平成25(行ケ)10200 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年5月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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判決文本文38,470 文字)

- 1 -平成26年5月29日判決言渡平成25年(行ケ)第10200号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年4月22日判決 原告株式会社J-オイルミルズ 訴訟代理人弁護士増井和夫同橋口尚幸同齋藤誠二郎訴訟代理人弁理士中嶋伸介 被告日清オイリオグループ株式会社 訴訟代理人弁護士阿部隆徳訴訟代理人弁理士平田忠雄同岩永勇二 主文 1 特許庁が無効2011-800073号事件について平成25年5月29日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯- 2 - 原告は,発明の名称を「菜種ミールの製造方法」とする特許第3970917号(請求項の数は5である。以下「本件特許」という。)の特許権者である。  被告は,平成23年4月28日,請求項1ないし5のすべてについて本件特許を無効にするとの無効審判を請求した(無効2011-800073号)。原告は,同年7月21日,訂正請求をした。特許庁は,平成24年3月28日,「訂正を認める。特許第3970917号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」 011-800073号)。原告は,同年7月21日,訂正請求をした。特許庁は,平成24年3月28日,「訂正を認める。特許第3970917号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をした。  原告は,上記審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に訴えを提起するとともに,訂正審判を請求した(訂正2012-390085号)。知的財産高等裁判所は,平成24年9月20日,事件を審判官に差し戻すため,上記審決を取り消す旨の決定をした。  原告は,平成24年10月12日,訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。特許庁は,平成25年5月29日,「平成24年10月12日付け訂正請求において,明細書(訂正事項10,11,18,19),特許請求の範囲(請求項3に係る訂正事項3)を認める。特許第3970917号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,同年6月13日,その謄本を原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の記載本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正前の明細書(甲38)を「本件明細書」という。)。 「【請求項1】菜種粕を32~60 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの製造方法。 - 3 -【請求項2】菜種粕を48~60 メッシュの篩にかけて得られる,窒素含量6.53%以上7.27%以下の粒径48~60 メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。 【請求項3】35~48 メッシュ以下の画分を含まない苦みの改善された菜種ミール。 【請求項4】菜種粕を35~48 メッシュの 径48~60 メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。 【請求項3】35~48 メッシュ以下の画分を含まない苦みの改善された菜種ミール。 【請求項4】菜種粕を35~48 メッシュのいずれかの篩にかけて得られる,苦みの改善された粒径35~48 メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。 【請求項5】菜種粕を32~60 メッシュのいずれかの篩にかけることからなる,菜種ミールの窒素含量の調整方法。」 本件訂正後の特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(下線は訂正部分。以下,本件訂正後の明細書(甲39)を「訂正明細書」という。)。 「【請求項1】菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの製造方法。 【請求項2】菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま48~60 メッシュの篩にかけて得られる,窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48~60 メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。 - 4 -【請求項3】菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕の35~48 メッシュ以下の画分を含まない,35~48メッシュ以下の に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕の35~48 メッシュ以下の画分を含まない,35~48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミール。 【請求項4】菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま35~48 メッシュのいずれかの篩にかけて得られ,窒素含量4.90%以上5.80%以下であり,かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された粒径35~48 メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。 【請求項5】菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95~0.986 倍に調整する粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125~1.199 倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの窒素含量の調整方法。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写し記載のとおりであり,原告主張の取消事由との関係において,その要点は次のとおりである。 ア訂正事項1,2,4~9,12~17に係る訂正の適否について訂正事項1は,訂正前の請求項1に「菜種粕を32~60 メッシュのいずれかの篩にかけて」とあるのを,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であっ- 5 -て,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種 かけて」とあるのを,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であっ- 5 -て,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて」と訂正するものである。訂正事項2,4,5,6,8,12,14は,いずれも訂正事項1と同様の訂正であり,訂正事項7,9,13,15~17は,訂正事項1,2,4又は5と整合させるための訂正である。 上記各訂正事項は,いずれも「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られた菜種粕」を「そのまま」篩にかけることを含むものであるところ,「そのまま」という記載は本件明細書には存在せず,実施例1~4で用いられた「菜種粕」が,「そのまま」に該当する「菜種粕」であるか不明であり,「そのまま」の技術的意義が不明であるから,「そのまま」を含む訂正後の記載は,明瞭であった記載をむしろ不明瞭とするものである。 よって,上記各訂正事項は,「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」のいずれにも該当せず,平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法134条の2第1項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないので,認められない。 イ無効理由について本件特許は,特許法29条1項3号及び同条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。  請求項1,2,4,5について請求項1,2,4,5に係る訂正事項1,2,4,5は認められない。本件訂正前の請求項1,2,4,5記載の各発明(以下,順次「本件発明1」のようにいう。また,本件訂正前の請求項1ないし ,5について請求項1,2,4,5に係る訂正事項1,2,4,5は認められない。本件訂正前の請求項1,2,4,5記載の各発明(以下,順次「本件発明1」のようにいう。また,本件訂正前の請求項1ないし5記載の各発明をまとめて「本件発明」という。)は,“Fractionationof- 6 -oleaginousseedmealsbyscreeningandcharacterizationoftheproducts”(「スクリーニングによる油性種子ミールの分別及び製品の特徴」),QualPlantPlantFoodsHum.Nutr.,vol.33(1983),p153-160(甲1。以下「甲1文献」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,本件発明1及び本件発明4は,特公昭55-1783号公報(甲2。以下「甲2公報」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。さらに,本件発明1は,甲第4号証の文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,本件発明1は,甲第5号証の文献に記載された発明である。  請求項3について請求項3に係る訂正事項3は認められる。本件訂正後の請求項3記載の発明(以下「訂正発明3」という。)は,甲1文献に記載された発明(審決のいう甲1発明B。以下「甲1発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,訂正発明3は,甲2公報に記載された発明(審決のいう甲2発明C。以下「甲2発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。  訂正発明3の容易想到性判断についてア甲1文献を主引例とした判断について審 審決のいう甲2発明C。以下「甲2発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。  訂正発明3の容易想到性判断についてア甲1文献を主引例とした判断について審決が認定した甲1発明の内容,甲1発明と訂正発明3との一致点及び相違点は,次のとおりである。  甲1発明の内容(0)粉砕無しの工業用ミール(以下「サンプル(0)」という),(1)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.6mm。以下「サンプル(1)」という。),(2)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:- 7 -0.2mm 。以下「サンプル(2) 」という。),(3) 石臼粉砕ミール(Zellweger。以下「サンプル(3)」という。),(4)衝撃式粉砕ミール(Law,3000rpm。以下「サンプル(4)」という。)又は(5)衝撃式粉砕ミール(Law,1500rpm。