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昭和39(ネ)2289 所有権移転登記、土地引渡請求事件

裁判所

昭和51年4月8日 東京高等裁判所

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14,846 文字

主文 原判決を取り消す。被控訴人の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。事実 控訴人ら代理人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上、法律上の主張ならびに証拠の提出、援用および認否は、つぎに付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(ただし、原判決事実摘示中、「オ」とあるを「第」と、「予金」とあるを「預金」と、「仮りに」とあるを「仮に」とそれぞれ改め、原判決三枚目―記録五九〇丁―表一五行目の「占有権の」を削除し、原判決六枚目―記録五九三丁―表一二行目の「異動」を「移動」と改め、原判決一一枚目―記録五九三丁―表一二行目の「粉争」を「紛争」と改め、原判決一七枚目―記録五九九丁―表一〇行目の「ないし四」のつぎに「が被告A、同B主張どおりの写真であることおよび」を加え、同表一三行目の「一ないし七」のつぎに「(乙第二号証の一ないし七中裏面の被告Cの署名、肩書地の記載ならびに名下の印影は偽造である)」を加え、同裏五行目の「同D」のつぎに「、同E」を加え、同裏一二行目の「一ないし四」のつぎに「(本件土地の昭和二七年頃の状況を撮影した写真)、」を加える)。(主張)一控訴人Cの主張 1 利息制限法違反、消費貸借契約の不成立、消費貸借契約の合意解除、錯誤、詐欺、公序良俗違反および信託法第一一条違反の各主張はすべて撤回し、被控訴人主張の消費貸借契約の成立を認める。2 ところで、右の消費貸借契約はつぎのような約定の下になされたものであり、これにつき昭和三〇年三月二九日作成された公正証書には、その旨の記載がなされている。(一) 控訴人Cは、昭和三〇年三月二六日、被控訴人から二二七 借契約はつぎのような約定の下になされたものであり、これにつき昭和三〇年三月二九日作成された公正証書には、その旨の記載がなされている。 撤回し、被控訴人主張の消費貸借契約の成立を認める。2 ところで、右の消費貸借契約はつぎのような約定の下になされたものであり、これにつき昭和三〇年三月二九日作成された公正証書には、その旨の記載がなされている。(一) 控訴人Cは、昭和三〇年三月二六日、被控訴人から二二七 借契約はつぎのような約定の下になされたものであり、これにつき昭和三〇年三月二九日作成された公正証書には、その旨の記載がなされている。(一) 控訴人Cは、昭和三〇年三月二六日、被控訴人から二二七〇万円を弁済期昭和三〇年六月二六日、期限後の損害金日歩四銭と定めて借りうけた。(二) 控訴人Cは、本債務の担保としてその所有にかかる本件土地に順位第一番の抵当権を設定した。(三) 控訴人Cが期限の利益を失つたときは、被控訴人はその選択により本来の請求に代え代物弁済として本件担保物の所有権を取得すべきことを特約した。たゞし、被控訴人は、遅滞なく日本勧業銀行をして本件担保物の坪当り時価を鑑定せしめ、その結果本件債務金額を超過する部分があるときは直ちにこれを債務者に返還すべきものとする。(四) 控訴人Cは、本契約による金銭を弁済しないときは直ちに強制執行をうけるべきことを認諾した。3 すなわち、被控訴人の控訴人Cに対する貸付金の支払いを担保するために、本件土地に対し抵当権を設定し、かつ、抵当物件たる本件土地について代物弁済の予約をし、この代物弁済について被控訴人の清算義務が定められているとともに、控訴人Cの他の一般財産に対する強制執行による貸付金の回収ができることをも定められている。それゆえ、右代物弁済予約は、本来の代物弁済予約すなわち被控訴人が本件土地の所有権を取得することを本来の目的とするものではなく、その狙いは本件土地が有している金銭的価値を被控訴人の債権の優先的満足の手段として拘束することにある。