平成11(ワ)1826 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月29日 神戸地方裁判所
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判決文本文23,105 文字)

判決平成14年10月29日神戸地方裁判所平成11年(ワ)第1826号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,80万円及びこれに対する平成8年9月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを7分し,その6を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,567万円及びこれに対する平成8年9月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,兵庫県西宮警察署(以下「西宮署」という。)警察官が,①原告所有の自動車(以下「原告車」という。)に損傷を生じさせた,②虚偽の広報をした,③原告とその親族及び西宮市教育委員会職員との接見を妨害した,④同委員会職員に原告に関する偏頗な情報を提供したとして,原告が同警察官の属する公共団体である被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,原告車の修理代金相当の損害金,慰謝料及び弁護士費用並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者ア原告は,西宮市職員の男性であり,平成8年9月4日,強制わいせつ致傷被疑事件(被疑事実の要旨は別紙記載のとおりである。以下「本件被疑事件」という。)で逮捕され,同月5日から同月24日まで勾留されたが,同日,不起訴処分を受け,釈放された。 イ被告は,本件被疑事件の捜査,取調べ及びこれに伴う留置管理等の職務に関し,西宮署警察官であるA(本件当時西宮署刑事第一課長警部。以下「A課 が,同日,不起訴処分を受け,釈放された。 イ被告は,本件被疑事件の捜査,取調べ及びこれに伴う留置管理等の職務に関し,西宮署警察官であるA(本件当時西宮署刑事第一課長警部。以下「A課長」という。),B(本件当時警部補。以下「B警部補」という。)らを担当させるなどしてその職務を遂行させ,もって公権力の行使に当たらせていた。 (2) 本件の経緯ア本件被疑事件は,同年8月31日午前4時ころ,西宮市運動公園内に停車中の原告車内で発生したものであり,被害者の女性は,同日,病院で診断書を取り,勤務先のスナック経営者に伴われて西宮署に被害を届け出た。西宮署警察官は,被害者から事情を聴取し,犯行現場において写真を撮影した。 原告は,同日午後10時ころ,被害者方を訪れたところ,被害者が西宮署にその旨を通報したため,同警察官3名は,被害者方に赴き,原告を警察車両で西宮署に同行し,原告車は同警察官が運転して西宮署に搬送された。 原告は,同日,西宮署において取調べを受け,被疑事実を否認した。 原告は,同年9月1日午前零時ころ,帰宅しようとした際,原告車に損傷がみられ,同警察官に対し,その旨を申し出て,上記損傷は同警察官が原告車を運転した際に生じたものである旨を述べた。 原告は,その後,西宮署に電話をかけて原告車の修理費用の支払を求め,また,西宮署に対し,「内容証明書」と題する書面を提出するなどし,A課長らがこれらに対応したが,A課長はその支払を拒否した。 原告は,そのころ,スナック経営者に電話をかけた。 イ西宮署司法警察員は,同月3日,西宮簡易裁判所裁判官に対し,原告を被疑者とする逮捕状を請求し,同裁判官は,同日,逮捕状を 原告は,そのころ,スナック経営者に電話をかけた。 イ西宮署司法警察員は,同月3日,西宮簡易裁判所裁判官に対し,原告を被疑者とする逮捕状を請求し,同裁判官は,同日,逮捕状を発付した。 同警察官は,同月4日午前8時15分,原告方において,原告を通常逮捕し,原告を司法警察員に引致した上,西宮署留置場に留置した。 ウ同警察官は,同日午後2時ころ,兵庫県警記者クラブ加入の報道各社に対し,原告が逮捕された事実及び事件の概要をファクシミリで広報し,その後,報道各社は西宮署に電話で取材をし,同警察官がこれに対応した。 原告は,逮捕当初から被疑事実を否認していたところ,同月5日付け朝日新聞には「職員は,「交際を迫ったが,断られて腹が立った」などと供述しているという。」との記事が,同日付け毎日新聞には「C容疑者は,同市内の飲食店でアルバイト勤務をしていたこの女性と知り合い,交際を迫ったが断られたため,暴行したらしい。」との記事が,同日付け日刊スポーツには「C容疑者は,容疑を認めている。」との記事がそれぞれ掲載された。 エ西宮署長は,同日,事件を身柄付きで神戸地方検察庁尼崎支部に送致し,同裁判所裁判官は,同日,勾留状を発付し,原告は,西宮署附属代用監獄に勾留された。同裁判所裁判官は,同月13日,勾留期間延長決定をした。原告に対しては刑訴法207条1項本文,81条本文に基づく接見等禁止決定がされていなかった。 オ西宮市教育委員会職員2名は,同月4日,A課長と話をした。同委員会職員は,同月6日,A課長と電話で話をした。原告の母D(以下「D」という。)は,同日及び同月9日,原告に対し,物の差入れをした。同委員会職員2名は,同日,西宮署においてA課長と面談した。D 同委員会職員は,同月6日,A課長と電話で話をした。原告の母D(以下「D」という。)は,同日及び同月9日,原告に対し,物の差入れをした。同委員会職員2名は,同日,西宮署においてA課長と面談した。Dは,同月12日,原告と接見した。同委員会職員は,同月13日,B警部補と電話で話をした。同委員会職員は,同月17日及び同月18日,西宮署においてB警部補と面談した。B警部補は,同月17日,同委員会総務部人事課長E(以下「E人事課長」という。)から本件被疑事件の参考人として事情を聴取した。Dは,同月18日午前10時40分から同11時までの間,原告と接見した。E人事課長及び同委員会総務部人事課課長補佐F(以下「F課長補佐」という。)は,同日午後5時8分から同25分までの間,原告と接見した。同委員会職員は,同月20日,西宮署巡査部長G(以下「G巡査部長」という。)と面談した。E人事課長及び同委員会職員Hは,同月21日午前10時48分から同58分までの間,原告と接見した。 カ原告と被害者との間で,同月19日,慰謝料30万円及び治療費10万円を支払う旨の示談が成立した。原告の弁護人は,同月20日,同月19日付け「示談書及び嘆願書」を西宮署に提出した。 キ原告は,上記逮捕及び上記勾留を通じて,被疑事実を否認し続け,被疑者引き当たり捜査は行われなかった。 ク同庁尼崎支部検察官は,同月24日,本件被疑事件について起訴猶予処分をし,原告は,同日,検察官の指揮に基づき釈放された。 (3) 本件訴訟の提起原告は,平成11年9月3日,当裁判所に対し,本件訴訟を提起した。 2 争点(1) 西宮署警察官が原告車に損傷を生じさせたか否か。 (2) 同警察官が虚偽の広報をしたか否か。 (3 平成11年9月3日,当裁判所に対し,本件訴訟を提起した。 2 争点(1) 西宮署警察官が原告車に損傷を生じさせたか否か。 (2) 同警察官が虚偽の広報をしたか否か。 (3) 同警察官が原告とその親族及び西宮市教育委員会職員との接見を妨害したか否か。 (4) 同警察官が同委員会職員に原告に関する偏頗な情報を提供したか否か。 3 当事者の主張(1) 西宮署警察官が原告車に損傷を生じさせたか否か(争点(1))について(原告の主張)ア西宮署警察官は,平成8年8月31日,原告を任意同行する際,原告車を運転中,これを誤って西宮署鉄扉に接触させるなどして,これに損傷を生じさせた。 また,同警察官は,上記器物損壊行為の発覚後,これを隠蔽しようとしたり,職権を濫用して原告を脅したり,同年9月4日,原告を逮捕し,接見を不当に制限して勾留するなどして,同月24日の釈放時まで事実上損害賠償請求をできないようにした。 消滅時効の起算点は,原告の勾留が終了した同日とすべきである。被告は,原告が損害賠償請求をすることを妨害したのであるから,原告の提訴がほんの数日遅れたことを利用して消滅時効を援用することは信義則に反する。少なくとも,被告が勾留期間中の時の経過を主張することは信義則に反する。 イ原告は,西宮署ないし同警察官に対し,目的地である西宮署まで原告車を運転して運ぶという事務を委ねたのであって,これは,原告と被告との間の準委任契約に該当する。そして,被告の履行補助者である同警察官は,同年8月31日,善良な管理者の注意をすべき義務に違反して原告車に損傷を与えたものである。 したがって,原告は,予備的に債務不履行に基づく損害 ,被告の履行補助者である同警察官は,同年8月31日,善良な管理者の注意をすべき義務に違反して原告車に損傷を与えたものである。 したがって,原告は,予備的に債務不履行に基づく損害賠償請求をする。 ウバンパーの修理代金は7万円であった(甲10)。損害行為の隠蔽ないし賠償請求妨害行為による精神的苦痛については,慰謝料は50万円を下らない。 (被告の主張)ア西宮署警察官が原告車に損傷を与えた事実は一切ない。 平成8年9月1日午前零時ころ,原告が西宮署から帰ろうとした際,原告車に傷がある旨を述べたことから,同警察官が原告車を確認したところ,その前部バンパーに長さ数センチメートル程度の古い損傷が認められた。 原告が上記損傷が同警察官の運転により生じたものである旨主張したことから,同警察官は,原告車を運転した同警察官が西宮署にこれを搬送する途中で何かに衝突するなどしてこれを損傷させた事実がなく,傷も真新しいものではなく古いものであることを告げると,原告は,その場ではそれ以上言及することなく,西宮署を立ち去ったものである。 イ原告が本件訴訟を提起した時点(平成11年9月3日)においては,原告主張にかかる上記損害賠償請求権は,その主張する不法行為日(平成8年8月31日)から3年後の平成11年8月31日の経過によって時効消滅しており,被告は,上記消滅時効を援用する。 原告は,消滅時効の起算点を勾留が終了した平成8年9月24日とすべきであると主張するが,刑事手続における身柄の拘束には時効中断効はないし,原告は,被告に対し,釈放後いつでも損害賠償請求をすることができたにもかかわらず,その請求をしなかったものであり,これを妨げるような ると主張するが,刑事手続における身柄の拘束には時効中断効はないし,原告は,被告に対し,釈放後いつでも損害賠償請求をすることができたにもかかわらず,その請求をしなかったものであり,これを妨げるような事情もないのであるから,時効の中断を認めたり,その起算点を原告の有利になるように解する理由はない。 ウ同警察官が原告車を西宮署まで搬送した行為は,警察官職務執行法に基づく任意同行ないし刑訴法に基づく任意の取調べに付随するものとして行われたもので,公法上の法律関係によるものであり,民法上の契約法に基づく法律関係によるものではない。 したがって,適用されるべきは国家賠償法1条(不法行為)であり,その消滅時効については,民法724条の短期消滅時効が準用される。 エ原告がその主張する精神的苦痛を受けた事実は全くないし,物損について精神的損害は認められない。 (2) 西宮署警察官が虚偽の広報をしたか否か(争点(2))について(原告の主張)ア西宮署警察官は,平成8年9月4日,原告逮捕の記者発表をしながら,原告が否認している事実を発表せず,報道記者からの取材に対し,原告が容疑を認めているとの虚偽の事実を記者発表し,同月5日,広くマスコミ報道をさせて,原告の名誉を著しく毀損した。 第三者の目撃証人がいない場合で,しかも被害者との確執が存在する本件では,被害者の申告を安易に信用することには慎重でなければならないにもかかわらず,安易にこれのみに依拠し,原告が否認していることをことさら捨象して広報することは違法であり,しかも事実を認めているかのごとく発表している点で,その不法性は顕著である。 原告の供述内容(原告が被害者に交際を迫ったが断られたことに ことさら捨象して広報することは違法であり,しかも事実を認めているかのごとく発表している点で,その不法性は顕著である。 原告の供述内容(原告が被害者に交際を迫ったが断られたことに立腹したこと及び被害者に暴行したこと)の広報は,否認していることを隠して,あたかも逆上の上強制わいせつ致傷を行ったことを認めているかのような印象を与えんとして行ったものであって,事実に即した広報とはいえない。 イ原告は,虚偽の記者発表とマスコミによる虚偽報道によって,耐え難い精神的苦痛を被り,離婚後の妻や娘ら(原告と同姓)にも多大の精神的苦痛を与えた苦しみは筆舌に尽くせず,慰謝料は200万円を下らない。 (被告の主張)ア西宮署副署長警視I(以下「I副署長」という。)が原告を本件被疑事件で逮捕した事実を広報したのは,本件被疑事件が現職公務員による重大かつ破廉恥な犯罪で社会的反響が大きい事件であり,公共の利害に関する事実であることから,もっぱら公益を図る目的であり,その広報内容も事実に即したものである(当時,原告が被害者に交際を迫ったが断られたことに立腹したこと及び被害者に暴行したことが判明しており,原告も同趣旨の供述をしていた。)から,上記広報にかかる行為は,適法かつ適切な職務執行であり,もとより違法性はない。 また,上記広報後,I副署長は,報道各社からの電話による取材に対応したが,その際,原告が容疑を認めている旨の虚偽の回答をした事実は全くない。 日刊スポーツ紙記者から西宮署に取材がされた事実はない。同紙に「容疑者は,容疑を認めている。」旨掲載された経緯は知らない。 