平成19(行ウ)9等 採掘権出願不許可処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年1月30日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文14,851 文字)

主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 九州経済産業局長が平成17年4月21日付けで原告に対してした採掘権設定出願不許可処分を取り消す。 経済産業大臣が平成18年8月3日付けで原告に対してした行政不服審査法5条1項1号の規定による審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す。 被告は,原告に対し,9493万7339円及びこれに対する平成17年4月21日から支払済みに至るまで年10パーセントの割合による金員を支払え。 3項につき仮執行宣言申立て第2事案の概要本件訴訟は,平成10年10月26日付けで許可された別紙鉱業権目録記載の試掘権(以下,「本件試掘権」といい,その鉱区を「本件鉱区」という。なお,試掘権の存続期間は2回延長されている。)を有していた原告が,平成16年11月22日,九州経済産業局長に対し,別紙採掘権設定出願目録記載の出願(以下,「本件出願」といい,これに係る採掘権を「本件採掘権」という。)をしたが,九州経済産業局長から平成17年4月21日付けで目的鉱物の賦存状況が未確認であり,なお試掘を要すると認められるとして鉱業法(以下「法」という。)31条により本件出願を不許可とする処分(以下「本件不許可処分」という。)を受け,さらに経済産業大臣から平成18年8月3日付けで本件不許可処分に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)も棄却された(以下「本件裁決」という。)ため,本件出願は採掘権設定許可の要件を充足しており許可処分がなされるべきであったなどと主張して,本件不許可処分及び本件裁決の取消しを求めた抗告訴訟と,処分行政庁が長年にわたり原告の出願を放置してきたこ とが違法であり,そのため損害が生じたとして,国家賠償法1条1項に基づき被告に対し して,本件不許可処分及び本件裁決の取消しを求めた抗告訴訟と,処分行政庁が長年にわたり原告の出願を放置してきたこ とが違法であり,そのため損害が生じたとして,国家賠償法1条1項に基づき被告に対して損害の賠償を求めた損害賠償請求訴訟を併合した事案である。 争いのない事実等(末尾に証拠等を記載した以外の項は当事者間に争いがない。なお,記載する証拠は,特に断らない限り枝番を含む。)(1)鉱業法の関連規定1条この法律は,鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため,鉱業に関する基本的制度を定めることを目的とする。 3条1項この条以下において「鉱物」とは,金鉱,銀鉱(中略),けい石,長石(中略),耐火粘土(中略)をいう。 5条この法律において「鉱業権」とは,登録を受けた一定の土地の区域(以下「鉱区」という。)において,登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し,及び取得する権利をいう。 7条まだ掘採されない鉱物は,鉱業権によるのでなければ,掘採してはならない。但し,左の各号に掲げる場合は,この限りでない。 11条鉱業権は,試掘権及び採掘権とする。 12条鉱業権は,物権とみなし,この法律に別段の定がある場合を除く外,不動産に関する規定を準用する。 18条1項試掘権の存続期間は,登録の日から2年とする。 同条2項 前項の期間は,その満了に際し,試掘権者の申請により,2回(石油を目的とする試掘権については3回)に限り延長することができる。 同条3項前項の規定により延長する期間は,1回ごとに2年とする。 21条1項鉱業権の設定を受けようとする者は,経済産業局長に出願して,その許可を受けなければならない。 22条1項採掘権の設定を受けようとする者は,前条1項の規定による出願と同時に,出願の区 。 21条1項鉱業権の設定を受けようとする者は,経済産業局長に出願して,その許可を受けなければならない。 22条1項採掘権の設定を受けようとする者は,前条1項の規定による出願と同時に,出願の区域について目的とする鉱物の鉱床の位置,走向,傾斜,厚さその他鉱床の状態を記述した鉱床説明書を提出しなければならない。 