平成25(ワ)92 不当利得返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年2月18日 東京地方裁判所
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判決文本文37,423 文字)

- 1 -平成27年2月18日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第92号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日平成26年12月26日判決当事者別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告MODECOM株式会社は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成25年2月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告蝶理株式会社は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成25年2月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告青山商事株式会社は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成25年2月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,標準文字で「KATSUSHIGEMURAOKA」とし,指定商品を洋服等とする商標登録第4373618号の商標権(以下「本件商標権」といい,その商標を「本件商標」という。)を,訴外A(以下「A」とい - 2 -う。),訴外有限会社ラ・キュアー(以下「ラ・キュアー」という。)及び米国法人ラクラインコーポレーテッド(以下「ラクラ」という。)が有していたところ,(1)被告MODECOM株式会社(以下「被告MODECOM」という。)が,本件商標について何らの権限を有していないにもかかわらず,平成14年5月1日から平 「ラクラ」という。)が有していたところ,(1)被告MODECOM株式会社(以下「被告MODECOM」という。)が,本件商標について何らの権限を有していないにもかかわらず,平成14年5月1日から平成20年4月30日に至るまで,被告蝶理株式会社(以下「被告蝶理」という。)に対し本件商標が付された紳士用スーツの作成を指示・許可した行為が商標権侵害行為に当たるとして,これにより,本件商標の許諾料として,少なくとも被告蝶理の売上げの5%に相当する1億6125万1597円の利得を得た,(2)被告蝶理は,遅くとも平成14年5月1日から平成20年4月30日に至るまで,無権限で本件商標が付された紳士用スーツを作成し被告青山商事株式会社(以下「被告青山商事」という。)に販売するという商標権侵害を行い,これにより,少なくとも32億2503万1935円を売り上げ,3億2250万3194円の利得を得た,(3)被告青山商事は,平成14年5月1日から平成20年4月30日に至るまで,被告蝶理から仕入れた本件商標が付された紳士用スーツを無権限で自社の店舗で販売するという商標権侵害を行い,これにより,少なくとも11億8832万8050円の利得を得たが,商標権者であるA,ラクラ及びラ・キュアーは被告らが得た各利得と同額の損失を被ったところ,原告は,A及びラ・キュアーから,ラクラの分も含め被告らに対する各不当利得返還請求権を全部譲り受けたと主張して,被告らに対し,不当利得金の内金請求として,それぞれ1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(認定事実の末尾に証拠等を掲げない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア A みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(認定事実の末尾に証拠等を掲げない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア Aはデザイナーであり,本件商標を出願し,その権利者であった。 - 3 -訴外B(以下「B」という。)はAの妻である。〔乙A6,7頁〕イラ・キュアーは,平成15年に設立された,服飾デザインや,紳士服及び装身具の企画,製造,販売などを目的とする有限会社であり,平成16年3月当時は,東京都港区<以下略>に本店を置いていた。〔乙A1,11〕ウ原告は,A及びラ・キュアーから,A及びラ・キュアーの被告らに対する商標権侵害に基づく各不当利得返還請求債権について,債権譲渡を受けたと主張する者である。 エ被告MODECOMは,ファッション・ブランド情報の提供サービス,商標権,意匠権等知的財産権の取得,管理,使用許諾等を目的とする株式会社であり,平成22年6月1日,商号を「株式会社H商品研究所」から現在の「MODECOM株式会社」に変更した(以下,商号を「株式会社H商品研究所」とする時代を特に区別せずに被告MODECOMという。)。 オ被告蝶理は,主に繊維事業(被服の製造及び販売等)を目的とする株式会社である。 カ被告青山商事は,主に紳士服の販売を目的とする株式会社である。 (2) A及びラ・キュアーの商標権A及びラ・キュアーは,次の商標権について,権利を有していた(以下「本件商標権」という。甲12,13)。 商標登録番号第4373618号出願日平成11年6月1日査定日平成12年2月16日登録日平成12年4月7日商標 KATSUSHIGEMUR )。 商標登録番号第4373618号出願日平成11年6月1日査定日平成12年2月16日登録日平成12年4月7日商標 KATSUSHIGEMURAOKA(標準文字) - 4 -商品及び役務の区分並びに指定商品第25類洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴(3) 本件商標権の移転登録の経緯等本件商標権は,平成12年4月7日にAを権利者として設定登録がされた後,同年12月18日受付で,アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス <以下略>に本店を置くラクラに移転登録がされた(平成13年1月9日登録)。 その後,平成16年3月16日受付で,ラ・キュアーに対し,本件商標権の移転がされた(同月26日登録)。 そして,平成22年5月18日に,存続期間の更新登録がされた後,同年11月25日,訴外C(以下「C」という。)に対し,本件商標権の移転がされた。〔甲12〕(4) また,Aは,本件商標権のほか,次の商標権を含め,「Yin&Yang」の文字を含む複数の商標権を有していた(以下,まとめて「Yin& - ,本件商標権の移転がされた。〔甲12〕(4) また,Aは,本件商標権のほか,次の商標権を含め,「Yin&Yang」の文字を含む複数の商標権を有していた(以下,まとめて「Yin& - 5 -Yang商標」という。)。 商標登録番号第4255166号出願日平成9年8月8日査定日平成10年12月11日登録日平成11年3月26日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品第28運動用具(5) Aらによる大阪地裁への訴訟提起の経緯,その帰趨等ア Aは,被告MODECOMとの間で,平成13年6月1日付けで商標及びデザイン使用に関する許諾基本契約(以下「本件許諾契約」という。)を締結した。〔甲20,乙A1(4~5頁)〕また,Aと被告MODECOMは,同日付けで,覚書を締結した。〔甲19,乙A1(5頁)〕イ(ア) A及びラ・キュアーは,Aと被告MODECOMとの間の本件許諾契約に基づき,Yin&Yang商標を含む9件の商標権(商標登録第2088729号,同2133525号,同第2151801号,同第2170296号,同第2180475号,同第1688813号,同第4255166号,同第1945418号,同第2133524号。以下,これらを併せて「別件各商標権」という。)について,被告MODECOMに対し使用許諾等をし,被告MODECOMはAとの平成14年4月29日付け覚書,ラ・キュアーとの平成17年4月1日付け,同平成20年4月21日付け覚書に基づき,被告蝶理に対しそれらの使用 - 6 -許諾をしたところ,未払使用許諾料あるいは報告義務違反の債務不履行ないし過小報告による使用許諾料の支払を免れる不法行為に基づく損害賠償請求権があるとして に対しそれらの使用 - 6 -許諾をしたところ,未払使用許諾料あるいは報告義務違反の債務不履行ないし過小報告による使用許諾料の支払を免れる不法行為に基づく損害賠償請求権があるとして,被告MODECOM(原告・被告等の当事者表示は本件による。以下同様である。)に対して各2490万7237円の支払を求める訴えを大阪地裁に提起し(大阪地裁平成20年(ワ)第13504号損害賠償請求本訴事件),一方,被告MODECOMも,本件許諾契約の虚偽表示無効等による原状回復ないし債務不履行に基づく損害賠償請求として1827万8508円の支払を求める反訴を提起した(同平成21年(ワ)第629号損害賠償請求反訴事件)。 大阪地裁は,平成23年4月14日,本件許諾契約は有効に成立したが,平成20年9月27日付けAの解除の意思表示が被告MODECOMに到達した頃までに同契約は解消されたこと,Aは本件許諾契約に定められた義務を履行していないこと,一方,被告MODECOMは本件許諾契約に基づき使用料許諾名目で一定の支払を行うメリットが存したためAの債務不履行を認識しつつ,年間1000万円となるよう計算された一定額の使用許諾料を支払っていたこと,結局,Aは債務の本旨に従った履行をしていないのであるから対価請求権が発生しておらずAに対する未払債務もない等と判示して,上記本訴及び反訴をいずれも棄却する判決をした。〔乙A1〕(イ) これに対しA及びラ・キュアーが控訴したが(大阪高裁平成23年(ネ)第1666号。被告MODECOMは控訴せず。),控訴審に係属中に,原告が,A及びラ・キュアーから損害賠償債権を譲り受けたとして上記訴訟に独立当事者参加(同平成23年(ネ)第2331号独立当事者参加事件)し,A及びラ・キュアーは同訴訟から脱退した。大阪 属中に,原告が,A及びラ・キュアーから損害賠償債権を譲り受けたとして上記訴訟に独立当事者参加(同平成23年(ネ)第2331号独立当事者参加事件)し,A及びラ・キュアーは同訴訟から脱退した。大阪 - 7 -高裁は,平成23年11月8日,A及びラ・キュアーの被告MODECOMに対する請求権はいずれも認められないとして,参加人である原告の請求を棄却する判決をした。〔乙A11〕これに対して原告は上告受理申立てをしたが,平成24年7月20日,不受理決定がされた。