平成11(ワ)4032 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年5月24日 名古屋地方裁判所
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判決文本文28,487 文字)

主文 1 被告は,原告甲及び原告乙に対し,それぞれ3463万7620円及びこれに対する平成11年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告丙に対し,281万2443円及びこれに対する平成11年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告丙のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを13分し,その1を原告丙の負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告甲及び乙に対し,6927万5241円及びこれに対する平成11年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告丙に対し,902万2559円及びこれに対する平成11年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 争いのない事実等(1) 被告は,商品取引法上の取引員であり,商品取引の受託業務等を業とする会社である。 (2) 亡丁は,平成8年3月当時81才の男性であり,会社経営者であった。 (3) 原告丙は,平成8年8月当時60才の女性であり,商品先物取引については未経験者であった。 (4) 丁は,平成8年3月15日,被告との間で商品先物取引の基本委託契約を締結し,原告丙は,同年8月30日,被告との間で商品先物取引の基本委託契約を締結した(乙1,13,弁論の全趣旨)。 (5) 丁については,平成8年4月24日から平成10年1月12日まで,原告丙については,平成8年8月30日から平成9年11月10日まで,別紙委託者別先物取引勘定元帳記載のとおり,それぞれ取引が行われた(以下「本件取引」という。 月24日から平成10年1月12日まで,原告丙については,平成8年8月30日から平成9年11月10日まで,別紙委託者別先物取引勘定元帳記載のとおり,それぞれ取引が行われた(以下「本件取引」という。)。 (6) 丁の本件取引の担当者は,被告名古屋支店勤務の戊及び己であった。戊は,平成8年4月24日の初回建玉(別紙「取引経過表」の取引番号A1,A2の各建玉)のみ担当し,その後の取引については,己が担当した(弁論の全趣旨)。 (7) 原告丙の本件取引については,約諾書の取付事務を除いては,全て己が担当した(弁論の全趣旨)。 (8) 丁の上記(5)の平成8年4月24日から平成10年1月12日までの全取引の結果は,下記のとおりであった。 売買損益 4,328,200円委託手数料 68,488,340円消費税 2,872,676円取引所税 242,425円帳尻益金 105,313,366円帳尻損金 172,588,607円(9) 原告丙の上記(5)の平成8年8月30日から平成9年11月10日までの取引の結果は,下記のとおりであった。 売買損益 -5,718,800円委託手数料 2,680,200円消費税 114,326円取引所税 9,233円帳尻益金 7,732,108円帳尻損金 16,254,667円(10) 丁は,平成13年6月27日死亡し,原告甲及び原告乙は,丁の子である。 2 争点 金 7,732,108円帳尻損金 16,254,667円(10) 丁は,平成13年6月27日死亡し,原告甲及び原告乙は,丁の子である。 2 争点(1) 被告による不法行為の成否(2) 丁及び原告丙の損害額及び過失相殺の可否 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告による不法行為の成否(原告らの主張)ア丁の本件取引に関する己の行為は,以下の点に違法があり,一連の行為が全体として不法行為を構成するから,被告は使用者として不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (ア) 断定的判断の提供丁が,戊の勧めで平成8年4月24日に初回建玉をした後,戊に同行して丁の元を訪れた己が,丁に対し,「指数などとろくさいことをやっていては駄目だ。」「自分にまかせれば,大豆で,資金を1億から3億にする。」「自分の扱った例として,一宮の顧客で,3億円の損を出していた人に米国産大豆の取引をまかされて,損を1億にまでに減らしたことがある。」と言って,大豆の先物取引を行うことを強く勧誘した。丁は,己の上記の言葉を信用して,本件取引を行っていくことになったが,その内容は,己が強引に自分の判断で取引を行っていったものであり,丁は,絶対に儲けさせるという己の言葉を信用して,己のやり方に従っていた。このように己は,老齢で判断能力の低下している丁に対し,絶対に儲かる旨の断定的判断の提供をして取引を行わせたものである。 (イ) 無断売買,一任売買丁は,己に対し,玉を指定して取引をしたことは1度もなく,全ての取引について己に一任しており,本件取引は丁の指示なく行われていたもので,一任売買,無断売買である。 (ウ) 無意味な反復売買,過当売買丁の本件取引においては,平成8年4月24日から平成10年1月1 て己に一任しており,本件取引は丁の指示なく行われていたもので,一任売買,無断売買である。 (ウ) 無意味な反復売買,過当売買丁の本件取引においては,平成8年4月24日から平成10年1月12日までの約22か月の取引期間中,495回(玉を建てて落として1回と数えると257回)という極めて多数回の取引が行われており,取引の性質上定型的に委託者の利益を損なうおそれの高い取引である特定売買(直し,両建て,途転,日計り,手数料不抜け)の回数は合計139回という多数回にわたっている。 行政においては,過当売買等による委託者事故を未然に防止し,営業姿勢について問題のある商品取引員の体質を改善し,業界全体のレベルアップをして社会的な信用向上を図ることを目的に,売買内容の精査を商品取引員に義務づけており,農林水産省は「委託者売買状況チェックシステム」を,通産省は「売買状況に関するミニマムモニタリング」を導入して(以下「チェックシステム等」と総称する。),直し,両建て,途転,日計り,手数料不抜けを「特定売買」と定義し,監督官庁に対し売買状況並びに特定売買比率を報告すべきこととすると共に,農林水産省においては,特定売買比率,すなわち,全取引回数に占める特定売買の比率を20パーセント,売買回転率,すなわち,取引期間に占める仕切玉の回数は1か月あたり3回以内,手数料化率,すなわち,全損害に占める手数料の率を10パーセントにとどめるよう指導することにしている。 しかるに,丁の本件取引においては,特定売買比率は約54パーセント,売買回転率は1か月あたり約12.9回,手数料化率は約101.8パーセントと,いずれも農林水産省が定めた上記基準を大幅に上回っている。 本件取引においては,新規の建玉とその仕切りの期間が短く,ほとんど連日のように新規の建玉 2.9回,手数料化率は約101.8パーセントと,いずれも農林水産省が定めた上記基準を大幅に上回っている。 本件取引においては,新規の建玉とその仕切りの期間が短く,ほとんど連日のように新規の建玉とその仕切りが繰り返され,取引枚数も極めて多く,本件取引全体についての損金,すなわち帳尻益金から帳尻損金を差し引いた額は,6727万5241円という多額になっているが,一方で委託手数料の合計額は6848万8340円であり,ほぼ損金の額に見合う金額が委託手数料という形で被告に取られているのである。 さらに,個々の取引を見ても,特定売買の1つである直しについて,被告は,建玉に計算上の利益が乗っている場合にこれを処分して計算上の利益を現実の利益とすることが,時には有用かつ有効な取引手法である旨主張しているが,本件においては,建玉に計算上損失が出ているにもかかわらずその建玉を仕切って即日また同じ建玉を建てるという,被告の主張に矛盾する直しが何回も行われている。