平成14(行ウ)49 転入届不受理処分取消等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年11月7日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6638.txt

判決文本文10,308 文字)

主文 1 被告吹田市長が,平成14年4月16日付けで選定者A及び同Bに対してした各転入届不受理処分を取り消す。 2 被告吹田市は,原告(選定当事者)に対し,選定者Aのために50万円,同Bのために50万円及びこれらに対する平成14年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告(選定当事者)の被告吹田市に対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,原告(選定当事者)に生じた費用(選定前の原告らに生じた費用を含む。以下同じ。)の2分の1と被告吹田市長に生じた費用を同被告の負担とし,原告(選定当事者)に生じた費用の4分の1と被告吹田市に生じた費用の2分の1を同被告の負担とし,その余の全費用を原告(選定当事者)の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告吹田市は,原告(選定当事者)に対し,選定者Aのために100万円,同Bのために100万円及びこれらに対する平成14年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,宗教団体アレフ(旧オウム真理教,以下「アレフ」という。)の信者で,吹田市内に転居した選定者らが,被告吹田市長に対し転入届を提出したのに対し,被告吹田市長がその不受理処分(以下「本件処分」という。)をしたとして,原告を選定当事者として,被告吹田市長に対して本件処分の取消しを求めるとともに,選定者らが本件処分によって精神的損害を受けたとして,被告吹田市に対し国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) が本件処分によって精神的損害を受けたとして,被告吹田市に対し国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者選定者らは,いずれもアレフの信者であり,平成14年3月1日,大阪府吹田市a町b-c(以下「本件住所地」という。)に転居し,生活の本拠を定めた(甲17ないし19)。 (2) 被告吹田市長による不受理方針の表明被告吹田市長は,平成12年3月28日,本件住所地で住民票の転入届が提出されても受理しない方針を決定し,公表した。 (3) 転入届の提出原告(選定当事者)は,平成14年4月16日,吹田市役所において,選定者らにつき,本件住所地を住所地として,原告(選定当事者)については自ら,選定者Aについては代理人として,被告吹田市長に対して,転入届を提出した。 (4) 本件処分上記転入届の提出に対し,吹田市市民課課長は,「この住所へは受け付けられません。」「吹田市の方針は変わりません。」と言って対応し,被告吹田市長は,同日,選定者らがアレフ信者であることを理由に転入届不受理処分をした。 (5) 審査請求選定者らは,平成14年4月18日,大阪府知事に対し,本件処分の取消しを求める審査請求をした。 2 争点及び争点に対する当事者の主張(1) 本件処分の適法性(被告らの主張)ア地方公共団体に関する法令の規定は,地方自治の本旨に基づいて解釈,運用するようにしなければならないとされているところ(地方自治法2条12項),同条項にいう「地方自治の本旨」とは,憲法92条及び地方自治法1条のそれと同義であって,その中に地方の 旨に基づいて解釈,運用するようにしなければならないとされているところ(地方自治法2条12項),同条項にいう「地方自治の本旨」とは,憲法92条及び地方自治法1条のそれと同義であって,その中に地方の政治や行政が当該地方の住民の意思に基づいて行われるべきであるという「住民自治の原則」が含まれていることは明らかである。また,地方自治法は,地方公共の秩序を維持し,住民及び滞在者の安全,健康及び福祉を保持するとして地方自治体の負う責務を定め(旧地方自治法2条3項1号参照),更に,市町村は,その事務を処理するに当たって,議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本的構想を定め,それに即して行うようにしなければならないとして議会の議決の尊重義務も定めている(地方自治法2条4項)。これらの規定は,市町村長の行う転入届の受理に関する事務についても,解釈指針として斟酌されるべきものである。 住民基本台帳は,単に形式的に住所の登録と公証だけでなく,実質的に当該地方公共団体の住民として,各種の行政上のサービスを受けるべき立場を付与する事実上の効果を有する。