したがつて、被控訴人が昭和三〇年八月五日付書面により本件土地を代物弁済として取得する旨の意思表示をしたとしても、これにより直ちに本件土地の所有権が控訴人Cから被控訴人に移転、帰属するものではなく、また、これにより直ちに被控訴人の控訴 日付書面により本件土地を代物弁済として取得する旨の意思表示をしたとしても、これにより直ちに本件土地の所有権が控訴人Cから被控訴人に移転、帰属するものではなく、また、これにより直ちに被控訴人の控訴人Cに対する貸付金債権が消滅するものでもない。 て取得する旨の意思表示をしたとしても、これにより直ちに本件土地の所有権が控訴人Cから被控訴人に移転、帰属するものではなく、また、これにより直ちに被控訴人の控訴 日付書面により本件土地を代物弁済として取得する旨の意思表示をしたとしても、これにより直ちに本件土地の所有権が控訴人Cから被控訴人に移転、帰属するものではなく、また、これにより直ちに被控訴人の控訴人Cに対する貸付金債権が消滅するものでもない。いいかえれば、予約完結の意思表示による所有権の移転は、それによつて債権者たる被控訴人に対し本件土地の評価により債権の優先弁済を得せしめ、剰余金があればこれを清算金として債務者たる控訴人Cに返還させることを目的とする清算の権利を与えるにすぎないものであつて、このことは最高裁判所昭和四九年一〇月二三日判決の趣旨に照らしてあきらかである。4 このように、被控訴人が担保物である本件土地の所有権を確定的に取得するためには、これに先だち評価清算をなすべき義務があるのであつて、しかも、その評価清算は、第一に日本勧業銀行による本件土地の時価の鑑定を必要とし、第二に評価後直ちに本件土地の時価額と債権金額との差額を控訴人Cに返還しなければならないのである。しかるに、本件では右の二つの要件はいずれも具備されていないから、本件代物弁済予約にもとづく清算は終了していないといわざるをえず、右清算が終了しないかぎり、被控訴人は控訴人Cに対して本件土地の完全な所有権を主張することは許されないのである。被控訴人は、評価清算の時期は代物弁済予約完結の意思表示時であるとして、右当時における本件土地の評価金と債務の元利金の差額に利息を付した金額を弁済供託したが、清算はこれをなした時点における時価を基礎としてなされるべきであるから、右供託は無効である。5 控訴人Cは、本件公正証書にもとづく債務元金二二七〇万円およびこれに対する昭和三〇年六月二七日から昭和四九年一二月二七日までの日歩四銭の割合による遅延損害金六四六八万五九二〇円の合計 である。5 控訴人Cは、本件公正証書にもとづく債務元金二二七〇万円およびこれに対する昭和三〇年六月二七日から昭和四九年一二月二七日までの日歩四銭の割合による遅延損害金六四六八万五九二〇円の合計八七三八万五九二〇円を住友銀行東京営業所振出し、日本銀行本店支払いの小切手をもつて準備し、昭和四九年一二月二七日、控訴人Cの訴訟代理人が被控訴人の住所地においてその代表者である副理事長Fに対し右債務の弁済のため現実に提供したが、同人はその受領を拒否した。 債務元金二二七〇万円およびこれに対する昭和三〇年六月二七日から昭和四九年一二月二七日までの日歩四銭の割合による遅延損害金六四六八万五九二〇円の合計八七三八万五九二〇円を住友銀行東京営業所振出し、日本銀行本店支払いの小切手をもつて準備し、昭和四九年一二月二七日、控訴人Cの訴訟代理人が被控訴人の住所地においてその代表者である副理事長Fに対し右債務の弁済のため現実に提供したが、同人はその受領を拒否した。そこで、控訴人Cは、右八七三八万五九二〇円を東京法務局に対し右同日同法務局昭和四九年度金第一四一三七九号をもつて弁済供託した。したがつてこれにより本件公正証書にもとづき被控訴人が控訴人Cに対して有する債権は消滅し、これにともない被控訴人が本件土地について有する担保権もすべて消滅した。二被控訴人の主張 1 控訴人Cの主張の撤回に異議はない。2 控訴人Cは、本件公正証書にもとづく貸金の元利金を弁済供託したから、被控訴人が本件土地について有する担保権は消滅したと主張する。そして、控訴人Cがその主張のとおりの弁済供託をしたことは認めるが、右主張は、本件公正証書にもとづく金銭消費貸借契約の趣旨に反するか、もしくは、その引用にかかる最高裁判決の趣旨を誤解したもので正当ではない。すなわち、本件公正証書には控訴人Cが主張するとおりの約定が記載されているが、そのうち前記一、2、(三)の条項は、控訴人Cの債務の担保を目的とするものではなく、抵当権の本来の実行に代え、簡易な決済手段を定めたにすぎないものである。