- 1 -平成25年3月6日判決言渡平成24年(行ケ)第10278号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年1月28日判決 原告日本ノンテックス株式会社 原告日本製箔株式会社 上記2名訴訟代理人弁理士奥村茂樹 被告東洋アルミエコープロダクツ株式会社 訴訟代理人弁護士平野和宏同弁理士藤井淳同弁理士山崎裕史主文 1 特許庁が無効2009-800070号事件について平成24年6月22日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実- 2 - 1 特許庁における手続の経緯等原告らは,発明の名称を「換気扇フィルター及びその製造方法」とする特許第3561899号(平成12年7月10日出願,平成16年6月11日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 被告は,平成21年3月30日,本件特許の無効審判請求(無効2009-800070号事件)をし,特許庁は,平成22年1月25日,「本件特許の請求項1~4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決をしたが,原告らがこれに対して審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10075号事件)を提起したところ,同裁判所は,平成23年1月31日,「特許庁が無効2009-800 る。」との審決をしたが,原告らがこれに対して審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10075号事件)を提起したところ,同裁判所は,平成23年1月31日,「特許庁が無効2009-800070号事件について平成22年1月25日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決(以下「取消判決」という。)をした。 取消判決確定後,特許庁は,無効2009-800070号事件について,平成23年8月23日付けで職権による無効理由通知をした上,同年12月7日,「特許第3561899号の請求項1~4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決をしたが,原告らがこれに対して審決取消訴訟を提起するとともに,平成24年1月18日,訂正審判を請求したところ,知的財産高等裁判所は,同年2月22日,「特許庁が無効2009-800070号事件について平成23年12月7日にした審決を取り消す。訴訟費用は原告らの負担とする。」との決定をした。 上記決定確定後,特許庁は,無効2009-800070号事件について,平成24年6月22日,「訂正を認める。特許第3561899号の請求項1~4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決(以下,単に「審決」というときは,この審決を指す。)をし,その謄本は同月30日,原告らに送達された。 2 特許請求の範囲- 3 -平成24年1月18日に請求された訂正審判の請求に基づく訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(甲7。以下,請求項1ないし4に係る各発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,それらを総称して「本件各発明」ということがある。別紙1の図1は,本件各発明で用いる金 のとおりである(甲7。以下,請求項1ないし4に係る各発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,それらを総称して「本件各発明」ということがある。別紙1の図1は,本件各発明で用いる金属製フィルター枠の一例を示す斜視図,図2は,図1の金属製フィルター枠に不織布製フィルター材が接着された,本件各発明に係る換気扇フィルターの一例を示す斜視図である。)。また,上記訂正審判の請求に基づく訂正後の本件特許の特許請求の範囲,発明の詳細な説明及び図面を総称して,「本件明細書」ということがある(甲6,甲7)。 【請求項1】金属製フィルター枠と,該金属製フィルター枠に設けられた開口を覆って,該金属製フィルター枠に接着されている不織布製フィルター材とよりなる換気扇フィルターであって,該不織布製フィルター材が汚れた場合,該不織布製フィルター材と共に該金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの換気扇フィルターにおいて,該金属製フィルター枠と該不織布製フィルター材とは,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されていることを特徴とする換気扇フィルター。 【請求項2】皮膜形成性重合体のガラス転移点が-10℃~+30℃である請求項1記載の換気扇フィルター。 【請求項3】金属製フィルター枠に設けられた開口を覆って,該金属製フィルター枠に不織布製フィルター材を接着して請求項1記載の換気扇フィルターを製造する方法において,該金属製フィルター枠に設けられた開口縁部及び/又は桟部の面に,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を塗布し,次いで該塗布面に該不織布製フィルター材を押圧すると共に加熱して,該不織布製フィルター材を該開口縁部及- 4 -び/又は該桟部に接着することを特徴 性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を塗布し,次いで該塗布面に該不織布製フィルター材を押圧すると共に加熱して,該不織布製フィルター材を該開口縁部及- 4 -び/又は該桟部に接着することを特徴とする換気扇フィルターの製造方法。 【請求項4】皮膜形成性重合体のガラス転移点が-10℃~+30℃である請求項3記載の換気扇フィルターの製造方法。 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しのとおりであり,その要点は以下のとおりである。 ア審判請求人(被告)は,無効理由4として,本件発明1~4は,平成23年8月23日付けの職権審理による無効理由の通知で示されたように,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである,したがって,その特許は特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである旨主張した。 イ本件発明1は,本件特許出願前に公開された特開平11-197428号公報(甲1。以下「引用例1」という。)記載の発明A(後記(2)アのとおり)及び本件特許出願前周知の事項より当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明2は,引用例1記載の発明A及び本件特許出願前周知の事項より当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明3は,本件特許出願前に公開された引用例1記載の発明B(後記(2)イのとおり),実願昭58-136320号(実開昭60-43929号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)記載の発明及び本件特許出願前周知の事項より当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は,本件出願前に公開された引用例1記載の発明B,引用例2記載の発明及び本件特許出願前周知の事項より当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウよって,無効理由1ないし 本件発明4は,本件出願前に公開された引用例1記載の発明B,引用例2記載の発明及び本件特許出願前周知の事項より当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウよって,無効理由1ないし3を検討するまでもなく,無効理由4について以上のとおりであるので,本件発明1~4についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号の規定に該当し,無効とすべきものである。 - 5 -(2) 審決が前提とする発明A,Bの内容は,以下のとおりである。 ア引用例1記載の発明A(以下,単に「発明A」という。)