【DRY-RUN】○ 主文 被申立人が申立人に対してした昭和五四年六月八日付厚生省発医第八九号による昭 和五四年六月一五日から同年一二月一四日までの期間、医業の停止を命ずる旨の処 分は、本案判決確定に至るまでその効力を
○ 主文被申立人が申立人に対してした昭和五四年六月八日付厚生省発医第八九号による昭和五四年六月一五日から同年一二月一四日までの期間、医業の停止を命ずる旨の処分は、本案判決確定に至るまでその効力を停止する。 申立費用は被申立人の負担とする。 ○ 理由一本件申立ての趣旨及び理由は別紙(一)ないし(四)記載のとおりであり、これに対する被申立人の意見は別紙(五)、(六)記載のとおりである。 二疎明によれば、申立人は昭和二五年医師免許を取得して以来、産科、婦人科及び肛門科を専門とする医療業務に従事して来た者であるが、かねてから、妊娠七か月以降となつてなお人工妊娠中絶を希望する妊婦に出産をすすめ、出生した新生児を、養育を希望する他人にその実子として出生証明書を交付するという、いわゆる実子斡旋行為を行なつていたところ、これが昭和四八年大々的に報道されたため、社会に大きな反響を呼び起こし、これに対し愛知県産婦人科医会の会長Aから昭和五二年八月告発がなされたことから、申立人のいわゆる実子斡旋行為は医師法第二〇条及び第三三条並びに刑法第一五七条第一項及び第一五八条第一項に触れるものとし仙台簡易裁判所に公訴提起、略式命令の請求をされ、昭和五三年三月一日罰金二〇万円の言渡しを受け、右裁判は正式裁判に移行することなく確定したこと、その後被申立人は申立人が罰金刑に処せられたことをもつて医師法第七条第二項に該当するものとし、医道審議会の議を経て主文掲記の医業停止処分(以下「本件処分」という。)をしたことが認められる。 三そこで本件処分により回復の困難な損害が発生し、かつこれを避けるため緊急の必要があるか否かにつき検討する。 疎明によれば、申立人は昭和三三年以来肩書住所地において診療所を開業し、現在の規模は医師一名(申立人)、看護婦五名、事務員二名、掃除賄婦三名 つこれを避けるため緊急の必要があるか否かにつき検討する。 疎明によれば、申立人は昭和三三年以来肩書住所地において診療所を開業し、現在の規模は医師一名(申立人)、看護婦五名、事務員二名、掃除賄婦三名を擁し、また家族構成は妻のほか、近畿大学医学部三年の長男、松本歯科大学三年の次男及び高校二年の三男をかかえていること、申立人は昭和五二年看護婦宿舎の建築及び二人の息子の入学金の調達等のため合計金七五〇〇万円を銀行から借受け、逐次返済して来たものの、昭和五四年六月九日現在の債務は四七四〇万円にのぼり、その返済として月額元利合計一二〇万円近い支払を要し、更に経常的費用として看護婦等従業員九名(申立人の妻を除く。 )に対する給料月額一〇〇万円程度及び長男、次男への仕送りを含む生活費として月額七〇万円程度の支払が見込まれる他、昭和五四年七月二三日には申立人振出の額面八〇〇万円の約束手形の決済が予定されているところ、これらの支払に充当される資産は昭和五四年六月九日現在の銀行預金約二四〇万円と申立人の診療収入による以外は他に適切な支払資金を有しないことが一応認められる。 ところで申立人は本件処分により一切の医業が禁止されたため、従来どおりの診療所運営を維持するためには他に代替医師を求める他ないものであるが、現在のところ義父である秋田県大曲市在住のB医師が申立人の医業を引き継いでいるものの、右B医師は既に七五才の高齢であるうえその専門は肛門科及び耳鼻科であるため、申立人に代替するには相当の無理があるのみならず、長期に及ぶ代替は困難といわざるを得ないし、申立人がいわゆる実子斡旋の行為を継続して来た等の理由により既に日本母性保護医協会及び日本産科婦人科学会宮城地方部会を除名されるなど、産婦人科医の中にあつて孤立の状態にあることがうかがわれ、かかる特殊事情を考慮 る実子斡旋の行為を継続して来た等の理由により既に日本母性保護医協会及び日本産科婦人科学会宮城地方部会を除名されるなど、産婦人科医の中にあつて孤立の状態にあることがうかがわれ、かかる特殊事情を考慮すると、他の代替医師を探すことも事実上困難であると一応認められる。 そうすると申立人は本件処分により医業を停止されると、看護婦等の従業員の解雇或いは診療所施設等の処分を余儀なくされる状況に陥る可能性があるものと推認されるが、かくては仮に本案において本件処分が取消されたとしても従前どおり診療所を再開することは困難であると認めるべく、かかる損害の発生は行政事件訴訟法第二五条第二項にいう「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するものと解するのが相当である。 なお付言するに、被申立人は申立人所有不動産には極度額一億円の根抵当権が設定されているところ、昭和五四年六月九日現在の借入額は四七四〇万円にすぎず、また、そのほかにも抵当物件となつていない申立人所有の不動産が存在し、しかも申立人が六か月後に医業を再開することは確実であるから資金調達は容易である旨主張するが、前記のとおり申立人の預貯金が乏しいことや医業停止に随伴する障害のため今後の返済見込が不安定となつている点等を考慮すると、右根抵当権設定ないし抵当物件となし得る不動産の存在の一事をもつて、資金調達が容易であるとはいえず、他にこれを肯定するに足りる疎明もない。 四次に本案についての理由の有無につき検討するに、疎明によれば、本件処分は申立人が罰金二〇万円に処せられたことが医師法第四条第二号に該当するものとして同法第七条第二項により処分されたものであるが、右罰金刑に処せられた公訴事実自体は申立人の認めるところであり、申立人の行為は出生した嬰児の母胎を偽るというものであるから、その行為は 当するものとして同法第七条第二項により処分されたものであるが、右罰金刑に処せられた公訴事実自体は申立人の認めるところであり、申立人の行為は出生した嬰児の母胎を偽るというものであるから、その行為は社会の基本的関係の一つである母胎との関連を最も正確に証明すべき出生証明書に寄せる社会的信頼を動揺させ、右基本的関係に混乱を生ぜしめる虞れがあるもので、当該嬰児の法的地位を不安定なものにするのみならず、将来近親婚の可能性等優生学上の問題をも惹起しかねないことを考慮すると申立人の行為は必ずしも軽視することはできないというべきであるが、一方申立人がこのような真実に反する出生証明書を作成するに至つた動機が営利等不純な目的に出たものではなく、もつぱら母親の意図する人工妊娠中絶により失われるべき胎児の生命を救わんとする点にあつたこと等従来の破廉恥罪等を処分理由とする同種処分と同列に論じ得ない側面を有していることを考慮すると、本件処分につき被申立人にある程度の裁量が認められているにしても、前記事情から直ちに本案につき理由なしと断定することはできないのであつて、本件処分に至る裁量判断の適否につきさらに慎重なる審理を要するものと判断されるのである。従つて、本案について理由がないとみえるとする被申立人の主張は採用できない。 五更に進んで本件処分の執行を停止することが公共の福祉に重大な影響を及ぼすか否かにつき検討するに、被申立人は本件処分の効力が停止されるならば、再び申立人によつていわゆる実子斡旋行為がくり返され、これにより公共の福祉に重大な影響が生ずるものと主張し、疎明資料中にも申立人においてそのような意思を有するかのようにみられるものが存在するけれども、申立人が当裁判所に提出した上申書によれば、申立人は昭和五二年八月以後は同種行為を行つておらず、又いわゆる実 資料中にも申立人においてそのような意思を有するかのようにみられるものが存在するけれども、申立人が当裁判所に提出した上申書によれば、申立人は昭和五二年八月以後は同種行為を行つておらず、又いわゆる実子特例法の制定を含め前記人工妊娠中絶に関する問題の解決に努力する意思に変わりはないがその方法としてのいわゆる実子斡旋については既に前記刑事判決に服した以上再度そのような行為に出ることは考えていない旨表明しているのであるから、被申立人主張のような事態が発生する可能性はないものと一応認められるので被申立人の右主張は採用できず、他に本件処分の効力停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすことをうかがうに足る疎明はない。 六そうすると本件申立は理由があるから、これを認容し申立費用につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。 (裁判官藤田耕三原健三郎田中信義)別紙(一)申請の趣旨被申立人が、申立人に対してなした昭和五四年六月八日付厚生省発医第八九号による昭和五四年六月一五日から、昭和五四年一二月一四月までの期間、医業の停止を命ずる旨の処分は、本案判決確定に至るまでその効力を停止する。 訴訟費用は被申立人の負担とする。 との決定を求める。 申請の理由第一一申立人は、昭和二五年一〇月二七日、医籍に登録され、医師免許を得て、爾来産科、婦人科及び肛門科の医師業務に従事してきたものである。 二申立人は、被申立人の、昭和五四年六月八日付命令書により「医師法第七条二項の規定に基き、昭和五四年六月一五日から昭和五四年一二月一四日までの期間、医業の停止を命ず」との処分をうけ、右命令書は、宮城県石巻保健所長を経由し、且つ申立人の妻を介して、昭和五四年六月一四日申立人に到達した。 三よつて申立人は、同年同月一五日以降、医業を停止し 期間、医業の停止を命ず」との処分をうけ、右命令書は、宮城県石巻保健所長を経由し、且つ申立人の妻を介して、昭和五四年六月一四日申立人に到達した。 三よつて申立人は、同年同月一五日以降、医業を停止し、医行為をなしえないで今日に至つている。 四申立人は、同年六月一八日被申立人を被告として、右処分の取消しを求める訴を提起し、東京地方裁判所昭和五四年(行ウ)第六八号医業停止処分取消等請求事件として現に係属している。 第二申立人は右訴訟において、被申立人の処分の違法であることにつき六点に亘り、大要次のとおり指摘した。 第一点およそ本件のような不利益処分については、処分理由を附記させなければ、異議申立、抗告訴訟等の処分の相手方は、不服申立をなした場合の、結果に対する予測可能性を与えられないこととなり、結局は、不服申立権の保障を担保することにはならない。 このことは「私人の権利、利益を侵害するような処分については、理由附記の要請を排除する特別の理由がないかぎり、”理由の明示”が、行政手続法の原則から生ずると考えるべきであろう」という見解とその軌を一にするものである。 本件の場合には、命令書には、医業停止を命ずる旨の記載と処分の根拠法令が概括的に示されているのみで、処分理由は全く附記されていない。これでは全く処分等の判断の慎重、合理性が担保されたものとはいえない。 しかも、医師法第七条第二項の規定に基きというのみでは、それが医師法第四条の各号のいずれに該当するのか、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときに該るのか、申立人にとつては全く確認不可能であり、結果に対する予測可能性は明らかに阻害されているのである。 このように処分は、手続的に違法であることを免れない。 第二点本件処分をなすについては医師法(以下法という)第七条に基き、申立人に対し あり、結果に対する予測可能性は明らかに阻害されているのである。 このように処分は、手続的に違法であることを免れない。 第二点本件処分をなすについては医師法(以下法という)第七条に基き、申立人に対し弁明の機会を与え(同条五項)また弁明を聞いた者は聴取書を作りこれを保管すると共に報告書を作製する(同条七項)ものとされているが、申立人は、昭和五三年一一月中旬宮黒保健所において、宮城県衛生部次長兼医務課長Cを通じて、弁明の機会を与えられたものの、その場においては、聴取書は作製されず、したがつて読み聞けの上、署名捺印も求められていない。 しかしながら、法は、不利益処分の前捉手続として、法律により、これら弁明の機会が必要的権利として与えられている場合は、弁明の正確性、質問の妥当性を担保するためにも、聴取書の読み聞け、正確なることの弁明書への附記、署名捺印を求める要式は当然のごとく予想しているものと解されるばかりではなく、行政手続の実務においても定着しているというべきである。 このことは少くとも東京地方裁判所における抗告訴訟の多くの書証(聴取書)が如実に物語り、裁判所においても顕著なる事実である。 よつて本件の場合、明らかに法七条七項の聴取書の作成を欠く違法がある。 