平成14年(ワ)第12467号知的所有権侵害事件(口頭弁論終結の日平成14年12月5日)判決原告 A被告富士写真フイルム株式会社訴訟代理人弁護士熊倉禎男同吉田和彦同渡辺光同相良由里子補佐人弁理士小川信夫 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告は,原告に対し,300万円を支払え。 2 被告は,別紙記載の写真用ロールフィルム(「イージーエンドシール」を使用したもの)を販売してはならない。 3 被告は,市場に流通している前項記載の製品を回収せよ。 4 原告が,被告の出願に係る特開平10-104803号公報記載の写真用ロールフイルムの発明につき権利を有することを確認する。 第2 事案の概要本件は,「ブローニーフイルム撮影済固定シール」に関する考案の実用新案登録出願をした原告が,この技術を商品に採用することを被告に提案したところ,被告はこれを断ったにもかかわらず,原告の考案を基にした特許出願をして,その実施品を販売している旨主張し,第1「原告の請求」欄記載のとおり,金員の支払及び製品の販売差止め・回収並びに被告の出願に係る発明について原告が権利を有す ず,原告の考案を基にした特許出願をして,その実施品を販売している旨主張し,第1「原告の請求」欄記載のとおり,金員の支払及び製品の販売差止め・回収並びに被告の出願に係る発明について原告が権利を有することの確認を求めている事案である。 これに対して,被告は,① 原告の主張はそれ自体失当である,② 被告は原告の考案と関係なく独自に上記発明を完成させていた,③ 原告の考案には新規性がないと主張して,本訴各請求の棄却を求めている。 第3 当事者の主張 1 請求原因(1) 原告は,平成8年7月17日,被告に対し,原告が特許庁に提出した実用新案登録願の写しを送付した。 (2) 原告は,平成8年10月1日ころ,被告会社の知的財産部部長作成の書面を受け取った。 (3) 被告から受け取った書面には,原告が被告に送付した実用新案登録願に記載された技術は問題があり採用できないという趣旨が記載されていた。 (4) 被告は,原告に知らせないまま,平成8年10月1日,原告が既に考案した上記技術を基に特許出願をした。 (5) 被告は,原告が既に考案済みの技術を用いて,平成14年2月,新製品(別紙記載のもの)を発表し,現在も販売し続けている。 (6) 原告は,フィルムメーカー最大手である被告から技術の採用を断られたため,既に実用新案登録出願を取り下げている。 2 被告の認否及び反論(1) 請求原因に対する認否ア上記1(1)に関し,原告が,被告に対し,平成8年7月ないし8月ころ,平成8年7月17日付けの実用新案登録願の写しを送付したことは認めるが,原告がこれを7月17日に送付したことは知らない。 イ上記1(2)の事実は認める。 ウ上記1(3)の事実は認める。 7日付けの実用新案登録願の写しを送付したことは認めるが,原告がこれを7月17日に送付したことは知らない。 イ上記1(2)の事実は認める。 ウ上記1(3)の事実は認める。 エ上記1(4)に関し,被告が,原告に特に通知することをせず,特許出願をしたことは認めるが,それが原告が既に考案した技術を基にしたものであることは,否認する。被告の特許出願に係る発明は,その前に,被告会社の従業員により完成されていたものであり,原告の考案とは,何の関係もない。 オ上記1(5)に関し,被告が別紙記載の製品(以下「被告製品」という。)を発売し,現在も販売していることは認めるが,それが原告が既に考案済みの技術を用いたものであることは,否認する。 カ上記1(6)に関し,原告が被告から技術の採用を断られたことは認めるが,原告が実用新案登録出願を取り下げたことは(実用新案登録出願をしたことについても),知らない。 (2) 被告の反論ア原告の主張は,それ自体失当であること原告の実用新案登録出願は,被告の特許出願に先んじて行われたものであるから(ただし,後述のとおり実用新案登録の要件を欠く。),技術の採用を求める原告の書簡と願書の写しの送付に対し,被告が原告の提案に係る技術を採用できない旨通知したからといって,原告が出願を取り下げる理由は全くなく,原告は独自の判断で出願を取り下げたものである。したがって,被告が,原告の出願に係る考案(願書添付の明細書〔甲2〕参照。以下「原告考案」という。)を採用できない旨の通知をした直後に,特許出願を行い,また,被告製品を販売したからといって,原告に何らかの金銭支払請求権が発生することはない。よって,前記第1の1の請求(金300万 考案」という。)を採用できない旨の通知をした直後に,特許出願を行い,また,被告製品を販売したからといって,原告に何らかの金銭支払請求権が発生することはない。