平成18(行コ)14 違法公金支出返還請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成16年(行ウ)第1号)

裁判年月日・裁判所
平成19年4月20日 仙台高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文23,842 文字)

- 1 -主文 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用及び補助参加による費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴人主文同旨 被控訴人ら(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要事案の概要は,次のとおり原判決を訂正し,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「第2事案の概要等」欄記載のとおりであるから,(,(),これを引用するなお地方財政再建促進特別措置法措置法24条2項は本件寄附当時のものをいう。 。) 原判決の訂正(1)原判決5頁5行目の「中で」を「中での」と,9頁10行目,同頁11行目,同頁18行目,同頁20行目の「寄附申込者」をいずれも「助成金交付申請者」と,11頁3,4行目の「申込み」を「申込みの依頼」と,同頁8行目の「網膜色素編成」を「網膜色素変性」と,同頁14行目の「第101回日本外科学会総会資金寄付のご依頼」を「東北大学第一外科教室への御寄付のお願い」と,12頁6行目の「公益上の」を「公益上」と,16頁8行目の「主催」を「主宰」と,17頁3行目の「甲17」を「甲13」と,18頁3行目の「医局としての」を「医局としても」と,19頁20行目の- 2 -「教室委員会」を「教室員会」と,同行目の「研究委員会」を「研究員会」と,20頁1行目の「48万8848円」を「48万8884円」と,同頁14行目の「参加選考委員会」を「参加助成選考委員会」と,同頁21行目の専門員会を専門委員会と改め5頁19行目の学科の次に同「」「」,「」「(11条」を,同頁22行目の「称している」の次に「同14条」を,1 選考委員会」と,同頁21行目の専門員会を専門委員会と改め5頁19行目の学科の次に同「」「」,「」「(11条」を,同頁22行目の「称している」の次に「同14条」を,1)()8頁12行目,同頁15行目の「得ており」の次にいずれも「悪意の不当,利得者として」を付加し,19頁17行目の「仙台,20頁6行目の「行,」う,同頁18行目冒頭の「理事や」を削除する。 」(2)原判決12頁24行目冒頭から同行目の「原則禁止」までを「地方公共団体の国等に対する自発的寄附又は任意負担をも原則禁止」と改める。 (3)原判決15頁1行目冒頭の「もっとも」の前に「医局が権利能力なき,社団の実体を持つとは解されない」を付加する。 。 (4)原判決16頁2行目冒頭から同頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「証人P1は「大学には)診療,研究,教育と3つの大きな柱があるが,(たくさんの仕事をある程度効率よくやるためには両者(研究科と診療科)が共同でやらないといけない,そのための組織が医局である」と述べるが,それは,医局が特定分野における研究科と診療科の統合体と観念されるというにすぎず,それ以上に組織としての独自性は存在しない」。 (5)原判決17頁4行目の「東北大学の」から同頁11行目末尾までを次のとおり改める。 「これは,それまで寄附者は東北大学に寄附するにあたって大学からP2財団を通してくれと言われたからそうしてきたにすぎず,今後は奨学寄附金として直接大学に寄附してくれと言われて,そのとおりに変えたのである。そして,そのように寄附の受入れ方法を変えても大学の研究教育に特段の支障は生じておらず,それは,大学の研究科,診療科と医局が実質的には同一だからである。奨学寄附金も,医局が直接受け入れてきた研究助成金ないし研 のように寄附の受入れ方法を変えても大学の研究教育に特段の支障は生じておらず,それは,大学の研究科,診療科と医局が実質的には同一だからである。奨学寄附金も,医局が直接受け入れてきた研究助成金ないし研- 3 -究協力金も,あるいはP2財団からの指定研究助成金もその本質には全く違いはない」。 (6)原判決21頁14行目の「かかる」から次行目の「確認してから」までを「これと紛らわしい記載がある場合には,そのような寄附は受入れられない旨を伝え,寄附者の意図を確認し寄附目的を明らかにして」と改める。 控訴人及び控訴人補助参加人らの主張(1)争点①(本件寄附の相手方)ア財団法人P2は,東北大学や医学部同窓会とは全く別個の独立した法人であり,単なる寄附受入れの窓口などではなく,本件寄附はいずれもP2財団に対しなされたものである。 P2財団は(宮城)県民の医学知識の普及と地域社会の医療と健康の,増進に寄与すること等を目的として宮城県から認可された法人であるから,各種事業の対象は,原則として県民または県内の医療施設や医療従事者,研究者等である。それゆえ,国(現在は国立大学法人)は,もともとP2財団の事業対象とはなりうるはずがないし,国が負担すべき経費を財団が助成するということも絶対にあり得ない。 イ医学研究は,最終的には例外なく臨床医学(治療)への応用を目的としているから,医学研究に寄附を行う者は,自らの専門分野に直接間接にかかわりを持つ研究課題等を指定して寄附を行うことになるのは当然であり,研究課題の指定も,さらに外科的治療とか内科的治療と特定し,あるいは研究責任者を明示するなどして,寄附目的を明確にすることは,当然である。P2財団への寄附に際し,研究目的を具体的に指定したからといってP2財団が寄附の受入れ窓口に過ぎないということは 定し,あるいは研究責任者を明示するなどして,寄附目的を明確にすることは,当然である。P2財団への寄附に際し,研究目的を具体的に指定したからといってP2財団が寄附の受入れ窓口に過ぎないということはできないし,石巻市P3が研究者から正確な研究題目を確認した上,寄附したことも,P2財団を単に寄附金の受入れ窓口にしたことにはならない。 また,乙17の石巻市の決裁文書の綴り中の参加人P1のP2財団宛の- 4 -指定研究助成金交付申請書は,P4病院(市立病院)が寄附目的を記載する際に参考にするため,P2財団から写しの交付を受けたものと考えるのが合理的である。研究者が所属する医局や医学部あるいはP2財団が,寄附先に寄附を働きかけるなどということは,学会の場合を除き,あり得ない。 ウP2財団に寄附することは,納税者にとって所得税法及び法人税法施行令に定める寄附金控除を受ける利益がある。また,直接研究者に交付する場合と比較し,P2財団を通せば資金の流れを透明化できるし,P2財団の審査を経ることにより不適切な寄附を排除すること等が可能であるか,。 ,ら寄附者がP2財団に支出する合理的な十分な理由があるしたがってP2財団が単なるトンネル機関であり得るはずがない。