第三点申立人は法七条五項の弁明に関する通知に接したのは、昭和五三年一〇月二五日付宮城県知事名義にかかる通知書による。 然るとき右通知によると、当該処分とは、法七条二項に規定する法四条二号の行為に関するものであつた。従つて申立人、同代理人弁護士(佐々木泉)もこの点に限定して弁明に当つた。 ところが、本件処分による命令書によれば単に法七条二項の規定に基きとあり、それが、法七条による「法四条各号の一に該当する行為があつたとき」なのか「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」なのかは命令書 本件処分による命令書によれば単に法七条二項の規定に基きとあり、それが、法七条による「法四条各号の一に該当する行為があつたとき」なのか「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」なのかは命令書自体よりは明らかではないが、口頭で告知された理由及び新聞報道においてみると専ら職業倫理に反することに終始し、法四条二号に該当する行為があつたことによる処分ではないことが明らかである。 してみると本件処分は、法四条二号の行為に関する弁明を聴取しながら、法七条二項の医師の品位を損する行為があつたとして処分をしたこととなり、帰するところ、法七条五項所定の弁明の機会を与えなかつた処分となり違法であることは免れない。 第四点被申立人が、申立人に命令書を交付したのは昭和五四年六月一四日午後一時頃であり、命令による医業を停止すべき日(翌一五日)の一一時間前のことであつた。 多数の入通院の患者をかゝえている産科医院が、医業の停止を命ぜられた場合、入院患者の再入院先の確保、通院者の転院、若くは代替医師の確保等相当の日時を有し且つそのための混乱を招くものであることは自明の事柄であるにも拘わらず、停止を命ずる日の一一時間前にこれを交付するということは国民の保健行政を所掌する被申立人としては著しく配慮を欠くものといわなければならない。 しかも命令書によると命令の日付は六月八日となつており、充分に事前に余祐をもつて交付しえたはずであることが明白でもある。 従つて、そこに遅滞したことに対する合理的理由、或は停止日直前でなければならないとする合理的理由の存在しないかぎり、入院先を奪われる患者の困惑と、その上に立つ申立人の犠牲のもとに、被申立人は、六ヶ月の医業停止以上の懲戒罰的効果を企図したものか、少くとも、入院患者の生命と胎児の保護に著しく配慮を欠くものでいわば公序良俗に反 れる患者の困惑と、その上に立つ申立人の犠牲のもとに、被申立人は、六ヶ月の医業停止以上の懲戒罰的効果を企図したものか、少くとも、入院患者の生命と胎児の保護に著しく配慮を欠くものでいわば公序良俗に反する行政処分であると共に、右のように、少くとも一週間前には命令の交付が可能であつたのにも拘わらず敢えて一一時間という半日にも満たない切迫した時間においてその業務停止を命じた本件処分は明らかに処分権の濫用である。 第五点申立人に対する本件処分は、申立人が不実の出産証明を書いたことが主たる理由のようであるが、これは昭和五三年三月一日仙台簡易裁判所でなされた刑事処分に基きなされたようである。 しかしながら本件刑事処分の対象となつた事実は、昭和五〇年一二月一八日頃行われたことであり、本行政処分は右行為時より過ぎること実に四年六ヶ月余のことである。 本来申立人の行為については、検察当局もきわめて慎重であり、当時の法務大臣も敢えてとがめるべきではないという国会答弁もなしているのである。 ところが、被申立人において、四年六ヶ月もの後において、突如として本件処分に及んだことは、申立人の「行為そのもの当否や社会的背景よりも、むしろそのやり方や世間のアピールの仕方(医道審議会の論議に関するマスコミの報道参照)に問題がありとするもので、そうだとするならば、本件処分の動機は全く不純であり違法なものといわなければならない。 第六点 1 医師が出生証明書を作成するということは、単に医学的知識や出生時に立会うことが多いということで、戸籍法第四九条で第一順位に定められているということにすぎない。 従つて次にこれと同等の資格において助産婦その他の立会人(例えば隣人親族家族その他誰でも差支えない)においても作成できるので、医師の証明書作成の趣旨もこの域をでるものではない。 2 にすぎない。 従つて次にこれと同等の資格において助産婦その他の立会人(例えば隣人親族家族その他誰でも差支えない)においても作成できるので、医師の証明書作成の趣旨もこの域をでるものではない。 2 元来医師法が立法され、医師制度を設けたのは「医寮及び保健指導を掌ることにより公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康生活を確保するという任務を有する立場にあるから」その者に特に資格を認めたのである。 従つて出生証明書の作成行為は医師法の立場、立法目的から論理的必然的に導き出されるものではなく、医師の本来的業務との関係についていえば、全く附随的なものにすぎない。 3 ひるがえつて、医師に対し権利を制限し不利益なる行政処分をなす場合には、医師法なる法が予定した目的達成のため、必要なる範囲の限度内においてなされるべきであり、従つて国民の健康生活を確保するための法目的に則し、なされなければならない。 4 ところで、被申請人が医業停止を命ずることができる場合は、法七条二項により、法四条の各号の一に該当する場合又は医師としての品位を損する行為のあつたときとされる。しかして、ここに「品位を損する」とは、抽象概念ではあるが、この解釈基準は、法に基き、当該行為と本来的医業との関係の有無又当該行為と国民の健康確保の関連性など、法に則して合理的に判断されなければならない。 5 ところが、申立人のこのたびの行為はいずれも本来的医業とは別の附随的業務に関してのものである。 そうしてみると、申立人に対する本件処分は、法の目的とは全く関係のない本来的医業にかゝわりのないことに対する処分であることが明白である。 むしろ申立人を業務停止処分に付して、そのことにより保護しようとする目的は、医師法による保護法益ではなく、戸籍制度の秩序維持の便宜に供することにあつたのである。 戸籍制度 分であることが明白である。 むしろ申立人を業務停止処分に付して、そのことにより保護しようとする目的は、医師法による保護法益ではなく、戸籍制度の秩序維持の便宜に供することにあつたのである。 戸籍制度の秩序維持は公共利益であることは事実であるが、この目的達成のためには、刑事罰、行政罰で足りるものであり、医師であるが故に医師法上の処分をなすことは論理の必然ではない。 このことからも本件処分は、裁量権の行使を誤つたものであることが明白である。 6 尚医師に対する行政処分は昭和四六年より公開されるところとなつた。 これらの処分事例と比較すると申立人に対する六ヶ月の医業停止の行政処分は明らかに裁量の範囲を著しく逸脱したものであり行政上の平等の原則に反し、且つ比例原則にも違反するものであることはあまりにも明白である。 申立人は以上のとおり、六点に亘り、手続上、実体上の違法を主張したのである。 第三本件行政処分により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があること。 一行政事件訴訟法第二五条二項のいう「回復困難な損害」とは原状回復困難な場合に限られるものではなく、もとより金銭賠償の能否を基準とするものでもなく、金銭賠償が可能な場合を含めて、事実として生ずる損害を当事者に受忍させることが社会通念上相当と認められるかどうかによつて決せられるべきものと解するのを相当とする。 本件について、右の基準に照して回復困難な損害の有無を考えると本件処分の取消訴訟の請求原因でのべた如き申立人の問題とされる行為についての動機、目的、態様並びに本件処分の瑕疵に対して、次の如き申立人の経済的損害と医院再開の困難性、信用毀損並びに患者の不利益と併せ考えると、これらの損害を申立人に受忍させることは、到底社会通念上相当でないものというべきである。 (一) 申立人は前記のとおり昭和三 の経済的損害と医院再開の困難性、信用毀損並びに患者の不利益と併せ考えると、これらの損害を申立人に受忍させることは、到底社会通念上相当でないものというべきである。 (一) 申立人は前記のとおり昭和三三年一〇月肩書地において、申立人経営の産科、婦人科、肛門科医院を開設し、以来二〇年余同院を経営し、且つ現在の規模は、医師は申立人のみであるが、看護婦七名、事務員一名、掃除賄婦一名である。 申立人の長年に亘る石巻市を中心とした周辺地域の多くの妊婦の分娩患者の診療への尽瘁の結果、現在では石巻市においては屈指の産婦人科医として市井の信用を博し確固たる営業基盤を確立していた。 ところが、今回の行政処分によつて、しかも、医師法上の業務停止としては、最高の六ヶ月の医業停止という厳しいものとなつたことから、申立人の開業地の地域社会に与えた影響は甚大であつて、石巻市という小都市においては街の話題をにぎわし詳細の事情に通じない地域住民の誤解、偏見を招き、これによつて申立人の信用と名誉は著しく傷けられるに至つたのである。 (二) 加えて申立人の医院は産婦人科を主体とする医院であるため、従来同医院において分娩した婦人やその縁者が申立人の医師としての医術と名声に信頼して同院に往来していたものであつて、現に通院中で、本件行政処分による医業停止期間中出産予定の妊婦は九五名、出産間近かな妊婦は一二名をかかえているのである。 産婦人科医の特徴は患者の診察、継続的、長期的に通入院期間が固定し、かつ医師と患者とが強固な信頼関係で結ばれていることである。 従つて万一今回の六ヶ月の医業停止という事態に立至れば、現に入院、通院中の妊婦は勿論、従来から申立人に信頼を寄せていた関係者は、申立人から離反することは必定であり、且つ市内には申立人以外に総合病院一、産婦人科医院が七医院あるので他の医療 態に立至れば、現に入院、通院中の妊婦は勿論、従来から申立人に信頼を寄せていた関係者は、申立人から離反することは必定であり、且つ市内には申立人以外に総合病院一、産婦人科医院が七医院あるので他の医療機関に四散し六ヶ月後に医業を再開し、いかに営業努力しても最早、申立人の信用低下により営業基盤は喪失し、現状に復することは至難である。 また六ヶ月の期間中は無収入となるから、従業員のその期間内の給与約一〇五〇万円(前年度実績)の支払いはできないから、結局従業員は約三〇〇万円の退職金を支払つて解雇せざるを得ず、そうした場合、停止期間が終了したとしても即時、従来の規模で医院の再開は困難であるし、又事実上看護婦の不足な実情より、旧に復することはできないのである。 その結果申立人としては、その年令(五三才)を考えるとき遂には医院を廃業するの止むなき事態に至ることは充分に推認されるのである。 (三) 申立人は現在まで月額三〇〇万乃至四〇〇万円の所得をえてきたが、今回の処分により向後六ヶ月間は収入が皆無の状態となるところ、現在取引ある金隔機関の預金残高は二三三万円にすぎない。 他方現在申立人一家の一ヶ月当りの生計費は夫婦の生活費に医大(長男)、歯科大(次男)、仙台の高校(三男)の学費、生活費の仕送り分を含めると最低でも月額七〇万円を要する。 (四) しかも、申立人が現在、困惑の極に達していることは次のような緊急的な問題をかかえるに至つていることである。 申立人は、昭和五二年に看護婦宿舎を建設することと医療器材の購入のために北日本相互銀行に一億の根抵当権を設定し現在もなお四七四〇万円の債務を負い、医療期間中にも毎月元本六〇〇万円、利息一五〇万円の割賦支払を要するところとなつていることである。 右の借入れ約定によれば、(1)仮差押、差押もしくは競売の申請または破産等の 七四〇万円の債務を負い、医療期間中にも毎月元本六〇〇万円、利息一五〇万円の割賦支払を要するところとなつていることである。 右の借入れ約定によれば、(1)仮差押、差押もしくは競売の申請または破産等の申立があつたとき、(2)手形交換所の取引停止処分があつたとき等に当る場合は通知催告等の手続がなくとも約定による債務につき当然期限の利益を失い残債務を一時に弁済する旨の過怠約款があり、さらにその他にも製薬会社等に対し約三〇〇万円の未払金を負担しているのである。 しかも、昭和五四年七月二三日には、右割賦金弁済とは別に北日本相互銀行宛振出した八〇〇万円の約束手形を決済しなければならないこととなつており、診療収入が皆無となればこれらの弁済は、全く不可能となり、直ちに倒産という事態に陥り、医院、居宅の敷地建物は競売に付されることは必至で、医師としての再起は全く不能となり、これによつて蒙る損害は明らかに回復不能である。 