以下「サンプル(5)」という。)それぞれを,粒径63μm 未満,63~80μm,80~100μm,100~120μm,120~160μm, 160 ~200μm ,200 ~250μm ,250 ~315μm ,315 ~400μm ,400 ~500μm,500~630μm,630~800μm,800~1000μm,1000~2000μm,2000μm 以上が分画できる網目の篩にかけ,粒径がより小さな網目の篩では通過しないがより大きな網目の篩では通過する粒径に対応する,上記各菜種ミール画分。  一致点篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる,篩分後の菜種ミール。  相違点a 相違点1篩分前の菜種ミールが,訂正発明3では,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を 篩分後の菜種ミール。  相違点a 相違点1篩分前の菜種ミールが,訂正発明3では,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる」「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」「菜種粕」を篩分けの原料として用いるのに対し,甲1発明では,サンプル(0),サンプル(1),サンプル(2),サンプル(3),サンプル(4)又はサンプル(5)であり,これら篩分前の菜種ミールを粉砕する前の原料である粉砕無しの工業用ミールの製造方法は明らかでない点。 b 相違点2篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが,訂正発明3では,いずれか一つの篩の上下二分割し,篩上の粗粒度- 8 -菜種ミールに分画するのに対し,甲1発明では,粒径63μm 未満,63~80μm,80~100μm,100~120μm,120~160μm,160~200μm,200~250μm,250~315μm, 315 ~400μm ,400 ~500μm ,500 ~630μm ,630 ~800μm ,800 ~1000μm,1000~2000μm,2000μm 以上が分画できる網目の篩,すなわち,14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。 c 相違点3用いる篩の種類及び取得する画分,並びに,分画された画分の味が,訂正発明3では,篩の種類が,35~48 メッシュのいずれかで,その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものであり,画分の味が,篩分前の菜種ミールに比べて苦みが改善されたものであるのに対し,甲1発明では,目開きが,63,80,100,120,160,2 上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものであり,画分の味が,篩分前の菜種ミールに比べて苦みが改善されたものであるのに対し,甲1発明では,目開きが,63,80,100,120,160,200,250,315,400,500,630,800,1000,2000μm である篩の全てであり,その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものではなく,画分の味が,菜種ミールに比べて苦みが改善されたものかも明らかでない点。 イ甲2公報を主引例とした判断について審決が認定した甲2発明の内容,甲2発明と訂正発明3との一致点及び相違点は,次のとおりである。  甲2発明の内容菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い,菜種粕(粗蛋白含量38.6%,粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得,奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずし,次いで,48 メッ- 9 -シュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕,48 メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法によって得られる,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕。  一致点篩分前の油粕を篩にかけて得られる,篩上の粗粒度菜種ミール。  相違点a 相違点1篩分前の油粕が,訂正発明3では,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる」「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」「菜種粕」を篩分けの原料として用いるのに対し,甲2発明では,菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い得られたものを奈良式衝撃式粉砕機にかけて表皮部と実部とをはずしたものであり,「菜種を圧搾機 分けの原料として用いるのに対し,甲2発明では,菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い得られたものを奈良式衝撃式粉砕機にかけて表皮部と実部とをはずしたものであり,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる」「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」「菜種粕」に該当するか明らかでない点。 b 相違点2篩の種類が,訂正発明3では,35~48 メッシュのいずれか一つであるのに対し,甲2発明では,目開きが297μm の篩である点。 c 相違点3篩上の粗粒度菜種ミールが,訂正発明3では,篩分前の菜種粕に比べて苦みの改善されたものであるのに対し,甲2発明では,篩分前の油粕に比べて苦みの改善されたものか明ら- 10 -かでない点。 第3 原告主張の取消事由審決には,訂正事項1,2,4~9,12~17に係る訂正の適否に関する判断の誤り(取消事由1),甲1文献を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り(取消事由2),甲2公報を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り(取消事由3)があり,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は違法であり,取り消されるべきである。 1 取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)審決は,「そのまま」の技術的意義が不明であるから,「そのまま」を含む訂正後の記載は,明瞭であった記載をむしろ不明瞭とするものであるとして,「そのまま」を含む訂正事項1,2,4~9,12~17は,「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」のいずれにも該当しないと判断した。 しかし,「そのまま32~48 メッシ として,「そのまま」を含む訂正事項1,2,4~9,12~17は,「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」のいずれにも該当しないと判断した。 しかし,「そのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて,」との訂正は,本件明細書の【0021】の「2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩う」との記載に基づくものである。すなわち,本件明細書には,「2段階の搾油工程を経てできた菜種粕」が篩分けの対象であることが明記されており,この菜種粕は「搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つ」ので,この「特徴ある粒度分布」を破壊するような粉砕処理をすることなく,篩にかけることが,「そのまま・・・篩にかけて」の意味である。「そのまま・・・篩に」かけることは,本件明細書の【0021】の記載において,機械粉砕するとは記載されていないこと,また,すべての実施例の篩分けの記載において,機械粉砕して篩分けするとはされていない点から明らかである。 本件訂正前の請求項1の記載自体では,篩にかける「菜種粕」が,機械粉砕- 11 -したものと,しないものを包含すると解釈することが可能であったから,機械粉砕を加えずに篩にかける発明に限定することは,「特許請求の範囲の減縮」又は「明りょうでない記載の釈明」に該当する。 2 取消事由2(甲1文献を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り) 訂正発明3の要旨認定について訂正発明3の篩分けの対象は,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕」である。「菜種を圧搾機に は,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕」である。「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕」は,圧搾と有機溶剤による抽出という2段階の搾油工程(以下「2段階搾油工程」という。)を経て得られる菜種粕(以下「2段階搾油菜種粕」という。)であるところ,2段階搾油工程においては,通常,①圧搾→②有機溶剤抽出→③乾燥とガム質添加→④整粒工程,という工程により,菜種粕が取り出されることが多い。③のガム質添加と④の整粒工程は,2段階搾油菜種粕を得るための必須の工程ではないが,これらの工程を経たとしても,訂正発明3の意図する篩分け前の菜種粕の「特徴ある粒度分布」を実質的に変更するものではないから,③のガム質添加と④の整粒工程を経て得られる菜種粕は,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」に含まれる。これに対し,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものは,訂正発明3の意図する篩分け前の菜種粕の「特徴ある粒度分布」を変更するものであるから,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には含まれない。  相違点1について審決は,相違点1について,特開2000-316472号公報(甲13。以下「甲13公報」という。)に2段階搾油工程の記載があることを引用して,篩分前の菜種ミールの製造方法として,2段階の搾油工程は,本件- 12 -特許の出願前から良く行われていた方法であると認定した上,甲1発明において,篩分前の菜種ミールとして,本件特許の出願前から良く行われていた方法である2段階の搾油工程による方法により製造された「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55 であると認定した上,甲1発明において,篩分前の菜種ミールとして,本件特許の出願前から良く行われていた方法である2段階の搾油工程による方法により製造された「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」ものを用いることは,当業者が適宜なし得たことであると判断した。 しかし,甲13公報には,菜種粕を篩分けすることにつき何の示唆もない。他方,甲1文献は,サンプル(3)又はサンプル(4)のように高度に機械粉砕された菜種粕が篩分けに好ましいとしているのであるから,機械粉砕せずに篩分けすることによって,かえって優れた特徴を有する菜種粕画分が得られることは,容易に想到されるものではない。  相違点3についてア篩の種類及び取得する画分について審決は,甲1発明において,粗繊維含量が高い画分を得る目的で,高粗繊維・低蛋白質含量の画分である,粒径が小さくない菜種ミール画分を得ようとして,篩分けに用いる篩の目開きを,グレイディングできる250~630μm の中から,周知のTyler 篩で目開きが小さくない領域に着目し,その領域の具体的な一つとして,300μm である48 メッシュ~425μm である35メッシュの篩を選択すること,及び,取得する画分として,粒径が大きい画分である篩上画分の粗粒度菜種ミールを選択することは,当業者が容易になし得たことであると判断した。 