本件契約当時債権担保のために通常行なわれていたいわゆる丸取りの代物弁済予約とはせず、また、代物弁済予約の仮登記もしないで、わざわざ清算条項がおかれているのはこのことを示すものである。換言すれば、 本件契約当時債権担保のために通常行なわれていたいわゆる丸取りの代物弁済予約とはせず、また、代物弁済予約の仮登記もしないで、わざわざ清算条項がおかれているのはこのことを示すものである。換言すれば、右の代物弁済予約は、本来の代物弁済を企図したものであつて、債務者の利益のために清算条項を特約したものと解するのが素直な解釈である。このように解すれば、この代物弁済予約における当事者の意思は、予約完結の意思表示により控訴人Cの債務を確定的に消滅させると同時にその時点における本件土地の評価額をもつて清算することを内容とするものであつたというべきである。 れているのはこのことを示すものである。換言すれば、右の代物弁済予約は、本来の代物弁済を企図したものであつて、債務者の利益のために清算条項を特約したものと解するのが素直な解釈である。このように解すれば、この代物弁済予約における当事者の意思は、予約完結の意思表示により控訴人Cの債務を確定的に消滅させると同時にその時点における本件土地の評価額をもつて清算することを内容とするものであつたというべきである。したがつて、被控訴人が控訴人Cに対してした昭和三〇年八月五日付書面による代物弁済予約完結の意思表示により本件土地は確定的に被控訴人の所有に帰し、あとは右時点における本件土地の適正な時価と控訴人Cの債務との清算関係が残るにすぎない。のみならず、代物弁済予約完結の意思表示が到達した後の昭和三〇年一〇月末ころ、被控訴人の訴訟代理人Gが控訴人C宅を訪れた際、同人は右予約完結の意思表示により本件土地の所有権が被控訴人に移転したことを認め、本登記手続に必要な委任状、印鑑証明書の交付を約束するとともに自己の債務が右所有権の被控訴人への帰属により消滅したことを認めていたのであつて、仮に前記主張が理由ないとすれば、右時点で所有権移転のあらたな合意が成立したものというべきである。なお、控訴人Cは、いわゆる仮登記担保について判示した最高裁判所昭和四九年一〇月二三日判決を援用するが、本件の仮登記は、被控訴人が本来の債務の履行に代えて本件土地の所有権を取得すべき旨の予約完結の意思表示をした後、控訴人Cが所有権移転登記手続に協力しないため、東京地方裁判所の仮登記仮処分命令によりなされたものであつて、仮登記を手段とした代物 代えて本件土地の所有権を取得すべき旨の予約完結の意思表示をした後、控訴人Cが所有権移転登記手続に協力しないため、東京地方裁判所の仮登記仮処分命令によりなされたものであつて、仮登記を手段とした代物弁済の予約といえないことはあきらかであり、右最高裁判決の趣旨は本件には妥当しないというべきである。3 仮に、右最高裁判決の趣旨が本件の代物弁済予約に妥当するとしても、いわゆる仮登記担保の場合には帰属清算型が原則であり、しかも、評価清算によつて目的物の所有権は確定的に債権者に移転し、同時に本来の債務が消滅するというのである。しかして、右の評価清算は清算金の提供によつて完了するものと解されているが、本件では清算金の提供が約定されており、鑑定評価により予約完結時の客観的な清算額の確定ができるのであるから、清算金の提供をまつまでもなく予約完結の意思表示によつて評価清算は完了し、本来の債務は消滅し、その後は単に清算金の支払いが残るにすぎないと解すべきである。 は確定的に債権者に移転し、同時に本来の債務が消滅するというのである。しかして、右の評価清算は清算金の提供によつて完了するものと解されているが、本件では清算金の提供が約定されており、鑑定評価により予約完結時の客観的な清算額の確定ができるのであるから、清算金の提供をまつまでもなく予約完結の意思表示によつて評価清算は完了し、本来の債務は消滅し、その後は単に清算金の支払いが残るにすぎないと解すべきである。このように解するのがきわめて常識的であり、本件の契約によつて当事者が意図したところにもそうというべきである。もともと、昭和四二年以来一連の最高裁判決によつて発展させられてきたいわゆる仮登記担保に関する法理は、契約の解釈としてなされたものであることは多言を要しないところであつて、本件のごとく約定の内容が明確なものについてまで右の法理を適用し、契約解釈の名のもとに当事者の意図した契約内容を変更することになれば、契約自由の原則を侵害し、ひいては立法権がその合理的裁量をもつてなしうるにすぎないことを司法権が行なうことになり違憲のそしりをまぬかれないことに留意すべきである。