- 1 - 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して300万円及びこれに対する令和3年12月17日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が、被告らに対し、被告日刊現代が発行するタブロイド紙及び被告日刊現代の開設するウェブサイトにおいて被告Aによる原告に関する発言 が掲載され、原告の社会的評価が低下した旨主張して、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料300万円及びこれに対する不法行為の日である令和3年12月17日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(括弧内に証拠等を記載した事実以外は争いがない。) ⑴ 当事者等ア原告は、大阪府在住の弁護士である。原告は、人気テレビ番組に出演して知名度が高まった後、平成20年2月、大阪府知事に就任し、同知事を辞職した後の平成23年12月、大阪市長に就任した。また、原告は、政党「日本維新の会」代表及び政党「おおさか維新の会」代表の地位にあっ たが、平成27年12月、大阪市長及び上記「おおさか維新の会」代表を退任した後、複数のメディア等でコメンテーターとして活動している。 イ被告Aは、政党「れいわ新撰組」所属の衆議院議員である。 ウ被告日刊現代は、タブロイド紙である「日刊ゲンダイ」を発行し、その記事等を転載した「日刊ゲンダイDIGITAL」を開設している。 ⑵ 本件の記事 - 2 - 被告日刊現代は、令和3年12月17日、「日刊ゲンダイ」及び「日刊ゲンダイDIGITAL」に、「「日曜討論」で糾弾した AL」を開設している。 ⑵ 本件の記事 - 2 - 被告日刊現代は、令和3年12月17日、「日刊ゲンダイ」及び「日刊ゲンダイDIGITAL」に、「「日曜討論」で糾弾したれいわ・被告A議員を直撃 B府政の問題点とやり口、C政権どう見る?」と題し、被告Aに対する質問及びこれに対する被告Aの発言等を内容とするインタビュー記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。本件記事のうち、「B府政の人気が高い のはテレビの影響」という小見出しの下に記載がされている箇所には、以下の被告Aの発言内容が含まれている。 ① D元知事は気に入らないマスコミをしばき、気に入らない記者は袋叩きにする、ということを丁寧にされていました。新聞社に対しても「あの記者どうにかせぇ」「あの記者やったら、おたくは外す」と。その代わり、 「言うこと聞くんやったら、特別の取材させてやる」とか。それはやっちゃだめでしょということまで平気でやっていた(以下「本件発言1」という。)。 ② 飴と鞭でマスコミをDV(ドメスティック・バイオレンス)して服従させていたわけです。現場には真実を報道しようしている記者もいますが、 多くの社は幹部が腰抜け。だから取材しても、ああやっぱり記事にならんかったな、ということは多いですね(以下「本件発言2」といい、本件発言1と併せて、「本件各発言」という。)。 ⑶ 本件各発言は公共の利害に関する事実に係るものである。また、公益を図る目的で本件各発言が報道された。 2 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 本件各発言による摘示事実及び原告の社会的評価の低下についてア原告本件発言1は、①原告が大阪府知事であった当時、気に入らないマスコミに対し、言論を超えた不当な有形力を行使 ⑴ 本件各発言による摘示事実及び原告の社会的評価の低下についてア原告本件発言1は、①原告が大阪府知事であった当時、気に入らないマスコミに対し、言論を超えた不当な有形力を行使し、気に入らない記者には集 団的組織的に詰問及び攻撃を行った事実、②新聞社に対し、その立場を利 - 3 - 用して、「(気に入らない)あの記者をどうにかせぇ」、「(気に入らない)あの記者やったら、おたくは外す」と発言して民間企業の人事に口出しをした事実、③取引的に、「言うこと聞くんやったら、他のメディアでは認めていない特別の取材させてやる」と発言して自分の意に沿う記者や報道にするなら特別の便宜を図るという利益供与を持ち掛け、不公平かつ不公正な メディア対応をするとともに意のままにメディアを操っていた事実を摘示するものである。 