しかし,訂正発明3において原料となる菜種粕は,「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」ものである。この粒度分布は,整粒工程が含まれるとしても,数mm ないし数cm に達するような大きな粒子が残存している場合に,これらの大粒子に限り適度に粒径を調整するものであって,圧搾工程後の有機溶剤抽出段階で自然に細粒化した粒子が大部分を占める。これに対し,甲1文献 cm に達するような大きな粒子が残存している場合に,これらの大粒子に限り適度に粒径を調整するものであって,圧搾工程後の有機溶剤抽出段階で自然に細粒化した粒子が大部分を占める。これに対し,甲1文献では,明らかに粒度分布が大きな粒径側に偏っ- 13 -ているサンプル(0),サンプル(1),サンプル(2),サンプル(4)及びサンプル(5)が開示されている。蛋白質含量などが記載されているサンプル(3)及びサンプル(4)は,粒径が小さな側に大きく偏っている。サンプル(1),サンプル(2)及びサンプル(5)については,詳細が記載されていないが,全体的に機械粉砕されている点で訂正発明3の菜種粕とは異なる。しかも,篩分けに適する材料ではないとされている。 そうすると,甲1文献に接した当業者であれば,菜種粕を篩分けして使用するに当たり,十分な粉砕をして,少なくともサンプル(3)又はサンプル(4)の状態にして篩分けをすることは動機付けられるが,サンプル(1),サンプル(2)又はサンプル(5)のように粒度分布がサンプル(3)などより大きな粉砕品について篩分けをする動機を生じないはずである。また,反芻動物用飼料としても,630μm に近い範囲の画分であれば,粗繊維の含有量が高いので,使用する価値があるが,それより大きな粒径範囲については,元の菜種ミールと組成の相違が明確でないのであるから,粉砕を行ってサンプル(3)又はサンプル(4)のようにして利用するのでなければ意味がないと理解する。 これに対し,訂正発明3は,粒度分布が甲1文献のサンプル(3)及びサンプル(4)より顕著に大粒径側に偏った菜種ミールを,単一の篩で篩分けすることにより得られる細粒度画分と粗粒度画分が,それぞれ篩分け前の菜種ミールよりも顕著に有用性を増すことを見出したものであり,甲1文 (4)より顕著に大粒径側に偏った菜種ミールを,単一の篩で篩分けすることにより得られる細粒度画分と粗粒度画分が,それぞれ篩分け前の菜種ミールよりも顕著に有用性を増すことを見出したものであり,甲1文献から容易に想到される内容ではない。 イ分画された画分の味について審決は,訂正発明3の「菜種ミール」は,甲1文献において反芻動物飼料として分画すべきことが既に動機付けされており,その動機付けに基づいて得られた「菜種ミール」が結果として「苦みが改善された」ものであったにすぎないと判断した。 - 14 -しかし,訂正発明3は,粗粒度画分につき繊維分の割合が高いことを特徴とするものではなく,むしろ栄養分については篩分け前より大きくは低下しないものであるとし,苦みの改善の点を特徴としている。2段階搾油菜種粕を,そのまま,一つの篩で分画し,その粗粒度画分を反芻動物用飼料とすることが,周知技術(甲13公報)ないし公知技術(甲1公報)から容易に想到されるという判断は誤りである。  訂正発明3の効果について審決は,訂正発明3における苦みの改善は甲1文献の記載事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものでないと判断した。しかし,菜種ミールを分画することにより,苦みを調整できることについて記載している公知文献は皆無である。審決の判断は誤りである。 3 取消事由3(甲2公報を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り) 相違点1について審決は,相違点1について,甲13公報に2段階搾油工程の記載があることを引用して,篩分前の菜種ミールの製造方法として,2段階搾油工程は,本件特許の出願前から良く行われていた方法であると認定した上,甲2発明において,篩分前の菜種ミールとして,本件特許の出願前から良く行われていた方法である2段階 ルの製造方法として,2段階搾油工程は,本件特許の出願前から良く行われていた方法であると認定した上,甲2発明において,篩分前の菜種ミールとして,本件特許の出願前から良く行われていた方法である2段階の搾油工程による方法により製造された「32 メッシュ篩下の含量38.8~55.6%である」ものを用いることは,当業者が適宜なし得たことであると判断した。 しかし,前記2のとおり,甲13公報には,菜種粕を篩分けすることにつき何の示唆もない。他方,甲2公報は,菜種粕に強い機械粉砕を行って篩分けすることによって有用な画分が得られることを教示しているのであるから,機械粉砕をせずに篩分けすることによって,かえって優れた特徴を有する菜種粕画分が得られることは,容易に想到されるものではない。  相違点3について- 15 -ア篩の種類及び取得する画分について審決は,甲2公報における「本発明の目的は,含油種子から蛋白分に富む油粕と繊維分に富む油粕とを効率的に製造し以つて,動物の飼料等としてそれぞれ有効な用途を持つた油粕を提供することである。」との記載(甲2・1頁2欄29行~32行。審決のいう摘示2a)を根拠として,動物飼料として分画すべきことが既に動機付けられていると判断した。 しかし,上記記載は,表皮部と実部を分離する手段を講じた上で分離した,繊維分に富む油粕を提供することを意味しているのであって,採油工程から得られた菜種粕をそのまま篩分けして分離することを教示しているのではなく,かえって,分離手段を講じないまま分画することは無意味であることを示唆しているものである。 したがって,甲2公報に,表皮部と実部の分離していない菜種粕から粗粒度画分を得ることの動機付けがあるとの審決の判断は誤りである。 イ分画された画分の味について ことを示唆しているものである。 したがって,甲2公報に,表皮部と実部の分離していない菜種粕から粗粒度画分を得ることの動機付けがあるとの審決の判断は誤りである。 イ分画された画分の味について前記2イのとおり,訂正発明3は,粗粒度画分につき繊維分の割合が高いことを特徴とするものではなく,むしろ栄養分については篩分け前より大きくは低下しないものであるとし,苦みの改善の点を特徴としている。2段階搾油菜種粕を,そのまま,一つの篩で分画し,その粗粒度画分を反芻動物用飼料とすることが,周知技術(甲13公報)ないし公知技術(甲2公報)から容易に想到されるという判断は誤りである。  訂正発明3の効果について審決は,苦みの改善は甲2公報の記載事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものでないと判断した。しかし,菜種ミールを分画することにより,苦みを調整できることについて記載している公知文献は皆無である。審決の判断は誤りである。 第4 被告の反論- 16 - 1 取消事由1(訂正事項1,2,4~9,12~17に係る訂正の適否に関する判断の誤り)について「そのまま」という記載は本件明細書には存在せず,本件明細書の実施例1ないし4で用いられた「菜種粕」も,「そのまま」に該当する「菜種粕」であるか不明である。本件明細書や技術常識を参酌しても,「そのまま」の技術的意義は不明であるから,「そのまま」を含む訂正後の記載は,明瞭であった記載をことさら不明瞭とするものであり,「そのまま」篩にかけることを含む訂正事項1は,「特許請求の範囲の減縮」にも「明瞭でない記載の釈明」にも該当しないことは明らかである。 2 取消事由2(甲1文献を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り)について 訂正発明3の要旨認定について 縮」にも「明瞭でない記載の釈明」にも該当しないことは明らかである。 2 取消事由2(甲1文献を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り)について 訂正発明3の要旨認定について訂正発明3の特許請求の範囲の文言は,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られた菜種粕」であって,「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕」と規定されているのみである。また,訂正明細書には,「そのまま篩分け」してなどの記載は存在しない。 また,整粒工程は,機械粉砕する必要がない細かい粒子をあらかじめ除くことにより,機械粉砕の効率を上げたものであり,結果として全体を機械粉砕したものと同様の粒度分布を持つ菜種粕が得られるものであるから,整粒工程と機械粉砕工程とは,菜種粕の製造工程において,実質的に区別できるものではない。また,整粒工程と機械粉砕工程のいずれの工程においても,粉砕手段としてハンマーミルが用いられるから,機械粉砕によって造粒粒子が破砕されるのであれば,整粒工程においても造粒粒子は破砕されるはずである。 したがって,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には,2段階搾- 17 -油工程の後整粒工程を経たにとどまるもののみならず,2段階搾油工程の後菜種粕全体に機械粉砕を施したものも含まれる。  相違点1についてア周知の2段階搾油菜種粕を甲1発明に適用し,訂正発明3に到達することは当業者が容易になし得たことであるイ 2段階搾油菜種粕を,機械粉砕などをせずにそのまま篩分ける技術は当業者にとって周知であり(甲1,3,20),菜種粕を,高蛋白質・低繊維の画分と低蛋白質・高繊維の画分とに分画するという目的をもつ当業者が,甲1文献の図1及び図2の記載を見れば,2段 篩分ける技術は当業者にとって周知であり(甲1,3,20),菜種粕を,高蛋白質・低繊維の画分と低蛋白質・高繊維の画分とに分画するという目的をもつ当業者が,甲1文献の図1及び図2の記載を見れば,2段階搾油菜種粕を一定以下の篩幅で篩い分けるという訂正発明3に容易に想到することができる。 ウ甲1発明は,機械粉砕された菜種粕を篩い分けるものであるが,整粒工程と機械粉砕工程は,菜種粕の製造工程において実質的に区別できないものであるから,甲1発明において,機械粉砕された菜種粕に代えて,整粒された市販の菜種粕を篩い分ける動機付けがある。 エ甲1文献には,篩分けという手段によって,元の菜種粕よりも付加価値を有する菜種粕が製造できると記載されており,2段階搾油菜種粕は最も入手容易な菜種粕であり,市販の菜種粕は整粒された2段階搾油菜種粕であるから,甲1発明において,付加価値のある菜種粕を得るため,機械粉砕された菜種粕又は未粉砕の菜種粕に代えて,最も入手容易な整粒された市販の2段階搾油菜種粕を篩い分ける動機付けがある。 オ甲1文献のサンプル(1),サンプル(2)は,シリンダー粉砕機を用いて粉砕が行なわれたものであるが,それぞれ,クリアランス0.6mm 未満,0.2mm 未満の大きさの画分については,ほとんど機械粉砕されていないから,全体的に機械粉砕されているとはいえない。 カ甲1文献では,有用な画分を得るための原料として,高度に機械粉砕されたサンプル(3)及びサンプル(4)のほか,弱く機械粉砕されたサンプル- 18 -(1)サンプル(2)及びサンプル(5)も,機械粉砕されていないサンプル(0)も,特に排除されてはおらず,いずれのミールも篩分けする動機付けがある。  相違点3の分画された画分の味の点及び訂正発明3の効果についてア原告が (5)も,機械粉砕されていないサンプル(0)も,特に排除されてはおらず,いずれのミールも篩分けする動機付けがある。  相違点3の分画された画分の味の点及び訂正発明3の効果についてア原告が市販している2段階搾油菜種粕を48 メッシュで篩分けし,篩上の粗粒度画分の苦味を確認したところ,全く変化は見られなかった(甲12,表4)。また,原告製の2段階搾油菜種粕(1.8 点),及び,それと同程度の粒度分布となるように弱く機械粉砕した被告製の2段階搾油菜種粕(2.0 点)のいずれにおいても,原告が主張するような,官能評価による苦味改善効果は得られなかった。