4 右のように、本件では予約完結の意思表示によつて評価清算は完了したのであり、したがつて右意思表示の時期をもつて評価清算の時期と解す ことになり違憲のそしりをまぬかれないことに留意すべきである。4 右のように、本件では予約完結の意思表示によつて評価清算は完了したのであり、したがつて右意思表示の時期をもつて評価清算の時期と解すべきところ、被控訴人は、昭和四七年一月二五日、日本不動産研究所の鑑定結果にもとづき、代物弁済の予約完結の意思表示をした時点における本件土地の評価額二四〇〇万円と右当時における本件債務金の元利合計二三一〇万八六〇〇円の差額八九万一四〇〇円およびこれに対する右意思表示の時から昭和四七年一月二五日まで商事法定利率年六分の割合による利息八八万三六一円をあわせた一七七万一七六一円を弁済のため供託したから、これによつて清算金の支払いもすべて完了したことになり、したがつて、控訴人Cは被控訴人に対して直ちに本件土地につき仮登記にもとづく所有権移転登記手続をすべき義務がある。なお、右差額金の清算が遅れたのは、公正証書で指定した日本勧業銀行が従来は私人の依頼による鑑定を引きうけなかつたことによるもので、そのため、被控訴人は、原審においても予約完結の意思表示当時における本件土地の時価の鑑定を申し出ていたが、控訴人Cから評価清算の主張がなされなかつたこともあつて採用されるに至らなかつたものである。 して直ちに本件土地につき仮登記にもとづく所有権移転登記手続をすべき義務がある。なお、右差額金の清算が遅れたのは、公正証書で指定した日本勧業銀行が従来は私人の依頼による鑑定を引きうけなかつたことによるもので、そのため、被控訴人は、原審においても予約完結の意思表示当時における本件土地の時価の鑑定を申し出ていたが、控訴人Cから評価清算の主張がなされなかつたこともあつて採用されるに至らなかつたものである。(証拠関係)(省略) 理由 一被控訴人の控訴人Cに対する請求について 1 被控訴人が、昭和三〇年三月二九日、控訴人Cに対し、二二七〇万円を、弁済期昭和三〇年六月二六日、期限に債務を弁済しないときは本来の請求に代え代物弁済として本件土地を取得しうるとの約定のもとに貸付けたことは当事者間に争いがなく(従来は右貸借の事実およびその効力について根本的な対立があり、原審および当審における審理のほとんどをその究明に費してきたが、控訴人Cは当審の最終 との約定のもとに貸付けたことは当事者間に争いがなく(従来は右貸借の事実およびその効力について根本的な対立があり、原審および当審における審理のほとんどをその究明に費してきたが、控訴人Cは当審の最終段階で貸借の事実およびその有効性を認めるに至つた)、成立に争いがない甲第一号証(右消費貸借契約につき作成された公正証書正本であつて、その原本は乙第八〇号証)によれば、右代物弁済予約の具体的内容は、右貸金債務の担保として本件土地に順位一番の抵当権を設定するとともに、控訴人Cが期限の利益を失いまたは約定の期限を徒過したときは、被控訴人はその選択により本来の請求に代え代物弁済として本件の担保物の所有権を取得することができる、ただし、被控訴人は遅滞なく日本勧業銀行をして本件担保物の坪当り時価を鑑定させ、その結果本件債務金額を超過する部分があるときは直ちにこれを控訴人Cに返還するというものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、右認定の事実によれば、本件の代物弁済予約は、被控訴人が控訴人Cに貸付けた二二七〇万円の支払いを担保する目的を有するものであることはあきらかであり、その趣旨とするところは、債権者たる被控訴人が担保物たる本件土地の所有権を取得すること自体にあるのではなく、右土地の有する金銭的価値に着目し、その価値の実現によつて自己の債権の排他的満足を得ることにあり、本件土地の所有権の取得は、かかる金銭的価値の実現の手段にすぎないものというべきである(最高裁判所昭和四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁参照)。 