令和6年9月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第21011号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和6年7月8日判決 主文 1 被告は、原告に対し、275万円及びこれに対する令和3年12月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを25分し、その23を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、本判決の確定した日から30日以内に、別紙1記載の取消及び謝罪広告を、別紙2記載の方法で1回掲載せよ。 2 被告は、原告に対し、3300万円及びこれに対する令和3年12月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、参議院議員の地位にある原告が、令和3年12月16日に被告が発行した週刊誌に掲載された記事により原告の社会的評価が低下し、3000万円の精神的損害及び弁護士費用相当額300万円の損害を被ったと主張して、被告に対し、民法723条に基づく名誉回復処分として、謝罪広告の掲載を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、上記損害額合計3300万円及びこれに対する不法行為の日である令和3年12月16日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。以下、引用の際には「前提事実⑴ア」などと表記する。)⑴ 当事者ア原告は、平成16年7月の初当選以 求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。以下、引用の際には「前提事実⑴ア」などと表記する。)⑴ 当事者ア原告は、平成16年7月の初当選以来、参議院議員の地位にある者である。 イ被告は、日本全国に52万部販売されている週刊誌「週刊文春」の制作、発行及び販売などを目的とする株式会社である。 ⑵ 被告による記事の掲載被告は、令和3年12月16日、「週刊文春」(2021年12月23日号。以下「本件雑誌」という。)を発行し、その中で「自民「大臣候補」が溺れる中国人秘書とカネ」と題する記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。本件記事は、以下のような内容等を含むものである。(甲1)ア本件記事の最初の見開きの上部では、本件記事の表題が左右2ページにわたって大きく表示され、表題の左に原告の写真、X氏とされる女性の写真及びX氏が使う名刺との説明が付された名刺の写真等が並び、表題の右に車中で顔を寄せ合う二人との説明が付された人影の写真(以下「本件写真」という。)及び原告とX氏が並び立つ写真が配置されている。 イ表題下部には本文よりも大きな文字でリード文が記載されているところ、上記リード文には①「迫り来る中国への対抗が課題の岸田政権。その足元で国会議員が2年前から中国人女性を「外交秘書」に据え、親密な関係となった。」との記載(以下、⑵において「①」などと番号を付した記載内容を「本件記載①」などという。)がある。 ウ本文中には、②「B氏の傍らに、ひときわ目を惹く中国人女性が寄り添うようになったのは約二年前。」との記載、③「Cに二人で一カ月」との小見出し、④「ここに彼女の名刺がある。肩書には「B事務所外交顧問兼外交秘書」と記され、左上にはB氏の顔写真も印刷さ 性が寄り添うようになったのは約二年前。」との記載、③「Cに二人で一カ月」との小見出し、④「ここに彼女の名刺がある。肩書には「B事務所外交顧問兼外交秘書」と記され、左上にはB氏の顔写真も印刷されている。仮に X氏としておこう。」との記載、⑤「X氏を気に入ったB氏は、次第に距離を縮めた。やがて、彼女に秘書の名刺や、議員会館内を自由に行き来できる通行証を与え、事務所に頻繁に出入りさせるようになった。」との記載、⑥「「BさんとXさんは宣言下ではありましたが、前日に都内から成田へと向かい一泊。