主文 被告が,原告に対し,別紙物件目録記載の土地についてした平成10年度,平成11年度,平成12年度の固定資産税の課税処分の無効確認を求める訴えを却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨(1)被告が,原告に対し,別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)についてした平成10年度,平成11年度,平成12年度の固定資。 産税の課税処分が,無効であることを確認する。 (2)被告は,原告に対し,77万4882円及びこれに対する平成10年4月30日から支払済みまで,年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は被告の負担とする。 (4)仮執行宣言 請求の趣旨に対する答弁(1)本案前の答弁主文第1項と同旨。 (2)本案に対する答弁主文第2,3項と同旨。 第2事案の概要本件は,農地の転用のための権利設定の許可を受け,土地の地目を田から雑種地に変更した土地の所有者である原告が,土地の現況は未だ田であるし,転用のための権利設定の許可書は知事の押印がない無効なものであるにもかかわらず,被告がした宅地並みの評価額による固定資産税の課税処分は,無効であるとして,その課税処分の無効確認及び納付税額と田とした場合の課税額との差額等の返還(付帯請求は,不当利得の後の日である平成10年4月30日から地方税法369条1項に準じた遅延損害金である)を求めた事案である。 。 争いのない事実(1)原告は,本件土地を所有している。 (2)原告とAは,平成9年4月17日,農地法5条1項に基づき,岡山県知事に対して,本件土地につき,原告を賃貸人,Aを賃借人とし,用途を外科医院外来駐車場とする農地の転用を目的とした賃貸借権設定の許可申 原告とAは,平成9年4月17日,農地法5条1項に基づき,岡山県知事に対して,本件土地につき,原告を賃貸人,Aを賃借人とし,用途を外科医院外来駐車場とする農地の転用を目的とした賃貸借権設定の許可申請を共同してしたところ岡山県知事は同年5月28日これを許可し以,,,(下「本件許可」という,倉敷市農業委員会長を経由して,原告及びAに。)対し,許可書を交付した。 ただし,原告に対する許可書には,許可権者である岡山県知事の押印がない。 (3)原告は,本件許可にもかかわらず,本件土地を転用せず,平成13年4月ころまで,田として耕作してきた。 (4)被告は,本件土地につき,平成10年度,平成11年度,平成12年度において,課税地目を介在田として評価し,固定資産税の課税処分をした(以下「本件課税処分」という。これに対し,原告は,いずれも全額納。)付した。 主たる争点(1)無効確認の訴えの適法性ア被告の主張(本案前の答弁)行政事件訴訟法36条は「無効等確認の訴えは,当該処分又は裁決に,続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で,当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り,提起することができる」と規定している。 。 ところで,原告は,本件訴えにおいて,課税の無効確認を求めるとともに,その無効を前提として,支払済みの固定資産税を被告が不当利得しているとして,その返還を求めているのであり,原告は既に無効確認を求める課税につき納税を済ませているのであるから,これに続く処分はなく,不当利得返還請求により目的を達することができるといえ,他に無効確認を求める利益はない 求めているのであり,原告は既に無効確認を求める課税につき納税を済ませているのであるから,これに続く処分はなく,不当利得返還請求により目的を達することができるといえ,他に無効確認を求める利益はない。 よって,原告の無効確認を求める訴えは,不適法として却下されるべきである。 イ原告の主張原告は,平成13年3月6日,被告に固定資産税還付請求書の提出をしたが,被告の回答がないため,同年12月4日,岡山地方裁判所倉敷支部に不当利得返還請求訴訟を提起し,同年12月21日に同裁判所の指示により,固定資産税還付請求書を提出したところ,平成14年1月10日付けで被告から回答があったので,行政事件訴訟法36条の無効確認の訴えの原告適格の要件が充足した。 そして,原告が,平成14年1月16日,上記訴訟に無効確認請求を追加したところ,同裁判所は,原告の請求が適法として当庁に移送した。 また,原告は,行政事件訴訟によらなければ本件訴えの目的を達成することができないし,裁判を受ける権利は憲法上も保障されている。 (2)本件課税処分の効力ア原告の主張(ア)本件許可の許可書には農地転用許可権者である岡山県知事の公印がなく,本件許可は無効であるから,これを前提とする本件課税処分は違法である。 (イ)そして,固定資産税評価基準によれば,土地の評価は土地の地目の別に,また,土地の地目は土地の現況によるものとされ,不動産登記法施行令3条において,地目は土地の主たる用途により定めるとされている。 また,不動産登記法は現況主義であり,農地転用の許可書は,不動産登記法35条1項4号の許可書に該当せず,農地転用の許可を受けていても,現況が農地であれば,地目変更登記申請はできない。 本件土地は,本件許可後も原告が田として耕作を続けてきたのであるから,現況は田である。 