平成29(行ウ)518 過誤納金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月5日 東京地方裁判所
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判決文本文30,421 文字)

平成31年2月5日判決言渡平成29年(行ウ)第518号過誤納金返還請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,3億2591万2500円並びにこれに対する平成29年2月19日から同年12月31日まで年1.7パーセントの割合による金員及び平成30年1月1日から支払済みまで年7.3パーセント又は租 税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合(ただし,当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)のいずれか低い割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要 原告は,Aの相続(以下「本件相続」という。)によって取得した農地に係る相続税について,札幌東税務署長(以下「税務署長」という。)により租税特別措置法(平成10年法律第23号による改正前のもの。以下「措置法」という。)70条の6第1項に定める納税猶予(以下「農地等納税猶予」という。)を受けていたところ,税務署長は,原告が上記農地に係る農 業経営を廃止したことが認められるとして,上記納税猶予の期限が確定する事実が生じた旨を通知した。 本件は,原告が,上記納税猶予に係る相続税及び利子税(以下「本件相続税等」という。)を納付した上で,上記納税猶予の期限が確定する事実は生じていないから本件相続税等の納付義務はないと主張して,国税通則法56 条1項に基づき,本件相続税等相当額の還付を求めるとともに,同法58条 1項に基づき,同額に対する本件相続税等の納付があった日の翌日である平成29年1月19日から起算して1月を経過する日である同年2月19日から支払済みまで租税特別措置法95条,93条2項の計算による還付 項に基づき,同額に対する本件相続税等の納付があった日の翌日である平成29年1月19日から起算して1月を経過する日である同年2月19日から支払済みまで租税特別措置法95条,93条2項の計算による還付加算金(平成29年は年1.7パーセント)の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め等 ⑴ 関連法令等の定め関係法令等の定めは,別紙2-1~2-3に記載のとおりである。 ⑵ 農地等納税猶予制度の概要ア農地等納税猶予とは,措置法70条の6第1項に規定する農業相続人が農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈により一定の農地及び採 草放牧地(以下「特例農地等」という。)を取得し,これらの特例農地等を引き続き農業の用に供していく場合において,これらの特例農地等の価額と農業投資価格(特例農地等の所在する地域において恒久的に耕作又は養畜の用に供されるものとした場合に通常成立すると認められる価格として土地評価審議会の意見を聴いて所轄国税局長が決定した価 格)との差額部分に対応する相続税について,一定の要件の下に相続税法33条の定める納期限にかかわらず次の①~③のいずれか早い日までその納税を猶予する制度である。 ① 農業相続人の死亡の日② 相続税の申告書の法定申告期限から20年を経過する日 ③ 上記②の日の前に農業後継者に特例農地等を一括生前贈与した場合は,その贈与の日イそして,猶予された相続税は,その後上記①から③までのいずれかに該当する日に免除することとされるところ(措置法70条の6第20項),これらの日の前に,(a) 特例農地等の譲渡等があった場合におい て,当該譲渡等があった当該特例農地等に係る土地の面積が,その時の 直前における農地等納税猶予の適用を 条の6第20項),これらの日の前に,(a) 特例農地等の譲渡等があった場合におい て,当該譲渡等があった当該特例農地等に係る土地の面積が,その時の 直前における農地等納税猶予の適用を受ける特例農地等に係る耕作又は養畜の用に供する土地の面積の100分の20を超えるとき(同条1項1号),又は(b) 特例農地等に係る農業経営を廃止したとき(同項2号)は,猶予税額の全部について納税猶予が打ち切られることとなり,当該事由が生じた日から2か月を経過したときに,その猶予期限が確定 することとされている(同条1項ただし書)。 したがって,上記(a)又は(b)の事由が生じた場合には,納税が猶予されていた相続税額の全部について猶予期限が確定し,農業相続人はその相続税額を利子税とともに納付しなければならないことになる。 ウ措置法70条の6第1項の委任を受けた租税特別措置法施行令(ただ し,平成10年政令第108号による改正前のもの。以下「施行令」という。)40条の7第2項1号は,農地等納税猶予の適用の対象となる農業相続人について,相続税の申告書の提出期限までに相続等により取得した特例農地等に係る「農業経営を開始し,その後引き続き当該農業経営を行うと認められる者」であることにつき農業委員会の証明を受け た者と規定する。 そして,租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて(法令解釈通達)(以下「措置法通達」という。)70の6-8(農業経営を行う者)は,「農業経営を開始し,その後引き続き当該農業経営を行うと認められる者」に該当するか否かを判定する場合における農業経営 を行う者の意義について,同通達70の4-6(農業を営む個人等)を準用するところ,同通達70の4-6において,農業を営む個人と うと認められる者」に該当するか否かを判定する場合における農業経営 を行う者の意義について,同通達70の4-6(農業を営む個人等)を準用するところ,同通達70の4-6において,農業を営む個人とは,「耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行う個人」をいうとされている。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。) ⑴ 本件相続及び農地等納税猶予処分 ア原告は,平成9年▲月▲日に死亡したAの相続(本件相続)において,札幌市(住所省略)の土地(地目畑,地積8830平方メートル,以下「本件農地」という。)及び同α番βの土地(地目畑,地積556平方メートル,本件農地と併せて以下「本件特例農地等」という。)を含む不動産を相続し,本件特例農地等において農業を営んでいた(乙7,弁 論の全趣旨)。 イ原告は,平成10年10月20日,税務署長に対し,相続税額2億0660万5600円のうち,1億8263万9600円を農地等納税猶予に係る納税猶予税額とし,本件特例農地等に係る農地等納税猶予の適用を受ける旨記載した本件相続に係る相続税の申告書を提出した(乙 7)。 ウ税務署長は,平成11年6月29日,原告に対し,本件相続の相続税につき,相続税額を2億2091万6400円,農地等納税猶予の適用を受ける税額を2億0241万5600円とする更正処分をした(乙8)。 エ原告は,平成12年6月23日,本件相続の相続税につき,相続税の修正申告書を税務署長に提出し,同修正申告書において,相続税額2億2354万9900円のうち,2億0114万4300円を農地等納税猶予に係る納税猶予税額とした(乙9)。 ⑵ 本件法人の設立 原告は,平成25年6月7日,株式会社B(以下「本件法 億2354万9900円のうち,2億0114万4300円を農地等納税猶予に係る納税猶予税額とした(乙9)。 ⑵ 本件法人の設立 原告は,平成25年6月7日,株式会社B(以下「本件法人」という。)を設立し,原告が代表取締役,原告の母及び兄妹が取締役に就任した。 ⑶ 納税猶予期限の確定通知及び本件相続税の納付等ア原告は,平成28年3月4日付けで,札幌国税局長宛てに「相続税の 納税猶予に係る特例農地等の利用状況等回答書」(乙24)を提出し, 納税の猶予を受けている農地等の利用状況等に関し,届出のとおり農地等として利用していると回答した(乙24)。 イ札幌国税局の職員は,原告の所得税に係る申告書に平成25年に農業用車両,農業用倉庫及び農業用農舎が本件法人に売却された旨の記載があること,同申告書に平成25年分まで計上されていた農業所得が平成 26年分には計上されていなかったこと等を受けて,平成28年4月6日,原告に対し,本件特例農地等の利用状況の事実確認を行った(乙25)。 ウ(ア) 原告は,平成28年5月25日付けで,税務署長に対し,「個人で申告すべき農業収入を誤って法人で申告していたため」との理由で, 平成26年及び平成27年分所得税及び復興特別所得税の更正の請求を行った(乙3,4,弁論の全趣旨)。 (イ) 原告は,平成28年6月28日付けで,税務署長に対し,「農地の地代を誤って収入に計上していたため」との理由で,平成25年分所得税及び復興特別所得税の更正の請求を行った(乙2)。 エ税務署長は,平成28年12月27日付けで,原告に対し,上記ウの各更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)について,いずれもその更正をすべき理由がない旨の通知を行った(乙 エ税務署長は,平成28年12月27日付けで,原告に対し,上記ウの各更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)について,いずれもその更正をすべき理由がない旨の通知を行った(乙5,6,27)。 オ税務署長は,平成28年12月27日付けで,原告に対し,遅くとも,平成26年1月1日には原告は本件特例農地等に係る農業経営を廃止し たものと認められ,このことは農地等納税猶予の期限の全部確定事由に当たるとして,「猶予期限が確定した相続税の額」を2億0114万4300円,「利子税の額」を1億2476万8200円,「確定した相続税の猶予期限」を平成26年3月3日とする「猶予期限が確定した相続税額の通知書」を送付した(甲2)。 カ原告は,平成29年1月17日,上記オの相続税及び利子税(本件相 続税等)の合計3億2591万2500円を納付した(弁論の全趣旨)。 キ原告は,平成29年3月27日付けで,税務署長に対し,上記エの更正をすべき理由がない旨の各通知処分に対する再調査の請求を行ったが,税務署長は,平成29年6月23日付けで,原告に対し,再調査の請求をいずれも棄却する旨の決定を行った(甲5)。 クなお,後記3の争点に関する部分を除き,上記オの本件相続税等の計算の基礎となる金額及び計算方法については,当事者間に争いがない。 3 争点及びこれに対する当事者の主張本件の主要な争点は,原告が本件特例農地等に係る農業経営を廃止し,本件相続の相続税に係る農地等納税猶予の期限が確定したか否かであり,これ に対する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)⑴ 農業経営を廃止したか否かの判断基準ア農地等納税猶予が行われ,まだ猶予された相続税につき免除されていない場合 ,これ に対する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)⑴ 農業経営を廃止したか否かの判断基準ア農地等納税猶予が行われ,まだ猶予された相続税につき免除されていない場合において,特例農地等に係る農業経営を廃止したときは,猶予 税額の全部について納税猶予が打ち切られ,当該事由が生じた日から2か月が経過する日にその猶予期限が到来することとなり,農業相続人は,その相続税額を利子税とともに納付しなければならないこととなる(措置法70条の6第1項ただし書)。 措置法70条の6第1項の委任を受けた施行令40条の7第2項1号 は,相続税の納税猶予の適用を受けることができる相続人は相続税の申告書の提出期限までに相続又は遺贈により取得した農地等について「農業経営を開始し,その後引き続き農業経営を行うと認められる者」であることにつき,農業委員会の証明を受けた者と規定している。そして,「農業経営を開始し,その後引き続き当該農業経営を行うと認められる 者」に該当するかどうかを判定する場合における農業経営を行う者の意 義については,措置法通達70の6-8の準用する同通達70の4-6において,農業を営む個人とは「耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行う個人をいう」とされている。したがって,農業経営を廃止したか否かは,「農業経営」という文言や,農地を農業用地として継続使用する農家を保護するという農地等納税猶予制度の趣旨に照らし,農地 に対する使用状況,耕作作業の管理・態様,生産物の販売状況,生産物の売上げの帰属状況等を総合的に考慮し,農業経営の実態に即して判断すべきである。 イなお,措置法通達70の4-6は,農業経営を行う者の事業規模や農業の兼業に関し,①農業は,必ずしもその収穫物を他に販 げの帰属状況等を総合的に考慮し,農業経営の実態に即して判断すべきである。 イなお,措置法通達70の4-6は,農業経営を行う者の事業規模や農業の兼業に関し,①農業は,必ずしもその収穫物を他に販売しなければ ならないものではなく,個人が耕作若しくは養畜による生産物を自家消費に充てている場合であっても,それは農業に該当するものとし,また,②個人が会社,官庁等に勤務するなど他に職業を有し若しくは他に主たる事業を有している場合であっても,その耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行っている限り,その者は農業経営を行う者に該当する ものとし,さらに,住居及び生計を一にする親族の2人以上の者がそれぞれ農業を営む個人に該当する場合には,それらの者が所得税の課税上農業の事業主となっているかどうかは問わないものとされている。 これらの定めは,措置法通達の趣旨及びその内容に照らせば,農業経営を行う者の該当性判断において,事業規模や面積基準,専業性や所得 基準を厳格に要求することはせず,耕作又は養畜の行為を反復し,かつ,継続的に行う個人であれば足りるとしているに過ぎず,本件のように,(生計を一にする複数の親族が農業を営む事案ではなく)元々農業を営んでいた個人と,その後いわゆる法人成りにより設立された新たな法人のいずれかが農業経営を行う者に該当するかが問題となる事案において, 「農業相続人が農地等納税猶予の対象となっている農地で栽培した農作 物を対外的に販売しているかどうか,農業相続人が所得税の課税上農業の事業主となっているかどうか」を考慮要素とすることを否定したものではないことは明らかであるし,自家消費があれば農業経営を行う者に該当するとされているわけでもない。 ⑵ 原告に全部確定事由が生じていること いるかどうか」を考慮要素とすることを否定したものではないことは明らかであるし,自家消費があれば農業経営を行う者に該当するとされているわけでもない。 ⑵ 原告に全部確定事由が生じていること ア本件においては,①原告が本件法人に対して本件特例農地等を含む土地を貸し付けていたこと,②原告が農業の用に供していた資産を本件法人に譲渡していること,③本件法人が自ら農作物を販売し,農作物に係る入出金やそのために利用していた口座を自らの収入及び費用又は資産として計上していたことなどの事情がある。これらに照らせば,本件法 人の設立は,個人事業主である原告が手続を行い,株式会社である本件法人に成り代わる,いわゆる法人成り(商工業・農業などを営む小規模な家族事業者が,主に節税を目的として,経営実態は個人企業でありながら,株式会社などの法人企業の組織形態をとること)をしたものと認められるのであり,農業経営の主体が原告から本件法人に完全に移転し, 以降原告が農業経営を行っていたと評価し得ないことは明らかである。 イ(ア) なお,原告は,自身が本件農地を耕作していることを原告による農業経営の実施の根拠であると主張するが,仮に原告が現実に耕作していたとしても,本件法人が農業経営を行うに当たっての唯一の労働力として原告に本件農地を耕作させていたと評されるものに過ぎず,本 件法人の代表取締役である原告が,労務ないし役務の提供の対価として,年間840万円の「役員給与」を本件法人から受領していることから明らかなとおり,原告個人が農業経営の主体となって行っているものとはいえない。この点について,原告は,農業用資産である豆テーラー等を原告が所有し,原告が行う農作業に利用している点を指摘 するが,原告の指摘を裏付ける的確な証拠はない上 なって行っているものとはいえない。この点について,原告は,農業用資産である豆テーラー等を原告が所有し,原告が行う農作業に利用している点を指摘 するが,原告の指摘を裏付ける的確な証拠はない上,仮に事実であっ たとしても,本件法人が原告所有の豆テーラー等を借りて本件農地での農作業に利用していたと評されるにすぎないから,原告が農業経営の主体となっていたということはできない。 (イ) また,原告は,上記ア①に関して,その土地の貸付けが私法上無効であると主張するが,原告の主張を前提としても,現実に本件法人が 本件農地を使用し,原告は本件法人から使用収益の対価を受け取っていたことなどに照らせば,この点も原告の農業経営が廃止されたという結論を左右するものとはいえない。 (ウ) 原告は,上記ア②に関して,本件農地における農業に供する資産の譲渡契約は錯誤により無効であるし,実際原告が同資産を使用してい たと主張するが,原告及び本件法人はこの契約を前提とした内容の確定申告を行うなどしていたのであるから,原告の主張の点が原告の農業経営が廃止されたという結論を左右するものとはいえない。 (エ) 原告は,上記ア③に関して,原告名義のC市農業協同組合(以下「「C」JA」という。)D支店の普通貯金口座(口座番号(省略)。 以下「本件農業用口座」という。)