令和5(行コ)90 所得税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月30日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文11,480 文字)

令和5年11月30日判決言渡令和5年(行コ)第90号所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(行ウ)第323号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 α税務署長が訴訟承継前控訴人亡Cに対し平成30年8月21日付けでした 平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」と総称することがある。)の更正処分のうち、総所得金額205,831,978円及び納付すべき税額69,281,200円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち4,012,000円を超える部分を取り消す。 3 α税務署長が亡Cに対し平成30年8月21日付けでした平成28年分の所 得税等の更正処分のうち、総所得金額73,402,639円及び納付すべき税額マイナス(還付金の額に相当する税額があることをいう。以下同じ。)3,080,800円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 4 α税務署長が亡Cに対し平成30年11月8日付けでした平成28年分の所 得税等の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分及び令和元年10月11日付けでした平成28年分の所得税等の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分のうち、総所得金額73,402,639円及び納付すべき税額マイナス3,080,800円を超える部分を取り消す。 5 α税務署長が亡Cに対し平成30年11月8日付けでした平成29年分の所 得税等の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分のうち、総 所得金額マイナス4,805,996円及び納付すべき税額マイナス54,5 11月8日付けでした平成29年分の所 得税等の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分のうち、総 所得金額マイナス4,805,996円及び納付すべき税額マイナス54,554,892円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要(略称は原判決の例による。) 1 本件は、α税務署長(処分行政庁)が、①亡Cの平成27年分及び平成28年分の所得税等について、亡Cの所有していた車両が「使用又は期間の経過に より減価する資産」に該当するとして、その譲渡所得の金額の算定上、取得価額から保有期間に係る減価の額を控除して取得費を計算し、また、亡Cの外貨預金口座への入出金により生じた為替差損益を雑所得として、その譲渡原価を総平均法に準ずる方法により計算した上、申告漏れがあるなどとして、それぞれ増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったこと、②増額更正 処分のされている平成28年分の所得税等について、為替差損益に係る所得は事業所得に該当する等として、亡Cが2度にわたり行った更正の請求に対し、更正すべき理由がない旨の各通知処分を行ったこと、③平成29年分の所得税等につき、為替差損益に係る譲渡原価を総平均法により計算した上で亡Cが行った更正の請求に対し、更正すべき理由がない旨の通知処分を行ったことにつ いて、亡Cが、被控訴人に対し、売却した上記車両中には「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しないものがあること、為替差損益は譲渡所得に該当すること及び為替差損益に係る外国通貨の譲渡原価の計算方法は総平均法によるべきことなどを理由に、上記増額更正処分等及び通知処分の一部の取消しを求める事案である。 原審が、本件訴えのうち、上記平成28年分各通知処分の取消し(前記第1の4、請求の趣旨第3項) るべきことなどを理由に、上記増額更正処分等及び通知処分の一部の取消しを求める事案である。 原審が、本件訴えのうち、上記平成28年分各通知処分の取消し(前記第1の4、請求の趣旨第3項)に係る部分を却下し、亡Cのその余の請求をいずれも棄却したところ、亡Cがこれを不服として控訴した。なお、亡Cは、当審係属中に死亡したため、相続人である控訴人が、当審において訴訟手続を承継した。 2 関係法令等の定め、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次の とおり原判決を補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」第2の1から5まで(原判決3頁9行目冒頭から11頁2行目末尾まで、35頁から41頁及び42頁2行目冒頭から81頁5行目末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決5頁15行目の「参入していない。」を「算入していない。」に改め る。 原判決10頁10行目末尾に改行した上、次のとおり加える。 