平成9(行ツ)136 交際費等非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年2月28日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所 平成7(行コ)5
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判決文本文13,318 文字)

主文 1 原判決中第1審原告敗訴部分のうち次の部分を破棄し,同部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 (1) 第1審被告が第1審原告に対し平成2年8月2日付けで現金出納簿についてした非公開決定(同3年9月12日付け決定により一部取り消された後のもの)のうち,第1審判決別紙(2)の受欄記載の番号1ないし324,326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724ないし745,747ないし983の情報のうち支出項目「会費」に係るものが記録されている現金出納簿中の部分を非公開とした部分につき第1審原告の控訴を棄却した部分(2) 第1審被告が第1審原告に対し平成3年9月12日付けで領収書等についてした非公開決定のうち,交際の相手方が発行した支出項目「会費」に係る領収書を非公開とした部分及び支出項目「会費」に係る支払証明書を非公開とした部分につき第1審原告の控訴を棄却した部分 2 原判決中第1審被告敗訴部分のうち次の部分を破棄し,同部分につき第1審原告の控訴を棄却する。 (1) 第1審被告が第1審原告に対し平成2年8月2日付けで現金出納簿についてした非公開決定(同3年9月12日付け決定により一部取り消された後のもの)のうち,第1審判決別紙(2)の受欄記載の番号1ないし324,326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724ないし745,747ないし983の情報(支出項目「会費」に係るものを除く。)が記録されている現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の「支出の相手方」及び「支出項目の細目」以外の各記載部分を非公開とした部分を取り消した部分(2) 第1審被告が第1審原告に対し平成3年9月12日付けで- 1 -領収書等につ 要欄中の「支出の相手方」及び「支出項目の細目」以外の各記載部分を非公開とした部分を取り消した部分(2) 第1審被告が第1審原告に対し平成3年9月12日付けで- 1 -領収書等についてした非公開決定のうち,交際の相手方が発行した領収書(支出項目「会費」に係るものを除く。)のうち発行者及び現金出納簿における「支出項目の細目」に相当する記載以外の各記載部分を非公開とした部分並びに支払証明書(支出項目「会費」に係るものを除く。)のうち「支出の相手方」及び「支出項目の細目」以外の各記載部分を非公開とした部分を取り消した部分 3 第1審被告のその余の上告を棄却する。 4 第1審原告のその余の上告のうち,第1審被告が第1審原告に対し平成2年8月2日付けで領収書等についてした非公開決定の取消請求に関する部分を却下し,その余の部分を棄却する。 5 第3項に関する上告費用は第1審被告の負担とし,第2項の部分に関する控訴費用及び上告費用並びに前項に関する上告費用は第1審原告の負担とする。 理由 第1 平成9年(行ツ)第137号上告代理人滝田誠一の上告理由について 1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 第1審原告は,平成2年7月19日,愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号。以下「本件条例」という。なお,本件条例は平成12年愛知県条例第19号により全部改正された。)に基づき,平成元年4月1日から同2年3月31日までの間の知事交際費の使途について細目を記載した一切の公文書の公開を請求したところ(以下「本件公開請求」という。),本件条例の実施機関である第1審被告は,同年8月2日,上記期間の知事交際費に係る支出金調書,資金前渡金精算書及び現金出 を記載した一切の公文書の公開を請求したところ(以下「本件公開請求」という。),本件条例の実施機関である第1審被告は,同年8月2日,上記期間の知事交際費に係る支出金調書,資金前渡金精算書及び現金出納簿(以下「本件現金出納簿」という。)が本件公開請求に対応する公文書に当たるとした上,そのうち支出金調書及び資金前渡金精算書についてはこれを公開したが,本件現金出納簿については,本件条例6条1項2号,3- 2 -号及び9号に該当するとして,これを非公開とする旨の決定(以下,この非公開決定を「本件処分1」という。)をした。これを不服として,第1審原告が異議申立てをしたところ,第1審被告は,同3年9月12日,① 上記期間の知事交際費に係る領収書及び支払証明書(以下,それぞれ「本件領収書」,「本件支払証明書」といい,これらをまとめて「本件領収書等」という。)も本件公開請求に対応する公文書に当たるとした上,これを非公開とし,② 本件処分1のうち,香料,祝金,会費,せん別,賛助金及びその他の6種類の支出項目の中の香料及び祝金に係る情報が記録されている本件現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の支出の相手方,支出項目の細目(例えば,実父葬,叙勲祝賀,病気見舞。),知事・副知事の別及び支出金額以外の各記載部分並びに会費,せん別,賛助金及びその他に係る情報が記録されている本件現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の支出の相手方,支出項目の種別(具体的には,会費,せん別,賛助金,その他の別。)及び支出項目の細目以外の各記載部分をそれぞれ非公開とした部分を取り消して同記載部分を公開し,その余の異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件処分2」という。)をした。 (2) 本件条例6条1項は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,公文書 し,その余の異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件処分2」という。)をした。 (2) 本件条例6条1項は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,公文書の公開をしないことができる。」