したがって,原告が主張するような苦味の改善効果はない。 イ 35~48 メッシュ(297~420μm)で篩分けすることは,甲1文献で格付け可能とされている250~630μm の範囲内であり,この範囲が粗繊維含量が多い粗粒度画分を得るために行う篩分けに使用できることは当業者に自明なことであり,この範囲で篩分ければ,結果として,比較的大きな造粒粒子の割合が高い粗粒度画分が得られるのであり,粗粒度画分の蛋白質含量が大きく低下することもないから,栄養価を大きく低下させず,苦味が改善された菜種粕の粗粒度画分は,当業者が容易に到達できる発明の結果として当然に得られるものにすぎない。 ウ馬やウサギなどの草食動物や,牛などの反芻動物は,苦味に対して強く反応しない(乙6,7)ため,対象となる同一飼料資源(例えば菜種粕)において,篩処理前の苦味成分と,篩処理後の篩上部に得られた画分の苦味成分の差は,草食動物に感じられる差とは考えられないから,訂正発明3の効果の一つとして主張されている菜種粕飼料の苦味の低減効果は,仮にあるとしても,意味のない効果である(乙7)。 また,菜種ミールが配合された飼料を給 に感じられる差とは考えられないから,訂正発明3の効果の一つとして主張されている菜種粕飼料の苦味の低減効果は,仮にあるとしても,意味のない効果である(乙7)。 また,菜種ミールが配合された飼料を給与される家畜は,菜種ミールに- 19 -含まれるタンニンを経験し,タンニンの苦味に耐性がついており,菜種ミールに含まれる程度のタンニンの苦味であれば,家畜の嗜好性に影響がない。 さらに,飼料に配合される菜種ミールの割合は,多くとも10%程度にすぎないから,配合飼料全体によって,菜種ミールの持つ苦味がマスキングされてしまい,菜種ミール自体の苦味は問題とならない。 3 取消事由3(甲2公報を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り)について 相違点1についてア周知の2段階搾油菜種粕を甲2発明に適用し,訂正発明3に到達することは当業者が容易になし得たことである。 イ甲2発明の物理的衝撃によって表皮部が破壊されることはほとんどなく,甲2発明においては,実部だけでなく表皮部をも破壊するような物理的な衝撃は必要ないから,菜種粕に強い機械粉砕を行う必要もない。 ウ甲2公報には,「この油粕を表皮部,即ち繊維分の多い部分と実部,即ち蛋白分の多い部分とに分離すれば,前者は乳牛の如く粗繊維が利用できる動物の飼料に好適である」と記載されており,この記載から粗粒度画分を得る動機付けが得られる。  相違点3の分画された画分の味の点及び訂正発明3の効果について上記2のと同じ。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由はいずれも理由があるものと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)について 訂正事項1についてア訂正事項1は,訂正前の請求項1に「 事由はいずれも理由があるものと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)について 訂正事項1についてア訂正事項1は,訂正前の請求項1に「菜種粕を32~60 メッシュのいず- 20 -れかの篩にかけて」とあるのを,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて」と訂正するものである。 訂正事項1は,①訂正前の請求項1において,「菜種粕を・・・篩にかけて」として,篩分けの対象を「菜種粕」とのみ特定していたところを,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出」するという2段階搾油工程を経て得られる菜種粕(2段階搾油菜種粕)であって,その粒度分布が所定の「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」ものに限定し,②その菜種粕を「そのまま・・・篩にかけて」と限定し,これにより,篩分けの対象が,①によって限定された「菜種粕」にさらに何らかの処理を施したものではなく,①によって限定された「菜種粕」そのものであることを強調し,明瞭にするとともに,③訂正前の請求項1において,用いる篩について「32~60 メッシュのいずれか」と特定していたところを,「32~48 メッシュのいずれか」に限定するものである。 したがって,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 イ被告の主張について被告は,上記アの②「そのまま・・・篩にかけて」の部分について,審決の判 るものと認められる。また,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 イ被告の主張について被告は,上記アの②「そのまま・・・篩にかけて」の部分について,審決の判断と同様に,「そのまま」という記載は本件明細書には存在せず,本件明細書の実施例1ないし4で用いられた「菜種粕」も,「そのまま」に該当する「菜種粕」であるか不明であり,本件明細書や技術常識を参酌しても,「そのまま」の技術的意義は不明であるとして,「そのまま」を含む訂正後の記載は,明瞭であった記載をことさら不明瞭とするものであ- 21 -り,特許請求の範囲の減縮にも,明瞭でない記載の釈明にも該当しないと主張する。そこで,本件明細書の記載内容を確認すると,以下のとおりである。 本件明細書(甲38)には,以下の記載があることが認められる。  「【発明を実施するための最良の形態】【0020】以下に,発明の菜種ミールの製造方法の一実施の形態を説明する。本発明の製造方法の原料として用いる菜種粕は,菜種から搾油した残渣を意味する。・・・【0021】菜種からの搾油は,通常,2工程に分かれている。まず,菜種を圧搾機により搾油し,続いて,圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し,上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩うことで,画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができる。・・・【0022】上記菜種粕を32~60 メッシュ,好ましくは35~60 メッシュ,さらに好ましくは35~48 メッシュ,特に好ましくは35~42 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度 上記菜種粕を32~60 メッシュ,好ましくは35~60 メッシュ,さらに好ましくは35~48 メッシュ,特に好ましくは35~42 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。これにより,篩上と篩下とで菜種ミールの性状が異なるものが得られる。・・・」 「【実施例】・・・【0031】篩分けの結果を観察すると,12 メッシュ上には,皮と子葉および胚軸- 22 -部とが一度はがれた後に造粒されたものが大部分を占めた。12 メッシュ以下では,造粒物が減少した。20~32 メッシュでは,皮部分が最も多くなった。菜種ミール通常品(篩分け無し) ,粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールを粉砕機により粉砕し,色差計(製品名: カラーリーダーCR-10,コニカミノルタ(株)製)を用いて色目評価を行った。図1 に菜種ミールの色調の測定結果を示す。特に35 メッシュ下の画分において,白色および黄色が強く,明るい色調となっていた。・・・」一方,本件明細書には,本件発明の篩分けの対象が,訂正事項1所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕に,さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものであることを示唆する記載はなく,本件明細書の実施例(【0030】(実施例1),【0043】(実施例2),【0045】(実施例3))のいずれについても,篩分けの対象が,上記所定の粒度分布の2段階搾油菜種粕に,さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものであることを示す記載はない。 本件明細書の上記記載内容に照らせば,2段階搾油菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになること,そのため,2段階搾油菜種粕にさらに機械粉砕な す記載はない。 本件明細書の上記記載内容に照らせば,2段階搾油菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになること,そのため,2段階搾油菜種粕にさらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく,2段階搾油菜種粕をそのまま篩にかけることにより,画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができ,篩上と篩下とで性状が異なる菜種ミールが得られることが記載されているものと認められる。 そうすると,「そのまま・・・篩にかけて」とは,訂正事項1所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕に,さらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく,上記所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕そのものを篩にかけることを意味するものであることは明らかであり,「そのまま」の技術的意義が不明であるとの被告の主張は理由がない。 - 23 -ウしたがって,訂正事項1に係る審決の判断は誤りである。  訂正事項2,4~9,12~17について訂正事項2,4,5,6,8,12,14は,いずれも訂正事項1と同様の訂正であり,訂正事項7,9,13,15~17は,訂正事項1,2,4又は5と整合させるための訂正である。 したがって,訂正事項1に係る審決の判断が誤りである以上,上記各訂正事項に係る審決の判断も誤りである。  小括よって,原告主張の取消事由1は理由がある。 2 取消事由2(甲1文献を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り)について 訂正発明3の要旨認定について訂正発明3は,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕の35~48 メッシュ以下の画分を含まない,35~48 メッシ 圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕の35~48 メッシュ以下の画分を含まない,35~48 メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミール。」というものである。 訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕,すなわち「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕」の意義について,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕が含まれることは,当事者間に争いがない。問題は,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものが,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕に含まれるか否かであり,原告は含まれないと主張し,被告は含まれると主張する。 2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものが,訂正発明3- 24 -の篩分けの対象である菜種粕に含まれるか否かについては,特許請求の範囲の記載において一義的に明確であるとはいえない。 