これは転入届を受理して住民票を調製し住民基本台帳に記載した者については,当該地方公共団体の住民として受け入れることを意味するものである。 このような住民基本台帳の効果に照らせば,住民基本台帳法(以下「法」という。)が,当該地方公共団体の地域の秩序が破壊され,住民の生命や身体に対する安全が害される危険性が高度に認められるような特別な事情がある場合にも,一律に住民票の調製と住民基本台帳への記録を義務付けていると考えることは妥当でない。かかる特別な事情がある場合には,住民の安全確保のためにとった措置によって,法が実現しようとしている記録の 合にも,一律に住民票の調製と住民基本台帳への記録を義務付けていると考えることは妥当でない。かかる特別な事情がある場合には,住民の安全確保のためにとった措置によって,法が実現しようとしている記録の正確性,統一性が部分的に損なわれてもやむを得ないと評価される場合があり得ると考えるべきである。 イ選定者らは,オウム真理教が改称したアレフの信者であるが,オウム真理教はこれまで多数の残虐かつ卑劣極まりない事件を起こし,これらの凶悪犯罪は同教団の組織的犯行としてなされたものであって,犯行に関与した信者に対する刑事判決では重い有罪判決が下され,組織的犯行に加担したとして指名手配中の信者が未だ逮捕されておらず逃亡中である。このようなオウム真理教による一連の事件と状況を理由として,同教団には無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)が適用され,平成12年2月1日から3年間の観察処分に付されている。このことは同教団が今なお無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があり,その危険性が払拭されていないことを示すものであるといえる。もっとも,同教団は,団体規制法が適用されるに当たり,教団として一連の凶悪犯罪に対する組織的な犯行を認め,被害者への補償の約束を打ち出したり,教団名をアレフと改称し,教義を変更するなどしているが,これらの行動も団体規制法の適用を回避するとともに住民の反対運動を和らげて組織の生き残りを図るための便法に過ぎず,その教義の根本については実質的には全く変わりはなく,その具体的な危険性は未だ払拭されていないというべきである。 本件においても,平成12年3月にオウム真理教大阪支部が本件住所地に移転したとの情報が寄せられて以来,地元住民は犯罪に巻き込まれることに は未だ払拭されていないというべきである。 本件においても,平成12年3月にオウム真理教大阪支部が本件住所地に移転したとの情報が寄せられて以来,地元住民は犯罪に巻き込まれることに強い危険や脅威を感じ,自己の日常生活を犠牲にしつつ自己防衛的に住民運動を展開している。そして,吹田市市議会は「オウム真理教大阪支部の立退き等を求める決議」を全議員一致で可決し,地元の自治会連合協議会も同様の決議をなし,地域安全・オウム真理教対策吹田市民会議も同様の趣旨の立退きを求める通告書を渡すとともに,大規模な署名運動を続けるなどしている。このような状況の中で,被告吹田市長が選定者らの転入届を受理すれば,アレフ信者の本件住所地への居住を固定化し,信者のさらなる転入を促し,地域住民の脅威や不安を殊更に大きくすることになってしまうことは明らかである。 したがって,本件は,まさに当該地方公共団体の地域の秩序が破壊され,住民の生命や身体に対する安全が害される危険性が高度に認められる特別な事情がある場合に当たり,被告吹田市長の本件処分は適法であるといえる。 (原告の主張)ア地方自治法10条1項は,「住民」の意義について,「市町村の区域内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」と明確に規定し,その他に一切の要件を付加しておらず,法4条は,「住民の住所に関する法令の規定は,地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。」としているのであるから,法における「住民」の意義については「市町村の区域内に住所を有する者」との解釈以外にはあり得ない。転入届等を受けた市長が,転入届に係る住民の居住の有無以外に,その転入届等の目的,思想信条 あるから,法における「住民」の意義については「市町村の区域内に住所を有する者」との解釈以外にはあり得ない。転入届等を受けた市長が,転入届に係る住民の居住の有無以外に,その転入届等の目的,思想信条,所属団体の内容等を審査して,転入届等の受理をしないことを認めることは,地方自治法10条1項の「住民」の意義に新たな要件を加えるものであって,絶対に許されない解釈である。 日本国籍を有する者であって,当該市町村の区域内に居住の事実があり,居住の意思も認められる者は,その市長村長に転入等の届出をすべき法的義務を負い(法22条,23条),かつ,市町村長は,法に基づき,その者の住民たる地位に関する正確な記録を常に整備する法的義務を負っているのであって(地方自治法13条の2),これ以外の法律関係は存在せず,市町村長に住民登録を拒否しうる裁量権が認められる法的根拠はない。 