金属製で枠状のフィルター支持体24と,フィルター支持体24に形成された空間部28aを覆って,フィルター支持体24に接着されている「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」とよりなる換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」であって,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」の交換時期になったとき,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」のみを交換してこれを廃棄するタイプの換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」において,フィルター支持体24と交換用フィルタ23とは,接着剤を用いて接着されている,換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」。 イ引用例1記載の発明B(以下,単に「発明B」という。)金属製で枠状のフィルター支持体24に形成された空間部28aを覆って,フィルター支持体24に「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」を接着して,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」の交換時期になったとき,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フ びフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」を接着して,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」の交換時期になったとき,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」のみを交換してこれを廃棄するタイプの換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」を製造する方法でおいて,交換用フィルタ23をフィルター支持体24に接着剤を用いて接着する,換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」の製造方法。 (3) 審決が前提とする本件発明1と発明A,本件発明3と発明Bとの一致点,相違点は,以下のとおりである。 ア本件発明1と発明A(ア) 一致点「金属製フィルター枠と,該金属製フィルター枠に設けられた開口を覆って,該金属製フィルター枠に接着されている不織布製フィルター材とよりなる換気扇フィ- 6 -ルターであって,不織布フィルター材が汚れた場合,不織布製フィルター材を交換して廃棄する換気扇フィルターにおいて,該金属製フィルター枠と該不織布製フィルター材とは,接着剤を用いて接着されている,換気扇フィルター。」という点。 (イ) 相違点a 相違点1本件発明1では,不織布製フィルター材が汚れた場合,「不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの」換気扇フィルターであるのに対して,発明Aでは,「不織布製フィルター材のみを交換して廃棄するタイプの」換気扇フィルターである点。 b 相違点2本件発明1では,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている」のに対して,発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョ 布製フィルター材とが「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている」のに対して,発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている」かどうか明らかでない点。 イ本件発明3と発明B(ア) 一致点「金属製フィルター枠に設けられた開口を覆って,金属製フィルター枠に不織布製フィルター材を接着して,不織布製フィルター材が汚れた場合,不織布製フィルター材を交換して廃棄するタイプの換気扇フィルターを製造する方法において,不織布製フィルター材を金属製フィルター枠に接着剤を用いて接着する,換気扇フィルターの製造方法。」という点。 (イ) 相違点a 相違点α本件発明3では,不織布製フィルター材が汚れた場合,「不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの」換気扇フィルターであるのに対して,発明Bでは,「不織布製フィルター材の- 7 -みを交換して廃棄するタイプの」換気扇フィルターである点。 b 相違点β本件発明3では,「金属製フィルター枠に設けられた開口縁部及び/又は桟部の面に,接着剤を塗布し,次いで塗布面に不織布製フィルター材を接着する(不織布製フィルター材を該開口縁部及び/又は桟部に接着する)」のに対して,発明Bでは,「交換用フィルタ23をフィルター支持体24に接着剤を用いて接着する」点。 c 相違点γ本件発明3では,接着剤が「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤」であり,また,「押圧すると共に加熱して」接着を行うのに対して,発明Bでは,接着剤を用いているものの,「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤」であるかどうか,また,「押圧すると共に加熱して」 あり,また,「押圧すると共に加熱して」接着を行うのに対して,発明Bでは,接着剤を用いているものの,「皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤」であるかどうか,また,「押圧すると共に加熱して」接着を行うかどうか明らかでない点。 第3 当事者の主張 1 取消事由に係る原告らの主張審決には,以下のとおり,相違点2の認定の誤り(取消事由1),相違点1に関する判断の誤り(取消事由2),相違点2に関する判断の誤り(取消事由3)があり,本件発明1の容易想到性判断を誤ったものであり,また,本件発明2ないし4についても,同様の理由から,容易想到性判断を誤ったものである。これらの誤りは,審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。 (1) 相違点2の認定の誤り(取消事由1)審決は,本件発明1と発明Aの相違点2につき,「本件発明1では,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが『皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている』のに対して,発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,『皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている』かどうか明らかでない点。」と認定した。 - 8 -しかし,フィルター材交換タイプのフィルター材の場合,粘着テープ,磁石又は面ファスナー(鉤部材)を用いて,着脱自在にフィルター枠に係止するとの技術常識(甲11の【0011】,甲12の【0014】,甲13の【0015】,甲14の【0004】,甲15の【0012】)に基づけば,引用例1記載の接着剤とは,セロテープやガムテープと称される粘着テープのことを意味すると解釈すべきであり,引用例1の「接着剤」との記載から,抽象的に,接着剤と称される全てのものを含むかの如く上位概念的に解釈することは,技術常識に反 ープやガムテープと称される粘着テープのことを意味すると解釈すべきであり,引用例1の「接着剤」との記載から,抽象的に,接着剤と称される全てのものを含むかの如く上位概念的に解釈することは,技術常識に反し誤りである。すなわち,引用例1の段落【0019】には,「なお,接着剤,磁石等を用いて,フィルタ本体22の四隅等の周辺端部及びその他の所定箇所をフィルタ支持体24に固定してもよい。」と記載される。引用例1記載の換気扇フィルターは,フィルター材のみを交換するタイプのものであり,フィルター材はフィルター枠に対して着脱自在に固定されているから,技術常識に基づけば,引用例1記載の接着剤は,通常の状態で,フィルター枠からフィルター材を取り外し可能となしうる接着剤と解される。