するものであることはあきらかであり、その趣旨とするところは、債権者たる被控訴人が担保物たる本件土地の所有権を取得すること自体にあるのではなく、右土地の有する金銭的価値に着目し、その価値の実現によつて自己の債権の排他的満足を得ることにあり、本件土地の所有権の取得は、かかる金銭的価値の実現の手段にすぎないものというべきである(最高裁判所昭和四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁参照)。2 これに対し、被控訴人は、本件は控訴人Cの債務の担保を目的とした代物弁済の予約ではなく、抵当権の本来の実行に代えた簡易な決済手段を定めたにすぎないと主張するが、債権担保のために設定された抵当権の目的物件を本 し、被控訴人は、本件は控訴人Cの債務の担保を目的とした代物弁済の予約ではなく、抵当権の本来の実行に代えた簡易な決済手段を定めたにすぎないと主張するが、債権担保のために設定された抵当権の目的物件を本来の請求に代えて取得することは、それ自体債権担保の目的をもつもの以外のなにものでもないといわざるをえないし、本件の全証拠によつても、本件の代物弁済予約が債権担保以外のなんらかの目的を企図したものと認めることはできない。もつとも、弁論の全趣旨によれば、本件では、代物弁済予約にもとづく所有権移転請求権保全の仮登記が、右予約の締結と同時にはなされないで、予約完結の意思表示後に裁判所の仮登記仮処分命令によつてはじめてなされたことが認められるが、原審および当審証人E、当審証人Gの各証言によれば、予約の締結と同時に仮登記をしなかつたのは、当時、本件土地につき東京都との間で売買の話がもちあがつていたことから、仮登記をしてもすぐに抹消しなければならない事態が予想されたことと、右売買が実現すれば期限前にも貸金全額の返済が約定されていたことによることが認められるうえ、もともと仮登記は公示方法の一種であつて法律行為の成立要件ではないから、仮登記が予約の締結と同時になされなかつたからといつて、債権担保の目的を認定するうえでの支障となるものではない。また清算条項がおかれているのは、被控訴人が代物弁済の実行によつて被担保債務の履行以上の利益を得ることを防止し、代物弁済による所有権の移転を債権担保の目的に限定しようとしたものであることがあきらかであつて、最高裁判所の判決によつて発展させられてきたいわゆる清算型代物弁済予約に関する理論と同様の結果を当事者の合意によつて実現しようとしたものと解するのが相当であり、清算条項の存在こそは債権担保の趣旨をもつとも明瞭に表現したもの のは、被控訴人が代物弁済の実行によつて被担保債務の履行以上の利益を得ることを防止し、代物弁済による所有権の移転を債権担保の目的に限定しようとしたものであることがあきらかであつて、最高裁判所の判決によつて発展させられてきたいわゆる清算型代物弁済予約に関する理論と同様の結果を当事者の合意によつて実現しようとしたものと解するのが相当であり、清算条項の存在こそは債権担保の趣旨をもつとも明瞭に表現したもの 展させられてきたいわゆる清算型代物弁済予約に関する理論と同様の結果を当事者の合意によつて実現しようとしたものと解するのが相当であり、清算条項の存在こそは債権担保の趣旨をもつとも明瞭に表現したものというべきである。なお、被控訴人は、本件の代物弁済予約における当事者の意思は予約完結の意思表示によつて本件土地の所有権を確定的に被控訴人に帰属させると同時に控訴人Cの債務を同様に消滅させることを内容とするものであつたとの主張をするが、本件の全証拠によつても、本件の代物弁済予約において、目的たる土地の所有権の移転時期ないし被担保債務の消滅時期に関して具体的な約定のあつたことを認めることはできず、この点は、後述するように、本件の代物弁済予約の趣旨をみきわめたうえで解釈によつて補充するほかにないものである。また、被控訴人は、控訴人Cは予約完結の意思表示後被控訴人の訴訟代理人に対して本件土地の所有権が被控訴人に移転したことを認め本登記手続に必要な委任状、印鑑証明書の交付を約束するとともに自己の債務が右所有権の被控訴人への帰属により消滅したことを認めていたと主張し、仮定的に右事実は所有権移転のあらたな合意に該当するとの主張をする。