よって,前記第1の1の請求(金300万円の支払請求)が成り立つ余地はない。 そして,上記のとおり原告は実用新案権等の排他的権利を有していないから,前記第1の2の請求(差止請求)は成り立たない。 さらに,被告は,既に市場に流通している商品について処分権限を有しないから,前記第1の3の請求(製品回収の請求)も成り立つ余地がない。 また,被告の特許出願は登録に至っておらず,また,その点をおいたとしても,特許に他人の権利が抽象的に存在することはないから,前記第1の4の請求(特許に原告が権利を有することの確認)も成り立つ余地がない。 イ被告会社の従業員は,発明を独自に完成させていたこと被告の出願に係る発明(特開平10-104803号公報〔甲4〕記載のもの。以下「本件発明」という。)は,原告の被告に対する文書送付(平成8年7月ころ)より前の平成8年5月までに,被告会社の従業員のB(以下「B」という。)が完成させていたものである。 ウ原告考案は新規性を欠くものであること原告考案の内容は,願書に添付した明細書(甲2)を見ると,「ブローニーフイルムの裏側の最後部付近にシール状のものを設ける」という抽象的なアイデアに尽きており,他に実質的な開示はない。この抽象的なアイデアは,被告の出願に係る実開平3-37446号公報(乙6の1)及びコニカ株式会社の出願に係る特開平2-235051号公報(乙10)等において既に実現されており,何ら新規性はない。原告考案が実用新案登録要件を欠くものであることは(実用新案法 6号公報(乙6の1)及びコニカ株式会社の出願に係る特開平2-235051号公報(乙10)等において既に実現されており,何ら新規性はない。原告考案が実用新案登録要件を欠くものであることは(実用新案法3条1項3号参照),明白である。 3 原告の再反論(1) 被告による通知は虚偽であること被告は,原告の実用新案登録願に記載された技術は問題があり採用できない旨の平成8年9月30日付けの書面を原告に送付したが,この書面の内容は虚偽である。このことは,被告が,上記書面を作成した翌日の同年10月1日に本件発明につき特許出願をしていることから明らかといえる。 被告による虚偽事実の通知がなければ,原告はその出願に係る原告考案について実用新案登録を得ていたであろう。そうすれば,本件発明に係る特許に対して先願の関係にあり,その特許の内容が原告考案を含んでいるため,当然原告にも,同特許について権利が発生したはずである。 被告は,「原告は実用新案権等の排他的権利を有していない。」旨主張するが,それ自体が被告による虚偽事実の通知に基づくものであるから,被告の主張は失当である。 (2) 独自開発の主張について被告会社の従業員が平成8年5月までに本件発明を完成させていたことは,認める。しかし,それは社内においてのことであり,社外においては誰も知らず,何の権利も有しない。また,原告はその考案に係るアイデアを15年以上前から持っていた。 (3) 新規性欠如の主張について被告は公知例として,実開平3-37446号公報(乙6の1)及び特開平2-235051号公報(乙10)を挙げるが,これらに開示されている考案は原告考案の下位概念に当たること,後者については「発明が解決しようとする課題」 開平3-37446号公報(乙6の1)及び特開平2-235051号公報(乙10)を挙げるが,これらに開示されている考案は原告考案の下位概念に当たること,後者については「発明が解決しようとする課題」は原告考案と異なることから,原告考案の新規性はなお失われない。 また,公知とは「公に知れ渡っていること」を意味するところ,上記公開実用新案公報(乙6の1)に記載の考案は,製品化もされておらず,被告会社の内部の一部の者にしか知られていないものであるから,到底公知であるとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 本件における事実関係原告による実用新案登録出願から本訴の提起に至るまでの本件の事実関係に関し,原告が,平成8年10月1日ころ,被告会社の知的財産部部長作成の書面を受け取ったこと,同書面には,原告が被告に送付した実用新案登録願に記載された技術は問題があり採用できない旨が記載されていたこと,被告が,原告に特に通知することをせず,本件発明につき特許出願をしたこと,被告会社の従業員が平成8年5月までに社内的に本件発明を完成させていたことは,当事者間に争いがない。 上記の争いのない事実に,証拠(甲1~6,乙1~5,6の1,2,乙7~12,原告本人,証人B)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 原告は,平成8年7月17日,願書及び明細書等(甲2)を特許庁に郵送して,実用新案登録出願をした。 