「亡Cの相続の開始亡Cは、控訴提起後の令和5年5月3日に死亡した。控訴人は、亡Cの相続人(養子)である。」 原判決10頁20行目から21行目にかけての「ア本件車両A及び本件車両B(以下「本件車両A及びB」と総称する。)の減価償却資産該当性」を「ア本件車両A及び本件車両B(以下「本件車両A及びB」と総称する。)が「使用又は期間の経過により減価する資産」(法38条2項)に該当するか否か」に改める。 原判決10頁25行目の「端数処理につき、小数点以下3位未満を切り上げず、小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか」を「1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上 目の「端数処理につき、小数点以下3位未満を切り上げず、小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか」を「1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに違 法な点があるか」に改める。 原判決81頁1行目の「小数点以下の端数処理をせず、」の次に「各取得価額の算定時に」を加え、5行目の「3位」を「2位」に改める。 3 当審における控訴人の補充主張 争点 ア(本件車両A及びBが「使用又は期間の経過により減価する資産」 (法38条2項)に該当するか否か)について ア法49条等は、資産の種類(類型)を除き、個々の資産に係る事象を捨象して償却費の計算をすることとしているわけではない。また、施行令6条柱書の規定の構造からすれば、同条の「時の経過によりその価値の減少しないもの」とは、同項各号に掲げる資産の種類(類型)とは別に、資産の価値に影響を及ぼす個別具体的な事情を勘案するための要件であ ると解される。 イ法38条2項の「使用又は期間の経過により減価する資産」の解釈において、減価償却の趣旨のみを考慮すべきではない。譲渡所得課税の趣旨からすれば、同項にいう「減価」とは価額(時価)の減少を意味すると解すべきである。また、基本通達2-14は、美術品等に該当すれば「時の経 過によりその価値の減少しない」資産に当たる旨を定めたものではなく、同通達が定める判定基準は、多数の者が鑑賞することで価値が減少していったり、時の経過に応じて定量的に価値がなくなっていったりする関係にないことを推測させるものではない。更に、基本通達2-14及び改正前 達が定める判定基準は、多数の者が鑑賞することで価値が減少していったり、時の経過に応じて定量的に価値がなくなっていったりする関係にないことを推測させるものではない。更に、基本通達2-14及び改正前基本通達2-14は、鑑賞対象としての価値以外を有する場合に歴史的価 値を必須とするものではない。 したがって、法38条2項にいう「使用又は期間の経過により減価」するか否かは、その使用目的・態様など個別具体的な事情を勘案しながら、その価格形成要因となった価値に照らして、その価額が使用又は期間の経過により減少していくか否かという観点から判断すべきである。 また、仮に価値の目減りが将来にわたって生ずる余地がないものという評価が社会通念上確立しているかどうかによって判断すべきであるとしても、当該資産における実用的な機能以外の価値が当該資産の価値として一般的に承認される結果、その価額が使用又は期間の経過により減少しないといえるか否かという観点から判断すべきである。 ウ Dは、フェラーリ社の歴史の中でも重要なコレクションカーであり、か つ、希少性を販売戦略の旨とするフェラーリ社の製造する車種の中でも生産台数が相当少ない部類に入ることから、その機能面のみならず、美的側面や希少性も価格形成要因の相当部分を占めている。また、Eは、フェラーリにおいても人気の高いスーパーカーの最終生産モデルであり、比較的生産台数が少ない部類に入ることから、その機能面のみならず、美的側面 や希少性にも相当程度着目して価格が形成されている。そのような美的価値、希少価値は、美術品と同様に、その性質上期間の経過により減少するものではないところ、亡Cは、そのような美的側面、希少性に着目して、蒐集品として本件車両A及びBを取得し、所有していたので な美的価値、希少価値は、美術品と同様に、その性質上期間の経過により減少するものではないところ、亡Cは、そのような美的側面、希少性に着目して、蒐集品として本件車両A及びBを取得し、所有していたのであるから、本件車両A及びBは、その価格形成要因となった価値に照らして、その価額 が使用又は期間の経過により減少するものではなく、法38条2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない。また、仮に価値の目減りが将来にわたって生ずる余地がないものという評価が社会通念上確立しているかどうかによって判断すべきであるとしても、本件車両A及びBは、価値の目減りが将来にわたって生ずる余地がないものとい う評価が社会通念上確立しているといえる。 なお、投機の対象となっているのは、美術品も同様であり、その市場価値も長年にわたり維持されるわけではないから、投機対象となっていること、及びそのために市場価値が変動し得ることを理由に、「時の経過によりその価値の減少しない」資産に該当しないと解することはできない。 争点 イ(本件為替差損益に係る所得が、雑所得と譲渡所得のいずれに該当するか)について外貨も譲渡性のある財産権であり、法33条1項の「資産」について外貨を除外する規定もないから、為替差損益は、資産の譲渡損益にほかならず、その所得は資産の譲渡所得に該当する。 