そして、前掲証人Gの証言中には、右約束の存在を基礎づける供述部分があるが(控訴人Cが債務の消滅を承認していたとの点については証拠がない)、右供述は当審における控訴人C本人尋問の結果と対照して直ちには信用できないのみならず、仮に控訴人Cが右主張のごとく本登記手続に必要な書類の交付を約束したとしても、ほかに特別の事情があつたことの認められない本件では、それは単に本件土地の所有権が清算特約つきで被控訴人に移転したことを認めたにすぎないもので、本件の代物弁済予約の有効性を承認した以上のものとはいえないから、右約束をもつて、あらたな れない本件では、それは単に本件土地の所有権が清算特約つきで被控訴人に移転したことを認めたにすぎないもので、本件の代物弁済予約の有効性を承認した以上のものとはいえないから、右約束をもつて、あらたな所有権移転の合意とみることができないのはもとより、本件土地の所有権の移転時期ないし被担保債務の消滅時期に関して、代物弁済予約の内容を補充する具体的な約定とみることもできない。 から、右約束をもつて、あらたな れない本件では、それは単に本件土地の所有権が清算特約つきで被控訴人に移転したことを認めたにすぎないもので、本件の代物弁済予約の有効性を承認した以上のものとはいえないから、右約束をもつて、あらたな所有権移転の合意とみることができないのはもとより、本件土地の所有権の移転時期ないし被担保債務の消滅時期に関して、代物弁済予約の内容を補充する具体的な約定とみることもできない。3 つぎに、被控訴人は、本件では清算金の提供が約定されており、鑑定評価により予約完結時の客観的な清算額の確定ができるのであるから、予約完結の意思表示によつて評価清算が完了し、その後は清算金の支払いが残るにすぎないと解すべきであり、評価清算も予約完結の意思表示当時の価額を基準としてなすべきであるとの主張をする。そして、被控訴人が、その主張するとおり、昭和三〇年八月六日控訴人Cに到達した書面により同月一〇日効力が発生したと認めるべき予約完結の意思表示をしたこと、昭和四七年一月二五日、右意思表示の効力発生当時における本件土地の評価額から被担保債務の元利合計額を控除した残額に年六分の割合による利息を付加した金額を弁済供託したことは当事者間に争いがない。しかしながら、前述したように、本件の代物弁済予約は、被控訴人は予約完結の意思表示後遅滞なく日本勧業銀行をして本件土地の坪当り時価を鑑定させ、その結果本件債務金額を超過する部分があるときは直ちにこれを債務者に返還するという内容のものであるから、評価清算が完了したといえるためには、少なくとも、本件土地の時価を鑑定することと、右時価が債務金額を超過するときはこれを返還することの二つの要件を具備することが必要であつて、単なる予約完結の意思表示のみでは予定された評価清算が完了したとい<要旨>えないことはあきらかである。これに対して、評価清 超過するときはこれを返還することの二つの要件を具備することが必要であつて、単なる予約完結の意思表示のみでは予定された評価清算が完了したとい<要旨>えないことはあきらかである。これに対して、評価清算の基準時については、右約定によつて予約完結の</要旨>意思表示後遅滞なく本件土地の時価を鑑定すべきものとされていることにかんがみるならば、これを予約完結の意思表示の時期と一致させる趣旨であつたと解しえないではないが、いうまでもなく、このことは評価清算が予約完結の意思表示に近接して行なわれることが当然の前提となつているのであつて、本件のように、予約完結の意思表示と評価清算の間に一六年以上もの隔たりがある場合はもはや右約定の予想しないところであるといつてよく、したがつて、かかる場合における評価清算の基準時については、むしろ、解釈によつて合理的に確定することが許されているものと解するを相当とする。 えないではないが、いうまでもなく、このことは評価清算が予約完結の意思表示に近接して行なわれることが当然の前提となつているのであつて、本件のように、予約完結の意思表示と評価清算の間に一六年以上もの隔たりがある場合はもはや右約定の予想しないところであるといつてよく、したがつて、かかる場合における評価清算の基準時については、むしろ、解釈によつて合理的に確定することが許されているものと解するを相当とする。けだし、評価清算が約定どおり行なわれずに延び延びとなつているにもかかわらず、その基準時についてのみ約定に拘束力を認めこれに変更を加えることができないものと解することは、評価の適正を欠き著しく不合理な結果となることは一見して明白だからである。