なお,本件においては,寄附者である控訴人には納税上の利益はないが,寄附者が地方公共団体である場合のみを別異に解する理由はない。 (2)争点②(措置法24条2項の適用の有無)(医局と東北大学の関係)ア医局は,主に医学研究を目的として研究と診療を円滑に進めるための研究科(具体的には各分野)に属する職員や大学院生と,附属病院で診療に従事する常勤の医師,非常勤の医師らの任意の集団であるから,不特定の医師をも含み,研究科そのものではないし,附属病院の診療科とも東北大学とも別個の組織である。 る職員や大学院生と,附属病院で診療に従事する常勤の医師,非常勤の医師らの任意の集団であるから,不特定の医師をも含み,研究科そのものではないし,附属病院の診療科とも東北大学とも別個の組織である。 研究科の組織である臨床系講座(分野)の教官は,診療科を兼務し,研究,治療を目的としており,医局を構成する中心的存在である。さらに,臨床系講座に属する大学院生や研究生は研究科の職員ではないが,臨床医学教育,研究を目的として医局を構成している。診療科の医員(非常勤医師)や研修登録医は診療科の職員ではないが医学研究や医療技術の向上を目的として医局を構成している。そのほか,他院に所属する大学院生や研- 5 -究生,研修登録医や,同窓会員である開業医や勤務医等も医学研究や医療技術の向上を目的として医局費を支払って医局員となることができる。医局は,以上のように構成員からみても研究科や診療科とは別個であることは明らかである。 イ医局の機能として重要なものに医師の医学知識の向上と医療技術の研鑽及び地域医療への貢献があるが,医局による医師派遣は,これらのために必要不可欠である。この意味では,医局は一種の職能集団であり,診療科や研究科とは全く異なるものである。研究科の教授や診療科の科長には,東北大学とは法令上も組織上も全く別個の存在である地域医療機関に医師を派遣する権限などないことは疑問の余地がない。医局は,研究科とも診療科とも別個の任意の組織・集団であるからこそ,医局に所属する医師の派遣を効率的かつ円滑に進めることができるのである。 (),,(「」ウ校費運営費交付金奨学寄附金科学研究費補助金以下科研費という)は,大学により管理されているから,不特定かつ任意の医師の。 集団である医局が使用することなどあり得ないし許されない。活動資金が 校費運営費交付金奨学寄附金科学研究費補助金以下科研費という)は,大学により管理されているから,不特定かつ任意の医師の。 集団である医局が使用することなどあり得ないし許されない。活動資金が研究科や診療科と医局が同一ということはない。 エ医局の構成員である医局員は,大学院生はもちろんのこと,研究科の教官も,また診療科の医師も常勤・非常勤を問わず,すべて東北大学に在籍するものである。それゆえ,これらの者が国の研究施設を利用しているのは大学の在籍者としての身分に基づくものである。大学に在籍しない者が研究に参加することがあったとしても,これらの者は,在籍者の研究分担者か共同研究者である。また,大学の施設を有償無償その他どのような形で使用させるかという問題は,大学に在籍するか否かということとは当然には直結しない。したがって,施設利用の面から医局を大学と実体上同視することはできない。 オ医局は,定義づけると特に人的な範囲やその目的等においてあいまいな- 6 -集団であるが,他方,診療科や研究科の概念,特に人的な範囲や権限あるいは義務ないし職務の範囲などは明確になっており,これらの組織と医局を区別することは困難ではない。 (本件寄附の適法性)ア措置法24条2項の対象は,本来自己(国)の負担とすべき経費に限定されるべきであり,原判決もそのように説示しているが,それにもかかわらず,控訴人の設置する市立病院及びP3が平成14年度(一部平成13年度予算分を含む)にP2財団に対してした本件寄附について,国に対。 する寄附金と区別することが困難であり,国と地方の財政区分を混乱させ,。 るものであるとして同条項に違反するとした原判決の判断は誤りであるイ大学,特に医学部の臨床系講座における教官(職員)の職務は教育研究と病院における診療行為で ,国と地方の財政区分を混乱させ,。 るものであるとして同条項に違反するとした原判決の判断は誤りであるイ大学,特に医学部の臨床系講座における教官(職員)の職務は教育研究と病院における診療行為である。公務としての教育及び診療行為は明確であるが,研究活動は,公務としても私人としてでも可能である。研究活動は,せいぜい研究室が与えられ,研究に必要な最低限の研究施設や研究機材等を利用すること,その他,年に数回,公費で学会に参加すること等以外,どのような研究をどのような形で行うかといったことは,各研究者個人の裁量判断に全く委ねられている。国は,研究活動に対しては,科研費の制度を定め,研究に要する費用はもっぱら個々の研究者の申請による競争的研究資金である科研費と,民間からの国等に対する奨学寄附金をもって充てる制度を採用している。このことは,そもそも大学における研究費は,国が負担すべき経費ではないという建前を採っているということにほかならない。 P2財団から助成金を受取ってなされる参加人教授ら(控訴人補助参加人P1,同P5,同P6,同P7)の研究は,大学ないし国が本来的に必要経費を負担してなされるべきという性質のものではなく,第三者からP2財団に寄附がなされた上で,その寄附金でもって助成がなされて研究費- 7 -,。 ,に充てられるという性質のものであり任意になされたものであるまた控訴人もそのように理解していた。 したがって,参加人教授らの研究の必要経費について,本来的に大学ないし国が負担すべきであったということはできず,措置法24条2項の適用は問題となり得ない。 さらに,奨学寄附金も科研費も,診療科や研究科とは区別される研究者個人(グループ)に対するものであり,研究者が他の国立大学法人あるいは私立大学等に転出した場合は,当該転出先の大学 問題となり得ない。 さらに,奨学寄附金も科研費も,診療科や研究科とは区別される研究者個人(グループ)に対するものであり,研究者が他の国立大学法人あるいは私立大学等に転出した場合は,当該転出先の大学に寄附金ないし補助金を移動することが認められている。したがって,P2財団の研究者に対する研究助成金も国等に対する寄附金ということはできない。 なお,東北大学は,研究者が寄附を直接受けた場合は,これを国(国立大学法人)に寄附し,国はこれを大学に「委任経理金」として管理を委ねる事務処理を指導したが,これは,研究者が寄附金を外部から直接受けた場合は,これを受けた者から,さらに国(大学)に寄附をすること,その上で国(大学)から交付を受けて使うことというにすぎず,研究者が外部から直接寄附を受けることを禁じたものではないし,外部から研究者に対する寄附の存在を否定したものでもない。 ウ財団法人P8(以下「P8」という)は,大学とは別個の独立した組。 織であり,学会が開催する学術集会の開催のための経費を一部でも国または国立大学法人が負担するなどということはあり得ない。 