そこで,以下では,まず,2段階搾油菜種粕の一般的な製造工程と整粒の意義について確認した上,訂正明細書の記載を参酌し,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕の意義について検討する。 ア 2段階搾油菜種粕の一般的な製造工程と整粒の意義について 2段階搾油菜種粕の一般的な製造工程証拠(甲8,10,13)によれば,2段階搾油菜種粕は,菜種粕として一般的なものであり,2段階搾油菜種粕を得るには,通常,訂正発明3において明示的に特定される,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出」するという,2段階搾油工程そのもののほかに,同 段階搾油菜種粕を得るには,通常,訂正発明3において明示的に特定される,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出」するという,2段階搾油工程そのもののほかに,同工程の前後において各種の処理,例えば,有機溶剤を用いた抽出の後,脱溶剤,乾燥,冷却が行われ,さらに整粒が行われることが認められる。  整粒について整粒とは,篩により分級された菜種粕を適当な粒度に粉砕し,再び篩により分級することを繰り返すものをいう(甲9)ところ,「食用油製造の実際」と題する文献(甲11,36)には,菜種粕の粒度について,日本では12目全通と指定されていることが記載され,また,同文献の表2.20には,各社の製品には,粒度が8~10 メッシュよりも大きな粒子が一定量存在することが示されている。これらの記載に照らせば,整粒とは,菜種粕を篩により分級し,篩上となる粒度が概ね8~10メッシュよりも大きな粒子を適当な粒度に粉砕し,これを再び篩により分級することを繰り返すことをいうものと認められる。 そうすると,整粒においては,菜種粕に含まれる粒子のうち,粒度が小さな粒子は,そのまま篩を通過し,機械粉砕されることなく篩下とな- 25 -るが,粒度が大きな粒子は,上記のとおり,適当な粒度に機械粉砕された後,篩を通過して篩下となるから,結局,最終的に得られる菜種粕は,機械粉砕されていない粒子と機械粉砕された粒子との混合物となるものと解される。 イ訂正明細書の記載訂正明細書(甲39)には,以下の記載があることが認められる。  「【技術分野】【0001】本発明は,菜種ミールの製造方法に関し,より詳細には,産業的利用価値の高い菜種ミールの製造方法に関する。」 「【背 められる。  「【技術分野】【0001】本発明は,菜種ミールの製造方法に関し,より詳細には,産業的利用価値の高い菜種ミールの製造方法に関する。」 「【背景技術】【0002】菜種から油分を搾り取った後に残る菜種粕は,現在,菜種ミールとして飼料や肥料用途へ利用されている。しかし,菜種ミールは,大豆ミールと比べると,蛋白質含量が低い,栄養価が低い,動物の嗜好性が悪い,色が悪いなどの点で劣っている。この原因は,菜種ミールが繊維質や苦味物質を多く含み,蛋白質分が比較的少ないことにある。 【0003】菜種ミールに含まれる窒素分やミネラルは,栄養源として飼肥料用途に重要な成分であるが,その含有量は,菜種種子そのものの組成に影響され,収穫時期や品種によってばらつきが生じる。・・・【0004】菜種ミールの持つ栄養分の量をコントロールする方法として,加熱の度合いによって水分を調節する方法がある。しかし,菜種ミールは,水分が高くなく,調整幅が狭い。したがって,加熱は根本的な解決法となっていない。 - 26 -【0005】菜種ミール中の蛋白質分を調整する施策として,・・・(・・・非特許文献1)や・・・(・・・非特許文献2)では,菜種を脱皮してから搾油した際の菜種ミールの栄養価が評価されている。 【0006】・・・(・・・特許文献1)には,菜種胚芽を機械的に砕き,風力分級機や篩によって菜種胚芽のみを得る方法が記載されている。また,・・・(・・・特許文献2)には,菜種種子などの油糧種子の特定組織を分級する方法が記載されている。 ・・・【0007】しかし,非特許文献1および2のように粒径の小さい菜種を脱皮してから搾油する方法は,高コストになりやすく,産業的利 どの油糧種子の特定組織を分級する方法が記載されている。 ・・・【0007】しかし,非特許文献1および2のように粒径の小さい菜種を脱皮してから搾油する方法は,高コストになりやすく,産業的利用に向いていない。 【0008】特許文献1の方法により菜種胚芽を分離した後,菜種ミールに利用しようとすると,菜種胚芽画分とそれ以外の画分とを別々に搾油する必要がある。したがって,抽出機,原料保管用サイロなどの設備が通常の2倍必要となり,作業の手間も増える。 【0009】特許文献2の方法は,食品としての舌触り,保水性,懸濁保持性などの改善が図られるものの,高蛋白質含量の菜種ミールは得られない。 【0010】このように,従来の方法は,菜種ミールの栄養調整のために産業的利用可能な技術とは言い難い。そこで,本発明の目的は,菜種粕から蛋白質を代表とした栄養価を調節した菜種ミールを簡便かつ安価に製造する- 27 -方法であって,しかも廃棄部分の少ないかあるいは全く出ない製造方法を提供することである。  「【課題を解決するための手段】【0011】本発明者らは,上記課題を鋭意検討した結果,意外にも以下の発明によれば上記課題を解決できることを見出した。すなわち,本発明は,菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって,32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕をそのまま32~48 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの製造方法を提供するものである。本明細書では,32~60 メッシュのいずれかの篩にかけた際に篩上 の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる,菜種ミールの製造方法を提供するものである。本明細書では,32~60 メッシュのいずれかの篩にかけた際に篩上と篩下とに得られる二種類の菜種ミールを区別するために,篩上の粒度の比較的大きい菜種ミールを粗粒度菜種ミールといい,篩下の粒度の比較的小さい菜種ミールを細粒度菜種ミールという。・・・・・・」 「【発明の効果】【0016】本発明は,搾油後の菜種粕を篩うという簡便かつ安価な操作で,細粒度菜種ミールと粗粒度菜種ミールという粒度の揃った二種類の菜種ミールを製造することができる。 【0017】32~60 メッシュ篩下の細粒度菜種ミールは,蛋白質含量が高い。しかも,飼料としての利用価値の高い特定のアミノ酸を通常の菜種ミールよりも高い比率で含有するので栄養価も優れる。細粒度菜種ミールは,色- 28 -目も改善される。さらに,48~60 メッシュ篩下のより細粒度の菜種ミールは,窒素含量6.64%以上7.27%以下のより高蛋白質含量の菜種ミールとなる。 【0018】一方,32~60 メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールは,栄養価を維持しながら,嗜好性,特に苦味が改善される。これは,苦味物質が除去されるとともに,残存する苦味物質が搾油時に造粒されてマスキングされたと考えられる。このようなものは,菜種の皮と子実部を分離した後に搾油する従来方法では得られない。本発明の製造方法によれば,従来は苦味物質のために製品価値が低かったものを,良質の製品に転換することができ,さらに,過剰な窒素分が調整されることで,飼肥料として利用した際の環境負荷が軽減される。このように,得られる二種類の菜種ミールの産業上利用性は非常に高く ったものを,良質の製品に転換することができ,さらに,過剰な窒素分が調整されることで,飼肥料として利用した際の環境負荷が軽減される。このように,得られる二種類の菜種ミールの産業上利用性は非常に高く,捨てる部分が少ないか全くない。したがって,本発明の製造方法は,廃棄物を出さない点でも環境に優しい方法といえる。 【0019】本発明の菜種粕を32~60 メッシュのいずれかの篩にかけることからなる,菜種ミールの窒素含量の調整方法によれば,菜種ミールの窒素含量の移行が任意に調整可能である。これは,収穫時期や品種に応じて,窒素含量および栄養価の低い原料菜種粕を得た場合に,窒素含量および栄養価を高めるのに有用である。また,窒素含量および栄養価が高い原料菜種粕を得た場合に,窒素含量を適正量に調整した菜種ミールおよびそれを配合した飼肥料を調製することで,環境負荷物質を発生させないようにするのに有用である。」 「【発明を実施するための最良の形態】【0020】- 29 -・・・本発明の製造方法の原料として用いる菜種粕は,菜種から搾油した残渣を意味する。・・・【0021】菜種からの搾油は,通常,2工程に分かれている。まず,菜種を圧搾機により搾油し,続いて,圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し,上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は,搾油工程で一部が造粒されることにより,特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩うことで,画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができる。 【0022】上記菜種粕を32~60 メッシュ,好ましくは35~60 メッシュ,さらに好ましくは35~48 メッシュ,特に好ましくは35~42 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッ 【0022】上記菜種粕を32~60 メッシュ,好ましくは35~60 メッシュ,さらに好ましくは35~48 メッシュ,特に好ましくは35~42 メッシュのいずれかの篩にかけて,粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと,粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。これにより,篩上と篩下とで菜種ミールの性状が異なるものが得られる。・・・・・・【0027】粗粒度菜種ミールは,タンニンのような苦味物質の含有量が篩分け無しの通常品よりやや低い。さらに,粗粒度菜種ミールは,搾油時に苦味物質が種皮と混ざって粒状となるため,苦味物質が含まれていても,その含量から予想されるほど苦くはなくなる。この種皮と混ざって粒状となった部分は,粗粒度菜種ミール中において栄養価が比較的高く,この部分の存在が粗粒度菜種ミールの栄養価の維持に役立つ。苦味の低減と高栄養価は,家畜の嗜好性を改善し,家畜の成長促進につながる。 【0028】粗粒度菜種ミールは,種皮が比較的多く含まれるため繊維質分が高く- 30 -なる。これは,繊維分が必要とされる牛などの飼料や,土壌改良剤用として好ましい。グルコシノレートは,通常品より低減される。グルコシノレートは,畜産動物に対して有害であるので,本発明の製造方法により低グルコシノレートの菜種ミールが得られることは有益である。上記特性を有する粗粒度菜種ミールは,主に,鶏,牛,豚,魚の嗜好性の改善に有効であり,また,一般に環境負荷の少ない飼肥料原料となる。」ウ訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」の意義について前記アのとおり,2段階搾油工程の後整粒工程を経て最終的に得られる菜種粕は,機械粉砕された粒子と機械粉砕されていない粒子との混合物となるから,搾油工程で造粒された粒子の一部は,機械粉砕によ いて前記アのとおり,2段階搾油工程の後整粒工程を経て最終的に得られる菜種粕は,機械粉砕された粒子と機械粉砕されていない粒子との混合物となるから,搾油工程で造粒された粒子の一部は,機械粉砕によって破壊されるが,その余の造粒された粒子は,機械粉砕によって破壊されることがない。そのため,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕であって,訂正事項1所定の粒度分布を有する菜種粕を篩にかけて得られる菜種ミールは,タンニンのような苦味物質の含有量がやや低くなることに加えて,苦み物質に対してマスキング効果を発揮する造粒粒子が含まれることにより,苦み物質が含まれていても,その含有量から予想されるほど苦くはなくなり,苦味が改善されたものになると認められる(訂正明細書【0018】,【0021】,【0027】)。 