令和3年10月1日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(行ウ)第33号未払賃金請求事件口頭弁論終結日令和3年5月21日判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,242万2725円及び別紙1「原告金額シート」記 載の「割増賃金未払額」欄の各金員に対する「賃金月度(支払期日)」欄の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,242万2725円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,埼玉県 a 市立小学校の教員である原告が,平成29年9月から平成30年7月までの間(以下「本件請求期間」という。)に時間外労働を行ったとして,主位的には,労働基準法(以下「労基法」という。)37条による時間外割増賃金請求権に基づき,予備的には,本件請求期間に原告を同法32条の定める労働時間を超えて労働させたことが国家賠償法(以下「国賠法」という。)上違法であると主張 して,国賠法1条1項,3条1項による損害賠償請求権に基づき,市町村立学校職員給与負担法1条により埼玉県公立学校教育職員の給与・手当等を負担する被告に対し,時間外割増賃金又はその相当額の損害金242万2725円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまでの民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下,特に断らない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求めるとともに,労基法114条による付加金請求権に基づき,付加金24 2万2725円及びこれに対する本判決確定の日の翌 断らない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求めるとともに,労基法114条による付加金請求権に基づき,付加金24 2万2725円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関連法令の定め等別紙2記載のとおり(同別紙での略称は,以下においても同様に用いる。) 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に 認定することのできる事実)⑴ 当事者等ア原告は,昭和56年に埼玉県公立学校教諭として採用され,同県 a 市内の複数の市立小学校での勤務を経て,平成28年4月1日から平成31年3月31日まで同市立 b 小学校(以下「本件学校」という。)で勤務し,同 年4月1日からは別の同市立小学校に勤務している(弁論の全趣旨)。 イ本件学校の学校長は,平成29年度当時が A (以下「 A 校長」という。),平成30年度当時が B (以下「 B 校長」といい,両名を併せて「本件校長」という。)が務めていた。 ⑵ 原告の勤務条件 ア労働時間 7時間45分始業時刻 8時30分終業時刻 17時休憩時間 45分(平成29年度は13時40分から14時まで及び16時20分から16時45分まで,平成30年度は10時30分から10時4 5分まで及び16時15分から16時45分まで)イ所定休日土曜日,日曜日,国民の祝日及び年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)ウ支給日(弁論の全趣旨) 毎月末日締め,翌月21日払い(ただし,同日が休日の場合には,その日前で最も近い休日ではない日) エ賃金額(甲1) 給料(基本給月額)平成2 ウ支給日(弁論の全趣旨) 毎月末日締め,翌月21日払い(ただし,同日が休日の場合には,その日前で最も近い休日ではない日) エ賃金額(甲1) 給料(基本給月額)平成29年10月分から同年12月分まで 40万7366円平成30年1月分から同年3月分まで 40万7633円同年4月分から同年8月分まで 40万4000円教職調整額(月額) 平成29年10月分から同年12月分まで 1万6294円平成30年1月分から同年3月分まで 1万6305円同年4月分から同年8月分まで 1万6160円地域手当(月額)平成29年10月分から同年12月分まで 4万1095円 平成30年1月分から同年3月分まで 4万1545円同年4月分から同年8月分まで 4万2016円義務教育等教員特別手当(月額) 7200円教育業務連絡指導手当(月額) 前月の勤務1日当たり200円通勤手当(月額) 平成29年10月分から平成30年3月分まで 4500円同年4月分から同年8月分まで 4750円 3 争点⑴ 未払賃金請求(主位的請求)についてア労基法37条の適用の有無(争点1) イ原告の時間外労働時間及び時間外割増賃金額(争点2)⑵ 国家賠償請求(予備的請求)について原告の時間外労働と国賠法上の違法性の有無,原告の損害額(争点3)付加金請求の当否(争点4) 4 争点に対する当事者の主張 ⑴ 争点1(労基法37条の適用の有無)について (原告の主張)ア給特法は,教育職員 原告の損害額(争点3)付加金請求の当否(争点4) 4 争点に対する当事者の主張 ⑴ 争点1(労基法37条の適用の有無)について (原告の主張)ア給特法は,教育職員(同法2条2項。以下「教員」ということがある。)に対して時間外勤務手当を支払わない旨を定め,労基法37条を適用しないものとしているが,以下の給特法等の定めによれば,教育職員に同条が適用されないのは,平成15年政令2号イからニまでに掲げられた項目に係る業 務(以下「超勤4項目」という。)についての時間外勤務命令があった場合に限られ,それ以外の業務について時間外勤務命令を受けこれに従事した場合には,原則どおり労基法37条が適用されるものと解すべきである。 すなわち,給特法6条1項及び平成15年政令は,教育職員に対しては原則として時間外勤務を命じないものとし,時間外勤務を命ずる場合には,超 勤4項目に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとしている。これを前提として,同法3条は,教育職員に対しては教職調整額を支給し(1項),時間外勤務手当及び休日勤務手当を支給しないこと(2項)としており,同法5条1項及び同項による読替え後の地公法58条2項により,教育職員には労基法37条を適用しないものとし ている。以上の定めからすると,給特法は,超勤4項目の時間外勤務については,教職調整額を支給することによって,同法32条や同法37条の義務違反を問われないという免罰効を与えたものと解すべきである。 他方で,超勤4項目に該当しない業務について時間外勤務命令がされた場合は,給特法上特に定めがないことからすると,原則どおり労基法が適用さ れ,時間外勤務を行わせるためには,同法36条1項の定める手続が必要となり, 当しない業務について時間外勤務命令がされた場合は,給特法上特に定めがないことからすると,原則どおり労基法が適用さ れ,時間外勤務を行わせるためには,同法36条1項の定める手続が必要となり,時間外勤務に従事した場合には,同法37条により時間外割増賃金の支払が必要となるというべきである。 以上のことからすると,給特法は,超勤4項目について,時間外勤務命令がされた場合にのみ,労基法37条の適用を排斥しているのであって,それ 以外の業務について時間外勤務命令がされた場合には,原則どおり同条が適 用されるというべきである。給特法の制定趣旨に教育職員の超過勤務防止が含まれている以上,同法が,基本給の4パーセントにすぎない教職調整額を支給することのみをもって,本来予定されていない超勤4項目以外の業務に係る時間外勤務についてまで時間外勤務手当の支払を免除することを許容しているとは到底解し得ない。 イこれに対し,被告は,教職調整額は,教育職員の職務ないし勤務態様の特殊性を踏まえ,その業務を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として支払われるものであり,超勤4項目に関する時間外勤務の対価として支払われるものではないから,従事した業務の内容にかかわらず,原告には労基法37条が適用されないと主張する。 しかし,教職調整額が,教員の業務を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価して支給される趣旨であることをうかがわせる条文上の根拠はなく,当時の所轄官庁である文部省もそのような見解を採っていない。また,被告が主張する教員の職務内容の特殊性とは,専門的な知見や技能が必要とされるという点にとどまり,教員独自の特殊性とはいい難く,また勤務態様 の特殊性についても,労働時間の把握管理を困難とするような事情とはい 教員の職務内容の特殊性とは,専門的な知見や技能が必要とされるという点にとどまり,教員独自の特殊性とはいい難く,また勤務態様 の特殊性についても,労働時間の把握管理を困難とするような事情とはいえない(なお,被告は,夏休み等の長期休業期間があることを指摘するが,夏休みの期間においても多数の出勤日が設けられており,各種の業務に従事せざるを得ない現状にある。)。教員の業務が自発性や創造性を要する仕事であるとしても,それは与えられた業務をどのように遂行するかという局面の 問題であって,どのような業務を行うかという点については自発性を発揮する余地がないのであるから,教員の業務に自発性・創造性が要求されることと,時間管理を行うことに合理性があるか,時間外勤務手当制度がなじむかどうかという点は関連性がないといわざるを得ない。 なお,給特法制定当時,人事院も被告が主張する見解を採用していたこと がうかがわれるが,人事院は所轄官庁ではないから,その見解を前提とする ことはできない。また,給特法制定当時と比べて,教員の働き方が大きく変わっており,現在,原告を含めた全国の教員の多数が所定労働時間を大きく上回る時間外労働を余儀なくされていることからすれば,制定当時の人事院の見解を維持することは,もはや困難というべきである。 (被告の主張) ア給特法3条2項は,教育職員に対しては時間外勤務手当及び休日勤務手当を支払わない旨を定め,同法5条による読み替え後の地公法58条2項により,教育職員には労基法37条を適用しないものとしている。これらの条文の定めからすれば,原告に対し,同条を適用する余地はない。 イこれに対し,原告は,給特法が超勤4項目以外の業務について時間外勤務 を許容しておらず,教職調整額も超勤4項目の時間外 れらの条文の定めからすれば,原告に対し,同条を適用する余地はない。 イこれに対し,原告は,給特法が超勤4項目以外の業務について時間外勤務 を許容しておらず,教職調整額も超勤4項目の時間外勤務の対価として支給されるものであるから,超勤4項目以外の業務について時間外勤務に従事した場合には労基法37条が適用されると主張する。 しかし,給特法は,①教員の職務は,極めて複雑困難かつ高度な問題を取り扱うものであり,専門的な知識,技能,哲学的な理念と確たる信念及び責 任感が必要され,このような困難な勤務に対応できるほどに教育に関する研修,専門的水準の向上を図ることが要求されるなど,その職務の遂行には,個々の教員の自発性や創造性に期待する面が大きいこと,②教員の職務は,通常の授業に加え,学校行事や研修,家庭訪問等学校の内外を問わず行われるものであり,管理監督者が各教員の勤務実態を直接把握することは困難で あること,③夏休みのような長期の学校休業期間中が存在すること等の職務及び勤務態様の特殊性を踏まえ,教育職員については,一般職員と同様の時間管理を行うことは相当ではなく,とりわけ超過勤務制度はなじまないとの考えから,時間外勤務手当等を支給しない代わりに,その職務を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として,教職調整額を支給するこ ととしたものである。