翌朝には中国人社長らとゴルフを楽しんでいました。 その晩も成田に宿泊すると、次の日に二人は東京を経由し、愛知へと向かったそうです。愛知で一泊後、翌日は別の中国人社長とゴルフを楽しんだ。 その夜、愛知にもう一泊すると、次の日は朝から委員会を控えていたため急いで東京・永田町へと戻ったようです。この日の夜にはさらに別の中国人社長との会食もセッティングされており、結局、四泊五日、″中国尽くし″の出張を二人で過ごしたのです」」との記載、⑦「家主らに見送られながら迎車のタクシーに乗り込むと、後部座席の奥側、上座に先にX氏を乗せるなど、B氏の行動は秘書に対するそれではない。徐々に身を寄せ合う二人。やがて二人の後頭部のシルエットは、一つになった――。」との記載、⑧「X氏は、いつしか『Bさんの子どもを産みたい』とまで言いだすようになった」との記載、⑨「二人の関係は、円満だった家庭をも狂わせていく。」との記載、⑩「B氏はX氏にのめりこむにつれ、奥さんと目も合わせなくなったそうです」、⑪「夫婦は完全に決裂した」、「我慢の限界を迎えた奥さんが、議員宿舎の荷物をまとめて実家に帰ってしまった」、「奥さんはすでに弁護士を立て、離婚に向けて動いている」との記載がある。 本件 です」、⑪「夫婦は完全に決裂した」、「我慢の限界を迎えた奥さんが、議員宿舎の荷物をまとめて実家に帰ってしまった」、「奥さんはすでに弁護士を立て、離婚に向けて動いている」との記載がある。 本件記事の最初の見開きには、本件記事の表題と本件記載①ないし本件記事⑤までが掲載されている。 エ本件雑誌の目次部分の冒頭で、本件記事の紹介として本件記事の表題及びリード文並びにX氏の写真が掲載されている。 2 争点及びこれに対する当事者の主張の要旨 ⑴ 争点⑴(本件記事の摘示事実等)(原告の主張)本件記事の表題、写真及び文脈からすると、本件記載③は原告がX氏と共にホテルCに1ヶ月間にわたって滞在・宿泊していたとの事実を、本件記載⑤は原告がX氏に議員会館内を自由に往来可能な通行証を与え、議員事務所に頻繁に出入りさせていた事実を、本件記載⑥は、原告が令和3年5月上旬ゴルフのためX氏と一緒に成田及び愛知に行き、この間の4泊いずれもX氏と同室に宿泊したとの事実を、本件記載⑦は原告が令和3年7月16日、X氏とタクシーに乗った際、身体を密着させ、さらに顔を重ね合わせたとの事実を、本件記載⑧はX氏が原告の子を産みたいと知人に発言した事実を、本件記載⑨ないし本件記載⑪は原告とX氏の関係を原因として原告とその妻との夫婦関係が破綻した事実をそれぞれ摘示するものと理解される。そうすると、本件記事は、「参議院議員であり妻帯者でもある原告と同人の秘書を務める中国人女性X氏との間に男女関係が存在する」との事実を摘示し、その旨の意見ないし論評を加えるものである。 (被告の主張)本件記事の個別具体的な記述に照らせば、㋐原告がX氏に対して秘書の名刺や議員会館内を自由に行き来できる通行証を与えていた事実、㋑原告がX氏を同伴 加えるものである。 (被告の主張)本件記事の個別具体的な記述に照らせば、㋐原告がX氏に対して秘書の名刺や議員会館内を自由に行き来できる通行証を与えていた事実、㋑原告がX氏を同伴して日本人支援者や中国系企業幹部らとの会食・ゴルフを繰り返していた事実、㋒原告の妻が実家に帰ってしまった事実を摘示事実ないし前提事実として、原告とX氏とが「親密な関係」であるとの意見ないし論評を加え、これを問題視するものである。 ⑵ 争点⑵(本件記事の違法性等)(被告の主張)本件記事は、国家機密等が中国などに流出する恐れがあることを問題視して、中国との関係性や原告を含む代議士のあるべき行動を市民が深く考え、 不適切な対応を批判するために原告の行状等を報じたものであって、公共性及び公益目的が認められる。本件記事の掲載に当たっては、原告の事務所関係者、本件記事内でX氏と表記されるD(以下「訴外D」という。)の知人や原告の妻の母に対する確度の高い情報に基づく長期間の取材を経ており、その過程で現に本件記事の取材を担当したE(以下「E」という。)らにおいてタクシーに同乗する原告と訴外Dとの親しい関係性を目の当たりにした。 