法1条及び3条1項並びに住民基本台帳法施行令(以下「施行令」という。)11条の文理自体から,また,その目的,趣旨からして,住民基本台帳に記録されるべきか否かは,当該住民の住所が当該市町村の区域内にあるかどうかという事実及び住民基本台帳に登録して管理すべき者かどうかのみを基準として判断されるべきものである。 地方公共団体がその住民の生命,身体,財産等の安全を確保すべき責務があるにしても,転入届をした者が「住民」たる地位にあることを公証することを目的とする法の解釈を歪めて構わないという根拠にはならない。 イ憲法は,22条1項において,居住移転の自由を保障しており,自己が求める場所に移転し居住してもそのことにより何ら不利益を受けないことが保障されているところ,選定者らの住居の移転及びそれに基づく居住について,被 2条1項において,居住移転の自由を保障しており,自己が求める場所に移転し居住してもそのことにより何ら不利益を受けないことが保障されているところ,選定者らの住居の移転及びそれに基づく居住について,被告吹田市長がその届出を不受理とすることは,居住移転の自由を侵害することにほかならない。 また,公職選挙法は住民登録制度と選挙制度を結合させ,選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は投票することができないところ(同法42条1項本文),選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で,その者に係る当該市町村の住民票が作成された日(他の市町村から当該市町村の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法22条の規定により届出をしたものについては,当該届出をした日)から引き続き3か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行われることとされているから(同法21条1項),住民登録がされない以上選挙権の行使ができないのであり,選定者らは,本件転居届の不受理処分により,憲法15条の選挙権を侵害されている。 更に,国民健康保険法も住民基本台帳法に基づく届出と国民健康保険法に基づく届出を連動させており(法28条,国民健康保険法9条10項),その結果,法に基づく届出がされないと国民健康保険法上の届出もされないこととなり,国民健康保険の被保険者資格が得られないこととなる。したがって,選定者らは,本件処分により,国民健康保険の利用が不可能となることから,憲法25条の生存権の自由権的側面を侵害されており,本件処分は憲法25条に違反する。 加えて,本件処分においては,選定者らがアレフの信者であることをもって差別的取扱いをされたのであり,思想の自由を侵害する点で 面を侵害されており,本件処分は憲法25条に違反する。 加えて,本件処分においては,選定者らがアレフの信者であることをもって差別的取扱いをされたのであり,思想の自由を侵害する点で憲法19条に,また,法の下の平等に反する点で憲法14条に違反する。 ウ被告らは,アレフの危険性を強調して本件処分が適法である旨主張する。 しかし,アレフはオウム真理教を承継しつつも,数々の根本的改革を行い,被告らが指摘するような危険性は全く存在しなくなった。すなわち,Cは教祖でも代表者でもなく教団の運営や信者の指導には関与できないこととし,かつて教団の最高意思決定機関であった長老部も廃止し,民主的方法で選ばれた者により執行部を構成するものとして,教義の見直しも行われた。また,教団は,松本サリン事件,地下鉄サリン事件の被害者等に対して謝罪し賠償を行っているほか,地域住民や各自治体との融和の実現に努めているのである。 以上によれば,被告らの上記主張は理由がない。 (2) 国家賠償請求権の成否(原告の主張)転入者から転入届の提出があった場合には,法5条ないし8条の規定に基づき,住民票に住民に関する記載をして住民基本台帳に記録すべき義務があるところ,被告吹田市長は,故意又は過失により,本件住所地で住民票の転入届が提出されても受理しない方針を決定公表し,実際に選定者らの転入届を不受理とする本件処分をしたのであるから,被告吹田市長は,その職務を行うにつき公権力の行使を誤ったものと認められる。そして,選定者らは,被告吹田市長による転入届不受理方針の決定によって,転入届の提出について萎縮してしまい,本件住所地に居住後も転入届の提出ができなかっただけでなく,転入届 を誤ったものと認められる。そして,選定者らは,被告吹田市長による転入届不受理方針の決定によって,転入届の提出について萎縮してしまい,本件住所地に居住後も転入届の提出ができなかっただけでなく,転入届提出後も,被告吹田市長によって本件処分がなされたことによって,健康保険が利用できず,選挙権の行使もできないほか,日常生活の極めて広い範囲に渡って著しい不便を被り,甚大な精神的苦痛を受けた。