主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の秋田県選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要本件は、令和4年7月10日施行の参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について、秋田県選挙区の選挙人である原告が、公職選挙法14条、 別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下、数次の改正の前後を通じ、平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め、「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実又は証拠により容易に認めることができる事実) 原告は、本件選挙における秋田県選挙区の選挙人である。 本件選挙は、平成30年法律第75号(以下「平成30年改正法」という。)によって改正された公職選挙法14条1項、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の定数配分規定(以下「本件定数配分規定」といい、上記改正 を「平成30年改正」という。)の下で、令和4年7月10日、施行された。 平成30年改正後の参議院議員の総定数は248人、そのうち100人が比例代表選出議員、148人が選挙区選出議員であった(公職選挙法4条2項)。 本件選挙当日の選挙区ごとの選挙人数(有権者数)、議員定数、議員1人 当たり人口及び較差は、別紙「参議院選挙区別定数、議員1人当たり人口、 較差【較差順】」に記載のとおりであり、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区 当たり人口及び較差は、別紙「参議院選挙区別定数、議員1人当たり人口、 較差【較差順】」に記載のとおりであり、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区間の最大較差」をいうときは、この選挙人数の最大較差をいう。)は、最小の福井県選挙区を1とすると、神奈川県選挙区が最大の3.03倍(以下、較差に関する数値は、いずれも概数である。)であった。なお、福井県選挙区と、原告が選挙人で ある秋田県選挙区との較差は1.31倍であった。(乙1の2枚目) 2 争点 本件定数配分規定が違憲又は違憲状態であるか。 (原告の主張)ア憲法56条2項、1条及び前文第1項第1文後段、前文第1項第1文前 段は、主権を有する国民を代表する議員の過半数によって両議院の議事を決することを規定している。これらの規定は、国会議員が人口比例選挙によって正当に選挙されることを要求しており、定数配分規定が違憲であるかどうかの判断はこの考えに基づいて行うべきである。本件選挙時における選挙区間の最大較差1対3.03は、1人1票を要求する人 口比例選挙とはいえないから、本件定数配分規定は違憲である。 選挙制度に関して国会に立法裁量があるとしても、人口比例の原則を守れないのであれば、その理由を国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連で説明し立証しなければならない。被告は、参議院の選挙区選挙において都道府県を選挙区割りの基本単位とす ることは合理的であると主張し、その理由として都道府県への帰属意識の存在、二院制の趣旨の実現、過疎地域を含む少数者の意見の反映、人口の少ない県にも国政の運営上検討すべき課題があることなどの事情を挙げるが、これらはいずれも都道府県を選 由として都道府県への帰属意識の存在、二院制の趣旨の実現、過疎地域を含む少数者の意見の反映、人口の少ない県にも国政の運営上検討すべき課題があることなどの事情を挙げるが、これらはいずれも都道府県を選挙区割りの基本単位とすることの理由にはならず、かえって、合区制度を導入したことで、その対象 となった4県の県民の声は無視されるという自己矛盾が生じている。 イ本件定数配分規定は、最高裁令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)に照らしても、違憲状態である。 最高裁は、最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁(以下「平成18年大法廷判決」 という。)以後、立法府に対し、違憲の問題が生ずる投票価値の不平等を解消するために、参議院の選挙制度の枠組みの見直しを求め、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組み自体をしかるべく見直すことが必要である旨判示していたところ、令和2年大法廷判決は、平成30年改正法は、選挙区選出議員に関する従来からの選挙制度の基本的な 仕組み自体を変更するものではなく、較差の更なる是正を図る取組が大きな進展を見せているとはいえないとしつつも、較差是正を指向する姿勢が失われたと断ずることはできないことを理由に違憲状態に至っていないとした。 しかるに、令和4年6月8日の参議院改革協議会報告書では、選挙制度 改革の具体案すら提出されなかったのみならず、自由民主党においては、公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。)による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)によって導入された合区の解消を目的として、参議院議 職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。)による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)によって導入された合区の解消を目的として、参議院議員の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区 とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとするという憲法47条の改憲案をホームページに公開し、その他の政党においても、改憲の問題が目前に迫っている政治状況の下、現行憲法下での較差の是正を指向する姿勢を失った。 ウ以上によれば、令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙(以下 「令和元年選挙」という。)