そうすると、本件記事が報じた各事実はいずれも真実であり、少なくとも被告において真実と信じるにつき相当の理由がある。 (原告の主張)本件記事は、参議院議員である原告と中国人女性が男女関係にあるという私的行状に関する単なる興味本位の目的の記事にすぎず、公共性及び公益目的は認められない。 また、訴外Dは原告がかつて経済活動への協力を依頼していた中国籍の人物であるが、訴外Dに対する名刺の作成交付、議員会館内通行証の交付といった事実を除き本件記事記載のいずれの事実も真実ではない。本件記事の摘示事 は原告がかつて経済活動への協力を依頼していた中国籍の人物であるが、訴外Dに対する名刺の作成交付、議員会館内通行証の交付といった事実を除き本件記事記載のいずれの事実も真実ではない。本件記事の摘示事実が真実ではないこと、原告の事務所関係者なる人物に対する安易な信用に依拠した取材経過に疑問がある上、裏取りも不十分であることからすると、全国に52万部も発行され60年以上の歴史を有する週刊誌の発行元である被告において、摘示事実を真実であると信ずるに相当な理由があったとは到底認められない。 ⑶ 争点⑶(原告の損害)(原告の主張)原告は、被告によって全国52万部の発行数に及ぶ著名な週刊誌上に原告の名誉を毀損する本件記事を掲載され、令和4年7月に実施された参議院議員選挙における選挙活動を始めとしたその後の政治活動において多大な悪影響を受けた。原告の被った精神的損害を金銭に換算すると、その損害額は3 000万円であり、弁護士費用相当損害金は300万円を下らない。 (被告の主張)原告の主張を争う。 ⑷ 争点⑷(名誉回復措置としての謝罪広告の要否)(原告の主張)本件記事による原告の社会的評価の低下を回復するためには、別紙1記載のとおりの取消及び謝罪広告を、別紙2記載の方法で掲載させることが必要である。 (被告の主張)原告の主張を争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(以下、引用の際には「認定事実⑴」などと表記する。)証拠(各項末尾に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告の取材経過ア Eは、令和3年2月頃、知人から原告が中国人秘書と親密な関係にある旨の情報提供を受け、原告の事務所関係者に取材を試みることとし、同 旨によると、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告の取材経過ア Eは、令和3年2月頃、知人から原告が中国人秘書と親密な関係にある旨の情報提供を受け、原告の事務所関係者に取材を試みることとし、同年3月下旬、原告の事務所関係者A(以下「A氏」という。)と面会して、㋐原告の事務所には訴外Dという中国人女性が出入りしており、訴外Dは「B事務所外交顧問兼外交秘書」と書かれた名刺を所持し、議員会館内通行証の発行も受けていること、㋑原告は訴外Dの紹介により連日のように中国人社長や中国人実業家と会食をしており、上記の会食の場などで訴外Dは原告のパーティー券を大量に売りさばいていること、㋒原告と訴外Dとの関係は約2年前から始まり、原告の妻は2人の間に男女関係があるのではないかと疑念を抱き2人の様子を探っている一方で、原告は、原告の妻のことを疎ましく思っており話もしないようであること、㋓原告は参 議院議員補欠選挙の応援に地方に行く際にも訴外Dを同道していたこと、㋔原告と訴外Dとの関係を見た事務所の関係者からハニートラップを懸念して「B先生大丈夫?」と心配されることもあったことといった情報提供を受けた。(乙1、2、11・1、2頁、証人E1、2、12、13頁)イ Eは、令和3年4月8日、前日にA氏から原告と訴外Dとが同席する会食があるとの情報を得て、東京都江戸川区に所在する寿司屋に張り込んでいたところ、同日午後5時前に原告の公用車に乗った原告と訴外Dが到着し、同日午後7時過ぎに会食相手とみられる男女に見送られながら、タクシーに乗って店を後にした。また、Eは、A氏から、原告が同年4月中に上記以外にも少なくとも2度にわたって訴外Dを同道して会食に出ていたとの情報提供を受けた。