平成17(行コ)16 農振法に基づく開発許可義務付け請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年1月19日 仙台高等裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-4614.txt

判決文本文5,150 文字)

【判事事項の要旨】改正前の行政事件訴訟法による取消訴訟が控訴審に係属中に,改正後の同法19条1項に基づいて控訴審に提起された同法3条6項2号の義務付けの訴えの帰すう(訴え却下) 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 原告が平成13年5月29日付けで農業振興地域の整備に関する法律15条の15第1項の規定に基づいて提出した開発許可申請について,被告(行政庁は宮城県知事)は申請どおりの開発許可をせよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,当裁判所に係属している平成17年(行コ)第6号農振法に基づく開発不許可処分取消請求控訴事件(控訴人宮城県知事,被控訴人原告。以下「本件基本事件」という。)の被控訴人(第1審原告)である原告が,行政事件訴訟法19条1項に基づく関連請求として,当審において,被告を相手方として,農業振興地域の整備に関する法律(平成17年法律第53号による改正前のもの。以下「農振法」という。)15条の15第1項の許可をすべきことを求めて,行政事件訴訟法3条6項2号の義務付けの訴えを提起した事案である。 平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の一部改正に伴い,平成17年4月1日以降,取消訴訟の被告適格が従来の行政庁から行政庁の属する国又は公共団体に改められたため(改正後の行政事件訴訟法11条1項。以下,改正後の同法を「新法」といい,改正前の同法を「旧法」という。),従前行政庁を相手として取消訴訟を提起していた者が同一処分に関して新たな訴え 行政事件訴訟法11条1項。以下,改正後の同法を「新法」といい,改正前の同法を「旧法」という。),従前行政庁を相手として取消訴訟を提起していた者が同一処分に関して新たな訴えを提起するには当事者を異にする国又は公共団体を被告としなければならなくなった。 そこで,既に行政庁を被告とする取消訴訟が控訴審に係属しており,当該取消訴訟の原告が関連請求として控訴審において新法に規定する義務付けの訴えを新たに提起し,新たに被告とされたものがこれに同意しなかったとき,新たに提起された義務付けの訴えをいかにすべきかが問題となる。 2 本件の訴訟の経過は,おおむね以下のとおりである。 (1) 原告は,宮城県白石市b字cd山林55151㎡外16筆の土地に管理型産業廃棄物最終処分場を設置する計画を立てたが,設置予定地の一部が農振法に基づいて指定された農用地区域内に在るため,平成13年5月29日付けで宮城県知事に対し,農振法15条の15第1項の規定に基づき開発行為の許可申請(以下「本件申請」という。)を行った。 (2) 本件申請は,白石市長を経由してされたが(農振法15条の15第2項),白石市長は,本件申請に係る開発行為は同条第4項1号に該当する旨の意見を付して本件申請の申請書を宮城県知事に送付し(同条第3項),これを受けた宮城県知事は,平成13年10月19日,計画されている開発行為は農用地区域内にある土地を相当長期にわたり農用地等以外の用途に利用する計画であり,白石市が定める地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあり,農振法15条の15第4 用地区域内にある土地を相当長期にわたり農用地等以外の用途に利用する計画であり,白石市が定める地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあり,農振法15条の15第4項1号の不許可事由に該当するとの理由で本件申請を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を行った。 (3) これに対して,原告は,平成14年6月13日,本件不許可処分の取消しを求める取消訴訟を仙台地方裁判所に提起したところ,同裁判所は,本件不許可処分は行政手続法5条及び8条に違反することを理由に取り消すべきものと判断した。そのため,宮城県知事が控訴したが,この控訴事件が本件基本事件である。 (4) 原告は,本件基本事件が当審に係属した後の平成17年6月9日,本件不許可処分を取り消す判決が確定したのみでは宮城県知事が手続をやり直した上で再び本件申請を不許可にするおそれがあるとして,本件基本事件の関連請求として,当審において,本件申請を許可する旨の判決を求める本件訴えを追加して併合提起した(なお,原告は,当初は宮城県知事に対して訴えの変更の規定によって義務付けの訴えを提起していたが,同年9月8日,被告を宮城県とする関連請求の訴えに補正した。)。 本件訴えに係る訴状の送達を受けた被告は,同月20日,本件訴えについて同意をしない旨の答弁書を提出した。 第3 当裁判所の判断 1 本件基本事件は,旧法下において提起された取消訴訟であって,被告は行政庁である宮城県知事であり(旧法11条1項),新法の下においても,改正法附則3条の規定によって,なお従前のとおり,宮 件基本事件は,旧法下において提起された取消訴訟であって,被告は行政庁である宮城県知事であり(旧法11条1項),新法の下においても,改正法附則3条の規定によって,なお従前のとおり,宮城県知事が被告となるべきものである。他方,本件訴えは,新法下において提起された新たな訴えであるから,被告適格については新法が適用され,本件不許可処分をした宮城県知事の属する公共団体である宮城県が被告となる(新法38条1項,11条1項)。 ところで,取消訴訟の原告は,取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで,関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができるのであるが(新法19条1項前段),取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは,当該関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならないとされている(新法19条1項後段,16条2項)。 