令和3(ワ)522 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月11日 水戸地方裁判所
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判決文本文9,915 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して、120万4520円及びこれに対する平成29年2月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体である原告が、被告らに対し、原告が県内の水海道浄水場で使用する活性炭の再生業務について、平成28年度に実施した一般競争入札 において、被告らを含む16の事業者が、事前に再生業務の供給予定者及び入札価格を調整する談合行為をし、原告は、かかる談合行為がなければ形成されたであろう落札価格と、現実の落札価格との差額分につき損害を被ったなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害金合計120万4520円(損害金元本109万4520円、弁護士費用11万円)及びこれに対する不法行為の日より後の日 である平成29年2月10日から支払済みまで民法(平成29年度法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番 を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は、地方自治法1条の3第1項及び第2項の定める普通地方公共団体であり、茨城県公営企業の設置等に関する条例1条1項1号に基づき、地方 公営企業として、地方公営企業法2条1項1号の定める水道事業を設置し、 経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長であり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 の定める水道事業を設置し、 経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長であり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 原告は、水道事業用施設として、水海道浄水場(以下「本件浄水場」という。)を含む10の浄水場を所有している。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告クラレは、化学繊維、合成樹脂、活性炭等の製造、売買等を目的とする株式会社である。被告クラレは、平成29年1月1日、クラレケミカル株式会社を吸収合併し、その権利義務を承継した(以下、「被告クラレ」には吸 収合併前のクラレケミカル株式会社も含むものとする。)。 (2) 窓口業者浄水場向けの活性炭の納入や再生等を行う業者(メーカー)は、これらの業務に関して地方公共団体等が実施する入札に、自ら参加するほか、各地方公共団体等の有資格者名簿に登録のある他の業者を自社の代理店として入札に参 加させている(以下、メーカーが自社の代理店として入札に参加させる業者を「窓口業者」という。)。 (3) 原告による入札原告は、本件浄水場における生物活性炭再生調査業務に関し、平成28年11月4日、一般競争入札(以下「本件入札」という。)を実施した。本件入札は、 被告クラレの窓口業者である筑宝産業株式会社(以下「筑宝産業」という。)が、515万4800円で落札した(甲3、甲4)。 原告は、筑宝産業との間で、同月7日、委託費を556万7184円(うち41万2384円は消費税及び地方消費税)、履行期間を同月8日から平成29年1月13日までとする、本件浄水場における生物活性炭再生調査業務の委 託契約(以下「本件業務委託契約」 184円(うち41万2384円は消費税及び地方消費税)、履行期間を同月8日から平成29年1月13日までとする、本件浄水場における生物活性炭再生調査業務の委 託契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結した(甲5)。 (4) 原告による委託費の支払原告は、筑宝産業に対し、平成29年2月10日、本件業務委託契約に基づき、業務委託費556万7184円を支払った(甲7)。 (5) 課徴金納付命令等ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙業者一覧中番号1、2、 4、5、7、8、9、10、12、13、14、15、16の業者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、立入検査を行った。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭 について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、被告本町化学に対して課徴金1億6143万円、被告クラレに対して課徴金2155万円の納付を命じた(甲1、甲2)。なお、被告クラレは、 公正取引委員会の調査開始日以降に、同委員会に違反行為の内容を報告し、資料を提供したため、課徴金が30パーセント減額された(同条第12項)。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定 せず自主的に供給するこ 覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定 せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令をした(甲1、甲2)。 エ被告本町化学は、公正取引委員会の上記各命令を不服として、東京地方裁判所に対し、上記各命令の取消しを求める訴えを提起した。 2 争点 本件の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。)