これに対し,訂正明細書においては,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものについての記載はない。また,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施して得られる菜種粕においては,搾油工程で造粒された粒子はすべて破壊されてしまっている。そのため,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕であって,訂正事項1所定の粒度分布を有する菜種粕を篩にかけて得られる菜種ミールは,訂正発明3の菜種ミールのように,苦みが改善されたものになるとは認められない。 - 31 -したがって,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕は,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕とは,物として異なるものであり,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には含まれないというべきである。 エ被告の主張について 被告は,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した 篩分けの対象である「菜種粕」には含まれないというべきである。 エ被告の主張について 被告は,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕も含まれると主張し,その根拠の一つとして,訂正発明3の特許請求の範囲の文言は,「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られた菜種粕」であって,「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である前記菜種粕」と規定されているのみであり,訂正明細書にも,「そのまま篩分け」してなどの記載は存在しないことを挙げる。 しかし,特許請求の範囲あるいは訂正明細書において,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものが訂正発明3の篩分けの対象に含まれることを示す記載がないこと,及び,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕が,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕とは,物として異なるものであることは,前記説示のとおりである。 したがって,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」に,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものが含まれると解することはできない。被告の上記主張は理由がない。  被告は,整粒工程は,機械粉砕する必要がない細かい粒子をあらかじめ除くことにより,機械粉砕の効率を上げたものであり,結果として全体を機械粉砕したものと同様の粒度分布を持つ菜種粕が得られるものであるから,整粒工程と機械粉砕工程とは,菜種粕の製造工程において,- 32 -実質的に区別できるものではない,整粒工程と機械粉砕工程のいずれの工程においても,粉砕手段としてハンマーミルが用いられるから,機械粉砕によって造粒粒子が破砕されるのであれば,整粒工程においても造粒粒子は破 区別できるものではない,整粒工程と機械粉砕工程のいずれの工程においても,粉砕手段としてハンマーミルが用いられるから,機械粉砕によって造粒粒子が破砕されるのであれば,整粒工程においても造粒粒子は破砕されるはずであるとも主張する。 しかし,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕が,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕とは,物として異なるものであることは,前記説示のとおりである。被告の上記主張も理由がない。  相違点1について審決は,篩分前の菜種ミールの製造方法として,2段階搾油工程により菜種粕を製造する方法が,本件特許の出願前から良く行われていた方法であることを根拠として,甲1発明において,篩分前の菜種ミールとして,2段階搾油工程による方法により製造された「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」であるものを用いることは,当業者が適宜なし得たことであると判断した。 しかし,前記のとおり,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕には,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものは含まれないのに対し,甲1発明の篩分けの対象であるミールについては,サンプル(0)は,機械粉砕を施したものではないが,審決が認定しているとおり,その製造方法は不明であり,また,その他の5種の粉砕ミールは,サンプル(0)に機械粉砕を施したものである。そのため,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるといえるか否かが問題となる。 そこで,以下,甲1文献の記載を確認した上で,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」を用いる動機付けがあるか否かについて検討する。 - 33 -ア甲1文献の記載甲1文 記載を確認した上で,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」を用いる動機付けがあるか否かについて検討する。 - 33 -ア甲1文献の記載甲1文献には,以下の記載があることが認められる(甲1)。  「要約:篩分け(サイズスクリーニング)は,粒子サイズ(粒径)の関数として組成にバラツキを有する油性種子ミール(油性種子ひき割り)から異なる画分を分離する。スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究の結果,衝撃式粉砕機及び石臼が菜種ミール用にベストであることが示されている。ヒマワリ・ミールの異なる画分からの分離の収率も試験された。篩分けは,脱皮種子ミールでより容易になされることができ,綿実,大豆,ピーナツ,亜麻仁,トマトの種のような他のいろいろな原材料に拡張されることができる。」 「前書き油性種子の工業用ミール(油分抽出後)は,重要なタンパク源であるが,種々の理由,例えば,抗栄養因子の存在等のため軽視されている。 抗栄養因子の問題がない場合は,種子外皮残渣が他の拒絶の原因となる。 粉砕前に種子脱皮をすることも可能であるが,これは高価な技術であり,また,続いて圧搾プロセスによる油分抽出を受ける際に,場合によっては,材料の浸透容量の損失を来たすことがある。 プレボら(Prevotetal.)(1973)[1]は,ヒマワリ・ミールの篩分けが,外皮残渣の部分的な排除によって,画分中のタンパク質含有量を増加させることができることを示している。この技術は,動物飼料用のベストな材料を提供する。現在は,人間の食料用としての潜在的価値を向上させるため,他の油性ミールへの応用のための精密なスクリーニング条件を究明する研究が行われている。」 「材料及び方法パイロッ 料を提供する。現在は,人間の食料用としての潜在的価値を向上させるため,他の油性ミールへの応用のための精密なスクリーニング条件を究明する研究が行われている。」 「材料及び方法パイロットプラント規模(5~100kg)で加工されるミールは,製造者- 34 -が動物飼料用に供給するのと同じ工業製品であった。脱皮製品(ヒマワリ及びピーナツの純粋な核種)のため,ヘキサンによる直接油分抽出によって研究室で調製された1~3kg のミールのサンプルに調査がなされなければならなかった。 菜種ミールに関する粉砕研究のため,その研究室で利用できるパイロット粉砕機が用いられ,かつ以下のものが含まれた。 衝撃式粉砕機:2段階回転スピード付き(1500 及び3000rpm)農家用粉砕機設計(型0415.02,7.5H.P.-フランス,サンリス 60,ルートデクレピー 3,ロウ製)シリンダー粉砕機:専門研究所において小麦をすり潰すために用いられるパイロット粉砕機(1.5H.P.-フランス,パリ 75,ルーセントーオノレ 225,ソキャム製)石臼:コミュニティ・コーヒー・ミル(変更可能な嵌め合い用の隙間を有する設計,3/4H.P.-スイス,ウスター,ゼルウイガーS.A. 製)分類の効果に関する調査のため,ミールの粉砕が,上述のロウ粉砕機を3000rpm にして,又はゼルウイガー粉砕機を「9」の設定にして行われた。 分画スクリーニングは,偏心砂ふるい(型ヴィトロ一夕ミス 450-0.5H.P.-フランス,パリ 75,ルーセントークロイデラブレトンネリエ 24,タミソル製)上に置かれた,メッシュサイズが63μm~8mm のステンレス鋼のふるい(直径45cm)上で行われた。具体的な画分の粒径は,2つの値に指定さ ントークロイデラブレトンネリエ 24,タミソル製)上に置かれた,メッシュサイズが63μm~8mm のステンレス鋼のふるい(直径45cm)上で行われた。具体的な画分の粒径は,2つの値に指定された(テキスト及び表1を参照);これは,より小さな網目のふるいでは通過しないが,より大きな網目のふるいでは通過する粒径に対応している。 - 35 - a 分離の%収率 (N 回収/N 当初)×100b 乾燥物質基準c 20ml 溶液中の乾燥分離1g のOD(×20)」 「結果と考察菜種ミールの粉砕と篩分けに関する研究図1 は,・・・(省略)。 - 36 -図1 粉砕された菜種ミールの粒度分布:(0)粉砕無しの工業用ミール;(1)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.6mm);(2)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.2mm);(3)石臼粉砕ミール(Zellweger );(4) 衝撃式粉砕ミール(Law,3000rpm);(5)衝撃式粉砕ミール(Law,1500rpm) 異なる画分に関する生化学的研究によって,結果として得られる組成は,用いる粉砕機に拘わらず,主に粒径に依存することが示された。図2は,その格付け(グレイディング)が250~630μm で最適であり,タンパク質含有量が45%から36%に減少し,かつ粗繊維含有量が13%から25%に増加することを示している。0.8mm を超えると,粉砕処理は効果がなく,かつ材料はさらなる加工を必要とすることになる。 これらの結果は,寸法分布とともに,衝撃式粉砕機及び石臼が,シリンダー粉砕機よりもよい結果をもたらすことを示している(選択画分,すなわち2 がなく,かつ材料はさらなる加工を必要とすることになる。 これらの結果は,寸法分布とともに,衝撃式粉砕機及び石臼が,シリンダー粉砕機よりもよい結果をもたらすことを示している(選択画分,すなわち200μm 未満で20~25%の収率,47%のタンパク質含有量及び10%の粗繊維含有量)。 ・・・種々のミールのスクリーニング;前もって脱皮することの影響図3は,種々の油性種子ミールに格付け(グレイディング)がなされ得ることを示している。大豆,菜種,及びピーナツの工業用脱皮種子ミールの画分は,より均一でより高い窒素含有量を有している。スクリーニングは窒素含有量の低い極めて大きな粒子の少量を取り除いている。研究所においてピーナツ及びヒマワリの核種から調製されたミールは,依然として均一性が高く,この場合,大きなメッシュでのスクリーニングは,その核種の繊維部分を取り除くために適している。 全体の種子ミール(又は,粉砕の前に十分に洗浄されなかった種子から- 37 -のミール)のために,節分けは,最高のタンパク質含有量及び最低の粗繊維含有量を有する選択画分を生み出す。