二申立人の医業停止により蒙る患者の不利益はとりも直さず、このことも申立人の回復し難い損害に通ずるものであること。 医療行為において医師と患者との信頼関係の保持と医師による患者に対する継続的な診療活動は医療効果を高める重要な要素である。 とくに産婦人科の場合には患者の治療保護に止まらず健康な子どもを出産させるという周囲の期待も含め大きな目的がある。近時妊娠中の薬物公害、分娩事故による幼児の後遺障害が累積している状況の中にあつて右の継続性と信頼性は、不可欠なものとなつている。 ところで産婦人科医療においては他の医療分野と異なり、患者が自主的に医師を選択する余地が大きいことも見落せない。即ち自分及び家族、親族、知人に産婦人科医にかゝる頻度が高く経験的に医師の人格と技量を知る機会に恵まれ自らの選択により医師を決定する事例が多い。 そうした場合予期し する余地が大きいことも見落せない。即ち自分及び家族、親族、知人に産婦人科医にかゝる頻度が高く経験的に医師の人格と技量を知る機会に恵まれ自らの選択により医師を決定する事例が多い。 そうした場合予期しない転医は苦痛であり不安なことである。 申立人は先にのべたとおり六ヶ月先に出産が予定される患者は九五名に達しその内訳は出産予定月毎に六月一六名、七月二三名、八月一三名、九月七名、一〇月一二名、一一月一四名、一二月一〇名である。この方々は何れも申立人を個人的に信頼し将来とも申立人による継続的な診療を望む者である。 申立人の医業停止は実は直ちにこうした患者の継続的診療行為を中断するものであり、患者としてもきわめて不利な且つ保健上も不安な事態となるのである。 加えて出産予定の時期をも見合せながら限られた期間内に他に信頼できる医師を見出さねばならない。 仮りに他に医師を見出したとしても、診療の一貫性、継続性が崩れた場合いかなる危険なことも招来しないとも限らず万が一の場合には、申立人も責任の一端を感ずるという回復し難い苦痛を伴うものである。 三本件行政処分を受けたことによりごく最近申立人は加入している医師会より除名されようとしている。同市医師会は人道に反し処分された医師の加入は認めるべきではないとする動きがある。 然して若し申立人が同医師会より除名された場合には具体的には次のような回復し難い重大なる損害をうけることとなり、執行の停止はこの面からも緊急性がある。 1 医師会に委嘱して行われる準看護婦の養成ができなくなり、現在、将来とも看護婦の確保が不可能となること。 2 医師会運営にかゝる血液・尿等の検査センター等の設備の利用ができず、医療行為に重大なる支障を来すこと。 3 学校指定医の指定が取消しされること。 4 健康保険の請求、支払業務が医師会を通ずることも 2 医師会運営にかゝる血液・尿等の検査センター等の設備の利用ができず、医療行為に重大なる支障を来すこと。 3 学校指定医の指定が取消しされること。 4 健康保険の請求、支払業務が医師会を通ずることもできなくなり、為に業務が多忙となり人件費が増大すること。 5 医師会が一括して取扱つている医療事故保険が加入できなくなること。 6 医師会を通じてなされてきた医学研究資料収集等の機会が失われること。 以上のとおり諸々の回復し難い損害を避けるための緊急の必要がある。 よつてこれが処分の停止を求めるために本申請に及んだものである。 別紙(二)補充書記申請の理由第三項、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある事情」について、左の事実を補充する。 一医業停止中の支払予定額と負担能力昭和五四年六月一五日以降六ヶ月間、申立人が事業閉鎖した場合の事業及び生計資金に係る支払予定額については、申立人の経理事務を担当している公認会計士遠藤伸一作成の「事業損益概況及び支払予定表について」に記載されるとおり、合計約五四〇〇万円程度が見込まれる。(尚、同書は六月一日を始期に六ヶ月の算定をなしているが、同月一五日を始期としても全額的差異はさほどでない。)右支払予定額には、先の理由で記述したとおり、事業閉鎖による従業員退職金三、四二四、〇三〇円、解雇予告手当八一三、〇〇〇円はもとより、同様北日本相互銀行宛振出手形八〇〇万円の決済、看護婦宿舎建設と医療器材購入のための同銀行よりの融資二口の返済金一ヶ月九〇万円を含んでいる。 これら支払予定に対する申立人の資金は、とりあえず預金二三三万円であり、支払を確実になすには再度借金をなさねばならないところであるが、医業停止の状態では金融機関は絶対融資に応じないことは明らかである。さすれば、申立人としては病院施設及び医療器材そのもの 三万円であり、支払を確実になすには再度借金をなさねばならないところであるが、医業停止の状態では金融機関は絶対融資に応じないことは明らかである。さすれば、申立人としては病院施設及び医療器材そのものを売却処分せざるを得ず、そのような事態になれば、医業停止期間経過後の病院再開は絶望的になる。 二申立人の収支状況申立人の昭和五三年度の所得金額は四一、八五八、〇〇〇円であり右所得金額より納付すべき所得税、県市民税を控除した後の手取所得額は一五、五〇七、八九〇円であつた。 従つて、一ヶ月平均の収入は約一三〇万円であり、ここから前記銀行返済金九〇万円を差引くと、僅か四〇万円程度となり、妻の専従者給与一ヶ月二五万円(年間三五〇万円)を合せ一ヶ月六五万円が自由になる生活費である。 申立人の長男は近畿大学医学部、次男は松本歯科大学に在学しており、三男は仙台市内に下宿する高校生であるから、前記六五万円の実収入では剰余が生じる余地もなく、このことから事業閉鎖は申立人及びその家族の死活問題で、子供らにも学業を中断させざるを得ない。 三申立人の医業停止と病院閉鎖の関連性 1 申立人の病院には、D外九名の従業員がいるが、全て看護婦(見習若しくは準看護婦)、事務員、賄婦であり医師は一人もいない。 2 申立人は日本母性保護医協会からも除名されたほどで石巻はもとより宮城県内の同業者の中で孤立無援の状況である。従つて、代替医師として協力する医師を探し出すことは極めて困難であり、現在において全くその見透しすらないのが現実である。 3 申立人は、本件執行停止決定を得る迄の処置として、秋田県大曲市で開業している義父の協力を得ているが、年令も七五才で体力的に医師としての限界にきており、そもそも専門が肛門科、耳鼻科であつて、菊田産婦人科医院を継続することはできないのであつて、当然 秋田県大曲市で開業している義父の協力を得ているが、年令も七五才で体力的に医師としての限界にきており、そもそも専門が肛門科、耳鼻科であつて、菊田産婦人科医院を継続することはできないのであつて、当然ながら入院患者をかかえた菊田医院の応急的手伝に過ぎない。 四申立人の私的経済状況(一) 昭和五二年以前の預貯金等の不存在イ昭和五二年四月、長男Eが私立近畿大学医学部に入学したが、その際入学金として金五、〇〇〇万円及び授業料前期分一〇五万円を納入した。 ロ同年同月、二男Fが私立松本歯科大学に入学したが、その際入学金として金二、三〇〇万円と、授業料前期分一〇〇万円を納入した。 右イ、ロの金員合計金七、五〇五万円は次のとおり調達した。 金五、三〇〇万円北日本相互銀行借入(疎甲一二号証の一)金一、五〇〇万円土地売却(申立人所有石巻市<地名略> 宅地二五一・五七坪)金六九五万円申立人の預金引出し、及び義父よりの短期借入金等以上の次第で、昭和五二年二月には申立人の預貯金は皆無に等しい状態となり、同五三年には所得税の予定納税資金にも困窮し、北日本相互銀行より手形借入れをして納税するというはめになり、右八〇〇万円の借入金は、三ヶ月ごとに単名手形を書換え、その都度利息を三ヶ月分前払して今日に至つているが、満一年になるので、同五四年七月二三日以降の弁済期の猶予(延期)は困難な状況にある。 別紙(三)補充書(第二)第一被申立人の主張第一について一一項は認める。 二二項は認める。但し、法第七条五項に基づき、弁明の機会が与えられたのは「法四条二項に該当する行為があつたこと」についてであつて法七条二項の「医師の品位を損する行為があつたこと」についてではない(疎第二号証)。 三三項は不知。 四四項は認める。但し、本件処分が「法七条二項において認めら る行為があつたこと」についてであつて法七条二項の「医師の品位を損する行為があつたこと」についてではない(疎第二号証)。 三三項は不知。 四四項は認める。但し、本件処分が「法七条二項において認められる裁量の範囲内」であることは否認する。 五五項は認める。但し、命令の内容か、医道審議会の結論かについては、さだかでない。 六六項に関し、本件行政処分にあたり本項記載のような点を考慮して本件行政処分がなされたとのことは認める。 但し、その適法性については後述のとおり争う。 七七項に関し、法第七条二項の処分について、処分権者に裁量権のあることは認めるが、右裁量権もその行使につき手続上違背があるとき(本件行政処分につき申立書第一乃至第四点)あるいは、その行使にあたり法の認める範囲を逸脱したり、濫用にあたる場合には違法となり司法審査に服さねばならぬことは論ずまでもない。右の裁量権の濫用にあたる場合として判例は、法の目的と関係のない目的や動機に基づいてなされた場合(申立書第五点、第六点)やその裁量判断が合理性を失い非違行為との対比において著しく均衡を失する場合(申立書第六点)がこれに該るとされている。 なお、被申立人は最高裁判決(昭和四八年九月一四日民集二七・八・九二五)を引用して、医業停止の場合には免許取消に比して裁量権が広く認められると主張するが、法第七条二項の医業停止に関する規定は極めて異例で「期間を定めて医業を停止する」と規定しているのみで停止期間の上限に限度がないから、免許取消に比して裁量権を広く認めると実質免許取消と同一もしくはそれ以上の不利益を与えることも可能となる(例えば、数年、十数年間にわたり停止せしめると年令的、技術的に医業の再開が困難となり、または余命年数が尽きることもある一方免許取消を受けた者には法七条三項により再免許の可 を与えることも可能となる(例えば、数年、十数年間にわたり停止せしめると年令的、技術的に医業の再開が困難となり、または余命年数が尽きることもある一方免許取消を受けた者には法七条三項により再免許の可能性が残されている)。 法第七条二項においては医業停止期間の上限に限度がないのであるからその裁量権の行使は極めて客観的合理的に行使されなければならないと解すべきである(極論すれば、法七条二項が被申立人の解するように裁量の範囲を広く認めたものだとすれば、同法条は憲法三一条に反する無効なものだといわなければならない)。 また、被申立人の引用した右最高裁判決についても、その理由を詳細に検討すれば、右判決でいう分限処分における降任処分と免職処分の差異は本件における医業停止処分と免許取消処分とは、その性質において全く異にし、医業停止処分の重要性と処分を受けるべき者に与える不利益を考えると単に免許取消との差異をもつて裁量権の範囲を広げる理由とはならないことは明らかである。 第二被申立人の主張第二について一はじめに(一) 被申立人(以下処分庁という)は、「虚偽の出生証明書を交付し、戸籍簿に不実の記載をなさしめたかどにより・・・・・・・・昭和五三年三月一日仙台簡易裁判所において医師法(以下「法」という)違反(法二〇条、三三条)、公正証書原本不実記載、同行使(刑法一五七条一項、一五八条一項、六〇条)の罪により罰金二〇萬円に処せられた」事実が法四条二号に該当するものとして同年一一月一三日法七条五項に基づき、知事が指定した宮城県衛生部次長をして、申立人に対し弁明の機会を与え(第一の一、二)、且つ本件処分は「法四条二号に該当することを理由になされた」(第二の三)と主張している。 申立人(代理人を含む)は、昭和五四年六月一四日申立人の妻を介して宮城県石巻保健所長を経 与え(第一の一、二)、且つ本件処分は「法四条二号に該当することを理由になされた」(第二の三)と主張している。 申立人(代理人を含む)は、昭和五四年六月一四日申立人の妻を介して宮城県石巻保健所長を経由して告げられた「処分理由」及び新聞報道で伝えられた「処分理由」(疎甲第四号証及び第三七号証)を総合して、本件医業停止処分取消等請求事件(昭和五四年(行ウ)第六八号)請求の原因第二の二(同訴状七丁)記載の如き「処分理由」すなわち医師法七条二項の「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」に該るものとして処分されたものと判断した。 (二) ところが、処分庁は、前述のとおり罰金刑に処せられたことを「処分理由」とするものであると主張した。そこで申立人代理人らは、昭和五四年六月二三日午前一一時五〇分頃より、厚生省関係者、国会議員および報道機関などに八方手を尽くして「処分理由」を探索した結果、別紙「処分理由」記載のとおりの「処分理由」であることが判明した(もつとも処分庁に保管されている「処分理由」を記載した書面および宮城県庁に保管されているその写しと、文字の使い方-例えば「かつ」と「且つ」、「おそれ」と「虞れ」など-や句読点の使い方などに若干の相違はあるかも知れないが、文章自體は一〇〇パーセント近い正確さを保持している)。 右別紙「処分理由」は四点にわたつている(末尾に「なお・・・・・・」として実子特例法について言及している点も含めれば五点)が、申立人が「罰金刑に処せられた」という点について一言片句もふれられていないことは明らかである。 (三) 右処分理由書によると第一点は、「医師の職業倫理を著しくそこない人道上無視出来ない行為であつた」とか「事実証明につき不実を記載することは、医師の職業倫理に違反するものである」として罰金刑に処せられたことではな によると第一点は、「医師の職業倫理を著しくそこない人道上無視出来ない行為であつた」とか「事実証明につき不実を記載することは、医師の職業倫理に違反するものである」として罰金刑に処せられたことではなく、医師法七条二項後段の「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」に該る要件事実を指摘している。 第二点は、「近親婚による幣害その他の遺伝学上の問題まで生ぜしめるおそれが強いことを・・・・・・何等の配慮なしに安易に行為を続けた」というのであるから、”反覆してなした”「本件行為」と称するものを処分理由としている。 このことは、申立人が罰金刑に処せられたのは一通の出生証明に関することである(このことき疎乙第一号、同第二号によつても明らかである)から、「安易に行為を続けた」というのは、右罰金刑に処せられた行為を指していないか、少くとも、その余の行為をも指していることは明らかである。 第三点は、「本件行為」により「不実の親子関係が形成される事となる結果、将来とも子の地位をめぐつていろいろの法的紛争の事態が予想され・・・・・・必ずしも出生した子の幸福につながらない場合も相当予想されるのに、その点への配慮を欠いたまゝ行為を続けた」としているから、「本件行為」というのは右「配慮を欠いた複数の行為」を指称しており、ひとり罰金刑に処せられた”一個の行為”のみを指して本件処分の「処分理由」としたものでないことは明らかである。 第四点は、「本件行為がその主張にあるような-(代理人註、その主張とは、何時、どこで、誰に対してなされた主張かも必ずしも明らかでない)-緊急避難として許される行為には該当しないことは既に明らかにされているところである」といつているところをみると、罰金刑に処せられたのであるので、緊急避難という違法阻却事由に該当しないことが明らかになつた、とい て許される行為には該当しないことは既に明らかにされているところである」といつているところをみると、罰金刑に処せられたのであるので、緊急避難という違法阻却事由に該当しないことが明らかになつた、という趣旨に解されないでもないから、罰金刑に処せられたことを処分理由としたものとも理解されないではない。しかし、右第四点の後段で「嬰児殺しの悲惨な事実を無くしてゆくために必要な社会的努力を軽視し、独自の判断で、多数のあつせんを続けたことは軽卒且つ思慮を欠く行為である」といつている点からすると、やはり、罰金刑に処せられた行為のみを処分理由としたものでないことが明らかとなる。また、このような「多数のあつせんを続けたこと」の各行為が、誰のいかなる認定または判断によつて「緊急避難として許される行為には該当しないことは既に明らかにされているところである」と断言できるのかも不明である。 また、右第二点でいう「安易に行為を続けた」とか、第三点の「配慮を欠いたまゝ行為を続けた」とか、第四点の「多数のあつせんを続けた」という当該「処分理由」とされた複数の行為は罰金刑に処せられた行為の前の行為か後の行為か、はたまた罰金刑に処せられた行為の前後に跨つた行為を指すのかも明らかでなく、行為の特定に著しく欠けるものがあるとともに、既に述べたように、右複数の行為のいずれもが、緊急避難に該らないという事実認定の前提となる事情も示されてはいない。 (四) これを要するに罰金刑に処せられた所為をもつて「処分理由」としたものでないことだけは一見極めて明白であり、後に述べるように右複数の行為について弁明の機会を与えていないことも明らかである。 そして、この故にこそ、処分庁は、「処分理由書」を疎明資料として当裁判所に提出しない意図と態度がなへんにあるかも容易に推認し得られるのである。 二 いて弁明の機会を与えていないことも明らかである。 そして、この故にこそ、処分庁は、「処分理由書」を疎明資料として当裁判所に提出しない意図と態度がなへんにあるかも容易に推認し得られるのである。 二被申立人の主張第二の一に関して(一) 命令書に理由を付すべき趣旨は申立書に記載したとおり行政行為の慎重性、客観的合理性を担保し、行政庁の恣意を抑制するとともに処分の理由を付すことにより不服申立に便宜を与えることにあることは被申立人も認めるところである(意見書九丁裏~一〇丁表)。 被申立人は本命令書に理由を付さなくとも法に理由を付することを命じている規定がないから違法ではないとの形式論を主張するが、行政処分にあたり命令書に理由を付すべき趣旨を考えれば行政処分ことに新たな義務を課し、既存の権利を制限しあるいは剥奪する処分(いわゆる不利益行政処分)については法に明示がなくても、右趣旨から理由を付すべきことは当然である。被申立人は法令上理由の付記が要求されない場合には理由を付記しなくとも違法でないとするのが確立された判例であるとし、いくつかの判例を掲記しているが、右掲記された判例のうち最高裁判所(昭和四三年九月一七日)は継続的、大量的かつ回帰的行政処分についてのみ適用さるべき判決例であると考えるべきであり、他の判例(農地法二〇条の知事の許可についての高松高裁判決、個人タクシー営業免許申請却下処分についての東京地裁判決)の前者は法律関係の変更を認めない処分に関するものであり、後者は新たな権利の付与を認めない処分に関するものであつて、いずれも不利益行政処分に関するものではない。従つて、被申立人のいうように行政処分について理由を付さなくても違法ではないとする判例が確立しているとは到底いえない。 (二) 次に被申立人は本件において法七条五項の規定により義務づけ るものではない。従つて、被申立人のいうように行政処分について理由を付さなくても違法ではないとする判例が確立しているとは到底いえない。 (二) 次に被申立人は本件において法七条五項の規定により義務づけられている通知(書)に「処分をなすべき事由が明記されているから理由付記の趣旨(前述と同旨)が「右通知書交付手続の中で実質的に担保されている」と主張する。しかし、本件行政処分にあたり宮城県知事より法七条五項に基づきなされた通知は、法七条二項前段の「四条各号の一に該当する行為があつたとき」を「処分をなすべき事由」としている(疎甲第二号証)のであるが、本件行政処分は「医師の品位を損するような行為があつた」としてなされたことは前述のとおりである。然りとすれば、行政処分命令書に理由を付記すべき法意が「通知書の交付手続の中で実質的に担保されている」などとはいえない筈である。更に、弁明聴取手続の通知書が行政処分の理由とはなりえないことは弁明を聴取したうえでなすことを義務づけられている法の趣旨からみても明らかであり、被申立人の右主張は詭弁でしかない。 三被申立人の主張第二の二項に関して(一) この点は、申立人主張の第二点に対する反論を記載したものと思われるが、申立人の主張する点に対して正面からの回答がなされておらず、議論がずらされているきらいがある。 すなわち被申立人は、宮城県衛生部次長により作成された聴取書(疎乙第九号証)の記載をそのまま引用して、当日のやりとりを説明し、弁明の機会を与えていたと結論づけている。 しかしながら、申立人はそもそもその前提となつている聴取書そのものの成立手続を問題にしているのである。 (二) 法第七条第七項が、弁明の機会を与え聴取書の作成を要求したのは、単に便宜的な要請に基づくというだけの理由によるのではなく、不利益行政処分につ 取書そのものの成立手続を問題にしているのである。 (二) 法第七条第七項が、弁明の機会を与え聴取書の作成を要求したのは、単に便宜的な要請に基づくというだけの理由によるのではなく、不利益行政処分について行政庁の恣意的判断を抑制するために準司法的手続である聴問制度を導入し、もつて公正な手続を保障しようということにある。 本来弁明の機会というものは、免許取消し、医業の停止等の処分をなすべき厚生大臣に対して直接保障されなければ意味のないものである。にもかかわらず、法第七条五項は処分権者に対して直接、弁明の機会を保障せず、他の媒介機関に対して弁明させるという制度を採用している。 かような制度は、弁明の機会を与えた法の趣旨からすれば本来聴問の結果が直接処分庁に弁明したと同様に正確性、信用性が保障されるべき何らかの補完措置が講じられない限り、公正手続は保障されず、かつ憲法三一条の保障する防禦の機会を与えたものとは言い難い。 だからこそ、法第七条第七項の聴取書はまさに右の補完措置として、聴取書の作成を義務づけているものと考えられる。すなわち、弁明を正確に録取した聴取書を作成し、これを処分権者に報告させることにより、防禦の機会を与え、公正手続を保障しようとしたものである。 (三) 右のように聴取書の作成という手続は、処分権者に対する弁明の機会の保障という公正手続の要請、憲法の適正手続の保障に代替する制度として要求されるものである。従つて、法第七条第七項は単に聴取書とのみ規定し、その作成手続については何らふれるところはないが、右の趣旨より考えれば、直接処分権者に対して弁明の機会を与えられた場合と同等の正確性及び信用性が担保されるものでなければならないと解釈すべきものである。 すなわち具体的に言えば、聴取書の作成は聴取で即時に作成し、聴取書を弁明者に読み聞か て弁明の機会を与えられた場合と同等の正確性及び信用性が担保されるものでなければならないと解釈すべきものである。 すなわち具体的に言えば、聴取書の作成は聴取で即時に作成し、聴取書を弁明者に読み聞かせ、不足な点があれば補充し、誤まりがあれば訂正させその上で、弁明者の署名捺印を求めるという手続を踏まなければならない。然らざれば、発問の充分性と妥当性が担保されないからである。 (四) 本件の聴取書は、後日に至り弁明聴取者が独自に作成したものであり、読み聞け、署名捺印等一切の手続を怠つている。 右のような聴取書では、正確性、信用性等の担保につき、弁明者が何らの関与もなすことができない。 処分権者たる厚生大臣に対する弁明の機会の保障は、右のような聴取書によつては保障されたとは言い難い。 四被申立人の主張第二の三について(一) 被申立人は、本件処分が法第四条二号に該当することを理由になされたものであると主張する。 しかしながら、本件処分は、明らかに法第七条二項後段の「医師としての品位を損するような行為のあつた」として処分がなされたものと解せざるを得ない。 にもかかわらず、もし本件処分をあくまで「罰金に処せられた」ことを理由とするものと主張するのであれば、処分理由において、罰金に処せられた事実からはみ出す他の事実をも根拠にして本件処分がなされたということになる。 右の点はそれ自身違法であるばかりでなく、申立人の弁明の機会を与えていない事実で重く処分したということになる。すなわち、もし医師としての倫理、人道上の問題が中心テーマであれば、申立人はその点に焦点を合わせて弁明ができたであろう。にもかかわらず申立人は罰金刑に処せられた事案を中心に、弁明している。また、「多数のあつせんを続けた」ことで問題になるのであれば、いつたいそれが多数にわたるのか否か又、「行 て弁明ができたであろう。にもかかわらず申立人は罰金刑に処せられた事案を中心に、弁明している。また、「多数のあつせんを続けた」ことで問題になるのであれば、いつたいそれが多数にわたるのか否か又、「行為を続けた」とあるが本来その実態はどうであつたのか等、弁明する点は多々存したはずである。 