〔乙A12〕ウ一方,Aは,被告MODECOMに対し,平成12年12月14日に,別件各商標権を450万円の対価で譲渡していたが,これには当事者間において買戻しの特約が付されていたところ,Aは,平成20年9月29日に買戻しの意思表示をしたことを原因として,上記商標権についてAに帰属することの確認,各移転登録手続をすること,商標の使用の差止めを求める訴えも大阪地裁に提起していたが(大阪地裁平成20年(ワ)第13503号商標権侵害差止等請求事件),大阪地裁は,平成21年9月3日,Aの請求のうち,商標権がAに帰属することの確認を求める訴えについては却下し,その余の請求については,買戻請求権は合意後5年の経過により時効消滅したとして,いずれも棄却する判決をした。〔乙A13〕これに対しAが控訴した(大阪高裁平成21年(ネ)第2470号商標権侵害差止等請求控訴事件)が,大阪高裁は,平成22年6月25日,控訴棄却の判決をしたため,さらに,Aは上告受理申立てをしたが,最高裁は,同年11月5日,同申立てを不受理とする決定をした。〔乙A14,乙A15〕(6) A,原告,被告蝶理担当者らとの面談の経緯等ア原告及びAと被告蝶理従業員であるD(以下「D」という。),同E( 年11月5日,同申立てを不受理とする決定をした。〔乙A14,乙A15〕(6) A,原告,被告蝶理担当者らとの面談の経緯等ア原告及びAと被告蝶理従業員であるD(以下「D」という。),同E(以下「E」という。)及び同F(以下「F」という。)らは,平成22年4月15日に面談した。〔甲36の1〕 - 8 -イさらに,原告及びAとD,E,F及び被告蝶理従業員であるG(以下「G」という。)は,平成22年5月12日に面談した。〔甲37の1(要旨のみ),42(全体の反訳)〕その際,被告蝶理のGは,Aらに対し,①2002年(平成14年)5月1日から2008年(平成20年)4月30日までのYin&Yang商標に関する年次売上報告書,②「MURAOKAKATSUSHIGE」との表示の使用経緯に関する文書を提出した。〔甲2,7〕ウ(ア) Aは,平成22年5月12日付けで,被告蝶理宛ての「誓約書」(以下「A誓約書」という。)を提出した。被告蝶理は,A誓約書につき,公証人の同月13日の確定日付を得た。〔乙B1〕(イ) また,被告蝶理は,ラ・キュアーからも,同月12日付け「誓約書(以下「ラ・キュアー誓約書」といい,A誓約書と併せ,「本件各誓約書」という。)を得た。被告蝶理は,ラ・キュアー誓約書についても,公証人の同月13日の確定日付を得た。〔乙B2〕エ原告とDは,平成22年10月13日にも面談した。〔甲40の1,甲43〕(7) 原告の債権譲受の経緯等(債権譲渡の効力については争いがある)ア原告は,A及びラ・キュアーから,平成23年6月6日に,本件商標権の使用に係る平成14年5月1日から平成20年9月30日の間における不当利得返還請求権を譲り受けた。 イ A及びラ・キュアーは,代理人弁護士を通じ,被告 ーから,平成23年6月6日に,本件商標権の使用に係る平成14年5月1日から平成20年9月30日の間における不当利得返還請求権を譲り受けた。 イ A及びラ・キュアーは,代理人弁護士を通じ,被告蝶理及び被告青山に対し,平成23年6月24日付け債権譲渡の通知をし,同通知は同月27日に被告蝶理及び被告青山に到達した。〔甲89の1,2,甲90の1,2〕 - 9 -ウ A及びラ・キュアーは,代理人弁護士を通じ,被告MODECOMを含む被告らに対し債権譲渡通知を行い,同通知は平成24年12月15日に被告青山に,同月17日に被告MODECOM及び被告蝶理に到達した。 〔甲8の1,2,甲9の1,2,甲10の1,2〕(8) 本件訴訟の経緯等原告は,Aとともに,平成25年1月7日,被告MODECOMに対し,Yin&Yang商標の専用使用権の設定登録手続及び不法行為に基づく損害賠償を求める訴訟(当庁平成25年(ワ)第89号専用使用権設定登録手続等請求事件)を提起するとともに,同日,単独で被告らに対し本件訴訟を提起した。 (9) 被告らによる「KATSUSHIGEMURAOKA」との表示の使用被告MODECOMは,平成14年5月1日から平成20年4月30日までの間は,被告蝶理に対し,「Yin&Yang」標章の下に「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示がされた紳士用スーツの作成を許諾していた。 また,被告蝶理は,上記期間中,「Yin&Yang」標章の下に「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示がされた紳士用スーツを作成し,被告青山に販売した。 被告青山は,上記期間中,「Yin&Yang」標章の下に「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示がされた紳士用スーツを,自社の店舗で販売した。 3 争点 を作成し,被告青山に販売した。 被告青山は,上記期間中,「Yin&Yang」標章の下に「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示がされた紳士用スーツを,自社の店舗で販売した。 3 争点(1) Aらによる,被告MODECOMに対する「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用許諾の有無等 - 10 -(2) 本件各誓約書に基づくA及びラ・キュアーの被告蝶理及び被告青山に対する請求権放棄の有無(3) Aからラクラ及びラ・キュアーに対する商標権移転の効力の有無(4) 原告による訴訟遂行が違法な訴訟信託に該当するか(5) 被告蝶理及び被告青山の故意・過失ないし悪意の有無(6) Aらの損失の発生の有無及びその額第3 当事者の主張 1 争点(1)(Aらによる,被告MODECOMに対する「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用許諾の有無等)について〔被告らの主張〕(1)ア被告MODECOMは,A及びラクラとの間で,本件商標権について,平成13年6月1日,本件許諾契約(甲20)及び同日付け覚書(甲19)を締結し,同契約及び覚書において,Yin&Yang商標については被告MODECOMが商標権を持つことを確認した上で,AはYin&Yang商標について専用デザイン権を有することとし,Aにおいて,被告MODECOMに対し,商品化に必要な資料の提供を行う旨定めるとともに,被告MODECOMからAに対してデザイン使用許諾料を支払うことを合意した。Aから被告MODECOMに対する上記資料の提供は不十分であったが,被告MODECOMは,商品化に必要な資料提供の対価としてではなく,AがYin&Yang商標を使用した商品のデザインに関与している事実の作出を目的とした顧問料的な意味合いとして,デザ 分であったが,被告MODECOMは,商品化に必要な資料提供の対価としてではなく,AがYin&Yang商標を使用した商品のデザインに関与している事実の作出を目的とした顧問料的な意味合いとして,デザイン使用許諾料名目で年間約300万円,顧問料的な意味合いを含む総額では年間1000万円をAに対して支払っていた。 被告MODECOMからAに対する上記支払には,Yin&Yang商 - 11 -標について,デザイナー名として「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を併せて使用することの対価としての意味合いも当然のことながら含まれていた。このことは,被告MODECOMにおいてYin&Yang商標にデザイナー名として「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を併記して第三者に使用許諾することを認め,その併記後も,Aは何ら異議を述べていなかったことからも明らかである。 イ 「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示については,被告青山から被告MODECOMに対し,ブランドについてデザイナー名を出すという戦略が出てきたので,Yin&Yang商標についても出せないかとの話があり,被告MODECOMとしては,一応Aに確認することとし,平成14年にデザイナー名として併記して使用する前に,被告MODECOM代表者のH(以下「H」という。)において,Aから電話で承諾を得ている。 また,Hは,Aが帰国した際の面談時にも,重ねて承諾を得ている。Aは米国に居住していたが,Yin&Yang商標に「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を付帯したラベルを使用することは,今後のA自身の日本での活動にとって多大なる宣伝効果となること,また,金銭的困窮により海外に渡ったAのイメージの払拭には大変有意義であること,その結果双方にとってもメ 帯したラベルを使用することは,今後のA自身の日本での活動にとって多大なる宣伝効果となること,また,金銭的困窮により海外に渡ったAのイメージの払拭には大変有意義であること,その結果双方にとってもメリットとなることから,Aは上記使用を承諾したものである。現にその使用期間中はAにおいて何ら異議を述べることもなく,むしろ喜んでいたのが,事実である。 (2)ア被告蝶理は,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用について有効な許諾(サブライセンス)を受けていた。被告MODECOMと被告蝶理は,平成14年4月30日,「商標およびデザイン使用許諾 - 12 -契約書」(乙B5。以下「本件商標及びデザイン使用許諾契約書」という。)を交わし,被告MODECOMが被告蝶理に対し,Yin&Yang商標及びAが管理するデザインを使用する紳士用衣料製品の製造販売を実施する権利を許諾する旨合意した。 被告蝶理は,上記契約に基づき,同年5月1日から,被告青山向け紳士衣料製品にYin&Yang商標を用いるとともに,被告MODECOMの同意を得た上で,Yin&Yang商標に併記する形で,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を用いるようになった。 しかし,平成20年5月ころ,被告蝶理は,これを併記した製品の製造を中止した。また,被告蝶理は,被告青山に対し,同年6月以降も,これを併記した在庫の販売を行っていたものの,かかる在庫の販売も遅くとも同年9月30日には終了している。 イ上記アのとおり,被告蝶理は,前記契約に基づき,平成14年5月1日から,被告青山向け紳士衣料製品にYin&Yang商標を用いるとともに,被告MODECOMの同意を得た上で,それに併記する形で,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を用いるようにな 月1日から,被告青山向け紳士衣料製品にYin&Yang商標を用いるとともに,被告MODECOMの同意を得た上で,それに併記する形で,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を用いるようになったものであるが,その使用については,被告MODECOMより,Aも承諾しており問題がない旨説明を受けていた。 