と規定し,同項2号は「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ法令又は条例の定めるところにより,何人でも閲覧することができるとされている情報ロ公表することを目的としている情報ハ法令又は条例の規定に基づく許可,免許,届出等に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要であると認められるもの」と,同項3号は「法人(国又は地方公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公開することにより- 3 -,当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ事業活動によって生ずる危害から人の生命,身体又は健康を保護するために,公開することが必要であると認められる情報ロ違法又は著しく不当な事業活動によって生ずる支障から人の生活を保護するために,公開することが必要であると認められる情報」と,同項9号は「監査,検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの」と規定している。 (3) 愛知県における知事等の交際費の支出については, 該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの」と規定している。 (3) 愛知県における知事等の交際費の支出については,資金前渡の方法が採られている。資金前渡員に指定された秘書課長は,毎月初めに支出見込額に相当する現金の前渡しを受け,必要に応じてこれを支払に充て,その都度,支払先から領収書を徴するか,領収書を徴収することができない場合には支払証明書を作成し,現金出納簿に支出に係る事項を記載している。交際費の支出に当たっては,交際の相手方の地位,相手方と県とのかかわりの深浅,相手方の県行政に対する貢献度等を考慮し,知事等の裁量により決定している。 (4) 本件現金出納簿は,年月日,摘要,受,払,残の各欄からなっており,摘要欄には,支出の相手方,支出項目の種別及びその細目,知事・副知事の別が記載されている。本件領収書には,支払の相手方(発行者),支払年月日,支払金額等が記載されており,本件支払証明書には,本件現金出納簿に記載されているのと同様の内容が記載されている。 (5) 交際費の支出項目は,香料,祝金,会費,せん別,賛助金,その他とされている。香料は,交際の関係者及び県職員の本人又はその家族が死亡した場合に- 4 -支出したものである。祝金は,受賞,叙勲,就任等の祝賀会,総会,講演会,セミナー等の各種大会,出版記念会,パーティー等の諸会合に出席した際の祝金又は祝品購入金である。会費は,知事又は副知事が構成員となっている各種団体の年会費及び当該団体の会合,関係者との懇談会,懇親会に出席した際の会費又は分担金等の諸費用等である。せん別は,関係者の転任,退職,海外渡航に際して支出したものである。賛助金は,県が協賛した会議,記念誌刊行事業,追悼会等のために支出し 懇談会,懇親会に出席した際の会費又は分担金等の諸費用等である。せん別は,関係者の転任,退職,海外渡航に際して支出したものである。賛助金は,県が協賛した会議,記念誌刊行事業,追悼会等のために支出したものである。その他は,県の関係者の病気,出火等に際して支出した見舞金,遺児育英資金,スポーツ振興等の激励金及び謝礼金である。 (6) 本件現金出納簿に記録されている合計983件の情報のうち,第1審判決別紙(2)受欄記載の番号(以下,単に「番号」という。)325,327,577,707,723及び746の情報は,交際の相手方が識別され得ないものであるが,残りの977件の情報は,交際の相手方が識別され得るものである。本件領収書のうち,交際の相手方以外の者が発行した領収書は,上記6件の情報に対応するものであり,いずれも交際の相手方が識別され得ないものであるが,交際の相手方が発行した領収書は,いずれも交際の相手方が識別され得るものである。本件支払証明書に記録されている情報は,すべて交際の相手方が識別され得るものである。 2 本件は,第1審原告が,本件現金出納簿の公開に関し,本件処分1(本件処分2により一部取り消された後のもの。以下同じ。)のうち本件現金出納簿を非公開とした部分の取消しを求めるとともに,本件領収書等の公開に関し,本件処分1は本件領収書等の非公開決定を含んでいると主張して,主位的に本件処分1のうち本件領収書等を非公開とした部分の取消しを,予備的に本件処分2のうち本件領収書等を非公開とした部分の取消しを求めている事案である。 3 原審は,前記事実関係の下において,① 本件現金出納簿に記録されている- 5 -合計983件の情報のうち,交際の相手方が識別され得ない番号325,327,577,707,723及び746の情報は,本件条例6条1 実関係の下において,① 本件現金出納簿に記録されている- 5 -合計983件の情報のうち,交際の相手方が識別され得ない番号325,327,577,707,723及び746の情報は,本件条例6条1項2号,3号及び9号のいずれにも該当しないが,交際の相手方が識別され得るその余の977件の情報は,少なくとも同項9号に該当する,② 本件領収書のうち交際の相手方以外の者が発行したものに記録されている情報は,同項2号,3号及び9号のいずれにも該当しないが,交際の相手方が発行したものに記録されている情報は,少なくとも同項9号に該当する,③ 本件支払証明書に記録されている情報は,少なくとも同号に該当するとした。 4 原審の上記判断中,本件現金出納簿に記録されている上記977件の情報,交際の相手方が発行した本件領収書に記録されている情報並びに本件支払証明書に記録されている情報のうちそれぞれ香料,祝金,せん別,賛助金及びその他に係るものが少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした部分は是認することができるが,上記各情報のうち会費に係るものが少なくとも同号に該当するとした部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1) 知事の交際は,本件条例6条1項9号にいうその他の事務に該当すると解されるから,同号によれば,これらの事務に関する情報を記録した文書を公開しないことができるか否かは,これらの情報を公開することにより,当該若しくは同種の交際事務の目的が損なわれるおそれがあるか否か,又はその公正かつ円滑な執行に支障を生ずるおそれがあるか否かによって決定されることになる。 ところで,知事の交際事務は,相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものであるところ,相手方の氏名等の公表,披露が当然予定されているような よって決定されることになる。 