そして,原告は,新法3条6項2号の義務付けの訴えとして本件訴えを当審において提起したものであるが,本件訴えの相手方とされた被告宮城県は,答弁書を提出し,本件訴えについて同意をしないことを明らかにしている。 したがって,本件訴えの提起は,高等裁判所に係属している取消訴訟の関連請求として提起されたが,新たに被告とされた者の同意を欠くものであり,本件基本事件の関連請求としては併合要件を欠くものといわざるを得ない。そして,併合し得ないとすると,本件訴えは,高等裁判所に提起すべきものではなく,第1審管轄裁判所である仙台地方裁判所に提起すべきものである(新法38条1項,12条1項)。なお,被告が異なる以上,本件訴えにつき訴えの変更の規定(民事訴訟法143条)の例によるこ 轄裁判所である仙台地方裁判所に提起すべきものである(新法38条1項,12条1項)。なお,被告が異なる以上,本件訴えにつき訴えの変更の規定(民事訴訟法143条)の例によることはできない。 2 次に,高等裁判所に提起された関連請求に係る訴えが被告の同意を欠く場合,これを不適法な訴えとして却下すべきか,又は第1審管轄裁判所に移送すべきかが問題となるところ(最高裁昭和59年3月29日第一小法廷判決・判例時報1122号110頁参照),本件訴えは,第1審管轄裁判所に移送すべきではなく,不適法な訴えとして却下するのが相当と解される。その理由は以下のとおりである。 新法3条6項2号で規定された義務付けの訴えは,不作為の違法確認の訴え又は取消訴訟,無効等確認の訴え(以下,これらの訴えを「取消訴訟等の訴え」という。)と併合提起しなければならず(新法37条の3第3項),併合して提起された義務付けの訴えと取消訴訟等の訴えに係る弁論及び裁判は,分離しないでしなければならないとされている(新法37条の3第4項)。したがって,義務付けの訴えのみを提起することは許されず,義務付けの訴えのみが提起された場合には不適法な訴えとして却下されるべきであるが,既に取消訴訟等の訴えが提起されている場合は追加して義務付けの訴えを提起することは許されると解されるし,義務付けの訴えのみを提起した場合でも,これが却下される前に取消訴訟等の訴えを提起すれば,瑕疵は治癒されるものと考えられるところである。いずれにしても,新法は,取消訴訟等の訴えと義務付けの訴えとは同一の裁判所で同時に審理・判断することを予定しているもの 提起すれば,瑕疵は治癒されるものと考えられるところである。いずれにしても,新法は,取消訴訟等の訴えと義務付けの訴えとは同一の裁判所で同時に審理・判断することを予定しているものというべきであるが,これは取消訴訟等の訴えに係る請求に理由があることが義務付けの訴えによる救済の必要性を根拠付けるものであり,取消訴訟等の訴えに係る請求の当否と義務付けの訴えにかかる請求の当否とは切り離して判断することはできないことによるものと解される。 しかるところ,仮に本件訴えを第1審管轄裁判所に移送すべきとすると,本件の取消訴訟は既に高等裁判所に係属しているのであるから,移送を受けた裁判所は,義務付けの訴えである本件訴えに係る請求の当否のみを審理判断せざるを得ないことになるが,このようなことは法の予定していないことといわなければならない。なぜならば,上記のように,法が取消訴訟等の訴えと義務付けの訴えとを併合提起することを義務付けたのは,取消訴訟等の訴えに係る請求に理由があることが義務付けの訴えによる救済の必要性を根拠付けるものであるがゆえであり,そうである以上,取消訴訟等の訴えに係る請求の当否を審理判断することをしないで義務付けの訴えに係る請求の当否のみを判断することはできないというべきところ,仮に義務付けの訴えのみを第1審管轄裁判所に移送するとすると,移送を受けた裁判所としては,義務付けの訴えに係る請求の当否を判断するために,取消訴訟等の訴えに係る請求の当否についてまでも審理判断せざるを得ないことになるのであって,そうなっては,同一の行政行為に係る取消訴訟等の訴えに係る請求が異なる裁判所に二 るために,取消訴訟等の訴えに係る請求の当否についてまでも審理判断せざるを得ないことになるのであって,そうなっては,同一の行政行為に係る取消訴訟等の訴えに係る請求が異なる裁判所に二重に係属したに等しい結果となり,訴訟経済に反することになるだけでなく,同一事項についての裁判所の判断に食い違いが生ずるおそれもあるからである。 もっとも,新法37条の3第6項前段は,裁判所は審理の状況その他の事情を考慮して取消訴訟等の訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは当該訴えについてのみ終局判決をすることができる旨を規定しており,この規定によれば,取消訴訟等の訴えについての判決が先行した結果,取消訴訟等の訴えが高等裁判所に,義務付けの訴えが地方裁判所に係属することがあり得ることになる。しかし,この規定も,当初は取消訴訟等の訴えと義務付けの訴えとが同一裁判所に適法に併合提起されたことを前提とし,当該裁判所の判断によって取消訴訟等の訴えについてのみの終局判決を先行させることを認めたものと解されるのであって,適法に併合提起されていない場合についてまで,取消訴訟等の訴えと義務付けの訴えとが異なる裁判所に係属することを認めた趣旨と解することはできない。 したがって,本件訴えを第1審管轄裁判所に移送することは相当でないというべきであり,不適法な訴えとして却下するのが相当である。なお,このように解すると,被告適格の規定を改め,国民にとって行政訴訟をより提起しやすくした行政事件訴訟法の改正の趣旨に反するようにみえなくもないが,新法が規定する義務付けの訴えは,新法の このように解すると,被告適格の規定を改め,国民にとって行政訴訟をより提起しやすくした行政事件訴訟法の改正の趣旨に反するようにみえなくもないが,新法が規定する義務付けの訴えは,新法の施行によって認められた訴訟類型であり,旧法下では提起し得なかったものであるから,やむを得ないことといわなければならない。原告としては,新たな行政処分を待ってそれに不服があれば,取消訴訟の訴えと共に義務付けの訴えを併合提起するほかはないものというべきである。 3 したがって,本件訴えは不適法であってその不備を補正することができず,また,第1審管轄裁判所に移送するのが相当とはいえないから,これを却下することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官大橋弘裁判官鈴木桂子裁判官中村恭

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る