そして,原告は,同日,被告に対し,上記実用新案登録願(甲2)及びこれに開示された原告考案を被告において商品化できるか検討していただきたい旨記載した書面(甲1)を被告にあてて郵送した。 (2) 被告会社の足柄工場の第6製造部技術課でブローニーフィルムの開発等に従事してい 原告考案を被告において商品化できるか検討していただきたい旨記載した書面(甲1)を被告にあてて郵送した。 (2) 被告会社の足柄工場の第6製造部技術課でブローニーフィルムの開発等に従事していたBは,フィルムを撮り終わった後に使用する封印するシールを口で舐めないで済むように,水糊ではない通常のシールを用いるというテーマについて研究していたが,平成8年5月27日までに,「同一面に粘着剤層と離型層を隣接して塗工し,その境界線で折り曲げ両層を重ね合わせたテープを遮光紙後端に貼着させ,スプールに巻込んだ写真用ロールフイルム」の発明を完成させていた。 Bは,前同日,E国際特許事務所の担当者に発明開示書(乙1)を送付して,平成8年6月20日までに明細書案を作成するように依頼したが,上記事務所は被告による出願のうちより緊急性のあるものを優先したことから,上記発明に係る明細書,図面等の案が被告会社に送付されたのは同年7月26日になってからであった。 (3) 前記(1)の原告の書面(甲1)及び実用新案登録願(甲2)は遅くとも平成8年7月末までには被告の知るところとなったが,東京にある被告の知的財産部の社外提案の受付担当者は,足柄工場の特許部のC(以下「C」という。)に原告の提案について対応方法の検討を依頼した。 Cは,同年8月上旬,上記の原告の書面(甲1)及び実用新案登録願(甲2)を見て,Bが同年5月に同じ技術分野の発明をしていたことを思い出し,足柄工場第6製造部技術課の特許担当者に対して,これらの書類の原本か写しを送付した。 (4) Bは,平成8年8月13日,実用新案登録願(甲2)を見て,原告の提案の内容を知った。Bは,実用新案登録請求の範囲に記載されたアイデア自体については,複数の先行技術があること,実用新案 (4) Bは,平成8年8月13日,実用新案登録願(甲2)を見て,原告の提案の内容を知った。Bは,実用新案登録請求の範囲に記載されたアイデア自体については,複数の先行技術があること,実用新案登録願(甲2)の記載を見ても,カメラ走行時のカメラ内での粘着剤の付着・接着の問題点についてこれを解決する方法の記載がなく,しかも粘着剤の遮光紙への貼り付け方法と離型紙の取り扱いが問題で,そのための解決策が必要になることなどから,実現性のない考案であるという感想を持った。ただ,Bは,原告が被告の製品のユーザーであることから,念のために原告考案の内容を確認しようと考え,同月13日から20日の間に原告に電話をかけた。 この電話の会話において,Bは担当者のBであると名乗った上で,提案に対する礼を述べた。そして,Bは,原告考案に関して類似する先行技術があることを説明し,カメラ走行時のカメラ内での粘着剤の付着・接着という問題点の解決策を持っているかを原告に尋ねた。原告は,これに対して「それを解決するのが企業の仕事ではないのか。女性のカメラマンが特に舐めるのを嫌がっている。何とかするべきである。」という趣旨のことを述べた。その後,いくつかのやり取りがあった後,Bは最後に「ありがとうございました。」と礼を述べて,電話を切った。 (5) Bは,原告に電話をかけた日の翌日,Cにその電話の内容を説明した。Cは,Bと同じく,原告考案は何ら具体的なアイデアを伴ったものではなく,実現できる内容ではないと判断し,東京の知的財産部とも相談の上,被告会社の知的財産部部長名で断り状を作成することにした。 Cは,この文案を起案する際に,被告の製品のユーザーである原告の気分を害さないように表現に注意を払い,「ご提案の効果は見られました。しかし,残念なが 部長名で断り状を作成することにした。 Cは,この文案を起案する際に,被告の製品のユーザーである原告の気分を害さないように表現に注意を払い,「ご提案の効果は見られました。しかし,残念ながらシールが粘着してトラブルを生じることもありました。(中略)そのため新しい技術を採用するには慎重を期さざる得ません。」と記載し,原告のアイデアのとおり実験してみたけれどもうまくいかなかったのでお断りするという趣旨の文面とした。 Cは,平成8年9月30日,知的財産部部長に対し,上記断り状の文案を送付するとともに,原告の提案について報告した。そして,同日,上記の内容の被告会社知的財産部部長名の断り状(甲3)が発送され,原告は,同年10月1日ころ,この書面を受け取った。 (6) 他方,E国際特許事務所が他の案件を優先して処理したため後回しになっていた前記(2)記載のBの発明について,Cは,遅くとも平成8年9月下旬ころまでに,同特許事務所から送付された明細書案について回答するとともに,出願届出書に書誌事項を記載して,東京の知的財産部に送付した。知的財産部では,同月27日,E国際特許事務所に出願依頼書を送付し,同事務所は,同年10月1日,特許庁に願書を提出した。 この出願に係る発明が本件発明である(特開平10-104803号公報〔甲4〕参照)。 (7) 原告は,被告から前記(5)記載の断り状の送付を受けたことから,提案が被告において商品化されないのであれば,これ以上労力や費用をかけても仕方がないと判断し,原告考案に係る実用新案登録出願について,その手続を進めることなく放置した。原告が,平成8年末から同9年初めにかけて送達された特許庁からの補正命令に従った補正をしなかったため,特許庁は,原告の実用新案登録出願を却下し 案登録出願について,その手続を進めることなく放置した。原告が,平成8年末から同9年初めにかけて送達された特許庁からの補正命令に従った補正をしなかったため,特許庁は,原告の実用新案登録出願を却下した。 (8) 原告は,平成14年1月下旬,同年2月中旬発売の被告製品のパンフレット(甲5)を入手し,直ぐに,被告会社に被告製品に関する特許等の権利関係について問い合わせた。これを受けて,同年2月1日,被告会社の知的財産部のDほか1名は,原告の事務所を訪問して,被告製品の開発から販売までの経緯等について説明した。原告は,この説明に納得できなかったので,Dに電話をかけて,今後どのような対応をとるかは検討したいと述べた。この電話の後,被告は,同年5月27日付けで,詳細な資料を添付した上でその見解をまとめた知的財産部長名の書面(乙7)を原告にあてて送付したが,この書面が原告に届く前の同月22日,原告は本件訴訟を提起した。 2 原告考案及び本件発明について本件において,原告は,「被告による断り状(甲3)の送付がなければ,原告は原告考案について実用新案登録を得ていたであろう。そうすれば,原告考案は本件発明に係る特許に対して先願の関係にあり,その特許の内容が原告考案を含んでいるため,当然原告にも,同特許について権利が発生していたはずである。」と主張している。そこで,前記の事実関係を前提として,原告考案が実用新案登録要件を満たすものであったかどうか,原告考案と本件発明との関係等について,検討する。 (1) 原告考案,先行技術及び本件発明の内容ア原告考案証拠(甲2)によれば,原告考案は,願書に添付した明細書の【請求項1】にあるとおり「ブローニーフイルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける」という 容ア原告考案証拠(甲2)によれば,原告考案は,願書に添付した明細書の【請求項1】にあるとおり「ブローニーフイルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける」という内容であること,明細書の【考案の詳細な説明】の記載及び願書添付の図面の記載を総合すると,撮影終了時にフイルム最後部をシール部に接着して固定するというアイデアが開示されていることが認められる。 イ実開平3-37446号公報証拠(乙6の1)によれば,実開平3-37446号公報は,実願平1-97160号の考案に係る公開実用新案公報であるところ,その「実用新案登録請求の範囲」には「感光性帯材と,該感光性帯材の遮光性を確保する遮光紙とを有するロールフイルムにおいて,該遮光紙の基端部側の内面に内面側自着性粘着部材を設けるとともに,該内面側自着性粘着部材より感光性帯材に近い位置の外面に外面自着性粘着部材を設けたことを特徴とするロールフイルム。」と記載されていること,同公報の図面(第8図)には,遮光紙1の基端部に内面側自着性テープ15,20と外面側自着性テープ16,19を設ける構造が開示されていることが認められる。 ウ特開平2-235051号公報証拠(乙10)によれば,特開平2-235051号公報の「特許請求の範囲」には「遮光紙の先端及び/又は後端部にタック性粘着糊を塗布し,該端部の一方の端部をスプールの巻き軸外周面に圧接させて係止し該遮光紙をフィルムと共に巻取り,該遮光紙の他方の端部は巻取られたスクロールの外周面に圧接接着されることを特徴とする写真用ロールフィルム。」と記載されていること,明細書の「実施例」の欄には「120又は220タイプの写真用ロールフィルムをカメラに装填するときは,…(中略)… 外周面に圧接接着されることを特徴とする写真用ロールフィルム。」