このような制定経緯に照らせば,教職調整額は,超勤 4項目に係る時間外勤務の対価としてだけ支給されるものでないことが明らかであって,原告の主張はその前提を欠く。 ⑵ 争点2(原告の時間外労働時間及び時間外割増賃金額)について(原告の主張)ア総論 原告が従事していた業務の多くは,職員会議において,その実施が決定されたものであるが,職員会議は,平 争点2(原告の時間外労働時間及び時間外割増賃金額)について(原告の主張)ア総論 原告が従事していた業務の多くは,職員会議において,その実施が決定されたものであるが,職員会議は,平成12年の学校教育法改正により学校の管理運営に関する校長の権限と責任を前提として校長の職務の円滑な執行を補助するものと位置づけられ(同法施行規則48条1項),平成26年6月27日付け文部科学省の通知では,教職員の互選等により選ばれた議長団 等の組織を設置し,校長以外の職員を議長とし,当該職員が職員会議を主宰することや,挙手や投票等の方法により,校長が自らの権限と責任において決定すべき事項を決定することが不適切であって,速やかに修正・廃止することが求められている。このような法令上の定め等からすると,職員会議は,職員同士の話合いや多数決による自主的決定の場ではなく,校長が自らの権 限と責任により各教員に業務を割り振るという職務命令の性質を有するというべきであるから,職員会議で実施が決定されて割り振られた業務については,いずれも本件校長がその業務の実施を命じたものと評価すべきである。 したがって,職員会議により実施が決定された業務に従事した時間は,本件校長の指揮命令により業務に従事したものとして,労基法上の労働時間に当 たるというべきである。 仮に,職員会議において,本件校長が原告に対し職務命令を発したと評価できないとしても,本件校長の関与の下,学校運営等に必要な職務に従事したといえるのであれば,その業務に従事した時間は,労働時間と評価すべきである。そして,職員会議で実施が決定された事項は,いずれも学校運営に 必要な職務といえ,本件校長が原告の従事していた業務の割振りに関与して いたこと自体は被告も否定していないの べきである。そして,職員会議で実施が決定された事項は,いずれも学校運営に 必要な職務といえ,本件校長が原告の従事していた業務の割振りに関与して いたこと自体は被告も否定していないのであるから,職員会議によって実施が決定された業務に従事していた時間は,本件校長の指揮命令により業務に従事したものとして,労働時間に該当するというべきである。 以下,始業時刻前,休憩時間中及び終業時刻後について,原告が本件校長の指揮命令を受けて時間外勤務に従事していたことを具体的に主張する。な お,本件請求期間における原告の勤務実態に関する詳細は,別紙3「担任教師の毎日の勤務状況」と題する一覧表(以下「本件勤務状況一覧表」という。)記載のとおりである。 イ始業時刻前の時間外勤務原告は,毎日7時30分頃に出勤し,1日の予定を確認するなどした後, 児童が登校し始める7時50分頃には教室に向かい,児童から提出物の提出を受けるなどして,8時5分からは朝マラソンに参加し,児童の見守りを行っていた。その後は,朝自習や朝会(全校集会),朝読書等の事前準備を行わなければならなかった。 また,原告は,月に1回,登校指導(本件学校周辺の通学路において登校 する児童の見守りや安全指導を行う業務)が割り当てられ,その際にも7時30分までに出勤する必要があった。 これらの業務は,いずれも職員会議において提案及び要請された業務であり,原告はこれを断ることができなかった。そのため,原告は,遅くとも7時30分までには出勤しなければならず,原告の始業時刻前の業務の従事は, いずれも労働時間に該当するというべきである。 ウ休憩時間中の時間外勤務平成29年度は,児童の昼休み(13時40分から14時)に20分間,16時20分から45分まで25分 務の従事は, いずれも労働時間に該当するというべきである。 ウ休憩時間中の時間外勤務平成29年度は,児童の昼休み(13時40分から14時)に20分間,16時20分から45分まで25分間の休憩時間が設定されていたが,前者については,昼休み前の清掃指導が長引くことが多かったほか,児童の遊び の相手をしたり,その日のうちに処理しなければならない事務作業を行った り,午後の授業の準備をしたりしなければならず,後者については,休憩時間にもかかわらず,職員会議や打合せの予定が入ることが多く,そうでない場合でも,各種の事務作業を行わざるを得ない状況であって,休憩を取得することができなかった。 平成30年度は,児童の20分休み(10時30分から50分まで)のう ち,10時30分から45分までの15分間と,16時15分から45分までの30分間に休憩が設定されていたが,前者については,提出物の確認や次の授業準備,児童の出欠の記入をしなければならず,また休み時間中に児童にけが等のトラブルが発生した場合にはこれに対応しなければならず,後者についても,平成29年度と同様の状況であって,休憩を取得することが できなかった。 このように,原告は,本件請求期間内において,定められた休憩を取得することができなかった。 エ終業時刻後の時間外勤務原告は,本件勤務状況一覧表記載の①からまでの事務作業及び「ふらい でぃ」の作成(以下「本件事務作業」という。)を終業時刻後に実施していた。本件事務作業は,いずれも原告が自主的・自発的に行っている業務ではなく,職員会議等を通じた本件校長の職務命令によって,実施を余儀なくされた業務である。 原告は,児童の在校中には,授業及びその準備,児童への指導や対応,す ぐに処理しな に行っている業務ではなく,職員会議等を通じた本件校長の職務命令によって,実施を余儀なくされた業務である。 原告は,児童の在校中には,授業及びその準備,児童への指導や対応,す ぐに処理しなければならない事務作業等の業務で手一杯であり,その他の事務作業に充てる時間がほとんどなく,児童の下校後や勤務時間外である17時以降にほとんどの事務作業を行わざるを得ない状況であった。ところが,本件校長は,原告が勤務時間外に前記業務に従事していることを把握しながらも,業務の適正な割振りを行うことなくこれを黙認し,勤務時間内に処理 することのできない量の業務を命じていた。このことからすると,本件校長 は,原告に対し,明示又は黙示の時間外勤務命令を発していたというべきである。 仮に本件校長が原告に時間外勤務命令を発したとはいえないとしても,原告が従事した前記事務作業は,いずれも教員の本来的業務,法令や学習指導要領で定められた業務,学校の教育活動や学校運営を構成する業務であり, 教員の職務の遂行として必要不可欠なものであること,本件校長は,職員会議を通じて原告への業務の割振りに関与していることからすると,前記アのとおり,前記各業務に従事した時間の労働時間性は否定されない。 オ原告の時間外労働時間と時間外割増賃金原告は,前記イ及びエのとおり,正規の始業時刻以前及び終業時刻以後も 時間外勤務に従事していたから,始業時刻は出校した時刻であり,終業時刻は退校した時刻である。また,原告は,前記ウのとおり,一切の休憩をとることができなかったから,休憩時間は零として勤務時間を算出すべきである。 したがって,原告の勤務時間は,別紙1「原告時間シート」記載のとおりであり,これに従って原告の未払賃金額を算出すると,その額は,別紙1 ったから,休憩時間は零として勤務時間を算出すべきである。 したがって,原告の勤務時間は,別紙1「原告時間シート」記載のとおりであり,これに従って原告の未払賃金額を算出すると,その額は,別紙1 「原告金額シート」記載のとおり,242万2725円となる。 (被告の主張)ア始業時刻前の業務について本件校長は,原告に対し,始業時刻前に業務に従事するように命じたことはない。朝マラソンや登校指導への参加は任意であり,朝自習等の準備も前 日のうちに済ませることが可能であるから,必ずしも当日の始業時刻前に行わなければならないものではない。したがって,原告が始業時刻前に業務に従事していたとしても,これを労働時間として評価することはできない。 イ休憩時間について原告が休憩を全く取得できなかったことはない。確かに,本件学校の教員 の中には,休憩時間に児童と関わる者や,連絡帳を記載する等の事務作業に 従事する者がいるが,休憩時間の使い方は教員ごとに様々であり,本件校長が休憩時間中に業務に従事することを原告に命じたことはない。また,児童指導上緊急に対応すべき場合を除いて,休憩時間中に職員会議や打合せの予定を入れたことがなく,会議等の時間が休憩時間にまたがることが予想される場合には,事前に休憩時間の開始時刻を変更して,休憩時間を確保してい る。 ウ終業時刻後の業務について本件事務作業のうち,原告が④,⑯,⑲,㉔,㊶,㊻に従事したことは否認し,については内容が不明であり,その余の業務に従事していたことは認める。④の修繕については,教頭又は業者が担当する業務であり, ⑯及び㊻については,本件校長が命じたものでなく,教員の本来的業務でもない。⑲については,原告は,本件請求期間内には参加しておらず,㉔ 。④の修繕については,教頭又は業者が担当する業務であり, ⑯及び㊻については,本件校長が命じたものでなく,教員の本来的業務でもない。⑲については,原告は,本件請求期間内には参加しておらず,㉔及び㊶についても,本件請求期間内に実施されていない。 そして,本件事務作業のうち,①から③まで,⑤から⑩まで,⑫,㉕,㉖,㉝,㉞,㊵,㊷,㊹,㊺,㊼は教員の本来的業務であって,校長が直 接命じたものではなく,その他(⑪,⑬から⑮まで,⑰,⑱,⑳から㉓まで,㉗から㉜まで,㉟から㊴まで,㊸,㊽からまで及び)は,法定されている業務若しくは校長が命じている業務である。 そして,本件校長は,原告に対し,勤務時間外に前記の業務に従事するよう命令したことはない。すなわち,教員の業務は,授業のように従事時 間が定められているものを除いて,個々の業務にどの程度の時間を費やすかについて個人の裁量に委ねられている部分が大きく,本件校長も,個々の業務遂行については,詳細に指示をすることがなく,各教員の裁量に委ねている。そして,校長の命令により原告が従事している業務は,休み時間や授業を担当していない時間,児童下校後の時間を費やすことによって 処理することが可能であり,日中にこれらの業務を行う時間がないという ことはできない。原告は,児童に対する種々の指導を本件校長から義務付けられており,業務を行う時間がなかったと主張するが,そのような事実はない。 エ職員会議を通じた職務命令について原告は,本件校長が職員会議を通じて原告に対し職務命令を行っていたと 主張するが,本件校長が原告に対して命じた業務は,前記のとおりであり,その余の業務については,いずれも任意での参加を要請したにすぎない。また,平成12年の教育基本法改正は,職員 を行っていたと 主張するが,本件校長が原告に対して命じた業務は,前記のとおりであり,その余の業務については,いずれも任意での参加を要請したにすぎない。また,平成12年の教育基本法改正は,職員会議の法的根拠,意義及び役割を明らかにしたにすぎず,職員会議や校長に新たな権限を与えたものではない。 ⑶ 争点3(原告の時間外労働と国賠法上の違法性の有無,原告の損害額)につ いて(原告の主張)本件校長には,原告の労働時間を正確に把握し,原告が勤務時間外に業務に従事せざるを得ない状況が存在する場合には,業務量の調整や業務の割振り,勤務時間等の調整を行うことなどによって,労基法32条の定める法定労働時 間を超えて原告を労働させてはならない職務上の注意義務がある。それにもかかわらず,本件校長は,その指揮命令によって,別紙1「原告時間シート」記載のとおり,法定労働時間を超えて原告を労働させており,前記職務上の注意義務違反がある。 そして,本件校長の違法な職務命令により,原告は,時間外割増賃金の支給 を受けられなかっただけでなく,長時間の時間外勤務に従事させられたことで精神的な苦痛を受け,少なくとも,前記⑵記載の未払割増賃金相当額の経済的及び精神的損害を被った。したがって,被告は,国賠法1条1項,3条1項に基づき,前記損害を賠償すべき義務を負う。 (被告の主張) 争う。本件校長は,原告に対して超勤4項目以外の業務について時間外勤務 命令を行ったことはなく,原告を違法に労働させた事実はない。 ⑷ 争点4(付加金請求の当否)について(原告の主張)本件校長は,超勤4項目以外での時間外勤務を命じることが労基法32条により禁止されているにもかかわらず,原告が勤務時間外に業務に従事している ことを認識 請求の当否)について(原告の主張)本件校長は,超勤4項目以外での時間外勤務を命じることが労基法32条により禁止されているにもかかわらず,原告が勤務時間外に業務に従事している ことを認識しながらこれを黙認し,法定時間を大きく超える時間外勤務に従事させた上で,これに対する時間外割増賃金を一切支払わなかった。したがって,労基法違反の程度が甚だしく,被告には付加金の支払が命じられるべきである。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記認定事実に加え,後掲証拠(〔〕内の数字は当該証拠の関係頁番号である。 また,特記しない限り証拠番号は枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができる。 ⑴ 給特法制定の経緯ア人事院は,昭和39年8月12日,国会及び内閣に対し,「給与に関する人事院の意見の報告と勧告」と題する報告及び勧告を行い,その中で,「最近問題となっているものに,教員の超過勤務に関する問題がある。現行制度のもとに立つ限り,正規の時間外勤務に対しては,これに応ずる超過勤務手 当を支給する措置が講ぜられるべきは当然であるが,他方,この問題は,教員の勤務時間についての現行制度が適用であるかどうかの根本にもつながる事柄であることに顧み,関係諸制度改正の要否については,この点をも考慮しつつ,さらに慎重に検討する必要があると考える。」との報告を行った(乙6〔204,205〕)。 イ人事院は,昭和46年2月8日,国会及び内閣に対し,「義務教育諸学校 等の教諭等に対する教職調整額の支給等に対する法律の制定について意見の申出」と題して,意見の申出を行い,小学校,中学校,高等学校等の教育職員について,その特殊と勤務態様の特殊性に鑑み,超過勤務手当制度 の教諭等に対する教職調整額の支給等に対する法律の制定について意見の申出」と題して,意見の申出を行い,小学校,中学校,高等学校等の教育職員について,その特殊と勤務態様の特殊性に鑑み,超過勤務手当制度はなじまないので,この制度を適用しないこととするとともに,新たに俸給相当の性格を有する給与として,給料月額の4パーセントに相当する額の教職調 整額を支給することとし,文部大臣は,人事院と協議の上,教諭に対して,正規の勤務時間以外の時間に勤務をすることを命ずる場合の基準について定めることとするなどとの意見を提出した。 加えて,人事院は,前記意見の申出に関し,次のとおりの説明を行った。 すなわち,昭和39年の報告(前記ア)の中で,教員の超過勤務に関する問 題に触れ,その再検討について言及したところであるが,教員の勤務時間については,教育が特に教員の自発性,創造性に基づく勤務に期待する面が大きいこと及び夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると,その勤務のすべてにわたって一般の行政事務に従事する職員と同様な時間管理を行うことは必ずしも適当ではなく,とりわけ超過勤務手当制度は教 員にはなじまないものと認められるから,勤務時間の管理について,運用上適切な措置を加えるとともに,教員の超過勤務とこれに対する現行制度を改め,教員の職務と勤務の態様の特殊性に応じたものとする必要がある。具体的には,教員の勤務を勤務時間の内外を問わず包括的に評価することとして,現行の超過勤務手当及び休日給の制度を適用しないものとし,これに替えて 新たに俸給相当の性格を有する給与として教職調整額を支給することとし,その支給額は,昭和41年度に文部省が行った教員の勤務状況調査(後記⑵ア)の結果を踏まえ,給料月額の4パーセントとすること,これに関連 に俸給相当の性格を有する給与として教職調整額を支給することとし,その支給額は,昭和41年度に文部省が行った教員の勤務状況調査(後記⑵ア)の結果を踏まえ,給料月額の4パーセントとすること,これに関連し,適正な勤務条件を確保するための措置として,正規の勤務時間外における命令による勤務が教員にとって過度の負担となることのないよう,文部大臣は, 人事院と協議した上で,時間外勤務を命ずる場合の基準を定めるものとする (乙6〔205から209まで〕)。 ウ政府は,前記の人事院による意見の申出を踏まえ,これに沿った給特法案を閣議決定して国会に提出し,国会において,当該法律案の審議が行われたが,その際,主務大臣である文部大臣や所管事務担当者,意見の申出を行った人事院総裁などから,次のような説明がなされた。 昭和46年4月14日に開催された衆議院文教委員会において,人事院総裁は,教員には,指揮命令の下に働いている行政職とは異なり,自発性又は創造性に基づく勤務が相当程度期待されていること,夏休み等の学校の長期休業期間があり,同期間における勤務実態も行政職とは相当異なること,以上を踏まえると,時間管理について行政職と同様の扱いにするこ とは相当ではなく,所定の正規の勤務時間を超えた部分を時間的に計測し,これに基づいて超過勤務手当を支払うという制度はなじまないと考えること,したがって,前記のような教員の教務の特殊性を正規の勤務時間の内外にかかわらず,これを包括的に捉えた上で再評価し,教職調整額として支給することが望ましいとの結論に至り,前記意見を申し出た旨を説明 した。また,文部大臣は,前記人事院意見を受け,当面の喫緊の課題である教員の超過勤務問題の解決に役立つものであること,政府としても従来から人事院の勧告を尊重 至り,前記意見を申し出た旨を説明 した。また,文部大臣は,前記人事院意見を受け,当面の喫緊の課題である教員の超過勤務問題の解決に役立つものであること,政府としても従来から人事院の勧告を尊重するという態度をとってきていることに鑑み,人事院意見に沿った内容の法律案を提出することとしたと説明した(乙7〔4,5,15〕)。 同月28日に開催された衆議院文教委員会において,文部省初等中等教育局長は,教師の勤務時間については超過勤務手当というものがなじまないため,超過勤務手当に代わるものを含む趣旨で,かつそれを給与の一部として支給することとしたのが教職調整額であり,したがって,割増賃金に関する労基法37条は教員に対しては当然除外となり,また,同法36 条の定める36協定についても,教員については当然に適用する余地がな いという解釈であると説明した(乙8〔8〕)。 同年5月20日に開催された参議院文教委員会において,人事院総裁は,教育が教員の自発性や創造性に基づく勤務に期待する面が大きいこと,教員には夏休みのような長期の学校休業期間があること,同じ勤務時間の中でも,授業時間は勤務の密度が非常に高いが,授業時間以外の時間になる と授業時間ほど勤務の密度が高くないなど,教員について,一般行政事務と比較した場合の職務及び勤務態様の特殊性が非常に強く,同様の時間管理を行うことは必ずしも適当とは考えられず,とりわけ,一定の勤務時間を設定し,これを超えた勤務に対して超過勤務手当を支払う制度はなじまないと説明した(乙10〔5〕)。 エ給特法は,衆参両議院での審議を経て議決され,昭和47年1月1日から施行された。 ⑵ 文部科学省による教員勤務実態調査文部科学省(旧文部省)は,昭和41年度,平成18年度及び )。 エ給特法は,衆参両議院での審議を経て議決され,昭和47年1月1日から施行された。 ⑵ 文部科学省による教員勤務実態調査文部科学省(旧文部省)は,昭和41年度,平成18年度及び平成28年度の3回にわたり,全国の公立小中学校の教育職員を対象に,教員勤務状況調査 (教員勤務実態調査)を行った。その概要及び結果は,以下のとおりである。 ア昭和41年度教員勤務状況調査(甲3〔22から26まで〕,乙6〔110から112まで〕)昭和41年4月3日から昭和42年4月1日にかけて実施され,小学校2400校の職員(校長,教頭,教員,養護教員,事務職員,実習助手を指す。 以下この項において同じ。)3万6617人,中学校1104校の教員2万2522人から回答を得た。 その結果,一人あたりの週平均の服務時間外の労働時間(週の服務時間は,正規の勤務時間44時間及び休憩時間3時間45分の合計47時間45分である。)は,小学校教員で2時間30分,中学校教員で3時間56分であ り,8月を除いた11カ月間についてみると,小学校教員が2時間36分, 中学校教員が4時間3分であった。そして,前記11か月間の平均超過勤務時間から,報酬を受けて補習を行った時間を差し引き,服務時間内において社会教員関係団体等の学校関係団体の仕事に従事した時間を相殺減した結果,小学校教員については1時間20分,中学校教員については2時間30分となった(この値が,給特法制定当時,前記の教職調整額の額を定める基 準となった。)。 イ平成18年度教員勤務実態調査(甲3,4〔50〕,5〔16〕)平成18年7月3日から同年12月17日にかけて実施され,公立小中学校合計2160校の教員(校長,教頭・副校長,教諭,栄養教諭,養護教諭,常勤講師 教員勤務実態調査(甲3,4〔50〕,5〔16〕)平成18年7月3日から同年12月17日にかけて実施され,公立小中学校合計2160校の教員(校長,教頭・副校長,教諭,栄養教諭,養護教諭,常勤講師を指す。)約5万人から回答を得た。 その結果,1週間あたりの学内総勤務時間(持ち帰り勤務時間は含まない。)は,小学校教諭については53時間16分,中学校教諭については58時間06分であった(1週間あたりの正規の勤務時間は,40時間である。)。 また,1日あたりの持ち帰り業務時間は,小学校教諭が平日38分,土日1時間26分,中学校教諭が平日22分,土日1時間39分であった。 ウ平成28年度教員勤務実態調査(甲4〔50〕,5〔16〕)平成28年10月中旬から同年11月中旬にかけて実施され,小学校397校の教員(校長,教頭・副校長,教諭,講師,栄養教諭,養護教諭を指す。 以下この項において同じ。)8951人及び中学校399校の教員1万0687人から回答を得た。 その結果,1週間あたりの学内総勤務時間(持ち帰り勤務時間は含まない。)は,小学校教諭については57時間29分,中学校教諭については63時間20分であった(1週間あたりの正規の勤務時間は,38時間45分である。)。また,1日あたりの持ち帰り業務時間は,小学校教諭が平日29分,土日1時間08分,中学校教諭が平日20分,土日1時間10分であった。 ⑶ 本件学校の組織(甲43,弁論の全趣旨) 本件学校の組織は,校長を頂点とし,それに次ぐ教頭の下に職員会議が設置されている。また,職員会議に属する機関として,校長,教頭及び教員等で構成された各種特別委員会が設けられており,原告は,このうちの運営委員会,学力向上推進委員会,人権教育推進委員会,食物アレルギー対 されている。また,職員会議に属する機関として,校長,教頭及び教員等で構成された各種特別委員会が設けられており,原告は,このうちの運営委員会,学力向上推進委員会,人権教育推進委員会,食物アレルギー対応委員会,教育課程(通知表)検討委員会及び生徒指導・特別支援委員会の6つの委員会に所 属していた。 さらに,職員会議の下部組織として,渉外部,管理部,指導部及び教務部の4部門が位置付けられており,各部にはそれぞれ個別の部が設置されていた(例えば,指導部であれば,「教科部」と呼ばれる国語部,算数部,体育部等の個別の教科に関する部が設置されている。)。 各委員会及び教科部は,定期的に会議(委員会及び教科部会)を開催し,全校的に実施すべき施策等を取りまとめた上で,これを職員会議に提案していた。 ⑷ 原告の勤務状況ア原告の担当職務(当事者間に争いがない。)原告は,本件請求期間において,本件学校の第3学年の学年主任及び社会 科の教務主任を務め,第3学年の学級担任を受け持っていた。原告が担任した学級の児童数は,平成29年度が33名,平成30年度が40名であった。 イ始業前の勤務状況(後掲証拠のほか,甲88,原告本人〔3から7まで〕)原告は,別紙1「原告時間シート」の「始業時刻」欄記載の各時刻に出勤し,職員室において配布物やその日の予定,授業の流れを確認するほ か,保護者からの電話連絡への対応等を行った。 その後,7時50分頃から児童が登校し始めるのに合わせて教室へ向かい,児童の出迎えを行い,宿題の提出を受ける等した。 本件学校では,児童の体力づくり等を目的として,毎日8時15分から25分までの10分間,児童に校庭のトラックを走らせる「朝マラソン」 という取組みが行われていた。 朝マラソン 本件学校では,児童の体力づくり等を目的として,毎日8時15分から25分までの10分間,児童に校庭のトラックを走らせる「朝マラソン」 という取組みが行われていた。 朝マラソンは,本件学校の体育部による提案を受け,職員会議でその実施が決定されたものであり,学年ごとに教員1名が見守りを行うこととされたほかは,教員の参加は任意であった。もっとも,原告は,かつて近隣の小学校でマラソン中に児童が死亡する事故があったことから,児童を見守るため,毎日朝マラソンに参加し,児童と一緒に校庭を走ることにして いた(甲30,弁論の全趣旨)。 原告は,8時20分ないし25分頃から,次のような業務を行った。 a 朝自習及び朝学習(甲32〔3〕)本件学校では,毎週月曜日及び木曜日の8時30分から,それぞれ児童に国語及び算数の自習(「国語タイム」「算数タイム」)を行わせていた。 原告は,8時30分から職員朝会に出席する必要があったため,8時25分頃から自習用の教材を準備し,児童に対し,自習内容を指示していた。 また,毎週金曜日の8時30分から,「朝チャレ」と呼ばれる朝学習が行われており,原告は,8時25分頃から,その準備を行った。 b 朝読書(甲33) 本件学校では,毎週火曜日の8時30分から,朝読書が行われていた。 朝読書は,担任の教員が同席した上で,児童が各自で選んだ本を読むというものであったが,発達段階に応じて,読み聞かせや紙芝居等を行ってもよいこととされていた。 原告は,月に1,2回程度,外部から講師を招いて読み聞かせを行って おり,その場合には,8時25分頃から,児童に机を教室の後ろに運ばせるなどして会場の設営を行った。 c 朝会(甲34,弁論の全趣旨)本件学校では,毎週水曜日の8時30分から児 せを行って おり,その場合には,8時25分頃から,児童に机を教室の後ろに運ばせるなどして会場の設営を行った。 c 朝会(甲34,弁論の全趣旨)本件学校では,毎週水曜日の8時30分から児童及び教師の参加する朝会(全校集会)が体育館又は校庭で行われ,原告は,8時20分頃から, 自分の担任する児童を整列させて,体育館又は校庭まで引率していた。 朝会のうち,体育朝会については,職員会議において,体育部が5分前に児童が整列していることが望ましいと提言し,原告もこれに従って児童の引率を行った。 登校指導本件学校では,各教員が,7時45分から,本件学校周辺の決められた 場所に立ち,登校してくる児童への声掛けや見守りを行う取組み(登校指導)を行っていた。 登校指導は,安全教育部が職員会議でその実施を提案し,これを受けた本件校長が各教員に参加の協力を依頼し,これに応じた教員が,安全教育部の定めた担当の割振りに従ってこれを行い,都合がつかない場合には, 他学年と相談をして担当の日を交替するか,安全主任を担当する教員まで連絡を行うこととされていた。 原告は,平成29年度以降,月に1回程度の割合で登校指導に参加していたが,平成30年4月,B 校長に対し,勤務時間前の業務従事に該当することを理由としてその実施に反対する旨を提案した。しかし,B 校 長は,本件学校の通学路には見通しの悪い場所が多く,交通事故が発生する可能性が高い箇所があることから,教員自身の目で確認し,児童に対する指導に活かすことが重要であると説明して,登校指導の取りやめに応じず,原告に対しても,引き続き月1回程度の参加をお願いしたいと要請した。これを受けて,原告は,同年度についても,月に1回,登校指導に参 加することにした(以 説明して,登校指導の取りやめに応じず,原告に対しても,引き続き月1回程度の参加をお願いしたいと要請した。これを受けて,原告は,同年度についても,月に1回,登校指導に参 加することにした(以上,甲31,証人 A 〔6から8まで,15〕,証人 B 〔3から5まで〕,原告本人〔5から7まで〕)。 ウ勤務時間中の勤務状況原告は,8時30分から前記イ記載の朝自習等を児童に行わせた後,毎週月曜日及び水曜日は1時間目から5時間目(14時45分終了)まで, 火曜日,木曜日及び金曜日は1時間目から6時間目(15時35分終了。 ただし,毎週木曜日の6時間目は児童のクラブ活動又は委員会活動が行われていた。)まで授業を行った。 ただし,音楽(月曜日の4時間目及び隔週金曜日の1時間目)及び書写(平成29年度については金曜日の6時間目,平成30年度については水曜日の3時間目)の授業については,原告ではなく他の教員が担当した(以 上,甲27,88,弁論の全趣旨)。 原告は,本件請求期間以前には,児童がテストを受けている間を利用して,別の事務作業を行うことがあったが,他の教員が本件校長から児童がテストを受けている最中に他の事務作業をしていたことをとがめられたという話を聞き,本件校長が授業の見回りに来ることがあったため,本件 請求期間においては,テスト中の事務作業を止めて,児童の監督に専念した(原告本人〔7,8,22,23〕)。 各授業の間には,5分ないし10分の休み時間があったほか,2時間目と3時間目の間には20分休み(10時30分から10時50分まで)が,4時間目と5時間目の間には,給食,清掃を挟んで昼休み(13時40分 から14時まで。ただし,毎週水曜日についてはロング昼休みとして13時30分から14時ま 時30分から10時50分まで)が,4時間目と5時間目の間には,給食,清掃を挟んで昼休み(13時40分 から14時まで。ただし,毎週水曜日についてはロング昼休みとして13時30分から14時まで)が設定されていた。 原告は,授業の合間の休み時間(20分休みを含む。)については,次の授業準備や,教室の移動を伴う場合にはその引率指導を行っており,昼休みには,連絡帳やドリル,音読カード等その日のうちに児童に返却すべ き提出物の確認等を行っており,その作業は所定の休憩時間にも及ぶことがあった(原告本人〔8から10まで〕)。 また,毎週水曜日のロング昼休みには,縦割り活動,応援団の練習,縄跳び大会に向けた大縄跳びの練習等の学校行事が入ることがあり,原告もしばしばこれに参加した(証人 A 〔5〕,原告本人〔11〕)。 児童の完全下校時刻は,月曜日及び水曜日が15時10分,火曜日,木 曜日及び金曜日が16時であり,原告は,児童の完全下校時刻以降,必要な事務作業のほか,職員会議(原則として月曜日の15時10分から開始),研修会(15時10分から開始),学年会(水曜日の15時20分から開始),委員会(16時から開始)及び教科部会(16時から開始)に出席した。平成29年度までは,休憩時間の開始時刻を超えて,16時30分 までこれらの会議等が実施されることがあったものの,平成30年度以降は,原告が B 校長に抗議をしたことで,少なくとも休憩時間の開始時刻までには終了した(原告本人〔12,13〕)。 エ終業時刻後の勤務状況原告は,終業時刻後も,別紙4「終業後の業務の労働時間該当性及びその 時間」で認定したとおりの本件事務作業に従事し,別紙1「原告時間シート」の「終業時刻」欄各記載の時刻に退校した。 2 争 原告は,終業時刻後も,別紙4「終業後の業務の労働時間該当性及びその 時間」で認定したとおりの本件事務作業に従事し,別紙1「原告時間シート」の「終業時刻」欄各記載の時刻に退校した。 2 争点1(労基法37条の適用の有無)について⑴ 教員については,給特法3条2項において,時間外勤務手当及び休日勤務手当を支給しないものとし,地公法58条3項により,労基法37条の適用が除 外されているところ,原告は,超勤4項目以外の時間外勤務を行った場合には,同条が適用されると主張するので,検討する。 アすなわち,教員の職務は,使用者の包括的指揮命令の下で労働に従事する一般労働者とは異なり,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性 があるほか,夏休み等の長期の学校休業期間があり,その間は,主要業務である授業にほとんど従事することがないという勤務形態の特殊性があることから,これらの職務の特質上,一般労働者と同じような実労働時間を基準とした厳密な労働管理にはなじまないものである。例えば,授業の準備や教材研究,児童及び保護者への対応等については,個々の教員が,教育的見地 や学級運営の観点から,これらの業務を行うか否か,行うものとした場合, どのような内容をもって,どの程度の準備をして,どの程度の時間をかけてこれらの業務を行うかを自主的かつ自律的に判断して遂行することが求められている。このような業務は,上司の指揮命令に基づいて行われる業務とは,明らかにその性質を異にするものであって,正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても,それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に 従事したと判断することができない。このように教員の業務は,教員の自主 性質を異にするものであって,正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても,それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に 従事したと判断することができない。このように教員の業務は,教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と校長の指揮命令に基づく業務とが日常的に渾然一体となって行われているため,これを正確に峻別することは困難であって,管理者たる校長において,その指揮命令に基づく業務に従事した時間だけを特定して厳密に時間管理し,それに応じた給与を支給することは現 行制度下では事実上不可能である(文部科学省の令和2年1月17日付け「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」〔文部科学省告示第1号〕においても,教育職員の業務に従事した時間を把握する方法として,「在校等時間」という概念を用いてお り,厳密な労働時間の管理は求めていない。