における最大較差は3.00倍であったもの が、本件選挙時においては3.03まで広がって、較差が3倍を超える選挙区が1つから3つに増えたのであり、立法府において較差の是正を指向する姿勢が失われたといえるから、令和2年大法廷判決に照らしても、本件定数配分規定は違憲状態に至っている。 (被告の主張) ア憲法は、投票価値の平等を要求する一方、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に委ねている。そして、憲法が二院制を採用していることから、参議院が衆議院と異なる独自の機能を発揮するため、人口比例以外の要素について考慮することも、裁量権の行使として是認されるというべき である。したがって、定数配分規定が憲法14条等の規定に違反して違憲とされるのは、参議院の独自性や他の正当に考慮できる政策的目的等を考慮しても、違憲の問題が生ずる程度の著しい投票価値の不平等状態が生じており、かつ、合理的期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 当に考慮できる政策的目的等を考慮しても、違憲の問題が生ずる程度の著しい投票価値の不平等状態が生じており、かつ、合理的期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 都道府県の政治的、経済的、社会的及び文化的な意義、役割や国民の都道府県への帰属意識からすると、都道府県を単位とする選挙区割りをすることには合理性があるし、合区に対する根強い反対意見がある中で合区を進めることは、合区の対象となった人口の少ない県の国民の選挙権行使の意欲を失わせ、合区された二つの県の意見を集約することを困難 ならしめ、過疎地域に居住する国民の意見が国政に反映されなくなるなどの弊害が顕著であり、これらの事情を考慮することは、国会による裁量権の行使として合理性を有する。 また、参議院は、憲法上、3年ごとに議員の半数を改選するとされ(46条)、定数増加が困難な中で、選挙区選出議員148名、改選対象7 4名(いずれも平成30年改正法による人数)を各選挙区に配分すると いう技術的制約がある。 令和元年選挙時点の最大較差は3.00倍であり、較差3倍以上の選挙区は1つであったが、本件選挙時点の最大較差は3.03倍、較差3倍以上の選挙区は3つにとどまった。したがって、平成27年改正及び平成30年改正によって飛躍的に改善した投票価値の不均衡は、令和元年 選挙の時点からほとんど拡大していない。 イ令和元年選挙に関する令和2年大法廷判決による合憲判断後も、国会では、引き続き選挙制度の抜本的見直しに向けた議論を行っている。すなわち、参議院では、令和3年5月14日、参議院改革協議会が設置され、選挙制度の土台となる参議院の在り方や選挙制度の在り方について議論 が積み重ねられ、投票価値の平等を最 議論を行っている。すなわち、参議院では、令和3年5月14日、参議院改革協議会が設置され、選挙制度の土台となる参議院の在り方や選挙制度の在り方について議論 が積み重ねられ、投票価値の平等を最大限尊重すべきであることに異論は出なかったが、多様な民意や参議院議員の地域代表的な性格を具体化するための選挙制度の在り方について、各会派から、選挙区と比例区から議員を選出する現行制度を維持すべきとの意見、完全比例区制を導入すべきとの意見、選挙区の単位を都道府県に代えてより広域の選挙区 (以下「ブロック選挙区」という。)を導入すべきとの意見などの様々な意見が述べられ、合区についても、各会派からそれぞれ評価が述べられるとともに、議員定数見直しについての議論も行われた。各会派の考えに相違があり、結論の一致に至らなかったが、本件選挙後にも議論が継続されることとなっているほか、参議院憲法調査会でも選挙制度に関 する意見交換がされており、参議院議員選挙制度の改革等についての議論が継続している。 ウこれらの事情によれば、本件選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとは認められない。 本件定数配分規定が違憲状態だった場合、国会が合理的期間内に是正しな かったといえるか。 (原告の主張)違憲状態であったとしても、それが合理的期間内に是正がされなかった場合でなければ国会の裁量権の逸脱とは判断しないという合理的期間論は、定数配分規定が違憲状態であると判断しながら、憲法違反ではないとする法理 であり、当該判例は、憲法98条1項により、憲法の条規に反するその他の国務行為として無効である。したがって、本件定数配分規定 数配分規定が違憲状態であると判断しながら、憲法違反ではないとする法理 であり、当該判例は、憲法98条1項により、憲法の条規に反するその他の国務行為として無効である。したがって、本件定数配分規定が違憲状態と判断される以上、これに基づいて施行された本件選挙は直ちに違憲無効と判断すべきである。 (被告の主張) 本件選挙当時の最大較差は、令和2年大法廷判決で合憲とされた最大較差とほぼ同じ程度のものであり、投票価値の不均衡が違憲状態にあるとおよそ考え難い状況にあった。 したがって、仮に本件定数配分規定が違憲状態であったとしても、国会が違憲状態にあったことを認識し得た時期(始期)が開始していたとはいえな いし、是正のための立法措置に必要となる手続等を考慮すれば、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権逸脱になるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(争いのない事実、顕著な事実及び後掲証拠により認められる事実) 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員の総定数250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において 選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が 参議院議員につき3年ごとにその半数を改選する旨定めていることに応じて、各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、昭和21年当時の人口に基づき、各選挙区 の半数を改選する旨定めていることに応じて、各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、昭和21年当時の人口に基づき、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の 参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで、上記定数配分規定に変更はなかった。