なお,警察において原告が容疑を否認していることを広報すべき注意義務を負うべき理由はないから,I副署長が原 い。同紙に「容疑者は,容疑を認めている。」旨掲載された経緯は知らない。 なお,警察において原告が容疑を否認していることを広報すべき注意義務を負うべき理由はないから,I副署長が原告が否認していることを広報しなかったとしても,これが不法行為を構成することはあり得ない。I副署長が原告が否認していることを隠して,あたかも逆上の上強制わいせつ致傷を行ったことを認めているかのような印象を与えようとして広報した事実もない。 イ原告は格別変わった姓ではなく,原告に関する犯罪報道があったからといって,離婚後の妻や娘らに精神的苦痛が生じるとは考え難く,更に,それが既に離婚している原告の損害となるはずもない。 (3) 西宮署警察官が原告とその親族及び西宮市教育委員会職員との接見を妨害したか否か(争点(3))について(原告の主張)ア A課長及びB警部補は,真実は原告に対して刑訴法207条1項本文,81条本文に基づく接見等禁止決定がされていないのにこれがあるかのように装い,原告の母及び弟並びに原告が勤務している西宮市教育委員会人事担当者らが原告と接見したいと希望したにもかかわらず,原告の母については平成8年9月12日,原告の弟については同月13日,同委員会人事担当者については同月18日にそれぞれ接見させるまで,原告の接見交通権を妨害し続けた。 イ(ア) すなわち,同月5日,午前,午後と接見を申し出た原告の弟J(以下「J」という。)に対し,西宮署担当官において「(弁護人以外の)弟さんらは会えませんよ。」などと言わせ,接見を妨害した。 (イ) 同月6日,同委員会のE人事課長が電話でA課長に対し,原告との接見を求めたのに対し,A課長において「本人が素直に認め,謝罪すればこういう んよ。」などと言わせ,接見を妨害した。 (イ) 同月6日,同委員会のE人事課長が電話でA課長に対し,原告との接見を求めたのに対し,A課長において「本人が素直に認め,謝罪すればこういう事件の処理は早くなるはずです。本人との接見は,現在弁護士以外は出来ない。従って役所といえども本人に会わすことは出来ない。」などと述べ,接見を妨害した。 (ウ) 同月9日午前9時前,弁護人の接見の際,続けてJ及びDが原告との接見を求めたが,西宮署担当官において「否認しているから,弟さん,お母さんは会えませんよ。」などと言わせ,接見を妨害した。 (エ) 同日,E人事課長及び同委員会総務部長K(以下「K総務部長」という。)が西宮署においてA課長らと面談し,原告との接見を求めた際,A課長において「教育委員会が弁護士と会われるのは自由だ。このままであると,否認中であり本人と接見はできない。逮捕された時,刑事課長に電話をし刑事が自分の車を傷つけたと言った。このように,刑事の心証を悪くしているので,起訴されれば不利な要素がある。」などと言い,接見を妨害した。 (オ) 同月13日,E人事課長が電話でB警部補に対し,前日Jからようやく接見できたと報告を受けたことから原告との接見を求めた際,B警部補において「内部調整し,その方向で検討します。」と答え,面会がいまだできないかのように対応して,なお接見を妨害した。 (カ) 同月17日,E人事課長が西宮署においてB警部補と面談し,原告との接見を求めた際にも,B警部補において原告が十数年前1件の不起訴処分の前歴と略式起訴の前科があり,「(担当検事の)心証が悪い。このままであると起訴される可能性が高い。」などと答え,依然接見ができないかのように対応し,接見を妨 において原告が十数年前1件の不起訴処分の前歴と略式起訴の前科があり,「(担当検事の)心証が悪い。このままであると起訴される可能性が高い。」などと答え,依然接見ができないかのように対応し,接見を妨害し続けた。 ウ原告は,同委員会に対し,十分弁明等ができず,重すぎる懲戒処分(停職3か月)を受けざるを得なかったことなどにかんがみれば,接見交通権侵害1回当たりの精神的苦痛は各10万円を下らず,慰謝料は少なくとも60万円が相当である。 (被告の主張)ア警察署長は,起訴前の被拘束被疑者につき,留置場の管理運営上,あるいは,捜査上(逃走及び罪証隠滅のおそれといった拘禁目的の阻害理由を含む。)の必要性から,弁護人以外の者からの接見の申出に対して,任意的な手段によって,接見の日時,方法を調整する権限を有するものであり,相手方の承諾がある以上,その希望も考慮して,いかなる調整をするかは,広範な裁量に委ねられていると解すべきである。 イ原告の主張のうち,その親族からの接見の申出については,そもそも接見の申出の事実自体がない。なお,平成8年9月5日,原告の私選弁護人であった弁護士L(以下「L弁護士」という。)が西宮署に来た事実も原告と接見した事実もないし,同月9日,原告の私選弁護人であった弁護士M(以下「M弁護士」という。)が西宮署に来た事実も原告と接見した事実もない。原告は,上記各日に原告の親族から接見の申出がされた旨主張するが,そのような申出がされた事実はない。 また,西宮市教育委員会職員の接見の申出については,同委員会職員の承諾に基づき,日時等を調整したものである。すなわち,A課長は,原告の身柄が拘束された早期の時点において,同委員会職員から,懲戒処分決定の必要性から,原告と面 の接見の申出については,同委員会職員の承諾に基づき,日時等を調整したものである。すなわち,A課長は,原告の身柄が拘束された早期の時点において,同委員会職員から,懲戒処分決定の必要性から,原告と面談し,事実関係を確認したい旨の要望を受けたが,その時点においては,原告が強制わいせつの事実を否認していたことから,その旨を説明するとともに,同委員会の処分決定のために必要と思われる情報はできる限り提供するので,今後,原告が自供するなど同委員会の希望(事実の確認)に沿うような状況が生じれば,その時点で考えてはどうかとの趣旨のことを提案したところ,同委員会職員は,上記措置に同意したものである。そして,結局原告は犯行を自認しなかったが,原告は同月18日及び同月21日に同委員会職員と接見しており,西宮署警察官が同月6日,同月9日,同月13日及び同月17日に同委員会職員と原告との接見を拒否したり,妨害した事実は存在しない。 ウ原告は,同委員会に十分な弁明ができず,重すぎる処分を受けたことが損害である旨主張するが,同委員会職員と接見し,弁明の機会は十分与えられているのであるから,同警察官が接見の日時を調整したことと同委員会の処分決定との間には因果関係が認められない。接見の時期が数日異なることにより,どのように処分の決定ないし量定に影響を与えるのか全く不明である。 (4) 西宮署警察官が西宮市教育委員会職員に原告に関する偏頗な情報を提供したか否か(争点(4))について(原告の主張)ア A課長及びB警部補は,西宮市教育委員会人事担当者に対し,虚偽ないし偏った捜査関連情報を伝えて,原告に対して重い懲戒処分がされるように誘導した。 