(乙3、11・2、3頁、証人E3、13頁)ウ Eは、令和3年5月中 、Eは、A氏から、原告が同年4月中に上記以外にも少なくとも2度にわたって訴外Dを同道して会食に出ていたとの情報提供を受けた。(乙3、11・2、3頁、証人E3、13頁)ウ Eは、令和3年5月中旬、A氏から、原告が訴外Dとともに、同月7日夜に千葉県成田市付近で前泊、翌8日にゴルフをプレー、翌9日の日中に2人で議員事務所に立ち寄った後、愛知県豊橋市に向かってそこで宿泊、翌10日にゴルフをプレーして豊橋に宿泊、翌11日に帰京し、総務委員会に出席後、東京都fにオープンした香港料理店で会食をしたとの情報提供を受け、実際に上記香港料理店を確認すると、店頭に原告の祝い花が飾られていた(乙4、11・3頁、証人E3、4、7、14、15頁)。 エ Eは、令和3年6月中旬、訴外Dの相談相手を取材し、同人から訴外Dが「Bさんの子供を産みたい」などと述べるほどに原告との関係性が深いとの情報提供を受けた(乙11・3頁、証人E4、15、16頁)。 オ被告の記者であるF(以下「F」という。)は、令和3年7月16日、Eが情報提供を受けたA氏とは別の人物から、原告が紹興酒などの中国酒の輸入・卸販売をしている株式会社の社長(中国人)宅でのパーティーに参加するとの情報提供を受けた。そこで、EやFら複数の記者が現地で張り込んでいたところ、午後5時前に原告の公用車に乗った原告と訴外Dが 到着した。そして、午後9時過ぎには迎車のタクシーが到着し、後部座席に訴外D、原告の順番で乗り込みタクシーが出発したため、Eら複数の記者は、グループ通話をしながら、これを追いかけたところ、タクシーを追跡していた記者から「キスしてる!」との発言があった。(乙5、6、11・3、4頁、証人E4~6、11、12、16~19、23、24頁)カ前記オの後も、Eは、A氏から、原告が訴外Dを クシーを追跡していた記者から「キスしてる!」との発言があった。(乙5、6、11・3、4頁、証人E4~6、11、12、16~19、23、24頁)カ前記オの後も、Eは、A氏から、原告が訴外Dを同道して頻繁に中国人実業家らと会食を行っている旨の情報や、原告の妻が議員宿舎の荷物をまとめて宮崎の実家に帰ってしまったとの情報の提供を受けた。そして、令和3年12月上旬には被告の「週刊文春」編集部内の会議において、原告に関する記事を掲載する方向性で最終の取材の詰めを行うこととなった。 (乙11・4頁、証人E7頁)キ記者であるG(以下「G」という。)は、令和3年12月12日、原告の妻が帰ったとされる宮崎の実家を訪問して、原告の妻の母に対し、以下のとおり問を発し、回答を得た。 問:中国人女性秘書との関係が問題視されていたりとか? 答:はい。 問:離婚寸前とか聞いていて。 答:いや、あの正直なところ、一応もう(こちらに)帰っています、もう。 問:事実関係だけ聞ければなというのがあって。一般的に、弁護士とかに相談しているっていうのもあると思うんですが。 答:はい、相談して、帰ってきました。もう弁護士さんに投げてですね。 問:去年の政治資金パーティーなんかでも、奥様の姿が見えなくて、心配した人もいるとか。 答:そうだと思います、はい。 問:代わりに中国人秘書が仕切ってたとか。 答:はい、ええ。もう(娘が)帰ってきているということで、了解していただければいいかな……って。「帰っている」ということだけで、はい……(泣き出す)。帰っているということだけは確認がとれたということで許していただけたら……。(娘は)会える状態じゃなかったとしていただければ……。そういう精神状態っていう 」ということだけで、はい……(泣き出す)。帰っているということだけは確認がとれたということで許していただけたら……。(娘は)会える状態じゃなかったとしていただければ……。そういう精神状態っていうか……。 また、Eは、同月11日、訴外Dに対して取材を行い、原告との関係性について尋ねたが、訴外Dは、自身が原告の愛人であることや原告に対する恋愛感情があることをいずれも否定した。さらに、被告の「週刊文春」編集部の記者らは、同月13日、参議院議員会館の車寄せで原告を取材したが、原告は、書面での質問を求めた。