と 1項4号の許可書に該当せず,農地転用の許可を受けていても,現況が農地であれば,地目変更登記申請はできない。 本件土地は,本件許可後も原告が田として耕作を続けてきたのであるから,現況は田である。 ところで,被告は,一方では無断転用地を現況調査し,現況の地目で課税しているのであるから,本件土地についても現況の田としての評価額により固定資産税の課税をするべきであり,現地調査をすることなく宅地並みの評価額により固定資産税の課税をした本件課税処分は無効である。 イ被告の主張(ア)行政処分は,それが当該機関の権限に属する処分としての外観的形式を具有する限り,仮にその処分に関し違法の点があったとしても,その違法が重大かつ明白である場合のほかは,これを法律上当然無効とすべきではないとされている。 本件許可については,所定の手続を経て許可書が作成,交付されており,原告に対する許可書には,岡山県知事の公印が押印されていなかったとしても,共同申請者であるAに対する許可書には岡山県知事の公印が押印されており,これらからすれば,許可権者である岡山県知事による許可がなされた外観的形式は具有されているといえる。 そして,共同申請者であるAに対する許可書には岡山県知事の公印が押印されていることからすれば,その一方の申請者である原告に対する許可書に岡山県知事の公印が押印されていないのは単なる押し忘れであるといえ,この点が瑕疵となり,違法であるとしても,軽微なものであり,法律上当然に無効となるような重大かつ明白な瑕疵,違法ではない。 よって,本件許可は有効である。 (イ)そして,固定資産税における固定資産の評価及び価格の決定は,自治大臣(ただし,平成13年1月6日以降は総務大臣)が固定資産の(「」評価基準並びに評価の実施の方法及び手続以下固定資産評価基準 そして,固定資産税における固定資産の評価及び価格の決定は,自治大臣(ただし,平成13年1月6日以降は総務大臣)が固定資産の(「」評価基準並びに評価の実施の方法及び手続以下固定資産評価基準という)を定め(地方税法第388条1項,市町村長は,この固。 )定資産評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならないものとされている(同法403条1項。 )この自治大臣の定める固定資産評価基準(ただし,平成9年度固定資産評価基準)においては,土地の評価は,土地の地目の別にそれぞれ定める評価の方法によって行うものとする。この場合において,土地の地目は,土地の現況によるものとするとされているが,農地法5条1項の規定により,田及び畑以外のもの(以下「宅地等」という)。 への転用に係る許可を受けた田及び畑並びにその他の田及び畑で宅地等に転用することが確実と認められるものについては,沿接する道路の状況,公共施設等の接近の状況その他宅地等としての利用上の便等からみて,転用後における当該田及び畑とその状況が類似する土地の価格を基準として求めた価格から当該田及び畑を宅地等に転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によって,その価額を求める方法によるものとするとされている。 したがって,本件土地は,現況が田であっても,用途を外科医院外来駐車場とする田及び畑以外のものへの転用の許可を受けているので,田としての評価ではなく,転用後における駐車場とその状況が類似する土地の価格を基準として求めた価格から転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によって,その価額を求める方法により評価して課税する,いわゆる介在田としての課税によらなければならないものである。 被告の不当な利得の額原告の主 要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によって,その価額を求める方法により評価して課税する,いわゆる介在田としての課税によらなければならないものである。 被告の不当な利得の額原告の主張原告は,本件土地の固定資産税につき,平成10年度には22万1649円,平成11年度には22万7190円,平成12年度には23万2870円を,課税され,全額納付した。しかし,本件土地の田として評価された平成9年の固定資産税課税額は,2470円である。 よって,原告がした過納付額は,それぞれ平成9年の固定資産税課税額との差額である平成10年度が21万9179円,平成11年度が22万4720円,平成12年度が23万0400円である。 そして,上記各年度の過納付額につき,それぞれ本訴提起の平成13年12月4日までの経過年4年間,3年間,2年間に対応する民法所定の年5分の割合による確定利息は,4万3835円,33708円,2万3040円である。 したがって,被告の不当利得の額は,上記過納付額及び確定利息の合計額77万4882円となる。 第3争点に対する判断 争点(1)(無効確認の訴えの適法性〔本案前の答弁)について〕そもそも,行政処分が無効である場合には,通常,その無効確認判決を待つ,,,までもなくその無効を前提として現在の法律関係を争うことができるから過去の行政処分の無効確認を求める訴えの利益はないというべきである。ただし,無効な行政処分といえども,表見的な通用力を持つから,その表見的通用力が,現在の国民の法律上の地位に対して脅威を及ぼし,現在の法律関係に関する訴えによっても目的を達することができない場合には,無効確認訴訟を認める必要があるといえ,行政事件訴訟法36条は,その旨定めている。 