なお、昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により、参議院議員25 2人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたものにすぎない。その後、平成12年法律118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により、参議院議員の 総定数が242人に削減され、比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。(乙5、6) 参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下、各立法当時の「選挙区間の最大較差」をいうときは、この人口の最大較差をいう。)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡 大を続け、平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」といい、この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が6.59倍に達した後、平成6年改正における れた参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」といい、この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減する措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍 に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減する措 置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」という。)における4選挙区の定数を4増4減する措置の前後を通じて、平成7年から同19年までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。(乙5、7)しかるところ、最高裁判所大法廷は、定数配分規定の合憲性に関し、最高 裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁において後記3の基本的な判断枠組みを示した後、平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定 の下で施行された2回の通常選挙については、上記の状態に至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成 18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常選挙のいずれについても、最高裁大法廷は、上記の状態に至っていたか否かにつき明 後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成 18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常選挙のいずれについても、最高裁大法廷は、上記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することなく、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、平成18年 10月4日の平成18年大法廷判決、最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)。もっとも、平成18年大法廷判決においては、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、上記最高裁平成21年9月30日大法廷判決においては、当時の較差が投票価 値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、選挙区 間における投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあり、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等という観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 平成22年7月11日、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき、最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないと したものの、長年にわたる制度及び社会状況の 66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないと したものの、長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなってお り、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし、それにもかかわらず平成18年改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま平成22年 選挙に至ったことなどの事情を総合考慮すると、同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違 憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 平成24年大法廷判決の言渡し後、平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された。同法の内容は、平成25年7月に施行される通常選挙に向けた当面の較差是正のための改正として選挙 する法律(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された。