31条経済産業局長は,採掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の自己の試掘鉱区と重複する場合において,その重複する部分がなお試掘を要すると認めるとき,又は現に当該試掘鉱区に係る鉱区税の滞納があるときは,その部分については,その出願を許可してはならない。 35条経済産業局長は,鉱業出願地における鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるとき,又は保健衛生上害があり,公共の用に供する施設若しくはこれに準ずる施設を破壊し,文化財,公園若しくは温泉資源の保護に支障を生じ,若しくは農業,林業若しくはその他の産業の利益を損じ,公共の福祉に反すると認めるときは,その部分については,その出願を許可してはならない。 40条1項経済産業局長は,37条1項,38条1項又は前条1項の規定による命 令をしようとするときは,あらかじめ当該鉱業出願人の出頭を求めて,公開による意見の聴取を行わなければならない。 (2)当事者等ア原告は,非鉄金属の探鉱,採掘及び販売等を目的として平成11年2月23日に設立された株式会社である。 イP1は,原告の代表取締役を務める者である。(弁論の全趣旨)ウ九州経済産業局長は,本件出願に係る許可権限を有する行政庁である。 エ経済産業大臣は,九州経済産業局長の上級行政庁であり,本件審査請求に係る裁決権限を有する行政庁である。 (3)本件訴訟に至る経緯アP2及びP3は,昭和53年 る許可権限を有する行政庁である。 エ経済産業大臣は,九州経済産業局長の上級行政庁であり,本件審査請求に係る裁決権限を有する行政庁である。 (3)本件訴訟に至る経緯アP2及びP3は,昭和53年7月31日,P2を代表者と定め,共同して試掘権の設定の出願(以下,その出願人を「試掘出願人」という。)をし,昭和54年3月5日,試掘出願人の名義変更により,P3のみが試掘出願人となり,同年4月13日,再度,試掘出願人の名義変更により,P1が代表者として試掘出願人に加わった。(弁論の全趣旨)イ平成10年3月17日,試掘出願人の名義変更により,P1のみが試掘出願人となった後,同年5月28日,試掘出願人の名義変更により,P4のみが試掘出願人となり,同年10月26日付けでP4のみを試掘出願人として,本件試掘権設定の許可がされた。(乙1,2の3,弁論の全趣旨)ウ平成10年11月30日,P4の本件試掘権設定が鉱業原簿に登録され,平成11年2月28日,P4から原告に本件試掘権が譲渡され,同年3月3日,その旨が鉱業原簿に登録された。(乙1)エ原告は,平成12年8月28日,九州経済産業局長に対し,本件試掘権に係る存続期間延長申請をし,同年9月4日,同局長から同申請に係る許可を受け,存続期間は平成14年11月30日まで延長された。(乙1) オ原告は,平成14年8月27日,九州経済産業局長に対し,本件試掘権に係る存続期間延長申請をし,同月29日,同局長から同申請に係る許可を受け,存続期間は平成16年11月30日まで延長された。(乙1)カ原告は,平成16年8月24日,九州経済産業局長に対し,本件鉱区について事業着手延期(同年11月3日まで)の申請をし,同年10月1日付けで,同局長から同申請に係る認可を受けた。(乙18)キ原告は,平成16年10月 8月24日,九州経済産業局長に対し,本件鉱区について事業着手延期(同年11月3日まで)の申請をし,同年10月1日付けで,同局長から同申請に係る認可を受けた。(乙18)キ原告は,平成16年10月27日,九州経済産業局長に対し,本件鉱区について事業着手延期(同年11月30日まで)の申請をし,同年11月2日付けで,同局長から同申請に係る認可を受けた。(乙19)ク原告は,平成16年11月19日付けで,九州経済産業局長に対し,本件出願をした。(乙2の5,9)ケ本件試掘権は,平成16年11月30日,その存続期間を満了して消滅し,同年12月1日,その旨が鉱業原簿に登録された。(乙1)コ九州経済産業局長は,平成17年2月9日,本件出願に関し,原告に対して実地調査命令を通知し,同年3月9日,原告立会の上,本件鉱区において実地調査を行い,その結果,黒曜石の露頭が確認された。(乙2,15)サ九州経済産業局長は,平成17年4月21日付けで,目的鉱物の賦存状況が未確認であり,なお試掘を要すると認められるとして,法31条に基づき本件不許可処分をし,原告に対しその旨通知した。