そのため,Yin&Yang商標及び「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を用いた被告蝶理の製品に対する被告MODECOMによるチェック(当該商標を使用した製品に問題がないかをチェックするもの。以下「アプルーバルチェック」という。)においても,被告MODECOMから被告蝶理に対し,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を併記していることを当然の前提としてチェックがされており,実 - 13 -際の取引においてこれを併記していることについて異議申出や問題提起がされたことはない。 なお,本件商標の商標権者がAからラクラ又はラ・キュアーに変更された後も,上記の運用に変更はなく,被告MODECOMから被告蝶理に対し,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の併記使用に関して,何らかの指摘がされたこともなかった。この点,ラクラ及びラ・キュアーはいずれもAが代表者を務めていた会社であるということであり,実質的にAと同視できるのであるから,本件商標の商標権者が変更されたことにより,その使用について影響が生じるとは考えられない。 (3) 被告青山は,マスターライセンシーである被告MODECOMより有効にサブライセンスを受けた被告蝶理から「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の付された商品を購入して販売していたものである。 (4) よって,被告らの「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使 ンスを受けた被告蝶理から「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の付された商品を購入して販売していたものである。 (4) よって,被告らの「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用は有効な許諾に基づくものであるから,適法である。 (5) なお,原告は,Yin&Yang商標はAが使用を許諾したものであると主張するが,Yin&Yang商標は平成12年12月14日に,Aから被告MODECOMが譲渡を受けており,前記(1)のとおり,平成13年6月1日付け本件許諾契約書(甲20)及び同日付け覚書(甲19)においてもその旨確認されているものである。 〔原告の主張〕(1) Aは,被告MODECOMに対し,本件商標について使用を許諾したことはない。Aが被告MODECOMに使用を許諾した商標は,Yin&Yang商標であって,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示(本件商標)はAの知らない間に,被告MODECOMが無断で使用したものである。 - 14 -したがって,本件商標に関し,Aと被告MODECOMの間には有効な使用許諾契約(マスターライセンス)が存しない結果,被告らの本件商標の使用には法的根拠が存しない。 Aと被告MODECOMの間において,Yin&Yang商標については商標利用に関する契約書が存在するものの,本件商標に関しては,契約書は一切存在しない。被告MODECOMと被告蝶理との本件商標及びデザイン使用許諾契約書(乙B5)において言及があるのもYin&Yang商標のみであり,本件商標については何ら言及がない。 被告らにおいて,本件商標を付した紳士用衣料品を販売することは大きなビジネスプロジェクトであり,このようなビジネスプロジェクトにおいて,Yin&Yang商標については契約書が ては何ら言及がない。 被告らにおいて,本件商標を付した紳士用衣料品を販売することは大きなビジネスプロジェクトであり,このようなビジネスプロジェクトにおいて,Yin&Yang商標については契約書が存在するにもかかわらず,Yin&Yang商標を売り出すにあたって当初から併記されていた本件商標に関し何らの契約書がないというのは不自然というほかない。 (2) Aは,被告らが本件商標の使用を開始した平成14年頃においては,海外に在住しており,被告らが本件商標を使用していることを知る機会がなかった。また,Aは,本件商標とYin&Yang商標が併記された商品について,企画やデザインに全く関与していないため,サンプルチェックや検品等を行ったことはなかった。 Aはその後帰国して平成15年に服飾関連の会社「株式会社カツシゲムラオカ」を立ち上げ,高級志向者をターゲットとした本件商標入りの紳士用衣料製品を製作し,百貨店等で販売していた。そのため,被告青山のような大衆向けの紳士用衣料製品を販売している店舗に出向いたことがなく,Aは本件商標を被告らが使用していることを知らないままに年月が経過した。仮にAが,被告青山が本件商標入りの紳士用衣料品を大衆向けに安価に販売していることを知っていたならば,自己の事業における高級ブランドイメージが低下することを阻止するために,被告青山に対し,即刻使用 - 15 -の中止を申し入れたはずである。 2 争点(2)(本件各誓約書に基づくA及びラ・キュアーの被告蝶理及び被告青山に対する請求権放棄の有無)について〔被告蝶理及び被告青山の主張〕(1) A及びラ・キュアーは,被告蝶理に対して差し入れた本件各誓約書において,本件商標に係る損害賠償その他一切の請求権を放棄している。すなわち,A及びラ・キュアーは,被 蝶理及び被告青山の主張〕(1) A及びラ・キュアーは,被告蝶理に対して差し入れた本件各誓約書において,本件商標に係る損害賠償その他一切の請求権を放棄している。すなわち,A及びラ・キュアーは,被告蝶理に対して,平成22年5月12日付け本件各誓約書(乙B1,2)を差し入れているところ,これらによれば,A及びラ・キュアーは,本件各誓約書をもって,本件商標を含むAの個人名の使用に関して,被告蝶理及び被告青山に対していかなる請求も行わない旨誓約している。 そうすると,原告が主張するA及びラ・キュアーから原告に対する債権譲渡は,そもそもその対象を欠くため,無効である。 (2) 原告の主張に対する反論ア原告は,本件各誓約書には原告主張に係る停止条件が付されており,その不成就が確定したことから,本件各誓約書は無効である旨主張する。 しかし,本件各誓約書には,何ら条件に関する記載がなく,これら書面への押印前後のやり取りにおいても,原告が主張する条件についての言及はない。また,原告の主張する条件を停止条件とする合理性もない。 加えて,後記イのとおり,Aあるいは原告が交渉段階及び本件訴訟において主張している条件は変遷している。 これらに照らせば,本件各誓約書の効力については何ら確定的な条件設定がされていなかったと考えることが自然であり,原告の上記主張は失当である。 - 16 -イ原告らの条件に関する言い分ないし主張の変遷は以下のとおりである。 平成22年6月6日の時点(乙B12,1,2枚目,甲21の1,4枚目,乙B13,4枚目)において,Aらは「本件商標の使用経緯」,「個人名使用期間」及び「Aの個人名使用による製品の売上及び利益」等の項目により,①「A個人名使用の経緯の善意性」(本件商標使用の善意性)及び②「利益の開示を おいて,Aらは「本件商標の使用経緯」,「個人名使用期間」及び「Aの個人名使用による製品の売上及び利益」等の項目により,①「A個人名使用の経緯の善意性」(本件商標使用の善意性)及び②「利益の開示をもって・・・すべてを認識した」こと(本件商標使用の利益開示)を要求していたところ,①本件商標使用の善意性については,被告蝶理の「Hの説明を受けAが承諾していると認識していたこと,その対価をHに支払っていること」との説明を受けて納得しており,専ら,②本件商標使用の利益開示についてこだわる姿勢を見せていた。これは平成22年7月9日時点においても,その方向性は変わっていない(甲21の1,1~3枚目,乙B13,2~4枚目)。 しかし,平成23年1月22日になると,①本件商標使用の善意性について,被告蝶理自ら「どのような契約のもとに本件商標を使用したか」「被告青山にどのような説明と契約書を提示して販売に至ったか」等の一連の事実関係を「書面」により提出しないことから,善意の第三者ではないと主張するようになった。また,②本件商標使用の利益開示についても,該当期間の全ての生産報告書の「開示」ではなく「提出」を求めるようになっている(甲21の3,3枚目)。 それが,本件訴訟に至ると,①本件商標使用の善意性について言及がなくなり,また,②本件商標使用の利益開示についても,Yin&Yang商標を付した製品の売上表等の存在する「関係資料一切」の「開示」を求める等,資料の対象範囲が拡大される一方で,資料の「提出」が求められておらず,平成23年1月22日の時点から本件各誓約書に係る - 17 -条件が変遷している。 このように,本件各誓約書の条件に係る原告らの主張は一貫していないが,これは,原告の主張する条件が本件各誓約書に設定されたことがないこと 書に係る - 17 -条件が変遷している。 このように,本件各誓約書の条件に係る原告らの主張は一貫していないが,これは,原告の主張する条件が本件各誓約書に設定されたことがないことを裏付けるものである。 ウ本件各誓約書の前提はいずれも満たされている。 すなわち,本件各誓約書については,平成22年4月15日のAらとの面談により,①本件商標を併記したYin&Yang商標を付した製品の販売数量にかかる報告書,②本件商標使用の経緯に関する書面,の2点の被告蝶理による開示が本件各誓約書提出の前提とされていた。このことは,同年5月12日の面談に先立ち,FがAに対して送付した同月10日付けメールにおいて,「弊社作成の生産報告書および個人名使用の経緯に関する文書をA様に提出させていただくことになりました。 つきましては,A様の個人名使用に関する件を不問にしていただく旨の誓約書を弊社にて作成しましたので,添付いたします。」(乙B9の1)との記載があること等からも明らかである。 被告蝶理は,上記同月12日の面談において,上記①に対応する書面として甲2を,また,上記②に対応する書面として甲7をそれぞれ提出しており(甲7,1枚目),これらの前提はいずれも充たされている。 なお,被告蝶理は,Aらに対して,同日の面談において,本件商標及びデザイン使用許諾契約書(乙B5),被告MODECOMの「誓約書」(甲3)等を,同年10月13日の面談において,平成20年5月1日から同年9月30日までのYin&Yang商標を付した製品の売上げに関する資料(甲21,3,4頁)を,それぞれ開示している。 エ以上のとおり,本件各誓約書については,いかなる条件も付されてい - 18 -ないところ,上記ウの提出の前提も充たしており,内心と表示に乖離 3,4頁)を,それぞれ開示している。 エ以上のとおり,本件各誓約書については,いかなる条件も付されてい - 18 -ないところ,上記ウの提出の前提も充たしており,内心と表示に乖離もなく,錯誤はないし,また信義則等に反する点もなく,有効である。 