁及び原告らに対し、資料の提出を求めたにもかかわらず、原告らからの提出を受けないまま、右期日の翌日に裁決をしたことが違法である旨主張するが、審査請求に対する審査の進行手続につき行政不服審査法には格別の定めはなく、裁決庁の裁量によらしめていると解せられるから、仮に原告らの主張するような事実があつたとしても、審理を終結するか否かは被告審査会の専権に属するところであつて、右事実をもつて直ちに裁決が違法となるものではない。(なお、原告らが本件審査請求についての口頭審理期日までの間に行政不服審査法二六条本文により資料(証拠書類又は証拠物)を提出する機会があつたことは弁論の全趣旨(昭和五三年五月一日審査請求、同年六月二九日口頭審査)に照らして明らかであり、同被告が同条但書の規定に基づいて、原告らに対し資料を提出すべき期間を定めたものでないことは原告らの主張自体に徴して明らかである。)そうすると、原告らの右主張は理由がない。 原告らのその余の主張は、原処分の違法をいうものであつて行政事件訴訟法一〇条二項の規定に照らして理由がないことが明らかである。 よつて、原告らの同被告に対する請求は失当である。 (結論)以上の次第で、原告らの被告市長に対する請求にかかる訴えは、原告適格を欠く不適法な訴えであるから、その余の点について判断するまでもなく、これを却下し、原告らの被告審査会に対する請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴 は、原告適格を欠く不適法な訴えであるから、その余の点について判断するまでもなく、これを却下し、原告らの被告審査会に対する請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官小川正澄志田洋竹内民生)当事者目録(省略)
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