を本件法人の総勘定元帳に計上したことが過誤であり,本件各更正の請求及び本件法人に係る修正申告を行っていると主張するが,この更正の請求及び修正申告の内容は農業経営の主体についての実態を反映したものではなく,実際にも理由がないとして否定されていることに照らせば,総勘定元帳への計上が 過誤であったとは考え難い。 (オ) さらに,原告は,「C」JAとの間で締結した の実態を反映したものではなく,実際にも理由がないとして否定されていることに照らせば,総勘定元帳への計上が 過誤であったとは考え難い。 (オ) さらに,原告は,「C」JAとの間で締結した協定書(甲6)や,札幌市農業委員会から取得した農業経営証明書(甲7),E株式会社(以下「E」という。)から取得した契約内容証明書(甲9)が,平成26年5月期及び平成27年5月期における原告の農業経営を裏付 けると主張するが,これらの書面は本件法人の成立前の時期における 事情を記載したものか,農業経営の実態を正確に反映せずに作成されたものであるから,原告の主張を裏付けるものではない。また,原告は,「相続税の納税猶予に係る特例農地等の利用状況等回答書」(乙24)を提出していることが原告の農業経営を裏付けると主張するが,同回答書は相続税の納税猶予の適用を受けている農地の利用状況を報 告するものにすぎないから,これを提出していることは本件農地の利用状況を左右するものではない。 ウそうすると,遅くとも平成26年1月1日以降,本件農地における農業経営の主体は原告から本件法人に確定的に移転しており,原告は農業経営を廃止していたといえるから,措置法70条の6第1項2号所定の 「農業経営を廃止したとき」に該当し,原告が適用を受けた農地等納税猶予は,同号に規定する全部確定事由に該当する。 (原告の主張)⑴ 農業経営を廃止したか否かの判断基準ア原告主張基準① 措置法通達70の6-8が準用する同通達70の4-6は,措置法70条の4第1項に規定する「農業を営む個人」の意義を定めるところ,農地を贈与した場合の贈与税の納税猶予等に係る同項の規定は,農地の移転を伴う農業承継にかかる税を猶予軽減して農業経営基盤の保全 置法70条の4第1項に規定する「農業を営む個人」の意義を定めるところ,農地を贈与した場合の贈与税の納税猶予等に係る同項の規定は,農地の移転を伴う農業承継にかかる税を猶予軽減して農業経営基盤の保全を図るという同法70条の6第1項と同様の趣旨の制度を定めるものである から,同法70条の4の「農業を営む」ことと,同法70条の6第1項2号の「農業経営」は同義である。 「農業を営む」ことの判断においては,農業が必ずしもその収穫物を販売することを要件とするものではなく,規模も多様であることなどに照らして,農地の収穫物によって収入を得ているか否かを基準とするこ とは相当でないし,兼業農家が実際に多数存在することに照らせば,専 業性を基準とすることも相当ではない。農業相続人による農業経営の基準は,農業の経営に絶対に欠かせない事実行為としての農作業を農業相続人自身が担っているか,すなわち,「耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行」っているか(措置法通達70の4-6)によるのが相当である。 また,措置法通達70の4-6は,個人が生産物を自家消費に充てている場合や兼業農家の場合であっても,耕作又は養畜の行為を反復かつ継続的に行っている場合に限り農業を営む個人に該当すると定めているし,住居及び生計を一にする親族の2人以上の者が農業を営む個人に該当する場合には,それらの者が所得税の課税上農業の事業主となってい るかどうかは問わないことに留意することとされているのであるから,同通達は「農業経営」の基準として,農業に関する課税上の主体性や課税対象となる農業の売上げの有無を考慮すべきでないとしていることは明らかである。 そして,「農業経営」の開始及び継続と廃止の判断基準を区別する合 理的理由はな 関する課税上の主体性や課税対象となる農業の売上げの有無を考慮すべきでないとしていることは明らかである。 そして,「農業経営」の開始及び継続と廃止の判断基準を区別する合 理的理由はないから,措置法70条の6第1項2号にいう「農業経営を廃止した場合」とは,事実行為である「耕作又は養畜の行為を反復,又は,継続的に行うことをやめた場合」と解すべきである(以下,この基準を「原告主張基準①」という。)。 イ原告主張基準② 同じ農地において法人と個人が共に農業を経営することも考えられるところ,外見上個人が行っている耕作が完全に法人の手足としての耕作であるか否かの明確な基準はない。また,上記アのとおり,「農業経営」の判断においては,農業相続人本人による耕作の事実が最も重要な意義を有している。 したがって,農業相続人本人が対象農地で耕作している場合,対象農 地における第三者の農業経営の開始を理由として農業相続人の農業経営が廃止されたと判断するためには,単に農業の売上げが一時第三者に帰属しているのみならず,農業相続人の農業所得が存在しない期間が存在した期間と比較して相対的に長期であるとか,売上げの帰属する第三者が本人と全く関連のない第三者である等,農業相続人個人の耕作が個人 の農業経営の一環として行われたものではないことを基礎付けるより強固な事情が必要となるものと解すべきである(以下,この基準を「原告主張基準②」という。)。 ウ原告主張基準③前記アのとおり,「農業経営」の判断においては,農業相続人自らが 耕作を行い,対象農地が農地として現実に利用されているという関係が最も重視され,農業による売上げの有無や帰属,申告態様等の要素は,考慮されるとしても従属的なものにすぎな は,農業相続人自らが 耕作を行い,対象農地が農地として現実に利用されているという関係が最も重視され,農業による売上げの有無や帰属,申告態様等の要素は,考慮されるとしても従属的なものにすぎない。そして,措置法通達上,住居及び生計を一にする親族の2人以上の者が農業を営む個人に該当する場合は,それらの者が所得税の課税上農業の事業主となっているか否 かは問われない。 したがって,対象農地における農業の売上げが法人に帰属している等の理由から,専ら法人が対象農地における農業を経営していると評価され,それに伴って個人の農業経営が廃止されたと判断できる場合であっても,対象農地における農作業を農業相続人本人のみが実際に反復継続 的に行っており,当該法人と農業相続人が経済的に一体の関係をなすとみられる特段の事情がある場合には,同族による農業経営の在り方と異なる点がなく,対象農地が農地として継続使用され,農地の潜在的な宅地売却期待益が農業相続人や法人において実現することもないから,農業相続人が農業経営を廃止したといえないと解すべきである(以下,こ の基準を「原告主張基準③」という。)。 ⑵ 原告に全部確定事由が生じていないことア上記⑴の各基準によれば全部確定事由が生じていないこと(ア) 原告主張基準①原告は,平成10年以降本件農地を耕作し続けているし,本件農地において売上げや経費の帰属が問題になっている販売された農作物以 外にも自家消費した農作物を栽培していたから,原告主張基準①によれば,「農業経営を廃止」したとはいえない。 (イ) 原告主張基準②そもそも本件農地では原告個人と本件法人の双方の農業経営が併存していたところ,原告は,平成10年以降約15年にわたって本件 「農業経営を廃止」したとはいえない。 (イ) 原告主張基準②そもそも本件農地では原告個人と本件法人の双方の農業経営が併存していたところ,原告は,平成10年以降約15年にわたって本件農 地を耕作し続けている一方,本件法人が本件農地において農業を経営していた可能性があるのは2期のみであることや,本件法人が原告個人の資産管理を目的とする会社であって,農業相続人である原告と所得帰属者である本件法人の関係は経済的に同一とも評価し得ることからすれば,農業相続人個人の耕作が個人の農業経営の一環として行わ れたものではないことを基礎付けるより強固な事情がないから,原告主張基準②によれば,原告が「農業経営を廃止」したとはいえない。 (ウ) 原告主張基準③原告は本件農地における耕作を実際に行っており,また原告と本件法人との間には経済的な同一性があることから,原告が「農業経営を 廃止」したと認められない特段の事情があるから,原告主張基準③によれば,「農業経営を廃止」したとはいえない。 イ被告の主張によっても全部確定事由が生じていないこと被告は,原告が本件法人に対して本件特例農地等を含む土地を貸し付け,本件農業用資産を譲渡していたと主張するが,本件農地の貸付けは 農地法3条1項の許可を受けていない以上私法上の効力がない無効なも のであるし,本件農業用資産の譲渡契約は錯誤を理由に無効となっているから,主張は失当である。一方,原告は,本件農地における耕作に用いられていた豆テーラーや培土機を本件法人に譲渡せず,一貫して自身で所有している。 また,被告は,本件法人が自ら農作物を販売し,農作物に係る入出金 やそのために利用していた本件農業用口座を自らの収入及び費用又は資産とし 件法人に譲渡せず,一貫して自身で所有している。 