このことは,引用例1に,「接着剤」と「磁石」(これが,永久磁石のことであり,一時磁石や電磁石でないことは,技術常識に基づけば明らかである。)とが並列に記載され,永久磁石と同等なものと解されることからも,明らかである。 よって,引用例1記載の接着剤とは,永久磁石の代わりに,しばしば使用するセロテープやガムテープと称される粘着テープのことを意味すると解すべきである。 したがって,相違点2につき,「発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,『皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている』かどうか明らかでない点。」とした審決の認定は,技術常識に反し誤りである。 (2) 相違点1に関する判断の誤り(取消事由2)審決は,相違点1について,「一般に,不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの換気扇フィルターを使用することは,本件出願前周知の事項・・・であることから,引用例1記載の発明Aについて,『不織布製フィルター 金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの換気扇フィルターを使用することは,本件出願前周知の事項・・・であることから,引用例1記載の発明Aについて,『不織布製フィルター材のみを交換して廃棄するタイプの』換気- 9 -扇フィルター,つまり,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる換気扇フィルターを,『不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの』換気扇フィルターにすることは,当業者であれば容易になし得ることである。」,「物品を分別(分離)して廃棄すること自体,日常生活において普通に行われていることであり,また,引用例1記載の発明Aの上記『不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる』という事項を勘案すると,引用例1記載の発明Aについて,・・・『不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの』換気扇フィルターにする際,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる『不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの』換気扇フィルターとし,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離(分別)して廃棄することは,当業者であれば適宜行う設計事項であるということができる。」と判断した。 不織布製フィルター材と共に金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの換気扇フィルター(以下「全部廃棄タイプの換気扇フィルター」という。)と,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる換気扇フィルター(以下「フィルター材交換タイプの換気扇フィルター」という。)が,いずれも,本件特許出願前に周知 ルター」という。)と,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる換気扇フィルター(以下「フィルター材交換タイプの換気扇フィルター」という。)が,いずれも,本件特許出願前に周知であったことは認める。 しかし,全部廃棄タイプの換気扇フィルターはフィルター枠をフィルター材と共に廃棄するものであるのに対して,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターはフィルター枠を備え付けたままとし(備え付けられたフィルター枠はそのまま使用し)フィルター材のみを廃棄するものである点で異なる。すなわち,全部廃棄タイプの換気扇フィルターは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターのフィルター材に相当するものとして扱われ,全部廃棄タイプの換気扇フィルターのフィルター材とフィルター枠とは,分離不能な一体のものとして扱われる必要があるから,- 10 -フィルター材交換タイプの換気扇フィルターのフィルター材とフィルター枠のように着脱自在とすることは,当業者が適宜行う設計事項とはいえない。 したがって,相違点1について,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターとの根本的な相違を看過し,後者のフィルター材とフィルター枠との着脱自在の固定方式を,前者のフィルター材とフィルター枠との強固な接着に適用することが設計事項であるとした審決の判断は誤りである。 (3) 相違点2に関する判断の誤り(取消事由3)ア解決課題の認定の誤り及び容易想到性の判断の誤り-取消判決の拘束力-(ア) 審決は,本件発明1の解決課題に関して,「本件発明1は,『金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別し 1は,『金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能とする』ことを解決課題とし,『(換気扇フィルターにおいて),通常の状態では強固に接着させるが,水に浸漬すれば接着力が低下し,容易に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別し得る皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いる』ことを解決手段とするものであり,これらを纏めると,換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別(分離)して廃棄することを容易にするために,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて,金属製フィルター枠に不織布製フィルター材を強固に接着すること,つまり,『分離を前提にして,『金属製フィルター枠と不織布製フィルター材と』(被接着部材としての二者)を,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて強固に接着する』ことであるということができる。」と認定した。 すなわち,審決は,当初は本件発明1の解決課題と解決手段とを分け,取消判決の拘束力に従って認定をしたかのようであるが,最終的には,本件発明1の解決課題について,「分離を前提にして」というように事後的・主観的・大概念的に,解決課題と解決手段をひとまとめにして認定しているのであり,かかる認定は本件発- 11 -明1の解決課題を誤って認定したものである。かかる認定を行うことにより,解決課題の認定を誤り,解決課題の設定の容易想到性の判断を誤ったものである。 (イ) 一方,審決は,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターが示される引用例1記載の発明Aについて,「引用例1記載の発明Aの解決課題および解決 決課題の設定の容易想到性の判断を誤ったものである。 (イ) 一方,審決は,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターが示される引用例1記載の発明Aについて,「引用例1記載の発明Aの解決課題および解決手段は,「分離を前提にして,『金属製フィルター枠と不織布製フィルター材と』(被接着部材としての二者)を,接着剤を用いて接着する」ことであるということができ,この点において両者は一致している。」として,発明Aの解決課題は「分離を前提にして」と認定し,本件発明1の解決課題も発明Aの解決課題も,「分離を前提にして」というものであるから,一致しており,本件発明1の解決課題は容易想到であると判断した。 しかし,発明Aの解決課題も,「分離を前提にして」というような大概念的なものではなく,フィルター材とフィルター枠とを,通常の状態で着脱自在に固定するという解決課題であって,本件発明1の解決課題とは全く異なるものである。 したがって,審決は,発明Aの解決課題も誤って認定した。 (ウ) 審決は,取消判決の拘束力に基づいて,本件発明1の解決課題を「金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能とすること」と認定すべきところ,取消判決の拘束力に基づかずに,「分離を前提にして」と認定した誤りがある。また,審決は,発明Aの解決課題も誤って認定し,本件発明1の解決課題は,発明Aに基づいて,当業者が容易に想到しうるとの誤った判断に至ったものである。 以上のとおり,審決は,本件発明1の解決課題を取消判決の拘束力に違反し誤って認定し,また,発明Aの解決課題も誤って認定した結果,相違点2に関する本件発明1の容易想到性 った判断に至ったものである。 以上のとおり,審決は,本件発明1の解決課題を取消判決の拘束力に違反し誤って認定し,また,発明Aの解決課題も誤って認定した結果,相違点2に関する本件発明1の容易想到性の判断を誤ったものである。 イ甲2及び甲3記載事項の認定の誤り審決は,「一般に,『分離を前提にして,被接着物としての二者を,接着剤(粘- 12 -着剤)を用いて接着する』ことについて,この二者を皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて,使用時には容易に剥がれない接着強度で接着し,分離の時にはこの接着剤を水に溶解させて容易に剥がすことできるようにすることは,本件出願前周知の事項(例えば,甲第2号証の特開平7-188632号公報・・・,特開平6-343542号公報・・・参照)であり,上記『使用時には容易に剥がれない接着強度で』接着することは,『容易に剥がれない』以上,『強固に』接着することであるということができ,また,引用例1記載の発明Aと上記周知の事項とは,『分離を前提にして,被接着部材としての二者を,接着剤を用いて接着する』という点で共通する。」として,甲2及び甲3から,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて,使用時には容易に剥がれない接着強度で接着し,分離の時にはこの接着剤を水に溶解させて容易に剥がすことできるようにすることは,本件出願前周知の事項であると認定した。 しかし,甲2には,「水溶性粘着剤組成物」が記載されているのであって,本件発明1で用いる「水性エマルジョン系接着剤」は記載されていない。「水溶性」とは水に粘着剤が溶解することを意味するのに対し,「水性エマルジョン系接着剤」は水に溶解しないが故に接着剤が粒子となって水に分散しており,エマルジョンの状態となっているから,甲2に「水性エマルジョン系 は水に粘着剤が溶解することを意味するのに対し,「水性エマルジョン系接着剤」は水に溶解しないが故に接着剤が粒子となって水に分散しており,エマルジョンの状態となっているから,甲2に「水性エマルジョン系接着剤」が記載されているとはいえない。 また,甲3にも,「水溶性接着剤」が記載されているのであって,本件発明1における「水性エマルジョン系接着剤」は記載されていない。水性エマルジョン系接着剤に関して,甲3の段落【0011】記載の「共重合体エマルジョン系接着剤」が水性エマルジョン系接着剤に相当するが,これは,水溶性接着剤に添加して用いられ,接着力の低下する度合いを調整するためのものである。すなわち,水溶性接着剤のみで接着すると,水に接触しただけで接着力が低下する恐れがあるので,水性エマルジョン系接着剤を添加して,接着力の低下の度合いを低くしているのであるから,甲3記載の水性エマルジョン系接着剤は,水や温水に浸漬しても接着力が- 13 -低下しないものと認識されている。このことは,甲3の段落【0012】に,エマルジョン系接着剤(水性エマルジョン系接着剤に相当するものである。)は,溶剤系接着剤に代えて使用してもよいと記載されていることからも明らかである。溶剤系接着剤は,溶剤(有機溶剤)には溶解するが水に浸漬しても影響を受けず,接着力の低下しない接着剤であるから,甲3記載の水性エマルジョン系接着剤は,水に浸漬しても接着力の低下しないものとして認識されているのである。 水性エマルジョン系接着剤は,水中に接着剤成分である粒子が分散している接着剤であって,接着後に粒子が凝集して皮膜形成するもので,この皮膜が水溶性であるとは認識されていない。しかるに,本件発明1のように,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを水性エマルジョン系接着剤で接着した換気扇 後に粒子が凝集して皮膜形成するもので,この皮膜が水溶性であるとは認識されていない。しかるに,本件発明1のように,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを水性エマルジョン系接着剤で接着した換気扇フィルターの場合,これを水に浸漬すると,不織布製フィルター材を通して皮膜となった接着剤に水が大量に接触すること,金属製フィルター枠のように平滑な表面を持つ素材と不織布製フィルター材のように粗な表面を持つ素材とが接着されていることから,容易に両者が剥離するのである。審決は,本件発明1の各構成要件の組み合わせの技術的意義を看過し,またこの組み合わせによる格別顕著な作用効果を奏する点を看過している。 以上のとおり,審決は,甲2及び甲3記載事項の認定を誤ったため,相違点2に関する本件発明1の容易想到性の判断を誤ったものである。 2 被告の反論以下のとおり,審決には,原告ら主張に係る誤りはない。 (1) 取消事由1(相違点2の認定の誤り)に対し原告らは,相違点2につき,「発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,『皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている』かどうか明らかでない点。」とした審決の認定は,技術常識に反し誤りである旨主張する。 原告らの主張は,引用例1の段落【0019】において,「磁石」が記載されて- 14 -いることを根拠に,磁石は取り外し可能なものであるから,これと併記されている「接着剤」も粘着テープと解されるべきであるというものである。 しかし,たまたま「磁石」という用語が併記されているという一事をもって「接着剤」という用語が限定的に解釈されるはずはない。審決は,引用例1の段落【0019】の記載のとおりに,フィルタ本体の取り外しが可能な手段としてではなく,あくまで「フィルタ本体を固定する手 もって「接着剤」という用語が限定的に解釈されるはずはない。審決は,引用例1の段落【0019】の記載のとおりに,フィルタ本体の取り外しが可能な手段としてではなく,あくまで「フィルタ本体を固定する手段」として接着剤,磁石等が記載されていると認定し,相違点2に関して,「引用例1記載の発明Aでは,接着剤を用いて接着されているものの,『皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されている』かどうか明らかでない点。」と認定したものである。 したがって,審決の相違点2の認定に誤りはない。 (2) 取消事由2(相違点1に関する判断の誤り)に対し原告らは,相違点1について,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターとの根本的な相違を看過し,後者のフィルター材とフィルター枠との着脱自在の固定方式を,前者のフィルター材とフィルター枠との強固な接着に適用することが設計事項であるとした審決の判断は誤りである旨主張する。 アしかし,まず,原告らの主張には,引用例1に記載されるフィルター交換タイプについての定義の誤りがある。 すなわち,原告らは,フィルター交換タイプとは「フィルター材交換タイプの換気扇フィルターはフィルター枠を備え付けたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」と説明するが,引用例1の段落【0019】の記載によれば,フイルター材をフィルター枠ごと取り外した後,フイルター枠からフイルター材を取り外して廃棄するものであるから,全部廃棄タイプと引用例1記載のフィルター交換タイプとは,両者ともにフイルター材をフィルター枠ごと取り外すという点で一致し,本件発明1と引用例1記載の発明とは,「取り外し」~「分離」の工程は同じであって,最後の廃棄段階で両者を廃棄するか,フィルター材だけ廃棄するかの違い ター材をフィルター枠ごと取り外すという点で一致し,本件発明1と引用例1記載の発明とは,「取り外し」~「分離」の工程は同じであって,最後の廃棄段階で両者を廃棄するか,フィルター材だけ廃棄するかの違いが- 15 -あるのみである。 