- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 弁護人浦崎寛泰及び被告人本人の各上告趣意は,いずれも事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 しかしながら,所論にかんがみ職権をもって調査すると,原判決は,刑訴法411条1号,3号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。 第1本件の事実関係等と原判断 原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係等は次のとおりである。 (1)被告人は,発症時期が平成8年4月ころにさかのぼると見られる統合失調症により,平成14年2月ころからは,人のイメージが頭の中に出てきてそれがものを言うという幻視・幻聴や,頭の中で考えていることを他人に知られていると感じるなどの症状が現れるようになった。そのような異常体験の中でも,被告人が平成3年11月から平成6年4月まで稼働していた塗装店の経営者(本件被害者。以下「被害者」という。)が「ばかをからかってると楽しいな。」などと被告人をからかったり,「仕事で使ってやるから電話しろ。」などと話しかけてくる幻視・幻聴が特に頻繁に現れ,これに対し,被告人が,その呼び掛けに応じて被害者に電話をして再就職を申し出ると,同人からそれを断られ,またそのすぐ後に電話しろという声が聞こえたことから電話を掛けるということを繰り返すなどしたことがあった。被告人は,このような幻視・幻聴が続く中で,被害者が自分のことをばかにしていると憤りを覚えるようになり,平成15年1月か2月ころには,酔った上,交- 2 -際相手の女性の前で,被害者を殴りに行くなどと言い出し,同女にたしなめられて思いとどまったということがあった。 (2)被告人は,平成15年6月24日,朝から「仕事に来い。電話をくれ。」と言う被害者の声が聞こえ,新し ,被害者を殴りに行くなどと言い出し,同女にたしなめられて思いとどまったということがあった。 (2)被告人は,平成15年6月24日,朝から「仕事に来い。電話をくれ。」と言う被害者の声が聞こえ,新しく決まったアルバイト先に初めて出勤するために地下鉄に乗った際にも,頭の中に被害者の顔が現れ,何度も「こいつは仕事に行きたくねえんだ。」などと話す声が聞こえたため,被害者が被告人の仕事に行くのを邪魔しようとしていると腹を立て,被害者を殴って脅かしてやろうと思い,前記塗装店に向かった。しかし,被告人は,同店付近で被害者が現れるのを待っていたところ,頭の中に昔の知り合いのホステスが出てきて,「Aちゃんが怒ってるから早く出てきなさいよ。」などと被害者に声を掛けている幻聴が聞こえるなどしたため,自分の行動が人に見られていると感じてその日は被害者を殴るのをやめ,そのまま帰宅した。その後,被告人は,本件当日である同月27日までの間,被害者や今まで働いた職場の者らが頭の中に頻繁に出てくる幻視・幻聴に混乱し,仕事に行く気になれず,自宅にこもっていた。 (3)同月27日も,被害者が頭の中に現れ,「仕事に来い。電話しろ。」と前記塗装店での仕事を誘う声が聞こえ,同塗装店に電話を掛けて呼出し音を1回させてからすぐ切るということを2回ほどしたが,被害者に対する腹立ちが収まらず,被害者を二,三発殴って脅し,自分をばかにするのをやめさせようなどと考え,同日午後6時ころ,自転車で自宅を出発し,上記塗装店から徒歩で約5分の距離にあって,被告人がパチンコに行く際に自転車をとめる場所で自転車を降り,そこから歩いて同塗装店に向かった。 (4)被告人が同塗装店の通用口から店内に入り,作業場,事務室を経て社長室- 3 -に至ると,被告人を見た被害者がどうしたのかという感じでへらへら笑 車を降り,そこから歩いて同塗装店に向かった。 (4)被告人が同塗装店の通用口から店内に入り,作業場,事務室を経て社長室- 3 -に至ると,被告人を見た被害者がどうしたのかという感じでへらへら笑っているように思え,被告人は,被害者の顔面等を数発殴った上,店外に逃げ出した被害者を追い掛け,路上で更にその顔面を1発殴った。そして,あお向けに倒れた被害者を見て,ふざけてたぬき寝入りをしているのだと思い,その太もも付近を足で突くようにけった。しかし,通行人が来たのでそれ以上の暴行を加えることなく,その場を立ち去った。被害者は,被告人による上記一連の暴行により頭部を同店備品,路面等に打ち付け,よって,同年7月3日午後7時50分ころ,搬送先の病院において,外傷性くも膜下出血により死亡した(以下,被告人の被害者に対する上記一連の暴行を,「本件行為」又は「本件犯行」という。)。 (5)被告人は,本件行為後,交際相手の女性の家に行き,一緒に食事を取るなどした後,自宅に戻ったが,同年6月28日,被害者が重体であるという新聞記事を見るなどして怖くなり,自首した。 (6)なお,被告人は,精神科医の診療を受けていたが,統合失調症と診断されたことはなく,被告人の同居の実母,交際相手も,被告人が統合失調症等の精神疾患にり患していると疑ったことはなかった。 被告人の本件行為当時の精神状態については,原審までに,以下のような鑑定人ないし専門家の意見が証拠として取り調べられている。 (1)捜査段階でいわゆる簡易精神鑑定を担当した医師佐藤忠彦は,その作成に係る精神衛生診断書(以下「佐藤鑑定」という。)において,被告人は,本件行為当時,統合失調症による幻覚妄想状態の増悪期にあり,心神喪失の可能性は否定できないが,本件行為に至る行動経過は合目的的であり,かつ,著明な残 書(以下「佐藤鑑定」という。)において,被告人は,本件行為当時,統合失調症による幻覚妄想状態の増悪期にあり,心神喪失の可能性は否定できないが,本件行為に至る行動経過は合目的的であり,かつ,著明な残遺性変化がないことなどから,是非弁別能力と行動制御能力を完全に喪失していたとはいい得- 4 -ないとして,心神耗弱相当であるとの所見を示している。 (2)他方,第1審で裁判所から被告人の精神鑑定を命じられた医師坂口正道は,その作成に係る鑑定書及び公判廷における証言(以下「坂口鑑定」という。)において,被告人は,本件行為当時,統合失調症の激しい幻覚妄想状態にあり,直接その影響下にあって本件行為に及んだもので,心神喪失の状態にあったとする。 そして,被告人が,一方で現実生活をそれなりにこなし,本件行為の前後において合理的に見える行動をしている点は,精神医学では「二重見当識」等と呼ばれる現象として珍しくはなく,本件行為に至る過程で,被告人が一定の合理的な行動を取っていたことと被告人が統合失調症による幻覚妄想状態の直接の影響下で本件行為に及んだことは矛盾しないという。 (3)また,原審で,医師保崎秀夫は,上記(1)(2)を含む検察官から提供された一件記録を検討した意見として,原審公判廷における証言及びその意見書(以下「保崎意見」という。)において,被告人の本件行為当時の症状は統合失調症が慢性化して重篤化した状態ではなく,心神耗弱にとどまるとの所見を示している。 (4)さらに,原審で裁判所から被告人の精神鑑定を命じられた医師深津亮は,上記(1)ないし(3)の各鑑定及び意見を踏まえ,さらに,被告人に対する診察や諸検査を行った上,その作成に係る鑑定書及び公判廷における証言(以下「深津鑑定」という。)において,次のように述べている。すなわち,被告人は統合失 各鑑定及び意見を踏まえ,さらに,被告人に対する診察や諸検査を行った上,その作成に係る鑑定書及び公判廷における証言(以下「深津鑑定」という。)において,次のように述べている。すなわち,被告人は統合失調症にり患しており,急性期の異常体験が活発に生じる中で次第に被害者を「中心的迫害者」とする妄想が構築され,被害者は被告人に対し様々なひぼう中傷や就職活動の妨害を働く存在として認識されるようになり,被告人において,それらの妨害的な行為を中止させるため攻撃を加えたことにより本件行為は生じたと考えられ,幻覚- 5 -妄想に直接支配された行為とはいえないが,統合失調症が介在しなければ本件行為は引き起こされなかったことは自明である。被告人は,一方では「人に対して暴力を振るいけがさせたり,殺したりすることは悪いこと」との認識を有していたが,他方では異常体験に基づいて本件暴行を加えており,事物の理非善悪を弁識する能力があったということは困難であり,仮にこれがあったとしても,この弁識に従って行動する能力は全く欠けていたと判断される。 3(1)第1審判決は,上記坂口鑑定に依拠し,本件行為は激しい幻覚妄想に直接支配されたものであり,被告人は本件行為当時心神喪失の状態にあったとして被告人に無罪を言い渡した。これに対し,検察官が控訴し,原判決は,被告人は心神耗弱にとどまるとして,第1審判決を事実誤認を理由に破棄し,被告人に対し懲役3年を言い渡した。 (2)原判決の理由の要旨は次のようなものである。すなわち,被害者を二,三発殴って脅し,自分をばかにするのをやめさせようなどと考えたという動機の形成,犯行に至るまでの行動経過,こぶしで数発殴ったという犯行態様,あるいは,通行人が来たことから犯行現場からすぐに立ち去ったという経緯には,特別異常とされる点がなく,これらは と考えたという動機の形成,犯行に至るまでの行動経過,こぶしで数発殴ったという犯行態様,あるいは,通行人が来たことから犯行現場からすぐに立ち去ったという経緯には,特別異常とされる点がなく,これらは,了解が十分に可能である。そして,「電話しろ。」という作為体験はあっても,「殴り付けろ。」という作為体験はなく,幻聴や幻覚が犯行に直接結び付いているとまではいえない。しかも,被告人は,本件犯行及びその前後の状況について,詳細に記憶しており,当時の意識はほぼ清明であるということができる上に,本件犯行が犯罪であることも認識していたと認められる。