は、原告が実施する活性炭の入札に、自社が供給する活性炭(自社の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を 参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保するため、自社の活性炭を供給する供給予定者を事前に決定し、その他の業者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意(以下「本件基本合意」という。)をした。そして、遅くとも平成25年10 月24日以降、かかる合意の下に、①被告本町化学は、活性炭の入札に先立ち、16社のうち被告本町化学を除く他の15社(以下「15社」という。)と個別に面談をし、15社に対して、入札物件、自社の活性炭を供給した者、受注者となった窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめた入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中 から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいず ②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中 から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物件の供給予定者として割り振り、④供給予定者の窓口業者が提示する入札価格を、供給予定者若しくは被告本町化学が単独で、又は両者の協議により決定し、⑤供給予定者以外の業者は、供給予定者の窓口業者の入 札予定価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イ被告らを含む16社は、本件入札についても、上記同様に、事前に被告クラレを供給予定者と決定し、その入札予定価格を515万4800円として、被告クラレの窓口業者である筑宝産業にその額で入札するように指示し、他の業者は自社の窓口業者にそれよりも高い価格で入札をさせた。 ウこのように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本 件各入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの行為は、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達することを妨げる談合行為であり、不法行為を構成する。 (被告本町化学の主張)ア供給予定者は、従来から活性炭メーカーの間で定められたルールによって 決定されていた。被告本町化学は、当該ルールに従って供給予定者が決定されるに当たって、活性炭メーカーからの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者となることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、 その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果を他の活性炭メーカーに連 らない場合には、活性炭供給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、 その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果を他の活性炭メーカーに連絡していた。被告本町化学が行った行為は、事務的、機械的な連絡に過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない。 イ活性炭メーカーは、被告本町化学が連絡行為等をしなくとも、メーカー間 で直接連絡を取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なものではなかった。被告本町化学は、活性炭メーカーに手足として利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不法行為責任を負わない。 (被告クラレの主張)ア原告は、①被告らを含む活性炭供給事業者らが本件入札について供給予定 者及び入札価格の調整行為を行ったことに加え、②入札に参加した窓口業者 による応札行為がその調整行為の因果が及んだものであることを具体的に主張立証する必要がある。また、その際には、③入札等に参加した全ての窓口業者らによる応札行為が、上記調整行為を受けて行われたものであることを主張立証しなければならない。 イ本件入札には、本件基本合意から離脱していたダイネン株式会社(以下「ダ イネン」という。)の窓口業者である株式会社鹿島商店(以下「鹿島商店」という。)が参加しているが、ダイネンが被告らによる個別調整行為に協力し 基本合意から離脱していたダイネン株式会社(以下「ダ イネン」という。)の窓口業者である株式会社鹿島商店(以下「鹿島商店」という。)が参加しているが、ダイネンが被告らによる個別調整行為に協力していたことの主張立証がない。また、本件入札における鹿島商店の入札価格は、落札業者である筑宝産業を除く他の参加業者の入札価格よりも著しく低く、筑宝産業の落札価格に近接しており、筑宝産業と鹿島商店との間で価格 競争が行われていたといえる。したがって、公正な競争は阻害されておらず、原告の法的利益は侵害されていない。 (2) 原告の損害額(原告の主張)ア被告らの行為により原告が被った損害は、現実の落札価格(以下「現実落 札価格」という。)から、当該不法行為がなければ形成されたであろう落札価格(以下「想定落札価格」という。)を差し引いた額である。