したがって,「フィルター材交換タイプの換気扇フィルターはフィルター枠を備えつけたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」との定義は,引用例1の記載とは異なり,誤りである。 イ次に,原告らの主張には,フィルター材の位置づけについて誤りがある。 原告らは,「全部廃棄タイプの換気扇フィルターは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターのフィルター材に相当するものと扱われ」るとの前提で,「全部廃棄タイプの換気扇フィルターのフィルター材とフィルター枠とは,分離不能な一体のものとして扱われる必要があるから,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターのフィルター材とフィルター枠のように着脱自在とすることは,当業者が適宜行う設計事項ではない」と主張する。 しかし,原告らの前提とする「全部廃棄タイプの換気扇フィルターは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターのフィルター材に相当するものと扱われ」るとの点は,上記アの誤った定義に基づくものである。原告らは,フィルター材交換タイプは「フィルター枠を備え付けたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」という,引用例1の内容と異なる技術に基づき,それとの関係で上記前提を設定している。 したがって,原告らの主張は誤りである。 ウ以上のとおり,原告らの主張は前提において誤りがあり,失当である。 本件発明1のような全部廃棄タイプは周知であるとし,本件発明1と発明Aの関係を正確に把握した上で,発明Aについて,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者であれば適宜行う り,失当である。 本件発明1のような全部廃棄タイプは周知であるとし,本件発明1と発明Aの関係を正確に把握した上で,発明Aについて,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者であれば適宜行う設計事項であるとした審決の判断に誤りはない。 (3) 取消事由3(相違点2に関する判断の誤り)に対し原告らは,①審決は,本件発明1の解決課題を取消判決の拘束力に違反し誤って認定し,また,発明Aの解決課題も誤って認定した結果,相違点2に関する本件発明1の容易想到性の判断を誤った,②審決は,甲2及び甲3記載事項の認定を誤っ- 16 -たため,相違点2に関する本件発明1の容易想到性の判断を誤った旨主張する。 ア上記①の主張に対し(ア) 審決では,主引用例として取消判決で認定された主引用例とは異なる文献が採用されており,進歩性の判断も別異のものであるから,取消判決の拘束力は及ばないと解すべきである。 また,仮に,取消判決の拘束力が及ぶとしても,審決では,取消判決の拘束力に従った審理がなされているから,違法性はない。すなわち,審決は,取消判決が認定した課題を,「金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能とすること」と認定しており,「(金属製フイルター枠と不織布製フィルター材との)分離」を前提していることに違いないし,課題全体としてみても審決が認定した本件発明1の課題は実体としては取消判決と異ならない。審決は,本件発明1と発明Aとの関係において両者を対比しやすくするために,本件発明1の課題の認定において共通の表現を用いただけであって,本件発明1の課題の認定そのものに誤りはない。 決と異ならない。審決は,本件発明1と発明Aとの関係において両者を対比しやすくするために,本件発明1の課題の認定において共通の表現を用いただけであって,本件発明1の課題の認定そのものに誤りはない。 (イ) 原告らは,発明Aの解決課題につき,「分離を前提にして」というような大概念的なものではなく,フィルター材とフィルター枠とを,通常の状態で着脱自在に固定するという解決課題であって,本件発明1の解決課題とは全く異なるものであると主張する。 しかし,原告らのいう「フィルター材とフィルター枠とを,通常の状態で着脱自在に固定するという解決課題」は,引用例1に記載されていない。審決は,引用例1の記載の認定(事実認定)から「発明A」を認定し,「発明A」の課題を認定したものであり,その過程において誤りはない。 イ上記②の主張に対し原告らは,「甲2には,『水溶性粘着剤組成物』が記載されているのであって,- 17 -本件発明1で用いる『水性エマルジョン系接着剤』は記載されていない」と主張するが,甲2には「水性エマルジョン系接着剤」が開示されている。すなわち,原告らは,a.液体状態の粘着剤の状態が「水溶性(水溶液)」であること(水に溶解した状態になっていること)と,b.固化後の粘着剤層が「水溶性」であること(乾燥した粘着剤層が水に溶解することにより接着性が低下し,被接着体どうしが分離できるようになること)とを混同している。甲2には,上記a.の意味として,「水溶性(水溶液)」も開示されているほか,「水性エマルジョン」も開示されており(【請求項3】,【0037】,【0041】),これらを塗布して形成された粘着剤層が水に溶解するという上記b.の意味で「水溶性粘着剤組成物」と称しているのである(【0049】,【0062】)。なお,一般に,エマルジョン 037】,【0041】),これらを塗布して形成された粘着剤層が水に溶解するという上記b.の意味で「水溶性粘着剤組成物」と称しているのである(【0049】,【0062】)。なお,一般に,エマルジョン重合(乳化重合)で得られる重合体が乳化状態(水性エマルジョンの状態)となっていることは技術常識であり,本件発明1の「接着剤」という用語は,「粘着剤」を包含することも技術常識である(乙1ないし乙4)。したがって,実体として「水性エマルジョン系粘着剤組成物」が甲2に記載されており,これが本件発明1の「水性エマルジョン系接着剤」に該当するものである。 また,原告らは,「甲3にも,『水溶性接着剤』が記載されているのであって,本件発明1における『水性エマルジョン系接着剤』は記載されていない」と主張するが,甲3にも「水性エマルジョン系接着剤」が開示されている。すなわち,原告らは,使用前の上記組成物の性状が「水溶性」(接着成分が水に溶解している)であることと,使用後(固化後)の接着剤層が「水溶性」(水で接着性が低下し,被接着体が分離できる性質)であることとを混同している。甲3の段落【0011】の「水溶性接着剤5」の意味は,使用前の上記組成物の性状が「水溶性」(接着成分が水に溶解している)であるというものではなく,使用後(固化後)の接着剤層が「水溶性」(水で接着性が低下し,被接着体が分離できる性質)であるというものであり,「水溶性接着剤5」という表現が用いられているからといって,水性エマルジョン系接着剤が開示されていないという理由にはならない。また,甲3の段- 18 -落【0011】には,「水溶性接着剤5」として,酢酸ビニル,塩化ビニル,アクリル,アクリル酸エステル,エチレン等の単独重合体,共重合体エマルジョン系接着剤を単独で使用したり,デンプン等の水溶 8 -落【0011】には,「水溶性接着剤5」として,酢酸ビニル,塩化ビニル,アクリル,アクリル酸エステル,エチレン等の単独重合体,共重合体エマルジョン系接着剤を単独で使用したり,デンプン等の水溶性接着剤と併用することが開示されていると理解されるところ,これらは,本件明細書において,本件発明1の水性エマルジョン系接着剤の具体例(甲6の【0011】)として挙げられているものと重複しているから,本件発明1の水性エマルジョン系接着剤が水に浸漬すれば接着力が低下するというのであれば,甲3記載の水性エマルジョン系接着剤も水に浸漬すれば接着力が低下すると理解される。 したがって,甲2及び甲3記載事項に関する審決の認定に誤りはなく,原告らの主張は理由がない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,原告ら主張の取消事由2は理由があるものと判断する。事案にかんがみ,まず,取消事由2について判断する。 1 取消事由2(相違点1に関する判断の誤り)について原告らは,本件発明1と発明Aとの相違点1について,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターとの根本的な相違を看過し,後者のフィルター材とフィルター枠との着脱自在の固定方式を,前者のフィルター材とフィルター枠との強固な接着に適用することが設計事項であるとした審決の判断は誤りである旨主張するので,以下,検討する。 (1) 認定事実ア本件明細書には,以下の記載がある(甲7)。 (ア) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,上記第2の2のとおりである(甲7)。 (イ) 発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,台所や調理場等で用いられている換気扇の,主として吸気口側に取り付ける換気扇フィルター及びその製造方 (イ) 発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,台所や調理場等で用いられている換気扇の,主として吸気口側に取り付ける換気扇フィルター及びその製造方法に- 19 -関するものである。・・・【0002】【従来の技術】台所や調理場等で用いられている換気扇は,油汚れ等が付着しやすく,これをそのまま放置しておくと不潔であるため,或いは換気扇が重くなって回転抵抗が大きくなるため,換気扇の吸気口側に換気扇フィルターを取り付けることが行われている。換気扇フィルターは,換気扇の吸気口に装着するためのフィルター枠と,フィルター枠に設けられた開口を覆うためのフィルター材とで構成されており,このフィルター材に油汚れ等を付着させ,換気扇に油汚れ等が付着するのを防止するのである。 【0003】換気扇フィルターには,フィルター材を着脱自在にフィルター枠に係止するタイプのものと,フィルター材をフィルター枠に接着したタイプのものが知られている。前者は,フィルター材が汚れたら,フィルター材のみを交換するものである。後者は,フィルター材が汚れたら,フィルター枠共に廃棄し,新しい換気扇フィルターと交換するものである。後者は,フィルター材を係止する煩わしさがなく,手軽に交換しうるため,重宝されている。 【0004】従来,後者のタイプの換気扇フィルターは,以下のようにして製造されている。まず,金属製フィルター枠の一般的な素材であるアルミニウム箔片面全面に,有機溶剤を溶媒とする感熱性接着剤溶液を塗布して,感熱性接着剤皮膜を設ける。そして,このアルミニウム箔に,張出成形や膨出成形等の成形を施すと共に,打抜加工して開口を設けて金属製フィルター枠とする。この金属製フィルター枠の開口を覆うようにして不織布製フィルター材を張り,押圧 そして,このアルミニウム箔に,張出成形や膨出成形等の成形を施すと共に,打抜加工して開口を設けて金属製フィルター枠とする。この金属製フィルター枠の開口を覆うようにして不織布製フィルター材を張り,押圧加熱し,感熱性接着剤を溶融固化させて,不織布製フィルター材を金属製フィルター枠に接着するという方法が採用されている。 【0005】しかし,この方法で得られた換気扇フィルターは,使用後に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別して廃棄する際,両者の接着箇所で剥離しにくいということがあった。具体的には,不織布製フィルターを金属製フィルター枠から剥離しようとすると,両者の接着が強固であるため,不織布製フィルタ- 20 -ーが破れてしまい,両者を分別することができなかったのである。近年,省資源上或いは環境上の問題から,家庭ゴミにおいても,素材毎に分別して廃棄することが推奨されており,このような欠点は看過することのできないものとなっている。 【0006】【発明が解決しようとする課題】このため,本発明者は,後者のタイプの換気扇フィルターにおいて,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを強固に接着せしめる一方,簡単に剥離しうる接着剤を捜し求めた。しかし,強固な接着と簡単な剥離という,二律背反的な性質を持つ接着剤は無いというのが技術常識であった。ところが,本発明者が種々の接着剤を用いて実験を行っていたところ,ある特定の接着剤を用いると,通常の状態では強固な接着が達成でき,水を付与すると,金属と不織布間との接着力が低下することを見出した。そして,このような接着剤を用いれば,使用後の換気扇フィルターを水に漬けただけで,容易に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とに分別しうると考え,本発明に到達した。 【0007】【課題を解決するための手段】即 な接着剤を用いれば,使用後の換気扇フィルターを水に漬けただけで,容易に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とに分別しうると考え,本発明に到達した。 【0007】【課題を解決するための手段】即ち,本発明は,金属製フィルター枠と,該金属製フィルター枠に設けられた開口を覆って,該金属製フィルター枠に接着されている不織布製フィルター材とよりなる換気扇フィルターであって,該不織布製フィルター材が汚れた場合,該不織布製フィルター材と共に該金属製フィルター枠を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換するタイプの換気扇フィルターにおいて,該金属製フィルター枠と該不織布製フィルター材とは,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いて接着されていることを特徴とする換気扇フィルター及びその製造方法に関するものである。 【0011】本発明の特徴は,この接着箇所における接着が,皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いてなされている点にある。皮膜形成性重合体としては,アクリル酸エステル系重合体,メタアクリル酸エステル系重合体,酢酸ビニル系重合体,エチレン-酢酸ビニル系共重合体等が用いられる。ここで,アクリル酸エステル系重合体の如く「系」が用いられているのは,アクリル酸エステル重合体だけではなく,アクリル酸エステルを単量体として含み,ポリビニルアルコ- 21 -ール,スチレン,ポリブタジエン等の他の単量体との共重合体をも含み意味である。 そして,これらの重合体は,水を分散媒として乳化分散しており,水性エマルジョンの形態となっている。この水性エマルジョンから水を蒸発させると,乳化分散している重合体粒子群が凝集し,皮膜を形成する。そして,この皮膜を形成する際,重合体の粘着力によって,接着作用が発現し,接着剤として機能するのである。 イ引用例 ョンから水を蒸発させると,乳化分散している重合体粒子群が凝集し,皮膜を形成する。そして,この皮膜を形成する際,重合体の粘着力によって,接着作用が発現し,接着剤として機能するのである。 イ引用例1(甲1)には,以下の記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は換気扇又はレンジフード等の通気口の交換用フィルタ及びその交換時期判定方法に関する。 【0002】【従来の技術】換気扇又はレンジフード等の通気口にはその周囲の空気と共に油煙,埃などの汚れが吸い込まれ,この汚れが排気通路の内面や換気扇のファンに付着して掃除に手間を要したり,付着した汚れに引火して火災の原因となったりする。このため,換気扇又はレンジフード等の通気口に予め油煙,埃などの汚れを吸着捕捉するための交換用フィルタ(フィルタ)を設けて使用されている。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,このようなフィルタを通気口に取付けた換気扇又はレンジフードを長時間にわたって使用すると,フィルタに付着する汚れによってフィルタ本体が目詰まりしてしまい,換気扇又はレンジフードの排気効率を低下させるという問題があった。従って,フィルタ本体に付着する汚れの程度に応じて,その交換時期を見極めて,適正にフィルタの交換を行う必要があるが,従来のフィルタでは汚れが付着しても換気扇又はレンジフードに取付けた状態では,この付着状態を正確に判定するのが困難であるために,フィルタの交換時期が早すぎたり,遅すぎたりして,フィルタを効率的に使いきることができないという問題があった。 【0004】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので,交換用フィルタを換気扇又はレンジフード等の通気口から取り外すことなく,交換用フィルタに付着する汚れの程度を簡単に判定することのできる通気口の交換用 4】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので,交換用フィルタを換気扇又はレンジフード等の通気口から取り外すことなく,交換用フィルタに付着する汚れの程度を簡単に判定することのできる通気口の交換用フィルタ及びその交換時期判定方法を提供することを目的とする。 - 22 -【0006】フィルタ本体とは,通気性に優れる一方,空気中に含まれる油煙等の汚れを吸着捕捉することのできるポリエステル等を素材とする織布,不織布からなる。フィルタ本体が半透明の状態とは,このフィルタ本体の厚みが約0.5~8mmと薄く,汚れの付着していない未使用状態では表面側から裏面側を透かして見ることができる状態をいう。インジケータとは,油煙又は埃等を吸着して自身の色調を変化させるセンサ機能を有したもの,あるいはインジケータ周囲のフィルタ本体が油煙又は埃の吸着によって着色され,インジケータの目視による識別性の変化によってフィルタ本体に付着する汚れの程度を判定することができるものをいう。なお,このインジケータの表示面を円形,三角形,四角形等としたり,あるいは文字,記号を表示するように設定することもできる。 【0016】続いて,本発明の第2の実施の形態に係る通気口の交換用フィルタの交換時期判定方法について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態に係る通気口の交換用フィルタの交換時期判定方法を適用する換気扇20の説明図である。換気扇20は,インジケータの一例である赤色の不織布21がフィルタ本体22の表面又は裏面の中央部に取付られた交換用フィルタ23と,交換用フィルタ23を固定して支持するための換気扇20の通気口に配置されるフィルタ支持体24と,フィルタ支持体24で前部が覆われる換気扇ファン25を備えた枠体26とを有して,工場建屋等の側壁に設けられている。 【0018】本実 持するための換気扇20の通気口に配置されるフィルタ支持体24と,フィルタ支持体24で前部が覆われる換気扇ファン25を備えた枠体26とを有して,工場建屋等の側壁に設けられている。 【0018】本実施の形態においては,例えば一辺が4~15cmの長さの正方形状の小片に裁断した通気性のある不織布21をフィルタ本体22とは異なる色彩で着色する。そして,このように形成される不織布21をインジケータとして,半透明のフィルタ本体22の裏面の中心部に接着剤を介して図4に示すように接着した。 なお,ここで食用油等に対する溶解性の大きな染料を不織布21に付着させておき,これを油煙又は埃の所定量を吸着することによって変色する汚れセンサとして用いることも可能である。図4に示すように,換気扇20の通気口に配置されるフィルタ支持体24は交換用フィルタ23を固定するための梁部材27と枠体26に嵌合- 23 -する側壁部28及び裏面側の側壁部28に複数配置された交換用フィルタ23の端部を係止するための止め具29とで構成され,図3(b)の矢印で示すように換気扇20の通気口に吸い込まれる空気が梁部材27又は側壁部28間に形成される空間部28aを通って流れ,その流れが極力,阻害されないようになっている。そして,不織布21及びフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23を,このフィルタ支持体24に被せて,フィルタ本体22のフィルタ支持体24からはみ出した部分を折り返して,この折り返した部分を図4に示すフィルタ支持体24の裏面側に設けられた止め具29に突き刺して固定する。この止め具29の先端は鋭利な突き刺し部になっていて該突き刺し部は鉤型となって形成されたフィルタ本体22の抜け止め防止部を有している。 【0019】なお,接着剤,磁石等を用いて,フィルタ本体22の四隅等の周辺端 先端は鋭利な突き刺し部になっていて該突き刺し部は鉤型となって形成されたフィルタ本体22の抜け止め防止部を有している。 【0019】なお,接着剤,磁石等を用いて,フィルタ本体22の四隅等の周辺端部及びその他の所定箇所をフィルタ支持体24に固定してもよい。こうして,交換用フィルタ23の装着されたフィルタ支持体24を換気扇ファン25を有する枠体26の前部に配置し,枠体26の側部の係止部材30とフィルタ支持体24の側部の取付け板31とをスプリング32を介して係止して,換気扇20を使用することができる状態にする。この初期状態においては,フィルタ本体22を透して裏面側に配置された不織布21を明確に識別できるようになっている。しかし,換気扇20の使用期間が長くなるのに伴って,埃,油煙等がフィルタ本体22に捕捉されて付着し,フィルタ本体22,及び不織布21がその付着量に応じて変色してくると,両者の識別が困難となって,交換用フィルタ23の交換時期が把握できるようになる。このようにして,フィルタ支持体24を換気扇20から取り外して,新しい交換用フィルタと交換することができ,交換用フィルタ23を目詰まりさせることなく,換気扇20を用いる排気状態を良好に維持できる。 【0021】【発明の効果】請求項1~6記載の通気口の交換用フィルタ及び請求項7記載の通気口の交換用フィルタの交換時期判定方法においては,フィルタ本体の所定位置に,使用状態に応じて目視による識別性が変わるインジケータが設けら- 24 -れているので,そのインジケータの変色度合い等の識別性の変化によってフィルタ本体の汚れの程度をフィルタを通気口から取り外すことなく判定することができ,フィルタ本体が目詰まりし始める時期に合わせて,フィルタ交換を確実に行うことができる。従って,交換用フィルタの通気 フィルタ本体の汚れの程度をフィルタを通気口から取り外すことなく判定することができ,フィルタ本体が目詰まりし始める時期に合わせて,フィルタ交換を確実に行うことができる。従って,交換用フィルタの通気性を損なうことなく,通気口から排気される空気の排気効率を良好に維持できる。・・・(判決注:【図3】及び【図4】は別紙2記載のとおりである。)(2) 判断ア上記(1)ア認定の事実によれば,本件発明1は,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着され,不織布製フィルター材が汚れた場合,不織布製フィルター材と共に金属製フィルター材を廃棄して新しい換気扇フィルターと交換する全部廃棄タイプの換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分離して廃棄することを可能することを解決課題とし,全部廃棄タイプの換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着させるが,水に浸漬すれば接着力が低下し,容易に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別し得る皮膜形成性重合体を含む水性エマルジョン系接着剤を用いることを解決手段とした発明であることが認められる。 イ一方,上記(1)イ認定の事実によれば,引用例1記載の発明Aは,従来の換気扇又はレンジフード等の通気口に予め油煙,埃などの汚れを吸着捕捉するために設けた交換用フィルタは,汚れが付着しても換気扇又はレンジフードに取付けた状態では,この付着状態を正確に判定するのが困難であるために,フィルタの交換時期が早すぎたり,遅すぎたりして,フィルタを効率的に使いきることができないという問題があったので(【0002】,【0003】),交換用フィルタを換気扇又はレンジフード等の通気口から取り外すことなく,交換用フィルタに付着 ぎたりして,フィルタを効率的に使いきることができないという問題があったので(【0002】,【0003】),交換用フィルタを換気扇又はレンジフード等の通気口から取り外すことなく,交換用フィルタに付着する汚れの程度を簡単に判定することのできる交換用フィルタ及びその交換時期判定方法を提供することを目的とするものであり(【0004】),金属製で枠状のフィル- 25 -ター支持体24と,フィルター支持体24に形成された空間部28aを覆って,フィルター支持体24に接着されている「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」とよりなる換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」であって,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」の交換時期になったとき,「不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23」のみを交換してこれを廃棄するタイプの換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」において,フィルター支持体24と交換用フィルタ23とは,接着剤を用いて接着されている,換気扇用「フィルター支持体24および交換用フィルタ23」とすることによって,フィルタ本体22の所定位置に,使用状態に応じて目視による識別性が変わる不織布21(インジケータ)が設けられているので,そのインジケータの変色度合い等の識別性の変化によって,フィルタ本体の汚れの程度をフィルタを通気口から取り外すことなく判定することができ,フィルタ本体が目詰まりし始める時期に合わせて,フィルタ交換を確実に行うことができるので,交換用フィルタの通気性を損なうことなく,通気口から排気される空気の排気効率を良好に維持できるという効果を奏するものである(【0021】)ことが認められる。 