また,特定売買の1つである両建てについて,被告は,両建ては,建玉の値洗いが損になってもすぐに仕切らずに,反対の建玉をすることによってその後の相場の損失の増大を防いでおき,適当と思うときに一方を反対売買して残った建玉の方で利益を得ようとすること等を目的とする取引の方法で,例えば買建玉に損が発生したとき,その後の相場の動向について判断がつかない場合には,新たに売建玉を建てて両建て状態にし,この両建玉を異時かつ適時に決済することによって,両建てをしないで当初の買建玉を決済した場合に比べて損金の額を少なくすることができ,また,見通しがよければ両方の建玉共に益を出させることができるのであるから,両建ては有害無益な取引手法とは言えない旨を主張しているが,本件取引においては,両建てした建玉を同時に仕切る ることができ,また,見通しがよければ両方の建玉共に益を出させることができるのであるから,両建ては有害無益な取引手法とは言えない旨を主張しているが,本件取引においては,両建てした建玉を同時に仕切るという,被告の主張に矛盾する両建ても行われている。そもそも,直しや両建てはそれ自体,委託者にとって危険かつ無意味な取引であるが,本件取引においては,上記のとおり,被告の主張とも矛盾する,常識では考えられない直しや両建てが行われている。 これらの客観的事実は,本件取引が丁の意思ではなく,己の判断のみでなされたことを示すと共に,己が,手数料稼ぎを目的とした無意味な反復売買,過当売買,いわゆる「転がし」を行ったことを示している。 イ原告丙の本件取引に関する己の行為は,以下の点に違法があり,一連の行為が全体として不法行為を構成するから,被告は使用者として不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (ア) 無断売買,一任売買原告丙は,己に対し,玉を指定して取引をしたことは1度もなく,全ての取引について己に一任しており,本件取引は原告丙の指示なく行われていたもので,一任売買,無断売買である。 (イ) 無意味な反復売買,過当売買原告丙の本件取引においては,取引の回数(玉を建てて落として1回)が32回であるのに対し,特定売買(直し,両建て,途転,日計り,手数料不抜け。丁についての本件取引との関係で特定売買となるものも含む。)の回数が合計25回であり,特定売買比率は約78パーセント,売買回転率は1か月あたり約5.49回,手数料化率は約31.4パーセントと,いずれも農林水産省が定めた上記基準を大幅に上回っている。原告丙の本件取引においても,手数料稼ぎを目的とした無意味な反復売買,過当売買が行われたものである。 (ウ) 新規委託者保護義務違反被告 いずれも農林水産省が定めた上記基準を大幅に上回っている。原告丙の本件取引においても,手数料稼ぎを目的とした無意味な反復売買,過当売買が行われたものである。 (ウ) 新規委託者保護義務違反被告の受託業務管理規則(乙45)第6条によれば,商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託にあっては,外務員の委託者の建玉枚数に係る判断枠は20枚とされ,当該委託者から当該判断枠を超える建玉要請があった場合は,別途にその当否を審査するものとされ,その方法と基準については,「商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託に係る取扱い要領」が別途に定められ,同取扱い要領では,当該委託者の資質,資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数の範囲において受託を行うよう,100枚以内は管理サービス部責任者(支店長),101枚以上は総括責任者(取締役本部長)が審査を行いその適否について判断し,妥当と認められる範囲内において受託するものとされている。 しかるに,原告丙の本件取引においては,最初から23枚の建玉をしており,また,取引開始後3か月後の平成8年10月1日までに取引枚数は88枚に達している。 しかし,原告丙の顧客カード(乙19)には,同人には預貯金が6000万円あり,年収が2000万円あり,その結果投下可能資金が2000万円と記載されているが,この記載はその内容を含め己が戊に指示して記載させたものであり,その記載には根拠がなく,預貯金や年収等の金額は己の想像で書かれたもので,かつ,過大な表現で書かれた事実に反するものである。原告丙の建玉枚数についての審査(委託者調書(乙20)における審査)は,上記のような事実に反する収入,資産を前提にしてなされたもので違法なものであり,原告丙の本件取引については新規委託者保護義務違反がある。 (被告の主張)ア丁の取引に 書(乙20)における審査)は,上記のような事実に反する収入,資産を前提にしてなされたもので違法なものであり,原告丙の本件取引については新規委託者保護義務違反がある。 (被告の主張)ア丁の取引について(ア) 断定的判断の提供己が,丁に対し,「指数などとろくさいことをやっていては駄目だ。」「自分にまかせれば,大豆で,資金を1億から3億にする。」等と一任売買を取り付けたり,断定的言辞を使用した事実はない。 (イ) 無断売買,一任売買己は,丁に対し,相場動向や相場観を伝えて取引について指導・助言はしているが,個々の取引の最終判断は,丁自らがなしたものであった。 そもそも,丁は,商品先物取引の経験者であって,被告と取引する以前,下記のとおり商品先物取引を行っていた者であるから,己にとっては,断定的判断の提供や無断売買や一任売買をなし得る相手ではなかったし,また,現にそのような事実はなかった。 ① 取引業者名庚取引期間平成7年2月16日から平成8年4月17日まで取引金額金6500万円取引銘柄米国産大豆② 取引業者名辛取引期間平成8年1月23日から同年10月末日まで取引金額金1645万円取引銘柄トウモロコシ,ゴム,金,銀,白金等(ウ) 無意味な反復売買,過当売買相場は日々刻々と変動するのであるから,その対応として,売買をなすことは当然であって,その結果として取引回数が多くなることも当然にあり得ることであり,取引の過当性は,取引回数が多数であることや取引数量が多いことによって決すべき問題ではなく,委託者の経験,資力,判断能力等との関係で決すべき問題である。 丁の場合は,取引経験があり,資力も十分であって,取引の理解や判断につき,十分な能 や取引数量が多いことによって決すべき問題ではなく,委託者の経験,資力,判断能力等との関係で決すべき問題である。 丁の場合は,取引経験があり,資力も十分であって,取引の理解や判断につき,十分な能力があった者であるから,取引回数が多いからといって,取引の過当性・無断性・一任性を推認すべきではない。丁は,己と,毎日のように,しかも多い時は日に何回も連絡を取り合っていたものであり,この連絡に基づく丁の指示又は承諾(了解)の下,己は,本件取引を執行(取次)したものである。 また,特定売買については,チェックシステム等によっても,それ自体行うことが禁止されるものではなく,特定売買は相場の局面によっては有効な取引手法であり,特定売買が多いからといって,そのこと自体が委託者の取引に必ずしも損害を生ぜしめる要因とはなり得ない。丁の本件取引における特定売買は,いずれも丁の判断に基づく,相場への対応としての取引の結果であり,手数料稼ぎの結果では断じてない。 丁の特定売買の認定とその回数については,取引所の定めた「委託者売買状況チェックシステムQ&A」(乙43)の基準に従って数えると,直しが36回,途転が15回,両建てが36回,日計りが21回,手数料不抜けが15回で,これらの特定売買の回数は合計123回である。 丁の全取引回数は356回である(「委託者売買状況チェックシステムQ&A」(乙43)に基づき,売買状況の回数は,月をまたぐ時は,仕切りも当該月の回数として数える。例えば,11月25日10枚売建,12月5日10枚買仕切の場合,2回と数える。)。 よって,丁の本件取引の特定売買比率は約34.55パーセントである。これは,チェックシステム等における特定売買比率の基準20パーセントを超過はするが,異常な高率とまでは評価し得ないし,上記比率がいささか高 ,丁の本件取引の特定売買比率は約34.55パーセントである。これは,チェックシステム等における特定売買比率の基準20パーセントを超過はするが,異常な高率とまでは評価し得ないし,上記比率がいささか高率と評価するとしても,それは相場への対応としての取引の単なる結果であり,この一事をもって丁の本件取引が社会的相当性を欠く違法なものとまでは評価し得ない。また,元来,いわゆるチェックシステム等は,取引参入後3か月以内の新規委託者の保護育成策としてのものであって,丁のごとき取引経験者に対し,これを問うのは妥当でない。 