争点 ウ(「総平均法に準ずる方法」により計算を行うことに違法な点 があるか)について外貨の取得費の評価方法の合理性を判断する枠組みとして、その性質が類似する資産について定められた法定評価方法に依拠することが合理的であるかという判断枠組みによる以上、課税処分の時点で法定評価方法を定める法令が施行されていないことは、その法定評価 して、その性質が類似する資産について定められた法定評価方法に依拠することが合理的であるかという判断枠組みによる以上、課税処分の時点で法定評価方法を定める法令が施行されていないことは、その法定評価方法を採用しない理由にならな い。 暗号資産について総平均法に準ずる方法が規定されなかったのは、暗号資産が、その性質上、個々の資産の個別性が問題となり得ないこと、そのために個々の暗号資産について譲渡所得課税が行われないことから、有価証券のように個々の資産ごとに総収入金額と取得費を計算することが本来的な計算 方法であり、それに近似する方が正確であるとの考え方が成り立たないからであると解される。これと同様に外貨も、総平均法に準ずる方法を適用する前提を欠いており、外貨の取得費等を計算する評価方法は、その性質が最も近似する暗号資産に係る法定評価方法である総平均法と解するのが合理的である。 争点 ウ(1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか)について外貨が有価証券に類似しているというのであれば、1単位当たりの取得単 価に関する小数点以下の端数処理も、有価証券の端数処理方法を採用すべきであるところ、有価証券の1単位当たりの金額の端数処理方法に関して、「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」の37の10・37の11共-14は、施行令118条1項に規定する総平均法に準ずる方法等を適用するに当たって行う端数処理につい ては、その端数を切り上げる旨を定めている。したがって、外貨の1単位当 たりの 1共-14は、施行令118条1項に規定する総平均法に準ずる方法等を適用するに当たって行う端数処理につい ては、その端数を切り上げる旨を定めている。したがって、外貨の1単位当 たりの取得単価に関する小数点以下の端数処理も、同様にその端数を切り上げるべきである。切り上げの端数処理を行う桁数については、米ドルの1単位当たりの為替レートは、一般に小数点以下2位までであるから、1単位の金額を小数点以下2位までとし、小数点以下2位未満を切り上げるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、控訴人の本件控訴を棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおりである。 2 本件各更正処分等の適法性について次のとおり原判決を補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張 に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」第3の2から4まで(原判決11頁20行目冒頭から32頁13行目末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決11頁20行目から21行目にかけての「本件車両A及びBの減価償却資産該当性」を「本件車両A及びBが「使用又は期間の経過により減価 する資産」に該当するか否か」に改める。 原判決31頁22行目から23行目にかけての「端数処理について小数点以下3位未満を切り上げず、小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか」を「1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ド ルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか」に改める。 原判決31頁26行目から32頁4行目にかけての「そして、小数点以下の数値について切り上げを行わな じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか」に改める。 原判決31頁26行目から32頁4行目にかけての「そして、小数点以下の数値について切り上げを行わないと、納税者が行うものも含め事務処理に煩雑さが生ずる(取引額が大きい場合など、端数処理の有無によって金額に 大きな差が生ずる可能性がある。)ことをも踏まえれば、小数点以下の端数 処理を行わずに計算を行うことにつき不合理な点も見当たらない。」を「そして、1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに不合理な点は見当たらない。」に改める。 原判決32頁10行目から12行目にかけての「計算の際には小数点以下の端数処理を行うことには合理性が認められるものというべきである。」を「取得価額の計算において、1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げ る方法によることには合理性が認められるものというべきである。」に改める。 