そこで、Eは、原告事務所に対して質問状を送付し、訴外Dとの不倫関係の有無や原告の妻が訴外Dとの不倫の疑いも理由の一つとして宮崎の実家に帰り、原告との間で離婚に向けた話合いを始めた事実の有無などについて尋ねたところ、原告は、翌14日、回答書により全くの事実無根であると回答した。(乙7、8、11・4~6頁、証人E7~9、19、20頁)ク被告は、訴外Dを「X氏」と表記して本件記事を完成させ、本件雑誌を発行した。 ⑵ 原告と訴外Dの関係性ア原告は、令和元年9月15日、原告が北海道にある株式会社Hの会社や工場を視察した際、これに同行していた訴外Dと知り合った。原告は、自民党の外交部会長を務め、議員外交にも力を注ぎ、地元である宮崎と中国との経済活動に関する相談も多く受けていたことから、中国語の通訳の仕事にも従事していた訴外Dに対し、自身の活動への協力を依頼するようになり、訴外Dは、原告の通訳としての同行、ビジネス関係で知り合った中国人の紹介などを行った。(甲8・2、3頁、9・2、3頁、証人D1、2、8、9、18、19頁、原告本人2、3、17~19頁) イ原告は、令和元年10月末頃、訴外Dの立場を明確にするため、訴外Dに対 などを行った。(甲8・2、3頁、9・2、3頁、証人D1、2、8、9、18、19頁、原告本人2、3、17~19頁) イ原告は、令和元年10月末頃、訴外Dの立場を明確にするため、訴外Dに対して「外交顧問兼外交秘書」との肩書きを付した名刺を交付した。また、原告は、訴外Dが参議院議員会館に出入りすることがあったことから、入館の際の便宜のため、令和3年2月、訴外Dに対して参議院議員会館内通行証を発行した。(甲8・2、3頁、9・2、3頁、乙1、2、証人D2、3、8~12頁、原告本人3、4、14~17頁)ウ原告は、令和3年5月8日、訴外D及び中国人の企業家2名とともに成田でゴルフをした。その際、原告と訴外Dは、それぞれ別の中国人の企業家にゴルフ場まで送迎してもらっており、現地での宿泊もなかった。原告は、翌9日及び10日、愛知県へ向かい現地の支援者と会食するなどしているが、訴外Dはこれに同行していなかった。(甲4、5、8・4頁、9・4頁、証人D4、5頁、原告本人7~10頁)エ原告と訴外Dは、令和3年7月16日のgでの会食後、帰宅のためタクシーに同乗したが、hに議員宿舎がある原告が先に下車し、iに自宅のある訴外Dが、その後に下車した(甲8・5頁、9・4、5頁、証人D6、7頁、原告本人10、11頁)。 オ原告の政治資金パーティーが令和3年12月2日にホテルCで開かれ、その際には原告の娘2人が原告と一緒に招待客に対して挨拶をしており、訴外Dは自身の紹介者のアテンドを担当していた(甲2、8・3頁、9・3頁、証人D3頁、原告本人5頁)。 ⑶ 原告と妻との離婚協議原告の妻は、原告との離婚に向けて弁護士に依頼し、原告の妻の代理人は、原告に対し、令和3年9月10日付けで受任通知を送付した(乙9)。 2 判断基準出版 ⑶ 原告と妻との離婚協議原告の妻は、原告との離婚に向けて弁護士に依頼し、原告の妻の代理人は、原告に対し、令和3年9月10日付けで受任通知を送付した(乙9)。 2 判断基準出版物に掲載された記事の内容が人の社会的評価を低下させたといえるかどうかについては、このような記事の一般の読者の普通の注意と読み方とを基準 として判断すべきである(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 そして、上記判断の結果、記事内容が事実摘示により人の社会的評価を低下させる名誉毀損行為であったとしても、当該事実を摘示する行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合において、摘示された事実の重要な部分が真実であることが証明されたときは、当該行為には違法性はなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、また、上記事実が真実であることが証明されなくても、その行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、当該行為には故意又は過失がなく、不法行為は成立しないものと解される(最高裁判所昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁判所昭和58年10月20日第一小法廷判決・集民140号177頁参照)。 