丁の取引期間は,平成8年4月24日から平成10年1月12日までであるから,その日数は629日であるところ,上記全取引回数356回をこの日数で割ると約0.566となり,これが1日当たりの回数に相当するが,これに1か月当たりの営業日数20日を乗ずると,売買回転率は,1か月当たり11.32回となる。チェックシステム等の売買回転率の基準は,1か月当たり3回以内を目標とするものであるから,その約3倍の回転率であるが,取引経験が豊富な丁の取引には,これを問うことが妥当でないことは上記特定売買比率の場合と同様である。 手数料化率については,丁の本件取引における帳尻損金額は1億7258万8607円であるから,これで同取引の委託手数料総額6848万8340円を除すると約0.3968であるので,約39.68パーセントである。これは,チェックシステム等の基準値10パーセントからすると,約4倍となるものであるが,それは約21か月間に及ぶ丁の取引の単なる結果でしかない。 丁の本件取引にあっては,原告が主張するようないわゆる「転がし」はない。 丁の本件取引のように,継続的取引の経過の中で特定売買が多々存在するとしても,このことは委託手数料分の負担増を別とし ない。 丁の本件取引にあっては,原告が主張するようないわゆる「転がし」はない。 丁の本件取引のように,継続的取引の経過の中で特定売買が多々存在するとしても,このことは委託手数料分の負担増を別として,直ちに売買損失の発生に寄与するものではない。 イ原告丙の取引について(ア) 無断売買,一任売買己は,原告丙に対し,相場動向や相場観を伝えて取引について指導・助言はしているが,原告丙の個々の取引は,同人自らの意思と判断に基づく取引であり,原告丙の注文により,主として己が担当して,これを執行したものであった。 (イ) 無意味な反復売買,過当売買原告丙の取引は,丁の取引と密接ではあったが不可分ではなく,原告丙独自の取引であった。 よって,原告主張のように丁の本件取引との関係で原告丙の本件取引の特定売買の回数を数えるのではなく,原告丙の本件取引自体の特定売買の回数を数えるべきであり,そうすると,特定売買の回数は合計15回である。 原告丙の取引回数は60回である(「委託者売買状況チェックシステムQ&A」(乙43)に基づき,売買状況の回数は,月をまたぐ時は,仕切りも当該月の回数として数える。例えば,11月25日10枚売建,12月5日10枚買仕切の場合,2回と数える。)。 よって,原告丙の特定売買比率は,25パーセントである。 これは,チェックシステム等の基準値20パーセントを5パーセント上回るのみで,格別の問題はない。 売買回転率については,取引期間は437日であり,この期間中の取引回数は80回であるから,これを437で除すると0.183であるから,1か月の営業日を20日として,0.183を20倍すると3.66である。よって,原告丙の本件取引の売買回転率は,1か月当たり3ないし4回である。 手数料化率については,原告丙の本件取引の あるから,1か月の営業日を20日として,0.183を20倍すると3.66である。よって,原告丙の本件取引の売買回転率は,1か月当たり3ないし4回である。 手数料化率については,原告丙の本件取引の手数料合計268万200円を帳尻損金1625万4667円で除すると,約16.5パーセントとなる。 以上を鑑みれば,原告丙については,特定売買の存在の故をもって取引が過当であるとか,手数料稼ぎであると非難することは当を得ない。 (ウ) 新規委託者保護義務違反原告丙は,当初,中部輸入大豆において23枚の取引に及び,その後63枚の建玉をなすところであったが,被告は,被告の「受託業務管理規則」及び「商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託に係る取扱い要領」(乙45)によって,原告丙の建玉要請を受けて実質的審査をなし,50枚,100枚と順次認定作業を経由して取引に至ったものである(乙20の1,2)。 すなわち,被告は,原告丙の資金力と取引への理解力・判断力等を総合して(乙16ないし19),100枚までの建玉の取引適格者としたものであり,被告に新規委託者保護規定の違反はない。 (2) 丁及び原告丙の損害額及び過失相殺の可否(原告らの主張)ア丁は,被告従業員の不法行為により,以下の損害を被った。 (ア) 被告に支払った金員総額9878万771円から被告から支払を受けた金員総額3010万5530円を控除した残額6867万5241円(イ) 弁護士費用200万円イ原告丙は,被告従業員の不法行為により,以下の損害を被った。 (ア) 被告に支払った金員総額1371万1000円から被告から支払を受けた金員総額358万8441円を控除した残額1012万2559円(イ) 弁護士費用50万円ウよって,丁の相続人である原告甲及び原告乙は,上記アの損 額1371万1000円から被告から支払を受けた金員総額358万8441円を控除した残額1012万2559円(イ) 弁護士費用50万円ウよって,丁の相続人である原告甲及び原告乙は,上記アの損害の内金6927万5241円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金,原告丙は,上記イの損害の内金902万2559円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を,被告に対して求めるものである。 (被告の主張)アア(ア)については否認し,ア(イ)については不知。 丁が被告に支払った金員の総額は,9878万0771円であり,丁が被告から支払を受けた金員の総額は,3150万5530円であるから,前者から後者を控除した残額は,6727万5241円である。 イイ(ア)については否認し,イ(イ)については不知。 原告丙が被告に支払った金員の総額は,1371万1000円であり,原告丙が被告から支払を受けた金員の総額は,518万8441円であるから,前者から後者を控除した残額は,852万2559円である。 また,原告丙の本件取引については,委託証拠金を全て丁が出捐し,原告丙と丁との間では,利益が出れば原告丙のものに,損が出れば丁がこれを負担する旨の合意がなされていたことからすれば,原告丙に財産的損害が発生したと法的に評価できるか疑問がある。 ウ仮に,被告従業員に不法行為が認められるとしても,丁及び原告丙には,各々の取引について,以下のとおりの過失が存在するので,その損害賠償額については過失相殺がなされるべきである。 (ア) 丁について仮に,被告従業員の行為に一部違法が認められるとしても,丁の場合,その損害の発生との関係上では, 失が存在するので,その損害賠償額については過失相殺がなされるべきである。 (ア) 丁について仮に,被告従業員の行為に一部違法が認められるとしても,丁の場合,その損害の発生との関係上では,10中8及び9の責任が同人に存在するものと評価される。 なぜなら,丁は,取引の経験者であり,取引の危険性は十分に熟知していた者であって,取引への知識と能力,特に取引参入への資力も一応に備えていたものであるから,自己責任の下に本件取引に及び,その損害発生への寄与度は過半以上のものが存在すると思料するのが妥当であるからである。 丁程度の取引経験等を有する委託者(顧客)にあっては,「相場の損は相場で取り返す。」べきであり,本訴請求のごとく損害賠償請求を行うことは自己責任の原則から妥当でない。 (イ) 原告丙について原告丙については,丁の勧めにより本件取引を開始し,取引上の委託証拠金は丁が出捐し,原告丙と丁との間では,利益が出れば原告丙のものに,損が出れば丁がこれを負担する旨の合意がなされていたことから,商品先物取引の何たるかを全く理解せずして取引に参入したというのであり,さらには,被告から送付された売買報告書は自ら検討することなく丁に渡し,被告から照会された残高照合回答書には,その内容を検討することなく「何ら異議がない」旨を回答しており,これらのこと等を鑑みると,基本的委託契約の締結及び個々の取引の委託契約締結のそれぞれにつき,原告丙には大きな過失が存在すると言わざるを得ない。 4 争点に対する判断(1) 争点(1)についてア丁の本件取引について(ア) 断定的判断の提供について丁の陳述書(甲5,9,19)には,己が,丁に対し,「指数などとろくさいことをやっていては駄目だ。」