本件発言2は、④上記①ないし③の原告のメディア対応により、メディアが本来報道すべき記事を取り下げたことが多かった事実を摘示するものである。仮に、本件発言2が事実を摘示するものでない論評であるとし ても、原告を侮辱するものである。 原告は、弁護士及びコメンテーターとして、マスコミによる取材活動の自由は可能な限り保証されるべきとの信条を有しているとの肯定的社会評価を得ているところ、本件各発言は、原告が、マスコミに対して人事介入などの不当な圧力を加えて報道の自由を侵害することにより自己への 批判を封じる一方、マスコミと癒着し、もって一般有権者の知る権利や政治的意思決定の自由を侵害する者であると印象付け、原告の社会的評価を著しく低下させる。 イ被告A本件記事は、被告Aの政権及び府政に関する意見を報じることを趣旨と し、特定の人物の特定の言動を 害する者であると印象付け、原告の社会的評価を著しく低下させる。 イ被告A本件記事は、被告Aの政権及び府政に関する意見を報じることを趣旨と し、特定の人物の特定の言動を報じるものでなく、本件各発言には具体的な日時、場所、個人名などが表れていないことなどから、本件各発言は、事実を摘示するものでなく、意見又は論評に当たる。 すなわち、本件発言1は、原告が大阪府知事及び大阪市長の地位にあった当時、被告Aが直接見聞きした原告の言動及びSNSやテレビ番組にお ける原告の言動について、原告の意に沿わない報道機関には取材から排除 - 4 - するという不利益を与え、逆に原告の意に沿う報道機関に対しては取材に応じるという形で利益を与えるのは公職にあるものとして許されるものではない旨の意見を述べ、論評したものである。また、本件発言2は、原告の言動は、原告が飴と鞭を使い分けて意のままに服従させるDVの構造と酷似している旨、すなわち、原告の意に沿わない報道機関の取材を受け ないという不利益を与え、それを解除することが利益であるかのように錯覚させる一方、原告の意に沿う報道機関に対しては意に沿わない報道機関に比べて有利な取扱いをするなどして、報道機関を意に沿うように支配していた旨の評価ないし論評をするものである。 原告は、大阪府知事及び大阪市長の当時、原告の意に沿わない記者及び メディアに対して不利益を与え、原告に従順な記者及びメディアには有利な取扱いをするという社会的評価を受けたが、公職を退いたことにより同評価に影響がないから、本件各発言により原告の社会的評価は低下していない。 ウ被告日刊現代 本件発言1は、大阪府知事又は大阪市長の地位にあった原告が、 退いたことにより同評価に影響がないから、本件各発言により原告の社会的評価は低下していない。 ウ被告日刊現代 本件発言1は、大阪府知事又は大阪市長の地位にあった原告が、新聞社に対し、問題があると感じた記者について相応の対応をするよう求めた事実、仮に、そのような対応がとられないなら、その新聞社の取材は受けない旨述べたとの事実、これが容れられた場合、複数のメディアが参加する定例記者会見のような通常の場でなく、別の場で取材を受けることなどを 示唆した事実を摘示したものであるが、これらの言動は違法又は不当なものとはいえない。 本件発言2は、上記各事実を前提として、「飴と鞭」、「DV」といった比喩的な表現を用い、原告のマスコミに対する対応に関する被告Aの意見又は論評が表明されたものである。 原告は、多数のテレビ番組に出演して知名度を高め、政治家に転身し、 - 5 - 定例記者会見において記者に対して厳しい言葉を発し、新聞社の取材を拒否したことなどが知られ、マスコミ対応に長けた人物であるとの社会的評価を受けていたから、上記各事実が摘示されたことにより社会的評価が低下することはない。 ⑵ 真実性及び相当性の抗弁の成否 ア被告A本件各発言が前提とする事実は、以下のように、原告による意に沿わない報道機関及び記者を攻撃し、意に沿う報道機関に利益を与えるなど報道機関を不平等、不公平に扱って利用したのであるから、重要な部分において真実である。また、被告Aは、下記①、②及び⑤を現認し、下記③、④ 及び⑥については公表され、その根拠を疑うべき理由がなかったから、本件各発言の前提となる事実の重要な部分を真実であると信じるについて相当な理由があった。したがっ ②及び⑤を現認し、下記③、④ 及び⑥については公表され、その根拠を疑うべき理由がなかったから、本件各発言の前提となる事実の重要な部分を真実であると信じるについて相当な理由があった。