また,被告は,本件法人が自ら農作物を販売し,農作物に係る入出金 やそのために利用していた本件農業用口座を自らの収入及び費用又は資産として計上していたと主張するが,本件法人名義の領収証が発行されたものの売上げは僅少であるし,原告の農業収入を管理していた「C」JAの口座を本件法人の総勘定元帳に計上したことは過誤であって,原告の所得計上に過誤があった(実際に原告は更正の請求を行ってい る。)のであるから,上記主張は失当である。 さらに,原告は,平成23年に「C」JAとの間でそ菜の生産に関する協定書を締結し,平成28年4月27日には札幌市農業委員会から農業経営証明書を取得しているから,この間の時期において本件農地における売上げが帰属すべき農業経営者は原告であるといえる。加えて,原 告は,本件法人の設立前から現在に至るまで,本件農地の農作物のほぼ全量をEに対して直接又は間接に販売しているところ,その販売名義はいずれも原告個人であって,本件法人であったことは一度もないのであるから,やはり本件農地における売上げが帰属すべき農業経営者は原告である。 そして,原告は,本件農地を継続して農地として使用している旨を記載した「相続税の納税猶予に係る特例農地等の利用状況等回答書」を提出しているし,納税猶予を受けている相続税を免除される期間が目前に迫っていたのであるから,原告に個人の農業経営を廃止する意思があったとは考えられない。 なお,本件法人の平成27年6月1日から平成28年5月31日まで の事業年度(以下「平成28年5月期」という。)及び同年6月1日から平成29年5月31日までの事業年度(以下「平成29年5月期」という。)の各法人税の 6月1日から平成28年5月31日まで の事業年度(以下「平成28年5月期」という。)及び同年6月1日から平成29年5月31日までの事業年度(以下「平成29年5月期」という。)の各法人税の確定申告において農業所得が計上されていないが,現時点において課税庁はこれに対して更正処分等を行っていない。 以上に照らせば,被告の主張によっても,原告の「農業経営が廃止」 されたとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 農業経営を廃止したか否かの判断基準⑴ 農地等納税猶予制度の趣旨等相続税は,人の死亡によって財産が移転する機会にその財産に対して課 される租税であり,税額計算に当たっては,すべての相続財産の価額は相続又は遺贈によって取得した時点の時価で評価するのが原則とされている(相続税法22条参照)。しかしながら,相続財産が農地である場合,都市化による地価上昇があるときは宅地期待益含みともいうべき高い金額で売買されることとなり,その時価評価も高額なものとなるところ,このよ うな価額に基づく課税は,当該農地を利用して永続的に農業を継続していこうとする農業者による相続税の納付を困難とするものであり,実際に,上記原則を貫くことにより,農業を継続する意思を持ちながらも,相続税の納付のために農地を手放さざるを得ない事態も生じるようになった。 農地等納税猶予制度は,このような状況を踏まえ,昭和50年1月1日 以降の相続又は遺贈によって取得する農地等に対する相続税について適用することとされた特例であって,①相続人が,相続税の申告書の提出期限までに農業経営を開始し,その後も引き続き当該農業経営を行うと認められる者であることを要件として,その農業の用に恒久的に使用される農地等に対する相続税額のうち,その農地等の 相続税の申告書の提出期限までに農業経営を開始し,その後も引き続き当該農業経営を行うと認められる者であることを要件として,その農業の用に恒久的に使用される農地等に対する相続税額のうち,その農地等の恒久的な農地等としての価格 (農業投資価格)を超える部分(いわば宅地期待益部分ともいうべき価額 部分)に対する相続税の納税を猶予するとともに,②当該農地等につき,次の相続若しくは農業後継者に対する生前一括贈与又は相続税の申告書の提出期限から20年間の経過があって,それまでの間,農地等納税猶予の適用を受けていた場合は,その猶予されていた相続税の納税を免除する一方,それ以前に,当該相続人が当該農地等の一定割合以上の譲渡等をした 場合,又は当該農地等の農業経営を廃止した場合は,納税猶予の期限が確定し,猶予されている相続税を支払わなければならないこととするものである(甲3の1,2,乙28)。 ⑵ 農業相続人が農業経営を廃止したか否かの判断基準についてア本件では,本件特例農地等に係る農業経営を行うと認められる者と して農地等納税猶予を受けていた原告が,本件法人が設立された後において,本件特例農地等に係る農業経営を廃止したといえるか(措置法70条の6第1項2号)が争われているところ,上記⑴の農地等納税猶予制度の趣旨や,同号の規定の「農業経営」という文言に照らせば,農業相続人が農業経営を廃止したか否かは,農地の使用状況,耕 作作業の管理・態様,生産物の販売状況,生産物の売上げの帰属状況等を総合的に考慮して, 農業相続人の事業としての農業経営を廃止したと評価することができるか否かによって判断すべきである。 イ(ア) これに対し,原告は,農業相続人が農業経営を廃止したといえるのは耕作行為の反復・継続を止めた場 事業としての農業経営を廃止したと評価することができるか否かによって判断すべきである。 イ(ア) これに対し,原告は,農業相続人が農業経営を廃止したといえるのは耕作行為の反復・継続を止めた場合に限られる(原告主張基準 ①),あるいは,農業相続人が客観的に耕作を継続している場合に農業経営を廃止したというためには,当該農業相続人の耕作が個人の農業経営の一環として行われていないことを基礎づけるより強固な事情が必要である(原告主張基準②)などとして,農業相続人が耕作を継続している事実を重視すべき旨主張する。 しかしながら,農地の耕作については,農業経営者が自ら行う場 合のほか,農業経営者でない者が法人の従業員として行う場合などもあり得るところ,これらの場合を全て農業相続人による「農業経営」に含めることは,その文言に沿わない上,相続等によって取得した農地等を利用して永続的に農業を継続しようとする農業者について負担軽減を図ることとした農地等納税猶予制度の趣旨に鑑みて も相当とはいい難いい。原告は,措置法通達70の4-6において「農業を営む個人」は「耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行う個人を指す」とされていることを指摘するが,同通達の上記文言は,措置法70条の4第1項の「農業を営む個人」について,事業規模,専業性,所得税における農業の事業主に該当するか否か を問わず,耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行う個人をもって足りるものとする趣旨によるものといえるのであり(乙33),元々農業を営んでいた個人と,その後いわゆる法人成りにより設立された新たな法人のいずれが農業経営を行う者に該当するかが問題となる事案について,当該個人の耕作の実施のみをもって, 直ちに「農業を営む個人」に でいた個人と,その後いわゆる法人成りにより設立された新たな法人のいずれが農業経営を行う者に該当するかが問題となる事案について,当該個人の耕作の実施のみをもって, 直ちに「農業を営む個人」に当たるとするものでないというべきである。 したがって,原告主張基準①及び②は合理的であるとはいえず,採用することができない。 (イ) また,原告は,個人の農業経営が廃止されたと判断できる場合で あっても,農業経営をする法人と農業相続人との経済的一体性が認められる特段の事情がある場合には,同族による農業経営の在り方と異なる点がなく,農地の潜在的な宅地期待益が農業相続人や法人において実現することがないことなどから,農業相続人が農業経営を廃止したとはいえないとも主張する(原告主張基準③)。しかしながら,上 記主張は,措置法通達70の4-6が「住居及び生計を一にする親族 の2人以上の者が,農業を営む個人に該当する場合には,それらの者が所得税の課税上農業の事業主となっているかどうかは問わない」とすることを踏まえたものであるところ,個人の農業経営が廃止されたと判断できる場合には,生計を一にする複数の親族が農業を営む事案と異なり,そもそも当該個人には農業を営む実態がないから,同族に よる農業経営の在り方と異なる点がないとはいえず,上記主張はその前提を欠くものとして採用することができない。 2 原告が本件特例農地等に係る農業経営を廃止したといえるか⑴ 認定事実掲記の各証拠等によれば,次の事実が認められる。 ア本件法人設立後の本件法人及び原告の活動状況等(ア) 原告は,平成25年6月7日,原告を代表取締役として,本件法人を設立した。本件法人の定款には,目的として不動産の売買・賃貸・管理,農 本件法人設立後の本件法人及び原告の活動状況等(ア) 原告は,平成25年6月7日,原告を代表取締役として,本件法人を設立した。