また実子判例法の制定と本件との関連について問題とするのであれば、その関連についても詳細に反論できたのにもかかわらず、それらの機会を失つたのである。 従つて、本件処分をあくまで、法四条二号に該当するものとして主張するのであれば、処分理由と異なる事実で処分をなした違法があるのみならず、申立人の弁解の機会を奪つてなされたものである。 五被申立人の主張第二の四について医業停止期間と命令書の交付時期との対比にみられる処分権の濫用の観点につき、意見書は事前に伝達した事実を挙げて反論している。即ち、処分決定日に石巻保健所長より電話連絡により、また翌日に県衛生部長より各々申立人に対して、処分内容を伝達しているのであるから、命令書の交付が一一時間前であつても、治療中の患者の処置、転医や代替医師の確保等に支障はなく、この点の配慮はなされた旨主張している。しかし、これは次の諸点から当を得ない弁明である。 まず、申立人にとつても、本件処分が被申立人より命令書の交付によつて伝達されるものであることは、当然ながら熟知しているところである。故に前記保健所長なり県衛生部長なりの伝達(これが厚生大臣の処分決定を伝えたものか、医道審議会の結論を伝えたものか、不明確な伝達であつた。)が、それ自体法的に何等意味をもつものでないことの認識のもと、実際に命令書の交付を受ける迄は、被申立人の翻意や伝達内容の誤り等の可能性は存在するわけで、むしろ不利益処分を受ける当事者はそうあつて欲しいと願うのが一般的 等意味をもつものでないことの認識のもと、実際に命令書の交付を受ける迄は、被申立人の翻意や伝達内容の誤り等の可能性は存在するわけで、むしろ不利益処分を受ける当事者はそうあつて欲しいと願うのが一般的な人情でもあろうし、申立人自身としても先の口頭による伝達と命令書を現認した後とで、その対応に差異が生じたわけで、このことは十分理解されるところである。 従つて、前述の伝達の経緯を挙げて、これをもつて命令書の交付と同一視することは誤りである。 次に、そもそも処分決定時と医業停止の始期の間隔七日間ということ自体が、申立人の業務の実態を無視した不当なものとして問われるべきものなのである。申立人は命令書交付が医業停止の一一時間前であつたことを、被申立人の処分の決定に際しての配慮の欠如さの象徴的なものとして強調してきたが、右「七日間」の期間そのものの不当性をも指摘しているのである。七日程度の短期間内に患者に対する適切な処置、及び代替医師の確保等、治療活動に支障なき方策をとり得ないことは、常識的に予測されることであり、現に申立人が現在迄いかに努力するも右方策をとれず、このことは、その実情を訴え本申立に及んでいること自体から十分証明されることである。 六被申立人の主張第二の五について本件処分は、その動機において医師法が被申立人に対して裁量権を与えた法目的に違反するものである。元来裁量権の行使は、法規の内在的目的を達成するために、その限度においてのみこれをなすことを許容されているものであつて、右目的とは別個の目的あるいは動機にもとづいて、裁量権を行使することは、裁量権の行使をあやまつたものであり、違法たるを免れない。 本件において、法規の内在的目的を達成するために裁量権が適正に行使されているか否かについては、以下に述べるとおり、多くの疑問があるのみならず、む 権の行使をあやまつたものであり、違法たるを免れない。 本件において、法規の内在的目的を達成するために裁量権が適正に行使されているか否かについては、以下に述べるとおり、多くの疑問があるのみならず、むしろ、恣意的・報復的な目的による裁量権行使がなされ、あるいは、法目的達成とは別個のいわゆる他事が考慮されたものということは明らかであつて、本件処分は裁量権行使に違法があるものと判断せざるをえない。 まず第一に、前記のとおり、本件処分の理由が、法第七条二項の規定する要件のうち、前段によるものかあるいは後段によるものかが、判然としていなかつたものであり、申立人が、命令書のほか、口頭による理由説明や、新聞報道によつて、なんとか推測した結果、同項の後段によるものであろうと考えるに至つたという状況より明らかなる通り、本件処分がなされるに至つた積極的根拠は極めてあいまいであつたことを念頭におくべきである。この点について、被申立人は意見書の第二項において、第四条二号によるものであつたと述べているが、右意見書の前日付の毎日新聞において厚生省医務局医事課長が公開した本件処分の理由では法第四条二号の構成要件該当の事実が全くふれられていないことから、右意見書における被申立人の主張は、本件訴訟が提起された後において、従前の聴問手続との関係を「調整」するために、後から付されたものと推測せざるをえない。 本件処分の理由がこのようにして、法第七条二項の前段かあるいは後段かという問題は、実は、本件処分にあたつて、法規の内在的目的以外の他事を考慮したという点と重大にからみあつている。即ち、もし、本件処分の理由が後段のいう、「医師の品位を損する」という点にあるものとすれば、右「医師の品位」なる不確定概念は、医師法の立法目的(即ち国民の公衆衛生・健康生活の確保)との関係において、 ち、もし、本件処分の理由が後段のいう、「医師の品位を損する」という点にあるものとすれば、右「医師の品位」なる不確定概念は、医師法の立法目的(即ち国民の公衆衛生・健康生活の確保)との関係において、定められる所謂経験概念であり、右概念についての事実のあてはめの問題は、実は、裁量の入りこむ余地はないものである。しかして、本件処分が第七条二項後段にあたるものとすると、本件の如き国民的評価が定まつていない、むしろ、世論が二分されているといつても差しつかえない申立人の行為について、充分な検討のなされないまゝ、直ちに、「医師の品位を損する」ものと、決めつけることは、くり返し述べる通り、単に裁量権の限界を越えて、あるいはこれを乱用したというより、むしろ他目的の考慮があつたものと推測させるものである。 はたして、本件処分のなされたとする六月八日(ただし、厚生大臣がはたしてこの日に本件処分をしたものか否かは、時間的余裕の点を考慮すると、極めて疑問があり、むしろ、処分命令書の交付された日頃において日付をさかのぼつているものと判断せざるをえないことは前記の通り)に開催された医道審議会についての新聞報道によると、右審議会が極めて特異な状況のもとに行なわれた(即ち、会場はこれまでの例とはうつて変つて、厚生省庁舎を使用せず、九段会館に特段会場を設け、報道陣をシヤツトアウトし、厚生省職員をガードマン並に配置し、ものものしい戒厳体制をしいて行なつた-疎甲第三八及び同三九号-)。 しかも、本件申立人に対する処分については、その理由が、法第七条二項前段によるものなのか、後段によるものなのかは、今もつて明らかでないことから容易に推測される通り、必らずしも正確な論議がなされないまゝむしろ、審議会の席場本件処分のなされる前に、予想される処分に対し法的措置をとると言明している申立人 のなのかは、今もつて明らかでないことから容易に推測される通り、必らずしも正確な論議がなされないまゝむしろ、審議会の席場本件処分のなされる前に、予想される処分に対し法的措置をとると言明している申立人の態度を非難し、反省の色がなく、情状が悪いという意見が出たこと、あるいは直截に、行為そのものの当否や社会的背景よりも、むしろそのやり方や世間に対するアツピールのしかたがけしからんという趣旨の意見が出たということである。 本件処分の内容が、大方の国民が予想していたものと比較して著しく重罰としての色彩を有しており、何らかの思わくが働いたものと指摘されていることは、如上の経緯から見る限り決して誤解や的はずれではないものであると言うことができる(疎甲第四〇号)。 このように、右審議会の経過からも、本件処分の動機・目的に不正ないし思わくがあつたとすることができるが、このことは、本件処分に至るまでの数年間にわたる社会的背景からも容易に推認しうるところである。 即ち、申立人の所謂「赤ちやんあつせん事件」が国民の関心を集めたのは今から六年前の昭和四八年四月にさかのぼる。この時期は、所謂「赤ちやん受難時代」と呼ばれ、(疎甲第四二乃至四四号証)連日「子殺」「子捨て」の暗いニユウスが新聞をにぎわしていたのである。そして、「女子大生の生み捨て事件」、「コインロツカーえい児死体遺棄事件」など続発した時代であつた。この時期において本件あつせん事件なるものがマスコミに登場し、国民の関心を呼んだのである。しかして、国民の意見は、申立人の行為に対し極めて同情的であり、支持する意見が多かつたのである。即ち、早稲田大学のG教授は「H医師のやつてきたことを大いに評価したい」(昭和四八年四月二一日朝日新聞疎甲第四一号)と述べ、その後に於ても全国でH医師の行為を評価して所謂実子特例法の制 たのである。即ち、早稲田大学のG教授は「H医師のやつてきたことを大いに評価したい」(昭和四八年四月二一日朝日新聞疎甲第四一号)と述べ、その後に於ても全国でH医師の行為を評価して所謂実子特例法の制定を促進する気運が高まつていつたのである。この間において、この様な世論を反映して申立書において述べた通り、I法務大臣の見解が発表されたものである。(疎甲第四五号証)ところが、その後前記の所謂「世間に対するアツピールの仕方がよくない」という論法が発生し、むしろ、「医師の世界の派閥がからんだ」ことにより、(評論家J談話(昭和五四年六月九日付毎日新聞疎甲第四六号)、本件処分がなされたものであるといわざるをえない。 この点に関し、右審議会の議事が今回に限つて、非公開・密室会議とされたために、その経過は明らかにされていないが、もし右不正目的・他事考慮の余地なしとするならば、右審議会の審議経過を明らかにしなければならないものと思料される。 七被申立人の主張第四について申立人は、現在実子として赤ちやんをあつせんしてもいないし、今後もあつせんするつもりはなく、新聞報道は申立人の真意を正しく伝えているものではない(疎甲第四八号)。 (別紙)処分理由一医師の職業倫理を著しくそこない人道上無視出来ない行為であつた。出生の証明の中核である誰から生まれたかと言う母胎の証明は、いわば自然と人間社会との厳粛な接点を証明するものとして、きわめて重要な意義をもつものであり、それだけに自然への真実性が要求されるものである。特にその接点で重要な役割を果すことを要求されている医師については、この点につき厳格な態度が強く求められているものであり、且つまた本来の医師の証明というものが、人間の肉体に関する事実を自然に写実することを本質とするものであることをあわせ考慮すれば、このよ ついては、この点につき厳格な態度が強く求められているものであり、且つまた本来の医師の証明というものが、人間の肉体に関する事実を自然に写実することを本質とするものであることをあわせ考慮すれば、このような人間社会における重要な事実証明につき不実を記載することは、医師の職業倫理に違反するものである。 二本件行為により近親婚による幣害その他の、遺伝学上の問題まで生ぜせしめるおそれが強いことを医師として当然承知すべきであるのに何等の配慮なしに安易に行為を続けた。 三本件行為により社会の予定していない不実の親子関係が形成される事となる結果、将来とも、子の地位をめぐつていろいろの法的紛争の事態が懸念され、親子共に、心理的不安や家庭内のトラブルにさらされるおそれがあるなど必ずしも出生した子の幸福につながらない場合も相当予想されるのに、その点への配慮を欠いたまゝ行為を続けた。 四本人は赤ちやんの生命を救うためのやむをえない行為であつたと主張しているが、本人の主観的意識はともかく客観的には本件行為が、その主張にあるような緊急避難として許される行為には該当しないことは既に明らかにされているところである。確かに母と嬰児とが相当に困難な条件のもとにたたされる場合がある事、養子よりも実子を望む親がいることがありこれ等の事情がH医師の判断を誤まらせた一因であると思われるが嬰児殺しの悲惨な事実を無くしてゆくために必要な社会的努力を軽視し、独自の判断で、多数のあつせんを続けたことは軽率、且つ思慮を欠く行為である。 なお本件は実子特例法制定とは次元が異なる問題であり、特例法の是非が本件の是非にかかわりがあるとは考えていない。 実子特例法については別途法務省を中心に充分に検討されるべき事柄であると考える。 別紙(四)補充書(第三)第一被申立人の補充意見書(昭和五四 の是非が本件の是非にかかわりがあるとは考えていない。 実子特例法については別途法務省を中心に充分に検討されるべき事柄であると考える。 