(争いがない)シ原告は,平成17年6月10日,本件不許可処分を不服として経済産業大臣に対し本件審査請求を行ったが,審査請求書の書式及び内容に不備があり審査請求が不適法であったことから,行政不服審査法21条の規定により補正を命じられ,同年7月14日,これに応じた行政不服審査請求書を提出し,同請求書は経済産業大臣により受理された。(乙2の1,弁論の全趣旨) ス経済産業大臣は,平成17年8月12日,法171条に基づき,原告から意見を聴取した後,平成18年8月3日,本件審査請求を棄却する旨の裁決(本件裁決)を行った。(甲2,乙3,4)(4)本件訴訟の提起等ア原告は,平 17年8月12日,法171条に基づき,原告から意見を聴取した後,平成18年8月3日,本件審査請求を棄却する旨の裁決(本件裁決)を行った。(甲2,乙3,4)(4)本件訴訟の提起等ア原告は,平成19年1月29日,本件不許可処分及び本件裁決を不服としてこれらの取消しを求めて抗告訴訟(大阪地方裁判所平成19年(行ウ)第9号採掘権出願不許可処分取消等請求事件)を提起した。(顕著な事実)イ原告は,平成19年10月19日,行政事件訴訟法19条1項に基づき,被告に対する国家賠償請求訴訟(大阪地方裁判所平成19年(行ウ)第192号)を上記ア記載の抗告訴訟に併合して提起した。(顕著な事実) 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件不許可処分が法31条所定の要件を欠き違法であるか,②本件不許可処分が適正な手続を経ずになされたものとして違法であるか,③本件裁決が違法であるか,④原告が被告に対し国家賠償法に基づく損害賠償請求権を有するか,の4点であり,これらに係る双方の主張は以下のとおりである。 (1)①本件不許可処分が法31条所定の要件を欠くか(原告の主張)ア本件不許可処分時,本件鉱区内で,本件出願に係る目的鉱物である金鉱,銀鉱,けい石,長石及び耐火粘土の賦存が明らかになっていたから,目的鉱物の賦存状況が未確認であり,なお試掘を要するとした本件不許可処分は違法である。 イ本件鉱区内で露頭が確認された黒曜石の岩体は,法3条の鉱物である「長石」を含有しているから,本件鉱区内で長石という鉱物の賦存が明らかになっていた。 すなわち,法3条にいう鉱物とは,指定された有用鉱物である。鉱物の集合体の中から金属を取り出して,利益があるものを鉱石という。いわゆる岩石であっても,鉱物の含有量が多くなれば,鉱石として利用することが可能であるし,また, 物とは,指定された有用鉱物である。鉱物の集合体の中から金属を取り出して,利益があるものを鉱石という。いわゆる岩石であっても,鉱物の含有量が多くなれば,鉱石として利用することが可能であるし,また,鉱物の含有量が比較的少ない岩石についても,大設備で多量に処理すると十分採算が取れる場合には,鉱石として利用することが可能である。 黒曜石は,ガラス質火山岩の一種で,岩石の一種であるが,鉱物の集合体でもある。すなわち,黒曜石の化学組成は,SiO を主成分としつつ,その 他の成分として,微量の金,銀ほか法3条にいう鉱物を含有している。特に長石成分(準長石)は,黒曜石の化学組成比率の中で約80パーセントを占めている。また,黒曜石の成分を利用して,副産物としてガラス原料やパーライト(発泡剤)に加工して販売利用できることを看過してはならない。このように黒曜石には利用可能な鉱物を含有していることからすれば,黒曜石も鉱物として扱われるべきである。 被告は,鉱石が含有すべき鉱物の含有量につき,通達をその根拠としているが,同通達は憲法上の根拠規定を有しないものであり,これを知らない原告を拘束するものではない。 ウ本件鉱区内で黒曜石の露頭が確認されている以上,本件鉱区内地下で金鉱,銀鉱という鉱物の賦存は明らかになっていた。 すなわち,金,銀鉱床はいわゆる浅熱水鉱床であって,これは,黒曜石を含む長石類,デイサイト,疑灰角礫岩,安山岩などに含まれる微量の金,銀等が長い年月をかけて地下深部の熱水及びマグマにより高温高圧の状態におかれることにより形成されるものであるところ,このような金,銀鉱床の形成過程に加え,本件鉱区が火山活動のあった豊肥地熱地域に属すること,近隣にはα鉱山が存在していること,本件鉱区が存在するβ地区では従来から金鉱化報告があったことなど周辺地域の のような金,銀鉱床の形成過程に加え,本件鉱区が火山活動のあった豊肥地熱地域に属すること,近隣にはα鉱山が存在していること,本件鉱区が存在するβ地区では従来から金鉱化報告があったことなど周辺地域の状況に照らせば,本件 鉱区内地表下200メートル辺りに熱水変質帯が存在し,本件鉱区内地下で金鉱,銀鉱等鉱物の賦存は明らかになっていた。 