このような選定者らの精神的苦痛に対する慰謝料はそれぞれ100万円を下らない。 よって,被告吹田市は,国家賠償法1条により,これを賠償すべき義務がある。 (被告吹田市の主張)ア被告吹田市長が行った本件処分は適法であるから,被告吹田市が国家賠償責任を負うことはない。 イ仮に,本件処分が違法であると判断された場合であっても,被告吹田市長は,地元住民から現実的な恐怖や不利益の声が多く寄せられる中,吹田市議会においてアレフ信者の本件住所地への転入届不受理などを求める決議が全会一致で可決されたことを踏まえて,住民自治により当該地域の秩序の維持と住民の安全と健康を守るという地方公共団体の責務を果たすため,本件処分を行ったものであって,本件処分について,被告吹田市長には故意はもとより過失も認められない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件処分の適法性)について(1) 法令の定め法は,市町村において,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,併せて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進するとともに,国及び に住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,併せて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的としている(法1条)。 市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならず(法3条1項),その住民につき,氏名,出生の年月日,男女の別等法7条所定の事項を記録する住民票を世帯ごとに編成して,住民基本台帳を作成する義務を負っている(法5条,6条1項)。 一方,住民は,常に住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならないとされ(法3条3項),出生以外の事由で新たに市町村の区域内に住所を定めて転入をした者は,転入をした日から14日以内に,氏名,住所,転入をした年月日等所定の事項を市町村長に届け出ることが義務付けられており(法22条1項),正当な理由がなく,これに違反した場合には,5万円以下の過料に処せられることとされている(法51条2項)。 住民票の記載は,政令で定めるところにより,法の規定による届出に基づき,又は職権で行うものとされ(法8条),これを受けて施行令は,市町村長に対し,転入をした者その他新たにその市町村の住民基本台帳に記録されるべき者があるときは,その者の住民票を作成することを義務付け(施行令7条1項),法の規定による届出があったときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,住民票の記載を行わなければならないと定めている(施行 きは,その者の住民票を作成することを義務付け(施行令7条1項),法の規定による届出があったときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,住民票の記載を行わなければならないと定めている(施行令11条)。 (2) 以上の法令の定めからすれば,転入をした者について市町村長が住民票を作成し住民基本台帳に記録する行為は,その者が新たに市町村の区域内に住所を定めたという事実が存在する場合に,その居住関係を公証し,住民に関する記録の適正な管理を図るという目的から行われるものであって,転入者についての住民票の作成や住民基本台帳への記録自体によって,当該市町村への転入,居住が許容されるなどの権利義務が形成されるという法的効果を生じるものでないことは明らかである。そして,転入をした者が届け出なければならない事項は,氏名のほか,住所,転入年月日及び従前の住所等の居住関係に関するものに限られ(法22条1項),市町村長は当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して住民票の記載を行うものとされており(施行令11条),それ以外の事項を住民票の作成及び住民基本台帳に記録するための要件とすることを定めた規定がないことを併せ考えると,転入の届出があった場合に市町村長が住民票の作成及び住民基本台帳に記録するに当たって審査すべき事項は,転入届に係る居住関係が事実であるかどうかに限られると解するのが相当である。 したがって,市町村長は,転入の届出があった場合,当該届出に係る居住関係が事実である限り,その内容に従ってその者の住民票を作成し,住民基本台帳に記録しなければならない義務を負っているものというべきである。 (3) 前提事実のとおり,選定者らは,平成14年3月1日以降,本件住所地に居住しているのであるから,被告吹田市長が行った本件処分は 録しなければならない義務を負っているものというべきである。 (3) 前提事実のとおり,選定者らは,平成14年3月1日以降,本件住所地に居住しているのであるから,被告吹田市長が行った本件処分は違法なものであるというべきである。 (4) 被告らは,本件処分は,当該地方公共団体の地域の秩序が破壊され,住民の生命や身体に対する安全が害される危険性が高度に認められる特別な事情があったために行われたものであって,適法であると主張する。 しかし,前記のとおり,住民基本台帳制度は,住民の居住関係の公証や住民に関する記録の適正な管理を目的とする制度であって,地域の秩序維持や住民の安全確保を目的とするものではなく,しかも,市町村長が転入届を受理せずに住民票の作成及び住民基本台帳に記録を拒否したからといって,当該転入届をした者の当該市町村における居住が禁止される等の法的効果が生じるものでもなく,その者が当該市町村の区域内に居住すること自体は可能であるから,当該転入届を不受理とすることによって住民の安全を確保するという目的を達することができるというものでもない。そうすると,住民基本台帳法が,被告らが主張するような事情を考慮して,適法に行われた転入届を不受理とし,住民票の作成を拒否する権限を与えていると解する余地はないといわざるを得ない。 また,地域の秩序を維持し,住民の安全を確保することが地方公共団体及びその長の責務であるとしても,何らの法令上の根拠に基づかない行政作用により,国民の権利利益を侵害することは許容されるものではない。 したがって,被告らが主張する事情をもって本件処分を正当化することは是認できない。 (5) よって,被告吹田市長は,選定者らの転入届を受理して住民票を作成し,住民基本台帳 い。 したがって,被告らが主張する事情をもって本件処分を正当化することは是認できない。 (5) よって,被告吹田市長は,選定者らの転入届を受理して住民票を作成し,住民基本台帳に記録しなければならない義務を負っていたものといわざるを得ず,これに反してされた本件処分は違法なものである。 2 争点(2)(国家賠償請求権の成否)について(1) 本件処分が違法であることは前述のとおりである。そして,既に,当庁において,被告吹田市長が他のアレフ信者に対して行った転入届不受理処分について違法として処分の取消しを認めた判決がなされ,他の地方公共団体の同種事例においても,アレフ信者であることを理由とした転入届の不受理処分は違法であるとの司法判断が繰り返し行われていることから,被告吹田市長は,本件処分の違法性につき少なくとも過失があったというべきである。 (2) 被告吹田市長は,法に従った転入の届出があった場合,当該届出に係る居住関係が事実である限り,その内容に従ってその者の住民票を作成し,住民基本台帳に記録しなければならない義務を負っているのであるから,本件住所地で住民票の転入届が提出されても受理しない方針を決定し表明した行為も違法であるといえる。そして,地域の秩序維持と住民の安全確保を理由として転入届を不受理とすることが許されないことは法令の文言から容易に認識することができたのであるから,被告吹田市長には,不受理方針の表明の違法性について,少なくとも過失があったと認められる。 (3) 証拠(甲17,18)によれば,選定者らは,被告吹田市長による不受理方針の表明があったため,本件住所地に転居後も1か月あまりの間,転入届の提出を躊躇しただけでなく,転入届提出後も被告吹田市長によって本件処分がなされたため,国 ,選定者らは,被告吹田市長による不受理方針の表明があったため,本件住所地に転居後も1か月あまりの間,転入届の提出を躊躇しただけでなく,転入届提出後も被告吹田市長によって本件処分がなされたため,国民健康保険が利用できず(法28条,国民健康保険法9条10項),選定者Aにおいて病院での治療を自制していること,各種行政サービスを受けられずにいること,このような状況が継続することについて選定者らが不安を抱いたこと,本来受理されるべき転入届がアレフ信者であることを理由に受理されなかったこと等によって精神的な損害を被ったことが認められ,これらの精神的損害に対する慰謝料としては,それぞれ50万円が相当である。 3 結論以上によれば,原告(選定当事者)が,被告吹田市長に対し,本件処分の取消しを求める請求並びに原告(選定当事者)が被告吹田市に対し慰謝料の支払を求める請求のうち,選定者らそれぞれについて50万円及びこれらに対する平成14年4月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分については理由があるからこれを認容することとし,原告(選定当事者)の被告吹田市に対するその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官山下郁夫 裁判官山田明 裁判官山田明 裁判官小泉満理子 (別紙)選定者目録 大阪府吹田市a町b-c 選定者 A同所同 B

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る