〔原告の主張〕(1) A及びラ・キュアーは,本件各誓約書を差し入れたが,本件各誓約書は停止条件の不成就により無効である。 A及び原告は,被告MODECOMとのYin&Yang商標に関する商標買戻し訴訟の経過において,被告青山が本件商標入りの紳士用衣料製品を販売していること知った。当時,Aは,被告MODECOMとの間でYin&Yang商標の使用許諾料に関する訴訟が係属しており,被告MODECOMはAに提出していた売上表に誤りがあることを自認していながら,訴訟において真実の売上表を提出することを拒んでいた。そのためAらは,本件商標の不正使用の状況について調査をするため,また,訴訟の証拠を収集するため,被告蝶理に対し,本件商標の使用状況について話を聞きたい旨申し入れた。 被告蝶理はAらの申し入れに応じ,平成22年4月15日に,被告蝶理においてAらと面談をした。その際,Aらは,被告MODECOMが本件商標を無断で使用しているため,仮に被告蝶理と被告MODECOM間で,本件商標に関しサブライセンス契約や本件商標が使用された経緯が分かる関係書類が存在するのであれば,それら関係書類を開示するよう求めた。 また,被告MODECOMが訴訟経過において証拠を提出しないことを説明し,被告蝶理が保有している売上表等についても合わせて開示するよう求めた。 それらのAらの申出に対し,被告蝶理の担当者は,「存在する資料はすべてお渡しします」と述べた上で,Aに対し,本件商標の使用に関する関係書類や ている売上表等についても合わせて開示するよう求めた。 それらのAらの申出に対し,被告蝶理の担当者は,「存在する資料はすべてお渡しします」と述べた上で,Aに対し,本件商標の使用に関する関係書類やYin&Yang商標を付した製品の売上げについて資料を提示する条件として,本件各誓約書に署名押印することを求めた。Aらは,被告 - 19 -蝶理の申出を受け入れ,平成22年5月12日,本件各誓約書に署名押印をした。なお,この際,A及びラ・キュアーと被告蝶理との間で,金銭の授受は一切行われなかった。 しかし,本件各誓約書締結後,Aが被告蝶理から受け取った資料は,指示票(甲2)及び売上表(甲7)のみであった。さらに,売上表(甲7)は,重要な部分が手書きであることや,担当者の印も漏れていて成立の真正が不明であること,被告蝶理が作成者であるにもかかわらず,被告MODECOM(当時の商号である「H研究所」)のマークが印字されており,正しい売上げを反映しているのか非常に疑わしいものであった。 そのため,Aらが被告蝶理に対し,改めて本件商標の使用に関する関係資料及びYin&Yang商標を付した製品の売上げに関する資料一切の開示を求めたところ,被告蝶理の担当者は,被告MODECOMが被告蝶理に対し差し入れた誓約書(甲3)をAらに見せた上で,被告MODECOMから,Aと係争中であるため本件商標の関連資料を含む書類一切を見せないよう指示された,という理由により,結局Aらに対しYin&Yang商標を付した製品の売上に関する資料を開示しなかった(甲21の1~3)。 Aらは,被告MODECOMが被告蝶理に差し入れた誓約書の日付(平成22年4月30日)が,本件各誓約書に署名した日(平成22年5月12日)より前であったことから,被告蝶理がAの請求する帳 3)。 Aらは,被告MODECOMが被告蝶理に差し入れた誓約書の日付(平成22年4月30日)が,本件各誓約書に署名した日(平成22年5月12日)より前であったことから,被告蝶理がAの請求する帳簿や関係資料を開示する意思がないにもかかわらず,その事実を秘匿したままAに本件各誓約書を提出させたことを知った。 A及び同席していた原告は被告蝶理の不誠実な態度に怒り,本件各誓約書の無効を主張して,再度被告蝶理に対し売上帳簿等の提出を求めたところ,被告蝶理がAに対し「蝶理株式会社に対する平成22年5月12日付誓約書の有効性について今後,名目形式の如何を問わず,争うことは致しませ - 20 -ん。」などの文言が入った新たな誓約書(甲32)の提出を求めたため,Aは被告蝶理の態度に不信感を強め,署名を拒否した。 その後,Aは,平成23年6月22日,被告蝶理に対し,本件各誓約書を差し入れた際の条件が成就しなかったことを理由に,本件各誓約書は無効(なお,実際の通知書には「解除」と記載されているが,趣旨は停止条件の不成就が確定したこと旨通知するものである。)である旨を通知した(甲33の1)。 本件各誓約書は,被告蝶理がAらに対し,本件商標の使用に関する関係書類やYin&Yang商標を付した製品の売上表等の存在する関係資料一切を開示することが本件各誓約書の停止条件であるにもかかわらず,甲2,甲7以外の資料を開示することを拒否したことにより,停止条件が成就しないことが確定した。そのため,本件各誓約書は民法127条1項により効力が発生していない。 また,条件が成就しないことが本件各誓約書作成時において確定していた,若しくは,不能な条件であるから,民法131条2項,133条1項に照らしても無効である。 (2) 被告蝶理は,被告MODECO また,条件が成就しないことが本件各誓約書作成時において確定していた,若しくは,不能な条件であるから,民法131条2項,133条1項に照らしても無効である。 (2) 被告蝶理は,被告MODECOMの誓約書(甲3)により,被告MODECOMに了承を得ない限りは原告らに関係書類を提出しないことを秘匿して本件各誓約書を提出させており,Aは,被告MODECOMが訴訟において資料を提出しないためやむを得ず被告蝶理に資料提示の協力を仰いでいる旨,動機を伝えている。にもかかわらず被告蝶理は被告MODECOMの誓約書を理由に資料の開示を拒んだため,本件各誓約書の法律行為の要素に錯誤があるから,民法95条により無効である。 また,被告蝶理の背信性に照らしても,信義則,権利濫用法理に照らしても,被告蝶理らは本件各誓約書の有効性を主張することはできない。 - 21 - 3 争点(3)(Aからラクラ及びラ・キュアーに対する商標権移転の効力の有無)について〔原告の主張〕本件商標の商標権者は,登録上の名義は当初の権利者であったAからラクラへと移転しているが,ラクラの代表者はAであり,登録者のAとラクラの住所は同一であった(甲12)。また,清算会社が解散後に権利を取得した場合,その限りで清算会社は存続するものであり,Aはラクラの清算人かつ100%株主であったことから,ラクラが解散後に取得した権利義務についても,Aが引き継いでいる。このような事情に鑑みれば,ラクラ清算後のラクラの登録については,Aが権利者である旨登録されていることと同一視できるものである。 さらに,本件商標はAのフルネームそのものであり,Aはデザイナーとして名を馳せていたから,本件商標は,Aのパブリシティ権としての性格をも兼有するものである。このような商標について,名 のである。 さらに,本件商標はAのフルネームそのものであり,Aはデザイナーとして名を馳せていたから,本件商標は,Aのパブリシティ権としての性格をも兼有するものである。このような商標について,名目的な登録がないことだけを理由に,権利者であり,しかもパブリシティ権をも有する者からの不当利得返還請求を認めない場合,被告らは本来であれば権利者に返還すべき利得を確定的に取得することになり,正義に反する。 したがって,いずれの観点に照らしても被告蝶理及び被告青山の登録に関する主張には理由がない。 〔被告蝶理及び被告青山の主張〕商標権の移転はこれを登録しなければ効力を生じないところ(商標法35条,特許法98条1項),本件商標に係る商標登録原簿には,ラクラからAに対する本件商標権の移転は登録されておらず(甲12),ラクラからAに対する本件商標権の移転の効力は生じていないため,平成15年5月12日から平成1 - 22 -6年3月25日までの期間については,Aが本件商標の権利者であった事実は認められず,また,平成16年3月26日に,Aがラ・キュアーに本件商標権を移転した事実も同様に認められない。 なお,ラクラの清算は平成15年5月1日に完了していることから(甲14),同日以降に,Aが不当利得返還請求権を取得することはできない。加えて,ラクラ清算後のラクラの商標登録について,Aの商標登録と同視できるとの原告主張は,商標法35条が準用する特許法98条の文言に明確に反する。 ラクラの商標登録をAの商標登録と同視することはできない。 4 争点(4)(原告による訴訟遂行が違法な訴訟信託に該当するか)について〔被告らの主張〕A及びラ・キュアーの原告に対する債権譲渡は,原告に対する取り立て委任を目的としたものであり,信託法10条の訴訟 )(原告による訴訟遂行が違法な訴訟信託に該当するか)について〔被告らの主張〕A及びラ・キュアーの原告に対する債権譲渡は,原告に対する取り立て委任を目的としたものであり,信託法10条の訴訟信託の禁止に該当し,無効である。 〔原告の主張〕A及びラ・キュアーの原告への債権譲渡は,譲渡の原因が存し,対価性もあるもので,債権譲渡から提訴まで一定の時間も経っているものであり,取り立て委任目的ではなく,訴訟信託には該当しない。 5 争点(5)(被告蝶理及び被告青山の故意・過失ないし悪意の有無)について〔原告の主張〕(1) 商標権侵害を理由とする不当利得返還請求について過失の要件は不要であると解されるが,被告らの故意・過失については以下のとおりである。 被告MODECOMは,Aから本件商標について使用許諾を得ていないことを認識していながら,使用許諾を得たという前提の下,被告蝶理らに対し本件商標の使用を許諾して,被告青山に販売させたものである。したがって,本件商標の無断使用について,被告MODECOMには当然故意・過失が存在する。 - 23 -被告蝶理は,本件商標の使用に関し,被告MODECOMがAから有効なマスターライセンスを得ているのかについて,Aと被告MODECOMとの間の契約書等,本件商標権使用のための法的根拠をなんら確認せず,またA本人に照会することを怠ったまま,被告MODECOMの言われるままに本件商標の入った紳士用衣料製品を生産したものであり,被告蝶理には過失が存在する。 被告青山についても,被告蝶理と同様,被告MODECOMがAから有効なマスターライセンスを得ているかについて確認を怠った過失が存在する。なお,被告青山は,単に被告蝶理から本件商標入りの紳士用衣料製品を納入していたと ,被告蝶理と同様,被告MODECOMがAから有効なマスターライセンスを得ているかについて確認を怠った過失が存在する。なお,被告青山は,単に被告蝶理から本件商標入りの紳士用衣料製品を納入していたというにとどまらず,店舗や被告青山のホームページ(甲5)において,本件商標を掲げてAがプロデュースしているかのようにして販売促進を図っており,本件商標の使用許諾について,被告MODECOMとAの有効なマスターライセンスの存在につき,独自に確認すべきであったにもかかわらず,それを怠っているものである。 さらに,被告青山については,自社で扱っているブランドについては,そのデザイナーを呼んで定期的にデザイナー企画会議を行っていた。しかしAはその企画会議に一度も呼ばれたことがなかった。