同法の内容は、平成25年7月に施行される通常選挙に向けた当面の較差是正のための改正として選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減するものであり、その附 則には、平成28年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、結論を得るものとするとの規定が置かれていた。(乙5、6、8の1)平成25年7月21日、平成24年改正法による改正後の定数配分規定の 下での初めての通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。(乙7) 平成25年9月、参議院において平成28年に施行される通常選挙に向けた参議院選挙制度改革について協議を行うため、選挙制度の改革に関する検討会の下に選挙制度協議会が設置された。同協議会においては、平成26年 4月に選挙制度の仕組みの見直しを内容とする具体的な改正案として座長案が示され、その後に同案の見直し案も示された。これらの案は、基本的には、議員1人当たりの人口の少ない一定数の選挙区を隣接区と合区してその定数を削減し、人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ、同協議会において、同年5 月以降、上記の各案や参議院の各会派の提案等をめぐり検討と協議が行われたが、各会派の意見が一致しなかったことから、同年12月26日、各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。(乙8の1) このような協議が行われている状況の中で、平成 たが、各会派の意見が一致しなかったことから、同年12月26日、各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。(乙8の1) このような協議が行われている状況の中で、平成25年選挙につき、最高 裁平成26年(行ツ)第155号、第156号同年11月26日大法廷判 決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」という。)は、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による前記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのである から、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず、したがって、同法による上記の措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかる べき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 選挙制度の改革に関する検討会は、前記の報告書の提出を受けて協議を行ったが、各会派が一致する結論を得られなかったことから、平成27年5 月29日、今後は委員会ないし本会議で結論を出していくこととなった。そして、各会派における検討が進められた結果、各会派の見解は、人口の少ない選挙区について合区を導入することを内容とする①「4県2合区を含む10増 は委員会ないし本会議で結論を出していくこととなった。そして、各会派における検討が進められた結果、各会派の見解は、人口の少ない選挙区について合区を導入することを内容とする①「4県2合区を含む10増10減」の改正案と②「20県10合区による12増12減」の改正案とにおおむね集約され、同年7月23日、上記各案を内容とする公職選挙法 の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。上記①の改正案に係る法律案は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われ る通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1 人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。(乙8の1、2)平成27年7月28日、上記①の改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年改正法)が成立し、同年11月5日に施行された。平成 27年改正の結果、平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった(乙7)。 平成28年7月10日、平成27年改正後の定数配分規定の下での初めての通常選挙(以下「平成28年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった。(乙7) 最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数 た。(乙7) 最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、人口の少ない選挙区について、参議院の創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県 を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則にお いて、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を規定しており、これによって、今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分 規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程 度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、同規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとした。 平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった (乙8の4ないし6)。全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい 最低の投票率となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった (乙8の4ないし6)。