3 争点⑴(本件記事の摘示事実等)について前提事実⑵のとおり認められる本件雑誌及び本件記事の構成等によると、本件記事の一般の読者は、本件雑誌の目次及び本件記事の最初の見開きにある「自民「大臣候補」が溺れる中国人秘書とカネ」との表題、大きな文字のリード文中の、国会議員が「外交秘書」に据えた中国人と親密な関係となったとの本件記載①、表題の横にX氏と原告が並び立つ写真や車中で顔を寄せ合う二人との説明が付された人影の ネ」との表題、大きな文字のリード文中の、国会議員が「外交秘書」に据えた中国人と親密な関係となったとの本件記載①、表題の横にX氏と原告が並び立つ写真や車中で顔を寄せ合う二人との説明が付された人影の写った本件写真から、原告とX氏との間に男女の関係があるとの事実が摘示され、本件記事の見開きにある「Cに二人で一カ月」との小見出し(本件記載③)から、原告とX氏が一緒にホテルに長期滞在していたとの事実が摘示されていると理解すると認められる。そして、本件記事の一般の読者が本文を読み進めると、原告とX氏が成田及び愛知において合計4泊したとの記載(本件記載⑥)、タクシーで「徐々に身を寄せ合う二人。やがて二人の後頭部のシルエットは、一つになった――。」との記載(本件記載⑦)、X氏が「Bさんの子どもを産みたい」と発言したとの記載(本件記載⑧) について、本件記事の表題、写真及びリード文の摘示内容を踏まえ、原告がX氏とホテルの同室で連日宿泊し、原告とX氏がタクシー内でキスをし、X氏が原告に対して性的関係を望むような愛情を抱いているとの内容と理解するといえる。また、原告とX氏との関係が原告の円満な家庭を狂わせていくとの記載(本件記載⑨)、原告がX氏にのめり込むにつれ妻と目も合わせなくなったとの記載(本件記載⑩)、「夫婦は完全に決裂した」、「我慢の限界を迎えた奥さんが、議員宿舎の荷物をまとめて実家に帰ってしまった」、「奥さんはすでに弁護士を立て、離婚に向けて動いている」との記載(本件記載⑪)から、原告とX氏との関係によって原告とその妻との間の夫婦関係が破綻し、別居に至ったとの事実を摘示したものと理解するというべきである。 そうすると、本件記事は、国会議員であり妻帯者でもある原告と同人の秘書を務める中国人女性X氏との間に男女関係が存在するとの事実を摘示す に至ったとの事実を摘示したものと理解するというべきである。 そうすると、本件記事は、国会議員であり妻帯者でもある原告と同人の秘書を務める中国人女性X氏との間に男女関係が存在するとの事実を摘示するものと認められる。 そして、上記事実摘示は、一般の読者に対し、原告について、国会議員という公的な地位にありながら、自らの地位を利用して妻以外の者と男女関係を持つような不適切な行為をし、家庭をないがしろにする人物であるとの印象を与え、原告の社会的評価を大きく低下させるものということができる。 被告は、本件記事の具体的な記述内容に照らすと、本件記事は、原告とX氏とが「親密な関係」にあるとの事実を摘示し、これを問題視するにとどまると主張するが、上記のとおり一般の読者は、本件記事冒頭の表題、写真及びリード文から受けた印象に強く影響を受けながら本文を読み進めることとなる上、個々の記載内容も原告とX氏との男女関係を示唆するものということができるから、本件記事の後半部分において情報漏えいの危険性や政治資金規正法上の問題点を指摘する記述(甲1)があったとしても、上記に説示したとおりの一般読者の受ける上記印象が払拭されるものとはいえず、被告の主張を採用することはできない。 4 争点⑵(本件記事の違法性等)について⑴ 本件記事の公共性及び公益目的本件記事は、前提事実⑵のとおり、国会議員である原告の行状等を批判的に取り上げるもので、真実の内容であれば国民の知る権利に資するから、公共の利害に関する事実に係るものといえる。