本件法人の定款には,目的として不動産の売買・賃貸・管理,農産物の生産・加工・販売及びこれらに附帯関連する一切の事業を営むことが記載され,「設立に際して発行する株式等」及び「発 起人の氏名及び住所,割当を受ける設立時株式の数等」の各欄には,原告が発起人となって,設立時発行株式の全部を取得することがそれぞれ定められている(乙10,35,36)。 そして,本件法人は,同月21日,税務署長に対し,現に営んでいる又は営む予定の事業の目的として「不動産の賃貸農産物の生産・加 工・販売」と記載し,「設立の形態」欄の「個人企業を法人組織とした法人である場合」にチェックを入れた法人設立届出書を提出した(乙36,弁論の全趣旨)。 なお,本件法人には従業員はなく,原告を除く役員は本件農地における耕作作業を行っていなかった(乙20の1〔24/29頁〕,2 1の1〔25/31頁〕,弁論の全趣旨)。 (イ) 原告は,平成25年7月1日,本件法人との間で,原告所有の農業用資産であるミニキャブ及び乗用車(以下「本件各農業用車輌」という。)を,それぞれ代金額2万1028円及び200万3520円として現状有姿で譲渡する旨の売買契約を締結し,同日本件法人に対して引き渡してこれらの所有権を移転した(乙11)。 (ウ) 本件法人は,本件各農業用車輌のうち,ミニキャブにつき平成25年7月1日付けで所有者及び使用者を,乗用車につき同月2日付で所有者を,それぞれ原告から本件法人に変更した(乙12,13,弁論の全趣旨)。 (エ) 原告は,平成25年8月1日,本件法人との間 7月1日付けで所有者及び使用者を,乗用車につき同月2日付で所有者を,それぞれ原告から本件法人に変更した(乙12,13,弁論の全趣旨)。 (エ) 原告は,平成25年8月1日,本件法人との間で,原告所有の農業 用資産である次のa及びbの各資産(以下本件各農業用車輌と併せて「本件各農業用資産」という。)を,総額169万1831円で譲渡する旨の売買契約を締結した(乙14)。 a 建物(a) 札幌市(住所省略)(農業用倉庫) 未登記 S造/倉庫・一般 155.52平方メートル価格金 1万6741円(b) 札幌市(住所省略)(農業用農舎)未登記 S造/倉庫・一般 68.04平方メートル価格金 7万9797円 b 構造物及び車輌等(a) アスファルト舗装価格金 68万2500円(b) 耕運機価格金 1円(c) トラクター価格金 23万2792円(d) 除雪機価格金 68万0000円 (オ) 平成26年度から平成28年度までの名寄帳兼賦課台帳(札幌市 (住所省略))には,本件各農業用資産のうち,農業用倉庫及び農業用農舎の上記各年度の固定資産税等の納税義務者が本件法人である旨記載されていた(乙15の1~3)。 (カ) 本件法人は,平成26年1月31日,税務署長に対し,本件各農業用資産のうち農業用倉庫及び農業用農舎の譲渡代金として本件法人か ら原告に9万6538円が支払われた旨を記載した「平成25年分不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出した(乙16)。 各農業用資産のうち農業用倉庫及び農業用農舎の譲渡代金として本件法人か ら原告に9万6538円が支払われた旨を記載した「平成25年分不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出した(乙16)。 (キ) 本件法人は,平成26年2月から平成28年5月までの間,毎月末日(同日が休日等の場合は金融機関の翌営業日),本件法人名義の「C」JAD支店普通貯金口座(口座番号(省略))から「地代」と して17万5000円ずつ支出した(乙17,弁論の全趣旨)。 (ク) 原告は,平成26年2月から平成28年3月までの間,毎月末日(同日が休日等の場合は金融機関の翌営業日),本件法人(「(カブ)B」)から,原告(家賃口)名義の「C」JAD支店普通貯金口座(口座番号(省略))に17万5000円ずつ振り込みを受けた (乙18,弁論の全趣旨)。 (ケ) 本件法人は,次のa~fのとおり日付,金額,ただし書欄が記入された領収証を発行し,平成27年5月期の総勘定元帳に,次のa~dまでの各金額欄の金額をそれぞれ収入として計上し,益金の額に算入した(乙19)。 日付金額ただし書a8月27日6600円とうきび代としてb26年 8月27日9000円トーキビ代c26年 8月28日1万2000円トーキビ代d27年 4月18日4000円いも代 e27年10月26日4000円大根代f27年11月 6日5000円白才代イ本件法人の申告状況等(ア) 本件法人が平成26年7月30日付けで提出した平成25年6月7日から平成26年5月31日までの事業年度(以下「平成26年5月期」という。)の法人税申告書(乙20の1)及び「電子申 (ア) 本件法人が平成26年7月30日付けで提出した平成25年6月7日から平成26年5月31日までの事業年度(以下「平成26年5月期」という。)の法人税申告書(乙20の1)及び「電子申告及び申請・届出による添付書類送付書」(乙20の2)には,次のとおり記 載されていた。 a 損益計算書(乙20の1〔12/29頁〕)売上高欄の「農業収入」 1万8873円b 製造原価報告書(乙20の1〔13/29頁〕)(a) 材料費欄の「肥料費・農薬費」 8万1024円 (b) 経費欄の「農具費」 14万6623円c 預貯金等の内訳書(乙20の1〔16/29頁〕)いずれも金融機関名が「C市農協」,種類が「普通預金」である。 口座番号期末現在高摘要(a)(省略)685万6461円 (b)(省略)175万2876円個人名義d 売掛金(未収入金)の内訳書(乙20の1〔17/29頁〕)科目相手方・名称期末現在高摘要売掛金E1万7270円にらe 棚卸資産の内訳書(乙20の1〔19/29頁〕) 科目品目期末現在高原材料たね2万9576円f 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書(乙20の1〔20/29 頁〕) 科目相手方・名称期末現在高摘要(a)買掛金C市農協5037円種代(b)買掛金F9万7718円種・農薬代g 地代家賃等の内訳書(乙20の1〔25/29頁〕)「地代・家賃の区分」欄が「地代」,「 5037円種代(b)買掛金F9万7718円種・農薬代g 地代家賃等の内訳書(乙20の1〔25/29頁〕)「地代・家賃の区分」欄が「地代」,「借地(借家)物件の用途」欄が「店舗」,「所在地」欄が「札幌市(住所省略)札幌市(住所省略)他」,「貸主の名称(氏名)」欄が原告,「支払対象 期間」欄が平成25年6月7日から平成26年5月31日までの間,「摘要」欄が「@175,000×12」h 法人事業概況説明書(a) 「事業形態」欄の「兼業の状況」欄が「(兼業種目)農業収入,(兼業割合)0.1%」(乙20の1〔27/29頁〕) (b) 「当期の営業成績の概要」欄が「法人成りし,不動産及び農業を経営しております」(乙20の1〔27/29頁〕)i 旧定率法・定率法による固定資産減価償却内訳明細書(乙20の2〔2,3枚目〕)(a) 【構築物】アスファルト舗装(倉庫前) (b) 【機械及び装置】除雪機,トラクター(c) 【車両及び運搬具】乗用車(イ) 本件法人が平成27年7月29日付けで提出した平成26年6月1日から平成27年5月31日までの事業年度(以下「平成27年5月期」という。)の法人税申告書(乙21の1)及び「電子申告及び申 請・届出による添付書類送付書」(乙21の2)には,次のとおり記載されていた。 a 損益計算書(乙21の1〔13/31頁〕) 売上高欄の「農業収入」 67万5338円b 製造原価報告書(乙21の1〔14/31頁〕)(a) 材料費欄の「種苗費」 3万3 売上高欄の「農業収入」 67万5338円b 製造原価報告書(乙21の1〔14/31頁〕)(a) 材料費欄の「種苗費」 3万3723円(b) 材料費欄の「肥料費・農薬費」 1万4269円c 預貯金等の内訳書(乙21の1〔17/31頁〕) いずれも金融機関名が「C市農協」,種類が「普通預金」である。 口座番号期末現在高摘要(a)(省略)1161万0759円 (b)(省略)232万5523円個人名義d 売掛金(未収入金)の内訳書(乙21の1〔18/31頁〕)科目相手方・名称期末現在高摘要売掛金E2万0655円にらe 棚卸資産の内訳書(乙21の1〔20/31頁〕)科目品目期末現在高貯蔵品農薬4万4538円貯蔵品肥料1万0313円原材料たね1万0742円f 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書(乙21の1〔21/31頁〕) 科目相手方・名称期末現在高摘要(a)買掛金F1万0742円種代(b)買掛金C市農協1万9640円DB代なお,「DB」とは,にら,春菊,いも,ほうれん草の出荷等に用いる段ボールを指すものと推認される(乙21の1〔20/31頁〕)。 