エ被告は,原告がボーリング調査をすべきであったように主張するが,原告は目的物の賦存状況について試掘権による調査を尽くしたのであり,採掘権によらなければ,黒曜石が露出しているところの地表を1メートルも堀削することはできない。 現実的にも,ボーリング調査をするためには,立木の伐採,作業場所に至る工事用道路の建設のほか,鉱害防止策を必要とするなど,もろもろの問題を解決しなければならず,およそボーリング調査が可能であったということはできない。 (被告の主張)ア本件不許可処分時,本件鉱区内で,本件出願に係る目的鉱物である金鉱,銀鉱,けい石,長石及び耐火粘土の賦存状況が明らかになっていたわけではないから,なお試掘を要するとした本件不許可処分は適法である。 (ア) 法31条前段は,「経済産業局長は,採掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の自己の試掘鉱区と重複する場合において,その重複する部分がなお試掘を要すると認めるとき・・・は,その部分については,その出願を許可してはならない。」と規定する。この「試掘を要すると認めるときは出願を許可してはならない」との趣旨は,採掘権設定許可基準として,鉱物の賦存状況が明らかでなければならないことを規定したものである(明らかでない場合には試掘権によって試掘してゆくほかない。)。すなわち,採掘権は,試掘権(将来取得すべき採掘権の準備調査のための ,鉱物の賦存状況が明らかでなければならないことを規定したものである(明らかでない場合には試掘権によって試掘してゆくほかない。)。すなわち,採掘権は,試掘権(将来取得すべき採掘権の準備調査のための権利)と異なり,無期限の権利であり,鉱区の存在する土地の所有権に対する著しい制約になることから,鉱物の賦存が明らかであり,その鉱量,品位等からみて,採掘に適するときに成立する権利と解されているのである。 (イ) 九州経済産業局長は,鉱床説明書の記載のみでは,目的鉱物が賦存すると判断できなかったことから,原告に対し,法183条に基づき実地調査の立会を命じ,平成17年3月9日,本件鉱区において原告立会の上,実地調査を行ったが,確認できたのは黒曜石の露頭のみであり,本件出願に係る目的鉱物である金鉱,銀鉱,けい石,長石及び耐火粘土のいずれについてもその賦存を確認できなかった。 イ黒曜石は法3条の鉱物には当たらない。 (ア) 黒曜石は,長石ではない。 原告は,本件鉱区内において賦存が明らかな黒曜石が法所定の鉱物である長石に当たる旨を主張するが,黒曜石と長石は異なる。 長石は,NaAlSiO (アルバイト分,Ab),CaAlSiO (アノーサイト分, An),KAlSiO (正長石分,Or)を主成分とするテクトアルミノ珪酸 塩固溶体鉱物の総称であって,鉱物である。 これに対し,黒曜石は,ガラス光沢を有する流紋岩(デイサイト質のガラス質火山岩)であり,岩石である。なお,岩石とは,地球上層部(地殻及び少なくとも上部マントル)を構成する物質であり,数種(まれに一種)の鉱物の集合体である。 一般に黒曜石を含む火山岩は,地表あるいは地下浅所でマグマが急冷することによって生成された細粒又はガラス質の岩石であり,この急冷による生成のた 物質であり,数種(まれに一種)の鉱物の集合体である。 一般に黒曜石を含む火山岩は,地表あるいは地下浅所でマグマが急冷することによって生成された細粒又はガラス質の岩石であり,この急冷による生成のため,岩石内部の鉱物結晶が成長しにくい。特に,黒曜石は,ときに少量の斑晶(斑状の火成岩において,より細粒の石基中に肉眼的に目立って大きく見える結晶)を含むものではあるが,鉱物等が結晶化した斑晶の存在は少量で,ほとんどが石基(斑状火成岩中の斑晶の間をうずめている物質)からなる。 (イ) 原告は,黒曜石が含有する微量の鉱物成分を根拠に黒曜石を鉱物である長石と主張するが失当である。 法が適用される鉱物(採掘権設定の対象となる鉱物)に当たるためには,①法3条に列挙された鉱物(法定鉱物)であること及び②経済的価値を有することが必要である。経済的価値を有するか否かは,鉱物の品位,数量(鉱物量),深度,稼行方法,交通関係,価格,精錬方法等から総合的に決定される。 