イ(ア) すなわち,A課長は,平成8年9月4日,同委員会のK総務部長及びE 会人事担当者に対し,虚偽ないし偏った捜査関連情報を伝えて,原告に対して重い懲戒処分がされるように誘導した。 イ(ア) すなわち,A課長は,平成8年9月4日,同委員会のK総務部長及びE人事課長に対し,「Cは,刑事に対して暴言をはいたり,揚げ足をとるなどし,公務員としてあるまじき言動であり,刑事の心証を悪くした。」などと,任意捜査過程での原告車損傷のトラブルを原告が一方的に悪いかのように言い,経過を正確に伝えず,原告が同年8月31日以来容疑を否認していることを伝えなかった。 (イ) A課長は,同年9月6日,E人事課長からの電話に答えて,「本人は弁護士が入ったので容疑を否認しており,強硬な態度をとり続けている。」などと,当初から否認していることを隠し,ことさらに否認に転じているかのような誤った情報を伝達した。 (ウ) A課長は,同月9日,K総務部長及びE人事課長に対し,「このままであると,否認中であり本人と接見できない。また,10日間の勾留期間を延長し起訴されることとなる。そうなればかなり重い処罰になる可能性がある。」と単なる交際中の男女間のトラブルに過ぎず,起訴猶予か執行猶予が十分考えられる事案に関して,偏った情報を伝達した。また,「逮捕された時,刑事課長に電話をし刑事が自分の車(400万円相当)を傷つけたと言った。このように,刑事の心証を悪くしているので,起訴されれば不利な要素がある。」などと偏った情報を伝え,原告が修理見積書(7万円余)を提示しつつ丁寧に弁償を求めていたことをことさらに悪く伝えた。 (エ) B警部補は,同月17日,E人事課長らに対し,同年8月31日の任意取調べ以来の経過を述べたが,その際,原告が逮捕前日の同年9月3日に被害者方を夜間訪れ,任意取調べのため連行さ (エ) B警部補は,同月17日,E人事課長らに対し,同年8月31日の任意取調べ以来の経過を述べたが,その際,原告が逮捕前日の同年9月3日に被害者方を夜間訪れ,任意取調べのため連行されたかのように説明し,更に連行後,原告がスナック経営者に電話をし,「自分は公務員であるので動きはとれないが,後ろには右翼がついており,それらを使うと強迫した。」と虚偽の事実を伝えたり,「Cは,他にも重要なことを隠しているようだ。昭和55年,昭和59年にも処分されており,その内容は検事が知っており,心証が悪い。このままであると起訴される可能性が高い。裁判になれば,過去のことも明らかになり,不利になる。」と偏った見通しを伝え,原告の婚姻前の旧姓やその前科・前歴などは指紋を調べるまでもなく戸籍や犯歴カードの照会で直ちに判明するにもかかわらず,「なぜ離婚をしているのに,C姓を名のるのかわからない。Nでは過去に処分されているのですぐわかるが,Cでは,指紋を調べてわかった。」などとことさらに原告が悪事を隠しているかのような印象を与える誤った情報ないし感想を伝えた。 (オ) B警部補らは,平成8年9月18日,E人事課長らに対し,示談が成立しつつある状況であったのに(翌19日午後8時ころ成立),「傷害罪で起訴される可能性が高い」と虚偽ないしは偏った情報を伝え,「スナックママの証言」と称して,「1週間にボトル1本空ける位よく飲んでいる。いつも車で帰っており飲酒運転の常習犯である。」などと虚偽の事実を伝え,「飲酒運転の件,昭和55年の事件,昭和59年の事件,スナックママ及び被害者への強迫の件で検事の心証を悪くしていることも起訴される要因である。」などと虚偽ないしは偏った情報を伝達した。 (カ) G巡査部長は,平成8年9月20日,E人 ,スナックママ及び被害者への強迫の件で検事の心証を悪くしていることも起訴される要因である。」などと虚偽ないしは偏った情報を伝達した。 (カ) G巡査部長は,平成8年9月20日,E人事課長らに対し,示談が成立したことを伝達する際,まだその時点(午後4時)では「起訴になるか,不起訴かわからない。」,示談が成立し,「従って,傷害罪だけであるので不起訴の可能性が高い。」などと,示談ができてもなお傷害罪の起訴処分が残るかのような虚偽ないし偏った説明をした。また,示談内容は慰謝料30万円,治療費10万円で傷害事件の宥恕を得るというごく常識的なものであるにもかかわらず,B警部補らは,「法外な示談金で示談した」などと述べた。 ウ同委員会の処分判断を誤らせる虚偽ないし偏った情報・印象の伝達,人格権の侵害等による精神的苦痛については,慰謝料は200万円を下らない。 (被告の主張)ア西宮署警察官が西宮市教育委員会職員と電話や面接で話をしたのは,原告の身分上の処分の関係から,事実の確認を必要とする同委員会の要請に応えたものであり,この際,同警察官は,判明した事実を相当な範囲内で同委員会職員に説明しており,虚偽ないし偏った捜査情報を伝達した事実は全くない。 イ(ア) 原告は,平成8年9月4日当時,公務員としてあるまじき態度を取った事実がないかのような主張をしているが,原告が本件罪を犯したこともさることながら,その後の行動として,その犯行を否認し,あまつさえ関係者を威迫し,車両の損傷という虚偽の事実を同警察官に申告したものであり,このような原告の態度が公務員としてあるまじきものであることは明白である。 (イ) A課長は,同月6日ころ,同委員会職員と電話で会話をしたが,このとき,「弁護 官に申告したものであり,このような原告の態度が公務員としてあるまじきものであることは明白である。 (イ) A課長は,同月6日ころ,同委員会職員と電話で会話をしたが,このとき,「弁護士が入ったことにより,原告が否認に転じた」との趣旨を告げたことはない。 (ウ) 原告は,同月9日ころ,A課長が「このまま(否認のままとの意味と思われる。)であると,勾留期間を延長し起訴されることになり,そうなればかなり重い処罰になる可能性がある」との趣旨のことを述べた旨主張するが,この時点においては,原告が罪を犯したことが認められるのに,これを否認していることから,更なる捜査の必要があるので,勾留期間が延長される可能性があり,更に,起訴される可能性も十分にあったものである。そして,起訴されれば,強制わいせつ致傷罪の法定刑が無期又は3年以上の懲役刑であることから,無罪にならない限りは刑が軽減されたとしても(なお,本件において原告の言い分に正当視できるような理由はないから,事実の否認が情状の酌量に関し悪しき影響を与えることは明白であって,刑が軽減される余地は少ないと考えられる。),自由刑が宣告される可能性が高いから,十分に重い処罰が考えられるのであり,仮にA課長が上記のような趣旨の発言をしていたとしても,何ら偏ったものではないというべきである。 原告は,この点,起訴猶予か執行猶予が十分考えられる事案であると主張するが,この時点で起訴猶予が十分考えられるとはいい難いし,まして,執行猶予が重い処罰でないなどとは到底いえない(一般的に地方公務員の場合,禁固以上の刑が宣告されたとき,その執行が猶予されたとしても,公務員の身分を失う(地方公務員法16条,28条4項)。)