g 地代家賃等の内訳書(乙21の1〔26/31頁〕)「地代・家賃の区分」欄が「地代」,「借地(借家)物件の用途」欄が「店舗」,「所在地」欄が「札幌市(住所省略)札幌市(住所省略)他」,「貸主の名称(氏名)」欄が原告,「支 31頁〕)「地代・家賃の区分」欄が「地代」,「借地(借家)物件の用途」欄が「店舗」,「所在地」欄が「札幌市(住所省略)札幌市(住所省略)他」,「貸主の名称(氏名)」欄が原告,「支払対象期間」欄が平成26年6月1日から平成27年5月31日までの間, 「摘要」欄が「@175,000×12」h 法人事業概況説明書「事業形態」欄の「兼業の状況」欄が「(兼業種目)農業収入,(兼業割合)2.1%」(乙21の1〔29/31頁〕)i 旧定率法・定率法による固定資産減価償却内訳明細書(乙21の 2〔2,3枚目〕)(a) 【構築物】アスファルト舗装(倉庫前)(b) 【機械及び装置】除雪機,トラクター(c) 【車両及び運搬具】乗用車ウ原告の申告状況等 (ア) 原告が平成26年3月17日に提出した平成25年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書(乙22の1,以下「平成25年分所得税等確定申告書」という。)及び同申告書に添付された資料(乙22の2)には,次のとおり記載されていた。 a 平成25年分所得税等確定申告書第一表(乙22の1〔1/54 頁〕)(a) 原告の職業欄農業(b) 収入金額等の「事業」「農業」欄 76万0943円b 譲渡所得の内訳書【総合譲渡用】(乙22の1〔20/54~25/54頁〕) 譲渡された資産の名称種類利用状況譲渡先の氏名(名称)(a)ミニキャブ車両農業用本件法人(b)乗用車車両農業用本件法人(c)耕運機,トラクター,除雪機農業用農業 種類利用状況譲渡先の氏名(名称)(a)ミニキャブ車両農業用本件法人(b)乗用車車両農業用本件法人(c)耕運機,トラクター,除雪機農業用農業用本件法人なお,上記(a)(b)の「売買契約の日」及び「引き渡した日」は平成25年7月1日,上記(c)の「売買契約の日」及び「引き渡した日」は同月31日とされ,いずれも「売却理由」欄のうち「買主から頼まれたため」にチェックがある。 c 平成25年分所得税青色申告決算書(不動産所得用)(乙22の 2〔2枚目〕)「貸家貸地等の別」欄が貸地,「不動産の所在地」欄が(省略),「賃借人の住所・氏名」欄が本件法人,「賃貸契約期間」欄が平成25年6月から同年12月まで,「賃貸料」「月額」欄が17万5000円,同「年額」欄が122万5000円 (イ) 原告が平成27年3月14日に提出した平成26年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書(乙23の1,以下「平成26年分所得税等確定申告書」という。)及び同申告書に添付された資料(乙23の2)には,次のとおり記載されていた。 a 平成26年分所得税等確定申告書第一表(乙23の1〔1/54 頁〕)(a) 原告の職業欄不動産賃貸業(b) 収入金額等の「事業」「農業」欄 (記載なし)b 平成26年分所得税青色申告決算書(不動産所得用)(乙23の2〔5/13頁〕) 「貸家貸地等の別」欄が貸地,「不動産の所在地」欄が(省略),「賃借人の住所・氏名」欄が本件法人,「賃貸契約期間」欄が平成26年1月から同年12月まで,「賃貸料」「月額」欄が 「貸家貸地等の別」欄が貸地,「不動産の所在地」欄が(省略),「賃借人の住所・氏名」欄が本件法人,「賃貸契約期間」欄が平成26年1月から同年12月まで,「賃貸料」「月額」欄が17万5000円,同「年額」欄が210万円(ウ) 原告が平成28年3月14日に提出した平成27年分の所得税及 び復興特別所得税の確定申告書(乙1の1,以下「平成27年分所得税等確定申告書」という。)及び同申告書に添付された資料(乙1の2)には,次のとおり記載されていた。 a 平成27年分所得税等確定申告書第一表(乙1の1〔1/15頁〕) (a) 原告の職業欄不動産賃貸業(b) 収入金額等の「事業」「農業」欄 (記載なし)b 平成27年分所得税青色申告決算書(不動産所得用)(乙1の2〔5/15頁〕)「貸家貸地等の別」欄が貸地,「不動産の所在地」欄が(省略), 「賃借人の住所・氏名」欄が本件法人,「賃貸契約期間」欄が平成27年1月から同年12月まで,「賃貸料」「月額」欄が17万5000円,同「年額」欄が210万円⑵ 検討ア農地に対する使用状況について (ア) 本件農地の賃貸借契約についてa 前記前提事実⑵及び前記認定事実ア(ア),イ(ア)h(b)によれば,従前農業を営んでいた原告は,個人企業を法人組織としたいわゆる法人成りとして,自身が発行済株式のすべてを取得し,設立時代表取締役に就任する形で,農産物の生産,加工,販売等を目的する本 件法人を設立したことが認められ,また,前記認定事実ウ(ア)a, (イ)a,(ウ)aによれば,原告は,平成25年分所得税等確定申告書においては 農産物の生産,加工,販売等を目的する本 件法人を設立したことが認められ,また,前記認定事実ウ(ア)a, (イ)a,(ウ)aによれば,原告は,平成25年分所得税等確定申告書においては,自身の職業を「農業」と記載し農業収入を計上していたが,平成26年分及び平成27年分の各所得税等確定申告書においては,自身の職業を「不動産賃貸業」と記載していたことが認められる。 さらに,前記認定事実ア(キ),(ク),イ(ア)g,(イ)g,ウ(ア)c,(イ)b,(ウ)b及び証拠(乙30,43)によれば,原告は,平成25年6月から少なくとも平成27年12月まで,本件法人から札幌市(住所省略)等の土地の地代として月額17万5000円を収受していることが認められるところ,証拠(乙29)によれば,この 地代は,本件農地を含む,原告が所有権又は共有持分を有する土地の賃貸借契約に基づく賃料であり,その金額(年額)は,同土地の固定資産税評価額の2倍の金額を目安に定められたことが認められる。 以上の事実に照らせば,原告は,本件法人が設立された平成25 年6月7日頃,本件法人との間で本件農地を含む土地について賃貸借契約を締結し,その後,本件農地を本件法人に賃貸していたと認められる。 b 原告は,原告自身の平成25年分から平成27年分までに係る所得税等の確定申告書について,農地の地代を誤って収入に計上し, また,個人で申告すべき農業収入を誤って法人で申告していたなどとして更正の請求をしたほか,本件法人の平成26年5月期及び平成27年5月期に係る法人税等の確定申告書についても同様の理由に基づき修正申告をしているところ(乙37~39),これらの確定申告に関与したG税理士は,本件税務署に対し,「大変申し訳あ 月期及び平成27年5月期に係る法人税等の確定申告書についても同様の理由に基づき修正申告をしているところ(乙37~39),これらの確定申告に関与したG税理士は,本件税務署に対し,「大変申し訳あ りませんが,原告(X)の個人の申告及び(株)Bの法人申告につ いては,内容を全く見ずに提出したと言わざるを得ません。」と供述する(乙29〔4枚のうち3枚目〕)。 しかしながら,従前の取扱いを引き続き行う場面における確定申告と異なり,本件法人を設立し,原告の職業の記載や収入について取扱いを変更する内容を含む確定申告を行う際に,税理士がその確 定申告書の内容を確認していないとは考え難い。また,原告は,同税理士の事務所の担当者に対し,「納税猶予の特例を適用している農地を,(株)Bに貸付することは大丈夫か。」と確認したところ,「大丈夫」との回答を受けていた旨札幌国税局に説明していること(乙25〔3枚のうち2枚目〕)も勘案すると,原告及び本件法人 が当初提出していた各確定申告書の記載に上記の誤りがあったとは認められない(なお,原告の更正の請求及び本件法人の修正申告はいずれも認められていない。乙5,6,27,34,40~42)。 c また,原告は,本件農地に係る前記賃貸借契約は農地法3条1項の許可がなく私法上無効であるから,本件法人が本件農地を使用し ていたとはいえないと主張する。 しかしながら,原告及び本件法人において,農地法3条1項の許可がなくとも本件農地の賃貸借契約を有効なものとして取り扱っているのは前記aのとおりであって,原告が本件特例農地等における農業経営を廃止したか否かについては,上記事実関係を踏まえた農 地の使用状況等の実情を考慮して判断すべきであるから,原告の上記主張を採 のは前記aのとおりであって,原告が本件特例農地等における農業経営を廃止したか否かについては,上記事実関係を踏まえた農 地の使用状況等の実情を考慮して判断すべきであるから,原告の上記主張を採用することはできない。 (イ) 農耕作業に要する物品等についてa 前記認定事実ア(イ)~(カ)によれば,原告は,本件法人との間で,平成25年7月及び8月頃,本件各農業用資産の譲渡契約を締結し, 本件各農業用車輌の所有者及び使用者を変更する手続をとるととも に,当該譲渡により生ずる所得を平成25年分所得税等確定申告書により申告するなどしていたことが認められる。