したがって、本件各発言は違法性を欠くか、被告Aには故意又は過失がない。 すなわち、①原告(当時大阪府知事)は、平成23年2月1日、朝日放 送の番組「ニュースゆう+」において、司会者及びコメンテーターが、E記者による原告に対する取材への説明が不十分である旨述べたことについて不満を持ち、同月2日まで、自身のSNSにおいて、同番組、その司会者及び記者らを批判する投稿を繰り返す一方、在阪の他3局の番組を称賛し、意に沿わない報道をするテレビ局からの取材を拒否すると示唆した。 同番組の司会者は、同日、原告に対し、取材を申し入れて謝罪したところ、原告は、同番組が反省して間違いを認めた旨投稿し、同番組に対する批判的投稿を止めた(乙1)。 また、②原告(当時大阪市長)は、平成24年9月25日及び26日、自身のSNSにおいて、異なる意見を持つ朝日新聞社のF記者に対する批 判的投稿を繰り返した上、同新聞の他の記者からの取材も受けない旨を投 - 6 - 稿したが、同日、上記記者がSNS上で原告に対して謝罪したのを受け、朝日新聞社の記者から取材を受ける旨を表明した(乙2)。 さらに、③原告(当時大阪市長)は、同年5月8日、記者会見において、毎日放送のH記者の質問に対して激高し、約25分間にわたり、同記者に対する攻撃的言動を続け、原告の意に反する質問に対する強い委縮効果を 与えた(乙3、4)。 ④原告(当時大阪府知事)は、平成20年2月8日、NHK放送局への到着が遅れた際、同局アナウンサーから30分遅刻をしたと指摘されたことに激高し、翌 対する強い委縮効果を 与えた(乙3、4)。 ④原告(当時大阪府知事)は、平成20年2月8日、NHK放送局への到着が遅れた際、同局アナウンサーから30分遅刻をしたと指摘されたことに激高し、翌9日、同局のスタジオ収録には出演しないとの考えを示し、意に沿わない報道機関に不利益を与えることを示唆した(乙6)。 他方、上記①のとおり、自己に都合の良い在阪の3局の番組については出演協力することを印象付け、⑤原告(当時大阪市長)は、平成26年4月、読売テレビの番組「Gのそこまで言って委員会」に政治家として単独で約90分間も出演し、同番組では、原告の所属政党が進める一方で政治的に対立がある大阪都構想が取り上げられ、「祈・大阪府構想」などと書か れたケーキが贈られ(乙8)、⑥仲の良い記者には移動車に同乗させるという特別な取材をさせる(乙24、25)など、原告に対して肯定的評価をするメディアとは親密な関係を築いた。 イ被告日刊現代以下のとおり、原告は、記者に問題があると感じた場合、当該記者個人 でなく新聞社を攻撃して相応の対応を求めるなど、問題を認識した場合に会社又はメディアとして相応の対応を求め、自身の意が受け入れられると矛を収めて特別に取材に応じ、原告に取材ができる特権が与えられたかのような認識を生じさせてメディアを利用していたから、本件各発言において摘示された事実のうち重要な部分は、いずれも真実であり、少なくとも 被告日刊現代は、真実であると信じるについて相当な理由があった。した - 7 - がって、本件各発言を掲載した行為は違法性を欠くか、被告日刊現代には故意又は過失がない。 ①原告(当時大阪府知事)は、平成23年2月頃、朝日放送の番組「ニュースゆう+」が原告の大阪都構想に関 がって、本件各発言を掲載した行為は違法性を欠くか、被告日刊現代には故意又は過失がない。 ①原告(当時大阪府知事)は、平成23年2月頃、朝日放送の番組「ニュースゆう+」が原告の大阪都構想に関して行った報道内容に不満を持ち、SNSにおいて、同番組、その司会者及び記者らを批判する多数の投稿を し続けて相応の対応を求め、同番組の司会者や他の記者が原告に弁明せざるを得ない状況とした。その上で同番組の司会者は、原告に対して取材をしたところ、原告は、同番組が反省して間違いを認めた旨投稿し、同番組に対する投稿を止めた(丙1)。 ②原告(当時大阪市長)は、平成24年5月頃、囲み取材において、毎 日放送の女性記者から、府立学校教職員に国歌斉唱時の起立斉唱を義務付ける条例に関する質問を受け、同記者に対し、声を荒げ、感情むき出しにしてつるし上げたところ、その状況がインターネット上に投稿された上、SNSにおいて上記取材に言及し、原告に楯突くと同様の目に合うことを知らしめ、他の記者らを委縮させた(丙1)。 ③原告(当時大阪市長)は、平成24年10月頃、朝日新聞出版が発行する「週刊朝日」に原告に関する記事が連載されたことを受け、同出版社に抗議するにとどまらず、約1か月にわたり、親会社である朝日新聞社及び関連会社である朝日放送に対する取材をも拒否し、相応の対応を求めた。 これを受け、朝日新聞出版の幹部らは、大阪市役所を訪問し、原告に謝罪 して反省の弁を述べる事態となり、原告は取材拒否を終了した(丙1)。 ④原告(当時大阪市長)は、維新の党の顧問として同党に指示し、同党の看板政策である大阪都構想に反対する教授を番組に出演させないよう要望する文書を大阪のテレビ局に送付して圧力をかけた(丙2ないし4)。 ⑤原告(当時大阪市長)は、平成2 顧問として同党に指示し、同党の看板政策である大阪都構想に反対する教授を番組に出演させないよう要望する文書を大阪のテレビ局に送付して圧力をかけた(丙2ないし4)。 ⑤原告(当時大阪市長)は、平成24年9月、異なる意見を持つ朝日新 聞社のF記者の言動を問題とし、他の朝日新聞社の記者からの取材も受け - 8 - ないとすることで、朝日新聞社に相応の対応を求めた。 ⑥原告は、フリージャーナリストの取材を受けないが、大手メディアの取材には対応して自身の広報機関のように利用する一方、大手メディアには原告に取材ができる特権が与えられたかのような認識を生じさせた(丙5)。 ウ原告原告は、大阪府知事及び大阪市長の地位にあった約8年間、週1回の定例会見に加え、毎日の登庁退庁時やイベント及び会議後にも記者からの質問がなくなるまで取材に応じるなど適切なメディア対応を行っていた。 確かに、原告は、朝日放送の報道内容に関してSNSに投稿をしたり、 朝日新聞社の記者からの取材を受けないことを決めたりしたことがあるが、そのような原告の言動は、膨大なマスコミ対応のうちの数例にすぎないし、原告は、新聞社を含むメディアに対し、特定の記者等に関する処遇や対応を求めたこと、メディアを委縮させたこと、利益供与を持ち掛けたことなどはない。なお、原告は、フリージャーナリストよりもマスメディ アからの取材対応を優先しなければならないこともあったが、原告から特権を与えられたと受け止めるマスメディアは皆無であった。 したがって、本件各発言の摘示した事実の重要な部分は真実でなく、また、被告らはそのことを容易に知ることができた。 ⑶ 損害額 ア原告原告は、本件各発言により、一般人、弁護士及びコメン 各発言の摘示した事実の重要な部分は真実でなく、また、被告らはそのことを容易に知ることができた。 ⑶ 損害額 ア原告原告は、本件各発言により、一般人、弁護士及びコメンテーターとしての社会的評価を著しく低下させるものであるが、本件各発言は、多数の読者がいるポータルサイトにも取り上げられており、極めて広く伝播拡散した。これによる原告の精神的苦痛を慰謝するのに必要な金額は300万円 を下らない。 - 9 - イ被告A否認ないし争う。 ウ被告日刊現代否認ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 本件各発言による摘示事実及び原告の社会的評価の低下について⑴ 新聞記事が、事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものかについては、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断するべきである。すなわち、当該記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について、そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解し た場合には、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張しているものと直ちに解せないときにも、当該部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し、当該部分が、修辞上の誇張ないし強調を行うか、比喩的表現方法を用いるなどしつつ、間接的ないしえん曲に上記事項を主張するものと理解される ならば、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である。