「自分にまかせれば,大豆で,資金を1億から 取引について(ア) 断定的判断の提供について丁の陳述書(甲5,9,19)には,己が,丁に対し,「指数などとろくさいことをやっていては駄目だ。」「自分にまかせれば,大豆で,資金を1億から3億にする。」「自分の扱った例として,一宮の顧客で,3億円の損を出していた人に米国産大豆の取引をまかされて,損を1億にまでに減らしたことがある。」と述べたことがあった旨の,原告らの主張に沿う内容の記載が存在する。 しかしながら,己,戊の各証言等に照らして,丁の陳述書の記載内容を直ちに信用することはできず,他に己が上記のような言葉を丁に対して述べたと認めるに足りる証拠はない。 また,原告丙の本人尋問の結果等によれば,丁は,被告と取引を始める以前にも商品先物取引を行って損失を出した経験があったことが認められる上,丁と被告の本社顧客サービス部の壬との間の電話でのやり取りを録音したテープの反訳書(乙52)によれば,丁が本件取引を開始した前日の平成8年4月23日において,壬が「相場のことですから,絶対ということはありませんから。」と述べるのに対し,丁は「そらあ,そうやわね。」とそのことを当然理解しているかのような態度を示しているのであって,これらのことからすれば,仮に,己において,丁が陳述書に記載するような発言をしたことがあったとしても,丁が,己の言葉をもって,本件取引によって利益が出るのが確実であると考えたとまでは認め難い。 以上より,己から丁に対し,原告らの主張する断定的判断の提供があったとは認めることはできない。 (イ) 無断売買,一任売買について丁の陳述書(甲5,9,19)においては,「取引に当たり(己から)一々連絡があったのではなく,己さんに任せておけば絶対にもうかると言われて,全部任せたもので,私はどのような商品が,いつ, ついて丁の陳述書(甲5,9,19)においては,「取引に当たり(己から)一々連絡があったのではなく,己さんに任せておけば絶対にもうかると言われて,全部任せたもので,私はどのような商品が,いつ,いくらで,どのような数量売買されたのか全く知らず,全てを己に任せておりました。」等,原告らの無断売買,一任売買に関する主張に沿う内容の記載があり,原告丙も本人尋問において,「丁が『己は事後に(取引の)報告をしてくる。』と言っているのを聞いたことがある。」「丁は,取引のことが分からなかったので,己に取引の指示はしていないと思う。」等と供述している。 しかしながら,丁と被告の本社顧客サービス部の壬との電話でのやり取り(乙52)によれば,平成8年4月23日において,壬が,「慎重に取引をお願いします。」ということを何度も述べるのに対し,丁は,「よく見とってもらわにゃあな。わしが,いくら慎重にやってもあかんのやで。あんたの方で,よく見とってもらわなあかんの。」「わしが慎重にやっとんやない,やり方が分からへんのやで,あんたの方が慎重にやってもらわなあかんねやわ。」「いろんなね証文とか何とかあっても,それは形式であってね。実際は,その本筋は,あんたの方の営業マンの人が,ちゃんと,よう見とってもらわなあかんの。」などと述べており,丁が,被告の従業員の判断に依存して取引を行う態度でいたことは明らかに認められるが,その一方で,同月24日の壬とのやり取りにおいては,壬が同日の取引内容の確認をしようとするのに対して,丁は「ちょっと待って下さい。」とメモを確認するかのような間を置いた上で,「神戸ゴムやね」と質問を挟みながら,壬の取引確認に答えていること,平成9年3月5日の壬とのやり取りにおいては,「それがな,それが20枚」と,壬が確認する前に後場1節の取引におけ な間を置いた上で,「神戸ゴムやね」と質問を挟みながら,壬の取引確認に答えていること,平成9年3月5日の壬とのやり取りにおいては,「それがな,それが20枚」と,壬が確認する前に後場1節の取引における建玉の枚数を自ら述べることができており,また,建玉のその日の終値も,丁の方から述べていることが認められる。さらには,丁の本件取引においては,平成8年4月24日から平成9年2月26日まで常時建玉が建てられている状態であったが,同月27日以降同年3月5日に東京とうもろこしの売建玉を建てるまでの約1週間,はじめて何も建玉が建っていない期間が生じたことが認められるところ,丁は,平成9年3月5日の壬とのやり取りにおいて,「今日,また始めたから。」と述べており,丁においては,同日以前にしばらく取引を行っていないということを認識していたことが認められる上,「10年3月分が,1万6000円」と,壬が確認する前に自分から,同日に建てた建玉の限月や約定値段を正確に述べることもできている。これらの丁の発言内容からすれば,丁は,自らの取引の内容をそれなりに把握していることが認められ,「どのような商品が,いつ,いくらで,どのような数量売買されたのか全く知らず,全てを己に任せていた」旨の丁の陳述書の記載内容は信用できない。また,原告丙の上記供述は,丁から聞いた話あるいは原告丙の推測に過ぎず,この供述をもって,直ちに丁の本件取引が無断売買,一任売買であったと認めることはできず,他に本件取引全体が無断売買,一任売買であることを認めるに足りる証拠もない。 以上より,丁の本件取引が無断売買,一任売買であったとまでは認めることはできない。 (ウ) 無意味な反復売買,過当売買a 丁の本件取引は,別紙委託者別先物取引勘定元帳(以下「別紙委託勘」という。)記載のとおりであ 引が無断売買,一任売買であったとまでは認めることはできない。 (ウ) 無意味な反復売買,過当売買a 丁の本件取引は,別紙委託者別先物取引勘定元帳(以下「別紙委託勘」という。)記載のとおりであり,取引期間は,平成8年4月24日から平成10年1月12日までの629日,取引回数は,建玉の仕切りごとに1回と数えると(別紙委託勘の行数。ただし,平成9年3月31日をまたいで建落ちがある取引については,新規建玉は回数に入れず,仕切りをもって1回と数える。),305回である。また,特定売買(直し,途転,両建て,日計り,手数料不抜け)の回数は,合計で少なくとも123回あることは当事者間に争いがない(なお,被告は,「委託者売買状況チェックシステムQ&A」(乙43,以下「Q&A」という。)のQ15に基づき,売買状況の回数は,月をまたぐ時は,仕切りも当該月の回数として数えるべきであると主張するが,Q&Aにおいては,チェックシステムが月単位で集計,作成し報告されることから,回数の定義を当該月の取引に係る委託者別先物取引勘定元帳の行数とし,建落ちが月をまたぐときには,落ち(仕切り)も当該月の回数として数えることとしているのであり,Q&Aのかかる趣旨からすれば,月単位の取引ではなく数年にわたってなされた取引全体の特定売買の比率等が問題となる本件においては,被告が主張する取引回数の数え方は相当ではなく,当裁判所においては採用しない。)。 以上の数値を基に計算すると,丁の本件取引における特定売買比率は,305回中123回で,約40.3パーセントと相当な高率であり,売買回転率は,629日中305回で,月平均約14.5回(1か月30日として計算する。)と著しく高率である。また,前記争いのない事実等の(8)に記載したとおり,帳尻損金と帳尻益金の差額は6727万524 転率は,629日中305回で,月平均約14.5回(1か月30日として計算する。)と著しく高率である。また,前記争いのない事実等の(8)に記載したとおり,帳尻損金と帳尻益金の差額は6727万5241円であるが,これに対し,委託手数料合計は6848万8340円であり,手数料化率は約101.8パーセントという異常に高い割合である。 また,本件取引の手数料は,手数料化率が上記のとおり異常に高率であるというのみならず,金額も6848万8340円と多額である。本件取引においては,取引それ自体としては,432万8200円の売買益が出ているにもかかわらず,委託手数料が上記のとおり総額6848万8340円発生しており,結果として,丁には6727万5241円の損失が発生している。6727万5241円は,後記認定のとおり丁が本件取引に投資した金額(入金額と出金額の差額)でもあるが,本件取引においては,上記のとおり手数料化率が100パーセントを超え,丁が投資した金額を超える金額が被告の委託手数料収入となっているのである。 以上に認定した本件取引における手数料化率,特定売買比率,売買回転率の著しい高さ等は,本件取引が,全体として,己によって,委託者である丁の利益を考慮せず,被告の利益を図る方向で誘導されたものであることが推認できる。 