3 当審における控訴人の補充主張に対する判断 争点 ア(本件車両A及びBが「使用又は期間の経過により減価する資産」(法38条2項)に該当するか否か)について ア控訴人は、法38条2項にいう「使用又は期間の経過により減価」するか否かは、その使用目的・態様など個別具体的な事情を勘案しながら、その価格形成要因となった価値に照らして、その価額が使用又は期間の経過により減少していくか否かという観点から判断すべきであり、仮に るか否かは、その使用目的・態様など個別具体的な事情を勘案しながら、その価格形成要因となった価値に照らして、その価額が使用又は期間の経過により減少していくか否かという観点から判断すべきであり、仮に、価値の目減りが将来にわたって生ずる余地がないものという評価が社会通念上 確立しているかどうかによって判断すべきであるとしても、当該資産における実用的な機能以外の価値が当該資産の価値として一般的に承認される結果、その価額が使用又は期間の経過により減少しないといえるか否かという観点から判断すべきである旨主張する。 しかし、引用した原判決第3の2で説示したとおり、法38条2項及 び法49条1項の趣旨に照らせば、法38条2項の「家屋その他使用又は 期間の経過により減価する資産」と法49条1項の減価償却資産の範囲は一致すると解すべきであり、上記取得費控除及び減価償却の規定自体が、ある資産の価値の目減りを正確に導出することは困難である以上、資産の類型ごとに目減りの範囲及び程度を擬制するのもやむを得ないとの前提に基づくものである。そうすると、ある資産が、法38条2項の「使用又は 期間の経過により減価」しない資産に該当するか否かの判断も、当該資産が、その属する類型において、社会通念上想定される本来的な目的・効用を前提に、当該目的・効用が期間の経過により減少していくか否かという点から行われるべきであり、もっとも、個別の資産につき、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれて いることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には、これと異なる判断がされるにすぎないものと解するのが相当である。 これに反する控訴人の主張は、「使用又は期間の経過により減価」する資産か否かの 念上確立しているといえるような例外的な場合には、これと異なる判断がされるにすぎないものと解するのが相当である。 これに反する控訴人の主張は、「使用又は期間の経過により減価」する資産か否かの判断において、一般的に当該資産の価値に影響を及ぼす個別具体的な事情を勘案すべき旨を主張するものであり、個別の資産の減価を 正確に算定することが困難であることを前提に、類型ごとに減少の範囲及び程度を擬制するという上記法令の趣旨に照らして採用することができない。 イ控訴人は、本件車両A及びBは、その価格形成要因となった価値に照らして、その価額が使用又は期間の経過により減少するものではなく、法 38条2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない、また、本件車両A及びBは、価値の目減りが将来にわたって生ずる余地がないものという評価が社会通念上確立している旨主張する。 しかし、控訴人の主張する判断枠組みが採用できないことは上記アで説示したとおりであるから、上記主張はその前提を欠くというべきである。 そして、引用した原判決第3の2で説示したとおり、本件車両A及びB は、自動車本来の機能が現在まで維持されており、それぞれ美的側面及び市場における希少性も価格形成要因の相当部分を占めていると認められるとしても、それらの製造時期に照らして、施行令6条の「時の経過によりその価値の減少しない」資産に該当する「骨とう」、「古美術品、古文書、出土品、遺物等」に類似するといえる程度の長期間を経てもなお高い価値 を維持しているような場合に当たると解することはできないから、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるよ 高い価値 を維持しているような場合に当たると解することはできないから、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しない。 したがって、本件車両A及びBは、価値の目減りが将来にわたって生 ずる余地がないものという評価が社会通念上確立している旨の控訴人の上記主張も採用することができない。 争点 イ(本件為替差損益に係る所得が、雑所得と譲渡所得のいずれに該当するか)について控訴人は、為替差損益は、資産の譲渡損益にほかならず、その所得は資産 の譲渡所得に該当する旨主張する。 しかし、外貨は、我が国において、強制通用力はないが、外貨の給付を債権の目的とした場合に、債務者は、外貨で弁済することができるとされ(民法402条3項)、更に外貨をもって債権額が指定された金銭債権については、債権者は債務者に対して外貨又は円貨のいずれによってもこれを請求す ることができると解される(最高裁昭和48年(オ)第305号同50年7月15日第3小法廷判決・民集29巻6号1029頁)ことからすると、外貨を債権の目的とする取引においては、特定物のように当該通貨の給付自体に重きを置くのではなく、外貨それ自体が貨幣として価値の尺度とされているということができる。そうすると、引用した原判決第3の3で説示したと おり、為替差損益は、外貨と円貨との相対的な換算レートが変動することに より生じるものであって、当該外貨自体の価値の増減によるものではないから、譲渡所得の対象となる資産には該当せず、他の類型の所得にも該当しない以上、雑所得に区分されるというべきである。 争点 ウ(「総平均法に準ずる方法」により計算を行うことに によるものではないから、譲渡所得の対象となる資産には該当せず、他の類型の所得にも該当しない以上、雑所得に区分されるというべきである。 