また、上記のような間接的な言及は欠けるにせよ、当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述の前提として前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分は、やはり、事実を摘示するものとみる 間接的な言及は欠けるにせよ、当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述の前提として前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分は、やはり、事実を摘示するものとみるのが相当である。(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号 3804頁参照)⑵ 以上を本件各発言についてみると、次のとおり言うことができる。 本件記事の表題、その全体の内容(甲1)、本件各発言の直前にある小見出し及び本件各発言の内容(前提事実⑵)等に照らし、本件記事は、全体として野党に属する衆議院議員である被告Aが大阪府政及び政府に対する批判的 な意見ないし論評を表明することを目的とするものであり、その中で、本件 - 10 - 各発言は、大阪府政の人気の高さがテレビや報道の影響である旨の意見の理由ないし背景事情として大阪府知事等の公職の地位にあった原告の言動に言及するものであることが読み取れる。もっとも、本件発言1には、原告の言動として「マスコミをしばき」、「記者は袋叩きにする」などの表現が、本件発言2には、これらの原告の言動を「飴と鞭でマスコミをDV(ドメスティ ック・バイオレンス)して服従させていた」と言い換える表現があるところ、本件発言1にある上記各行為の日時、場所等が特定されておらず、公職の地位にあった原告がマスコミ関係者に対して暴行等の犯罪行為をしたというのは現実的でないこと、本件発言2にある「飴と鞭」は権力者の支配及び懐柔方法を評する典型的な比喩的表現方法であり、DVは一般に配偶者などの親 密な関係にある個人を被害者とする暴力等であって、報道機関がDVの被害者になることが想定し得ないことなどを踏まえると、上記各表現は原告が字義通りの言動をしたことを述べるものでなく、原告の言動に関 密な関係にある個人を被害者とする暴力等であって、報道機関がDVの被害者になることが想定し得ないことなどを踏まえると、上記各表現は原告が字義通りの言動をしたことを述べるものでなく、原告の言動に関する修辞上の誇張ないし比喩的表現方法であると解するのが合理的である。このように、本件各発言は、大阪府政の人気の高さがテレビや報道の影響である旨の意見 の理由ないし背景事情として、誇張や比喩的表現を交えて公職の地位にあった原告の言動に言及するものであることを踏まえ、本件各発言の内容を総合的に考慮すると、本件発言1において、①公職の地位にあった原告がその意に沿わない報道機関及び記者に対して攻撃的な対応及び取材を拒否するなど不利な対応をした事実(以下「本件摘示事実1」という。)並びに②報道機関 及び記者がその意に沿う行動をとった場合には特別な対応をする姿勢を示した事実(以下「本件摘示事実2」といい、本件摘示事実1と併せて、「本件各摘示事実」という。)がそれぞれ間接的ないしえん曲的に摘示された上で、これを基礎として、「やっちゃだめでしょ」と、原告の報道機関等に対する対応が許されない旨の意見ないし論評が表明され、これに続く本件発言2の第1 文において、上記対応がDVにおける服従関係に類似する旨の意見ないし論 - 11 - 評が表明されたものといえる。 なお、本件発言2の第2文及び第3文は報道機関に関する表現であり、原告に関する事実摘示又は意見ないし論評とはいえない。 ⑶ これに対し、原告は、前記第2の2⑴アのとおり主張するが、前記⑵のとおり本件各発言には原告の言動が修辞上の誇張ないし比喩的表現方法を用い て表現されているから、その字義どおり、原告がかぎ括弧内の言葉を発言した事実が摘示されたと解することはできないし、 記⑵のとおり本件各発言には原告の言動が修辞上の誇張ないし比喩的表現方法を用い て表現されているから、その字義どおり、原告がかぎ括弧内の言葉を発言した事実が摘示されたと解することはできないし、民間企業の人事介入、取引的な利益供与、メディアを操っていた事実を摘示したとまで読み取ることはできず、原告の上記主張を採用することはできない。 他方、被告Aは、前記第2の2⑴イのとおり主張するが、本件記事の趣旨 や本件各発言の内容を踏まえても、本件各発言が原告の言動に関する事実が表現されているとみられるのは前記⑵のとおりであり、被告Aの上記主張を採用することはできない。 ⑷ 原告は、平成20年以前から知名度が高く、同年から約8年間にわたり大阪府知事及び大阪市長の公職を務めた後、現在はコメンテーターとして活動 している弁護士であるところ(前提事実⑴ア)、前記⑵を前提とすると、本件各発言は、本件各摘示事実により、原告が公職の地位にあった当時、報道機関等に対して不公平ないし不平等な対応をしたとの印象を与えた上、それが許されず、DVに類似するものである旨の意見ないし論評により、原告の対応の悪質さを印象付けるものであり、原告の社会的評価を低下させる。 これに対し、被告らは、原告はおおむね本件各発言のとおりの社会的評価を既に受けていたことなどから、本件各発言により、原告の社会的評価が低下しない旨主張するが、原告の経歴、活動内容等に照らし、原告は多様な社会的評価を受けていることがうかがわれるから、被告らの上記主張を採用することはできない。 2 真実性及び相当性の抗弁について - 12 - ⑴ 認定事実後掲の証拠によれば、次の事実が認められる。 ア朝日放送に対する対応原告(当時大阪府知事 。 2 真実性及び相当性の抗弁について - 12 - ⑴ 認定事実後掲の証拠によれば、次の事実が認められる。 ア朝日放送に対する対応原告(当時大阪府知事)は、平成23年2月1日から同月2日にかけて、自らのSNS上で、多数回にわたり、朝日放送の番組「ニュースゆう+」 について、取材を受けて約90分間大阪都構想について説明したにもかかわらずその部分は放送されなかった上、司会者及びコメンテーターから説明が足りないと言われたと主張し、他局では原告の説明を放送したことを引き合いに出しつつ、収録番組の取材を受けることを考え直すことを示唆し、上記番組の出演者及び取材記者について、最悪、勉強不十分、無責任 極まりない、「馬」だったのかなどと批判する投稿をした。 原告は、同日午後6時50分頃、自らのSNS上で、上記番組の司会者が改めて取材に来たところ、大阪都構想の説明に納得し、説明が足りないと言ったことに対して反省した旨投稿した後、上記番組を批判する投稿を行わなくなった。(以上につき乙1) イ H記者の取材への対応原告(当時大阪市長)は、平成24年5月8日、記者からの囲み取材において、H記者から、君が代の起立斉唱に係る職務命令について質問を受けた際、同記者に対し、敵意をあらわに質問し返した上、「事実関係を知らないのに取材するなって。」、「ふざけた取材すんなよ。」、「あまりにも勉強 不足。」、「どこの記者なんですか。」、「あなたみたいなとんちんかんな記者が事実関係も知らずわんわかわんわか吠えまくって」などと、H記者を批判する発言を複数回した。また、H記者の所属する毎日放送の別の記者に対し、事実関係を理解している他の記者から質問をするよう求めた。(乙3、4) ウ F記者に えまくって」などと、H記者を批判する発言を複数回した。また、H記者の所属する毎日放送の別の記者に対し、事実関係を理解している他の記者から質問をするよう求めた。(乙3、4) ウ F記者に対する対応 - 13 - 原告(当時大阪市長)は、同年9月25日から26日にかけて、自らのSNS上で、朝日新聞のF記者について、朝日新聞の記者の中で最悪に質が悪い、偏向思想丸出しと評するなど同記者を批判する投稿を複数回行った上で、態度を改めない限り、朝日新聞の記者に対しては、自らのSNSの投稿を基にした議論は行わない旨の投稿をした。 その後、原告は自らのSNS上で、F記者がSNS上で謝罪をしたため、以後、朝日新聞の記者から、これまでどおり原告のSNSの投稿を基にした取材を受ける旨投稿した。 また、原告は、同年10月11日頃、自らのSNS上で、維新の会の教育関連条例を批判するF記者の記事について、酷評する投稿を複数回した 上で、「便所の落書き以下ですね。」と評する投稿をした。(乙2)エ 「激撮!直撃!!スクープ」の内容原告は、令和2年2月11日に放送された毎日放送の番組「激撮!直撃!!スクープ」に出演した。同番組内では、同放送が、平成20年2月6日から同年4月30日まで、平日の情報番組において、I記者の原告に 対する取材内容を「けさのDさん。」と題するコーナーで報道していたこと、原告が次第に同記者と打ち解け、同記者を移動中の車に同乗させて取材することを許していたことが当時の映像と共に紹介された。