別紙(四)補充書(第三)第一被申立人の補充意見書(昭和五四年六月二六日)に対する申立の反論一第一の一に対し仮りに一億円の担保力があるとしても、金融機関は現に業務を停止している者に融資することのあり得ないことは経験則上自明のことである。金融機関は、担保物件を競売して貸付金の返還を受けることをもつて足りるのではなく、金融機関としての公共的使命に基づき、融資先の事業の円滑な運用と発展に資するために融資するものだからである(ちなみに、いかに担保力があつても競売の実行それ自体が「融資事故」として扱われ融資決定者は金融機関内部での能力評定に影響する)。 二第一の二に対しK、L両医師は、外科医で申立人医院で出産した患者が出血多量のため、医療上の援助を依頼し、短時間来院していただいたものである。これをもつて代替医師の確保の可能性と結びつかせることはできない。 三第一の三に対し当初、借入金の金額が看護婦宿舎等の資金に使用されたと判断したのは、申立代理人において書類作成の時間が極めて短時間であつたこと等からきた速断のきらいはあつたが、真相は補充書記載のとおりであること、本日提出の疎明書類の追完によつて明らかである。 また、被申立人は貸借対照表に事業用の借入金として計上されているというが、同時に事業主貸勘定に個人的支出金が計上されているものであり、また計上されていることを看過している。 なお、看護婦宿舎建設の借入金は、契約時、上棟時、中間時等その支払の必要の都度、単名手形で借入れ、これを一本の証書借入れにきり換えたのが疎甲第一二号の二である。 借入金による入学金の支弁が仮りに借入能力の存在という「裕福」さを示すとし 時、上棟時、中間時等その支払の必要の都度、単名手形で借入れ、これを一本の証書借入れにきり換えたのが疎甲第一二号の二である。 借入金による入学金の支弁が仮りに借入能力の存在という「裕福」さを示すとしても、そのことが業務停止による倒産を妨げるものではない。 四第二に対し申立人代理人の調査によると、補充書(第二)別紙のとおり表題に「処分理由」と明確に記載されており、「処分を決定するに当たつての基本的な考え方を明らかにしたもの」ではなく処分理由そのものであることは確実である。 このような主張がなされることを防止するためにも「処分理由」は命令書と同時に文書で明らかにされる必要があることに留意賜りたい。 第二意見書に対する補充反論一被申立人は、意見書、「被申立人の主張」第二、六において申立人の本件行為(いわゆる赤ちやんのあつせん)が、近親婚をまねき遺伝学上の幣害を生ずることを述べている。 二しかしながら、この点についてはいわゆる人工授精による受胎においても同様の問題があることとの比較において考察しなければならないものがある。 即ち、いわゆる人工受精とは男女間の自然的性行為によらないで、人工的に注射器などを用いて男性の精液を女性の体内に注入することをいい、これによつて精子と卵子との結合をはかり受胎を招来せしめることになるものであるが、いわゆるA・I・H方式(夫の精液を用いる場合)においてはともかく、A・I・D方式(夫以外の第三者の精液を用いる場合)には、右のとおり本件と同様の問題がある。 けだし、A・I・Dによる人工受精の場合、現在実際行なわれているところでは、医師は施術に際して夫婦の同意書ないしは誓約書を取つているのであるが、いずれにしても右精液の提供が単独の者による場合か複数の者による場合かを問わず、その子の父親は、右精液提供者であり(複数 ろでは、医師は施術に際して夫婦の同意書ないしは誓約書を取つているのであるが、いずれにしても右精液の提供が単独の者による場合か複数の者による場合かを問わず、その子の父親は、右精液提供者であり(複数の提供者の場合はその解明は全く不能となる)、その夫は全く親子関係にたたないことは明らかである。 しかるに、右人工受精子の出産に際し、「父親不明」として戸籍に記入することはないから、ここにおいて、この新生児は人為的行為による親子関係の形成をみるのであり、まさしく将来において近親婚のおそれがあり、遺伝学上の幣害が生ずることとなるのである。 三この点について、国民の意見も同様であつて、厚生省の発表した意見(疎甲第三七号証-毎日新聞本年六月二一日)に対して、直ちに反論がなされている次第である(疎甲第五一号証)四尚、この点について右人工受精の問題は、父と子の関係であつて、母と子の関係についてとは別であるとするのは全くの詭弁であるというほかあるまい。 五更に、本件申立人の行為と右人工受精とはその行為の状況が全く異つていることに注意しなければならない。即ち、申立人の本件行為の場合は、医師自らが虚偽の親子関係が形成されることを予知しながら、あえて進んで積極的に人為的受精をさせたものではなく、このまま放置すると母、子の健康生命が危くなるという状況において、母に対するたび重なる説得にも耳をかたむけない場合においてやむなく実子あつせんをする決意をして、母子の生命を守ろうとしたものである。しかるに、人工受精の場合は虚偽の実子関係が戸籍上に記載されるという状況を自らあえて招いたものであつて、もし遺伝学上の幣害を云々するのならば、むしろ後者の行為を問題とすべきであろう。 六以上、人工受精の問題とを比較してきたが、要するに本件被申立人の業務停止処分の理由は、極めて形 招いたものであつて、もし遺伝学上の幣害を云々するのならば、むしろ後者の行為を問題とすべきであろう。 六以上、人工受精の問題とを比較してきたが、要するに本件被申立人の業務停止処分の理由は、極めて形式的なものであり、「医師の品位を損する」という要件の認定をあやまり、恣意的な目的に基づいて、本件処分をしたものというべきであり、あるいは裁量権の範囲をこえ、もしくは濫用し、裁量権の行使を誤つたものというべきである。 別紙(五)意見書申立人の行政処分執行停止の申立に対して、被申立人は次のとおり主張する。 申立の趣旨に対する答弁一本件申立を却下する二申立費用は申立人の負担とするとの決定を求める。 申立の理由に対する答弁一第一の一ないし四について認める。 二第二について申立人が、執行停止申立書の第一の四に記載した医業停止処分取消等請求事件の訴状において、被申立人のなした処分(以下「本件処分」という。)の違法事由として、第一点ないし第六点のような主張をしていることは認める。 三第三について「本件行政処分により生ずる回復困難な損害を避けるため緊急の必要がある」との主張は争う。 被申立人の主張第一本件処分に至る経緯と処分の正当性一申立人は宮城県石巻市<地名略>において、産婦人科肛門科医院を開設している医師であるが、愛知県産婦人科医会の告発(疎乙第一号証)に基づき、虚偽の出生証明書を交付し、戸籍薄に不実の記載をなさしめたかどにより、仙台区検察庁検察官から略式起訴され、昭和五三年三月一日仙台簡易裁判所において医師法(以下「法」という。)違反(法二〇条、三三条)、公正証書原本不実記載・同行使(刑法一五七条一項、一五八条一項、六〇条)の罪により罰金二〇万円に処せられた(疎乙第二号証)。 二宮城県知事は、右一記載の事実が法四条二号に該当する 二〇条、三三条)、公正証書原本不実記載・同行使(刑法一五七条一項、一五八条一項、六〇条)の罪により罰金二〇万円に処せられた(疎乙第二号証)。 二宮城県知事は、右一記載の事実が法四条二号に該当するものとして、同年一一月一三日仙台市宮黒保健所において法七条五項に基づき、右知事が指定した宮城県衛生部次長をして、申立人に対し弁明の機会を与えた(疎甲第二号証・疎乙第三号証)。 三被申立人は同五四年六月八日開催された医道審議会(なお、医道審議会は原則として年一回の割合で開催される。)に対し、法七条四項に基づき、本件処分をなすに当たつての意見を聴いたところ、同審議会は、右同日、申立人に対しては医業停止六月の処分が妥当である旨を被申立人に述べた。 四被申立人は、右審議会の意見に基づいて前同日、申立人に対し法七条二項において認められる裁量の範囲内で同年六月一五日から同年一二月一四日までの期間医業の停止を命ず旨の処分を決定した。 五同決定の内容は同日石巻保健所を通じて電話により申立人に対し通知され、更に翌六月九日午前中石巻保健所において同県衛生部長より直接申立人本人に伝えられた(疎乙第四号証)。 被申立人は、同月一四日午後石巻保健所長を通じ申立人の妻を介して申立人に対し命令書を交付した。 六本件はいわゆる赤ちやんあつせん事件といわれているもの(一八年間に二二〇件といわれている。疎乙第五号証・同第六号証)であつて、申立人において虚偽の出生証明書が作成交付されることにより虚偽の親子関係が戸籍上現出されることとなり、戸籍制度の信用性を害するばかりでなく、未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を要するとする民法(七九八条)の趣旨(それは子の福祉のために国家の後見を要請するものである。)を潜脱し、後に親子関係不存在確認訴訟などの紛争の種をまくことともなり を養子とするには家庭裁判所の許可を要するとする民法(七九八条)の趣旨(それは子の福祉のために国家の後見を要請するものである。)を潜脱し、後に親子関係不存在確認訴訟などの紛争の種をまくことともなり、更に重要なことは近親婚による遺伝学上の幣害の生じること等が予測されることである。 以上のような点を考慮し、被申立人は法七条二項の裁量の範囲内において医業停止六月の本件処分を行つたものであつて、何らの違法も存しないものである(疎乙第七号証)。 七なお付言すれば、法七条二項の定める処分のうちいずれを選択すべきか、その程度をいかにすべきかは処分権者の裁量にゆだねられていると解すべきであつて、当該非違行為との対比において、はなはだしく均衡を失する等社会通念上合理性を欠く場合のほか違法の問題は生じないというべきであり(最高裁昭和四九年二月二八日判決・民集二八巻一号六六ページ、最高裁昭和五二年一二月二〇日判決・判例時報八七四号三ページ)、また、本件は医業停止の場合であるから、免許の取消しの場合に比して処分権者の裁量的判断の幅はより広く認められるべきであると考えられる(最高裁昭和四八年九月一四日判決・民集二七巻八号九二五ページは、地方公務員の分限処分についてであるが、降任の場合は免職の場合に比して裁量の範囲を広く認めてよい旨判示している。)。 第二本件申立ては、その本案について理由のないことが明らかである。 一申立人は、本件命令書には理由が付記されていないから本件処分は違法であると主張している。 しかしながら、法令上特に理由の付記が要求されていない場合には理由を付記しなくても違法でないとするのが確立した判例であるところ、医師法には同法七条の処分に理由を付することを命じている規定はないから申立人の主張は失当である。 (白色申告についての更正処分通知書につき 付記しなくても違法でないとするのが確立した判例であるところ、医師法には同法七条の処分に理由を付することを命じている規定はないから申立人の主張は失当である。 (白色申告についての更正処分通知書につき最高裁昭和四三年九月一七日判決・訟務月報一五巻六号七一四ページ、農地法二〇条に基づく知事の許可処分につき高松高裁昭和三六年九月二八日、行裁例集一二巻九号一九二六ページ、個人タクシー営業免許申請却下処分につき東京地裁昭和四四年一二月二六日判決・訟務月報一六巻四号四〇四ページほか多数)。 しかも、医師法においては事前に被処分者に対し弁明の機会が与えられるが、弁明に先だちあらかじめ被処分者に対し書面をもつて「当該処分をなすべき事由」を通知することが義務づけられており(法七条五項)、本件においても右規定に基づき、宮城県知事から申立人に対し通知書が発せられ(疎甲第二号証)、同通知書の中に「処分をなすべき事由」が具体的に明記されているのであるから、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという理由付記の趣旨は右通知書交付の手続の中で実質的に担保されているといわなければならない。 なお、申立人は、前記最高裁昭和四三年九月一二日判決は、継続的、大量的かつ回復的処分にのみ妥当する旨主張するが、同判決の射程距離をそのように狭く解する理由は存しない。 また、申立人は、命令書において、処分の根拠法令として医師法七条二項を示していることについて、本件処分が医師法四条の各号のいずれに該当するのか、又は、医師としての品位を損するような行為のあつたときに該るのか申立人にとつて確認不可能であると主張する。 しかしながら、前記通知書(疎甲第二号証)中に処分の対象となる事実とそれが医師法四条二号に該当する旨 師としての品位を損するような行為のあつたときに該るのか申立人にとつて確認不可能であると主張する。 