また,前記認定事実ア(エ)~(カ),イ(ア)i,(イ)i及び証拠(乙20の1〔9/29頁〕,21の1〔10/31頁〕)によれば,本件法人は,農業用倉庫及び農業用農舎について,平成26年度から平成28年度まで の固定資産税等の納税義務者となり,アスファルト舗装,トラクター,除雪機及び乗用車については取得価格を平成26年5月期,平成27年5月期の「旧定率法・定率法による固定資産減価償却内訳明細書」に資産として計上し,これらの資産の減価償却費を費用として計上して損金の額に計上している上,農業用倉庫及び農業用農 舎の譲受け対価を原告に支払うことが確定したとして,「平成25年分不動産等の譲受けの対価の支払調書」を税務署長に提出したことが認められる。これらの事実によれば,原告は,本件法人に対し,平成25年7月及び8月頃,農業を実際に行うに当たって重要な役割を果たす本件各農業用資産を売却していたことが認められる。 b これに対し,原告は,本件農業用資産の譲渡契約は錯誤を理由として無効となっていると主張する。そしてこれを裏付ける証拠とし たす本件各農業用資産を売却していたことが認められる。 b これに対し,原告は,本件農業用資産の譲渡契約は錯誤を理由として無効となっていると主張する。そしてこれを裏付ける証拠として,①原告が本件法人に対して本件農業用資産の譲渡契約が錯誤により無効である旨を通知する平成28年6月22日付け「錯誤無効通知書」(乙26の1)と,②上記契約が当事者双方の錯誤による ものであり,「本来は当事者双方に譲渡の意志が存在していない」こと,本件法人が同通知書の内容を認めること等を内容とする,原告と本件法人との間の「売買契約錯誤による所有権回復についての合意書」(乙26の2)がある。しかしながら,上記通知書は,原告の相続税に係る納税猶予の特例に関し,同年4月に本件特例農地 等の利用状況等の事実確認が行われた(前記前提事実⑶イ)後に作 成されたものであり,上記合意書は更にその後に作成されたことが明らかであるところ,上記事実確認以前に上記譲渡が錯誤によるものであったことや当事者間に譲渡の意思がなかったことを示す証拠は見当たらず,このことからすれば,これらの文書については,農地等納税猶予の期限が確定したとの判断がされることを避ける目的 で事実に反して作成された可能性を否定することができない。そうすると原告の上記主張を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。 また,原告は,本件農地における耕作に用いられていた豆テーラーや培土機を本件法人に譲渡せず自身で所有している旨主張するが, 仮に原告がこれらの機械を自身で所有したまま農耕作業に使用していたとしても,原告は自身が行う本件法人の農耕作業において私物を使用したとも評価し得るのであって,この事情をもって直ちに原告が農業経営を行っていたことを裏付 械を自身で所有したまま農耕作業に使用していたとしても,原告は自身が行う本件法人の農耕作業において私物を使用したとも評価し得るのであって,この事情をもって直ちに原告が農業経営を行っていたことを裏付けるものということはできない。 b また,農耕作業には種苗や肥料・農薬が必要であるところ,前記認定事実イ(ア)b,e,f,(イ)b,e,fによれば,本件法人は,平成26年5月期以降,これらを購入していたことが認められる。 c 以上のとおり,農業のための設備,農機具類,種苗や肥料・農薬等の農耕作業に要する物品等については,遅くとも平成26年5月 期においては,原告から本件法人に譲渡され,又は本件法人が新たに購入するなどしていたということができる。 イ生産物の販売状況,生産物の売上げの帰属状況について(ア) 前記前提事実ア(ケ),イ(ア)a,(イ)a,d,fによれば,本件法人は,平成26年5月期及び平成27年5月期の法人税申告書において, 農業収入を計上したりにらの売上げを売掛金に計上したりするなどし, また,平成26年8月以降とうきび(とうもろこし)や芋などを販売して収入に計上するなどもしており,平成27年5月期には野菜の出荷用段ボールを購入していたことも認められる。一方,前記認定事実ウ(イ)a,(ウ)aによれば,原告は,平成26年分所得税等確定申告書及び平成27年分所得税等確定申告書において,自らの職業を不動産 賃貸業とした上で,農業収入を計上していないことが認められる。 (イ) 原告は,本件農地における売上げが帰属すべき農業経営者は原告であると主張し,これを裏付ける証拠として,「C」JAとの間で締結したそ菜の生産に関する協定書(甲6)及び札幌市農業委員会会長の作 (イ) 原告は,本件農地における売上げが帰属すべき農業経営者は原告であると主張し,これを裏付ける証拠として,「C」JAとの間で締結したそ菜の生産に関する協定書(甲6)及び札幌市農業委員会会長の作成した農業経営証明書(甲7)を提出する。しかしながら,同協定 書の作成日は平成23年であって(甲6),本件法人設立後の取扱いを記載したものではない。また,上記証明書は,本件特例農地等における農業従事者が原告であることについて,原告からの申出及び農地台帳により農地法の許可申請等がされていないことのみをもって証明したものにすぎず,農地法の手続を経ない貸付けの有無等まで確認し た上で作成されたものではないところ(乙31〔3枚目,4枚目〕),前記ア(ア)cのとおり,原告が本件法人に対し本件農地を同法の許可なく貸していた旨主張していることを踏まえると,上記証明書をもって原告が本件特例農地等において実際に農業経営を行っていたと認めることはできない。したがって,これらの証拠に基づく原告の上記主 張を採用することはできない。 また,原告は,本件農地で生産された農作物のEとの直接取引及び「C」JAを通じた間接取引における販売名義はいずれも本件法人でなく原告であると主張し,これを裏付ける証拠としてE作成の「契約内容(一部)に関する証明書」(甲9)を提出する。しかしながら, 同証明書には,「X様と当社の間で締結している卸売受託契約」の当 事者が原告(X)とE(当社)であるという当然の内容が記載されているにすぎない。また,上記証明書は,原告とEとの間の農協を通さない直接取引に関するものと解されるところ(契約締結日として,直接取引の一番古い日付けとされる「平成9年5月26日」と記載されている。),Eの内部監査室チームリ 証明書は,原告とEとの間の農協を通さない直接取引に関するものと解されるところ(契約締結日として,直接取引の一番古い日付けとされる「平成9年5月26日」と記載されている。),Eの内部監査室チームリーダーであるHは,原告と直接 取引をしたのは平成23年4月30日が最後であると述べており(乙32〔2枚目〕),本件法人が平成26年5月期にEに対する売掛金を資産計上していること(前記認定事実イ(ア)d)からすると,上記証明書をもって,本件法人の設立後も原告がEと取引をしたことを認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。 さらに,原告は,「相続税の納税猶予に係る特例農地等の利用状況等回答書」(乙24)を提出していることが原告の農業経営を裏付けると主張するが,同回答書は相続税の納税猶予の適用を受けている農地の利用状況に関する原告の認識又は言い分を示すものにすぎず,その内容は直ちに実際の利用状況を示すものとはいい難いから,原告の 主張は失当である。 このほか,原告は,農作物を自家消費していることから農業経営を行っていると主張する。しかしながら,仮に原告が自家消費しているのであれば,農業所得として収入金額が計上されるべきところ,これがされていないことに加え,農作物を自家消費すれば直ちに農業を営 むと評価できるわけではないことは前述のとおりであるところ,原告が農業を営むと評価できる程度に農作物を自家消費していることを裏付ける証拠はないことからすれば,原告の上記主張を採用することはできない。 (ウ) 以上によれば,本件農地における生産物は,平成26年5月期以降, 本件法人が販売しており,その売上げは本件法人に帰属していたもの と評価できる一方,原告は,遅くとも (ウ) 以上によれば,本件農地における生産物は,平成26年5月期以降, 本件法人が販売しており,その売上げは本件法人に帰属していたもの と評価できる一方,原告は,遅くとも平成26年1月1日以降は,本件農地における生産物を販売していなかったものと認めるのが相当である。 ウ耕作の管理・態様について本件法人には従業員はなく,原告を除く役員は本件農地における耕作 作業を行っていなかったことは前記認定事実ア(ア)のとおりであって,本件農地については原告が実際に耕作を行っていたものと認められる。 もっとも,この点については,原告が営む農業のために行った場合と,本件法人が営む農業に従事していた場合があり得ることから,この事実をもって直ちに原告が農業経営を廃止したものということはできない。 エ本件法人の平成28年5月期及び平成29年5月期の法人税確定申告について原告は,本件法人の平成28年5月期及び平成29年5月期の各法人税の確定申告において農業所得が計上されていないところ,現時点において課税庁がこれに対して更正処分等を行っていないことを指摘するが, 更正処分は,その更正に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以降においてはすることができないと定められており(国税通則法70条1項),現時点において原告が指摘する各確定申告の法定申告期限から5年が経過していないのであるから,原告が指摘する事実によって課税庁の見解が明らかになるものではないから,上記事実をもって,本件 法人が農業経営を行っていないことや,原告が農業経営を廃止していないことの根拠とすることはできない。 