。 原告が車両の損傷という虚 (一般的に地方公務員の場合,禁固以上の刑が宣告されたとき,その執行が猶予されたとしても,公務員の身分を失う(地方公務員法16条,28条4項)。)。 原告が車両の損傷という虚偽の事実を同警察官に申告したことは,本件被疑事件に関し,自己の犯罪行為の隠蔽行為等の徴表事実として,起訴,不起訴の判断をする際などに,原告にとって不利な要素となるものと考えられる。 (エ) 原告が同月1日にスナック経営者に電話をし,同人を威迫した事実は存在しており,仮にB警部補が同月17日にこのようなことについて発言していたとしても,何ら虚偽の事実を告げたことにはならない。 また,原告は,昭和55年に強姦致傷の罪を犯して警察に逮捕され,昭和59年には傷害の罪を犯して罰金5万円の刑が確定している。原告が過去に両罪を犯していることと今回本件被疑事件を起こしたこととの間には,粗暴性,わいせつ性ともに反復性が認められるので,検察官が公訴提起の判断をするとき,又は起訴された場合に裁判官が刑を宣告するとき,これらの過去の原告の行状が上記判断に悪しき影響を与えることは明らかである。 さらに,当初,西宮署において,原告の前科,前歴について,氏名を「C」として捜査していたため,原告が旧姓のときに犯した罪については判明していなかったのである。そして,原告は,取調べ時において,前科,前歴はないと述べていたが,前科照会によって,前科類似者としてNの傷害罪の存在が判明したため,指紋による照会を行ったところ,上記2件の犯罪の存在が判明したものである。 したがって,仮にB警部補が平成8年9月17日に原告主張のような発言をしていたとしても,何ら虚偽であったり,偏ったものとの評価を受けるような 罪の存在が判明したものである。 したがって,仮にB警部補が平成8年9月17日に原告主張のような発言をしていたとしても,何ら虚偽であったり,偏ったものとの評価を受けるようなものではない。 (オ) B警部補らが同月18日又は他の日に,同委員会職員に対し,原告が傷害罪で起訴される可能性が高いなどと述べたことはない。その点は,B警部補において判断できるような事柄ではなく,B警部補がそのような発言をすることは考えられない。 また,示談が成立したからといって,公訴が提起されないとはいえない。すなわち,強制わいせつ致傷罪は非親告罪であり,示談成立により被害者が告訴を取り下げたとしても,訴訟条件を欠くことにならず,起訴するかしないかはあくまで検察官の判断によるものである。 さらに,この時点において,原告が度々飲酒運転をしていた事実は,関係者の供述により判明している。 原告の飲酒運転,前科,前歴,スナック経営者を威迫した事実,被害者方に押しかけた事実は,同警察官及び担当検察官は掌握しており,また,同警察官は,担当検察官から,本件被疑事件において原告が言を左右にして否認している点において悪質である旨の心証を有していることも聞き及んでいる。 したがって,仮に同警察官が同月18日に原告主張の文言を告げたとしても,何ら虚偽ないし偏った情報の提供ではないものである。 (カ) G巡査部長は,同月20日ころ,同委員会職員と面接又は電話で話をしたが,このとき,傷害罪だけであるので不起訴の可能性が高いと告げた事実はない。また,起訴になるか不起訴になるかわからないとの発言については,仮にそのような発言をしていたとしても,何ら違法 話で話をしたが,このとき,傷害罪だけであるので不起訴の可能性が高いと告げた事実はない。また,起訴になるか不起訴になるかわからないとの発言については,仮にそのような発言をしていたとしても,何ら違法,不当な点はない。 ウ原告に対する懲戒処分の理由は,「(強制わいせつ致傷容疑で逮捕されたことが)職員として全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,市ならびに職員全体の信用を著しく傷つけた」というものであるから(甲2),原告が懲戒処分を受けたことと同警察官の行為との間に何ら因果関係は存しない。 第3 当裁判所の判断 1 西宮署警察官が原告車に損傷を生じさせたか否か(争点(1))について原告は,西宮署警察官は,平成8年8月31日,原告を任意同行する際,原告車を運転中,これを誤って西宮署鉄扉に接触させるなどして,これに損傷を生じさせた旨主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 かえって,証拠(鑑定の結果)によれば,西宮署鉄扉鉄門の黒色塗料と原告車前バンパー左前部分付着の黒色塗料片は同一のものではなく,原告車の同部分の損傷は西宮署鉄扉に接触して生じたものではないことが窺われる(なお,鑑定の経過を精査しても不合理な点は見当たらず,鑑定の結果は,これを信用することができる。また,バンパー付着物の分析に関する結果報告書(甲25)によれば,バンパー付着物の樹脂主成分は一置換芳香環を有するポリエステル系化合物であるとされるが,そのことから直ちにバンパー付着物と西宮署鉄扉鉄門の黒色塗料(合成樹脂調合ペイントとされる。)の同一性を認めることはできない。)。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 そうすると,原告車の損傷をいう原告の請求は,更にその余の点について判断するまでもなく,理由がない。 一性を認めることはできない。)。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 そうすると,原告車の損傷をいう原告の請求は,更にその余の点について判断するまでもなく,理由がない。 2 西宮署警察官が虚偽の広報をしたか否か(争点(2))について(1) 前記争いのない事実,証拠(乙25,28,33の1及び2,証人I,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア西宮署警察官は,平成8年9月4日午前8時15分,原告方において,原告を本件被疑事件で通常逮捕し,原告を司法警察員に引致した上,西宮署留置場に留置した。原告は,逮捕当初から被疑事実を否認していた。 イ I副署長は,同日午後2時ころ,兵庫県警記者クラブ加入の報道各社に対し,原告が逮捕された事実及び事件の概要をファクシミリで広報し,その後,報道各社は西宮署に電話で取材をし,I副署長がこれに対応した。 ウ社団法人共同通信社の記者O(以下「O記者」という。)は,I副署長に対し,電話で確認取材をし,容疑を認めているか否かを質問したところ,I副署長は,原告は容疑を認めているとの印象を与える趣旨の回答をした。 エ O記者は,本件被疑事件に関する記事を作成し,同社は,同日午後3時29分,上記記事を加盟新聞社である日刊スポーツ社等に配信した。上記記事には,「C容疑者は,容疑を認めているという。」