肥鉄土に関する個別通達においても,①いやしくも金,銀等の分子を含んでおればすべて法定鉱物であるということができない,②鉄鉱について,一応製鉄用原料として鉄分を精錬抽出し得る程度の品位が必要である旨明らかにしているところである。 黒曜石は長石等の鉱物を含有するが,黒曜石内の長石結晶は小さく,斑晶(肉眼的に見える結晶)としては少量であり,ほとんどは石基(斑晶の間を埋めている物質で,非常に微細な結晶又は玻璃からなる)の中に小型のものとして存在するにすぎないから,黒曜石から長石を分離するのは極めて困難であり,黒曜石内の長石等に鉱業的価値はない。 また,そもそも,実地調査で採取された黒曜石について,鉱床が胚胎されている事実は確認できていない。 ウ原告は,黒曜石岩体の存在を根拠に,地表下の金鉱,銀鉱等鉱物 黒曜石内の長石等に鉱業的価値はない。 また,そもそも,実地調査で採取された黒曜石について,鉱床が胚胎されている事実は確認できていない。 ウ原告は,黒曜石岩体の存在を根拠に,地表下の金鉱,銀鉱等鉱物の賦存は明らかであると主張するが,これは,原告の独自の見解であって,鉱物学上も,採掘業者の経験則上もかかる知見は存しない。 エ原告は,ボーリング調査による鉱床の確認もせず,被告がボーリング調査を許可しなかった,あるいは採掘権によらなければ黒曜石が露出している場所の地表を1メートルも堀削できないように主張している。しかし,原告は試掘権を有し,ボーリング調査の許可を受けることができたものであり,原告の主張は失当である。 (2)②本件不許可処分が適正な手続を経ずになされたか(原告の主張) 原告は,当初,九州経済産業局資源エネルギー環境部鉱業課の職員から,本件出願を許可するとの約束を受けたにもかかわらず,結局,本件不許可処分を受けた。 また,原告が,九州経済産業局長に対し,処分の基準を具体的に定めて公表し,かつ,原告の意見を公開による聴聞で聞くべきことを再三にわたり求めたにもかかわらず,本件不許可処分は,これらの手続を履践せずになされたから,法40条,行政手続法12条,13条に違反する事由がある。 (被告の主張)九州経済産業局資源エネルギー環境部鉱業課の職員が原告に対して本件出願を許可すると約束していたとの事実はない。 法40条は,採掘出願地の増減命令,採掘出願命令及び試掘転願命令を発するに当たって,鉱業出願人と競合関係にある第三者の利益にも配慮して公開の意見聴取手続を必要としたものであって,法31条による不許可処分である本件不許可処分には適用されない。 また本件不許可処分は,行政手続法にいう不利益処分に当たらないから,同法12条及び13条 公開の意見聴取手続を必要としたものであって,法31条による不許可処分である本件不許可処分には適用されない。 また本件不許可処分は,行政手続法にいう不利益処分に当たらないから,同法12条及び13条の適用はない。 よって,本件不許可処分は適正な手続を経てなされたものである。 (3)③本件裁決が違法であるか(原告の主張)本件不許可処分が違法であることを看過してなされた本件裁決は違法である。 (被告の主張)原告は,本件不許可処分の違法性を基礎付ける事実をるる主張するが,本件裁決固有の違法性を基礎付ける事実を主張していない。また,本件裁決固有の違法性を基礎付ける事実は存在しない。 (4)④原告が被告に対し国家賠償法に基づく損害賠償請求権を有するか (原告の主張)ア被告は,昭和53年7月31日に本件鉱区に係る出願を受理して以来,約30年間にわたり,担当者を変更し,あるいは不作為,放置又は違法行為をするなどして,原告の申請に対する応答を引き延ばしてきた。 イ被告の上記不法行為の結果,原告が支出した①試掘権の取得費用(3000万円),②開発,調査,営業及び借入金に係る利息金(合計4993万7339円),③原告の資本金(1000万円),④土地売買契約に係る仕掛金,公害防止協定書に関する支出金及び保安林内作業許可申請に関する支出金(合計500万円)が損害となったが,その合計は9493万7339円を下らない。 また,上記の損害額は,本件不許可処分がされた日である平成17年4月21日から支払済みまで年率10パーセントの割合で増加している。 