このことは,被告青山が本件商標について,使用許諾を得ていないことを認識していたことの証左である。 (2) 被告らは,Aと被告MODECOMとのYin&Yang商標に関する各契約をもって,本件商標の使用根拠と主張するが,被告MODECOMがAとの契約を解除した平成20年9月22日以降も,被告青山は,本件商標入りのスーツを販売していた。このことからも,Yin&Yang商標に関する契約は本件商標の使用とは無関係であることが明らかである。 (3) これら被告らの本件商標使用に関する態様を踏まえると,被告らは本件商標に関し,使用権限がないことを知りながら本件商標を使用していたものであり,不当利得における悪意の受益者(民法704条)である。 〔被告蝶理及び被告青山の主張〕 - 24 -(1) 仮に原告が主張するように,被告MODECOM及び被告蝶理において,本件商標権の使用につき,有効な許諾を受けていなかったとしても,被告蝶理は被告MODECOMより,本件商標の使 24 -(1) 仮に原告が主張するように,被告MODECOM及び被告蝶理において,本件商標権の使用につき,有効な許諾を受けていなかったとしても,被告蝶理は被告MODECOMより,本件商標の使用についてはAら本件商標の商標権者より有効に許諾を受けているため,その使用には問題がない旨説明を受けており,また,被告蝶理が本件商標を使用している間に,Aら本件商標の商標権者又は被告MODECOMから,本件商標の使用について異議の申出等も一切なかった。 したがって,被告蝶理には本件商標権の侵害について,過失は存在しない。 この点,商標権侵害に関して不当利得の成立が認められる範囲については,商標法が,商標権侵害についての損害賠償を有責の場合に限定し(商標法38条3項),かつ,それが短期の消滅時効にかかること,さらに軽過失において賠償額の軽減を規定していること(商標法38条4項)との均衡を考えると,利得者が有責の場合に限定することが妥当であると解されるところ,本件商標の使用による本件商標権の侵害について被告蝶理に過失は存在しないのであるから,A及びラ・キュアーから被告蝶理に対する本件商標権の侵害による不当利得返還請求は認められない。 (2) 上記(1)と同様の理由により被告蝶理は悪意の受益者でもない。 (3) 被告青山についても同様に過失がなく,また悪意の受益者でもない。 6 争点(6)(Aらの損失の発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 被告蝶理は,別紙売上金額等のとおり平成14年5月1日から現時点で売上げの詳細が判明している平成20年4月30日に至るまで,本件商標の入った紳士用スーツを被告青山に少なくとも合計43万5285着販売したことにより,少なくとも合計32億2503万1935円を売り上げた(甲 いる平成20年4月30日に至るまで,本件商標の入った紳士用スーツを被告青山に少なくとも合計43万5285着販売したことにより,少なくとも合計32億2503万1935円を売り上げた(甲 - 25 -7)。 被告蝶理の利益率が少なくとも10%だとすると,被告蝶理には少なくとも3億2250万3194円の利得が存在する。 (2) 被告MODECOMは,平成14年5月1日から現時点で売上げの詳細が判明している平成20年4月30日に至るまで,本件商標の入った紳士用スーツを被告蝶理に作成させたことにより,本件商標の許諾料として,少なくとも被告蝶理の売上の5%に相当する1億6125万1597円の利得が存在する。 (3) 被告蝶理は,被告青山に対し,平成14年5月1日から現時点で売上げの詳細が判明している平成20年4月30日に至るまで,本件商標の入った紳士用スーツを少なくとも合計43万5285着販売した。また,本件商標の入った紳士用スーツは,被告青山の各店舗において,1着3万9000円から5万9000円で販売されていた(甲4)。 被告青山が被告蝶理から仕入れた本件商標入り紳士用スーツについて,仕入数の7割を販売し,利益率が10%だとすると,少なくとも3万9000円×43万5285着×0.7×0.1=11億8832万8050円の利得が存在する。 (4) ラクラは,本件商標の商標権者となった平成13年1月9日から清算日である平成15年5月12日までの間,被告らが本件商標の入った紳士用スーツを販売したことにより,同期間において被告らが得た各利得と同額の損害を被り,Aが,ラクラの清算により100%株主としてラクラの残余財産を全部引き受けたため,その不当利得返還請求債権も全部承継した。また,Aは,本件商標の商標権者であった平成15 た各利得と同額の損害を被り,Aが,ラクラの清算により100%株主としてラクラの残余財産を全部引き受けたため,その不当利得返還請求債権も全部承継した。また,Aは,本件商標の商標権者であった平成15年5月12日から平成16年3月25日までの間,被告らが本件商標の入った紳士用スーツを販売したことに - 26 -より,同期間において被告らが得た各利得と同額の損害を被った。ラ・キュアーは,本件商標権者となった平成15年5月26日以降,被告らが本件商標の入った紳士用スーツを販売したことにより,同日以降,被告らが得た各利得と同額の損害を被った。 〔被告らの主張〕否認ないし争う。なお,原告が主張する被告らの利得算定の基準となっている被告蝶理の売上報告書(甲7)記載の売上高は,あくまでもYin&Yang商標というブランド名に,「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を付随的に併記した製品についての売上高であり,その表示は当該売上げに寄与していない。 第4 当裁判所の判断 1 証拠(甲1~104,106,107,乙A1~15,乙B1~19,乙C1~5,証人A,証人D,原告本人,被告MODECOM代表者H)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる的確な証拠はない(なお,各段落の末尾に掲載された証拠は認定の根拠となる主要な証拠である。)。 (1) Aは,昭和57年ころ,紳士服のブランドである「Yin&Yang(インアンドヤン)」及び株式会社イン・アンド・ヤンを立ち上げ,昭和56年7月31日から昭和62年1月9日にかけて,別件各商標権のうち,第4255166号のものを除く商標につき出願をし,昭和59年5月から平成元年10月31日にかけて順次設定登録を受けた。その後,同ブランド及びAは知名 和62年1月9日にかけて,別件各商標権のうち,第4255166号のものを除く商標につき出願をし,昭和59年5月から平成元年10月31日にかけて順次設定登録を受けた。その後,同ブランド及びAは知名度を上げた。 平成4年5月25日発行の雑誌「Ritz」には,Aのデザインに係る紳士服の広告が掲載されているところ,そこには「Yin&Yang」を中央に大きく表示し,その上に小さく「MODEPOURHOMMES」 - 27 -と,「Yin&Yang」の下に小さく「PAR」「KATSUSHIGEMURAOKA」と二段に分けて表示されている。〔乙A3〕しかし,株式会社イン・アンド・ヤンは,平成7年に資金繰りに行き詰まって債務整理を行うこととなり,同年6月30日に解散した。〔乙A1,乙A8〕Aは,平成8年ころから米国で生活するようになり,同国でラクラを設立し,ブティックを経営していた。〔乙A1〕(2) 被告MODECOMは,平成7年ころから,ブランド再生ビジネス(衰退したブランドを復活させた上,ライセンス契約をして収入を得る事業)を企画していたところ,その候補として「Yin&Yang」のブランドを取り上げることとし,Hにおいて,Aとの間で交渉をするようになり,Aと被告MODECOMは,平成9年9月13日付けでYin&Yang商標の使用等に関する基本契約を締結した。〔甲70〕この間,Aは,平成9年8月8日,別件各商標権のうちのYin&Yang商標(第4255166号)について登録申請をし,平成11年3月26日に設定登録を受けた。〔乙A1,乙A8〕また,Aは,平成11年6月1日,本件商標を出願し,平成12年4月7日に商標登録がされた。そして,同年12月18日に,本件商標はラクラに移転登録がされた 定登録を受けた。〔乙A1,乙A8〕また,Aは,平成11年6月1日,本件商標を出願し,平成12年4月7日に商標登録がされた。そして,同年12月18日に,本件商標はラクラに移転登録がされた。 Aと被告MODECOMは,平成11年6月30日,Yin&Yang商標を付帯する紳士重衣料に関し,上記平成9年9月13日付け基本契約に基づき,被告蝶理のYin&Yang商標を付帯する紳士重衣料に関する覚書を締結した。なお,同覚書の当事者欄には「A」と表示されている。 〔甲51の1〕上記平成9年9月13日付けAと被告MODECOMとの間のYin&Yang商標の使用等に関する基本契約は更新された。〔乙A1〕 - 28 -(3) 訴外パピヤン株式会社(以下「パピヤン」という。)は,前記(1)の株式会社イン・アンド・ヤンについての平成7年1月以降のスーツ等の加工に係る売掛金債権に関連し,Aに対し,元本のみで1670万円を超える債務名義を有していたところ,平成12年11月10日,パピヤンは,東京地方裁判所から,Aと被告MODECOMとの間のデザインブランド使用料などを差し押さえる旨の債権差押命令を得た。〔乙A1〕被告MODECOMらは,Aの弁済資金を調達するため,Yin&Yang商標に係る別件各商標権(なお別件各商標権については,一部「incense(インセンス)」に係る商標も含まれる。乙A1。)を被告MODECOMに対して譲渡することとし,譲渡対価及び被告MODECOMからの借入れにより,上記債務については弁済された。その際,Aと被告MODECOMとの間で,上記Yin&Yang商標の使用等に関する基本契約についても必要な変更契約を締結することが合意された。〔乙A1〕(4) なお,この頃の は弁済された。その際,Aと被告MODECOMとの間で,上記Yin&Yang商標の使用等に関する基本契約についても必要な変更契約を締結することが合意された。〔乙A1〕(4) なお,この頃の平成13年(2001年)2月7日付けでラクラとA名義で株式会社H商品研究所(被告MODECOMの旧商号)に宛てた手紙には,「Yin&Yang」の下に,小さく「katsushigemuraoka」と表記されている。〔乙A2〕また,同年11月末日付けラクラとA名義で株式会社H商品研究所(被告MODECOMの旧商号)に発行した領収書にも「Yin&Yang」の下に,小さく「katsushigemuraoka」と表記されている。〔乙A4〕(5) A及びラクラと被告MODECOMは,平成13年6月1日,本件許諾契約を締結した。そこにおいては,紳士服等に係るYin&Yang商標について,被告MODECOMが商標権者であることを保証するとともに,Aらは被告MODECOM以外にはデザインの使用権を許諾してはならないこと,被告MODECOMは第三者との間でYin&Yang商標とデ - 29 -ザイン使用に関する許諾契約を締結することができること等が明記された。 