b さらに,本件取引を証拠(甲1等)及び争いのない事実(別紙委託勘等)に照らしながら具体的に検討するに,例えば,別紙取引経過表取引番号A2,A3,A4,A5とA6,A7,A8の各建玉(以下,それぞれ「A2」,「A3」,「A4」,「A5」,「A6」,「A7」,「A8」といい,本件取引における各建玉を,同様に別紙取引経過表の取引番号をもって称することとする。)は,同銘柄(神戸ゴム)の同限月の建玉であり,平成8年6月18日にA6,A7 ,「A6」,「A7」,「A8」といい,本件取引における各建玉を,同様に別紙取引経過表の取引番号をもって称することとする。)は,同銘柄(神戸ゴム)の同限月の建玉であり,平成8年6月18日にA6,A7,A8の買建玉合計120枚が建てられてA3,A4,A5の売建玉合計120枚と両建てとなったものであるが,両建てがなされた7日後の同月25日の後場第1節で,A2,A3の売建玉合計80枚とA6の買建玉80枚が仕切られ,同日後場第2節で,A4の売建玉10枚とA7の買建玉10枚が仕切られている(両建ての同日同場節での仕切り)。また,翌26日,後場第1節でA8の買建玉30枚が,後場第2節でA5の売建玉30枚も仕切られ(両建ての同日仕切り),さらに,同場節で,同銘柄(神戸ゴム)のA9,A10の売建玉合計37枚が建てられている(A5の仕切りとの関係で同場節での売り直し)。 そもそも両建ては,委託者の予想に反して相場が変動し損失を被った場合に委託者が選択する1つの方策であり,両建てそのものを禁止する法令は特に存在せず,両建てとなった売り買い双方の建玉を異時かつ適時に仕切ることによって結果的に利益が出ることもあることから,両建てを行うことそのものが直ちに違法であると評価すべきものではない。しかしながら,両建ては,新たに同額の対立する建玉をすることに他ならないから,委託証拠金が新たに必要となる他,委託手数料も倍額必要となる。また,両建てをする場合には,いったん仕切って新たに建玉した場合よりも,相場の上昇と下降の双方(いわゆる相場の天井と底)を見通す必要があることから,単に売りあるいは買いの一方の建玉をする場合よりも,仕切りのタイミングに関して難しい判断が必要とされる。そこで,両建ての上記のような経済的効果や仕切りのタイミングの困難性についてまで十分に理解し ,単に売りあるいは買いの一方の建玉をする場合よりも,仕切りのタイミングに関して難しい判断が必要とされる。そこで,両建ての上記のような経済的効果や仕切りのタイミングの困難性についてまで十分に理解していない委託者に対し,商品取引員及びその外務員が,既存の建玉を仕切ることをせずに両建てをするよう勧誘することは,結局危険性を告げないまま取引をさせる場合と同視することができ,違法と評価すべきものである。 しかるに,丁の上記のA2ないしA8の取引においては,両建てとなった売り買い双方の建玉を同時に仕切っている。両建ては双方の建玉を異時に仕切ってこそ有効となる取引手法であって,これは,委託者である丁にとっては,委託手数料を建玉を仕切った場合の倍額負担することになるだけの無意味かつ不利益な取引と言わざるを得ない。 この点,己は,両建てを同時に仕切ることは普通はないと証言する一方で,本件取引において両建てを同時に仕切ったことがあるなら,それは,両建てで建玉をしておくよりももっといいチャンスがあり,両建ての建玉を全部仕切って資金をそちらへ回そうとする場合だと思う旨の証言をしているが,委託証拠金現在高帳(甲3)を見ても,平成8年6月25日や同月26日ころ出金がなされたわけでもなく,別紙委託勘を見ても,このころ神戸ゴム以外の銘柄への建玉が始められているわけでもないのであって,上記の両建ての同時仕切りがなされたころ,丁に,神戸ゴム以外の銘柄や他の目的に資金を振り向ける必要があったとは認められない。むしろ,上記のとおり,同月26日には,神戸ゴムの売建玉を再び建てて売り直しをしており,証拠(甲3等)からは,その後約1か月専ら神戸ゴムの取引を行っていることが認められる。 また,己は,陳述書(乙40)において,平成8年6月25日の神戸ゴムの取引について,「当限 り直しをしており,証拠(甲3等)からは,その後約1か月専ら神戸ゴムの取引を行っていることが認められる。 また,己は,陳述書(乙40)において,平成8年6月25日の神戸ゴムの取引について,「当限安納会と産地の対日オファーから失望投げにて急落しました。投げが出てくると,相場は急反発する為,私と丁氏は,急いで売玉を手仕舞う様話し受注しました。」と記載している。しかしながら,この記載は,商取年報(乙34の1)の「当限安納会と産地の対日オファー価格の下落から失望投げを誘いにて急落。」という記載がそのまま本件取引の理由として記載されたものであって,実際に己と丁との間で取引の受発注に際して同陳述書記載のような何らかのやり取りがあったとはにわかに信じ難い。しかし仮に,陳述書記載のとおりのやり取りが丁と己の間にあったとするならば,同日の神戸ゴムの買建玉の仕切り(A6,A7)を己は丁から受注せずに取引をなしたことになる。また,「相場は急反発する」という陳述書記載の相場観(相場に対する見通し)を持ちながら,A4,A5の売建玉と共にA6,A7の買建玉を,同日同場節で仕切るのは不合理と言わざるを得ない。また,己は,同月26日の神戸ゴムの取引については,陳述書に,「産地安に続落のあと,円安や値頃買で反発した為,私は丁氏と買玉もはずす様相場観を話し,受注しました。その後,当限納会値安と産地の受給緩和見通しにより,丁氏は売建を受注しました。」と記載しており,これも商取年報に記載されている事項がそのまま本件取引の根拠として記載されたものであるが,仮に同陳述書に記載されたとおりのやり取りが丁と己の間にあったとするならば,同日の神戸ゴムの売建玉(A5)の仕切りを己は丁からの受注なく行っており,また,A5とA8の両建ての同日における仕切り及びA5とA9,A10の売り おりのやり取りが丁と己の間にあったとするならば,同日の神戸ゴムの売建玉(A5)の仕切りを己は丁からの受注なく行っており,また,A5とA8の両建ての同日における仕切り及びA5とA9,A10の売り直しのいずれについても,これを行う合理的理由,必要性はなかったということになる。 以上のとおり具体的に検討しても,上記のA2ないしA10の各建玉に関する取引は,丁にとっての利益という観点からは合理的な説明のつかない無意味な取引であったと言わざるを得ない。 また,例えば,平成9年5月22日,B125,B126,B127の東京トウモロコシの売建玉が仕切られた後に,B131,B141の東京トウモロコシの売建玉が建てられており,いわゆる売り直しがなされている。 直しとは,既存の建玉を仕切って同一日内に同じ建玉をすることであり,例えば,直しを1回行えば建玉をそのまま保持する場合と比較して倍額委託手数料がかかるというように,直しを行うことは,いたずらに委託手数料の負担を増加させるものであることから,チェックシステム等においては,指導の対象である特定売買の1つとされており,本件取引当時には「商品取引員の受託義務に関する取引所指示事項」において原則禁止するところとなっていたものである。 本件取引全体においては,直しが多数回存在しているところ(原告らの計算では50回,被告の計算では36回),被告は,計算上の利益が乗っている場合,その利益を現実のものとするため,既存の建玉を仕切ると共に更に値上がるとの判断の下に買い直しを,値下がるとの判断の下に売り直しをすることは何ら不合理なことではなく,利益が乗っている建玉を仕切って利益を現実化させ,取引自体の中味,すなわち帳尻累計の中味を改善することは,相場の戦法として当然であると主張する。 しかるに,上記のB125, 不合理なことではなく,利益が乗っている建玉を仕切って利益を現実化させ,取引自体の中味,すなわち帳尻累計の中味を改善することは,相場の戦法として当然であると主張する。 しかるに,上記のB125,B126,B127とB131,B141の東京トウモロコシの建玉の売り直しにおいては,B125,B126,B127の各建玉は値洗い損が出ている時点で仕切られている。被告の上記主張の当否はともかく,これら取引は,被告の主張にさえ沿わない無意味な取引と言わざるを得ない。 さらに,本件取引は,平成9年5月ころから同年7月ころにかけて取引回数が特に多く,例えば,平成9年5月においては,取引回数は62回(仕切りの回数すなわち別紙委託勘の行数をもって取引回数とする。