ウよって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,上記損害額合計9493万7339円及びこれに対する本件不許可処分がされた日である平成17年4月21日から支払済みまで年10パーセントの割合による損 原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,上記損害額合計9493万7339円及びこれに対する本件不許可処分がされた日である平成17年4月21日から支払済みまで年10パーセントの割合による損害金を請求する。 (被告の主張)被告が不作為,放置又は違法行為を行って原告の申請に対する応答を引き延ばしたとの事実はない。被告は,原告から本件採掘権出願設定を受けた後,その内容を検討し,速やかに実地調査を行った上,本件不許可処分をしたものである。なお,原告は,本件採掘権出願設定以前に採掘権の出願申請をしたことはないから,被告による放置はありえない。 原告は,平成11年3月3日から平成16年11月30日までの間,試掘権を行使して目的鉱物の賦存状況を調査して明らかにすべきであったのに,漫然と事業着手延期認可を申請して同認可を受けてきたものであり,本件不許可処分に至ったことにつき,被告には何らの落ち度もない。 第3当裁判所の判断 ①本件不許可処分が法31条所定の要件を欠くか(1)法31条にいう「なお試掘を要する」の意義法31条は,経済産業局長は,採掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の自己の試掘鉱区と重複する場合において,その重複する部分がなお試掘を要すると認めるときは,その部分については,その出願を許可してはならない旨を規定する。 本件出願は,試掘権者であった原告が,試掘権に係る目的鉱物を採掘権の目的鉱物として,試掘鉱区と重複する鉱区について出願されたものであるから,「なお試掘を要すると認め」られるときは,出願は許可できないことになる。 ところで,鉱業権とは,登録を受けた一定の土地の区域(以下「鉱区」という。)において,登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し,及び取得す は,出願は許可できないことになる。 ところで,鉱業権とは,登録を受けた一定の土地の区域(以下「鉱区」という。)において,登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し,及び取得する権利をいい(法5条),鉱業権の対象となる鉱物とは,法3条に列挙された金鉱,銀鉱,長石等をいう。 そして,鉱業権には,試掘権と採掘権がある(同法11条)が,試掘権とは,その存続期間が登録の日から2年とされ,2回に限り地方経済産業局長の許可を受けてその存続期間を2年間延長することができるという一時的な権利である(同法18条)のに対し,採掘権は,存続期間が設けられておらず,ひとたび成立すれば,鉱区内の土地所有権に対して長期にわたり制約を課す権利であるという点で違いがある。 したがって,法は,採掘権の準備的権利である試掘権を行使してもなお鉱物の採掘が経済的に価値がない,すなわち鉱量品位等からみて採堀に適する鉱物の賦存が明らかではない場合(法35条参照)にまで採掘権を許可するとすれば,鉱物資源の合理的な開発(法1条)を期待できないにもかかわらず,上記土地所有権等私権に対して長期にわたり制約を課す上,不必要に鉱 害の危険を高め鉱害のおそれを生じさせることとなることから,採掘権出願について試掘権とは異なる不許可事由(同法29条ないし35条)を法定することにより,鉱物資源の合理的な開発,土地所有権等私権,及び,公益の調和を図ったものと解される。 してみれば,「なお試掘を要する」(法31条)とは,鉱区内において試掘権を行使してもなお,鉱量品位等からみて採堀に適する鉱物の賦存が明らかではない場合を指すものと解すべきである。 (2)そこで,以上のような観点から本件出願をみると,採掘権の出願人は,法22条が規定する,目的鉱物の鉱床の位置,走行,傾斜,厚さその他 鉱物の賦存が明らかではない場合を指すものと解すべきである。 (2)そこで,以上のような観点から本件出願をみると,採掘権の出願人は,法22条が規定する,目的鉱物の鉱床の位置,走行,傾斜,厚さその他鉱床の状態を記述した鉱床説明書を提出しなければならないが,原告が本件出願に伴い提出した鉱床説明書(甲10)には,本件出願に係る目的鉱物の鉱床についての記述もない。 また,平成17年3月9日には,本件鉱区内において実地調査が実施されたが,黒曜石の露頭が認められるものの,それ以外に,本件出願に係る目的鉱物の賦存状況は確認されていない。 