また、本件記事では原告と中国人秘書X氏との男女関係という行状等を皮切りに、中国への情報漏えいや政治資金規正法上の問題についても指摘するものであるから(甲1)、原告が主張するような原告の私的行状に関する単なる興味本位の記事 国人秘書X氏との男女関係という行状等を皮切りに、中国への情報漏えいや政治資金規正法上の問題についても指摘するものであるから(甲1)、原告が主張するような原告の私的行状に関する単なる興味本位の記事とはいえず、専ら公益を図る目的に出たものと認められる。 ⑵ 摘示事実の真実性本件記事中のX氏は訴外Dを指すから(認定事実⑴ク)、本件記事掲載による名誉毀損行為の違法性が阻却されるために必要となる真実性の直接の立証対象は、原告と訴外Dとの間に男女関係が存在するとの事実である。 本件記事のうち、本件記載④及び本件記載⑤についてはおおむね真実であると認められる(認定事実⑵ア、イ)。しかしながら、被告も認めるとおり、原告と訴外DがホテルCに二人で1か月も滞在した事実(本件記載③)は存在せず、認定事実⑵ウのとおり、原告と訴外Dが成田と愛知において合計4泊した事実(本件記載⑥)も認められない。また、会食後のタクシー車内において原告と訴外Dがキスした事実(本件記載⑦)について、被告はその際に当該タクシーをバイクで追跡中にその後方から撮影したという本件写真(乙6)を示したり(証人E5、6、11、12、16~18、23、24頁)、被告の記者の一人が原告と訴外Dがキスしている場面を目撃した旨主張する。しかしながら、本件写真は、シャツの左の袖をまくり上げ、左手を後頭部に当てている男性と思われる人物と、男性より小柄な、女性と思われる人物とがタクシーの後部座席で隣り合って座っている状況をタクシー後方のガラス越しに撮影したものであり、少なくとも男性は前方を向いており、 写真に写る人物らがキスをしている様子はうかがえない。本件記載⑦の事実に係る証拠は、このように不明瞭な本件写真及び追跡中の記者の「キスしてる!」との発言(認定事実⑴オ)のみであり 向いており、 写真に写る人物らがキスをしている様子はうかがえない。本件記載⑦の事実に係る証拠は、このように不明瞭な本件写真及び追跡中の記者の「キスしてる!」との発言(認定事実⑴オ)のみであり、これらによって、本件記載⑦に係る事実を真実と認めることはできない。さらに、訴外Dが原告の子供を産みたいと発言した事実(本件記載⑧)について、Eが訴外Dの相談相手から情報提供を受けたとの事実は認められるが(認定事実⑴エ)、情報提供者と訴外Dとの関係性及び情報提供を受けた経緯や状況を具体的に明らかにする主張立証はなく(証人E15、16頁)、伝聞の内容に係る事実が真実であると認めることはできない。 そうすると、原告と訴外Dとの間に男女関係が存在するとの事実を直接示すような事実のみならず、これを推認させるような事実はいずれも認められず、原告が訴外Dに外交顧問兼外交秘書との名刺を交付し、参議院議員会館へ出入りさせている事実(本件記載④及び本件記載⑤)が男女関係を推認させるものでないことは明らかであるから、本件記事の摘示事実が真実であるとは認められない。 ⑶ 摘示事実の誤信相当性認定事実⑴によると、本件記事に関する取材はその端緒や経過において、原告の事務所関係者であるA氏からの情報提供に大きく依存しているものということができるところ、A氏からの情報提供は、訴外Dが原告の活動に協力していること、原告が訴外Dに外交顧問兼外交秘書との名刺を交付し、参議院議員会館へ出入りさせていること(本件記載④及び本件記載⑤)や、原告と訴外Dが同席する会食の日時など、事務所関係者として当然に知り得る内容であり、その情報に基づいて取材した結果としても、原告と訴外Dが会食を共にしていることが確認されたにとどまるのであって、原告と訴外Dとの間の男女関係の 日時など、事務所関係者として当然に知り得る内容であり、その情報に基づいて取材した結果としても、原告と訴外Dが会食を共にしていることが確認されたにとどまるのであって、原告と訴外Dとの間の男女関係の存在をうかがわせる具体的な事実が明らかになったわけではない。