ただし,建落ちが月をまたぐときには,落ち(仕切り)も当該月の回数として数える。),特定売買の回数は29回(別紙委託勘参照。直しを「直」,途転を「ド」,日計りを「日」,両建てを「両」,手数料不抜けを「不」とし,各取引の左に記載)であり,売買回転率は1日平均約2回と異常に高く,特定売買率は約47パーセントと著しく高率となっている。しかしながら,本件全証拠に照らしても,丁に,この時期,このような多数回の特定売買を含む取引を頻繁に繰り返すべき合理的な事情が存在したとは認められない。己の陳述書においては,これらの取引のうちトウモロコシの取引について,商取年報に記載されている事項がそのまま取引の根拠として記載されているが,この記載はにわかには信用できない上,かえって,同陳述書の記載及び己の証言からは,上記のような特定売買や頻繁な売買を行うにあたって,己が丁に情報提供したという商取年報に記載されているような事項の他には,取引判断の根拠とされた事情がなかったこと,例えば,丁固有の事情等は存在しなかったことが認 定売買や頻繁な売買を行うにあたって,己が丁に情報提供したという商取年報に記載されているような事項の他には,取引判断の根拠とされた事情がなかったこと,例えば,丁固有の事情等は存在しなかったことが認められる。また,商取年報に記載されている事項は,ほとんどが,売り買い,建落ち,いずれの取引とも結び付けて説明することが可能なものであり,もし仮に,己の陳述書記載のとおりの根拠や己とのやり取りによって丁が本件取引の判断を行い,上記のような多数の特定売買を含む売買を頻繁に行っていたとするならば,そのこと自体から,丁が両建て,直し,日計り等の特定売買の意味を十分に理解していないこと,及び,己が,自ら提供した情報や相場観によって,いたずらに委託手数料の負担を増加させる取引を誘導したことが推認できる。 以上のとおり,本件取引はその取引の内容を個別に検討しても,丁の利益という観点からは合理的な説明のできない不合理な取引が多数存在する。 c 加えて,証拠(乙52)によれば,丁は,本件取引開始当時における丁と被告の本社顧客サービス部の壬との電話でのやり取りにおいて,壬が「慎重に取引をお願いします。」と何度か述べるのに対し,丁は,「よく見とってもらわにゃあな。 わしが,いくら慎重にやってもあかんのやで。あんたの方で,よく見とってもらわなあかんの。」「わしが慎重にやっとんやない,やり方が分からへんのやで,あんたの方が慎重にやってもらわなあかんねやわ。」「いろんなね証文とか何とかあっても,それは形式であってね。実際は,その本筋は,あんたの方の営業マンの人が,ちゃんと,よう見とってもらわなあかんの。」と述べており,このことから,丁が,被告従業員の判断に依存して取引を行おうという姿勢の強い委託者であったことが推認できる。また,己においても,丁に対し,相場動向や相場観 見とってもらわなあかんの。」と述べており,このことから,丁が,被告従業員の判断に依存して取引を行おうという姿勢の強い委託者であったことが推認できる。また,己においても,丁に対し,相場動向や相場観を伝えて助言はしたと証言しており,上記bで認定した特定売買等が,専ら丁の判断によってなされ,己が丁の注文を取り次いだだけのものではないことは明らかである。 d 上記aないしcで認定した事実を総合すれば,己は,丁が己の判断に依存して取引を行っていることを希貨として,本件取引の当初から,手数料稼ぎを目的として過当売買を誘導し,いわゆる「転がし」を行っていたことが明らかに認められる。 なお,被告は,丁は,本件取引当時,高齢であったとは言え,防災警備業を営む会社等複数の会社を経営していた現役の経営者であって,判断能力は十分にあった上に,平成7年2月16日から平成8年4月17日まで,庚において,取引金額6500万円の,米国産大豆の商品先物取引を行って,損失を出した経験が,また,平成8年1月23日から同年10月末日まで,辛において,取引金額1645万円の,トウモロコシ,ゴム,金,銀,白金等の商品先物取引を行った経験があり,取引経験や取引への知識・理解力も十分にあったのであるから,己に誘導されるまま自主的判断に基づかず取引を行ったということはなく,本件取引における特定売買率,売買回転率,手数料化率の高さ,取引回数の多さ等は,取引経験者であった丁が,日々刻々と変動する相場への対応として取引を行った結果に過ぎないと主張する。 しかしながら,被告の主張するとおり丁において被告と本件取引を開始する約1年2か月前から庚において商品先物取引を行った経験があったとしても,前記の壬とのやり取り(乙52)における丁の言動や丁が「今度の人はすばらしい人だから,今度は儲かる いて被告と本件取引を開始する約1年2か月前から庚において商品先物取引を行った経験があったとしても,前記の壬とのやり取り(乙52)における丁の言動や丁が「今度の人はすばらしい人だから,今度は儲かる。」旨述べていたという原告丙の供述に照らせば,丁が,庚における取引においても,外務員の判断に依存して取引を行っていた可能性は否定できず,被告主張の取引経験をもって直ちに,本件取引当時丁が商品先物取引の知識,理解力を十分に有していたとは推認できず,丁に商品先物取引の取引経験があることは,上記の認定を妨げるものではない。また,上記a及びbで認定した本件取引の客観的内容は,特定売買等の取引の意味を十分に理解している委託者が自主的な判断で取引を行ったならば,およそ行わないであろうと考えられる取引内容であり,仮に,被告が主張するように,丁がこれら個々の取引をなすことを了解していたとしても,丁がその取引の意味を十分に理解していたものとは到底認められない。 以上より,丁の本件取引において,己は,手数料稼ぎを意図して過当売買を行い,結果的に丁に多額の損害を与えたのであるから,己の行為は全体として違法性を帯びており,不法行為を構成すると認められる。また,己の不法行為は,被告の事業の執行につき行われたものであるから,被告は己の使用者として不法行為責任を負う。 イ原告丙の本件取引について(ア) 無断売買,一任売買について原告丙は,己に対し,玉を指定して取引をしたことは1度もなく,全ての取引について己に一任しており,本件取引は原告丙の指示なく行われていた旨主張し,本人尋問においてこれに沿う供述をするが,同人の供述内容は,同人が被告の本社顧客サービス部の壬と3回電話でやり取りをしているという客観的事実(乙53)に反する点があることや己,戊の証言等に照らして 本人尋問においてこれに沿う供述をするが,同人の供述内容は,同人が被告の本社顧客サービス部の壬と3回電話でやり取りをしているという客観的事実(乙53)に反する点があることや己,戊の証言等に照らして,たやすくは信用できず,本件全証拠によっては,原告丙の本件取引が,原告丙の了解なく行われた無断売買,一任売買であったとまでは認めることができない。 (イ) 無意味な反復売買,過当売買原告丙の本件取引は,別紙委託勘記載のとおりであり,別紙委託勘によれば,取引期間は,平成8年8月30日から平成9年11月10日までの437日,取引回数は,48回である。また,特定売買の回数は,合計で少なくとも15回あることは当事者間に争いがない(取引回数及び特定売買の数え方は,ア(ウ)a記載の方法と同様とする。なお,原告らは,原告丙の本件取引と丁の本件取引が,同一の担当者によってなされたものであること等から,原告丙の取引のいずれが特定売買に当たるかは,丁の取引とも関連付けて見るべきであると主張するが,原告丙と丁の担当者が己であり,原告丙の本件取引の委託証拠金を丁が出捐し,原告丙と丁との間で,利益が出れば原告丙のものに,損が出れば丁がこれを負担する旨の合意がなされていたという事情があったとしても,原告丙名でなされた本件取引における委託者は丁ではなくあくまで原告丙であるから(これは当事者間に争いがない。),当該取引が特定売買に当たるか否かは,丁の取引と関連付けてではなく,原告丙の取引それ自体において見るべきである。よって,原告らの主張する特定売買の認定方法を,当裁判所は採用しない。)以上の数値を基に計算すると,原告丙の本件取引における特定売買比率は,48回中15回で,約31.3パーセントとかなりの高率であり,売買回転率は,437日中48回で,月平均約3.3回( 用しない。)以上の数値を基に計算すると,原告丙の本件取引における特定売買比率は,48回中15回で,約31.3パーセントとかなりの高率であり,売買回転率は,437日中48回で,月平均約3.3回(1か月30日として計算する。)