そして,犯行後に被告人が自首していること,被告人がそれなりの社会生活を送り,仕事をしようとする意欲もあったことなどの諸事情にも照らすと,被告人は,本件犯- 6 -行時,統合失調症にり患していたにしても,それに基づく心神喪失の状態にあったとは認められず,せいぜい心神耗弱の状態にあったものというべきである。坂口鑑定及び深津鑑定は,いずれも採用することができない。 第2当裁判所の判断しかしながら,原判断は,是認できない。その理由は,次のとおりである。 坂口鑑定及び深津鑑定の評価について(1)被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所にゆだねられるべき問題であることはもとより,その前提となる生物学的,心理学的要素についても,上記法律判断との関係で究極的には裁判所の評価にゆだねられるべき問題である(最高裁昭和58年(あ)第753号同年9月13日第三小法廷決定・裁判集刑事232号95頁)。しかしながら,生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれ 裁判集刑事232号95頁)。しかしながら,生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである。 (2)この観点から坂口鑑定及び深津鑑定を見ると,両医師とも,いずれもその学識,経歴,業績に照らし,精神鑑定の鑑定人として十分な資質を備えていることはもとより,両鑑定において採用されている諸検査を含む診察方法や前提資料の検討も相当なもので,結論を導く過程にも,重大な破たん,遺脱,欠落は見当たらない。また,両鑑定が依拠する精神医学的知見も,格別特異なものとは解されない。 - 7 -そして両者は,本件行為が統合失調症の幻覚妄想状態に支配され,あるいは,それに駆動されたものであり,他方で正常な社会生活を営み得る能力を備えていたとしても,それは「二重見当識」等として説明が可能な現象であって,本件行為につき,被告人が事物の理非善悪を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力を備えていたことを意味しないという理解において一致している。このような両鑑定は,いずれも基本的に高い信用性を備えているというべきである。 (3)しかるに,原判決は,両鑑定が,被告人に正常な精神作用の部分があることについて「二重見当識」と説明するだけでこれを十分検討していないとして,その信用性を否定している。しかし,両鑑定は,本件行為が,被告人の正常な精神作用の領域においてではなく,専ら病的な部分において生じ,導かれたものである と説明するだけでこれを十分検討していないとして,その信用性を否定している。しかし,両鑑定は,本件行為が,被告人の正常な精神作用の領域においてではなく,専ら病的な部分において生じ,導かれたものであることから,正常な精神作用が存在していることをとらえて,病的体験に導かれた現実の行為についても弁識能力・制御能力があったと評価することは相当ではないとしているにとどまり,正常な部分の存在をおよそ考慮の対象としていないわけではないし,「二重見当識」により説明されている事柄は,精神医学的に相応の説得力を備えていると評し得るものである。また,原判決は,深津鑑定については,前提事実に誤りがあるとも指摘するが,当たらないものである。 そうすると,以上のような理由から前記(2)のように基本的に信用するに足りる両鑑定を採用できないものとした原判決の証拠評価は,相当なものとはいえない。 諸事情による総合判断について(1)被告人が犯行当時統合失調症にり患していたからといって,そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあったとされるものではなく,その責任能力の有無・程度は,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等- 8 -を総合して判定すべきである(最高裁昭和58年(あ)第1761号同59年7月3日第三小法廷決定・刑集38巻8号2783頁)。したがって,これらの諸事情から被告人の本件行為当時の責任能力の有無・程度が認定できるのであれば,原判決の上記証拠評価の誤りは,判決に影響しないということができる。そこで,更にこの観点から検討する。 (2)信用に値する坂口鑑定及び深津鑑定に関係証拠を総合すれば,本件行為は,かねて統合失調症にり患していた被告人が,平成15年6月24日ころから急性に増悪した同症による幻聴,幻視,作為体験のかなり強い影響 信用に値する坂口鑑定及び深津鑑定に関係証拠を総合すれば,本件行為は,かねて統合失調症にり患していた被告人が,平成15年6月24日ころから急性に増悪した同症による幻聴,幻視,作為体験のかなり強い影響下で,少なくともこれに動機づけられて敢行されたものであり,しかも,本件行為時の被告人の状況認識も,被害者がへらへら笑っていたとか,こん倒した被害者についてふざけてたぬき寝入りをしているのだと思ったなどという正常とはいえない,統合失調症に特有の病的色彩を帯びていたものであることに照らすと,本件行為当時,被告人は,病的異常体験のただ中にあったものと認めるのが相当である。 (3)他方において,原判決が説示するように,本件行為の動機の形成過程は,その契機が幻聴等である点を除けば,了解が可能であると解する余地がある。また,被告人が,本件行為及びその前後の状況について,詳細に記憶しており,その当時の意識はほぼ清明であること,本件行為が犯罪であることも認識し,後に自首していること,その他,被告人がそれなりの社会生活を送り,就労意欲もあったことなど,一般には正常な判断能力を備えていたことをうかがわせる事情も多い。 しかしながら,被告人は,同種の幻聴等が頻繁に現れる中で,しかも訂正が不可能又は極めて困難な妄想に導かれて動機を形成したと見られるのであるから,原判決のように,動機形成等が了解可能であると評価するのは相当ではないというべき- 9 -である。また,このような幻覚妄想の影響下で,被告人は,本件行為時,前提事実の認識能力にも問題があったことがうかがわれるのであり,被告人が,本件行為が犯罪であることも認識していたり,記憶を保っていたりしても,これをもって,事理の弁識をなし得る能力を,実質を備えたものとして有していたと直ちに評価できるかは疑問である。その他, 被告人が,本件行為が犯罪であることも認識していたり,記憶を保っていたりしても,これをもって,事理の弁識をなし得る能力を,実質を備えたものとして有していたと直ちに評価できるかは疑問である。その他,原判決が摘示する被告人の本件前後の生活状況等も,被告人の統合失調症が慢性化した重篤な状態にあるとはいえないと評価する余地をうかがわせるとしても,被告人が,上記(2)のような幻覚妄想状態の下で本件行為に至ったことを踏まえると,過大に評価することはできず,少なくとも「二重見当識」によるとの説明を否定し得るようなものではない。 (4)そうすると,統合失調症の幻覚妄想の強い影響下で行われた本件行為について,原判決の説示する事情があるからといって,そのことのみによって,その行為当時,被告人が事物の理非善悪を弁識する能力又はこの弁識に従って行動する能力を全く欠いていたのではなく,心神耗弱にとどまっていたと認めることは困難であるといわざるを得ない。 結論 以上のとおり,本件記録に徴すると,被告人が心神耗弱の状態にあったとして限定責任能力の限度で傷害致死罪の成立を認めた原判決は,被告人の責任能力に関する証拠の評価を誤った違法があり,ひいては事実を誤認したものといわざるを得ない。これが判決に影響することは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。 ところで,坂口鑑定及び深津鑑定は,統合失調症にり患した者の病的体験の影響下にある認識,判断ないし行動は,一方で認められる正常な精神作用により補完な- 10 -いし制御することは不可能であるという理解を前提とするものと解されるが,これと異なる見解の有無,評価等,この問題に関する精神医学的知見の現状は,記録上必ずしも明らかではない。また,被告人は,本件以前にも,被害者を殴りに行こうと という理解を前提とするものと解されるが,これと異なる見解の有無,評価等,この問題に関する精神医学的知見の現状は,記録上必ずしも明らかではない。また,被告人は,本件以前にも,被害者を殴りに行こうとして,交際相手に止められたり,他人に見られていると思って思いとどまったりしているほか,本件行為時にも通行人が来たため更なる攻撃を中止するなどしており,本件行為自体又はこれと密接不可分な場面において,相応の判断能力を有していたと見る余地のある事情が存するところ,これをも「二重見当識」として説明すべきものなのか,別の観点から評価検討すべき事柄なのかについて,必ずしも明らかにはされていない。さらに,被告人は本件行為の翌日に自首するなど本件行為後程ない時点では十分正常な判断能力を備えていたとも見られるが,このことと行為時に強い幻覚妄想状態にあったこととの関係も,坂口鑑定及び深津鑑定において十分に説明されているとは評し難い。本件は,被告人が正常な判断能力を備えていたように見える事情も相当程度存する事案であることにかんがみると,本件行為当時の被告人の責任能力を的確に判断するためには,これらの点について,精神医学的知見も踏まえて更に検討して明らかにすることが相当であるというべきであり,当裁判所において直ちに判決するのに適しているとは認められない。 よって,刑訴法411条1号,3号,413条本文により原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 検察官總山哲公判出席(裁判長裁判官古田佑紀裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋) 裁判官 津野修 裁判官 今井功 裁判官 中川了滋
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