そして、成田及び愛知での宿泊の点など、A氏の誤った情報提供に 基づいて裏付けを欠いたまま記事が作成されていることから、A氏の提供に係る情報について十分な裏付けが行われていたとは認められない(認定事実⑴ウ、同⑵ウ)。また、FがA氏とは別の人物から提供された情報も、令和3年7月16日に原告と訴外Dがパーティーに参加するという内容であり、それに基づく取材によっても、前記⑵のとおり、原告と訴外Dとの間の男女関係を合理的に推認できる事実が明らかにされたということもできない(認定事実⑴オ)。 被告は、原告及び訴外Dのほかにも、訴外Dの相談相手や原告の妻の母に対しても取材を試みているが、前記⑵のとおり訴外Dの相談相手の情報提供の内容は信用できないし、Gと原告の妻の母とのやり取りは認定事実⑴キのとおりであるところ、原告の妻の母は、Gの「中国人秘書との関係が問題視されていたりとか?」及び「代わりに中国人秘書が仕切ってたとか。」との問いかけに対して正面から回答しておらず、最終的に原告の娘が弁護士に相談した上で実家に帰ってきているということが確認されたのみであると認められる。 このような被告の取材経過からすると、被告は、A氏からの情報提供に安易に依拠して、原告とX氏との間に男女関係があるものと決めつけ、客観的な裏付けを欠いたまま、本件記事を掲載したといわざるを得ないのであり、被告において摘示事実を真実と信ずるについて相当の理由があったとは認められない。 ⑷ まとめ以上によ めつけ、客観的な裏付けを欠いたまま、本件記事を掲載したといわざるを得ないのであり、被告において摘示事実を真実と信ずるについて相当の理由があったとは認められない。 ⑷ まとめ以上によると、本件記事は、参議院議員であり妻帯者でもある原告と同人の秘書を務める中国人女性X氏との間に男女関係が存在するとの事実を摘示して、違法に原告の名誉を毀損するものであり、同記事の掲載について、被告には不法行為が成立する。 5 争点⑶(原告の損害)について 前記3及び4のとおり、本件記事は、参議院議員である原告にとって国民からの信任を失いかねない不行状を摘示事実とするものであるにもかかわらず、その内容は真実とは認められず、本件雑誌の出版者である被告において真実と信ずるについて相当な理由も認めらないものであった。 他方、本件記事は、日本全国に広く販売されている本件雑誌の冒頭の記事として掲載され(前提事実⑴イ、同⑵エ)、その内容が広く伝播されたことがうかがわれ、本件雑誌が原告の出馬する参議院議員選挙の約半年前というタイミングで発行されたことも考慮すると(甲7、8・6頁、原告本人13頁)、本件記事は、原告の国会議員としての社会的評価を根拠なく低下させるだけでなく、その地位を不当に脅かすものでもあったというべきである。 以上の事情を考慮した上、被告の不法行為により原告の被った精神的損害を金銭に換算すると、その額は250万円を下らないというべきであり、同額の10%に相当する25万円は被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金であると認められる。 6 争点⑷(名誉回復措置としての謝罪広告の要否)について前記5のとおり、被告の不法行為によって原告が被った精神的損害は、被告の損害賠償により一定程度慰謝されることとな ると認められる。 6 争点⑷(名誉回復措置としての謝罪広告の要否)について前記5のとおり、被告の不法行為によって原告が被った精神的損害は、被告の損害賠償により一定程度慰謝されることとなり、さらなる名誉回復措置が必要であるとまではいえないから、原告の謝罪広告掲載の請求は認められない。 第4 結論以上の次第で、原告の請求は被告に対して275万円及びこれに対する令和3年12月16日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲で理由があるから、その限度で認容し、その余はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第37部 裁判長裁判官杜下弘記 裁判官安川秀方 裁判官髙岡遼大 別紙1、2は掲載省略
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