すなわち,発明Aは,「『不織布21およびフィルタ ルタの通気性を損なうことなく,通気口から排気される空気の排気効率を良好に維持できるという効果を奏するものである(【0021】)ことが認められる。 すなわち,発明Aは,「『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』の交換時期になったとき,『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』のみを交換してこれを廃棄するタイプ」であるから,フィルター材交換タイプであって,このフィルター材交換タイプにおいて,交換用フィルタを換気扇又はレンジフードに取付けた状態では,汚れの付着状態を正確に判定するのが困難であるということを解決課題とし,フィルタ本体の所定位置に,使用状態に応じて目視による識別性が変わる不織布21(インジケータ)を設けることを解決手段とした発明であるということができる。 ウ上記ア,イからすると,発明Aは,フィルター材のみを廃棄するフィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,フィルター材とフィルター枠を共に廃- 26 -棄する全部廃棄タイプの本件発明1とはタイプが異なる上,両発明は,解決課題及びその解決手段も全く異なるものである。そして,発明Aは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターについて,交換用フィルタの交換時期になったとき,フィルタ本体の汚れの程度を,フィルタを通気口から取り外すことなく簡単に判定することができることを特徴とするものであって,引用例1の記載からしても,これに接した当業者が,発明Aのフィルター材交換タイプを本件発明1の全部廃棄タイプに変更しようとする動機付けや示唆を得るとはいえない。また,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターである発明Aにおいて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターである本件発明1が解決課題としている「通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易 ない。また,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターである発明Aにおいて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターである本件発明1が解決課題としている「通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分離して廃棄することを可能すること」と同様の解決課題が当然に存在するともいえない。 そうすると,全部廃棄タイプの換気扇フィルターを使用することが周知の事項であって(この点は原告らも争わない。),物品を分別(分離)して廃棄すること自体,日常生活において普通に行われていることであったとしても,本件発明1は,発明A及び上記周知の事項から容易に想到し得るものとはいえないし,使用した後,廃棄する際に,水に浸漬すれば,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを手指で容易に剥離することができ,金属と不織布とを分別廃棄することができるという本件発明1の作用効果は,発明Aの及び上記周知の事項から容易に予測できるものともいえない。 したがって,発明Aについて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターにすることは,当業者であれば容易になし得ることであり,その際,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる全部廃棄タイプの換気扇フィルターとし,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離(分別)して廃棄することは,当業者であれば適宜行う設計事項であるということができるとした審決の判断は誤りであり,これを前提とした本件発明1に関する容易想到性の判断も誤りである。 エこれに対し,被告は,引用例1に記載されるフィルター材交換タイプの換気- 27 -扇フィルターとは,フィルター材をフィルター枠ごと取り外した後,フィルター枠からフィルター材を取り外して廃棄するものであり,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと引用例1記載 タイプの換気- 27 -扇フィルターとは,フィルター材をフィルター枠ごと取り外した後,フィルター枠からフィルター材を取り外して廃棄するものであり,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと引用例1記載のフィルター材交換タイプの換気扇フィルターは,両者ともにフィルター材をフィルター枠ごと取り外すという点で一致するところ,原告らは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターの定義を「フィルター枠を備え付けたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」としており,この定義は,引用例1の記載とは異なっており,誤りであると主張する。 しかし,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターも全部廃棄タイプの換気扇フィルターも,フィルター材をフィルター枠ごと取り外すことができる点では一致するが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターに関する原告らの上記定義の趣旨は,「備え付けられたフィルター枠はそのまま使用し,フィルター材のみを廃棄する」というものであり,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターと全部廃棄タイプの換気扇フィルターとでは,フィルター材のみを廃棄するかフィルター枠をフィルター材と共に廃棄するかという点で相違する。そうすると,発明Aが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,本件発明1とはタイプが異なる上,解決課題及びその解決手段も本件発明1とは異なることに変わりはなく,上記ウの判断は左右されない。 よって,被告の主張は採用できない。 2 小括以上のとおり,原告らの主張する取消事由2には理由があるから,その余の争点について判断するまでもなく,本件発明1についての特許を無効とした審決には誤りがある。また,同様の理由により,本件発明2ないし4についての発明についての特許を無効とした審決には誤りがある。これらの誤りは,審決の結論に影響を く,本件発明1についての特許を無効とした審決には誤りがある。また,同様の理由により,本件発明2ないし4についての発明についての特許を無効とした審決には誤りがある。これらの誤りは,審決の結論に影響を及ぼすから,審決は違法として取り消されるべきである。被告は,他にも縷々反論するが,いずれも採用の限りでない。 第5 結論 よって,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 芝田俊文 裁判官 岡本岳 裁判官 武宮英子 別紙1 図1 図2 別紙2 引用例1の【図3】 【図4】
▼ クリックして全文を表示