との記載があった。 オ同月5日付け日刊スポーツには,本件被疑事件に関し,「C容疑者は,容疑を認めている。」との記事が掲載された。 (2) I副署長は,犯罪報道が被疑者やその親族等,捜査や公判に及ぼす種々の影響にかんがみ,西宮署の広報担当者として,犯罪事実に関して正確に広報をすべき職務上の義務を負うも 事が掲載された。 (2) I副署長は,犯罪報道が被疑者やその親族等,捜査や公判に及ぼす種々の影響にかんがみ,西宮署の広報担当者として,犯罪事実に関して正確に広報をすべき職務上の義務を負うものと解されるところ,前記認定事実によれば,I副署長は,原告が被疑事実を否認していたにもかかわらず,あたかも原告が被疑事実を認めているかのような不正確な広報をしたものと認められる。 したがって,I副署長の上記行為は違法な公権力の行使に当たるものというべきであり,その点について過失が認められることは明らかである(なお,故意を認めるに足りる的確な証拠はない。)。 そして,原告は,このような不正確な広報に基づく誤った報道によって精神的苦痛を被ったものと認められ,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,これを慰謝するために要する金額は10万円と認めるのが相当である。 (3) これに対し,被告は,I副署長において原告が容疑を認めている旨の虚偽の回答をした事実は全くない旨主張し,これに沿う証拠(乙25,証人I)がある。 しかしながら,前記争いのない事実によれば,平成8年9月5日付け朝日新聞には「職員は,「交際を迫ったが,断られて腹が立った」などと供述しているという。」との記事が,同日付け毎日新聞には「C容疑者は,同市内の飲食店でアルバイト勤務をしていたこの女性と知り合い,交際を迫ったが断られたため,暴行したらしい。」との記事がそれぞれ掲載されたというのであり,これらの記事もI副署長が報道各社の取材に回答した内容をもとにしたものである(乙25,証人I,弁論の全趣旨)ところ,これらの記事に記載された原告の供述内容は原告が被疑事実を認めているかのような印象を与えるものであることからすると,I副署長は,O記者に対して したものである(乙25,証人I,弁論の全趣旨)ところ,これらの記事に記載された原告の供述内容は原告が被疑事実を認めているかのような印象を与えるものであることからすると,I副署長は,O記者に対しても,具体的文言はともかく,原告は容疑を認めているとの印象を与える趣旨の回答をしたものとみるのが自然である。 証人Iは,一般的に容疑を認めているか否かについては広報しない方針であり,原告が容疑を認めているか否かについても現在捜査中であるので答えられない旨述べたと証言するが,一般的方針として容疑の認否を広報しないとする広報担当者はほとんどいないこと(調査嘱託の結果),平成8年に西宮署管内で発生した刑事事件に関する新聞記事においても被疑事実の認否が記載されていること(甲27)からすると,I副署長が上記のような一般的方針をとっていたかは疑問であるし,報道各社の取材に対して原告の供述内容を回答しているにもかかわらず,原告が容疑を認めているか否かの点に限っては回答を拒否したというのは一貫せず不自然であるから,証人Iの上記証言及びこれと符合する陳述書(乙25)の該当部分はいずれも信用することができない。他に前記(2)の判断を覆すに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 3 西宮署警察官が原告とその親族及び西宮市教育委員会職員との接見を妨害したか否か(争点(3))について(1) 前記争いのない事実,証拠(甲1,2,6,8,15の1ないし3,甲19ないし21,乙3の3及び4,乙4,15,22,30,証人P,証人J,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告の弟であるJは,平成8年9月4日午前8時すぎころ,原告が本件被疑事件で逮捕される直前に原告から電話で連絡を受け 証人J,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告の弟であるJは,平成8年9月4日午前8時すぎころ,原告が本件被疑事件で逮捕される直前に原告から電話で連絡を受け,M弁護士の事務所に電話をかけて原告との接見を依頼したところ,L弁護士が原告と接見することとされ,JとL弁護士は西宮署に赴いた。Jは,原告が本件被疑事件で逮捕された後である同日午前11時前ころ,L弁護士が原告と接見しに行くのについていこうとしたところ,B警部補は,Jに対し,「会えませんよ。」と述べて制止した。 イ原告は,同月5日,本件被疑事件で西宮署附属代用監獄に勾留された。 原告に対しては刑訴法207条1項本文,81条本文に基づく接見等禁止決定がされていなかった。 ウ原告の母であるDは,同月6日,西宮署に赴き,衣類11点を原告に差し入れた際,西宮署警察官に対し,原告との接見を求めたところ,同警察官は,原告とは会えないと述べた。 エ西宮市教育委員会のE人事課長は,同日,A課長と電話で話をした際,原告から事情を聴取するため原告との接見を求めたところ,A課長は,E人事課長に対し,「本人との接見は,現在弁護士以外はできない。したがって,役所といえども本人に会わすことはできない。」と述べた。 オ Jは,同月7日午前,B警部補と電話で話をした際,原告と会えないかと尋ねたところ,B警部補は,Jに対し,原告は否認しているから会えないと述べた。 カ Dは,同月9日,西宮署に赴き,現金5000円,衣類3点及び雑誌9冊を原告に差し入れた際,同警察官に対し,原告との接見を求めたところ,同警察官は,原告とは会えないと述べた。 キ E人事課長及びK総務部長は,同日,西宮署に赴き,A課長らに対し,原 誌9冊を原告に差し入れた際,同警察官に対し,原告との接見を求めたところ,同警察官は,原告とは会えないと述べた。 キ E人事課長及びK総務部長は,同日,西宮署に赴き,A課長らに対し,原告との接見を求めたところ,A課長は,E人事課長及びK総務部長に対し,「現在否認中であり,会うことはできない。」と述べた。 ク Dは,同月12日午前11時18分から同40分までの間,原告と接見した。 ケ同月13日,原告に対し,勾留期間延長決定がされた。 コ J及びDは,同日午後4時25分から同55分までの間,原告と接見した。 サ E人事課長は,同日,B警部補と電話で話をした際,「市として1日も早く,行政処分の関係もあり,本人と接見し,事情聴取をしたいので,よろしく頼みます。」と述べたところ,B警部補は,E人事課長に対し,「内部で調整し,その方向で検討します。」と述べた。 シ E人事課長及びF課長補佐は,同月18日午後5時8分から同25分までの間,原告と接見した。 (2) 前記認定事実によれば,A課長やB警部補ら西宮署警察官は,原告に対しては刑訴法207条1項本文,81条本文に基づく接見等禁止決定がされていないにもかかわらず,原告の親族や西宮市教育委員会職員が勾留されている被疑者であった原告と接見するのを妨げ,もって原告の接見交通権を侵害したものと認められる(もっとも,勾留されている被疑者とは異なり,逮捕中の被疑者が弁護人等同法39条1項に規定する者以外の者と接見することは,法律上権利として保障されていないから,平成8年9月4日のJに対する接見妨害に関する前記(1)アの認定事実によって,B警部補が逮捕中の被疑者であった原告の接見交通権を侵害したものと認めることはできない。)。なお,B 障されていないから,平成8年9月4日のJに対する接見妨害に関する前記(1)アの認定事実によって,B警部補が逮捕中の被疑者であった原告の接見交通権を侵害したものと認めることはできない。)。なお,B警部補が同月13日に「内部で調整し,その方向で検討します。」と述べたのも,西宮署の内部調整が終わらない限り原告と接見することができないとE人事課長を誤信させるものであるというべきであるから,B警部補は上記発言によりE人事課長が原告と直ちに接見するのを妨げたものと認めるのが相当である。 加えて,本件において,原告とその親族及び同委員会職員との接見に制限を加えることが法令上許されるような合理的理由を記録上見いだすことはできない。 したがって,同警察官の上記行為はいずれも違法な公権力の行使に当たるものというべきであり,その点について故意が認められることは明らかである。 そして,原告は,このような接見交通権の侵害によって精神的苦痛を被ったものと認められ,接見交通権の重要性,その侵害の態様,回数その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,これを慰謝するために要する金額は60万円と認めるのが相当である。 (3)ア原告は,同月5日,Jが原告との接見を妨害された旨主張し,これに沿う証拠(甲6,21,証人J)がある。 しかしながら,同証人は同日L弁護士が原告と接見した際に会えないと言われた旨証言するところ,証拠(乙3の3)によれば,L弁護士が原告と接見したのは同月4日であるから,同証人の上記証言及びこれと符合する陳述書(甲6,21)の該当部分は,いずれも同日の記憶違いであるといえる。 そうすると,同日の接見妨害については,前記(2)のとおりであって,B警部補が原告の接見交 これと符合する陳述書(甲6,21)の該当部分は,いずれも同日の記憶違いであるといえる。 そうすると,同日の接見妨害については,前記(2)のとおりであって,B警部補が原告の接見交通権を侵害したものと認めることはできない。 イ原告は,同月9日午前9時前,弁護人の接見の際,続けてJが原告との接見を求めたが,原告との接見を妨害された旨主張し,これに沿う証拠(甲6)がある。 しかしながら,証拠(乙3の3)によれば,同日に弁護人が原告と接見した事実はないし,同証人は同日についてははっきりと覚えていないという証言に終始していることに照らし,上記証拠(甲6)は採用することができないから,原告の上記主張は理由がない。 ウ原告は,同月17日,E人事課長が西宮署においてB警部補と面談し,原告との接見を求めた際にも,B警部補において原告が十数年前1件の不起訴処分の前歴と略式起訴の前科があり,「(担当検事の)心証が悪い。このままであると起訴される可能性が高い。」などと答え,依然接見ができないかのように対応し,原告との接見を妨害し続けたと主張する。 しかしながら,B警部補の上記発言は必ずしもE人事課長が原告と接見するのを妨げるものとはいえないし,他に同日の接見妨害を認めるに足りる的確な証拠はないから,原告の上記主張は理由がない。 (4)ア被告は,西宮市教育委員会職員の接見の申出については,同委員会職員の承諾に基づき,日時等を調整したものであり,西宮署警察官が同委員会職員と原告との接見を妨害した事実はないと主張し,これに沿う証拠(乙23,24,証人A,証人B)がある。 しかしながら,前記(1)エ,キ及びサの認定事実に沿う証拠(甲2(「Cの強制わいせつ致傷 接見を妨害した事実はないと主張し,これに沿う証拠(乙23,24,証人A,証人B)がある。 しかしながら,前記(1)エ,キ及びサの認定事実に沿う証拠(甲2(「Cの強制わいせつ致傷事件の経過」と題する部分),15の1ないし3)は,いずれもE人事課長が公務の過程で作成したものであり(証人Eの証言),その内容は具体的かつ客観的であって,E人事課長があえて虚偽の記載をする理由はなく,その信用性は高いものというべきであるから,これらに反する上記証拠(乙23,24,証人A,証人B)は採用することができない。 そして,前記(1)エ,キ及びサの認定事実に照らせば,同委員会職員の接見の申出について,その承諾に基づいて日時等を調整したものであるなどとはいえないことは多言を要しないところであり,他に前記(2)の判断を覆すに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ被告は,原告の親族から接見の申出がされた事実はない旨主張する。 しかしながら,証人Jは,自らが原告との接見を求めた日付については記憶違いがみられるものの,原告との接見を求めてこれを妨げられた点については一貫した証言をしている。 また,同証人は,Dから西宮署において原告と会わせてもらえなかったと聞いた旨証言するところ,Dが原告に差入れをするために西宮署に赴いたからには原告との接見を求めるのが自然であるといえる。 そして,前記(1)エ,キ及びサのとおり同警察官において同委員会職員が原告と接見するのを妨げたこと,西宮署留置管理官のPがB警部補から原告に外部と連絡をとらせないように言われていたこと(原告本人)をも併せ考慮すると,同証人の上記証言は信用することがで 同委員会職員が原告と接見するのを妨げたこと,西宮署留置管理官のPがB警部補から原告に外部と連絡をとらせないように言われていたこと(原告本人)をも併せ考慮すると,同証人の上記証言は信用することができる。 以上によれば,前記(1)ウ,オ及びカのとおり,J及びDは原告との接見を求めてこれを妨げられたものと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 4 西宮署警察官が西宮市教育委員会職員に原告に関する偏頗な情報を提供したか否か(争点(4))について(1) 前記争いのない事実,証拠(甲1,2,8,9,15の1及び2,甲31,乙4,23,24,26,30,証人A,証人B,証人G,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア A課長は,平成8年9月4日,西宮市教育委員会のK総務部長及びE人事課長に対し,「Cは,刑事に対して暴言をはいたり,揚げ足をとるなどし,公務員としてあるまじき言動であり,刑事の心証を悪くした。」と述べた。 