しかしながら、前記通知書(疎甲第二号証)中に処分の対象となる事実とそれが医師法四条二号に該当する旨を明記しているのであるから、本件処分が、法四条二号に該当することを理由になされたことは明らかであり、申立人の主張は失当である。 二次に、申立人は、弁明聴取書がその場で作成されず、また、読み聞けも署名捺印も求められなかつたから法七条七項の聴取書の作成を欠く違法があると主張する。 本件処分に係る申立人からの弁明の聴取は、昭和五三年一一月一三日仙台市内宮黒保健所において宮城県衛生部次長により行われたものである。 まず、同次長において、申立人の氏名、生年月日、本籍等を確認した後、代理人である佐々木泉弁護士より申立人の弁明書及び代理人の陳述書(疎甲第五号証・同第六号証)が提出された。 その後同次長より同年一二月三日付け読売新聞掲載申立人手記「赤ちやんを守るため」(疎乙第八号証)及び同月一五日付け朝日新聞掲載わたしの言い分「赤ちやんを救うために」(疎乙第五号証)の内容について異議がないかとの問があり、これに対し申立人は異議ない旨答えた。 また、略式命令手続に申立人が同意した心情についての問に対する弁明があつた後、同次長よりのそれ以外のことで追加修正することがあるかとの問に佐々木弁護士より本人並びに代理人の弁明・陳述は提出したとおりである旨の回答があつた。 弁明聴取書は、以上のやりとりを客観的に記述したものが作成されており(疎乙第九号証)、かつ本人及び代理人の署名、捺印のある弁明書(疎甲第五号証)五び陳述書(疎甲第六号証)の写しがその添付書類とともにそのまま県から厚生省に進達されているところである。このように、本人に弁明の機会を与えるという法七条五項の手続は 印のある弁明書(疎甲第五号証)五び陳述書(疎甲第六号証)の写しがその添付書類とともにそのまま県から厚生省に進達されているところである。このように、本人に弁明の機会を与えるという法七条五項の手続は、適法に履践されており、法の要求するところでない聴取書の読み聞けや署名捺印がないことをもつて聴取書の作成を欠く違法があるという申立人の主張は理由がない。 三申立人は、本件処分は、法七条二項の「医師の品位を損する行為があつた」ことを理由になされたのに弁明に関する通知書の「処分をなすべき事由」は、同法四条二項の行為に関するものであり、したがつて、申立人や代理人の弁明もこの点に限定して行つたものであるから、本件では法七条五項所定の弁明の機会を与えなかつた違法があると主張する。 しかし、本件処分が法四条二号に該当することを理由になされたことは、前記一において既に述べたとおりである。したがつて、本件処分は、法四条二号に該当する申立人に対し当該事実についての弁明を聴取したうえでなされたものであり、法七条五項の弁明の機会が与えられなかつたという申立人の主張は理由がない。 四申立人は、命令書の交付が処分発効日(昭和五四年六月一五日)の一一時間前であつたことをもつて、本件処分が懲戒罰的効果を企図したものか、申立人に係る入通院患者に対する配慮を欠き、公序良俗に反する処分であるとともに、処分権の濫用であると主張する。 しかしながら、申立人の主張は、故意に事実を曲げるものであると言わざるを得ない。 すなわち、本件処分は、前記のとおり昭和五四年六月八日午後に開催された医道審議会の意見を聴き、同日夕刻被申立人により決定されたものであるが、本件処分が医業停止という申立人本人に対する不利益処分であるとはいえ、申立人が現に診療を行つている医師であることから申立人開設の医院にお 会の意見を聴き、同日夕刻被申立人により決定されたものであるが、本件処分が医業停止という申立人本人に対する不利益処分であるとはいえ、申立人が現に診療を行つている医師であることから申立人開設の医院において治療中の患者に対しては、その治療に支障が生じないよう、転医、代替医師の確保等を図る必要のあること勿論である。したがつて、被申立人は、右の観点から処分決定後の同月八日夕刻県衛生部と連絡をとり、石巻保健所長を通じて電話により申立人に対し処分内容を通知し、更に翌九日午前石巻保健所において県衛生部長より直接申立人本人に対し処分内容を伝えるとともにその場で右部長と申立人の間で医業停止の間の申立人開設医院において現に治療中の患者の取り扱いについて話し合いがもたれたのであるが、この席で申立人は、これら患者については、申立人において責任をもつて転医等の措置を講じる旨述べているところである(疎乙第四号証)。 更に、同月一三日ころには、同月一五日以降の代替医師招へいの際の医療法上の手続について申立人より県の衛生担当部局に照会があり、現に同月以降は、申立人の義父である医師Bが、申立人開設の医院において診療を行つている(疎乙第一〇号証)。 また、被申立人の処分は、同月八日夕刻に決定されたのであるが、その後命令書のタイプ印刷、県に対する経由等の事務手続を経て同月一四日に申立人に命令書を交付するに至つたものである。右の次第であるから本件処分が、申立人の主張するような公序良俗違反又は、処分権の濫用をもつて批難されるものでないことは明らかである。 五申立人は本件処分が行為時から四年六か月も経つた後に行われたものであつて動機が不純であり違法であると主張する。 被申立人が、本件処分を法四条二号に該当するものとして法七条二項によりなしたものであることは既に述べたとおりであるが 四年六か月も経つた後に行われたものであつて動機が不純であり違法であると主張する。 被申立人が、本件処分を法四条二号に該当するものとして法七条二項によりなしたものであることは既に述べたとおりであるが、法四条二号は「罰金以上の刑に処せられた者」と規定するところであり、「罰金以上の刑に処」すことは、裁判所の専権に属するものである以上、被申立人としては昭和五三年三月一日の裁判所の判断(略式命令・同月一六日確定)を待つて本件行政処分を行わざるを得なかつたものであり、本件処分は右略式命令確定後最初に開催された医道審議会(なお、前回の開催は、同年一月二七日である。)の意見を聴いた上でなされているのである。 なお、申立人主張の法務大臣答弁についてはその後の検討結果に基づき、同年三月一日仙台区検察庁の行つた起訴により法務検察当局の最終判断が明確に示されたものと理解されるべきである。 更に申立人はマスコミの報道をそのまま引用し、同五四年六月八日開催の医道審議会が本件処分についての被申立人に対する意見を述べるに際し、「行為そのものの当否や社会的背景よりもむしろそのやり方や世間のアピールの仕方」を問題にしたと誤解しているようであるが、右審議会に関する前記報道は事実無根である。 したがつて本件処分の動機が不純違法であるという申立人の主張も全く理由がない。 六申立人は、申立人の行為は、戸籍制度の秩序維持という目的のための証明業務に関してなされたものであるところ、右証明業務は、医師にとつては、本来的医業とは別の、附随的業務であるから、右戸籍制度の秩序維持という公共利益達成は刑事罰及び行政罰によつてなされるべきであつて、行為者が偶々医師であることをもつて、法上の行政処分によるべきではない、仮に右行政処分によるとしても、申立人の行為が前記のように附随的業務に関してなされ 事罰及び行政罰によつてなされるべきであつて、行為者が偶々医師であることをもつて、法上の行政処分によるべきではない、仮に右行政処分によるとしても、申立人の行為が前記のように附随的業務に関してなされたものであること及び行為のなされた動機背景を十分考慮すべきであると主張する。 しかし、医師の証明業務は、附随的なものであろうか。近年においては、医療機関で分娩するケースは極めて多く、かつその場合は、医師が証明することがほとんどであることは周知のとおりであり、また、医師の作成する証明書類は、社会生活上重要かつ信頼すべきものであつて、それだけにまた法令上一定の効力が付与されており、したがつて不正確なものが発行された場合には社会的に種々の悪影響を及ぼすものである。医師が真実の証明をすべきであることは実子特例法の制定を推進する側からも指摘されており(疎甲第一〇号証)、医師の重要な職責である。 したがつて医師の証明業務は附随的業務ではなく、地域社会における医療を担う者としての主要な業務の一つである。 また、申立人はあたかも本件処分が戸籍制度の秩序維持ということのみを目的としてなされたものと考えているようであるがこれは著しい曲解である。 申立人の行為は、以下のような観点から評価し、判断される必要があることは明らかである。 1 申立人の行つた新生児あつせんによる親子関係の人為的形成は、真実の親子ではないため、将来新生児が成長し、結婚する際に近親婚のおそれがあり、これによつて民法の定める近親婚の禁止が破れるのみでなく、遺伝学上の弊害が生じることになる。また、悪質の遺伝子が実の親子関係でないため、疫学上究明しえず心身にわたる悪質遺伝子が子孫に継承されていくおそれが強くなるのである。このような危惧は医師であれば当然に承知しうるものであるが、申立人においてはこの点につ 実の親子関係でないため、疫学上究明しえず心身にわたる悪質遺伝子が子孫に継承されていくおそれが強くなるのである。このような危惧は医師であれば当然に承知しうるものであるが、申立人においてはこの点について何らの配慮もなく安易にあつせんを続けたものである。 2 未成年養子をするには家庭裁判所の許可が必要とされるが、専門家である調査官等の手による慎重な調査を経た上子の福祉を図る観点から裁判官が許否を決するものであることはいうまでもない。 本件赤ちやんあつせん事件においては、申立人自身がかかる国家的後見の役務を事実調査等の裏付けのない申立人の主観的判断のみによつて安易に代替するものであつて、子の幸福に対する保障はなく極めて不当である。 3 このような不実の親子関係は社会が予定していないため将来とも子の地位をめぐつて種々の法的紛争の発生が懸念され、親子ともに心理的な不安や家庭内のトラブルにさらされるおそれがある等必らずしも出生した子の幸福につながらない場合も相当予想されるのに申立人にはその点への配慮が見られない。 4 申立人は新生児の生命を救うためのやむを得ない行為であつたと主張するようであるが、本人の主観的意思はともかく客観的にはあつせん行為が緊急避難行為に該当しないことは明らかである(疎乙第一一号証)。 確かに母と嬰児とが相当に困難な条件の下に立たされる場合があること、養子よりも実子として育てることを望む親がいること等の事情があり、これらの事情が申立人の判断を誤まらせた原因になつていると思われるが、嬰児殺しのような悲惨な事実をなくしていくために必要な社会的努力も軽視し、独自の判断で多数の赤ちやんのあつせんを続けたことは、事柄の重要性についての認識を欠き対処の仕方を誤まつた行為であつたといわざるを得ない。 以上のとおりであるから単に戸籍制度の秩序維持と 力も軽視し、独自の判断で多数の赤ちやんのあつせんを続けたことは、事柄の重要性についての認識を欠き対処の仕方を誤まつた行為であつたといわざるを得ない。 以上のとおりであるから単に戸籍制度の秩序維持という観点のみに立つてなされた処分でないことは明白である。 なお、出生証明書の中核である母胎の記録につき虚偽の記載をしたという事例は初めてのケースであつたことから、被申立人においては医道審議会の慎重審議による意見と医師のあるべき姿についての総合的見地からの判断に基づき今回の処分をするに至つたものであり、申立人のいう過去の処分事例に照らして不適当である旨の主張は当たらない。 第三本件は、回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるときに当たらない。 一申立人は本件処分の執行により申立人に回復困難な損害が生ずるとし、その理由として名誉及び信用の毀損(申立人のいう信用は患者との信頼関係を指すようであるので以下その意味で用いる。)、経済的な損失による医院再開の困難性、及び患者らの不利益等をあげている。 しかしながら申立人の右の主張は、以下に述べるとおりいずれも失当である。 二まず申立人の名着及び信用の毀損についてであるが、本件処分を受けたことにより申立人の名誉及び信用が多かれ少なかれ一時的に毀損されるのは否定できないが、これは本件処分がなされたこと自体によるものであつてその執行によるものではないから効力の停止によつて毀損がなくなるわけでない上、名誉や信用は申立人の今後の反省と努力によつて回復することができる性質のものであり、また損害賠償(民法七〇九条)特に謝罪広告(同法七二三条)によつても回復が可能であるから、申立人の主張は明らかに失当である。 