ところで,知事の交際事務は,相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものであるところ,相手方の氏名等の公表,披露が当然予定されているような場合等は別として,相手方を識別し得るような文書の公開によって相手方の氏名等や支出金額が明らかにされることになれば,一般に,交際費の支出の要否,内容等は,県の相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定さ- 6 -れるという性質を有するものであることから,不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は,交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり,交際それ自体の目的に反し,ひいては交際事務の目的が損なわれるおそれがあるというべきである。また,これらの交際費の支出の要否やその内容等は,支出権者である知事自身が,個別,具体的な事例ごとに,裁量によって決定すべきものであるところ,交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には,知事においても上記のような事態が生ずることを懸念して,必要な交際費の支出を差し控え,あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ,知事の交際事務の公正かつ円滑な執行に支障が生じるおそれがあるといわなければならない。したがって,本件各文書のうち交際の相手方が識別され得るものは,原則として本件条例6条1項9号により公開しないことができる公文書に該当するというべきである。 もっとも,知事の交際事務に関する情報で交際の相手方が識別され得るものであっても,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定されているもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがあ 外部に公表,披露されることがもともと予定されているもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがあるとは認められないようなもの(以下「9号の例外要件」という。)は,例外として同号に該当しないと解するのが相当である。上記の交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に該当するか否かは,当該交際が,その行われる場所,その内容,態様その他諸般の事情に照らして,その相手方及び内容がそれを知られることがもともと予定されている特定の関係者以外の不特定の者に知られ得る性質のものであるか否かという観点から判断すべきである。そうであれば,知事と相手方との交際の事実そのものは不特定の者に知られ得るものであっても,支出金額等,交際の内容までは不特定の者に知られ得るものとはいえない情報は,他- 7 -に相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがあるとは認められないような事情がない限り,同号に該当するものと解される(最高裁平成3年(行ツ)第18号同6年1月27日第一小法廷判決・民集48巻1号53頁,最高裁平成8年(行ツ)第210号,第211号同13年3月27日第三小法廷判決・民集55巻2号530頁参照)。 (2) ところで,前記事実関係によれば,本件現金出納簿に記録されている前記977件の情報,交際の相手方が発行した本件領収書に記録されている情報及び本件支払証明書に記録されている情報は,いずれも交際の相手方が識別され得るものであるから,原則として本件条例6条1項9号に該当するというべきである。そこで,以下,これらの情報が9号の例外要件に該当するか否か等につき検討する。 ア会費前記事実関係によれば,会費に関する情報は,知事又は副知事 て本件条例6条1項9号に該当するというべきである。そこで,以下,これらの情報が9号の例外要件に該当するか否か等につき検討する。 ア会費前記事実関係によれば,会費に関する情報は,知事又は副知事が構成員となっている各種団体の年会費及び当該団体の会合,関係者との懇談会,懇親会に出席した際の会費又は分担金等の諸費用等に係るものであるところ,このうち年会費ないし会合等の会費については,その性質上,相手方が一定の金額を定めるのが通常であり,知事が県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に金額を決定するようなものではない。そして,知事が各種団体に加入するかどうか又は会合等に出席するかどうかは,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定されるものであるが,例えば,知事がポスト指定として団体等の会員となっている場合やその会合に出席する場合等,知事の団体等への加入や会合等への出席が不特定の者に知られ得る状態で行われることも少なくないと考えられるのであって,このような場合の会費に係る交際に関する情報は,本件条例6条1項9号に該当しないと解するのが相当である。また,分担金等の諸費用等についても,以上と同様のものが含まれている蓋然性がある。 - 8 -以上によれば,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものの中には,9号の例外要件に該当するものが含まれている蓋然性が高いのであるから,第1審被告としては,抽象的に公表,披露を予定したものはない旨を主張立証するだけでは足りず,会費の具体的な類型を明らかにした上で,これが9号の例外要件に当たらないことを主張立証すべきであり,この点について審理を尽くさずに交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした原審の判断に が9号の例外要件に当たらないことを主張立証すべきであり,この点について審理を尽くさずに交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。そして,9号の例外要件に該当する情報は,同項3号に該当しない可能性があり,また,原審は,会費に関する情報が特定の個人が識別され得るものであるかどうかを認定しておらず,9号の例外要件に該当する情報の同項2号該当性を確定することもできないから,上記違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。 イ香料及びせん別香料及びせん別は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。 したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち香料及びせん別に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当するというべきである。 ウ祝金前記事実関係によれば,祝金に関する情報は,受賞,叙勲,就任等の祝賀会,総会,講演会,セミナー等の各種大会,出版記念会,パーティー等の諸会合に出席した際の祝金又は祝品購入金に係るものであるところ,これらについては,いずれもその性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個- 9 -別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち祝金に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当するというべきである。 エ賛助金前記事実関係 常考えられない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち祝金に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当するというべきである。 エ賛助金前記事実関係によれば,賛助金に関する情報は,県が協賛した会議,記念誌刊行事業,追悼会等のために支出した賛助金に係るものであるところ,これらの各種行事,事業等への賛助金は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち賛助金に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当すると解するのが相当である。 オその他前記事実関係によれば,その他に関する情報は,県の関係者の病気,出火等に際して支出した見舞金,遺児育英資金,スポーツ振興等の激励金及び謝礼金に係るものであるところ,これらの見舞金,遺児育英資金,激励金及び謝礼金は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうちその他に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当すると解するのが相当である。 5 以上によれば,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち香料,祝金,せん別,賛助金及びその他に係るものが- 10 -少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした部分は,正当として是認することができ,原判決 ている交際の相手方が識別され得る情報のうち香料,祝金,せん別,賛助金及びその他に係るものが- 10 -少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした部分は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。この部分に関する第1審原告の論旨は理由がなく,上記違法のあることを前提とする所論違憲の主張は,その前提を欠く。しかしながら,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが少なくとも同号に該当するとした部分には,法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。この部分に関する第1審原告の論旨は理由があり,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところに従って,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが同項2号,3号又は9号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。 なお,第1審原告は,本件領収書等の公開に関する主位的請求に関する部分については上告理由を記載した書面を提出しないから,同部分に関する上告は,不適法として却下することとする。 第2 平成9年(行ツ)第136号上告代理人佐治良三,同後藤武夫,同林昇平,同寺澤義則,同松田雅仁,同森岡士郎,同志治孝利,同若山泰文,同田中宏之の上告理由第一点について本件条例は,県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,公文書の公開に関し必要な事項を定めている(1条)。本件条例における公文書の公開とは,実施機関が本件条例の定めるところにより公文書を閲覧に供し,又は公文書の写しを交付することをいい(2条3項),実施機関は,本件条例に基づき公文書の公開を求める請求書を受理したとき 公文書の公開とは,実施機関が本件条例の定めるところにより公文書を閲覧に供し,又は公文書の写しを交付することをいい(2条3項),実施機関は,本件条例に基づき公文書の公開を求める請求書を受理したときは,請求に係る公文書の公開をするかどうかの決定をしなければならないものとされている(8条1項)。そして,県内に住所を有する者や県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体等,5条- 11 -各号のいずれかに該当する者は,実施機関に対して公文書の公開を請求することができるのであり(5条),本件条例には,請求者が請求に係る公文書の内容を知り,又はその写しを取得している場合に当該公文書の公開を制限する趣旨の規定は存在しない。これらの規定に照らすと,【要旨】本件条例5条所定の公開請求権者は,本件条例に基づき公文書の公開を請求して,所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し,又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから,請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても,当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではないと解するのが相当である。したがって,本件処分1のうち原審係属中に書証として提出された番号325,327,577,707,723及び746の情報が記録されている本件現金出納簿中の部分を非公開とした部分並びに本件処分2のうち原審係属中に書証として提出された交際の相手方以外の者が発行した本件領収書を非公開とした部分を取り消すべきものとした原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。 