甲82)。このような教員の職務の特殊性に鑑みれば,教員には,一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまないといわざるを得ない。 そこで,給特法は,このような見地から,教員に対し,労働時間を基準として一定の割増賃金の支払を使用者に義務付ける労基法37条の適用を排 除し,その代わりに,前記のような教育的見地からの自主的で自律的な判断に基づく業務に従事することで,その勤務が正規の勤務時間外に行われることもあり得ることを想定して,その労働の対価という趣旨を含め,時間外での職務活動を包括的に評価した結果として,俸給相当の性格を有する給与として,教職調整額を支給するものと定めたものということができる。 イところで,労基法37条は,使用者に時間外労働への割増賃金の支払 を包括的に評価した結果として,俸給相当の性格を有する給与として,教職調整額を支給するものと定めたものということができる。 イところで,労基法37条は,使用者に時間外労働への割増賃金の支払を義 務付けて,時間外労働に従事する労働者への補償を行うとともに,使用者に経済的な負担を課すことで,時間外労働を抑制することを目的とした規定であるが,この規定の適用が排除されることによって,教員に無定量な時間外勤務が課され,教員の超過勤務の抑制という給特法の制定趣旨に反する結果を招来しかねないことになる。そこで,給特法は,教育職員に対して正規の 時間勤務を超える勤務を命じることができる場合を,政令の基準に従って条例で定める場合に限定し(同法6条1項),これを受けた平成15年政令及び埼玉県の給特条例は,前記の場合を超勤4項目に該当しかつ臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る旨を定めて,これにより,教育職員へ無定量な時間外勤務が課されることを防止しようとしている。 ウこのように,給特法は,教員の職務の特殊性を踏まえ,一般労働者と同じ定量的な労働時間の管理にはなじまないとの判断を基礎として,労基法37条の適用を排除した上で,時間外で行われるその職務を包括的に評価した結果として,教職調整額を支払うとともに,時間外勤務命令を発することのできる場合を超勤4項目に限定することで,同条の適用排除に伴う教員の勤務 時間の長期化を防止しようとしたものである。このような給特法の構造からすると,同法の下では,超勤4項目に限らず,教員のあらゆる時間外での業務に関し,労基法37条の適用を排除していると解することができる。 ⑵ これに対し,原告は,次のような主張をするので,順次検討する。 ア原告は,前記の給特法の制定趣旨につき, あらゆる時間外での業務に関し,労基法37条の適用を排除していると解することができる。 ⑵ これに対し,原告は,次のような主張をするので,順次検討する。 ア原告は,前記の給特法の制定趣旨につき,当時の所轄官庁ではない人事院 の見解にすぎないと主張するが,前記1⑴のとおり,給特法は,前記人事院の意見の申出を踏まえ,これを尊重した上で主務官庁である文部省で法律案が作成され,国会での審議を経て可決されたものであるから,前記制定趣旨が人事院独自の見解にとどまるものではない。 イ次に,原告は,給特法制定当時と比較して教員の勤務時間が増加しており, もはや同法制定当時の制定趣旨を維持することはできないと主張する。 確かに,前記1⑵によれば,小中学校教諭の1週間あたりの学内総勤務時間(ただし,昭和41年度については服務時間及び服務時間外の勤務時間の合計値)を見ると,給特法制定当時である昭和41年度では,小学校教員で50時間15分,中学校教員で51時間41分であったのに比べ,平成18年度には小学校教諭が53時間16分,中学校教諭が58時間06分,平成 28年度には小学校教諭が57時間29分,中学校教諭が63時間20分といずれも増加傾向にあり,現在も数多くの教員が正規の勤務時間を超えて在校し,その業務に従事している様子がうかがわれる。そして,これらの在校時間の増加が,すべて自発的・自主的な業務の増加によるとはいえない面があり(実際に, B 校長も,近年教員の在校時間が増加していることについ て,保護者や地域社会が学校に求めるものが増加した結果,学校が組織として対応しなければならない場面が増加し,教員が自由な裁量を発揮できる場面が減少していることを原因の一つとして挙げている。証人 B 〔16から18まで〕),文部 めるものが増加した結果,学校が組織として対応しなければならない場面が増加し,教員が自由な裁量を発揮できる場面が減少していることを原因の一つとして挙げている。証人 B 〔16から18まで〕),文部科学省も,社会の変化に伴い児童生徒が多様化する中で,語彙,知識,概念が異なる児童生徒各人の発達段階に応じて,指導の内容を 理解させ,考えさせ,表現させるために,言語や指導方法をその場面ごとに選択しながら,適切なコミュニケーションをとって授業の実施等の教育活動に当たることが教員に期待されているとして,児童生徒各人の特性に応じたきめ細やかな教育活動を求めている(甲82)。このように,教員が行うべき業務が増加し,これに伴い総勤務時間が増加している現状を鑑みると,現 時点においては,昭和41年当時の教員の勤務状況を基準として定められた給料月額の4パーセントの割合による教職調整額の支給をもってしては,現在における時間外勤務を行う教員の職務のすべてを正当に評価していないとする原告の問題点の指摘は,正鵠を射ている。 しかしながら,給特法が労基法37条を適用除外した趣旨は,教員の業務 には自主的で自律的な判断に委ねられ,自発的に行うものが多分に含まれて おり,その日常業務には自主的な部分と指揮命令に基づく部分が渾然一体となっていて,これを峻別することが極めて困難なため,定量的な労働時間による管理になじまないとする点にあることは前示したとおりであり,このような教員の業務の本質は,現在でも変わるところがなく,労基法37条を適用除外して,教職調整額の支給制度を設けた根拠は全く失われていないから, 現時点における教員の勤務の実情に照らしても,上記解釈を放擲することはできず,原告の主張は,立法論や制度論としてはともかく,給特法の解釈論 調整額の支給制度を設けた根拠は全く失われていないから, 現時点における教員の勤務の実情に照らしても,上記解釈を放擲することはできず,原告の主張は,立法論や制度論としてはともかく,給特法の解釈論としてはこれを採用することができない。 ウ次に,原告は,給特法の条文構造,制定趣旨及び制定経緯からすれば,給特法において,労基法37条の適用を除外し,教職調整額の支払の対象とさ れている業務は超勤4項目だけであり,それ以外の通常業務に係る時間外勤務については,原則どおり,労基法37条が適用されると主張する。 しかしながら,給特法が,教員が教育的見地等から自主的で自律的な業務を行う結果,その勤務が正規の勤務時間外に及ぶことがあり得ることを踏まえ,その対価として,勤務時間の内外を問わずその職務を包括的に評価した 結果として,教職調整額を支給する趣旨であることは既に説示したとおりである。このように,教職調整額は,教員の勤務時間外での職務を包括的に評価した結果として支給されるものであり,超勤4項目のみならず,それ以外の業務を含めた時間外勤務に対する超過勤務手当に代わるものとして支給されるものであるから,給特法が,超勤4項目以外の業務に係る時間外勤務 について,教職調整額のほかに,労基法37条に基づく時間外割増賃金の発生を予定していると解することはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することはできない。 ⑶ 以上によれば,労基法37条に基づいて時間外割増賃金の支払を求める原告の主位的請求は,争点2(原告の労働時間)を検討するまでもなく,理由がな いといわなければならない。また,同条に基づく時間外割増賃金請求権が認め られない以上,争点4の労基法114条に基づく付加金請求権は,その前提を欠くことになるか でもなく,理由がな いといわなければならない。また,同条に基づく時間外割増賃金請求権が認め られない以上,争点4の労基法114条に基づく付加金請求権は,その前提を欠くことになるから,かかる請求も理由がない。 3 争点3(原告の時間外労働と国賠法上の違法性の有無,原告の損害額)について⑴ 原告は,予備的請求として,本件校長が労基法32条の規制を超えて原告を 時間外労働させたことは国賠法上違法であると主張して,国賠法に基づく損害賠償を求めるので,まず,労基法32条の規制を超えて原告を時間外労働させたと認められる場合,そのことをもって,直ちに国賠法上の違法性があるといえるかを検討する。 なお,原告は,a 市立小学校に勤務するものであるから,そこで従事する 業務は,a 市の事務であり,同小学校を管理運営して,勤務する教育職員への職務上の指示監督を行う主体は校長であるが,最終的に服務監督権者であるa 市(教育委員会)にその責任がある(地方教育行政の組織及び運営に関する法律43条)。そうすると,本件校長の職務行為について,仮に国賠法上の違法性が認められた場合,本来その責任を負うのは a 市であるが,被告は,市 町村立学校職員給与負担法1条に基づいて,埼玉県公立学校教職員の給与・手当等の費用を負担する者であるから,国賠法3条1項により, a 市とともにその損害賠償の責任を負うことになる。 ⑵ ところで,給特法は,労基法37条の適用を排除する一方で,同法32条の適用を除外していないので,教員についても,同法32条の規制が及ぶことに なる。ただし,教員の業務は,その自主的で自律的な判断に基づくものと校長の指揮命令に基づくものが,日常的に渾然一体として行われているため,これを峻別することは ,同法32条の規制が及ぶことに なる。ただし,教員の業務は,その自主的で自律的な判断に基づくものと校長の指揮命令に基づくものが,日常的に渾然一体として行われているため,これを峻別することは極めて困難であり,管理者たる校長において,その指揮命令に基づく業務に当該教員が従事している時間を特定して,厳密に時間管理することが,現状では事実上不可能であることは既に指摘したとおりであり,この ような教員の職務の特殊性を踏まえ,給特法が,一般労働者と同じ定量的な労 働時間の管理にはなじまないものとして,労基法37条の適用を排除し,時間外で行われる職務を包括的に評価した結果として,教職調整額を支給するものとしつつ,時間外勤務命令を発することのできる場合を超勤4項目に限定することで,同条の適用排除に伴う教員の勤務時間の長期化を防止しようとしたものであることも既に説示したとおりである。 このように,給特法が教員の労働時間を定量的に管理することを前提としておらず,校長が,その指揮命令に基づいて各教員が業務に従事した労働時間を的確に把握できる方法もないことからすると,仮に当該教員の労働時間が労基法32条に定める法定労働時間を超えていたとしても,直ちにかかる事実を認識し又は認識することが可能であったとはいえないから,労基法32条違反に ついての故意又は過失があると認めることはできず,当該教員が校長の指揮命令に基づく業務を行ったことで,その労働時間が労基法32条の制限を超えたからといって,それだけで国賠法上の違法性があるということはできない。 