しかしながら,これは,小さなサイズの粒子(200μm 未満)だけのスクリーニングからしか得られず,結果として収率も少ない。タンパク質及び粗繊維が部分的に分離された重要な中間的画分がある。これらのプロセスを使用すると,結果として,単胃動物又は反芻動物の飼料として当初のミールより価値の高いいくつかの画分が得られる。 - 38 - 」 「結論油性ミールの篩分けは,異なる最終用途のために種々の画 - 38 - 」 「結論油性ミールの篩分けは,異なる最終用途のために種々の画分を提供する。例えば,最小の画分(最高のタンパク質含有量及び最低のセルロース含有量)は,粉末製品又は押出製品として直接用いられることができる。画分は,さらに加工されて,可溶性の非タンパク質成分の除去により濃縮されることができる。中間的な画分は,分離品を調製するために用いられることができる。最も粗い画分は,セルロースの高い含有量のため反芻動物飼料に適する。油分抽出の前の油性種子脱皮は,タンパク質含有量の高いミールの割合を増加するが,ミールの篩分けを排除することはない。」イ動機付けの有無について 甲1文献の上記記載によれば,サンプル(0)は,動物飼料用に供給されているものと同じ工業製品であるとされているが,具体的にどのような製造方法により得られたものであるのかについては,甲1文献には記- 39 -載がなく,不明であるところ,甲1文献の図1に示される粒度分布によれば,サンプル(0)のピークは,3000~4000μm(3~4mm)付近に存在し,最大粒径は8000μm(8mm)を大きく超えるものであることからすると,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは,物として異なるものであることが認められる。 したがって,サンプル(0)に代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。  また,サンプル(1)ないしサンプル(5)は,サンプル(0)全体を機械粉砕して得られたものであるから,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは,物として異なるものである。 すなわち,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕には, ンプル(5)は,サンプル(0)全体を機械粉砕して得られたものであるから,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは,物として異なるものである。 すなわち,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕には,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまるものは含まれるが,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施したものは含まれない。そのため,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕は,整粒工程を経たものであっても,機械粉砕された粒子と機械粉砕されていない粒子との混合物となり,造粒粒子(苦み物質が搾油時に種皮と混ざって粒状となり,造粒されてマスキングされたもの)を含むものである。これに対し,甲1発明の篩分けの対象である上記5種の粉砕ミールは,サンプル(0)全体を機械粉砕して得られるものであるから,全量が機械粉砕された粒子であり,造粒粒子を含まないものである。 そして,甲1文献は,「スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究」に関するものであり,上記の5種の粉砕ミールは,このような研究のために準備されたサンプルであるから,その全体を機械粉砕せずに,粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけることは予定されていない。 したがって,上記の5種の粉砕ミールに代えて,訂正発明3の篩分け- 40 -の対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。  よって,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けはない。 ウ被告の主張について 被告は,周知の2段階搾油菜種粕を甲1発明に適用し,訂正発明3に到達することは当業者が容易になし得たことであると主張する。 しかし,2段階搾油菜種粕が周知であるとしても,甲1発明の篩分けの対象であるミー ,周知の2段階搾油菜種粕を甲1発明に適用し,訂正発明3に到達することは当業者が容易になし得たことであると主張する。 しかし,2段階搾油菜種粕が周知であるとしても,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがないことは,前記説示のとおりである。  被告は,2段階搾油菜種粕を,機械粉砕などをせずにそのまま篩分ける技術は当業者にとって周知であり(甲1,3,20),菜種粕を,高蛋白質・低繊維の画分と低蛋白質・高繊維の画分とに分画するという目的をもつ当業者が,甲1文献の図1及び図2の記載を見れば,2段階搾油菜種粕を一定以下の篩幅で篩い分けるという訂正発明3に容易に想到することができると主張する。 なるほど,甲1文献の図2には,サンプル(0),サンプル(3)及びサンプル(4)について,630μm 以下の粒径において,化学組成が粒径に対して規則的に変化することが示されている。 しかし,前記認定のとおり,サンプル(0),サンプル(3)及びサンプル(4)は,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは,物として異なるものである。訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕についても,サンプル(0),サンプル(3)及びサンプル(4)と同様に,630μm 以下の粒径において,化学組成が粒径に対して規則的に変化するものであるのかについては,本件特許の出願時に知られていたと認めるに足りる証拠はない。 そうすると,仮に,2段階搾油菜種粕を,機械粉砕などをせずにその- 41 -まま篩分ける技術が周知であったとしても,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いることが容易想到であるということはできない。  被告は,甲1発明は,機械粉砕された菜種粕を篩い分けるものであ 1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いることが容易想到であるということはできない。  被告は,甲1発明は,機械粉砕された菜種粕を篩い分けるものであるが,整粒工程と機械粉砕工程は,菜種粕の製造工程において実質的に区別できないものであるから,甲1発明において,機械粉砕された菜種粕に代えて,整粒された市販の菜種粕を篩い分ける動機付けがあると主張する。 しかし,2段階搾油工程の後,菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕が,2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕とは,物として異なるものであることは,前記説示のとおりである。被告の上記主張も理由がない。  被告は,甲1文献には,篩分けという手段によって,元の菜種粕よりも付加価値を有する菜種粕が製造できると記載されており,2段階搾油菜種粕は最も入手容易な菜種粕であり,市販の菜種粕は整粒された2段階搾油菜種粕であるから,甲1発明において,付加価値のある菜種粕を得るため,機械粉砕された菜種粕又は未粉砕の菜種粕に代えて,最も入手容易な整粒された市販の2段階搾油菜種粕を篩い分ける動機付けがあると主張する。 しかし,2段階搾油菜種粕が最も入手容易な菜種粕であるとしても,甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがないことは,前記説示のとおりである。被告の上記主張は理由がない。  被告は,甲1文献のサンプル(1),サンプル(2)は,シリンダー粉砕機を用いて粉砕が行なわれたものであるが,それぞれ,クリアランス0.6mm 未満,0.2mm 未満の大きさの画分については,ほとんど機械粉砕- 42 -されていないから,全体的に機械粉砕されているとはいえないと主張する。 しかし,実際に粉砕 ,クリアランス0.6mm 未満,0.2mm 未満の大きさの画分については,ほとんど機械粉砕- 42 -されていないから,全体的に機械粉砕されているとはいえないと主張する。 しかし,実際に粉砕が行われる際には,クリアランスによって形成される間隙には,クリアランス未満の大きさの粒子だけでなく,大小様々な大きさの粒子が多数存在するのが通常であると考えられるから,その中にクリアランスより小さい大きさの粒子が存在する場合であっても,大小様々な大きさの多数の粒子どうしが接触することにより,結局は,その大半が粉砕されることになると考えられる。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。  被告は,甲1文献では,有用な画分を得るための原料として,高度に機械粉砕されたサンプル(3)及びサンプル(4)のほか,弱く機械粉砕されたサンプル(1)サンプル(2)及びサンプル(5)も,機械粉砕されていないサンプル(0)も,特に排除されてはおらず,いずれのミールも篩分けする動機付けがあると主張する。 しかし,前記のとおり,これらのミールは,いずれも,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは物として異なるものであり,これらのミールに代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。 エよって,相違点1に係る審決の判断には誤りがある。  相違点3の分画された画分の味及び訂正発明3の効果についてア審決は,相違点3のうち分画された画分の味の点について,訂正発明3は「菜種ミール」に係る発明であって,「苦みが改善された」点は当該「菜種ミール」の属性を表現したにすぎないと判断し,また,訂正発明3の効果は,甲1文献の記載事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではないと判断した。 が改善された」点は当該「菜種ミール」の属性を表現したにすぎないと判断し,また,訂正発明3の効果は,甲1文献の記載事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではないと判断した。 しかし,甲1発明から訂正発明3の構成に想到することが容易であると- 43 -はいえないことは前記説示のとおりである以上,それだけで審決の甲1発明に基づく訂正発明3の容易想到性の判断は誤りとなるのであり,それ以上に,訂正発明3の効果が,甲1文献の記載事項から予測される範囲内のものかどうかを論じる必要はない。 イ被告の主張について 被告は,原告が市販している2段階搾油菜種粕を48 メッシュで篩分けし,篩上の粗粒度画分の苦味を確認したところ,全く変化は見られなかったこと(甲12,表4),また,原告製の2段階搾油菜種粕(1.8点),及び,それと同程度の粒度分布となるように弱く機械粉砕した被告製の2段階搾油菜種粕(2.0 点)のいずれにおいても,原告が主張するような,官能評価による苦味改善効果は得られなかったことを理由として,原告が主張するような苦味の改善効果はないとか,35~48 メッシュ(297~420μm)で篩分けすることは,甲1文献で格付け可能とされている250~630μm の範囲内であり,この範囲が粗繊維含量が多い粗粒度画分を得るために行う篩分けに使用できることは当業者に自明なことであり,この範囲で篩分ければ,結果として,比較的大きな造粒粒子の割合が高い粗粒度画分が得られるのであり,粗粒度画分の蛋白質含量が大きく低下することもないから,栄養価を大きく低下させず,苦味が改善された菜種粕の粗粒度画分は,当業者が容易に到達できる発明の結果として当然に得られるものにすぎないとか主張する。 