本件において,原告は,違法無効と主張する本件課 の法律関係に関する訴えによっても目的を達することができない場合には,無効確認訴訟を認める必要があるといえ,行政事件訴訟法36条は,その旨定めている。 本件において,原告は,違法無効と主張する本件課税処分に対し,既に全額を納付して滞納処分等を受けるおそれがないのであるから,本件課税処分の無,,,効確認判決を求めて課税処分の表見的な通用力を排除する必要はなくまた原告は,その無効を前提として不当利得の返還を求めているのであるから,無効確認を求めるまでもなく,その目的を達することができる。 したがって,本件課税処分の無効確認を求める原告の訴えは,行政事件訴訟法36条に反し,不適法であり,却下すべきである。 争点(2)(本件課税処分の効力)について(1)地方税法388条1項によれば,自治大臣(平成13年1月6日以降は総務大臣)は,固定資産評価基準を定めるものとされ,市町村長はこれによって固定資産の価格を決定しなければならない(同法403条1項。 )そして,平成9年度の固定資産評価基準(乙4)によれば,田及び畑の評価について,田及び畑で宅地等に転用することが確実と認められるものについては,宅地としての価格から宅地等に転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額いわゆる介在田としての価額で評価して課税することとされ,前記第2,1の争いのない事実のとおり,被告は,本件土地につき,固定資産評価基準のとおり,本件課税処分をしたことが認められる。 そして,前記第2,1の争いのない事実,証拠(乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,原告とAの農地法5条の規定による許可申請を受け,a土地改良区の意見を聴取するなど所定の手続を経た倉敷市農業委員会が,岡山県倉敷地方振興局を経由して岡山県知事に進達し,平成9年5月28日,岡山県 ,原告とAの農地法5条の規定による許可申請を受け,a土地改良区の意見を聴取するなど所定の手続を経た倉敷市農業委員会が,岡山県倉敷地方振興局を経由して岡山県知事に進達し,平成9年5月28日,岡山県倉敷地方振興局長から原告らの上記申請が許可になったので許可書を本人宛交付するよう求められた倉敷市農業委員会長が,原告とAにそれぞれに対する許可書を交付したこと,原告に対する許可書には岡山県知事の押印はないが,Aに対する許可書には,岡山県知事の押印があり,適法な許可書であることが認められる。 ,,,以上の事実からすると原告に対する許可書は所定の手続を経て作成交付されたもので,岡山県知事の押印がないのは,単なる押印漏れにすぎず,瑕疵としても軽微なもので,本件許可が法律上当然に無効となるような重大かつ明白な瑕疵,違法があったとは認められない。 したがって,本件課税処分は,手続上の不備はなく,重大かつ明白な瑕疵はないから,無効であるとは到底いえない。 (2)ところで,固定資産税は,固定資産課税台帳等に登録された土地や家屋の価格を課税標準とし,それに登録された資産の所有者を納税義務者とするものであるから(地方税法343条1,2項,349条,その性質は,)資産の所有という事実に着目して課税される財産税であって,資産により生ずる収益に着目して課税される収益税とは異なるものと解するべきである。 すなわち,固定資産税は,資産が土地の場合には,土地の所有という事実に着目して課税されるものであり,正常な条件の下に成立する当該土地全体の取引価格である土地の客観的価格が課税標準となるのであって,個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か,どのような収益を得ているかといった主観的事情を問わないというべきである。 したがって,固定資産税の課税処分は,当該 価格が課税標準となるのであって,個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か,どのような収益を得ているかといった主観的事情を問わないというべきである。 したがって,固定資産税の課税処分は,当該土地をその所有者がどのように利用しているかに基づいて課税するのは相当ではなく,当該土地の現在の客観的に適切な価値に基づいて課税するべきである。 (3)本件土地は,本件許可により宅地等に転用できる土地であるから,原告が,本件土地を田として利用しているとしても,その客観的な価値は,造成すれば宅地として利用できる土地であるといえ,本件土地についての固定資産税は,そのように評価して,介在田として課税をすることは適法である。 結論 したがって,本訴請求のうち,原告の本件課税処分の無効確認を求める訴えは,不適法であるから却下し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官小野木等裁判官政岡克俊裁判官永野公規別紙物件目録所在倉敷市ab地番c番d地目雑種地(ただし,平成13年4月に田から変更,同年5月2日に登記)。 地積651平方メートル(ただし,分筆により,平成13年3月2日1321平方メートルから661平方メートルに,同年4月2日661平方メートルから651平方メートルに変更)。
▼ クリックして全文を表示