学会開催のための事務は,学会本部事務局の指示のもとで,開催地に所在する大学の医局(関係者)が担当校や当番校と称して持ち回りで行うのが実態であり,第106回P8総会の担当校すなわち主催機関となった東北大学医学部眼科学教室は,同総会の主催者とは異なる。また「教室」,は「医局」とともに,国の組織である「研究科」や「診療科」と区別す,るために用いられる通称というべきものである。したがって,東北大学医- 8 -学部眼科学教室が主催機関ないしP8総会事務局の連絡先となったからといって,これに対する寄附を診療科ないし研究科に対する寄附と同視することなどできない。 市立病院から前記総会への助成を目的と 8 -学部眼科学教室が主催機関ないしP8総会事務局の連絡先となったからといって,これに対する寄附を診療科ないし研究科に対する寄附と同視することなどできない。 市立病院から前記総会への助成を目的としてなされた4月7日の寄附は,P8からのP2財団に対する研究助成依頼に基づき,P2財団が行った募金依頼に応じ,市立病院がP8の学術集会(総会)の開催資金を助成することを目的としてP2財団に行った寄附であり,何らの違法もない。 さらに,P8総会の開催費用は,本来国が負担すべきものではあり得ないから,措置法24条2項が適用される余地はない。 (3)争点③(本件寄附の私法上の効力)仮に,本件寄附が措置法24条2項に違反するとしても,その政治責任は別として,私法上有効に成立する。したがって,本件寄附の受領に法律上の原因がないとはいえない。 措置法24条2項は,地方財政法28条の2と立法趣旨を同じくする。地方財政法28条の2に違反する地方公共団体に対しては,地方自治法245条の4の規定による技術的な助言又は勧告などをするか,同法245条の5ないし7の規定による是正の要求,是正の勧告,是正の指示などをするとされており,地方財政法28条の2に違反する行為の効力が無効なものでないことを前提としていることは明らかである(最高裁平成15年11月14日(「」第二小法廷判決・裁判所時報1352号3頁以下平成15年最高裁判決という。 。))措置法24条2項は,地方財政法28条の2と立法趣旨を同じくするものであるから,その法的解釈も同一にされるべきであり,措置法24条2項違反の行為も,これが直ちに無効となるものではない。 また,最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁は,普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結し- 2項違反の行為も,これが直ちに無効となるものではない。 また,最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁は,普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結し- 9 -た契約の効力について,私法上当然に無効になるものではなく,当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える地方自治法及び同施行令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り,私法上無効になるものと解するのが相当であると判示している。本件寄附の支出も,仮に違法であったとしてもP2財団の職員はもちろん研究者の代表者として研究助成金を受けた教授らも,その支出が違法であることを知り,又は容易に知り得たとはいえず,私法上は有効というべきである。 被控訴人らの主張(1)争点①(本件寄附の相手方)市立病院及びP3は,本来受け入れ先である医局等に対して直接寄附すればよいはずであるのに,それができないのは措置法24条2項が存在するからにほかならず,P2財団を経由する本件寄附は同条項を潜脱するための方便であったことは明らかであり,違法である。 (2)争点②(措置法24条2項の適用の有無)(医局と東北大学の関係)補助参加人らは,医局が研究や診療行為の主体となるものでないことや国の研究施設の利用は大学の在籍者としての身分で使用するものであるから,医局と東北大学を同視することはできないと主張する。しかし,補助参加人らのこの主張は,医局員が実際に研究活動を行っていること及びその活動が医局,診療科,研究科のいずれの活動なのかが判然としていない実態,また大学の同じ研究施設を使用することが大学の在籍者としての使用なのか医局の研究活動としての使用なのかも判然としない実態を直視しない議論であり,失当である。 (本件寄附の違法性) としていない実態,また大学の同じ研究施設を使用することが大学の在籍者としての使用なのか医局の研究活動としての使用なのかも判然としない実態を直視しない議論であり,失当である。 (本件寄附の違法性)ア措置法24条2項にいう寄附金等とは,名目のいかんを問わずおよそ国等への利益供与一般と解すべきである。仮に適用範囲を本来自己の経費と- 10 -すべき金員に限定したとしても,同条項の立法趣旨にかんがみれば,以下のとおり本件寄附を同条項に反するとした原判決の判断に誤りはない。 原判決は,医局の組織内容が必ずしも明確ではないことや,医局,診療科,研究科の人的な区分も必ずしも明確でないことから,人的な構成や場所的同一性から診療科及び研究科と明確に区分することのできない医局の研究活動は,附属病院及び大学院の目的の一つである診療科及び研究科の研究と重なり合う部分が大きいということができ,そのための活動資金も医局のものであるか,診療科あるいは研究科のものであるか明確な区別をすることは極めて困難であるとした上で,医局や個々の研究者に対する研究助成金が国に対する寄附金であることを否定することもまた困難であると判断し本件寄附の違法性を認定した。 イ補助参加人らは,研究者に対する研究助成金は研究者個人又は研究グループに対するものであり国等に対する寄附金ということはできないと主張するが,補助参加人らも本件寄附金の受領者が研究者個人や研究グループではなく医局であることを認めている。 ウ第106回P8総会収支決算書によれば,総収入1億0865万7535円のうち余剰金の全額である4229万2002円が東北大学医学部の委任経理金として国庫に寄附されている。しかも,収入の明細をみると,寄附金収入5527万6255円のうち4281万6255円はP2財団からの寄附金で 全額である4229万2002円が東北大学医学部の委任経理金として国庫に寄附されている。しかも,収入の明細をみると,寄附金収入5527万6255円のうち4281万6255円はP2財団からの寄附金である。つまりP2財団の寄附金がそのまま東北大学医学部の委任経理金として国庫に寄附されたことになる。上記総会に関する寄附も国に対する寄附というべきである。 (3)争点③(本件寄附の私法上の効力)平成15年最高裁判決は,地方財政法28条の2に関するものであって措置法24条2項に関するものではない。 地方財政法28条の2は,地方公共団体間の負担区分をみだす行為を禁止- 11 -するものであるところ,負担区分は事務の種類によって様々であり,みだす行為というものも多種多様に想定され,また,同条違反の行為を前提に種々の法律関係が形成されることも多く,同条違反の行為については端的に民事。 ,的な法律効果を無効と定めることが必ずしも妥当でない場合があるそこで同条違反に対しては,総務大臣が技術的な助言又は勧告をするか,違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずることを求めるなどの措置がなされることになり,そのような事後的な措置によって是正を期待しうる以上,直ちに民事的効力を無効とする必要もない。 他方,措置法24条2項は,地方公共団体から国等に対する寄附等を端的に禁止するものである。同条項には,負担区分やみだす行為といった不確定要素は全くなく,また,単なる贈与であるからそれを前提に種々の法律関係が形成されるということもなく,寄附金等の贈与行為を端的に無効としても弊害は一切ない。 むしろ,国と地方公共団体の力関係の差から任意の寄附さえも一切禁止するという立法趣旨からすれば,この贈与行為を端的に無効にしなければ,その趣旨を達成することはできない。 また,地方財 害は一切ない。 むしろ,国と地方公共団体の力関係の差から任意の寄附さえも一切禁止するという立法趣旨からすれば,この贈与行為を端的に無効にしなければ,その趣旨を達成することはできない。 また,地方財政法28条の2違反の場合は,総務大臣が是正措置をとるこ,,,とができるが措置法24条2項違反の場合は寄附の受入れ側は国であり総務大臣の助言や勧告に期待することはできない。 したがって,措置法24条2項違反の贈与行為を無効とする必要がある。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,被控訴人らの請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおりである。 (1)事実経過本件寄附がされた経過について証拠により認定することのできる事実は,次のとおり訂正するほか,原判決の当該欄(原判決23頁26行目冒頭から- 12 -29頁24行目末尾まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決25頁1行目の「公益法人」を「公益増進法人」と,27頁11行目の当センターのを当センターへのと改め28頁4行目の小「」「」,「児科医局」の次に「正確には小児病態学分野の医局」を付加する。 ()イ原判決26頁4行目冒頭から同頁25行目末尾までを次のとおり改める。 乙17の4枚目にある指定研究助成金交付申請書の申請金額93万円振「(込先口座番号×××××××)について,丙9(147丁)及び証人P9によれば,平成14年4月10日にこの金額がP2財団から参加人P1の管理する銀行口座(口座番号×××××××)に振り込まれていることが認められる。なお,上記認定によれば,P2財団は指定研究助成金交付申請書提出の翌日には振り込みをしていることになるが,参加人P1が繰り返しP2財団から助成金の交付を受けている(丙9)ことからすると不自然 れる。なお,上記認定によれば,P2財団は指定研究助成金交付申請書提出の翌日には振り込みをしていることになるが,参加人P1が繰り返しP2財団から助成金の交付を受けている(丙9)ことからすると不自然とまではいえない。上記指定研究助成金交付申請書が市立病院による9月10日の寄附の決裁文書に綴られており,そこに記載された研究課題と同一の課題で9月10日の寄附が申し込まれていることからすれば,9月10日の寄附は,過去の参加人P1の指定研究助成金交付申請書を参考にして市立病院が研究課題を記載したものと認めるのが相当である(上記指定研究助成金交付申請書の入手経路がP2財団からなのか消化器病態学分野の医局からなのかは不明である」。)。 (2)争点①(本件寄附の相手方)についてア4月5日の寄附について当該寄附については,P2財団から直接市立病院に宛てて第106回P8総会寄付として依頼されている(乙15。証人P10は,学会支援に)ついてはP2財団から市立病院に対して直接寄附の依頼ないし要請があると証言する。 - 13 -訂正後の原判決認定のとおり,当該寄附は「第106回P8総会事務,局(東北大学医学部眼科学教室」により作成された募金趣意書(主催機)関及び責任者は東北大学医学部眼科学教室・教授P5(参加人P5)であり,P2財団は寄付金申込先である)に基く「第106回P8総会会。 ,長P5」名の総会寄付の依頼に対して,P2財団が助成の対象とすることとし,寄附依頼したのに応じてなされたものである。 そうすると,当該寄附は,確かにP2財団の依頼に基き市立病院が行ったものではあるが,市立病院としては,最終的な寄附金の受領者が「第106回P8総会事務局(東北大学医学部眼科学教室」であることを認識)し,その目的で寄附したものというべきである。 市立病院が行ったものではあるが,市立病院としては,最終的な寄附金の受領者が「第106回P8総会事務局(東北大学医学部眼科学教室」であることを認識)し,その目的で寄附したものというべきである。 そこで「第106回P8総会事務局(東北大学医学部眼科学教室」,)がP8(独立の法人格を有する財団である)を指すのか「東北大学医学。 部眼科学教室」を指すのか検討すると,甲15添付の第106回P8総会収支決算書によれば,同総会の収支は,P8管轄分と東北大学管轄分に区分され,それぞれの管轄毎に収入の部と支出の部に区分けされており,寄附金は東北大学管轄分に計上され,東北大学管轄分の余剰金は委任経理金(国庫)へ納入されていることが認められるのであるから,最終的な寄附の受領者は,P8ではなく「東北大学医学部眼科学教室」と認めるのが,相当である。そして,参加人らが,学会開催のための事務は医局が行う,「教室」は「医局」とともに「研究科」や「診療科」と区別するため,,に用いられる通称であると主張し,平成18年9月26日付け準備書面1において「医局(教室」と記載していることや,後記医局の実態からし)て,学会事務局を医局ではなく研究科のみで構成したとは思われないことを考慮すると,一般的な「教室」の概念はともかく,ここでいう「東北大学医学部眼科学教室」とは,東北大学大学院の眼科学分野に対応する医局(以下単に「眼科学分野の医局」という。他の分野についても同じ)を。 - 14 -指すものと認められる。 なお,証人P11の証言によれば,P2財団に対してなされる寄附のうち7パーセントは,財団の手数料として徴収され,この徴収された手数料は,財団の運営資金として使用されていることが認められ,上記手数料部分は眼科学分野の医局に対する寄附であったと認めることはでき のうち7パーセントは,財団の手数料として徴収され,この徴収された手数料は,財団の運営資金として使用されていることが認められ,上記手数料部分は眼科学分野の医局に対する寄附であったと認めることはできない。寄附金額については,以下の寄附についても同様である。 イ9月10日の寄附について上記のとおり,9月10日の寄附は,市立病院において,4月9日付けの参加人P1による指定研究助成金交付申請書を参考にして行ったと認めるのが相当である。