かようにして、予約完結の意思表示の時期をもつて評価清算の基準時と解する被控訴人の主張は、本件のごとき事案には妥当しないのであつて、むしろ、本件の代物弁済予約が債権担保を目的とするものであり、しかも当初から評価清算の約定がなされていて債権者たる被控訴人が被担保債務の履行以上の利益を得ることにきびしい制限が課せられている趣旨を直視するときは、評価清算は現実にこれをなす時点での目的物の時価を基準とするのがもつとも合理的であり、それがまたいわゆる清算型代物弁済予約の法理にも適合するものというべきである。被控訴人は、評価清算 るときは、評価清算は現実にこれをなす時点での目的物の時価を基準とするのがもつとも合理的であり、それがまたいわゆる清算型代物弁済予約の法理にも適合するものというべきである。被控訴人は、評価清算の内容ないしその基準時に関して契約解釈の名のもとに当事者の合意を変更することの不当性を主張するが、右に述べたとおり、評価清算の内容については約定によつて明確であつて解釈による変更の余地もその必要も存しないし、評価清算の基準時については、評価清算が予約完結の意思表示後遅滞なく行なわれず両者の間に一六年以上もの隔たりがある本件では、むしろ右事実をふまえた合理的な解釈を施すことこそ法の理念にかなうものというべきであつて、右主張は失当といわざるをえない。そして、前述したことは、評価清算の遅れたのが、控訴人Cにおいて代物弁済予約そのものの効力を否認して長期間抗争してきたこと、あるいは、被控訴人主張のように、本件の公正証書によつて指定された日本勧業銀行が従来は私人の依頼による鑑定を引きうけなかつたことに起因するからといつて、別異に解すべき理由とはならないものというべきである。 こそ法の理念にかなうものというべきであつて、右主張は失当といわざるをえない。そして、前述したことは、評価清算の遅れたのが、控訴人Cにおいて代物弁済予約そのものの効力を否認して長期間抗争してきたこと、あるいは、被控訴人主張のように、本件の公正証書によつて指定された日本勧業銀行が従来は私人の依頼による鑑定を引きうけなかつたことに起因するからといつて、別異に解すべき理由とはならないものというべきである。してみれば、本件では、予約完結の意思表示のみによつて評価清算が完了したものといえないのはもとより、右意思表示当時における本件土地の価額を基準として評価清算をすべきであるともいえないから、被控訴人がした前記評価清算は、これをなすべき基準時の採用を誤まつた不適法なものである。のみならず、当審における鑑定人Hの鑑定結果によれば、被控訴人が清算金等の弁済供託をした昭和四七年一月二五日当時における本件土地の価額は一億一五九〇万円を下るものではなかつたことが認められるから、評価清算は現実にこれをなす時点での目的物の価額を基準とすべきであるとの前記説示によると、被控訴人が控訴人Cに返還すべき清算 件土地の価額は一億一五九〇万円を下るものではなかつたことが認められるから、評価清算は現実にこれをなす時点での目的物の価額を基準とすべきであるとの前記説示によると、被控訴人が控訴人Cに返還すべき清算金は三八二〇万二四四〇円となるので(115,900,000〈本件土地の評価額〉―{22,700,000〈被担保債務金額〉+54,997,560〈被担保債務金額に対する弁済期の翌日である昭和30年6月27日から弁済供託をした昭和47年1月25日までの日歩4銭の割合による遅延損害金〉}=38,202,440円)被控訴人が本件でした一七七万一七六一円の弁済供託は、本来返還さるべき清算金の二〇分の一以下であつて絶対額が低すぎるため、右の弁済供託について清算金の全部弁済はもとより一部弁済としての効力をも認めることはできない。4 このように、被控訴人がした評価清算は不適法であり、これにもとづいてなされた弁済供託も無効であつて、評価清算はいまだ完了していないことに帰着するところ、これに引きかえ、控訴人Cは、本件の被担保債務金額と遅延損害金の全額を弁済供託したことにより、被控訴人が本件土地について有する担保権も消滅したと主張するので、進んでこの点について検討する。 弁済はもとより一部弁済としての効力をも認めることはできない。4 このように、被控訴人がした評価清算は不適法であり、これにもとづいてなされた弁済供託も無効であつて、評価清算はいまだ完了していないことに帰着するところ、これに引きかえ、控訴人Cは、本件の被担保債務金額と遅延損害金の全額を弁済供託したことにより、被控訴人が本件土地について有する担保権も消滅したと主張するので、進んでこの点について検討する。