〔甲20〕同日,A及びラクラと被告MODECOMは,本件許諾契約に基づく覚書を締結した。〔甲19〕なお,平成14年1月1日付けで,Aと被告MODECOMは,平成11年6月30日付けで締結されたYin&Yang商標を付帯する紳士重衣料製品の商標及びデザイン使用許諾契約の中途解約確認書を締結しているところ,Aを示す当事者甲には,「LaCuraCO.LTD」と表示されてラクラの米国カリフォルニア州の所在地が記載されている。また,Aの表示には「A/K 用許諾契約の中途解約確認書を締結しているところ,Aを示す当事者甲には,「LaCuraCO.LTD」と表示されてラクラの米国カリフォルニア州の所在地が記載されている。また,Aの表示には「A/KATSUSHIGEMURAOKA」と記載されている。 〔甲51の2〕Aは,被告MODECOMとの間で,平成14年4月29日,本件許諾契約を「原契約」とし,これに基づき,被告蝶理に対し「インアンドヤンの商標」を紳士重衣料製品に付帯して使用することについて合意する覚書を締結した。その「第七条(在庫品の販売猶予)」には,「本契約が期間満了,中途解約あるいは解除により終了したとき,乙は蝶理をして,本覚書製品の製造を直ちに中止し,契約終了日より6ケ月間に限り販売することができるものとする。」等と規定されている(Aを「甲」とし,被告MODECOMを「乙」とする。)。なお,同覚書において,Aを示す当事者甲には,「LaCuraCO.LTD」と表示されてラクラの米国カリフォルニア州の所在地が記載されている。また,Aの表示には「A/KATSUSHIGEMURAOKA」と記載されている。〔甲81の1〕被告MODECOMと被告蝶理は,平成14年4月30日付けで,Yin&Yang商標及びデザインについての使用契約を締結した。〔乙B5〕被告MODECOMの木村滋は,平成14年6月19日,被告蝶理アパ - 30 -レル第4部のIに対し,商品ロゴに関し,「Yin&Yang」を中央に大きく表示し,その上に小さく「MODEPOURHOMMES」と,「Yin&Yang」の下に,小さく「KATSUSHIGEMURAOKA」あるいは「BYK.MURAOKA」と表示するよう指示を出した。〔甲2〕被告蝶理は,商品 HOMMES」と,「Yin&Yang」の下に,小さく「KATSUSHIGEMURAOKA」あるいは「BYK.MURAOKA」と表示するよう指示を出した。〔甲2〕被告蝶理は,商品ロゴ等に,「Yin&Yang」を中央に大きく表示し,その上に小さく「MODEPOURHOMMES」と,「Yin&Yang」の下に小さく「KATSUSHIGEMURAOKA」と表示したスーツを作成し,被告青山を通じて販売した。 (6) Aは平成15年に日本に帰国し,同年6月24日にラ・キュアーを,同年9月18日には株式会社カツシゲムラオカを設立した。〔乙A6,5頁〕本件商標につき,平成16年3月16日付けで,ラクラからラ・キュアーに対する移転登録がされた。 株式会社カツシゲムラオカは,平成17年5月13日付けで東京地方裁判所において破産手続開始決定を受け,同手続は同年10月13日をもって終結した。〔甲72,7頁〕Aは,平成19年11月1日,スーツ等の指定商品に関し中国における「KATSUSHIGEMURAOKA」商標の登録状況についての調査結果として,被告MODECOMにより,「Yin&Yang/KATSUSHIGEMURAOKA/A勝重・・・」として平成16年2月12日に出願され,平成19年9月28日から平成29年9月27日までを存続期間として商標登録がされている旨の弁理士からの報告を受けた。 〔甲74〕(7) 平成20年9月16日に,Aは,Hに対し事前に連絡を取った上で面会することとなっていたが,当日に至り体調不良であるとして,原告をAの - 31 -代理人としてHに対し面会を求めた。同日の面会にAは現れず,Hは,2008年(平成20年)9月16日付けで,Aに対する下記の内容 当日に至り体調不良であるとして,原告をAの - 31 -代理人としてHに対し面会を求めた。同日の面会にAは現れず,Hは,2008年(平成20年)9月16日付けで,Aに対する下記の内容の手書きの誓約書を原告に手渡した。〔甲28,乙A1,18頁〕「A様誓約書過去数年間(5年間ほど)において,Yin&Yanの報告に対して差異があったことを認めます。但し条件開示はいたします。 (蝶理に関する件)。青山にての販売の件。 H08.9.16」これに対しHは,A及びBに対し,同月22日付けで,「A様には先般9月16日にご来阪,ご挨拶いただけるということで,お会いできることを大変楽しみにしておりました。しかしながら,初めてお会いする方が突然来訪され,『会社の顧問です。Aは近くまで来ていますが昼食後体調悪く病院にいますがすぐ来ます。』と言われ,失礼にならぬように対応をしていたのですが,A様がなかなかお見えにならないので,『まだ来られないのでしょうか。』とたずねたところ『もう来ます。』『もう来ます。』とのことでしたので,しばらくお話をうかがっておりました。・・・双方の信頼関係のもと,約10年間に渡り友好的にお付き合いができたことは今でも誇りに思います。 しかし9月16日LACURA社顧問のKの訪問以来わずか数時間でその信頼関係は崩れてしまいました。5000万円の法外な現金要求,その後の二人での会談の申込み破談,蝶理社への直接訪問,このような貴社の行為は,友好な契約を持続させてきた当事者間では到底考えられない行為であり,未だ何か夢のようと言わざるを得ません。」などと記載したメールを送信した。 - 32 -〔甲80〕(8) 被告MODECOMは,平成20年9月22日付けで,Aに対し,本件許諾契約の解 だ何か夢のようと言わざるを得ません。」などと記載したメールを送信した。 - 32 -〔甲80〕(8) 被告MODECOMは,平成20年9月22日付けで,Aに対し,本件許諾契約の解除を通知した。〔甲107〕また,Aは,同月27日付けで,被告MODECOMに対し,本件許諾契約の解除の意思表示をした。 Aは,同月29日に別件各商標権についての買い戻しの意思表示をしたと主張し,その後,大阪地方裁判所に別件各商標権についてAに帰属することの確認等を求める訴えを提起した(前記大阪地裁平成20年(ワ)第13503号商標権侵害差止等請求事件)。 (9)ア Aは,被告蝶理に対し,平成22年3月5日,被告青山商事によるAの個人名使用に関する問い合わせのため直接面談を行いたいので,Aの「プロデュース契約の担当者」である原告に対し連絡を取るよう申し入れるとともに,連絡がない場合には被告青山に直接尋ねることを申し添えるとした書面を交付した。〔甲29,乙B15の2〕被告蝶理が被告MODECOMに対応を委ねたところ,被告MODECOMは,代理人弁護士を通じ,Aに対し,民事訴訟が係属中であること等から配慮を求める内容の書面をAの代理人弁護士宛て送付すると共に,Aの上記書面を係属中の訴訟に書証として提出した。〔乙B7,15の1〕これに対し,Aは,同月25日,被告蝶理宛て,再度,Aの個人名使用について話し合いで解決を希望するので,直接面談したい,ついてはAの「プロデュース契約担当者」である原告まで至急連絡するよう申し入れる文書を送付した。〔乙B7〕原告及びAと,被告蝶理従業員であるD,E及びFらは,同年4月15日に面談した。〔その際のやりとりの反訳として,甲36の1〕 - 33 -Fは,同年5月10日,Aに対し 〔乙B7〕原告及びAと,被告蝶理従業員であるD,E及びFらは,同年4月15日に面談した。〔その際のやりとりの反訳として,甲36の1〕 - 33 -Fは,同年5月10日,Aに対し,下記ウ(ア)及び(イ)記載の内容の本件各誓約書の手書きの部分以外が記載されたものを添付してメールで送信した。Aに対して送信されたメールには,「先日の面談の内容を弊社内で協議しました結果,弊社作成の生産報告書および個人名使用の経緯に関する文書をA様に提出させていただくことになりました。つきましては,A様の個人名使用に関する件を不問にしていただく旨の誓約書を弊社にて作成しましたので,添付いたします。なお,本件で問題となっております『KATSUSHIGEMURAOKA』が個人名及び登録商標であることから,添付しました誓約書にA勝重様と商標権者である有限会社ラ・キュアー様の御署名・御捺印を頂きたく存じます。御捺印は,A様の実印及びラ・キュアー様の代表者印でお願いいたします。」と記載されている。 〔乙B9の1~3〕イさらに,原告及びAと,D,E,F及びGは,平成22年5月12日に面談した。〔その際のやりとりの反訳として,甲37の1(要旨のみ),42(全体の反訳)〕その際,被告蝶理従業員のGは,Aらに対し,①2002年(平成14年)5月1日から2008年(平成20年)4月30日までのYin&Yang商標に関する年次売上報告書,②「MURAOKAKATSUSHIGE」使用経緯に関する文書を提出した。〔甲2,7〕ウ(ア) Aは,平成22年5月12日付けで,下記内容のA誓約書を被告蝶理宛て提出した(日付の数字部分,住所及び氏名の具体的記載部分はいずれも手書きであり,押印がされている。)。被告蝶理は,A誓約書につき,公証人の同月13日の確定日 付けで,下記内容のA誓約書を被告蝶理宛て提出した(日付の数字部分,住所及び氏名の具体的記載部分はいずれも手書きであり,押印がされている。)。被告蝶理は,A誓約書につき,公証人の同月13日の確定日付を得た。〔乙B1〕記 - 34 -「蝶理株式会社殿誓約書私,A勝重は,蝶理株式会社及び青山商事株式会社が,『KATSUSHIGEMURAOKA』,『カツシゲムラオカ』及び『A勝重』という個人名を付して紳士衣料品を販売したことに関して,損害賠償その他名目形式の如何を問わず,蝶理株式会社及び青山商事株式会社に対し,一切の請求を行わないことを確約いたします。 平成22年5月12日住所東京都新宿区<以下略>氏名 A」(イ) また,被告蝶理は,ラ・キュアーからも,同年5月12日付けで下記内容のラ・キュアー誓約書を得た(日付の数字部分,代表取締役以下の記載はいずれも手書きであり,AB名の押印がされている。)。被告蝶理は,ラ・キュアー誓約書につき,公証人の同月13日の確定日付を得た。〔乙B2〕記「蝶理株式会社殿誓約書弊社,有限会社ラ・キュアーは,蝶理株式会社及び青山商事株式会社が,『KATSUSHIGEMURAOKA』という商標(登録番号第4784253号・登録番号4373618号)を付して紳士衣料品を販売したことに関して,損害賠償その他名目形式の如何を問わず,蝶理株式会社及び青山商事株式会社に対し,一切の請求を行わないことを確約いたします。 - 35 -平成22年5月12日東京都目黒区<以下略>有限 問わず,蝶理株式会社及び青山商事株式会社に対し,一切の請求を行わないことを確約いたします。 - 35 -平成22年5月12日東京都目黒区<以下略>有限会社ラ・キュアー代表取締役 AB」(ウ) 上記平成22年5月12日の面談において,Aらから,被告蝶理に対し,①被告MODECOMのアプルーバルチェックについての調査,②平成20年5月以降のYin&Yang商標に関する売上報告書,③平成14年以前のオンワード樫山向けのYin&Yang商標を付した製品の売上報告書の開示の依頼があった。