他方で,給特法が,無定量な時間外労働を防止し,教員の超過勤務を抑制する趣旨の下,教員に時間外勤務を命ずることができる場合を限定し,教員の健 康と福祉を害することとならない ことはできない。 他方で,給特法が,無定量な時間外労働を防止し,教員の超過勤務を抑制する趣旨の下,教員に時間外勤務を命ずることができる場合を限定し,教員の健 康と福祉を害することとならないように配慮を求めている(同法6条2項)ことからすると,教員の労働時間が労基法32条の制限を超えた場合に常に国賠法上違法にならないとすることは,給特法の前記趣旨に反することにもなりかねない。 このような事情に鑑みると,当該教員の所定勤務時間における勤務状況,時 間外勤務等を行うに至った事情,時間外勤務で従事した業務の内容,その他,勤務の全般的な状況等の諸事情を総合して考慮し,校長の職務命令に基づく業務を行った時間(自主的な業務の体裁を取りながら,校長の職務命令と同視できるほど当該教員の自由意思を強く拘束するような形態での時間外勤務等がなされた場合には,実質的に職務命令に基づくものと評価すべきである。)が 日常的に長時間にわたり,時間外勤務をしなければ事務処理ができない状況が 常態化しているなど,給特法が,時間外勤務を命ずることができる場合を限定して,教員の労働時間が無定量になることを防止しようとした前記趣旨を没却するような事情が認められる場合には,その勤務の外形的,客観的な状況から,当該校長において,当該教員の労働時間について,労基法32条に違反していることの認識があり,あるいは認識可能性があるものとして,その違反状態を 解消するために,業務量の調整や業務の割振り,勤務時間等の調整などの措置を執るべき注意義務があるといえる。そうすると,これらの措置を執ることなく,法定労働時間を超えて当該教員を労働させ続けた場合には,前記注意義務に違反したものとして,その服務監督者及び費用負担者は,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任 そうすると,これらの措置を執ることなく,法定労働時間を超えて当該教員を労働させ続けた場合には,前記注意義務に違反したものとして,その服務監督者及び費用負担者は,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 ⑶ 以上の判断基準に従い,本件請求期間における原告の勤務状況を検討するに,まず,労基法32条の定める労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうところ(最高裁判所平成12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁),教員の業務には,教育的見地から自主的かつ自律的に行うものが含まれていることは前示のとおりであって,このことは原 告においても同様であるから,原告が自主的かつ自律的に行った業務については,本件校長の指揮命令に基づいて行ったとはいえず,これに従事した時間は労働時間に当たらないことになる。そうすると,原告の在校時間すべてを直ちに労働時間に当たるということはできないので,原告の労働時間を算出するために,原告の行った業務のうち,本件校長の指揮命令に基づいて従事した部分 を特定する必要がある。 他方で,教員の業務は,日々異なるし,状況に応じて時々刻々と変化するものであり,本件においても,提出された全証拠を精査検討しても,日ごとの原告の業務内容を正確に把握することができず,原告が行った個々の業務について,指揮命令に基づく部分とそうでない部分を的確に切り分けることが困難で あり,日ごとに始業と終業の時刻とその間の各業務の開始時刻と終了時刻を特 定して,正確な労働時間を認定することができない。 そこで,以下では,月ごとに原告が本件校長の指揮命令に基づいて勤務時間外に従事した業務に要したおおよその時間を概算して,これを原告の時間外労働時間とした 労働時間を認定することができない。 そこで,以下では,月ごとに原告が本件校長の指揮命令に基づいて勤務時間外に従事した業務に要したおおよその時間を概算して,これを原告の時間外労働時間とした上で,かかる時間外労働時間と所定労働時間を合計した値を,原告の月ごとの労働時間として見ていくことにする。 ⑷ 原告の時間外勤務における労働時間該当性については,次のとおり,始業時刻前の勤務,休憩時間中の勤務及び終業時刻後の勤務の3つの時間帯に分けて,順次,そこで行われる業務内容を検討して労働時間該当性を判断する。 ア始業時刻前の勤務とその労働時間該当性 登校指導について 原告は,本件学校の通学路の道路と交通状況を自ら把握し,児童の登校を見守ることで,通学の安全を確保するために,月に1回の割合で,7時45分から登校指導を行っていたところ,このような指導は,児童の安全確保を図るという教員に期待される職務の一環といえる。そして,登校指導の実施日程については,本件学校の安全教育部において決定し,都合が 悪い場合には自ら日程の調整しなければならないこと,本件校長が,原告を含む教員が登校指導の業務に従事していることを把握しており,平成30年には, B 校長が登校指導の実施に反対した原告を説得して翻意させたことがあるといった事情に照らすと,登校指導が原告の完全な自主的な判断に基づいて,自発的に行った業務とはいい難く,むしろ,本件校長は, 教員が登校指導を行うことを容認し,その積極的な参加を働き掛けていたものである。このように,登校指導が教員として期待される内容の職務であり,本件校長がその参加を積極的に働き掛けていたことなどに照らすと,原告は,本件校長の職務命令によって登校指導に従事していたものというべきであり, うに,登校指導が教員として期待される内容の職務であり,本件校長がその参加を積極的に働き掛けていたことなどに照らすと,原告は,本件校長の職務命令によって登校指導に従事していたものというべきであり,これに従事していた時間は,労働時間に当たる。 そして,原告は,その具体的な日程は明らかでないものの,少なくとも 月に1回,7時45分から登校指導に従事していたものと認められるから,月に1回,始業時刻前に45分の時間外勤務に従事していたことになる。 始業開始前の準備について原告は,8時30分からの勤務開始に備えて,8時20分ないし25分頃から必要な準備を入っており,これが労働時間に該当すると主張するの で,以下に検討する。 a 朝自習等の準備について前記1⑷イaによれば,本件学校では,毎週月曜日及び木曜日の8時30分から児童に朝自習を実施させ,毎週金曜日の8時30分からは「朝チャレ」と呼称する朝学習を実施させていたこと,原告は,8時30分か ら自習及び朝チャレを実施させることができるよう,8時25分頃からプリントを配布して自習の指示を行う等の準備をしていたことが認められる。しかし,これらの準備は,前日のうちに済ませておくことも可能であり,本件校長が当日の始業開始前にこれらの準備を行うことを具体的に指揮命令したことをうかがわせる事情はなく,原告の自主的な判断で当日の 直前に準備を行っていたと考えられる。したがって,月曜日,木曜日及び金曜日の朝自習等の準備に要した時間は,労働時間には当たらない。 b 朝読書の準備について原告は,毎週火曜日の8時30分から児童に朝読書を行わせており,外部から講師を招いて読み聞かせを行う日には,8時25分頃から教室設営 等の準備を行う必要があったと主張する。しか 準備について原告は,毎週火曜日の8時30分から児童に朝読書を行わせており,外部から講師を招いて読み聞かせを行う日には,8時25分頃から教室設営 等の準備を行う必要があったと主張する。しかし,朝読書の時間に読み聞かせを行うか否かは各教員の判断に委ねられており(前記1⑷イb参照),原告も自らの判断で外部講師を招いて読み聞かせを実施したことがうかがわれるから,その準備のために一定の時間を要したとしても,これを本件校長の指揮命令に基づく業務であるということはできない。その他, 原告が朝読書のために何らかの準備を行っていたことや,それが被告によ って義務付けられていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,火曜日の朝読書の準備に要した時間は,労働時間には当たらない。 c 朝会の引率について前記1⑷イcによれば,本件学校では,毎週水曜日8時30分から体 育館又は校庭で朝会を開催しており,原告は,担任学級の児童を整列させ実施場所へ引率していた。そして,児童の年齢に鑑みると,教員の指示や指導がない状況で,児童が自主的に整列して実施場所へ移動することは期待できず,担任教員が必要な号令をかけて引率指導を行うことが当然に予定されていたと考えられるから,児童の引率に要する時間は,本件校長の 黙示の指揮命令に基づく業務に従事したものとして,労働時間に当たるというべきである。 そこで,朝会の引率に要する具体的な労働時間を検討すると,前記のとおり,平成30年度には,本件学校の体育部から開始時間の5分前に整列しておくことが望ましいとの提案が職員会議でされ,原告はこれを受けて, 8時20分頃から児童の引率指導を行っていたことが認められる。しかし,体育部からの前記提案は,あくまで開始時間5分前の整列を望ましい とが望ましいとの提案が職員会議でされ,原告はこれを受けて, 8時20分頃から児童の引率指導を行っていたことが認められる。しかし,体育部からの前記提案は,あくまで開始時間5分前の整列を望ましいとするものにすぎず,各教員にこれを義務付けるものとはいえない。また,本件学校では,体育朝会以外にも各種の朝会が行われていたことがうかがわれるが,他の朝会については,整列時間に関する指示状況が証拠上明らか でないため,本件校長によって,8時20分から引率指導を行うことが義務付けられていたとも言い難い。そこで,引率指導に要する必要最低限の時間として,毎週水曜日について,始業開始前の5分間が労働時間に当たるというべきである。 d その他の始業開始前の業務について その他,原告は,7時30分頃に出勤した後の業務として,1日の予定 や配布物の確認,児童の出迎え,朝マラソンの付添い等を行っていたと主張するが,これらの業務は,いずれも本件校長の指揮命令によって義務付けられていた様子はうかがわれず(朝マラソンについては,参加が任意であることが明示されており,原告の供述に照らしても,自らの判断に基づいてその参加を決めたことがうかがわれる。),その業務内容からしても, 原告が始業開始前にこれらの業務を行っていることを本件校長が認識していたからといって,黙示的な指揮命令があったと評価することはできない。 以上によれば,原告が7時30分頃に出勤し,各種の業務に従事していたとしても,直ちに労働時間には当たらないというべきである。 小括以上によれば,原告の始業時刻前の労働時間としては,①登校指導に要した時間として,月に1回の割合で45分間,②朝会のための引率指導の時間として,毎週水曜日に5分間(4週間分として,月に20分 小括以上によれば,原告の始業時刻前の労働時間としては,①登校指導に要した時間として,月に1回の割合で45分間,②朝会のための引率指導の時間として,毎週水曜日に5分間(4週間分として,月に20分。なお,月によってその月に含まれる曜日の数は異なるものの,本件では,あくま でおおよその労働時間を概算するにとどまるから,週ごとに行われる業務については一律4週間分を1か月分の値として労働時間を算出する。以下同じ。)をそれぞれ認めることができる。 