そして、16社は、本件入札以前から、活性炭の入札案件について供給予定者及び入札価格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなくなった平成29年2月21日以降に実施された活性炭の入札における落札価 格から、本件入札の想定落札価格を推認するべきである。 本件浄水場については、平成29年度以降、本件入札と同種の入札を実施していないが、原告は、原告が所有、運営する他の浄水場について、毎年活性炭再生業務の一般競争入札を実施している。かかる入札において、参加者は、活性炭再生業務の1池当たりの単価を入札価格として提示し、原告は、 落札業者と、その単価に基づき、期間をおよそ1年とする再生業務委託単価 契約を締結し、再生業務量に応じた委託費を支払っている。そこで、これら他の浄水場に関する入札の落札結果を基に、本件入札の想定落札価格を推認するべきである。他の浄水場に する再生業務委託単価 契約を締結し、再生業務量に応じた委託費を支払っている。そこで、これら他の浄水場に関する入札の落札結果を基に、本件入札の想定落札価格を推認するべきである。他の浄水場における平成28年度から令和2年度の間の活性炭再生業務の一般競争入札の落札結果は、別紙契約一覧のとおりである。 同別紙の「契約単価」は、落札価格(各浄水場における活性炭再生業務の1 池当たりの委託費単価。ただし税抜き。)であり、「全浄水場の平均単価[1㎥当り]」は、全浄水場の池1㎥当たりの落札価格の平均である。 本件浄水場の1池の容量は52.6㎥であるから、本件入札の想定落札価格は、414万1356円である。 イ本件入札による原告の損害額の元本は、109万4520円である。その 計算方法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、想定落札価格と現実落札価格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを原告が支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害元本となる。 ウ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、弁護士費用11万円は、 本件と相当因果関係のある損害である。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」という。)産の活性炭の輸入価格が下落し、重油価格が変動するなど、本件入札時と平成29年度以降とでは、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等に顕著な変動があり、平成29年度以降 に実施された活性炭の入札における落札価格から想定落札価格を推認するのは相当ではない。 イ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成29年度以降の他の浄水場についての入札の落札価格をもって損害額を算定するとしても、 ら想定落札価格を推認するのは相当ではない。 イ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成29年度以降の他の浄水場についての入札の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札価格と予定価格(予定価格とは、原告が、茨城県企業局会 計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ること ができない。)の比率(落札率)をもって想定落札価格を推認するべきである。落札率をもって想定落札価格を算定すると、1467万2686円となり、本件入札の落札価格を超えるため、本件入札で原告に損害は生じていない。 ウ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される場合であっても、上 記同様に、損害の算定は控えめにするべきである。 (被告クラレの主張)原告は、他の浄水場における入札の落札価格を基に、本件入札の想定落札価格を推定しているが、本件入札は「生物活性炭再生調査業務委託」についてのものであるのに対し、原告が比較対象とする入札は「粒状活性炭再生業務委託」 についてのものである。生物活性炭は、粒状活性炭と異なり、再生の難易度が高く、再生処理に多大な手間を要するため、入札仕様書に記載された再生用法、再生収率、求める活性炭の品質にも差異がある。また、「再生調査業務」については、調査である以上業務の見通しは不安定となり、受注を検討する業者としては、保守的な見積もりをせざるを得ない。そのため、「生物活性炭再生調査業 務委託」の入札価格は「粒状活性炭再生業務委託」のそれよりも高額になるのが自然であり、原告が主張するように、他の浄水場の「粒状活性炭再生業務委託」の入札価格から、本件入札の想定落札価格を推定することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 後掲の証拠及び弁 、原告が主張するように、他の浄水場の「粒状活性炭再生業務委託」の入札価格から、本件入札の想定落札価格を推定することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 基本合意16社は、遅くとも平成25年10月24日以降、次のとおり、東日本地区所在の地方公共団体が発注する浄水場(本件浄水場を含む。)における粉末活性炭の納入、粒状活性炭の再生等の業務の入札について、事前に供給予定者を 決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入 札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるようにしていた(甲16、甲17)。 ア被告本町化学の営業担当者は、15社の担当者と、毎年11月頃から翌年1月あるいは2月頃までの間に、面談を実施していた。かかる面談において、 被告本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況等を取りまとめたもの。)