〔乙B11,17〕エ(ア) 平成22年6月1日,Dは,被告MODECOMからのアプルーバルは絵姿で行っていること,平成20年5月以降のYin&Yang商標に関する売上報告書については見あたらないが再度調べて連絡する旨,平成14年以前のオンワード樫山向けのYin&Yang商標を付した製品の売上報告書については古い書類であり時間を掛けて探したが見つからない旨,Aの個人名を表示して製品生産・納品等した期間は2002年9月から2008年3月の間の納品であること,生産はその約2か月前であることを記載したメールを原告に送信した。〔乙B12〕(イ) これに対し原告は,平成22年6月6日,「当方は蝶理様と下記により誓約書を締結いたしました。1 Aの個人名使用の経緯について。2個人名使用期間について 3 Aの個人名使用による製品の売り上げおよび利益について以上について蝶理様が下記の通り回答されたため。 記 1についてはHの説明を受けAが承諾していると認識していたこと,その対価をHに支払っていること。2については調査中。3については一部開示。当方は蝶理様がA個人名使用の経緯の善意性および明細書の ついてはHの説明を受けAが承諾していると認識していたこと,その対価をHに支払っていること。2については調査中。3については一部開示。当方は蝶理様がA個人名使用の経緯の善意性および明細書の - 36 -開示による利益の開示をもって,当方がすべてを認識した結果において蝶理様に対し一切の請求をしない誓約書を締結したものであります。当方がすべてを認識していない時点において誓約書を先に締結した経緯は蝶理様を信じ前記書類を提示していただけるものとの前提に立ち締結したことをご理解ください。」などとするメールをDに送信した。〔乙B12〕(ウ) Dは,平成22年6月15日,原告に対し,上記(イ)のメールに記載された内容は,被告蝶理の認識と異なるとした上で,「a)誓約書締結条件に関する弊社の認識は,下記資料の提出:①インアンドヤンの売上報告書 ②A様個人名使用の経緯説明資料 b)又,5/12弊社にご来社頂いた折に御社より追加で依頼あった事項下記:A.オンワード向け対応期間の売上報告書 B:08年5月以降のインアンドヤンの売上報告書 C:アプル-バルチェックは蝶理からHにどのような方法で出されていたかの説明 5/12面談時,これらの追加依頼事項に関して,弊社内で調査・協力をすることお応えしました。これら追加依頼事項は調査してみなければ分からないものゆえ,全てにお応えできるとお約束すること不可能でした。又,この追加依頼事項が当日誓約書締結の必須条件という認識でもありませんでした。弊社としましては,上記①②の資料をお渡しした時点で誓約書取得の条件を満たしたと認識しています。 もっとも,追加依頼事項に関しては,その後具体的な調査と係る協力をさせて頂きました。その結果を別メールにて報告させて頂きます。」とするメールを送信し,その後,Aの個人名 を満たしたと認識しています。 もっとも,追加依頼事項に関しては,その後具体的な調査と係る協力をさせて頂きました。その結果を別メールにて報告させて頂きます。」とするメールを送信し,その後,Aの個人名使用による納品は2008年9月までの納品であり前回の報告は誤りである旨などの調査結果を報告する趣旨のメールも送信した。〔甲21の1,乙B12〕 - 37 -(エ) これに対し原告は,平成22年7月9日,2008年5月1日から同年9月30日の期間における売上報告書の開示を求める,係争中のため提出ができないとの回答は誓約書締結条件違反であるなどとした上で,「恐れ入りますが回答日に付きまして1週間以内の回答及び書類の提出をお願いいたします。当方はA個人名使用について蝶理様を信じ蝶理様が善意の第3者であろうとの判断から個人名使用における金銭及び対価を一切請求していません。貴社の誠意ある回答をお待ちしています。」などとするメールを被告蝶理のDに対し送信した。〔甲21の1〕(オ) Dは,平成22年7月16日,「08年5月以降のインアンドヤンの売上報告書前回お渡ししました売上報告書もH商品研究所側の承諾を得て御社に提出致しました。今回も同様にH側の承諾を求めたものですが,H側が係争中の為に追加資料の提出は控えて欲しいとのことで承諾を得られなかったものです。弊社もH側との付き合いがあり勝手に資料を提出することは差し控えたいのですが,例えばお越しいただいた折りにお見せすることは可能です。」とするメールを原告に送付した。〔乙B13〕オ原告とDは,平成22年10月13日に面談した。〔その際のやりとりの反訳として,甲40の1(要旨のみ),43(全体の反訳)〕同日の面談において,Dは,平成20年5月から同年9月までの期間を対象とし Dは,平成22年10月13日に面談した。〔その際のやりとりの反訳として,甲40の1(要旨のみ),43(全体の反訳)〕同日の面談において,Dは,平成20年5月から同年9月までの期間を対象とした売上報告書を原告に対し開示したところ,原告はこれを書き写した。〔証人D7~8頁,乙B17〕上記面談の翌日である平成22年10月14日,大阪地方裁判所において,A,ラ・キュアーと被告MODECOMとの間の前記平成20年(ワ)第13504号損害賠償請求本訴事件,平成21年(ワ)第62 - 38 -9号損害賠償請求反訴事件の口頭弁論期日が開かれ,A及びHの尋問が行われる予定であったが,Aは病気である旨同裁判所に連絡して出頭せず,Hの尋問が行われた。なお,Aの尋問はその後の同年12月6日に行われた。〔甲73,104〕カ原告は,平成22年12月30日,Dに対し,これまでの被告蝶理の回答内容を確認するメールを送信した。〔乙B14〕さらに原告は,平成23年1月15日,確認事項についての返答が同月20日までになされない場合には被告青山に伺いに行く予定ですなどと記載したメールをDに送信した。〔甲21の3〕被告蝶理は,Aらに対し,「1 蝶理株式会社に対する平成22年5月12日付誓約書の有効性について,今後,名目形式の如何を問わず,争うことは致しません。」,「2 蝶理株式会社及び青山商事株式会社に対して,名目形式の如何を問わず,今後,一切の書類提出・情報提供を求めません。」との内容を確約する旨の書面(甲32)の提出を求めたが,Aらはこれを拒否した。 キラ・キュアーは,前記オの大阪地方裁判所におけるAの尋問に先立つ平成22年11月25日,Cとの間で本件商標権について,商標権譲渡契約を締結した。同契約では,本件商標権をC らはこれを拒否した。 キラ・キュアーは,前記オの大阪地方裁判所におけるAの尋問に先立つ平成22年11月25日,Cとの間で本件商標権について,商標権譲渡契約を締結した。同契約では,本件商標権をCに譲渡し,その譲渡代金を500万円とすることに合意した上で(第1条,第2条),これを,同日,平成15年11月5日にCがラ・キュアーに貸し付けた500万円と相殺し,これにより同貸付けに対する支払を完了することで合意した(第3条)と記載されている。なお,同契約書においては,ラ・キュアーは,期間を5年間とし,譲渡価格と同額で買い戻すことができる旨が定められ(第5条),Cは,ラ・キュアーが買い戻すことができる期 - 39 -限まで本件商標権につき譲渡及び担保等の行為をすることができない旨の合意が記載されている。(第6条。なお,第6条には「第4条の買戻期限まで」と記載されているが,第4条は買戻しに関する条項ではなく,誤記と解される。)〔甲100〕ラ・キュアーは,平成22年11月25日,本件商標権につき,Cに対し移転登録をした。 なお,公認会計士であり税理士であるJ作成の原告宛て平成26年10月20日付け「有限会社ラ・キュアーの決算書について」と題する書面によれば,ラ・キュアーについては,平成21年5月以前の決算書については存在しないとされている。〔甲99〕(10) 大阪地方裁判所は,平成23年4月14日,Aと被告MODECOMとの間で平成13年6月1日に,被告MODECOMが別件各商標権について商標権を有していることを前提として,Aらは商品化に必要な資料の使用を許諾し,被告MODECOMは第三者との間でデザイン使用についての許諾契約を締結することができる,被告MODECOMはAに対し使用許諾料を支払うとする本件許諾契約が成立 は商品化に必要な資料の使用を許諾し,被告MODECOMは第三者との間でデザイン使用についての許諾契約を締結することができる,被告MODECOMはAに対し使用許諾料を支払うとする本件許諾契約が成立し,被告MODECOMは,被告蝶理に係る分として年間約300万円,Aらに対し支払うべき使用許諾料を年間1000万円となるよう計算し,これに基づく支払を行ってきたとした上で,同契約に基づく未払債務は存しないとしてAの本訴請求を棄却した。 その後の平成23年6月6日付けで,A及びラ・キュアーから原告に対し,「インアンドヤン商標」,「カツシゲムラオカ」商標関係等から生じる全ての損害賠償請求権等を総額5587万8706円で譲渡し,これと,同年5月31日現在で原告がA及びラ・キュアーに対して有する立替金債権2987万8706円及び貸付金2600万円とを相殺し清算する旨記 - 40 -載された債権譲渡契約書が作成されている。〔甲95〕A及びラ・キュアーは,同年6月22日,代理人弁護士を通じ,被告蝶理に対し,本件各誓約書につき,「同書面は,貴社が善意の第三者であることを前提に貴社から一切の金員を受領せず,交付したものです。然るにその後,貴社は善意の第三者ではなく悪意者であることが判明しましたので,通知人らは本書面により前記誓約書記載事項を撤回致します。」とする解除通知書(甲33の1)を内容証明郵便により差し出した。 (11) 大阪高等裁判所は,平成23年11月8日,Aの被告MODECOMに対する請求権はいずれも認められないなどとして,参加人である原告の請求を棄却した。 原告は上告受理申立てをしたが,平成24年7月20日不受理決定がされた。 (12) 原告は,平成25年1月7日付けで,本件訴えを提起した。 て,参加人である原告の請求を棄却した。 原告は上告受理申立てをしたが,平成24年7月20日不受理決定がされた。 (12) 原告は,平成25年1月7日付けで,本件訴えを提起した。 2 争点(1)(Aらによる,被告MODECOMに対する「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用許諾の有無等)について(1) 被告らは,被告MODECOMは原告らから「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用許諾を受けていた旨主張するので,この点につき判断する。 