イ休憩時間中の勤務とその労働時間該当性平成29年度 a 13時40分から14時(児童の昼休み時間)原告は,昼休みの休憩時間には連絡帳やドリル,音読カードを確認するなどの業務に追われ,休憩を取得することができなかったと主張する。しかし,本件校長が,これらの業務を休憩時間中に実施するよう指示していたとは認められず,また,これらの作業を所定の勤務時間内に終わらせる ことができなかったと認めるに足りる証拠もないから,これらの業務を休 憩時間中に実施することについて,本件校長の明示又は黙示の指示があったとはいえない。したがって,原告が休憩時間に一定の業務を行ったとしても,原告の自主的な判断によるものであって,この時間を労働時間として認めることはできない。 他方で,前記1⑷ウによれば,毎週水曜日のロング昼休みには,前記 休憩時間に各種の学校行事やそれに向けた練習が実施されることがあり,原告もこれに参加していたことが認められる。このように,本件校長により昼休み時間に児童が参加する行事が設定され,これに原告が参加していた時間は,その業務内容からして本件校長の指揮命令に基づく業務への従事というべきであるから,この時間は労働時間に当たるというべきである。 そ が参加する行事が設定され,これに原告が参加していた時間は,その業務内容からして本件校長の指揮命令に基づく業務への従事というべきであるから,この時間は労働時間に当たるというべきである。 そして,ロング昼休みに学校行事が実施された頻度は証拠上明らかではないが,原告の陳述書(甲88)の記載に照らし,行事内容等から合理的に推認される限度として,月に1回程度の割合で20分間開催されていたものと見るのが相当である。 b 16時20分から16時45分(児童の下校後) 前記1⑷ウのとおり,平成29年度中は,休憩時間の開始時刻を超えて,16時30分頃まで職員会議や委員会等が実施されることがあったから,これらの時間については,その職務内容に照らして,休憩時間中の職務従事への明示又は黙示の指示があったものというべきである。 そして,休憩時間を超えて職員会議等が延長された回数ないし頻度は証 拠上明らかではないが,会議の大半が休憩時間を超えていた旨の原告の陳述書(甲88)の記載や,被告も平成29年度には会議等が休憩時間にまたがることがあったことを否定していないといった事情に照らし,証拠(甲29の1)から認められる職員会議等については,いずれも16時30分まで延長され,1回につき10分間,休憩時間中の労働に従事したも のと認めるのが相当である。 c 小括以上のとおり,平成29年度については,水曜日の昼休みに実施された学校行事に従事した時間として,月に1回20分,職員会議等の時間として,1回につき10分(平成29年9月は20分,同年10月は50分,同年11月は60分,同年12月は10分,平成30年1月は70分,同 年2月は70分,同年3月は0分)の時間外労働があったことになる。 平成30年度a 10時 20分,同年10月は50分,同年11月は60分,同年12月は10分,平成30年1月は70分,同 年2月は70分,同年3月は0分)の時間外労働があったことになる。 平成30年度a 10時30分から10時45分(児童の20分休み)原告は,児童の20分休みの休憩時間には,次の授業の準備や特別教室への移動,宿題の確認等を行い,休憩時間が取れなかったと主張するが, 授業準備及び宿題の確認を休憩時間中に実施することが義務付けられていたとはいえないことは前記aと同様であって,原告の自主的な判断によって行われたものとして,これを労働時間として認めることはできない。 他方,特別教室への移動について見ると,証拠(甲35,88)によれば,本件学校においては,各教員に対し,特別教室や体育館に移動する際 及び教室へ戻る際は教師が児童を引率し,無言での移動を指導することが求められており,原告もこれに従って児童の引率を行っていたと認められるから,少なくとも,前記引率指導は,本件校長の指示に基づいて行ったと評価することができる。そして,証拠(甲27の2)によれば,毎週月曜日の2時間目は体育館での体育の授業が行われていることが認められ るから,2時間目終了後(10時30分)の引率指導に当たった時間は,休憩時間中ではあるが,労働時間に当たるというべきである。 そして,前記引率指導の所要時間としては5分を認めるのが相当であり,原告は,毎週月曜日,5分間の労働に従事したと認められる。 b 16時15分から16時45分まで 原告は,この休憩時間中に必要な事務作業を行っていたと主張するが, 本件全証拠によっても,本件校長の指揮命令によって,休憩時間中に事務作業を行うことが義務付けられていたとは認められない。 なお,原告 休憩時間中に必要な事務作業を行っていたと主張するが, 本件全証拠によっても,本件校長の指揮命令によって,休憩時間中に事務作業を行うことが義務付けられていたとは認められない。 なお,原告は,所定勤務時間内に処理しきれない量の事務作業を指示されており,休憩時間中にこれらを処理することを余儀なくされていたから,休憩時間中にも事務作業に従事することについて黙示の指揮命令があっ たと主張するが,これらの事情は,後記ウの終業時刻後の労働時間を判断する上で考慮することとし,休憩時間中の労働時間としては評価しない。 c 小括以上のとおり,平成30年度における休憩時間中の労働時間は,毎週月曜日に限り,引率指導に要する時間として5分間(4週間分として,月に 20分)が認められる。 ウ終業時刻後の勤務とその労働時間該当性終業時刻後の勤務における労働時間の認定方法について原告は,終業後に,本件勤務状況一覧表の「事務作業」欄記載の①からまでの業務及び「ふらいでぃ」の作成(本件事務作業)にそれぞれ従事 したと主張する。しかしながら,本件事務作業の中には,本件校長の指揮命令に基づくとはいえないものも存在するほか,本件校長の指揮命令に基づく業務であっても,原告が所定勤務時間内に自主的な業務を行ったことで終業時刻後に行わざるを得なくなったものも含まれていると考えられるため,終業時刻後に本件事務作業に従事した時間すべてを労働時間とし て認めることはできない。 そこで,終業時刻後の事務作業に従事した時間については,本件校長の指揮命令に基づく事務作業に従事した時間のうち,所定勤務時間内にこれに従事することができなかったと認められる部分を労働時間として認定すべきである。具体的には,①所定勤務時間内のうち,原告が本件事務作 命令に基づく事務作業に従事した時間のうち,所定勤務時間内にこれに従事することができなかったと認められる部分を労働時間として認定すべきである。具体的には,①所定勤務時間内のうち,原告が本件事務作 業に従事することができる空き時間を算出し,②本件事務作業のうち,本 件校長の指揮命令に基づくと認められる業務に要する時間を概算した上で,②から①を差し引いた時間を,終業時刻後の労働時間として認定するのが相当である。 所定勤務時間のうち本件事務作業に用いることができる時間a 原告は,始業時刻から児童の下校までの間は,授業中に事務作業を行 うことができないことはもとより,授業の合間の休み時間においても,次の授業の準備や,その日のうちに返却すべき連絡帳,音読カード,宿題の確認及び授業の準備等を行っており,その余の業務を行うことができなかったと主張する。 この点,原告が児童の下校時刻までに行っていたとする業務の中に,本 件校長の指揮命令によらない業務が一切含まれていないのか判然とせず,また,原告の陳述書(甲88)にも一部の空き時間に本件事務作業を行っていたことを自認するような記載があることから,原告が,勤務開始から児童の下校時刻までの間,本件事務作業を全く行うことができなかったといえるかは疑問がある。もっとも,前記1⑷ウによれば,原告がテスト中 を含め授業中に事務作業を行うことができず,それでも当日のうちに処理しなければならない事務作業も一定程度あったことがうかがわれるほか,本件では,労働時間を概算するもので,厳密な算出を目的としていないことを考えると,原告は,児童の下校時刻までは本件事務作業に従事することができなかったものとして,本件事務作業に従事することのできる時間 を算出するものとする。 ただし 出を目的としていないことを考えると,原告は,児童の下校時刻までは本件事務作業に従事することができなかったものとして,本件事務作業に従事することのできる時間 を算出するものとする。 ただし,原告が担当していない書写及び音楽の授業が行われている時間については,本件事務作業に従事することができた時間として扱うものとする。 b 以上を前提とすると,原告が本件事務作業に従事することのできた時 間は,①児童の完全下校時刻以降及び②音楽,書写の授業時間であるから, その具体的な時間は,以下のとおりとなる(別紙5「所定勤務時間内の空き時間」欄のうち「総時間」欄参照)。 平成29年度平成29年度は,児童の完全下校時刻が,月曜日及び水曜日は15時10分,火曜日,木曜日及び金曜日は16時であり,そのうち,休憩時間は, 16時20分から45分の25分であった。また,証拠(甲27の1)によれば,音楽の授業は週に1回及び隔週に1回(月に6回,各45分),書写の授業は週に1回(月に4回,各45分)であったと認められる。 これを踏まえて算出すると,平成29年度に原告が本件事務作業に従事することのできた時間は,以下の【計算式】のとおり,月に1550分(2 5時間50分)となる。 【計算式】(110-25)分×2+(60-25)分×3=275分275分×4週間+45分×(6+4)回=1550分⒝ 平成30年度平成30年度については,完全下校時刻は平成29年度と同様であり, 音楽の授業が月に6回,書写の授業が月に4回という点も同様であったが,休憩時間は16時15分から16時45分までの30分であった。そこで,平成30年度に原告が本件事務作業に従事することのできた時間は,以下の【計算式】のとおり,月に145 回という点も同様であったが,休憩時間は16時15分から16時45分までの30分であった。そこで,平成30年度に原告が本件事務作業に従事することのできた時間は,以下の【計算式】のとおり,月に1450分(24時間10分)となる。 【計算式】(110-30)×2+(60-30)×3=250分250分×4週間+45分×(6+4)回=1450分c もっとも,前記1⑷ウによれば,児童の下校後には,職員会議,研修会,学年会,委員会及び教科部会といった会議が開催されていたことが認められ,これらの会議に参加していた時間には本件事務作業に従事す ることができなかったことになる。そこで,年間行事予定表(甲29)に おいて,前記各会議等が実施されたと認められる場合には,その分の時間を,前記bで認定した総時間から控除することとする(ただし,平成30年度については,年間行事予定表に職員会議等の記載がないため,平成29年度の同じ月と同じ頻度でこれらが開催されたものとする。)。 前記各会議に要した時間は,後記⒜ないし⒠のとおりとし,その具体 的な控除時間は,別紙5「所定勤務時間内の空き時間」欄の「控除」欄各記載のとおりである。 職員会議職員会議は,月曜日の15時10分から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分) に行われていた(争いがない。)から,職員会議が実施された日は,平成29年度については70分,平成30年度については65分を控除する。 ただし,平成30年4月には,月曜日以外の日にも職員会議が臨時で行われているところ,火曜日,木曜日及び金曜日に行われた分については,完全下校時刻である16時から休憩の開始時間である16時15分まで行 われたも 4月には,月曜日以外の日にも職員会議が臨時で行われているところ,火曜日,木曜日及び金曜日に行われた分については,完全下校時刻である16時から休憩の開始時間である16時15分まで行 われたものとして,15分を控除する。 ⒝ 研修会研修会は,15時10分から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分)に行われていた(争いがない。)から,研修会が実施された日は,平成29年度に ついては70分,平成30年度については65分を控除する。 ⒞ 学年会学年会は,水曜日の15時20分から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分)に行われていた(争いがない。)から,学年会が実施された日には,平成2 9年度については60分,平成30年度については55分を控除する。 ただし,平成30年4月には,水曜日以外の日にも学年会が臨時で行われているところ,火曜日,木曜日及び金曜日に行われた分については,完全下校時刻である16時から休憩の開始時間である16時15分まで行われたものと推認し,15分を控除する。 ⒟ 委員会 委員会は,16時から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分)に行われていた(争いがない。)から,原告の所属する委員会(前記1⑶)が実施された日には,平成29年度については20分,平成30年度については15分を控除する。 教科部会教科部会は,16時から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分)に行われていた(争いがない。)から,教科部会が実施された日には,平成29年度については20分 6時から少なくとも休憩時間が開始するまでの間(平成29年度は16時20分,平成30年度は16時15分)に行われていた(争いがない。)から,教科部会が実施された日には,平成29年度については20分,平成30年度については15分を控除する。 d 以上によれば,原告が本件事務作業に充てることができた時間は,別紙5「所定勤務時間内の空き時間」欄の「合計」欄各記載のとおりである。 各業務の労働時間該当性及び所要時間a 本件事務作業の労働時間該当性及び所要時間は,別紙5「終業後の業務の労働時間該当性及びその時間」で具体的に認定したとおりであるから, これを前提として,月ごとに原告が本件事務作業に従事していた時間のうち,労働時間に該当する時間数を算出する。 b 週単位の業務別紙4で認定したところによると,原告が,週単位で従事していた業務及びその労働時間は,以下のとおりと認められる。 ⑤ 教室の掲示物の管理週に2分 ⑨ 翌日の授業の準備隔週で120分又は125分⑪ 朝自習の準備週に30分(週3回,10分ずつ)⑰ 週案簿の作成週に30分そして,これらの作業を4週間分行った場合の労働時間は,以下の【計 算式】のとおり,738分(12時間18分)である。 【計算式】(2+30+30)×4+(120+125)×2=738分c 月単位の業務次に,別紙4で認定したところによると,原告が,月単位で従事していた業務及びその労働時間は,以下のとおりと認められ,その合計は340 分(5時間40分)である⑧ 教室の掲示物の作成 60分(各30分 月単位で従事していた業務及びその労働時間は,以下のとおりと認められ,その合計は340 分(5時間40分)である⑧ 教室の掲示物の作成 60分(各30分)⑬ 出席簿の整理・授業時間数集計表の提出 60分⑮ 日直業務 20分 ⑱ 学年花壇の草取り・管理 10分㉕学年便りの作成 50分㉟安全点検 5分㊸指導要録の作成 100分㊿エアコンスイッチ入切記録簿の作成 5分 「ふらいでぃ」の作成 30分d 通常の業務に要する時間の算出前記b及びcによれば,原告が本件校長の指揮命令によって毎月行うべき事務作業に要する時間は,前記b及びcで認定した時間の合計である1078分(17時間58分)である。ただし,証拠(甲29)によれば, 平成30年3月,同年4月及び同年7月は,それぞれ春休み及び夏休みに より通常よりも1週間分授業を行う日数が少ないから,1週間分の授業準備に要する時間(120分)を前記の時間から減ずることとし,毎月行うべき事務作業に要する時間を15時間58分(1078分-120分=958分)とする(別紙5「通常業務」欄記載のとおり)。 e 臨時の業務に要する時間の算出 別紙4で認定したところによれば,原告は,各月ごとに,別紙5「臨時業務」の「内容」欄各記載の業務に,同「時間」各記載の時間分従事したと認められる。 そして,前記dで算出した通常の業務に要する時間に,前記臨時業務に要す によれば,原告は,各月ごとに,別紙5「臨時業務」の「内容」欄各記載の業務に,同「時間」各記載の時間分従事したと認められる。 そして,前記dで算出した通常の業務に要する時間に,前記臨時業務に要する時間を合計すると,別紙5「業務時間(小計)」欄各記載のとおり である。 小括前記で認定した総業務時間(別紙5「業務時間(小計)」)から,前記で認定した所定勤務時間内に原告が本件事務作業に従事することのできる時間(同「所定勤務時間内の空き時間」欄の「合計」欄)を控除す ると,同「終業後の時間外勤務数」欄各記載のとおりであり,原告は,同欄記載の時間分,正規の勤務時間後に労働に従事していたというべきである。 エ時間外勤務のうちの総労働時間前記のとおり,それぞれ検討した始業前の時間外労働時間,休憩時間中の 労働時間及び終業後の時間外労働時間を合計すると,別紙5「時間外勤務数」欄各記載のとおりとなる。 このように,原告が従事していた時間外勤務数に,所定勤務時間数(月に157時間34分)を加えた原告の総勤務時間数は,別紙5「総勤務時間数」欄各記載のとおりであり,原告は,同「労基法32条超過部分(月単位欄)」 各記載のとおり,労基法32条の定める法定労働時間(月に換算すると,月 日数31日の月は177時間08分,月日数30日の月は171時間25分,月日数28日の月は160時間)を超えて労働していたと認められる。 ⑸ 以上の原告の時間外勤務における労働時間を踏まえて検討するに,本件校長は,労基法32条の法定労働時間を超えて原告に労働させている状況にあるが,本件請求期間(11か月間)のうち過半数の6か月(9月から11月,1月, 5月及び6月)は法定労働時間内にとどまっている。また,法定労働時間を超 労働時間を超えて原告に労働させている状況にあるが,本件請求期間(11か月間)のうち過半数の6か月(9月から11月,1月, 5月及び6月)は法定労働時間内にとどまっている。また,法定労働時間を超過した5か月を見ると,12月が5時間8分,2月が5時間47分,3月が4時間48分,4月が2時間26分,7月が14時間48分であり,いずれも学年末や学年始め,学期末といった一般的に本来的業務による事務量が増加するいわゆる繁忙期に当たり,最も長時間の7月は,ちょうど夏休みが始まる月で ある。こうした原告の時間外労働の時間数や時間外勤務等を行うに至った事情,従事した職務の内容,その他の勤務の実情等に照らすと,本件請求期間において,本件校長の職務命令に基づく業務を行う時間が日常的に長時間にわたり,そのような時間外勤務をしなければ事務処理ができない状況が常態化しているとは必ずしもいえない状況にあり,教員の労働時間が無定量になることを防 止しようとした給特法の趣旨を没却するような事情があると認めることができず,本件請求期間における原告の勤務の外形的・客観的な状況からは,直ちに本件校長が労基法32条違反を認識し,あるいは認識可能性があったということはできないから,これを是正するための措置を講じなければならない注意義務を生じさせる予見可能性があったとは認められず,原告が主張する前記注 意義務違反を認めることはできない。 また,原告は,被告が労基法32条の定める労働時間を超えて労働させたことで,時間外勤務手当相当額の経済的損害及び精神的損害を負っているから,本件校長による職務命令が国賠法上違法であるとも主張するが,原告には労基法37条が適用されないことは既に説示したとおりであって,同法32条の定 める労働時間を超えて勤務に従事したと いるから,本件校長による職務命令が国賠法上違法であるとも主張するが,原告には労基法37条が適用されないことは既に説示したとおりであって,同法32条の定 める労働時間を超えて勤務に従事したとしても,時間外勤務手当相当額の経済 的損害が生じているとはいえない。そして,原告には勤務時間外労働の対価を含む趣旨で教職調整額が支給されていることに加え,本件請求期間内における法定労働時間を超過した月でも最大で15時間未満であり,直ちに健康や福祉を害するおそれのある時間外労働に従事させられたとはいえないこと,原告が従事した業務内容は,その大半が授業準備やテストの採点,通知表の作成など 教員の本来的業務として行うことが当然に予定されているものであることから,原告が法定労働時間を超えて業務に従事したとしても,これによって,原告に社会通念上受忍すべき限度を超えるほどの精神的苦痛を与えているとは言い難い。 したがって,国賠法上の違法性に関する原告の主張は,いずれも採用するこ とができない。 ⑹ そうすると,本件において,原告の労働時間が労基法32条の規制を超えているとしても,本件校長に職務上の注意義務違反があったとはいえず,また,原告の法律上保護された利益が侵害されたということもできないから,国賠法上の違法性を認めることはできない。 したがって,原告の国賠法に基づく損害賠償請求は理由がない。 4 まとめ以上のとおり,原告には,労基法37条に基づく時間外労働の割増賃金請求権がなく,また,本件校長の職務命令に国賠法上の違法性が認められないから,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないといわなけ ればならない。 なお,本件事案の性質に鑑みて,付言するに,本件訴訟で顕れた原告の勤務実 性が認められないから,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないといわなけ ればならない。 なお,本件事案の性質に鑑みて,付言するに,本件訴訟で顕れた原告の勤務実態のほか,証拠として提出された各種調査の結果や文献等を見ると,現在のわが国における教育現場の実情としては,多くの教育職員が,学校長の職務命令などから一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり,給料月額4パーセ ントの割合による教職調整額の支給を定めた給特法は,もはや教育現場の実情 に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ず,原告が本件訴訟を通じて,この問題を社会に提議したことは意義があるものと考える。わが国の将来を担う児童生徒の教育を今一層充実したものとするためにも,現場の教育職員の意見に真摯に耳を傾け,働き方改革による教育職員の業務の削減を行い,勤務実態に即した適正給与の支給のために,勤務時間の管理システムの整備や給 特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め,教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望むものである。 第4 結論よって,原告の請求にはいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官石垣陽介 裁判官髙祐子 裁判官牧野一成
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