を示すなどしながら、15社から、どの物件において活性炭の納入及び再生業務を行う業者(供給予定者)となりたいかの希望を 聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各業者の担当者にこれを伝えて了承を取っていた。 イ供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定 者が相談して決めていた。かかる入札価格については するかの方針を決め、各業者の担当者にこれを伝えて了承を取っていた。 イ供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定 者が相談して決めていた。かかる入札価格については、被告本町化学又は供給予定者が、当該窓口業者に連絡していた。 ウ被告本町化学は、供給予定者の窓口業者の入札価格を基に、それよりも高い価格を協力価格として定め、供給予定者以外の営業担当者に伝達し、他の営業担当者は自社の窓口業者に当該協力価格で入札に参加させ、供給予定者 が落札できるよう協力していた。 (2) 基本合意からの離脱ダイネンは、平成28年1月14日、本件基本合意から離脱した(甲1、甲2、甲16の1、甲16の2)。 (3) 本件入札の参加事業者 平成28年11月4日実施の本件入札に参加した事業者及びその入札価格 は、別紙本件入札業者一覧記載のとおりであった。なお、鹿島商会は、ダイネンの窓口業者であり、ダイネン以外の本件入札参加業者は、いずれも本件基本合意に参加している業者の窓口業者であった(甲4)。 (4) 同種の入札原告は、本件浄水場における、本件入札の対象業務と同種の業務に関し、平 成28年1月27日、一般競争入札を実施した。かかる入札は、アドバンテック日成株式会社が1890万円で落札した(乙D8、乙D9)。 2 争点(1)(被告らの不法行為の成否)被告らが、本件基本合意に基づき、本件入札においても、事前に供給予定者を被告クラレとし、その窓口業者の入札価格を決め、他の本件入札参加者には当該 入札価格よりも高い協力価格で入札させる個別調整行為を行っていたのであれば、被告らの行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害するものとして、不法行為に 入札価格よりも高い協力価格で入札させる個別調整行為を行っていたのであれば、被告らの行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害するものとして、不法行為に当たり得る。 しかしながら、本件入札には、ダイネンの窓口業者である鹿島商会が参加しており(上記1(3))、当初本件基本合意に参加していたダイネンは、本件入札より 約10か月前の平成28年1月14日に本件基本合意から離脱していた(上記1(2))。そして、同月27日に実施された本件入札の前年の同種の入札は1890万円で落札されており(上記1(4))、本件入札においても、筑宝産業及び鹿島商会以外の入札参加者は、いずれも1890万円以上の価格で入札していた一方で、本件入札において、筑宝産業(被告クラレ)は515万4800円、鹿島商会(ダ イネン)は646万9800円と、同種入札の落札価格及び本件入札における他社の入札価格と比較して明らかに低廉な価格で入札をしている(上記1(3))。これに加えて、被告本町化学の営業担当者の公正取引委員会での調査時における供述調書(甲16の2)中には、ダイネンが本件基本合意から離脱して以降、ダイネンに活性炭の供給希望を聞いていた物件については、供給能力がありアウトサ イダーよりも低額での入札ができる被告クラレに戦ってもらおうと考えていた との旨の記載部分があることも併せ考慮すれば、本件入札における筑宝産業(被告クラレ)の入札価格は、本件基本合意から離脱し、アウトサイダーの立場となったダイネン(及びその窓口業者)が本件入札に参加する可能性があることを前提に、その入札価格に対抗し得るものとして被告らが設定したものであると考えられる。そして、筑宝産業(被告クラレ)及び鹿島商会(ダイネン)の入札価格 窓口業者)が本件入札に参加する可能性があることを前提に、その入札価格に対抗し得るものとして被告らが設定したものであると考えられる。そして、筑宝産業(被告クラレ)及び鹿島商会(ダイネン)の入札価格 が近接していることも踏まえれば、本件入札において、少なくとも両者の間では、価格競争の原理が相当程度働いていたものと認めるのが相当である。 以上によれば、仮に被告らが、本件入札について個別調整行為をしていたとしても、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益が侵害されたとは認めるに足りず、被告らが本件入札について不法行為責任を 負うとは認められない。 この点、原告は、ダイネンは、真に落札することを目的として本件入札に参加したものではないから、被告クラレとダイネンとの間で競争原理が働いていたとは認められないと主張する。しかしながら、上記のとおり、鹿島商会(ダイネン)の入札価格が、同種入札の落札価格や本件入札における他の参加者の入札価格に 比して著しく低く、筑宝産業(被告クラレ)の落札価格と近接していることに照らせば、ダイネンが落札を目的とせずに本件入札に参加したとは考え難く、その他、本件基本合意から離脱し約10か月が経過していたダイネンが、落札を目的とせずに本件入札に参加する理由もうかがわれない。したがって、原告の主張は採用できない。 第4 結論よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は のとおり判決する。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は、退官により、署名押印することができない。 裁判長裁判官三上乃理子

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