(乙24、25)⑵ 検討ア事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する 事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について 5)⑵ 検討ア事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する 事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される。一方、ある事実を基礎としての意見 ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関 - 14 - する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきであり、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要 な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁平成17年6月16日第一小法廷判決・裁判集民事217号139頁参照)。 そして、本件各発言の公共性及び公益目的が満たされることから(前提事実⑶)、以下、その摘示事実の真実性及びこれを信ずることの相当性を検 討する。 イ本件摘示事実1についてみると、原告は、大阪府知事又は大阪市長の地位にあった当時自らの意に沿わない報道や質問をした報道機関及び記者に対し、多数回にわたり、公然と徹底的に批判した上、取材を受けない可能性を示唆したり、態度を改めない限り議論に応じない旨表明したりしてい る(前記⑴アないしウ)。したがって、本件摘示事実1は、その重要な部分について真実であるといえる。 ウ本 を受けない可能性を示唆したり、態度を改めない限り議論に応じない旨表明したりしてい る(前記⑴アないしウ)。したがって、本件摘示事実1は、その重要な部分について真実であるといえる。 ウ本件摘示事実2についてみると、原告は自らのSNS上において、意に沿わない報道をした報道機関の司会者及び記者が反省ないし謝罪をした旨を報告した後、多数回行っていた批判を取りやめ、又は取材に応じる姿勢 に転じるなどしている(前記⑴ア、ウ)のだから、原告は報道機関及び記者がその意に沿う行動をとったと考えた場合、不利な対応を改め、穏当な対応をするようになったといえる。他方、原告は、良好な関係を構築した記者に対しては、移動中の車に同乗させて個別の取材に応じるなどした(前記⑴エ)。そして、報道機関等にとって公職の地位にある者が取材に応じる ことは、有益であるし、取り分け、原告は、大阪府知事就任前から知名度 - 15 - が高く(前提事実⑴ア)、その就任直後から情報番組でその名を冠したコーナーが設けられる(前記⑴エ)など耳目を集める存在であったことがうかがわれるから、報道機関にとって上記のように原告から個別の取材に応じてもらえることは好都合であったということができる。 したがって、本件摘示事実2は、その重要な部分について真実であると いえる。 エ原告は、前記第2の2⑵ウのとおり主張するが、原告が丁寧かつ適切なメディア対応を行うことが通例であったとしても、前記⑴のような事実もあった以上、本件各摘示事実がその重要な部分について真実であったとの判断は左右されない。 ⑶ 小括本件発言1については、その摘示事実である本件各摘示事実が、その重要な部分について真実であり、これを基礎として本件発言1で表明された意見ないし論評 との判断は左右されない。 ⑶ 小括本件発言1については、その摘示事実である本件各摘示事実が、その重要な部分について真実であり、これを基礎として本件発言1で表明された意見ないし論評はその域を逸脱したものでないから、本件発言1は違法性を欠く。 また、本件発言2についても、原告の報道機関等に対する対応をDVに類似 するものと評するのが適切といえるかという点は措くとしても、原告の人身攻撃に及ぶものとまではいえず、本件各摘示事実を基礎とする意見ないし論評としての域を逸脱しないから、違法性を欠く。 よって、本件各発言について不法行為は成立しない。 第4 結論 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第25民事部裁判長裁判官小川嘉基裁判官岸田二郎 裁判官北岡佑太
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