とチェックシステム等の基準である月平均3回を超えている。また,前記争いのない事実等の(9)に記載したとおり,帳尻損金と帳尻益金の差額は852万2559円であるが,これに対し,委託手数料合計は268万200円であり,手数料化率は約31.4パーセントと,チェックシステム等の基準である10パーセントと比較しても相当に高い割合である。 以上に認定した特定売買比率,売買回転率,手数料化率の高さ,及び,原告丙は,本件取引を行う以前に商品先物取引の経験がなく,商品先物取引に習熟していなかったこと,己は,原告丙の本件取引と同時期になされた丁の本件取引においても,上記のとおり明らかな「転がし」を行っていることなどに照らせば,本件取引も,己が,原告丙の利益を考慮せず,被告の利益を図る方向で誘導したものであり,手数料稼ぎを目的とした過当売買であると推認できる。 (ウ) 新規委託者保護義務違反被告の受託業務管理規則(乙45)第6条によれば,商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託にあっては,外務員の委託者の建玉枚数に係る判断枠は20枚とされ,当該委託者から当該判断枠を超える建玉要請があった場合は,別途にその当否を審査するものとされ,その方法と基準については,「商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託に係る取扱い要領」(以下「取扱い要領」という。)が別途に定められ,取扱い要領では,当該委託者の資質,資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数の範囲において受託を行うよう,100枚以内は管理サービス部責任者(支店長),101枚以上は い要領」という。)が別途に定められ,取扱い要領では,当該委託者の資質,資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数の範囲において受託を行うよう,100枚以内は管理サービス部責任者(支店長),101枚以上は総括責任者(取締役本部長)が審査を行いその適否について判断し,妥当と認められる範囲内において受託するものとされている。 上記の受託業務管理規則及び取扱い要領は,被告の社内の内部基準であるが,社団法人全国商品取引所連合会の「受託業務指導基準」において,受託者の保護育成措置等を社内規則に定めこれを遵守しないといけないと定められていることを受けて,被告は,受託業務管理規則等に新規委託者保護に関する規定を設けており,上記「受託業務指導基準」及び被告の受託業務管理規則等の趣旨に照らすと,新規委託者保護規定は,商品取引員に共通する規則であり,商品先物取引が極めて投機性の高い取引であることに鑑み,新規委託者が取引開始当初の習熟期間中に不測の損害を被らないように取引限度枚数の観点から保護するとの趣旨で設けられた規定であると解されるから,新規委託者との間において,習熟期間中に過大な取引を行わないということは,商品取引員の委託者に対する一般的な注意義務の内容をなすものというべきであり,商品取引員及びその従業員において,その注意義務に著しく違反するときは,社会的相当性を逸脱し,不法行為を構成するものと解するのが相当である。 そこで本件を検討するに,原告丙は,商品先物取引きの経験のない委託者であったところ,原告丙の本件取引においては,当初から23枚の建玉(中部輸入大豆の買建玉)がなされており,また,取引開始後3か月後の平成8年10月28日までに建玉された建玉枚数は合計88枚に達している。 この点,委託者調書(乙20の1,2)によれば,被告は,顧客カード(乙1 買建玉)がなされており,また,取引開始後3か月後の平成8年10月28日までに建玉された建玉枚数は合計88枚に達している。 この点,委託者調書(乙20の1,2)によれば,被告は,顧客カード(乙19)に記載された原告丙の収入,資産状況を基礎に,被告の受託業務管理規則及び取扱い要領所定の審査手続きによって,平成8年8月30日,原告丙の資金力,判断力に照らして,同人を建玉枚数,50枚までの取引適格者であると認定し,同年9月17日,同人の資金力,理解力,判断力に照らして,同人を建玉枚数100枚までの取引適格者であると認定していることが認められる。 しかし,己は,被告が上記審査の際に基礎とした原告丙の顧客カード上の,原告丙には預貯金が6000万円,年収が2000万円,投下可能資金が2000万円ある旨の記載は,己ら被告従業員が原告丙から聴取したものではなく,己が丁と談話をしていた際,己が「丙さんの預貯金はどんなもんですかね。」と聞いたところ,丁がちょっと笑い,己が「5,6千万ですか。」と聞くと,丁が,ニコッと笑って何も言わなかったことから,その程度の額ではないかと思って,預貯金6000万円と書き,また,丁が,大体月平均200万円位を丁の経営する会社の社員である原告丙に対し支払っているというようなことを言っているのを聞いて,そこから推測して年収2000万円と書いたものであることを証言している。 かかる己の証言によれば,原告丙に,預貯金が6000万円,年収が2000万円,投下可能資金が2000万円がある旨の原告丙の顧客カード上の記載は,原告丙の資金力を調査することなく記載されたものであったと言わざるを得ず,また,本件全証拠に照らしても,本件取引当時,原告丙に同顧客カード記載の資力が実際にあったとは認められない。さらに,被告は,委託者調書において,原 することなく記載されたものであったと言わざるを得ず,また,本件全証拠に照らしても,本件取引当時,原告丙に同顧客カード記載の資力が実際にあったとは認められない。さらに,被告は,委託者調書において,原告丙の理解力,判断力も,20枚を超える建玉枚数を認める根拠としているが,本件全証拠に照らして,建玉枚数20枚までという新規委託者保護規定を適用しないことを相当とするほど,原告丙に商品先物取引に対する理解力,判断力があったと認めることもできない。 以上の認定からすれば,被告の上記審査は,被告において,原告丙の資金力の調査を行っていないにもかかわらず,原告丙に資金力があることを根拠とするなどして20枚を超える建玉枚数を認めたものであるから,同審査は形骸的なものであって,被告の受託業務管理規則及び取扱い要領に実質的に違反するものと言わざるを得ない。 よって,原告丙の本件取引において,委託者の建玉枚数の審査の基礎となる顧客カードに,原告丙から聴取もせずに同人の資産,収入を過大に記載し,原告丙に本件取引当初から20枚を超える建玉をさせた己の行為は,上記の注意義務に著しく違反するものであって,不法行為を構成すると評価できる。 (エ) 以上のとおり,原告丙の本件取引において,己は,新規委託者保護義務に違反し,かつ,手数料稼ぎを意図した過当売買を行って,結果的に原告丙に損害を与えたのであるから,己の行為は全体として違法性を帯びており,不法行為を構成するものと言うべきである。また, 己の不法行為は,被告の事業の執行につき行われたものであるから, 被告は己の使用者として不法行為責任を負う。 (2) 争点(2)についてア丁の損害額証拠(甲3,乙11,12)によれば,丁が被告に支払った金員の総額は,9878万0771円であり,丁が被告から支払を受 者として不法行為責任を負う。 (2) 争点(2)についてア丁の損害額証拠(甲3,乙11,12)によれば,丁が被告に支払った金員の総額は,9878万0771円であり,丁が被告から支払を受けた金員の総額は,3150万5530円であると認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 よって,丁が被告に支払った金員から丁が被告から支払を受けた金員を控除した残額6727万5241円が,己の上記の不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。 イ原告丙の損害額証拠(甲4,乙22,23)によれば,原告丙が被告に支払った金員の総額は,1371万1000円であり,原告丙が被告から支払を受けた金員の総額は,518万8441円であると認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 よって,原告丙が被告に支払った金員から原告丙が被告から支払を受けた金員を控除した残額852万2559円が,己の上記一連の不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。 