したがって,本件出願に係る鉱区内において試掘権を行使してもなお,鉱量品位等からみて採堀に適する鉱物の賦存が明らかではなく,「なお試掘を要する」ものといわざるを得ないから,法31条に基づき本件出願を不許可にした本件不許可処分に違法事由はないといわなければならない。 (3)原告は,要旨,黒曜石は金,銀,長石等鉱物成分を含有しており,これを鉱物として扱うべきであるから,本件鉱内区において鉱量品位等からみて採堀に適する鉱物の賦存が明らかであると主張する。 しかし,黒曜石が含有する金鉱等鉱物については,その鉱量品位等からみて採堀に適するとはいえない。金鉱の稼行品位については,原告提出証拠(甲4)によれば,精錬所設備がある場合には鉱石が1トン中7ないし8グラムの金を含有することが必要であることがうかがわれるが,本件鉱区内の 黒曜石等がこの程度の金を含有する事実についても,何ら証明がない。したがって,仮に黒曜石が微量の金を含有するとしても,これを根拠に黒曜石が鉱物であるということはできない。 また,黒曜石が含有する長石成分についても,P1自身が「黒曜石から長石を抽出することは,経済的でない」と供述しているところでもあり(乙 しても,これを根拠に黒曜石が鉱物であるということはできない。 また,黒曜石が含有する長石成分についても,P1自身が「黒曜石から長石を抽出することは,経済的でない」と供述しているところでもあり(乙3),その鉱量品位等からみて採堀に適すると認めるに足りる証拠はない。 (3)また,原告は,金鉱は熱水鉱床であることを前提に,原告が本件鉱区において採取した黒曜石の存在及び組成からすれば,本件鉱内区において金鉱等鉱物の賦存は明らかであると主張する。 しかし,岩石が熱水により変質していることが熱水鉱床たる金鉱を探す手掛かりになり得るとしても,原告が本件鉱区内で採取した黒曜石には熱水変質がないとうかがわれること(甲11)からすれば,上記の経験則は適用の前提を欠く。加えて,原告が引用する証拠はいずれも金が発見された場所の岩石の組成等についての分析であり,金が賦存する場所において原告の主張する岩石の組成等が形成されることが真実の自然則であったとしても,その逆に,原告の主張する岩石の組成等が形成されていればそこに金が賦存するということに直ちになるわけではなく,そのような経験則を認めるに足りる証拠もない。 その上,証拠(甲10,乙14)によれば,かえって,同じ地域において,採掘に至らず試掘にとどまった試掘坑が200以上存在することがうかがわれるところであるから,本件鉱区周辺の地域特性という一般論をもとに,本件鉱区内において鉱量品位等からみて採堀に適する金鉱等鉱物の賦存が明らかであるということもできない。 (4)なお,原告は,ボーリング調査による鉱床の確認をしていないことについて,九州経済産業局長等被告の職員がボーリング調査を許可しなかった,あるいは採掘権によらなければ黒曜石が露出している場所の地表を1メートル も堀削できないように主張している。 しか いことについて,九州経済産業局長等被告の職員がボーリング調査を許可しなかった,あるいは採掘権によらなければ黒曜石が露出している場所の地表を1メートル も堀削できないように主張している。 しかし,証拠(甲19)によれば,本件試掘権において,深部の金の鉱床を探すためボーリング調査をすることが予定され,またそれが禁止されていなかったことは明らかである。 結局,原告は,立木の伐採,作業場所に至る工事用道路の建設のほか,鉱害防止策等の種々の問題を解決できず,そのためボーリング調査を実施できなかったものと考えられるが,だからといって地表面の黒曜石の存在だけを手掛かりにして地表下の鉱物の存在を推測するような原告の上記主張は採用できるものではない。 よって本件鉱区内の地下において鉱量品位等からみて採堀に適する金鉱等鉱物の賦存が明らかであるとする原告の主張は採用できない。 (5)小括そのほかに本件鉱区内において,鉱量品位等からみて採堀に適する鉱物の賦存が明らかであると認めるに足りる証拠はなく,本件不許可処分は,法31条所定の要件を充足してなされたものと認められる。 ②本件不許可処分が適正な手続を経ずになされたか原告は,本件不許可処分は,九州経済産業局長において処分の基準を具体的に定めて公表し,かつ,原告の意見を公開による聴聞で聞くべきであったにもかかわらずこれらの手続を履践せずになされたから,法40条,行政手続法12条,13条に違反する違法事由がある旨主張する。 