争点 ウ(「総平均法に準ずる方法」により計算を行うことに違法な点があるか)について 控訴人は、外貨の取得費等を計算する評価方法は、その性質が最も近似する暗号資産に係る法定評価方法である総平均法と解するのが合理的である旨主張する。 しかし、為替差益が雑所得を生じた場合に、当該所得の計算上必要経費に算入すべき外国通貨の取得費については、法においてその評価方法に係る直 接の定めはないところ、引用した原判決第3の4ウのとおり、外貨は、有価証券と同様に代替性があり、その時点ごとに異なる為替相場が適用されることによって単価が異なるものの、通貨としての物的性格は同じであるから、本件各為替取引のように複数回にわたり為替取引が行われた場合の譲渡原価の計算を有価証券と同様に総平均法に準ずる方法により行うことには、その 類似性に照らして合理性がある。これに対し、控訴人が主張するように、外貨に暗号資産と類似する点があるとしても、総平均法よりも総平均法に準ずる方法による方が、為替差益が生じた時における取得価額をより正確に算定できるというべきであるから、総平均法によらなければ合理性がないとはいえない。 争点 ウ(1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額において小数点以下を切り上げる方法によることに違法な点があるか)について控訴人は、外貨の1単位当たりの取得単価に関する小数点以下の端数処理 について、小数点以下2位未満を切り上げるべきである旨主張する。 る方法によることに違法な点があるか)について控訴人は、外貨の1単位当たりの取得単価に関する小数点以下の端数処理 について、小数点以下2位未満を切り上げるべきである旨主張する。 しかし、外国通貨の取得価額の計算に当たり、1単位当たりの取得単価に関する小数点以下の端数処理について、所得税法上特段の定めは設けられていないから、租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて(法令解釈通達)の37の10・37の11共―14において、施行令118条1項の規定により計算された1単位当たりの金額1円未満の端数 (公社債は額面100円当たりの価額とした場合の小数点以下2位未満の端数)があるときは、原則として、その端数を切り上げるとされているとしても、外貨における1単位当たりの取得単価において小数点以下の端数を切り上げない処理が直ちに合理性を欠くとはいえない。本件のように取引額が多額の場合、小数点以下の端数処理により為替差損益の額に大きな差額が生じ ることを考慮すると、1単位当たりの取得単価における端数処理につき、小数点以下2位未満を切り上げず、これに本件外貨預金口座から払い出した米ドルの金額を乗じて算出した取得価額の段階において小数点以下を切り上げる方法によることには合理性が認められるというべきである。 したがって、控訴人の上記主張は、いずれも採用することができない。ま た、他に控訴人の主張する諸点についても、前記認定判断に照らし、いずれも採用することができない。 4 平成28年分各通知処分の取消請求(前記第1の4、請求の趣旨第3項)に係る訴えの利益について増額更正処分後に通則法23条1項の規定によりされた更正の請求に対する 更正をすべき理由がない旨の通知処分は、上記 分の取消請求(前記第1の4、請求の趣旨第3項)に係る訴えの利益について増額更正処分後に通則法23条1項の規定によりされた更正の請求に対する 更正をすべき理由がない旨の通知処分は、上記増額更正処分により一旦確定した税額について、更正の請求の理由を踏まえて改めて調査がされた上で、上記増額更正処分後の税額を減額すべき理由はないとしてされる処分である(同項、同条4項)。そうすると、上記通知処分は、上記増額更正処分とは別個にされた新たな処分であることが明らかであり、上記増額更正処分に吸収され、又は その内容が実質的に包摂されるということもできないのであって、上記更正の 請求をした者は、上記通知処分が取り消された場合には、減額更正処分を受ける可能性を回復することができる以上、上記通知処分の取消しを求める訴えの利益を有すると解するのが相当である(最高裁令和4年(行ヒ)第228号、第229号同5年11月6日第二小法廷判決・公刊物未登載)。 したがって、控訴人は、平成28年分各通知処分の取消しを求める訴えの利 益を有するということができる。 ところで、本件訴えのうち、上記平成28年分各通知処分の取消しに係る部分を却下した原判決は、これと結論を異にするが、前記2及び3のとおり、本件各更正処分等は適法であり、平成28年分各通知処分に固有の違法事由が争われていない本件において、同処分を違法とすべき事由は見当たらない。そう すると、同処分の取消しを求める請求は理由がなく、本来、これらを棄却すべきものであるが、控訴人のみが控訴した本件においては、原判決を控訴人の不利益に変更することは許されない(民事訴訟法304条)。 5 よって、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民 が控訴した本件においては、原判決を控訴人の不利益に変更することは許されない(民事訴訟法304条)。 よって、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官永谷典雄 裁判官中嶋功 裁判官鈴木義和(別紙省略)

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