全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下など様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める「参議院選挙における合区の解消に関する決議」を採択した(乙24の2)。また、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会においても、合区の 早急な解消に向けた決議等が行われ、多くの地方議会でも同様の決議等が行われた(乙25の1ないし6、26の1ないし3、28の3ないし6、29の2ないし4の、30の1、2、31(枝番を含む。))。 平成28年選挙施行後の平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革に ついて集中的に調査を行う「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。 選挙制度に関する専門委員会は、参議院選挙制度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙 区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又は選挙区の単位を都道府県に代えてより広域のブロック選挙区とすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。 しかし、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的 な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。 しかし、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的 な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の 増減等の点において大きな隔たりがある状況であった。同委員会は、平成30年5月、参議院改革協議会に対し、これらの協議結果についての報告書を提出した。(乙14の1、2、乙19)平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した 上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分すること、及び比例代表選出議員の定数を4人増員するとともに、政党等が優先的に当選人となるべき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。その後、各会派代表者懇談会における協議等が行われたが、各会派間の意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提 出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(以下「参議院特別委員会」という。)において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてブロック選挙区による選挙を導入することを内容とする法律案等が提出された。同年7月11日、参議院特別委員会 において、上記の自由民主党の提案内容に沿った公職選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。(乙16ないし20(枝番を含む。)) 平成30年7月18日、上記法律案通りの法律( 、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。(乙16ないし20(枝番を含む。)) 平成30年7月18日、上記法律案通りの法律(平成30年改正法)が成立し、同年10月25日に施行された(同法による改正後の定数配分規定が本件定数配分規定である。)。平成30年改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった。(乙7、20) 令和元年7月21日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での初め ての通常選挙(令和元年選挙)が施行された。令和元年選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった。令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県でもそれぞれ過去最低の投票率となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった(乙4の2、3、 乙24の7)。 令和2年11月18日の令和2年大法廷判決は、平成30年改正法につき、同法の内容は、選挙区選出議員に関する従来からの選挙制度の基本的な仕組み自体を変更するものではないが、上記のとおり合区の解消を強く望む意見も存在する中で、平成27年改正により縮小した較差を再び拡大させ ないよう合区を維持することとしたのみならず、長らく行われてこなかった総定数を増やす方法を採った上で埼玉県選挙区の定数を2人増員し、較差の是正を図ったものであり、その結果、選挙区間の較差は僅かではあるが更に縮小したとした。そして、平成29年大法廷判決が、平成27年改正法が選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨附則に 規定するなど、更なる較差 の較差は僅かではあるが更に縮小したとした。そして、平成29年大法廷判決が、平成27年改正法が選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨附則に 規定するなど、更なる較差の是正を指向するものと評価することができるという事情も考慮していることから、このような事情についても検討し、平成30年改正法は、1選挙区の定数を2人増員する措置を講ずるにとどまり、附帯決議でも選挙区間の較差是正等に明確には言及がなく、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是 正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正法は、参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの、容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、 合区を維持して僅かではあるが較差を是正しており、数十年間にわたって5 倍前後で推移してきた最大較差を前記の程度まで縮小させた方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等を踏まえる必要があるなど、事柄の性質上、慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面があるとし て、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとした。そして、以上の事情を総合して、令和元年選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとは たと断ずることはできないとした。そして、以上の事情を総合して、令和元年選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 令和元年選挙施行後、全国知事会は、一部反対意見等があったものの、合区を起因とした弊害がさらに深刻度を増しているとして、令和元年7月24日、合区の解消を求める決議をした(乙24の7)。全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会においても、合区解消を求める決議等がされた(乙25の7ないし9、乙26 の4ないし9、乙27の6ないし11、乙28の7ないし14、乙29の5ないし9)。 令和3年5月、参議院の組織及び運営に関する諸問題を検討するため、参議院改革協議会が設置され、同月から令和4年6月まで、13回にわたって協議が行われた。同協議会では、常に参議院の在り方に立ち返りながら議論 を進めていくことを前提に、参議院選挙制度が検討項目とされた(ただし、同協議会では、議員の身分保障、委員会・調査会等の整理再編・充実、行政監視機能の更なる充実、デジタル化、オンライン審議なども検討項目とされていた。)。参議院の在り方についての議論においては、多様な民意を国政に反映させるという役割については共通認識ができたものの、その中身につ いては様々な意見が述べられる状況であり、参議院に都道府県や地域の代表 的な性格を持たせるべきとの意見があった一方、そのような意見は、憲法上、両議院の議員が全国民の代表であるとされていることに反するとして反対する意見もあった。また、参議院が独自性を発揮すべきとする点では異論はなかったものの、どのように独自性を発揮すべきかについ 憲法上、両議院の議員が全国民の代表であるとされていることに反するとして反対する意見もあった。また、参議院が独自性を発揮すべきとする点では異論はなかったものの、どのように独自性を発揮すべきかについては多様な意見が述べられた。このような参議院の在り方の議論を踏まえて、選挙制度に関 する議論がされたところ、投票価値の平等を最大限尊重すべきことについては異論がなかったものの、参議院の役割についての理解や地域代表的性格への理解の違いを反映して、地域代表的な都道府県単位の選挙区と比例代表による現行制度を維持するという意見、ブロック選挙区ないしブロック又は全国比例代表への移行などの様々な意見が出され、合区を巡る議論において は、合区の弊害を指摘して、各都道府県から少なくとも1名を選出すべきとする意見、合区の弊害を解消するためにブロック比例制を導入すべきとの意見、較差是正の措置として合区を積極的に評価する意見などがあるという状況であった。なお、選挙制度に関する協議の中で、次回の通常選挙までに選挙制度専門委員会を設置し議論を進めるべきとの意見が出たものの、参議院 の在り方についての議論をした上で選挙制度を決めるのでなければ、改革はうまくいかないなどの慎重論が多く、その設置を提言するには至らなかった。 同協議会は、令和4年6月8日、同協議会の協議をまとめた上、本件選挙後に議長に各会派の協議の場を設定してもらい、同協議会の議論を土台とし て議論を深めることを切望する旨の意見を記載した参議院改革協議会報告書を議長に提出した(乙34)。 なお、参議院憲法審査会において、令和4年5月18日及び同年6月8日、憲法及びこれに密接に関連する基本法令の調査の一環として、参議院議員の選挙区の合区問題を中心とする案件について、参考人から なお、参議院憲法審査会において、令和4年5月18日及び同年6月8日、憲法及びこれに密接に関連する基本法令の調査の一環として、参議院議員の選挙区の合区問題を中心とする案件について、参考人からの意見聴取、 委員の意見交換等が実施された(乙35の1、2)。 令和2年国勢調査結果による人口に基づく選挙区間最大較差は、宮城県選挙区の3.03であり、東京都選挙区及び神奈川県選挙区でも3倍を超えた(乙3)。 令和4年7月8日、本件選挙が施行された。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は、神奈川県選挙区の3.03倍であり、宮城県選挙区及び東京都選 挙区においても較差が3倍を超えた(乙1)。本件選挙において、合区の対象となった4県のうち、徳島県は、比例代表及び選挙区ともに、投票率が全国最低の45.72%を記録し、選挙区の無効投票率については、合区4県のいずれも全国平均の2.71%を上回った(鳥取県3.94%、島根県2.76%、徳島県3.41%、高知県3.65%)。(乙2) 2 判断 判断の枠組み憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政 に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として 合理性を有するものである限り、それによって とができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として 合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところ にあると解される。前記の参議院議員の選挙制度の仕組みは、このような観 点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正以降は比例代表選出議員)と地方選出議員(同じく選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び平成25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の 仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超え ると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である(令和2年大法廷判決参照)。 