しかし,法40条は,その規定振りから明らかなように,地方経済産業局長が採掘出願地の増減命令,採掘出願命令及び試掘転願命令を発するに当たり,出願人及び利害関係人の利益に配慮して公開の聴聞手続を要求したものであり,法31条に基づく不許可処分には適用がない。 また,行政手続法12条及び13 令,採掘出願命令及び試掘転願命令を発するに当たり,出願人及び利害関係人の利益に配慮して公開の聴聞手続を要求したものであり,法31条に基づく不許可処分には適用がない。 また,行政手続法12条及び13条は,不利益処分の存在をその適用の前提とするところ,同法2条4号ロによれば,本件不許可処分のように,申請によ り求められた許認可等を拒否する処分は,同法にいう不利益処分に当たらないとされているから,本件不許可分について,同法12条及び13条の適用はない。 なお,原告は,九州経済産業局資源エネルギー環境部鉱業課の職員が当初本件出願につき許可すると約束していたと主張するが,この事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 よって,本件不許可処分は適正な手続を経てなされたものである。 ③本件裁決が違法であるか処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができず(行政事件訴訟法10条2項),裁決固有の手続的瑕疵を主張する必要がある。 本件では,原告は,本件不許可処分の違法を主張するばかりで,本件裁決固有の手続的瑕疵を主張しておらず,また,同瑕疵を認めるに足りる証拠もないので,本件裁決が違法であるということはできない。 ④原告が被告に対し国家賠償法に基づく損害賠償請求権を有するか原告は,被告が約30年間にわたって原告の申請を放置してきたかのように主張して損害賠償請求をしているが,原告が設立されたのは平成11年2月23日であり(前記第2の1(1)),原告が,本件試掘権を譲渡により取得したのは同月28日にすぎない(前記第2の1(2))から,それより以前の期間において被告の対応に何らかの問題があったとしても,それによる損害 (前記第2の1(1)),原告が,本件試掘権を譲渡により取得したのは同月28日にすぎない(前記第2の1(2))から,それより以前の期間において被告の対応に何らかの問題があったとしても,それによる損害が原告に生じたことを前提とする主張は,まずその点で明らかに失当である。 そして,原告は,本件試掘権を譲り受けた後,九州経済産業局長に対し,試掘権の存続期間の延長申請を2回,事業着手延期申請を2回,そして本件出願と複数回にわたり申請をなしているが,これらの申請については適時に許可あるいは不許可がなされているから,不作為があったり,放置されたような事実 は認められず,この点でも原告の主張には理由がないといわなければならない。 また,本件不許可処分が適法であることは先に説示したとおりであるから,被告に違法行為があるとの主張も採用できない。 結局,原告がいわんとするところは,P2及びP3による昭和53年7月31日の試掘権設定出願に始まる本件鉱区における事業が開始されて既に約30年が経過するにもかかわらず,原告が本件鉱区に係る採掘権設定を受けることができず,そのため原告の事業投資が無駄になっている結果についての不平不満をいっているものと解されるが,本件不許可処分に違法性はなく,またそれ以前の申請手続等に違法性があるとすべき事情は一切うかがえないから,本件不許可処分の結果,本件鉱区における事業継続が断念されることになり,そのため,これまで原告が事業のためしてきた投資がすべて損失に帰したとしても,その損害発生の責任を被告の責任に帰せしめることはできない。 原告の被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求には理由がない。 結論 以上より,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事 告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求には理由がない。 結論 以上より,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官森崎英二裁判官小野裕信裁判官石川慧子

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