と記載されていること,明細書の「実施例」の欄には「120又は220タイプの写真用ロールフィルムをカメラに装填するときは,…(中略)…各撮影駒が撮り終わると遮光紙が巻き取り側に搬送されることにより遮光紙端末107Aがスプール101の巻き軸から自然に剥離されそのまま巻取室に搬送されてタック性粘着糊によって遮光紙端末107Aが撮影済みフィルムの外周面に貼りつけられて解け止めになりカメラから抜き出して現像にまわされることになる。」旨記載されていること,公報の図面(第1図)には,遮光紙の端末部にタック性粘着糊が付された構造が開示されていることが認められる。 エ本件発明証拠(甲4)によれば,本件発明に係る明細書(特開平10-104803号公報参照)の【請求項1】には,「帯状の写真フイルムの少なくとも両端部に遮光紙が設けられ,この遮光紙が外側になるようにスプールの周りにロール状に巻き付けられた写真用ロールフイルムであって,前記遮光紙のスプール近傍の端部に封印用テープがその一端部を遮光紙の表面に貼着して設けられている写真用ロールフイルムにおいて,前記封印用テープは,テープ基材の遮光紙側の面に粘着剤層と離型層とを隣接して設け,これらの境界線でテープ基材を折り曲げることにより両層を重ね合わせたことを特徴とする写真用ロールフイルム。」と記載されていること,【発明の詳細な説明】の欄には,「本数を多く撮るカメラマンは,封印用テープの接着剤を頻繁に舐めることになり,気分が悪くなることがあった。また,最近はPL法(製造物責任法)の制定もあり,舐めて活性化する接着剤は衛生上好ましくないとの意見が出ている。そこで,封印用テープに離型紙を設け,使用する際に離型紙を剥がして くなることがあった。また,最近はPL法(製造物責任法)の制定もあり,舐めて活性化する接着剤は衛生上好ましくないとの意見が出ている。そこで,封印用テープに離型紙を設け,使用する際に離型紙を剥がして封印するものが提案されている(実開平5-47944号公報)。」「しかしながら,上記公報記載のような写真用ロールフイルムでは,カメラ内で離型紙が剥がれた場合には,封印用テープがフイルム圧板に貼りつく等のトラブルが発生する可能性がある。また,フイルム生産時の巻き込み工程で離型紙が剥離するおそれもあり,実用化が困難であった。」「本発明は,接着剤を舐める作業をなくして衛生的に迅速,確実に封印できるとともに,カメラ内や巻き込み工程で封印用テープがフイルム圧板に貼りつく等のトラブルを解消した写真用ロールフイルムを提供することを目的とする。」と記載されていること,明細書の【発明の実施の形態】及び上記公報の図面(特に図1及び図2)には,粘着剤層と離型層とが重ね合わされた状態となっている封印用テープの一端部が遮光紙の後端部に貼着されている構造が開示されていることが認められる。 (2) 原告考案が実用新案登録要件を満たすものであったかア実開平3-37446号公報記載の考案との対比実開平3-37446号公報(乙6の1)に記載された考案と原告考案とを対比すると,前者の「遮光紙1」「基端部」「自着性テープ15,16,19,20」は,それぞれ,後者の「ブローニーフイルムの裏紙」「最後部付近」「シール状のもの」に対応するものであると認められる。 したがって,上記公報には,ブローニーフィルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける考案が記載されているというべきである。 イ特開平2-235051号公報記載の発明 したがって,上記公報には,ブローニーフィルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける考案が記載されているというべきである。 イ特開平2-235051号公報記載の発明との対比特開平2-235051号公報(乙10)に記載された発明と原告考案とを対比すると,前者の「遮光紙3」「遮光紙端末部107A」「タック性粘着糊107」は,それぞれ,後者の「ブローニーフイルムの裏紙」「最後部付近」「シール状のもの」に対応するものであると認められる。 したがって,上記公報には,ブローニーフィルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける考案が記載されているというべきである。 ウ原告考案の実用新案登録要件の充足の有無以上によれば,原告考案は,実用新案登録出願前に日本国内において,頒布された刊行物に記載された考案であって,新規性を欠いており,仮に原告が実用新案登録出願を維持したとしても,これについて実用新案登録を受けることができなかったものと認められる(実用新案法3条1項3号参照)。 