なお,原告丙の本人尋問の結果によれば,原告丙の本件取引の委託証拠金は丁が出捐しており,原告丙と丁との間で,利益が出ればその利益は原告丙のものにし,損が出れば丁がこれを負担する旨の合意がなされていたことが認められるが,被告との関係においては,原告丙名でなされた本件取引の委託者は丁ではなくあくまで原告丙であるから(争いのない事実),原告丙名でなされた本件取引について己が行った不法行為によって発生した損害は,原告丙の損害と評価することができ,上記の委託証拠金の出捐関係や原告丙と丁間の合意の有無は,上記の損害の認定に影響を及ぼすものではない。 ウ丁についての過失相殺上記で認定したとおり,丁は,己による手数料稼ぎを目的とした過当売買によって,本件取引において6727万5241円の損害を被った 害の認定に影響を及ぼすものではない。 ウ丁についての過失相殺上記で認定したとおり,丁は,己による手数料稼ぎを目的とした過当売買によって,本件取引において6727万5241円の損害を被ったと認められる一方,被告は,本件取引によって,合計6848万8340円の委託手数料を得ており,丁の上記損害は,己の不法行為によって,委託手数料収入として被告の利益に転化していると認められる。 確かに,丁は,本件取引を行う以前に商品先物取引で損失を受けた経験を有しており,本件取引開始の当たっては,被告の本社顧客サービス部の従業員である壬から「最終的には自らの判断で取引を行うようお願いします。」と言われたり,被告から注意事項が記載された「商品先物取引委託のガイド」(乙24)を受け取るなどしていながら,安易に己の判断に依存して取引を行って利益を得ようと考えた点において,非常に軽率であったと認められる。また,原告丙の本人尋問の結果,己,戊の証言等によれば,丁は,自身が本件取引を行うだけでなく,自らが経営する会社の営業部長であった原告丙にも商品先物取引を行うことを勧め,同人の取引のための資金まで出捐していたことも認められ,丁が商品先物取引を行うことについて,相当積極的であったことも認められる。 しかしながら,己は,丁が己の判断に依存して取引を行おうとしていることに乗じて,手数料稼ぎを意図した無意味な反復売買を行い,その結果,丁に6727万5241円の損害を負わせる一方,被告に上記損害額を超える6848万8340円の手数料収入を得させたのであり,委託手数料の額は取引ごとに定まっていて,本件取引の結果,6848万8340円の委託手数料の負担を丁が負うことを己は承知の上であえて反復売買を行っていたのであるから,本件取引における6727万5241円の損 の額は取引ごとに定まっていて,本件取引の結果,6848万8340円の委託手数料の負担を丁が負うことを己は承知の上であえて反復売買を行っていたのであるから,本件取引における6727万5241円の損害の発生は,己と丁との関係において見れば,専ら己の不法行為に起因するものと評価でき,同損害は己の使用者である被告に全額負担をさせることが相当である。よって,丁の本件取引における不法行為については,過失相殺を行わない。 エ原告丙についての過失相殺証拠(乙16,53,原告丙本人,証人己,同戊等)及び争いのない事実によれば,原告丙は,丁の経営する防災警備会社の営業部長であり,本件取引開始の数週間前に設立されたアンティークショップを経営する会社である株式会社癸の代表取締役であったこと,原告丙は,丁から,「己の部下の成績を上げるために原告丙の名を貸してくれないか。」「利益が出たらあなたに上げる。損をしたときは全部私が責任を持つ。」等と言われて,本件取引を行うことを誘われたこと,原告丙と丁は,本件取引で利益が出た場合には,その利益を原告丙の丁からの借入金の返済や,丁が本件取引のために出捐した金員の返済に充てる旨を合意していたこと,原告丙は,本件取引開始に当たって「私は商品先物取引及び株式の経験がありませんが担当者から十分説明を受け先物取引の投機性,仕組等理解し,この度,私の意志で自らの責任において自己資金の範囲内で先物取引に参加したいと思いますのでよろしくお願い申し上げます」という文書を自筆で記載し被告に差し入れていること,原告丙は,被告から送られてきた本件取引の売買報告書等の書面を開封せずに全て丁に渡し,その内容を見ることを怠っていたこと,原告丙は,丁が本件取引開始前に商品先物取引を行って損失を出していることを知っていたこと,被告の本社顧客サー 本件取引の売買報告書等の書面を開封せずに全て丁に渡し,その内容を見ることを怠っていたこと,原告丙は,丁が本件取引開始前に商品先物取引を行って損失を出していることを知っていたこと,被告の本社顧客サービス部の従業員壬から電話を受けて,壬から取引の最終的な決断は自分で行うように注意を受けたことがあること,原告丙の本件取引においては,特定売買比率は約31.3パーセント,売買回転率は月平均約3.3回,手数料化率は約31.4パーセントと,いずれも丁の取引の場合と比べれば率が低いこと,原告丙が本件取引自体によって被った損害の額が852万2559円であるのに対し,委託手数料は268万200円であり,原告丙の被った損害には売買損金571万8800円等取引自体から発生した損失も含まれていることが認められる。 以上の認定事実からすれば,原告丙が被った損害には売買損金等取引自体による損失も含まれている上,原告丙の本件取引において己が行った過当売買は,丁の取引と比較すれば過当性の程度は低く,己の不法行為の違法性の程度は丁の取引の場合ほど高くはないこと,原告丙は,丁が商品先物取引を行って損失を受けたことも知っており,商品先物取引を行えば損失を受けることがあること自体は承知していたと考えられること,原告丙は,丁から,本件取引の資金は同人が出すから等と勧められて本件取引を始めたもので,被告従業員に勧められたというよりは丁に勧められて本件取引を始めたという面が強く,また,取引開始にあたって己の指示に従って自筆文書を差し入れるなどしており本件取引を始めることについて決して消極的ではなかったこと,原告丙は,被告従業員である壬から自己の判断で取引するよう言われながらも,丁や己に実質的に本件取引をまかせていたことが認められ,これらの事情を総合すれば,原告丙の本件取引の損 的ではなかったこと,原告丙は,被告従業員である壬から自己の判断で取引するよう言われながらも,丁や己に実質的に本件取引をまかせていたことが認められ,これらの事情を総合すれば,原告丙の本件取引の損害の発生と拡大については,原告丙にも過失があると言わざるを得ない。 上記で認定した事実その他一切の事情を総合考慮すると,原告丙の過失割合は7割とするのが相当である。 したがって,原告丙の損害額は,上記イの852万2559円の3割に当たる255万6767円(円未満切捨て)となる。 オ弁護士費用本件の全事情を斟酌すれば,丁の相続人である原告甲及び原告乙に対して支払うべき弁護士費用のうち,本件不法行為による損害として原告甲及び原告乙が請求しうる額は,合計200万円を相当とし,原告丙に対して支払うべき弁護士費用のうち,本件不法行為による損害として原告丙が請求しうる額は,25万5676円を相当とする。 カよって,原告甲及び原告乙の被相続人丁の財産に対する相続分はそれぞれ2分の1であるから,本件不法行為による損害として原告甲及び原告乙が請求しうる額は,それぞれ3463万7620円(6927万5241円の半額,円未満切捨て)であり,本件不法行為による損害として原告丙が請求しうる額は,281万2441円である。 (3) 以上の次第で,原告甲及び原告乙の請求は理由があるからこれを認容し,原告丙の請求は,281万2443円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成11年11月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,原告丙のその余の請求には理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判 を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,原告丙のその余の請求には理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判官山下美和子

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