以上は、累次の最高裁大法廷判決の趣旨とするところであり、基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められないから、憲法56条2項、1条及び前文第1項第1文後段、前文 和2年大法廷判決参照)。 以上は、累次の最高裁大法廷判決の趣旨とするところであり、基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められないから、憲法56条2項、1条及び前文第1項第1文後段、前文第1項第1文前段から、1人1票を要 求する人口比例選挙が要求され、これに基づき本件定数配分規定が違憲であるかを判断すべきとの原告の主張は、採用の限りでない。 本件選挙当時、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったかア平成27年改正法は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取 県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して、それぞれ定数2の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増加することを内容とするものであり、これに基づき施行された平成28年選挙では、それまで数十年間にわたって5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差が3.08倍まで縮小し、平成30年改正法で は、平成27年改正法による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員 の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分することで、僅かながら選挙区間の最大較差が縮小し、令和元年選挙当時は3.00倍となった。 しかし、その後、本件選挙までに国会において定数配分規定の改正が行われず、平成30年改正法による本件定数配分規定の下で本件選挙が施行され、その結果、選挙区間の最大較差は令和元年選挙時よりも拡大し、 3.03倍となった。 平成30年改正以降、定数配分規定の改正が行われなかった要因の一つとして、前記1のとおり、全国知事会等から、平成27年改正法で導入された合区に起因した弊害が生じているとして、合区の解消を求める根強い意見が寄せられ、立法府内においても、参議院に都道府 要因の一つとして、前記1のとおり、全国知事会等から、平成27年改正法で導入された合区に起因した弊害が生じているとして、合区の解消を求める根強い意見が寄せられ、立法府内においても、参議院に都道府県の地域代表的 性格を持たせるべきとの見地から、都道府県を選挙区の単位とする制度を維持し、さらに合区の解消も図るべきとの意見があったことが挙げられる。 確かに、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点か ら、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものではない。しかし、選挙制度の仕組みを決定するに当たって、このような要素を考慮することは、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて許されるものである。しかも、平成27年改正前には、参議院の総定数増加が困 難な中、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを採用していたことが要因となって投票価値の平等の実現を図ることが著しく困難な状況に至っていたところ、平成27年改正以後も、4県2合区を導入したものの、その他の選挙区については都道府県を選挙区の基本的な単位とする制度がそのまま維持されていたのであるから、その後の人口変動によって較差が拡大 し、いずれは選挙制度の仕組み自体の見直し等が必要となることは容易に 予想されたというべきである。そうすると、都道府県の意義や実体等を考慮すべきことは、合区を拡大したり、選挙制度の仕組みを抜本的に変えたりするなどして較差是正のためのしかるべき改革をしないことの理由として不十分であるといわざるを得ず、本件選挙時の投票価値の不均衡を直ちに正当化することはできない。 イそ みを抜本的に変えたりするなどして較差是正のためのしかるべき改革をしないことの理由として不十分であるといわざるを得ず、本件選挙時の投票価値の不均衡を直ちに正当化することはできない。 イそこで、平成29年大法廷判決及び令和2年大法廷判決において考慮されている立法府の検討過程における較差是正の姿勢という事情について検討する。 令和元年選挙が施行され、令和2年大法廷判決があった後、令和3年5月に至ってようやく参議院に参議院改革協議会が設置され、同協議会に おいて、参議院選挙制度についての検討が開始された。同協議会においては、参議院選挙制度及びその検討の前提となる参議院のあり方が検討項目とされていたものの、これらは、議員の身分保障、委員会・調査会等の整理・再編・充実、行政監視機能の更なる充実、デジタル化、オンライン審議などの多数の検討項目の一部にすぎなかった。そして、同協 議会では、参議院の在り方について、参議院が独自性を発揮すべきであることについては確認されたものの、参議院の役割や地域代表的性格に関する多様な意見が述べられ、意見の隔たりは大きかった。また、これらの意見の相違を反映して、選挙制度についても、参議院の地方代表的性格を重視して、合区を解消して各都道府県から少なくとも1名を選出 すべきという投票価値の不均衡を拡大する結果をもたらすような意見もあれば、ブロック選挙区を提唱する意見、ブロック又は全国比例代表を提唱する意見など様々な意見が出され、結局、選挙制度についての意見を集約し、具体的な選挙制度を検討するまでに至らなかった。さらに、同協議会において、次回の通常選挙(本件選挙のこと)までに選挙制度 専門委員会を設置して議論を進めるべきとの意見もあるにはあったが、 慎重論が多数を するまでに至らなかった。さらに、同協議会において、次回の通常選挙(本件選挙のこと)までに選挙制度 専門委員会を設置して議論を進めるべきとの意見もあるにはあったが、 慎重論が多数を占めたため、同委員会の設置に至らず、同協議会の成果としては、参議院議長に対して報告書を提出したにとどまり、立法府において本件選挙に至るまでに何らの較差是正のための立法的措置は講じられなかった。