しかも,寄付金申込書(乙3の1)には,かっこ内に「P1教授」と明記されている。したがって,9月10日の寄附は,寄附の目的,寄附(助成金)の受領者ともに予め決まっていたものというべきである。そして,参考にしたと認められる指定研究助成金交付申請書の振込先口座の名義人は「東北大学医学部三内研究補助代表P1」となってお,,,り参加人P1も寄附金で買う機器はみんなが使うとか医局内で買ったあるいは,この研究に携わっているのは医局に在籍して研究をやっている人間すべてだと思っている,寄附金を国庫に入れないで購入された場合は医局所有であるなどと供述し,9月10日の寄附(助成金)が入金されたP2研究助成金代表P1名義の通帳の収支が医局の収支明細として提出されている(丙9。これらの事情からすると,9月10日の寄附は,消化)器病態学分野の医局に対して(なお,私人に対するものでないことは後述のとおり)寄附する目的で,一旦P2財団に対して寄附したものと認め。 られる。 ウ7月10日の寄附について乙20,証人P12,同P13によれば,P3では管理医師としてのP12医師以外の内科,外科,小児科の医師は,全て東北大学大学院医学系- 15 -研究科の医局から派遣されて診療に従事しており,P2財団は,派遣医師の名簿作成作業,各医局 P3では管理医師としてのP12医師以外の内科,外科,小児科の医師は,全て東北大学大学院医学系- 15 -研究科の医局から派遣されて診療に従事しており,P2財団は,派遣医師の名簿作成作業,各医局の医師がどのような病院に派遣されているかの調査などはするものの,実際に医師派遣に関わるのは上記各医局であって,P2財団は直接関わっていないこと,P3では,平成13年と平成14年に3回に分けてP2財団を支出先とする寄附金が支出されているが,P3としては,実際に医師派遣に関わっていた上記各医局に対し,医学研究の助成として支出したことが認められる。 また,P3は,P2財団への寄附の申込みの文書を同時に小児病態学の医局へも送付しているし,後記エのとおり,別の医局ではあるが,先進外科学分野の医局に対して,まず直接に寄附の打診をし,同医局から研究題目を指定してP2財団を通じ寄附をするよう依頼する旨の文書を受領してから,指定の研究題目によりP2財団に寄附の申込みをしている(訴外の平成13年6月28日の寄附も同様である(乙22。 )。)このような寄附の趣旨ややり方からすると,7月10日の寄附も,寄附(助成金)の受領者はP3と医局間で内々決まっていたものというべきであり,小児病態学分野の医局に対して寄附する目的で,一旦P2財団に対して寄附したものと認められる。 エ7月31日の寄附について乙27中の7月18日付け寄付金申込書に研究題目「多臓器不全へいたる侵襲時生体反応の中での各種臓器における細胞膜上Na-KATPase活性の検討」との記載がある。そして,乙27に綴られた東北大学先進外科・腫瘍外科医局長P14からP3所長であるP15に宛てられた6月25日付けファクシミリ送信文書には,その上欄に,P15所長が先進外科学分野の医局を訪ねて寄付の話をしたことに 綴られた東北大学先進外科・腫瘍外科医局長P14からP3所長であるP15に宛てられた6月25日付けファクシミリ送信文書には,その上欄に,P15所長が先進外科学分野の医局を訪ねて寄付の話をしたことに対する感謝と,P2財団を通じて下記題目で寄付をお願いしたい旨の記載が,その下欄に,その題目,研究者として,寄付金申込書記載の研究題目,研究者と同一の記載が- 16 -ある。したがって,P3は,先進外科学分野の医局に対して,まず直接に寄附の打診をし,同医局から研究題目を指定してP2財団を通じ寄附をするよう依頼する旨の文書を受領してから,指定の研究題目によりP2財団に寄附の申込みをしたものであり,先進外科学分野の医局に対して寄附する目的で,一旦P2財団に対して寄附したものと認められる。 オ上記認定のとおり,本件寄附については,いずれも寄附(助成金)の受領者(医局)が事前に決まっており,市立病院あるいはP3は,その医局,,,に寄附する目的で一旦P2財団に寄附したものと認められP2財団は寄附受入の窓口ないし代行機関の役割を果たしたに過ぎないものであったということができる。 参加人らは,寄附目的を具体的に指定すれば,限られた医局の中ではその研究グループはいくつかに特定されるが,だからといって,P2財団が代行機関にすぎないということはできないと主張し,証人P13,同P11の証言中には,本件寄附について,P2財団の指定研究助成審査会の持回り決議がされて助成することを決めたなどという部分がある。しかし,上記説示のとおり,本件寄附は,寄附金の受領者が限定されているにとどまらず,1つの医局に特定されているのであり,まさしく交付先を指定していると評価すべきものである。本件寄附について,指定研究助成審査会の持回り決議がされて助成することが決められたとして ているにとどまらず,1つの医局に特定されているのであり,まさしく交付先を指定していると評価すべきものである。本件寄附について,指定研究助成審査会の持回り決議がされて助成することが決められたとしても,証人P11の証言によれば,P2財団の事務員が寄付金申込書記載の研究課題によって寄付金申込みをまとめて,持回り決議に付議すると,修正されることなく決裁され,寄附金(助成金)の交付先が決まるというのであり,上記のように寄附金申込みの際に交付先を事実上指定していれば,そのとおりに寄附金(助成金)が交付されることが認められるのであって,P2財団が独立した法人であり,独自の活動をしていることを考慮しても,上記認定判断を左右する事情には当たらないというべきである。 - 17 -(3)争点②(措置法24条2項の適用の有無)について(医局と東北大学の関係について)ア各項末尾に挙示の証拠によれば,以下の事実が認められる。なお,以下の認定の個別具体的な部分の多くは,消化器病態学分野の医局についての,,ものであってその他の医局については証拠上詳細な実態は不明であるがその本質的な性格については異なることはないと推認される。 (ア)一般に,大学の医学部には,教育研究組織として講座(東北大学大学院においては分野)が,医学部の附属病院には,診療組織として診療科が置かれているが,両者が一体となって教育研究,診療を遂行するという観点から,多くの場合,附属病院の各診療科長は,医学部講座の教授が兼ねており,医局とは,これら教授を中心とした講座,診療科に所属する医師の集団を指す言葉であり,法令上あるいは予算上位置づけられた組織や仕組みではない。医局は,教育研究,診療を円滑に進めるための一つのまとまりとして,地域医療機関への医師の紹介あるいは研究発表会,新しい医療 を指す言葉であり,法令上あるいは予算上位置づけられた組織や仕組みではない。医局は,教育研究,診療を円滑に進めるための一つのまとまりとして,地域医療機関への医師の紹介あるいは研究発表会,新しい医療技術の普及などの活動の機能を果たしている。 (丙52)(イ)東北大学大学院においても,臨床系の各分野(本件では消化器病態学分野,眼科・視覚科学分野,小児病態学分野,先進外科学分野)の教授が各診療科(本件では消化器内科,眼科,小児科,移植・再建・内視鏡外科)の科長を兼任しており,各分野の他の教官(助教授,講師,助手)もすべて診療科兼務が発令されている。 上記兼任の教官のほか,各分野には,大学院生,大学院研究生が在籍しており,各診療科(附属病院)には,診療科専任の教官と医員,研修医がいる。 医局は,上記の各分野の構成員及び各診療科の構成員によって構成されており,消化器病態学分野の医局の場合は,他に,宮城刑務所,P1- 18 -6,国税局に東北大学から出向している医師も大学院研究生として医局員となっている。 (甲16,17,丙10,12,13。 )(ウ)一般に,大学における教官の地位は,次のとおりとされており,研究も職務の一部である(学校教育法58条6ないし9号,改正前のもの。 )①教授は,学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事する。 ②助教授は教授の職務を助ける。 ③助手は,教授及び助教授の職務を助ける。 ④講師は,教授又は助教授に準じる職務に従事する。 また,国立大学病院の医員の職務内容は,次のとおりである。 附属病院において診療に従事するものとし,必要に応じ,診療を通じての臨床教育の補助的職務および診療に関して研究にも従事するものとする。 (丙50)(エ)他方,医局は,臨床医療においては,研究,教育,診療が有機的一体的 事するものとし,必要に応じ,診療を通じての臨床教育の補助的職務および診療に関して研究にも従事するものとする。 (丙50)(エ)他方,医局は,臨床医療においては,研究,教育,診療が有機的一体的に連携することが必要であることから,医局員の親睦を図りながら医学研究を行ったり診療に当たることや医局員の相互扶助などを目的とし,診療科の役職である医局長がその長となり,消化器病態学分野の医局の場合は,助教授2名と医局長の3名の執行部と教授とのミーティングで意思決定がされている。ミーティングでは,学会のリハーサル,医療事故やそれに近い事象に対する対応,医局運営などについて協議しており,医局員である医師の就職についても協議して,本人と面談している。また,医局は,後記の委任経理金及び医局管理の寄附金の使途において説示するとおり,有機的一体的に研究,教育,診療を実施するために,秘書,臨床検査技師等(パラメディカル)を雇用し,研究用医療機- 19 -器を購入したり,大学院研究生の学費の支援や大学院生等の留学,学会参加等の旅費の支援をしている。 (甲16,丙10,証人P1。 )(オ)医学の教育,研究には多額の研究費を必要とするが,東北大学の医学研究費用としては,校費,科研費,委任経理金,P2財団からの助成金を含むその他の寄附金がある。校費は,国からの教育研究費で各分野に支給されるが,試薬や備品,実験資材の購入等の費用に充てられて,。 ,,大学院生の教育費にも足りない額である科研費は具体的な研究計画研究方法,研究代表者,研究分担者等を明らかにして,文部科学省から委託を受けたP17に申請し,認められれば支払われるもので,研究費の大きな部分を担っているが,概ね申請額の3分の1が認められるかどうかである。委任経理金は,民間企業,団体,個人等から寄附さ 学省から委託を受けたP17に申請し,認められれば支払われるもので,研究費の大きな部分を担っているが,概ね申請額の3分の1が認められるかどうかである。委任経理金は,民間企業,団体,個人等から寄附された寄附金であり,各分野の寄附金ごと(研究ごと)の寄附金別委任経理金受払簿によって管理されている(なお,手続としては,寄附者から一旦国庫に寄附され,国庫から寄附を受け入れた部局の部局長に支出されて歳入歳出外現金となっている。そして,上記のほかに,本件寄附にか。)かるP2財団からの助成金のように,国庫を通す手続がされず,教授名義等で受領する寄附金があるが,これは,医局において管理されている(本件については,眼科分野の医局では,第106回P8総会会長P5名義ないし同事務局P5名義の預金通帳に入金され,消化器病態学分野の医局では,P2研究助成金代表P1名義ないし東北大学医学部消化器内科研究補助代表P1名義の預金通帳に入金されている。以下「医局管理の寄附金」という。 。)委任経理金は,教育研究費や科研費の不足分を補うため,上記同様試薬や備品,実験資材の購入等の費用に充てられるほか,研究用医療機器,,()の購入や医局で雇用している秘書臨床検査技師等パラメディカル- 20 -の賃金などに充てられている。 公立病院等からの研究助成金の受け入れ状況等に関する調査報告書や医学部問題中間報告書によれば,医局管理の寄附金(ただし,P2財団),,,を通さず医局が直接受領したものの支出先は研究会学会への支出国内外の著名な教授の講義,患者回診,症例検討の謝礼,書籍等,研究消耗品への支出,研究費及び教育費への支出(地域病院に勤務する大学院研究生の入学料及び授業料への支援並びに大学院生等の留学旅費の援助,大学院生等の学会参加旅費,研 回診,症例検討の謝礼,書籍等,研究消耗品への支出,研究費及び教育費への支出(地域病院に勤務する大学院研究生の入学料及び授業料への支援並びに大学院生等の留学旅費の援助,大学院生等の学会参加旅費,研究実施旅費等への支出,委任経理)金への支出とされている。本件寄附について見ると,眼科学分野の医局に対するものは委任経理金に納入されたものと見られてもやむを得ないものであるし,消化器病態学分野の医局に対するものは研究のために必要な大型の機器を買う予定で留保されていた(以前に受領した消化器病態学分野の医局管理の寄附金からは一部委任経理金に組み入れられている。なお,その後,寄附金は国庫納入に統一することになったため,。)留保されていた寄附金(助成金)は,委任経理金とされたうえ,上記機器の購入に充てられた。その余の本件寄附の支出先は証拠上明らかでない。 (甲6,14ないし21,丙2ないし10,証人P13,同P1)(カ)また,医局は,医局員から医局費を徴収して,医局運営の費用に充てている。 消化器病態学分野の医局では,医局費を歓送迎会等の懇親会費用,通信費,新聞・書籍・P18受信料,教室論文製本代,各種研究会・学会の会費等に充てており,そのほか,医局員の臨時当直手当の受領・支払いや,医局員の教室員会費,日本医師会会費,同窓会の会費の徴収支払。 ,,,いをしているまた同医局では上記医局管理の寄附金の口座のほか同窓会の口座や,各種研究会・学会の口座も管理している。 - 21 -(丙9)イ上記のとおり,医局は,大学医学部の臨床系講座の教授を中心とした講,,座診療科に所属する医師の集団として一般に認められた存在であることその構成員は,各分野の構成員とも,各診療科の構成員とも異なるものであるが,各分野と各診療科の構成員を統合したも 中心とした講,,座診療科に所属する医師の集団として一般に認められた存在であることその構成員は,各分野の構成員とも,各診療科の構成員とも異なるものであるが,各分野と各診療科の構成員を統合したものとほぼ一致すること,,(,,医局の活動は各分野及び各診療科の職員としての職務遂行教育研究診療)とみられるもののほかに,秘書,臨床検査技師等を雇用したり,医局員である医師の就職についても協議面談するなど,その職務権限・職務内容の範囲外のものや,大学院研究生や大学院生に対し学費や旅費等の支援をするなど相互扶助的活動,その他親睦会的活動を行っていること,医局の活動資金は,委任経理金からも医局の雇用者に対する賃金を支払っているが,医局管理の寄附金や医局費など,独自の資金を管理使用していることが認められる。 これらの事実からすれば,医局の構成員は分野とも診療科とも異なり,これを分野と診療科との統合体とみる(ただし,東北大学の組織としてそのような機関があるわけではない)としても,その活動内容は分野及び。 診療科の活動と相当部分で重なり合うとはいえ,これにとどまらないものであって,独自の資金管理もされているのであるから,医局を東北大学の分野,診療科またはその統合体と同視することは困難である。 ,,他方医局の活動内容は分野及び診療科の活動と相当部分で重なり合い医局の活動資金の一部(秘書の賃金等)は委任経理金(歳入歳出外現金であり,国(現在は東北大学)の所有と解される)から支出されており,。 医局管理の寄附金からは研究消耗品への支出等上記重なり合う部分の活動のための支出がされていることから,そのような性質を持つ医局に対する寄附が措置法24条2項ないし地方財政法4条の5の趣旨に反するのではないかとの観点からの検討が必要である。 - 22 - 部分の活動のための支出がされていることから,そのような性質を持つ医局に対する寄附が措置法24条2項ないし地方財政法4条の5の趣旨に反するのではないかとの観点からの検討が必要である。 - 22 -(本件寄附の違法性について)ア地方自治法232条の2は「普通地方公共団体は,その公益の必要が,ある場合においては,寄附又は補助をすることができる」と規定してお。 り,公益上の必要がある場合には市町村が第三者に対して寄附を行うことを認めている。 しかし,措置法24条2項は「地方公共団体は,当分の間,国,……,に対し,寄附金,法律又は政令の規定に基づかない負担金その他これらに類するもの(これに相当する物品等を含む。以下「寄附金等」という)。 を支出してはならない。ただし,地方公共団体がその施設を国,独立行政法人若しくは国立大学法人等又は会社等に移管しようとする場合その他やむを得ないと認められる政令で定める場合における国,独立行政法人若しくは国立大学法人等又は会社等と当該地方公共団体との協議に基づいて支出する寄附金等で,あらかじめ総務大臣に協議し,その同意を得たものについては,この限りでない」と規定している。 。 これは,従来,地方財政法4条の5において,国が地方公共団体から強制的に寄附金を徴収することを禁止していたが,同条は,地方公共団体の任意自発的な寄附を規制対象とするものではないため,国等がその優越的な地位を背景として,本来自己の負担とすべき経費につき自発的寄附という名目で地方公共団体にその負担を転嫁したり,あるいは地方公共団体の側においても,国等の施設等誘致のために寄附することが頻発したため,地方公共団体の国等に対する自発的寄附又は任意負担をも原則禁止とすることによって財政の健全化を図る一方,寄附等を一律禁止することによる公益上 も,国等の施設等誘致のために寄附することが頻発したため,地方公共団体の国等に対する自発的寄附又は任意負担をも原則禁止とすることによって財政の健全化を図る一方,寄附等を一律禁止することによる公益上又は社会通念上の不合理を回避するため,一定の場合には事前に総務大臣の同意を得た上で寄附等をなしうるものとしたものと解される。 そうだとすれば,措置法24条2項は,ただし書にあたる場合を除き,強制的なものであるか任意的なものであるか,国が本来負担することを予- 23 -定しているものか否か,それが当該地方公共団体にとって必要ないし利益であるか否かに関わりなく,全てこれを禁止したものと解される。 イ参加人らは,研究活動は,公務としても私人としてでも可能であり,国は,研究活動に対しては,科研費の制度を定め,研究に要する費用はもっぱら科研費と民間からの奨学寄附金をもって充てる制度を採用し,そもそも大学における研究費は,国が負担すべき経費ではないという建前を採っており,奨学寄附金も科研費も,診療科や研究科とは区別される研究者個人(グループ)に対するものであって,P2財団の研究者に対する研究助成金も国等に対する寄附金ということはできないと主張する。 しかし,措置法24条2項は,国が本来負担することを予定しているものか否かに関わりなく適用されると解すべきである。そして,大学の教官も附属病院の医員も,研究が職務の一部とされているのであるから,大学の教官等が全く私人として研究活動をすることができるとしても,場所的側面や時間的側面等により,職務としての活動と切り離されて全く私人としての研究であることが明らかにされているなど特段の事情のない限り(教官等が医局員としても活動していることは特段の事情として十分でない,大学の教官等の研究はその職務(公務)であるかある 全く私人としての研究であることが明らかにされているなど特段の事情のない限り(教官等が医局員としても活動していることは特段の事情として十分でない,大学の教官等の研究はその職務(公務)であるかあるいはその職。)務としての性質を含むことを否定されるものではない。研究の内容や方法が教官等個人の裁量判断に全く委ねられているからといって,これから直ちにその研究が全くの私的活動と評価されるべきものではない。その研究のために費やされた資金は国の費用に充てられたものあるいはその側面を有するものと評価すべきである。国の予算としては校費と科研費としか予定されておらず,その他の研究資金を国庫において負担することは予定されていないとしても,それは,民間等から資金を受け入れ研究活動に使用されたときに,これらの資金が国の費用に充てられたことあるいはその側面を有することを肯認する妨げとなるものではない。 - 24 -上記認定によれば奨学寄附金が国に寄附される(さらに国立大学法人に支出される)ものであることは明らかであり,研究者の転出により転出先の国立学校に委任経理金等が移動されるとしても,それは,学校間の移動,()。 であって研究者個人に帰属することを意味するものではない丙41また,寄附金(委任経理金)の具体的な使用者をみても,上記のように委任経理金から医局の経費である秘書等の賃金が支出されているのであるから,医局のために使用される奨学寄附金も存在すると解される(医局の構成員が研究グループとして寄附を受けているとみれば,控訴人の主張とも整合性がないとはいえない。9月10日の寄附(助成金)が入金され。)たP2研究助成金代表P1名義の通帳の収支が医局の収支明細として提出されている(丙9)ことからしても,本件寄附は各医局に交付されたとみるべきである ない。9月10日の寄附(助成金)が入金され。)たP2研究助成金代表P1名義の通帳の収支が医局の収支明細として提出されている(丙9)ことからしても,本件寄附は各医局に交付されたとみるべきである。