オ小括前記ア及びイによれば,本件法人の設立後,本件農地における農業経営の主体は,農地の 業経営を行っていないことや,原告が農業経営を廃止していないことの根拠とすることはできない。 オ小括前記ア及びイによれば,本件法人の設立後,本件農地における農業経営の主体は,農地の使用状況,生産物の販売状況,生産物の売上げの帰 属状況等に照らして,原告から本件法人に移行したものとみるのが相当 であり,また,耕作作業の管理・態様については,前記ウのとおり,本件農地の耕作は実際には原告が行っているものの,前記ア及びイに照らせば,原告は本件法人が営む農業に従事していたものというべきである。 加えて,原告が平成26年分以降の所得税等の確定申告書において,職業を不動産賃貸業とし,農業収入を計上していないこと,平成26年以 降,原告が農作物を販売したことや農業を営むと評価し得る程度に自家消費をしていること事実を認めるに足りる証拠がないこと,本件特例農地等のうち本件農地が占める面積の割合は94%以上であること(前記前提事実ア)等にも照らせば,原告は,本件法人の設立後,遅くとも同年1月1日時点においては,本件特例農地等において事業として農業の 経営をしているということはできず,同時点において,農業相続人の事業としての農業経営を廃止したものと評価することができるから,農地等納税猶予に係る全部確定事由があるものと認めるのが相当である。 3 まとめ上記2のとおり,原告には全部確定事由が生じたと認められるところ,こ れによって猶予期限が確定した平成26年3月3日時点における原告の相続税の額及び利子税の額は別紙3-1記載のとおりであり,前記前提事実⑶オで税務署長が原告に対し通知し,前記前提事実⑶カで原告が納付した金額と同額であると認められる。 したがって,本件に関し,原告が納付した税額は全て法律上 -1記載のとおりであり,前記前提事実⑶オで税務署長が原告に対し通知し,前記前提事実⑶カで原告が納付した金額と同額であると認められる。したがって,本件に関し,原告が納付した税額は全て法律上の原因があるから,原告に過誤納金があると認めることはできない。 4 結論 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 森英明 裁判官 網田圭亮 裁判官 鈴鹿祥吾 (別紙1省略)(別紙3省略)(別紙2-1) ○ 租税特別措置法(平成 年法律第 号による改正前のもの)(措置法) (農地等についての相続税の納税猶予等) 第七十条の六 農業を営んでいた個人として政令で定める者(以下この条において「被相続人」という。)の相続人で政令で定めるもの(以下この条において「農業相続人」という。)が、当該被相続人からの相続又は遺贈によりその農業の用に供されていた農地〔中略〕の取得〔中略〕をした場合〔中略〕には、当該相続に係る相続税法第二十七条第一項の規定による申告書(当該申告書の提出期限前に提出するも 〕には、当該相続に係る相続税法第二十七条第一項の規定による申告書(当該申告書の提出期限前に提出するものに限る。 以下この条において「相続税の申告書」という。 )の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該農地〔中略〕で当該申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるもの(当該農地及び採草放牧地については当該農業相続人がその農業の用に供するもの〔中略〕に限るものとし〔中略〕る。 以下この条において「特例農地等」という。 )に係る納税猶予分の相続税については、当該申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税の額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第三十三条の規定にかかわらず、納税猶予期限〔中略〕まで、その納税を猶予する。 ただし、当該農業相続人が、その納税猶予期限又は当該贈与があつた日のいずれか早い日(以下この条において「死亡等の日」という。 )前において次の各号のいずれかに掲げる場合に該 ずれか早い日(以下この条において「死亡等の日」という。 )前において次の各号のいずれかに掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号に定める日から二月を経過する日まで、当該納税を猶予する。 一 当該相続〔中略〕により取得をした特例農地等の譲渡、贈与〔中略〕若しくは転用〔中略〕があつた場合〔中略〕において、当該譲渡、贈与、転用若しくは設定又は消滅(以下この条において「譲渡等」という。 )があつた当該特例農地等に係る土地の面積〔中略〕が、当該農業相続人のその時の直前における当該取得をした特例農地等に係る耕作又は養畜の用に供する土地〔中略〕の面積〔中略〕の百分の二十を超えるとき。 その事実が生じた日 二 当該相続〔中略〕により取得をした特例農地等に係る農業経営を廃止した場合 その廃止の日 ないし 〔略〕 第一項の場合において、同項の規定の適用を受ける農業相続人が次の各号〔中略〕のいずれ し 〔略〕 第一項の場合において、同項の規定の適用を受ける農業相続人が次の各号に掲げる場合に該当することとなったとき(その該当することとなった日前に第一項ただし書の規定の適用があった場合を除く。)は、当該各号に定める相続税は、政令で定めるところにより、免除する。 一ないし三 〔略〕 四 当該農業相続人がその被相続人からの相続又は遺贈により取得をした第一項の規定の適用を受ける特例農地等の当該取得に係る相続税の申告書の提出期限の翌日から二十年を経過した場合 同項に規定する納税猶予分の相続税(別紙2-2) ○ 租税特別措置法施行令(平成年政令第号による改正前のもの)(施行令) (農地等についての相続税の納税猶予及び免除等) 第四十条の七 法第七十条の六第一項に規定する農業を営んでいた個人として政令で定める者は、次に掲げる者のいずれかに該当する者 第一項に規定する農業を営んでいた個人として政令で定める者は、次に掲げる者のいずれかに該当する者〔中略〕とする。 一 その生前において有していた法第七十条の六第一項に規定する農地〔中略〕につきその死亡の日まで農業を営んでいた個人 二 〔略〕 法第七十条の六第一項に規定する被相続人の相続人で政令で定めるものは、次に掲げる者のいずれかに該当する者であることにつき大蔵省令で定めるところにより農業委員会が証明した者〔中略〕とする。 一 当該被相続人からの相続〔中略〕に係る法第七十条の六第一項に規定する相続税の申告書の提出期限までに当該相続〔中略〕により取得した同項に規定する農地〔中略〕に係る農業経営を開始し、その後引き続き当該農業経営を行うと認められる者 二 〔略〕 ないし 〔略〕(別紙2-3) ○ 租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて(法令解釈通達) (農業を営む個人等)70の4-6 措置法第70条の4第1項に規定する「農業を営む個人」とは,耕作又は養畜の行為 ○ 租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて(法令解釈通達) (農業を営む個人等)70の4-6 措置法第70条の4第1項に規定する「農業を営む個人」とは,耕作又は養畜の行為 を反復,かつ,継続的に行う個人をいう。したがって,個人が耕作若しくは養畜による生産物を自家消費に充てている場合又は会社,官庁等に勤務するなど他に職を有し若しくは他に主たる事業を有している場合であっても,その耕作又は養畜の行為を反復,かつ,継続的に行っている限り,その者は農業を営む個人に該当する。 なお,同項に規定する受贈者が措置法令第40条の6第6項第3号の規定による農業経営を 行う者に該当するかどうかについても,これと同様とする。(平17課資2-7,平21課資2-9,平26課資2-12,課審7-17,徴管6-25改正)(注) 上記により,住居及び生計を一にする親族の2人以上の者が,農業を営む個人に該当する場合には,それらの者が所得税の課税上農業の事業主となっているかどうかは問わないのであるから留意する。 (農業経営を行う者)70の6-8 措置法令第40条の7第2項第1号に規定する「農業経営を開始し,その後引き続き当該農業経営を行うと認められる者」(以下「農業経営を行う者」という。)に該当するかどうかを判定する場合における農業経営を行う者の意義については,70の4-6((農業 を営む個人等))を準用する。

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