被告の上記各主張は,いずれ こともないから,栄養価を大きく低下させず,苦味が改善された菜種粕の粗粒度画分は,当業者が容易に到達できる発明の結果として当然に得られるものにすぎないとか主張する。 被告の上記各主張は,いずれも訂正発明3に顕著な効果はないとの趣旨の主張であると解される。しかし,訂正発明3の構成は,前記説示のとおり,甲1発明から容易に想到することができるものとはいえないのであるから,審決の判断は,この点で既に誤っており,それ以上に,訂正発明3に顕著な効果があるかどうかを論じる必要はない。  被告は,①馬やウサギなどの草食動物や,牛などの反芻動物は,苦味- 44 -に対して強く反応しない(乙6,7)ため,対象となる同一飼料資源(例えば菜種粕)において,篩処理前の苦味成分と,篩処理後の篩上部に得られた画分の苦味成分の差は,草食動物に感じられる差とは考えられないから,訂正発明3の効果の一つとして主張されている菜種粕飼料の苦味の低減効果は,仮にあるとしても,意味のない効果である(乙7),②菜種ミールが配合された飼料を給与される家畜は,菜種ミールに含まれるタンニンを経験し,タンニンの苦味に耐性がついており,菜種ミールに含まれる程度のタンニンの苦味であれば,家畜の嗜好性に影響がない,③飼料に配合される菜種ミールの割合は,多くとも10%程度にすぎないから,配合飼料全体によって,菜種ミールの持つ苦味がマスキングされてしまい,菜種ミール自体の苦味は問題とならないと主張する。 被告の上記主張も,訂正発明3について顕著な効果はないとの主張であると解される。しかし,訂正発明3の構成が甲1発明から容易に想到し得るものではない以上,この点について判断する必要がないことは前記のとおりである。  小括以上によれば,原告主張の取消事由2は理由がある。 正発明3の構成が甲1発明から容易に想到し得るものではない以上,この点について判断する必要がないことは前記のとおりである。  小括以上によれば,原告主張の取消事由2は理由がある。 3 取消事由3(甲2公報を主引例とする訂正発明3の容易想到性判断の誤り)について 相違点1について審決は,篩分前の菜種ミールの製造方法として,2段階搾油工程により菜種粕を製造する方法が,本件特許の出願前から良く行われていた方法であることを根拠として,甲2発明において,篩分前の菜種ミールとして,2段階搾油工程による方法により製造された「32 メッシュ篩下の含量が38.8~55.6%である」であるものを用いることは,当業者が適宜なし得たことであ- 45 -ると判断した。しかし,以下のとおり,審決の判断には誤りがある。 ア甲2公報の記載甲2公報には,以下の記載があることが認められる(甲2)。  「特許請求の範囲 1 含油種子から採油工程を経て得られた油粕に,油脂の精製工程で副生する油滓を添加混合したのち物理的衝撃を与えて,からみ合っている表皮部と実部とを互いにはずし,次いで両者を分離採取することを特徴とする,蛋白分に富む油粕および繊維分に富む油粕の製造法。」 「発明の詳細な説明本発明は含油種子油粕に関するものであり詳しくは含油種子から蛋白分に富む油粕と繊維分に富む油粕とを製造する方法に係る。 含油種子から得られる従来の油粕には,表皮部と実部がそのまま含まれているが,表皮部と実部とでは互いに組成が異なっている。 即ち,前者は繊維分が多いが蛋白分が少なく,後者ではその逆である。従って,これらの油粕を表皮部と実部とに分離することができれば,それぞれ特徴ある組成の油粕が得られるので分離前の油粕に比べて,より有効な ,前者は繊維分が多いが蛋白分が少なく,後者ではその逆である。従って,これらの油粕を表皮部と実部とに分離することができれば,それぞれ特徴ある組成の油粕が得られるので分離前の油粕に比べて,より有効な用途が期待される。・・・・・・油粕を表皮部と実部とに分離することは,従来から脱脂大豆については行われているが,その他の油粕例えば菜種粕や亜麻仁粕についてこれを実施しようとしても実用的に極めて困難である。 なぜなら,脱脂大豆の場合は採油前の工程で原料大豆の脱皮を行い,これにより表皮部の分離を達成できるが,菜種や亜麻仁は採油前の脱皮が技術的に難しい上に,この段階で脱皮をしてしまうと後の採油工程で種々のトラブルを生じるため工業的にみて実用性がないからである。 また,油粕としたのちに脱皮を行い表皮部と実部を分離しようとする- 46 -と,脱皮ないし分離操作の際にダストの発生が激しく,これを処理するために高価な集じん装置を必要とするうえ油粕のロスも大きく,しかも表皮部と実部との分離効率が低いという種々の欠点がある。 従って,現在まで菜種,亜麻仁等の含油種子から表皮部,即ち繊維分に富む油粕と実部,即ち蛋白分に富む油粕とを効率よく得る方法は知られていない。 本発明の目的は,含油種子から蛋白分に富む油粕と繊維分に富む油粕とを効率的に製造し以って,動物の飼料等としてそれぞれ有効な用途を持った油粕を提供することにある。 ・・・即ち,本発明は含油種子から採油工程を経て得られた油粕に,油脂の精製工程で副生する油滓を添加混合したのち物理的衝撃を与えて,からみ合っている表皮部と実部とを互いにはずし,次いで両者を分離採取することを特徴とする蛋白分に富む油粕の製造法である。 ・・・本発明は・・・従来の方法によるよりも表皮部と実部との分離効率が高い。 み合っている表皮部と実部とを互いにはずし,次いで両者を分離採取することを特徴とする蛋白分に富む油粕の製造法である。 ・・・本発明は・・・従来の方法によるよりも表皮部と実部との分離効率が高い。・・・・・・また,本発明の方法によれば処理の際に発生する微細な油粕粉末が油滓に吸着されるために,ダストの発生を防止することができ,従ってロスも少ない。 ・・・このように,本発明は従来の方法によるよりも繊維分が高い油粕と蛋白分が高い油脂とを製造できるものであって,油粕を目的に応じて有効に利用することができる・・・」 「実施例1菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い,菜種粕(粗蛋白含量- 47 -38.6%,粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得た。 このものに,1重量%の抽出油滓を添加混合したのち奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずした。次いで,48 メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕,48 メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得た。 比較のため対照として上記の方法において油滓を添加せず,他は同様にして処理を行った。・・・」イ動機付けの有無について甲2公報の上記記載によれば,甲2発明は,実施例1において,油滓を添加せず他は同様にして処理を行った対照(比較例)に関するものであり,菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い,菜種粕(粗蛋白含量38.6%,粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算)を得,奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずし,次いで,48 メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕,48 メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法 けて,表皮部と実部とをはずし,次いで,48 メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕,48 メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法によって得られる,48 メッシュ上の繊維分に富む油粕であることが認められる。 甲2発明においてスクリーン(篩)にかける対象である菜種粕は,菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずしたものであるのに対して,訂正発明3において篩分けの対象である菜種粕は,その全体が機械粉砕されたものではなく,粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけるものであるから,両者は物として異なるものである。そして,甲2発明は,上記のとおり,菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずしたものをスクリーン(篩)にかけることを前提とするものであるから,このような菜種粕に代えて,上記のような訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。 - 48 -ウ被告の主張について 被告は,周知の2段階搾油菜種粕を甲2発明に適用し,訂正発明3に到達することは当業者が容易になし得たことであると主張する。 しかし,2段階搾油菜種粕が周知であるとしても,甲2発明の篩分けの対象である菜種粕に代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがないことは,前記説示のとおりである。  被告は,甲2発明の物理的衝撃によって表皮部が破壊されることはほとんどなく,甲2発明においては,実部だけでなく表皮部をも破壊するような物理的な衝撃は必要ないから,菜種粕に強い機械粉砕を行う必要もないとか,甲2公報には,「この油粕を表皮部,即ち繊維分の多い部分と実部,即ち蛋白分の多い部分と ,実部だけでなく表皮部をも破壊するような物理的な衝撃は必要ないから,菜種粕に強い機械粉砕を行う必要もないとか,甲2公報には,「この油粕を表皮部,即ち繊維分の多い部分と実部,即ち蛋白分の多い部分とに分離すれば,前者は乳牛の如く粗繊維が利用できる動物の飼料に好適である」と記載されており,この記載から粗粒度画分を得る動機付けが得られるとか主張する。 しかし,前記説示のとおり,甲2発明は,菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて,表皮部と実部とをはずしたものをスクリーン(篩)にかけることを前提とするものであるから,菜種粕全体を機械粉砕せずに,粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけることは予定されていない。したがって,甲2発明の篩分けの対象である菜種粕に代えて,訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。  相違点3の分画された画分の味の点及び訂正発明3の効果について審決は,相違点3のうち分画された画分の味について,訂正発明3は「菜種ミール」に係る発明であって,「苦みが改善された」点は当該「菜種ミール」の属性を表現したにすぎないと判断し,また,訂正発明3の効果は,甲2公報の記載事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではないと判断した。 - 49 -しかし,甲2発明から訂正発明3の構成を想到することが容易であるといえないことは前記説示のとおりである以上,それだけで審決の判断は誤りとなるのであり,それ以上に訂正発明3の効果が,甲2公報の記載事項から予測される範囲内のものかどうかを論じる必要はない。  小括以上によれば,原告主張の取消事由3は理由がある。 4 まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由があるから,審決 れる範囲内のものかどうかを論じる必要はない。 小括以上によれば,原告主張の取消事由3は理由がある。 まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由があるから,審決は違法なものとして取消しを免れない。 結論よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設楽一 裁判官西理香 裁判官田中正哉

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