第3 同第二点及び第三点について 1 本件条例6条2項は,「実施機関は,公文書に前項各号のいずれかに該当す として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。 第3 同第二点及び第三点について 1 本件条例6条2項は,「実施機関は,公文書に前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,当該該当する情報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,かつ,その分離により公文書の公開の請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,同項の規定にかかわらず,当該該当する情報に係る部分を除いて,公文書の公開をしなければならない。」と規定している。 原審は,番号1ないし324,326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724ないし745,747ないし983の情報が記録- 12 -されている本件現金出納簿中の部分,交際の相手方が発行した本件領収書及び本件支払証明書について,「支出の相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当する記載部分を除いた部分は本件条例6条1項2号,3号,9号により公開しないことができるものとは認められないから,実施機関である第1審被告は,同条2項に基づき,「支出の相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当する記載部分を除いた部分を公開すべきであり,本件処分1及び本件処分2のうち当該部分を非公開とした部分は違法であるとした。 2 しかしながら,これらの文書について,本件条例6条2項に基づき「支出の相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当する記載部分を除いた部分を公開すべきであるとした原審の上記判断部分は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。 本件条例6条2項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに同条1項各号のいずれかの事由( ることができない。その理由は,次のとおりである。 本件条例6条2項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに同条1項各号のいずれかの事由(以下「非公開事由」という。)に該当するものがあるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開することを実施機関に義務付けているにすぎない。すなわち,本件条例には,公開請求に係る公文書に記録されている情報が条例所定の非公開事由に該当するにもかかわらず,当該情報の一部を除くことにより,残余の部分のみであれば非公開事由に該当しないことになるものとして,当該残余の部分を公開すべきものとする定めは存在しない(個人識別情報に関するこのような定めの例として,行政機関の保有する情報の公開に関する法律6条2項,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)8条2項参照)。そうすると,上記のような定めを欠く本件条例6条2項の解釈としては,非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開す- 13 -ることまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。したがって,実施機関においてこれを細分化することなく一体として非公開決定をしたときに,住民等は,実施機関に対し,同条2項を根拠として,公開することに問題のある箇所のみを除外してその余の部分を公開するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該非公開決定の取消訴訟において,実施機関がこのような態様の部分公開をすべきであることを理由として当該非公開決定の一部を取り消すことはできないというべきである(前掲平成13年3月27日判決参照)。 本件各文書についてこれをみると, 施機関がこのような態様の部分公開をすべきであることを理由として当該非公開決定の一部を取り消すことはできないというべきである(前掲平成13年3月27日判決参照)。 本件各文書についてこれをみると,前記第1の1(4)の事実関係等によれば,本件現金出納簿については,各交際費の支出ごとにその年月日,金額,摘要,金員の受払等の関係記載部分が当該交際費に係る知事の交際に関する独立した一体的な情報を成すものとみるべきであるから,当該記載部分を更に細分化して相手方識別部分等その一部のみを非公開としその余の部分を本件条例6条2項に基づいて公開しなければならないものとすることはできない。本件領収書及び本件支払証明書については,各交際費の支出ごとにこれに対応する領収書又は支払証明書に記録された情報が全体として当該交際費に係る知事の交際に関する独立した一体的な情報を成すものとみるべきであるから,同様に,これを更に細分化してその一部のみを非公開としその余の部分を公開しなければならないものとすることはできない。 3 以上によれば,原審の前記判断には法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,本件処分1及び本件処分2のうち,番号1ないし324,326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724ないし745,747ないし983の情報(会費に係るものを除く。)が記録されている現金出納簿中の部分,交際の相手方が発行した本件領収書(会費に係るものを除く。)及び本件支払証明- 14 -書(会費に係るものを除く。)についてこれを全部非公開とした部分に違法はないから,この部分については第1審原告の控訴を棄却すべきであ 本件領収書(会費に係るものを除く。)及び本件支払証明- 14 -書(会費に係るものを除く。)についてこれを全部非公開とした部分に違法はないから,この部分については第1審原告の控訴を棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷(裁判長裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄裁判官町田顯裁判官深澤武久)- 15 -

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