三 1次に申立人は本件医業停止斯間中申立人の開設する診療所が閉鎖され、申立人が全くの無収入となるかの如く述べて 告(同法七二三条)によつても回復が可能であるから、申立人の主張は明らかに失当である。 三 1次に申立人は本件医業停止斯間中申立人の開設する診療所が閉鎖され、申立人が全くの無収入となるかの如く述べている。 しかしながら、申立人は医療法八条に基づく診療所の開設者であつて、本件処分によつて開設者たる地位まで失つたわけではないから、医業停止期間中、医師を招へいすることによつて診療所の経営をつづけていくことが可能である。現に申立人は本件処分が効力を生じた六月一五日から義父のB医師を招いて患者の診療に当たらせている(疎乙第一〇号証)のであつて、収入の減少があるとしても申立人が無収入となることはあり得ない(仮に無収入となつたとしてもそれ自体金銭賠償が可能であるから回復困難な損害とはいえないことはいうまでもない。)。したがつてまた診療所の閉鎖を前提とする看護婦の退職金の問題や診療所再開後の看護婦雇傭の困難性などの問題も杞憂にすぎない。 2 申立人は生活費が月額七〇万円必要であるとか、借入金の返済に月額元本六〇〇万円、利息一五〇万円の支払いを要するとか述べて本件処分の執行により倒産が必至であるかのように主張している。 しかし疎甲第一二号証の一及び二によると借入金の返済はおおむね月額元本九〇万円、利息二九万円であることが明らかであつて、それが六〇〇万円及び一五〇万円であるとする主張は事実に反する。 更に注意すべきことは申立人は昭和五三年の青色による確定申告書を疎甲第一一号証の一ないし二として提出しているが、これによつても申立人個人の資産が明らかにならないということである。すなわち、疎甲第一一号証の二の資産負債調(貸借対照表)は申告書に添付されたものと考えられるが、これはあくまでも事業用のそれであつて申立人の個人資産を明らかにするものではない。所得税法二三二条 ある。すなわち、疎甲第一一号証の二の資産負債調(貸借対照表)は申告書に添付されたものと考えられるが、これはあくまでも事業用のそれであつて申立人の個人資産を明らかにするものではない。所得税法二三二条は総所得金額が二、〇〇〇万円をこえる場合は申告に際しいわゆる財産債務明細書(個人の資産負債(一覧表)の提出を義務づけているから、本件の申告に当つても右財産債務明細書が税務署長あてに提出されたはずであるが、疎甲号証としては提出されていない。そのことは申立人が事業用資産のほかに相当の個人資産を有していることを推測させるものであるし、申立人が二〇年以上医業に従事し、しかも年額四、〇〇〇万円を超える高額所得者であつて(申立人は昭和五三年五月に優生保護法一四条の指定を取消されており、申立人の言によればこれによつて年額一、〇〇〇万円の減収となるとのことであるから、昭和五二年以前の所得は五三年の所得額四、三三四万円を上回ることとなろう。疎乙第六号証)、年間少なくとも一、〇〇〇万円程度の蓄財が可能であることからもいい得るところである。したがつて、医業停止による一時的な減収は個人資産を流用することによつて十分カバーできるはずであつて、六か月の医業停止によつて医業再開が困難になるとか倒産が必至であるとかの主張は誇張以外のものではあり得ない。 なお、社会保険等による診療報酬の支払は約二か月遅れるのが通常であるから、六月に医業停止となつても八月までは社会保険による診療報酬があり(疎甲第一一号証の一から単純計算すれば月額一七八万六〇〇〇円となる。)、直ちに無収入となるわけではない。 四更に申立人は患者の不利益をもつて回復困難な損害であるとするが、患者は他に転医することによつて十分な医療を受けることが可能であり、石巻医師会もそのための協力を惜しまないものと考えられる( ない。 四更に申立人は患者の不利益をもつて回復困難な損害であるとするが、患者は他に転医することによつて十分な医療を受けることが可能であり、石巻医師会もそのための協力を惜しまないものと考えられる(被処分者でない第三者の損害はもともと問題になり得ないが)。 申立人は診療の一貫性、継続性が崩れた場合の万一の危険性を云々するが、そのような危険性が現実化しているわけでもなく、また、現代の医学水準からすれば、考えられないことである。 なお本件では前記B医師が申立人の診療所で診療を行つているため、患者は転院等の必要もない状況のようである。 五申立人は医師会から除名された場合の不利益をもつて回復困難な損害であると主張するが、医師会の除名決議は医師会自らの意思に基づいて行われるものであつて、本件処分と因果関係のある損害とはいえない。 また医師会が、刑事処分や本件処分を理由に除名決議をすることがあるとしても、それは処分の存在そのものが除名の理由となるはずであつて、処分の効力を停止してみても処分の存在そのものに消長がない以上除名決議を左右するものとは考えられない。 なお申立人の挙げる除名による不利益を検討してみても、それらが回復困難な損害として本件処分の効力を停止するに値いするほどの不利益であるとは到底思えない(例えば、宮城県内の準看護婦養成施設一二施設のうち六施設は医師会以外の設立にかかるものであり、同じく県内の登録衛生検査所六施設のうち四施設は医師会以外の設立にかかるものであるから、准看護婦の確保や血液等の検査が困難となることはない。)。 第四本件の執行(効力)停止は公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。 本件赤ちやんあつせん事件の特殊性は、申立人の誤つた使命感に基づきそれが違法であることを十分承知の上で敢行されていることである(医師の団体はいず 力)停止は公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。 本件赤ちやんあつせん事件の特殊性は、申立人の誤つた使命感に基づきそれが違法であることを十分承知の上で敢行されていることである(医師の団体はいずれも申立人の行為を非としている。疎乙第一二号証・同第一三号証)。 新聞報道によれば、申立人は「処分が終了したらあつせんを再開する。」旨公言してはばかるところがない(疎乙第六号証・同第一四号証から同第一六号証)が、これは法及び医師の職業倫理に対する重大な挑戦であつて(疎乙第一七号証)、そこには刑事処分を受けた者としての一片の反省すらうかがうことができないのである。 したがつて、もし本件執行停止申立が認容され、申立人が医業を早期に再開することになれば、申立人において再び赤ちやんあつせん行為に及ぶことは必至であるばかりでなく、本件がマスコミ等によつてセンセーシヨナルに取上げられる事件であつて、赤ちやんあつせんに対する潜在的需要のあることは否定できないだけに、社会一般に法軽視の風潮をもたらし、医師の倫理感に弛緩を生ずることは避けられず、ひいては戸籍制度上ないしは優生保護の面に重大な悪影響を及ぼすことにもなりかねないのである。 以上別紙(六)補充意見書第一申立人の昭和五四年六月二三日付け補充書に対し被申立人は次のとおり反論する。 一申立人は、医業停止の状態においては金融機関は融資に応じないから、申立人は支払不能に陥り病院再開は絶望的となると主張する。 しかし、北日本相互銀行の申立人に対する融資枠は一億円と考えられる(申立人の不動産に設定された同銀行の根抵当権の極度額は一億円である。疎甲第一六号証の一ないし八)ところ、申立人の同銀行からの借入残額は四七四〇万円であつて相当の余裕があること、右抵当物件の価額だけでも時価一億円を下ることはないと考えられ 権の極度額は一億円である。疎甲第一六号証の一ないし八)ところ、申立人の同銀行からの借入残額は四七四〇万円であつて相当の余裕があること、右抵当物件の価額だけでも時価一億円を下ることはないと考えられる (極度額は担保物件の価額より少くとも二、三割低い額で設定されるのが通常である。)から申立人の資産状況はむしろ良好で銀行の信用を失うような状態でないこと、医業停止とはいつてもその期間は六か月で期間経過後は医業に従事できることが確実であること、新築の寄宿舎は担保に入つておらず(疎甲第三七号証)、これを担保として融資を受けることが可能であること、申立人は石巻市鋳銭場の土地建物のほか泉市にも土地を所有していること(疎甲第四七号証)、などの諸点を考慮すれば金融機関の融資が受けられず倒産が必至であるとする申立人の主張に根拠がないことは明白である。 二申立人は宮城県内の同業者の中で孤立無援の状況であるから代替医師を探し出すことは極めて困難である旨主張する。 しかし、申立人の義父であるB医師が現に申立人の診療所で診療に当たつていることは既に述べたとおりである上、申立人提出の昭和五四年三月一五日付け及び同年四月一六日付け収支日報(疎甲第二七号証)によれば、K、Lの両医師が手術の応援等に従事している事実が認められ、この時期には既に申立人に対する刑事処分も確定しているのであるから、真実申立人が孤立無援であるならば、右両医師が従事することもあり得ないと考えられる。 また医師招へいは全国的な規模で頻繁に行われており(疎乙第一八号証)、申立人において広告等の手段を用いて広く(宮城県内に止まらず)代替医師を募集することによつてその確保をはかることも可能である。 したがつて、代替医師を探すことは極めて困難であるとする申立人の主張は失当である。 三申立人は昭和五二年四月に 宮城県内に止まらず)代替医師を募集することによつてその確保をはかることも可能である。 したがつて、代替医師を探すことは極めて困難であるとする申立人の主張は失当である。 三申立人は昭和五二年四月に長男と次男の入学金合計七、三〇〇万円を要したとし、これも主として銀行からの借入によつてまかなつた位で預貯金は皆無に等しい旨主張する。 申立人は申立書において北日本相互銀行からの借入は看護婦宿舎の建設と医療器材の購入のためであると述べ(疎甲第一一号証の二の貸借対照表にも事業用の借入金として五、三七〇万円が計上されている。)ながら、補充書では借入金の大半が事業と無関係の息子の入学金のためであるとするなど主張に一貫性を欠き、七、三〇〇万円もの多額の入学金を要したとする主張が真実であるかどうか極めて疑わしい(金額が余りにも多額にすぎるし、疎明資料としても大学の領収書などはなく、申立人の妻からの聴取書があるにすぎない。なお、文部省に報告されたところによると、近畿大学医学部の昭和五二年度入学金は五〇万円である)。 仮に申立人が息子の入学金として七、三〇〇万円を負担したとすれば、そのこと自体申立人の裕福さを示すものであつて(通常の家庭であれば、息子の入学金として負担できるのはせいぜい数百万円が限度であろう。)、かかる負担の可能な申立人が六か月の医業停止によつて倒産し医業再開が不可能になることなどおよそ考えられないのである。 第二申立人の昭和五四年六月二五日付け補充書(第二)第二、一、(一)及び(二)について被申立人は次のとおり主張する。 被申立人が昭和五四年六月一四日、申立人の妻に本件処分の命令書を交付した際、宮城県石巻保健所長を通じて同妻に対しおおむね補充書(第二)添付に係る別紙の内容を伝えた事実は認める。 しかしながら、右内容は本件処分の理由そのものでは 日、申立人の妻に本件処分の命令書を交付した際、宮城県石巻保健所長を通じて同妻に対しおおむね補充書(第二)添付に係る別紙の内容を伝えた事実は認める。 しかしながら、右内容は本件処分の理由そのものではなく、処分を決定するに当たつての基本的考え方を明らかにしたものである。本件処分理由は五四年六月二二日付け被申立人意見書第二、一で述べたとおり法四条二号に該当する事実である。 なお、法七条二項について付言すれば、法七条二項は、「医師が第四条各号の一に該当し、又は医師の品位を損するような行為のあつたときは、厚生大臣はその免許を取り消し、又は期間を定めて医業の停止を命ずることができる」と規定しており、「第四条各号の一に該当」することと「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」は、A又はBという選択的関係にある。したがつて、本件処分の如く「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するときは、法四条二号のみに該当するものであり、当該事実が更に「医師としての品位を損する行為のあつたとき」に該当することはあり得ない。「医師としての品位を損するような行為」とは、法四条各号の一に該当しない行為であつて、かつ医師としての品位を損するような行為を指すものである。 以上
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