しかも、同協議会の報告書には、本件協議後に参議院議長に議論の場を設定してもらい、同協議会の議論を土台として議論を深 めることを切望するとの意見が記載されていたが、本件選挙の時点では、参議院において、今後、どのような協議の場を設け、いつまでに、どのような成果を出すのかといった具体的な議論の方向性は一切決まっていない状態であった。 以上の経緯に照らすと、初めて合区を行うことにより長期間5倍前後で 推移してきた選挙区間の最大較差を2.97倍まで縮小させ、さらに、その附則において、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得ると規定した平成27年改正法と比べた場合はもとより、合区を維持した上で、長らく行われてこなかった総定数を増やす方法を採り、僅かではあるが較差を縮小させた平成3 0年改正法と比べても、令和元年選挙から本件選挙に至るまでの間の立法府における較差是正の姿勢は著しく後退したといわざるを得ない。 ウ前記イのとおり、立法府における較差是正の姿勢が著しく後退していることは、今後も不断に人口変動が生じ、都道府県間の人口較差の拡大が見込まれる状況に鑑みると、今後、更に投票価値の不均衡が拡大し、これが 長期間是正されない結果を招きかねない。そうすると、前記アのとおり、直ちに正当化するこ 生じ、都道府県間の人口較差の拡大が見込まれる状況に鑑みると、今後、更に投票価値の不均衡が拡大し、これが 長期間是正されない結果を招きかねない。そうすると、前記アのとおり、直ちに正当化することができない程度に達している本件選挙当時の投票価値の不均衡は、立法府の較差是正の姿勢に照らしても正当化することができないから、本件選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあっ たと評価せざるを得ない。 3 本件定数配分規定が違憲状態だった場合、国会が合理的期間内に是正しなかったといえるかについて前記2のとおり、定数配分規定が憲法に違反するに至るのは、投票価値の著しい不平等状態が生じていることに加え、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超え ると判断される場合であると解するのが相当である(令和2年大法廷判決)。 これは累次の最高裁大法廷判決の趣旨とするところであって、その基本的枠組みを変更する必要はなく、累次の最高裁大法廷判決が憲法98条1項によって無効であるとする原告の主張は採用できない。 そこで、本件選挙の当時、投票価値の著しい不平等状態が相当期間継続し、 国会がこれを是正する措置を講じなかったといえるかを検討する。 令和2年大法廷判決は、結論として、令和元年選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと判断したものである。この判決を踏まえると、国会において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定の下での 選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる 平等状態にあったものとはいえないと判断したものである。この判決を踏まえると、国会において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定の下での 選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったと認識することは困難であったというべきであるから、国会がこれを合理的期間内に是正しなかったとはいえない。したがって、本件選挙までに国会が投票価値の不均衡を是正する措置を講じなかったことをもって、国会の裁量権の限界を超えると判断することはできない。 もっとも、同判決が、その理由中で、立法府において、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているとし、令和元年選挙の当時、そのような取組が大きな進展を見せているとはいえないと説示していたことからすると、国会に おいて、同判決から本件選挙に至るまでの間に、本件定数配分規定が違憲状態 にあることを認識することができ、令和2年大法廷判決が説示した是正の取組を進めるべきであったと考えることもできなくはない。 しかし、仮にそうであったとしても、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから、その前提として、国会において、憲法 が規定する二院制の下において、参議院がどのような性格を有し、どのような機能を果たすべきか、また、衆議院との異同をどのように位置付けるかといった参議院のあり方を議論する必要がある。そして、参議院の性格等について様々な意見があることは、参議院改革協議会の議論の内容に照らしても明らかであり、事柄の性 院との異同をどのように位置付けるかといった参議院のあり方を議論する必要がある。そして、参議院の性格等について様々な意見があることは、参議院改革協議会の議論の内容に照らしても明らかであり、事柄の性質上、その検討に慎重な考慮を要するし、その結果、較差の 是正の取組がある程度漸進的になることもやむを得ないといえる。 こうした事情を考慮すれば、仮に令和2年大法廷判決において較差是正の取組の必要が指摘されていたことから、同判決後に国会において本件定数配分規定が違憲状態になったことを認識し得たと評価できるとしても、本件選挙までに投票価値の著しい不平等状態が相当期間継続していたとまではいえず、その 是正措置を講じなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとはいえない。 4 結論以上によれば、本件選挙当時、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいうことはできない。 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の とおり判決する。 仙台高等裁判所秋田支部 裁判長裁判官見米正 裁判官吉田勝栄 裁判官綿貫義昌 別紙「参議院選挙区別定数、議員1人当たり人口、較差【較差順】」は掲載省略
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