エ原告の主張について(ア)原告は,実開平3-37446号公報記載の考案は,原告考案からみれば下位概念に当たること,上記考案については製品化もされておらず,被告会社の内部の一部の者にしか知られていないものであるから,到底公知であるとはいえないことを挙げ,上記公報の存在は原告考案の実用新案登録を妨げるものではないと主張する。 しかし,一般に,引用考案が下位概念で表現されている場合は,考案を特定するための事項として「同族的若しくは同類的事項,又は,ある共通する性質」を用いた考案を引用考案が既に示していることになり,上位概念で表現された考案を認定できるので 表現されている場合は,考案を特定するための事項として「同族的若しくは同類的事項,又は,ある共通する性質」を用いた考案を引用考案が既に示していることになり,上位概念で表現された考案を認定できるのであるから(「特許庁編平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」56頁〔乙7〕参照),原告の主張は理由がない。 また,公開実用新案公報が「頒布された刊行物」に当たることは明らかであるから,上記実開平3-37446号公報の存在により,原告考案の実用新案登録は許されないというべきである。原告の主張は独自の見解であり,採用することができない。 (イ)原告は,さらに,特開平2-235051号公報記載の考案についても,原告考案の下位概念に当たること,明細書の「発明が解決しようとする課題」が原告考案とは異なることを挙げて,上記公報の存在は原告考案の実用新案登録を妨げるものではないと主張する。 しかし,下位概念であることを理由とする原告の主張が理由のないことは,上記(ア)のとおりである。そして,刊行物としての上記公報(乙10)に開示された技術事項は,前記(1)ウのとおりであり,当該記載から把握される考案の内容は前記イのとおりであるから,「発明が解決しようとする課題」欄の記載に基づく原告の主張も,理由がない。 (3) 原告考案と本件発明との対比前記(1)ア及びエに認定の事実によれば,本件発明は,原告考案の構成である「ブローニーフイルムの裏紙の最後部付近にシール状のものを設ける」という構成に改良を加えた,いわば原告考案の下位概念に当たるものであると認められる。 原告は,原告考案は本件発明に係る特許に対して先願の関係にあり,その特許の内容は原告考案を含んでいると主張する。しかし,原告 えた,いわば原告考案の下位概念に当たるものであると認められる。 原告は,原告考案は本件発明に係る特許に対して先願の関係にあり,その特許の内容は原告考案を含んでいると主張する。しかし,原告考案と本件発明とは上記のとおりの関係にあるところ,引用考案が上位考案で表現されている場合は,下位概念で表現された考案が示されていることにはならないから(「特許庁編平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」56頁〔乙7〕参照),仮に,本件発明に対して原告考案が先願であったとしても,それにより,直ちに本件発明に係る出願が拒絶理由を有することにはならない。 また,本件発明が原告考案と無関係に成立していたことは,前記1で認定したとおりである。 したがって,原告の主張は理由がない。 3 まとめ上記によれば,原告考案は,実用新案法3条1項3号に照らし,実用新案登録をされないことが明らかなものであり,しかも,本件発明に対して原告考案が先願であったとしても,それにより,直ちに本件発明に係る出願が拒絶されることになるものでもない。 また,前記1認定の事実によれば,被告の担当者は原告の提案に対して逐一誠実に対応していることが認められ,原告に対する書簡の送付や電話での回答における被告担当者の言動等には,何ら違法不当な点を見いだすことができない。 本件訴訟における原告の請求及び主張の内容は,それ自体,理解困難な点を少なからず含むものであるが,上記の検討の結果に照らせば,原告の主張につき,どのように善解し,あるいはどのような補正がされたとしても,原告が被告に対して,何らかの請求権を有するものと認めることはできない。 第5 結論以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がない。 よって,主文のとおり判 うな補正がされたとしても、原告が被告に対して、何らかの請求権を有するものと認めることはできない。 第5 結論以上によれば、原告の請求はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官三村量一 裁判官和久田道雄 裁判官田中孝一 (別紙)甲第5号証
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