イ A課長は,同月6日,E人事課長と電話で話をした際,「本人は弁護士が入ってから容疑事実を否認し,強硬な態度を取り続けているので,10日間の勾留期間をいっぱい使うかもしれない。」と述べた。 ウ A課長は,同月9日,K総務部長及びE人事課長に対し,「現在否認中であり,会うことはできない。このままだと,10日間の勾留を延長し,起訴になることになる。そうなればかなり重い処罰になると思われる。」「逮捕された時,刑事課長に電話をし,刑事が自分の車(400万円相当)を損傷したと言ってきた。このように,刑事の心証を悪くしているので,起訴されれば不利な要素がある。」と述べた。 エ B警部補は,同 ,刑事課長に電話をし,刑事が自分の車(400万円相当)を損傷したと言ってきた。このように,刑事の心証を悪くしているので,起訴されれば不利な要素がある。」と述べた。 エ B警部補は,同月17日,E人事課長らに対し,原告が同月3日に被害者方に赴き,同日,「刑事が連行した後,いったん帰宅させたが,連行されたことに腹を立て,ママに電話をした。自分は公務員であり,動きはとれないが,後ろには右翼がいるので,それを使うと言って脅した。」と述べたり,「Cは,他にも重要なことを隠しているようである。昭和55年と昭和59年に処分されており,それを検事が知っており,心証が悪い。このままであると起訴される可能性がある。」「裁判になれば,過去のことも話題になる。」「なぜ離婚してからもC姓を名のるのかわからない。Nであれば警察にも登録されており早くわかったが,Cでは指紋を調べてわかった。」と述べたりした。 オ B警部補及びG巡査部長は,平成8年9月18日,E人事課長及びF課長補佐に対し,「59年に傷害事件を起こして処分されている。相手はヤクザのようである。」「全体として傷害の件は認めて謝罪する予定である。」「傷害の件でCは被害者に謝罪し,弁償金を支払う予定をしている。」「あさって検事が本人と会う予定である。また,弁護士も動き出したが,起訴される可能性が高い。」「(スナックのママの証言によれば,)1週間にボトル1本を空けるくらいよく飲んでいるが,いつも車で帰っており,飲酒運転の常習犯であることが検事の心証を悪くしている。」「相手方もだいぶおさまってきており,本人も弁済費用も用意し,弁護士と相談しているので,今後動きは変わるかもしれないが,傷害罪での起訴となるかもしれない。」と述べた。 カ E人事課長及びF課長補佐は,平成8年9月 きており,本人も弁済費用も用意し,弁護士と相談しているので,今後動きは変わるかもしれないが,傷害罪での起訴となるかもしれない。」と述べた。 カ E人事課長及びF課長補佐は,平成8年9月18日午後5時8分から同25分までの間,原告と接見し,原告から本件被疑事件に関して事情を聴取した。 キ G巡査部長は,同月20日午後4時すぎころ,E人事課長らに対し,「本日まだCは検察庁から帰っていないので,今日起訴になるか不起訴かわからない。」「弁護士が相手女性と示談の方向で話をし,示談に至った。したがって,傷害罪だけであるので,不起訴処分の可能性が高い。」と述べたり,示談金の額が法外な金額であると述べたりした。 ク G巡査部長は,同日,E人事課長と電話で話をした際,「24日午前10時に尼崎検察庁で釈放されることとなった。」「この程度の傷害事件なら不起訴になる可能性がある。」と述べた。 ケ同委員会は,同月21日付けで,原告に対し,同年12月21まで3月の停職処分(以下「本件処分」という。)をした。その処分理由は,原告が本件被疑事件で逮捕されたことは職員として全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,市及び職員全体の信用を著しく傷つけたというものである。また,同委員会が原告に対する懲戒処分の内容を決定するに当たっては,原告の昭和59年の傷害事件が判明したことなども考慮されている。 (2) 前記認定事実によれば,西宮市教育委員会は,原告から本件被疑事件に関して事情を聴取した上で本件処分をしたのであるから,西宮署警察官の上記発言をそのまま鵜呑みにして本件処分の内容を決定したものではないことが窺われるところ,同警察官の上記発言が本件処分の内容にどれほどの影響を及ぼしたか,それによって不当に重い懲戒処分とな 警察官の上記発言をそのまま鵜呑みにして本件処分の内容を決定したものではないことが窺われるところ,同警察官の上記発言が本件処分の内容にどれほどの影響を及ぼしたか,それによって不当に重い懲戒処分となったものであるかは証拠上明らかでない。かえって,証拠(乙4)によれば,本件処分の内容は相当なものであることが窺われること,原告が本件被疑事件で逮捕されたこと自体が本件処分の直接の理由であることからすると,同警察官の上記発言が本件処分の決定に不当な影響を及ぼしたとは認め難いものといわざるを得ない。 したがって,同警察官であるA課長及びB警部補が同委員会人事担当者に対し,虚偽ないし偏った捜査関連情報を伝えて,原告に対して重い懲戒処分がされるように誘導した旨の原告の主張は,そもそも同警察官の上記発言によって本件処分の決定に不当な影響が及ぼされたという関係を肯認することができないから,同警察官の上記発言の内容が虚偽であるか,偏っているかについて判断するまでもなく,理由がない。 5 弁護士費用について本件事案の性質,損害認容額(前記2及び3の合計70万円),本件訴訟の経過や難易等を考慮すると,本件における弁護士費用は10万円と認めるのが相当である。 6 結論したがって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害金合計80万円及びこれに対する違法な公権力の行使の日の後であり,かつ,原告が釈放された日である平成8年9月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結語よって,原告の本訴請求のうち,損害金合計80万円及びこれに対する違法な公権力の行使の日の後であり,かつ,原告が釈放された日である平成8年9月24日から支払済みまで民法所定の年5分 第4 結語よって,原告の本訴請求のうち,損害金合計80万円及びこれに対する違法な公権力の行使の日の後であり,かつ,原告が釈放された日である平成8年9月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから,これを認容することとし,その余は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条,64条本文を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部裁判長裁判官松村雅司裁判官水野有子裁判官増田純平

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