前記第2,2の前提事実及び上記1で認定した事実によれば,原告らが商標権侵害を主張する被告蝶理,被告青山により販売された「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示がされた紳士用スーツにおいては,中央に大きく「Yin&Yang」との表示がされ,その上に小さく「MODEPOURHOMMES」と,「Yin&Yang」の下に小さく「KATSUSHIGEMURAOKA」との表示がされているところ,この「KATSUSHIGEMURAOKA」の表記は明らかに人名であることが - 41 -読み取れるものであり,被告MODECOMが権利を有するYin&Yang商標の下に小さく表示されていること,かつて被告MODECOMにより再生ビジネスとして展開される以前においては,「Yin&Yang」の表示の下にデザイナーないし製作者名を示す「PAR」の後に「KATSUSHIGEMURAOKA」との表記がされていたこと(乙A3),平成14年頃のAと被告MODECOMとの覚書等ではAの表示に「A/KATSUSHIGEMURAOKA」と記載されていること(甲51の2,81の1),その他前記1で認定した事実を総合すると,「Yin&Yang」の下に小さく記載 OMとの覚書等ではAの表示に「A/KATSUSHIGEMURAOKA」と記載されていること(甲51の2,81の1),その他前記1で認定した事実を総合すると,「Yin&Yang」の下に小さく記載されている「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示は,商標としての記載ではなく,その商品のデザインを行ったデザイナー名として表示されたものにすぎないと認めるのが相当である。 そして,前記第2,2の前提事実,上記1で認定した事実及び証拠(被告代表者H,乙A1,10)によれば,Yin&Yang商標については被告MODECOMがその権利者であることを前提として本件許諾契約が締結されているところ,被告MODECOMは,本件許諾契約に基づき,A及びラ・キュアーに対し,Aがデザインに関与していることの顧問料的な意味合いとして毎年1000万円(被告蝶理に関する分として約300万円)の支払を行ってきたものと認められ,本件許諾契約の内容には,Aの個人名に係る「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示を使用することの許諾も含まれるものと解するのが相当である。 (2) 原告の主張に対する判断アこの点に関して原告は,Aらにおいて,被告MODECOMに対し,本件商標権の使用を許諾した事実は存しないと主張する。 しかし,上記認定のとおり,本件許諾契約においては,Aによる実質的 - 42 -な関与が乏しい中においても,A及びラ・キュアーに対し,Aがデザインに関与していることの顧問料的な意味合いとして毎年1000万円,被告蝶理に関する分としても約300万円の支払を行ってきたものであり,本件許諾契約は,Aは被告MODECOM以外の第三者にデザインの使用権を許諾してはならないとするものであるから,本件許諾契約の内容にはデザイナー 分としても約300万円の支払を行ってきたものであり,本件許諾契約は,Aは被告MODECOM以外の第三者にデザインの使用権を許諾してはならないとするものであるから,本件許諾契約の内容にはデザイナー名である「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用許諾も当然に含まれると解される。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,被告蝶理及び被告青山らが販売した紳士用スーツに付された「KATSUSHIGEMURAOKA」の表記は,本件商標を表示したものである旨主張する。 しかし,上記認定のとおり,「KATSUSHIGEMURAOKA」との表記は,Aのデザイナー名を表示するものとしてAらの許諾を得て表示されているものであるから,これについてAが本件商標権を有するものとしても,上記表示が商標権侵害となるものではない。 したがって,原告の上記主張も採用することができない。 (3) 商標権侵害を理由とする原告の被告MODECOMに対する請求について原告は,被告MODECOMにおいて,被告蝶理に対し本件商標が入った紳士用スーツの作成を指示・許可した行為が商標権侵害行為に当たると主張する。 しかし,そもそも被告蝶理に対する上記指示・許可が商標権侵害に当たるとする法的根拠は明確ではないばかりか,上記(1)のとおり,被告MODECOMは,Aらから「KATSUSHIGEMURAOKA」とのデザイナー名の表示の使用許諾を得ていること,また,本件全証拠を精査しても,被 - 43 -告MODECOMとAらとの本件許諾契約が終了した平成20年9月22日ないし同月27日頃以降に,被告MODECOMにおいて,被告蝶理に対し,本件商標が入った紳士用スーツの作成を指示ないし許可した事実は認められないから, との本件許諾契約が終了した平成20年9月22日ないし同月27日頃以降に,被告MODECOMにおいて,被告蝶理に対し,本件商標が入った紳士用スーツの作成を指示ないし許可した事実は認められないから,原告の主張する被告MODECOMの本件商標権侵害の事実を認めることはできない。 したがって,原告の被告MODECOMに対する請求は理由がないというべきである。 3 争点(2)(本件各誓約書に基づくA及びラ・キュアーの被告蝶理及び被告青山に対する請求権放棄の有無)について(1) A及びラ・キュアーは,被告蝶理及び被告青山が「KATSUSHIGEMURAOKA」との表記及び本件商標を付して紳士衣料品を販売したことについて名目を問わず被告蝶理及び被告青山に対し一切の請求を行わない旨を確約する本件各誓約書を提出しているところ,原告はその効力を争うので,以下この点につき検討する。 本件各誓約書には,Aの署名捺印及びラ・キュアー代表者としてBの署名捺印がされており,本件各誓約書には何ら条件に関する記載はないところ,Aらは,被告蝶理のFから,本件各誓約書を提出する以前の平成22年5月10日に,「弊社作成の生産報告書および個人名使用の経緯に関する文書をA様に提出させていただくことになりました。つきましては,A様の個人名使用に関する件を不問にしていただく旨の誓約書を弊社にて作成しましたので,添付いたします。」と記載されたメールを受領し,これに基づき本件各誓約書を作成して被告蝶理に対し同月12日に提出しており,同日,被告蝶理から平成14年5月1日から平成20年4月30日までのYin&Yang商標に関する年次売上報告書(甲7),「MURAOKAKATSUS - 44 -HIGE」使用経緯に関する文書(甲2)を受領しているものである 成20年4月30日までのYin&Yang商標に関する年次売上報告書(甲7),「MURAOKAKATSUS - 44 -HIGE」使用経緯に関する文書(甲2)を受領しているものであるから,本件各誓約書の提出の前提も果たされており,本件各誓約書の有効性に疑義はないというべきである。 したがって,被告蝶理宛ての本件各誓約書はいずれも有効であり,その内容からして,A及びラ・キュアーは,被告蝶理及び被告青山に対して,本件商標権及び「KATSUSHIGEMURAOKA」の表示の使用に関し,一切の請求権を放棄したものと解するのが相当である。 そうすると,原告がA及びラ・キュアーから譲り受けたとする債権はその譲渡時には存在しておらず,そもそも債権譲渡の前提を欠くから,原告は,被告蝶理及び被告青山に対し不当利得返還請求権を行使することはできないと認めるのが相当である。 (2) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件各誓約書は,正しい売上げを反映したものが提出されていない等の理由により停止条件が成就されていない,また不能な条件が付されたものである,あるいは資料提示の協力を得ることが動機である旨を伝えているのに資料開示を拒まれたから要素の錯誤により無効であるなどと主張する。 しかし,本件各誓約書については何ら条件に関する記載がなく,上記1で認定した事実に照らしても,本件各誓約書の提出の際に,請求権放棄についての条件が付されていたとの事実は認められない。加えて,Fからのメール(乙B9の1)に記載された本件各誓約書の提出の前提とされた資料についても,Aらは甲2,7のとおり交付を受けているものであるから,本件各誓約書の提出の前提についても充たされている。そして,上記1で認定した事実によれば,Aらに本件各誓約書の提出に当た された資料についても、Aらは甲2,7のとおり交付を受けているものであるから、本件各誓約書の提出の前提についても充たされている。そして、上記1で認定した事実によれば、Aらに本件各誓約書の提出に当たり要素の錯誤があるものとは認められず、また、本件各誓約書に基づく請求権放棄についての被告蝶理及び被告青山の主張が信義則に反し権利の濫用に当たるとする事情も何ら認められない。したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (3) 以上によれば、原告の被告蝶理及び被告青山に対する請求についても、いずれも理由がないものと認められる。 4 結語 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 足立拓人 (別紙)当事者目録 神奈川県横須賀市<以下略> 原告 K 同訴訟代理人弁護士 岩出誠 同 中村博 同 村林俊行 同 石居茜 同 木原康雄 同 村林俊行同石居 茜同木原康雄同村木高志同岩野高明同難波知子同竹花 元同鈴 木 みなみ大阪市中央区<以下略>被告 MODECOM株式会社同訴訟代理人弁護士齋藤 大同久吉一生大阪市中央区<以下略>被告蝶理株式会社同訴訟代理人弁護士荒 川 雄二郎同栗山貴行同松下 外同小野晴奈広島県福山市<以下略>被告青山商事株式会社 - 47 -同訴訟代理人弁護士今津泰輝同訴訟復代理人弁護士土屋裕太 - 48 -(別紙)売上金額等純売上金額(仕入値)生産数・販売数H14.05.01~H14.10.3136,094,4005,308H14.11.01~H15.04.30106,998,70015,164H15.05.01~H15.10.31136,667,60022,477H15.11.01~H16.04.30135,120,830 106,998,70015,164H15.05.01~H15.10.31136,667,60022,477H15.11.01~H16.04.30135,120,83019,914H16.05.01~H16.10.31226,171,39532,458H16.11.01~H17.04.30276,243,74037,793H17.05.01~H17.10.31319,272,92046,960H17.11.01~H18.04.30165,057,17023,301H18.05.01~H18.10.31506,493,59066,990H18.11.01~H19.04.30322,868,13039,164H19.05.01~H19.10.31675,770,06087,415H19.11.01~H20.04.30318,273,40038,341合計3,225,031,935435,285

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