控訴人Cの訴訟代理人が、昭和四九年一二月二七日、被控訴人の代表者Fに対し、住友銀行東京営業所振出しの小切手をもつて、被担保債務金額二二七〇万円とこれに対する弁済期の翌日である昭和三〇年六月二七日から昭和四九年一二月二七日までの日歩四銭の割合による遅延損害金六四六八万五九二〇円の合計八七三八万五九二〇円を弁済のため提供したが、その受領を拒否されたので、右同日、東京法務局に対して右合計額を弁済供託したことは、当事者間に争いがない(なお、前掲甲第一号証の公正証書には、利息は別途契約によるとの記載があ 弁済のため提供したが、その受領を拒否されたので、右同日、東京法務局に対して右合計額を弁済供託したことは、当事者間に争いがない(なお、前掲甲第一号証の公正証書には、利息は別途契約によるとの記載があるが、前掲証人E、同Gの各証言によれば、右利息は日歩四銭の約束であつて、消費貸借契約の締結と同時に弁済期までの分が前払いされていることが認められる)。ところで、本件の代物弁済予約においては、目的たる土地の所有権の移転時期ないし被担保債務の消滅時期について具体的な約定のあつたことを認めるべき証拠がないことは前述のとおりである。したがつて、控訴人Cがした右弁済供託の効力いかんは、この点をいかに解するかにかかることになるが、本件の代物弁済予約が清算特約つきのものであつて、これにもとづく所有権の移転もひつきよう本件土地の金銭的価値に着目しその価値の実現によつて被担保債権の排他的満足を得るための手段にすぎないことにかんがみるときは、被控訴人による評価清算(前述したようにその内容としては、本件土地の時価を鑑定することと、右時価が債務金額を超過するときはこれを返還することの二つの要件を具備することが必要である)の完了をもつて所有権の移転時期にしたがつて被担保債務の消滅時期を画するのを相当とし、控訴人Cとしては、被控訴人が本件土地の鑑定を行ない清算金の支払いをするまでは、被担保債務金額およびこれに対する遅延損害金を弁済することによつて担保権を消滅させ本件土地の完全な所有権を回復することができるものと解すべきであり、このように解することがまた前記最高裁判決の趣旨にも適合するものというべきである(なお、最高裁判所昭和五〇年七月一七日判決・判例時報七九二号三三頁参照)。 期を画するのを相当とし、控訴人Cとしては、被控訴人が本件土地の鑑定を行ない清算金の支払いをするまでは、被担保債務金額およびこれに対する遅延損害金を弁済することによつて担保権を消滅させ本件土地の完全な所有権を回復することができるものと解すべきであり、このように解することがまた前記最高裁判決の趣旨にも適合するものというべきである(なお、最高裁判所昭和五〇年七月一七日判決・判例時報七九二号三三頁参照)。しかるときは、控訴人Cがした右弁済供託は、時期的には被控訴人がした前記清算金の弁済供託よりも 適合するものというべきである(なお、最高裁判所昭和五〇年七月一七日判決・判例時報七九二号三三頁参照)。しかるときは、控訴人Cがした右弁済供託は、時期的には被控訴人がした前記清算金の弁済供託よりも後であるが、後者の基礎となつた評価清算が不適法であつていまだこれが完了したことにはならない以上、被担保債務の弁済として有効であるというべく、その結果本件土地に対する被控訴人の担保権も消滅したことになるから、右担保権についてなされた仮登記にもとづく本登記手続を求める本訴請求は失当といわなければならない。二被控訴人の控訴人A、同Bに対する請求について控訴人A、同Bが本件土地を占有していることは当事者間に争いがないが、被控訴人の右控訴人らに対する請求が被控訴人において控訴人Cから本件土地の所有権を取得したことを前提とするものであることはその主張自体によつてあきらかであるところ、右所有権取得の認められないことはこれまで詳しくみてきたとおりであるから、控訴人A、同Bに対して本件土地の明渡しを求める被控訴人の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、失当たるをまぬかれない。三結論以上のとおりであつて、被控訴人の控訴人らに対する本訴請求はいずれも理由がないから、これを認容した原判決を取り消し、右請求をすべて棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官吉岡進裁判官兼子徹夫裁判官太田豊)

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