医局とは別の研究者個人ないし研究者グループがこれを受領したと認めるに足りる証拠はない。 ,,,前記のとおり委任経理金は教育研究費や科研費の不足分を補うため試薬や備品,実験資材の購入等の費用に充てられ,校費や科研費と使途が明確に区分されていない。医局管理の寄附金も,委任経理金に納入されることがあるほか,研究消耗品への支出がされたり,研究のために必要な機器の購入が予定されたりしており,委任経理金とも,校費や科研費とも使途が明確に区分されていない。本件寄附について個別的に見ても,眼科分野の医局に対する寄附金は,国庫に納入されて委任経理金となっていると見られてもやむを得ないものであるし,消化器病態学分野の医局に対する寄附金(助成金)は,研究のための機器の購入費用(国の費用の側面を有する)に充てる予定だったものである(いったん委任経理金とされたう。 ,,。)。 え機器購入がされた時点では国の費用に確定したというべきである,「」,また小児病態学分野の医局に対する寄附は病態代謝研究助成として先進外科学分野の医局に対する寄附は「多臓器不全へいたる侵襲時生体反- 25 -応の中での各種臓器におけるNa-KATPase活性の検討」の研究についてされたものであるところ,これらの研究が全くの私的研究と認めるべき特段の事情は窺われない。したがって,各寄附金は公務(国)の費用に充てる側面があったことは否定できないというべきである。 以上の事情からすれば,本件寄附は,実質的に見て医局にされたものと評価すべきであるところ,医局は東北大学とは別個の実 寄附金は公務(国)の費用に充てる側面があったことは否定できないというべきである。 以上の事情からすれば,本件寄附は,実質的に見て医局にされたものと評価すべきであるところ,医局は東北大学とは別個の実体をもつものではあるものの,医局管理の寄附金は,国の所有管理にかかる資金(校費,科研費,委任経理金)と別個に管理されているとはいえ,使途が截然と区分されておらず,国の費用に充てられることも予想されたというべきである(結果的にも国の費用に充てられている部分がある)から,医局管理の寄附金に該当する寄附を地方公共団体がすることは,国と地方公共団体との間の経費負担区分を乱して地方財政の健全化を妨げる行為を防止しようという措置法24条2項ないし地方財政法4条の5の規定に抵触するものであった疑いが払拭できない。 (4)本件寄附の私法上の効力措置法24条2項は,国と地方公共団体,地方公共団体相互間等の財政秩序を定めた地方財政法4条の5の実効性をはかるための条項であって,これに違反する行為が,直ちに私法上無効であるということはできないというべきである。地方公共団体相互間についての同趣旨の規定である同法28条の2についても同様に解されている(平成15年最高裁判決。 )そして,事情によっては措置法24条2項違反の行為が私法上無効となる余地があるとしても,本件の場合,公序良俗に反するなどこれを無効とすべ。 ,,き特段の事情があるものということはできないすなわち本件寄附を含め市立病院は,平成10年度から平成15年度までに,学会等に際して8回の寄附(合計215万円)と本件の消化器病態学分野の医局に対する寄附(30万円(他にサークル棟再建基金に対する寄附10万円がある)を,P)。 - 26 -3は,平成12年度から平成14年度までに,小児病態学分野の医局や と本件の消化器病態学分野の医局に対する寄附(30万円(他にサークル棟再建基金に対する寄附10万円がある)を,P)。 - 26 -3は,平成12年度から平成14年度までに,小児病態学分野の医局や先進外科学分野の医局に対する7回の寄附(合計215万円)を行っており(乙7ないし27,本件寄附は繰り返し行われた寄附の一環であって,その額)も少額とはいえないものの,本件寄附の直接の相手方であるP2財団は,地域医療の充実並びに医学の振興に必要な教育研究に援助を行うこと等を目的として昭和55年に設立され,その目的に沿う独自の活動をしてきた法人であり(甲13,丙1,14ないし17,本件寄附はその既存のP2財団を)その活動に沿う形で利用して行われたものであり,措置法24条2項の潜脱を目的に設立したトンネル機関を経由して行われたもののように違法性の顕著なものとはいえない。また,学会開催のための寄附については,学会の決算書類等の検討によれば医局に対する寄附と評価すべきものであるが,募金趣意書の記載などからすると控訴人が寄附先を医局であると明確に意識していたとは断定できないし,医局に対する寄附も,乙24の4枚目によれば,公金支出の制限規定も検討した上で,P2財団の活動を通じた寄附であれば適法であると判断した上で実行したことが窺われ,妥当性についてはともかく,違法であることを明確に認識しながらされたものとも断じ難い。もとより,本件寄附は,国が割り当てて強制的に徴収したもの,あるいはこれに相当するものとさえいえない。以上の事情のほか証拠上顕れた一切の事情を考慮しても,本件寄附を私法上無効とすべき特段の事情があるということはできない。 被控訴人らは,措置法24条2項は,地方公共団体から国に対する寄附等を端的に禁止するものであって,単なる贈与であるからそ 慮しても,本件寄附を私法上無効とすべき特段の事情があるということはできない。 被控訴人らは,措置法24条2項は,地方公共団体から国に対する寄附等を端的に禁止するものであって,単なる贈与であるからそれを前提に種々の法律関係が形成されることもなく,これを無効としても弊害はないし,地方自治法上の総務大臣の助言や勧告による是正を期待できないから,同条項違反は無効とされるべきであると主張する。 しかし,単なる贈与であっても,それを費消した後にその贈与を無効とし- 27 -て返還義務を負わせる場合を考えると,弊害がないと断定することはできないし,措置法24条2項違反の場合にも,地方公共団体の側には地方自治法上の総務大臣の助言や勧告による是正を,国等の側には上級庁や監督官庁等による監督指導による是正を図る方策がある(本件においても,医学系研究科においては,今後公立病院からの研究助成を一切受けないとの決定を自律的にしているし,文部科学省の指導により寄附金を国庫納入に統一する旨改められている(甲11,21,証人P13)ことを考慮すると,措置法)。 24条2項違反の行為を無効と解するだけの十分な理由はないというべきである。 以上の次第で,本件寄附が私法上無効とはいえないから,本件寄附にかかる助成金の交付を受ける法律上の原因がないとは認められず,被控訴人らの請求はいずれも理由がない(東北大学に関する請求は,本件寄附が東北大学ではなく各医局にされたものであるから,その前提を欠くものでもある。 。) よって,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第1民事部裁判長裁判官小野貞夫裁判官信濃孝一裁判官大垣貴靖 判長 裁判官小野貞夫 裁判官信濃孝一 裁判官大垣貴靖

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