平成26(行ウ)286 非公開決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年9月9日 大阪地方裁判所 情報公開
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判決文本文10,365 文字)

主文 1 大阪市長が平成25年5月1日付けで原告に対してした,別紙文書目録記載の文書を公開しない旨の決定(大政第e‐8号)を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,それぞれを各自の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主文1項同旨 2 大阪市長は,原告に対し,別紙文書目録記載の文書を公開せよ。 第2 事案の概要本件は,原告が,大阪市情報公開条例(以下「情報公開条例」という。)に基づき,大阪市長に対し,同市長とその職員(特別職を含む。以下同じ。)がいわゆる庁内メールを利用して一対一で送受信した電子メール(以下「一対一メール」という。)のうち,被告において公文書として取り扱っていないもの(別紙文書目録記載の文書。以下「本件文書」という。)の公開を請求したところ,同市長から,本件文書は組織共用の実態を備えていないから情報公開条例に基づく公開の請求の対象とされている公文書に該当せず,したがって,本件文書は保有していないとして,公開をしない旨の決定(以下「本件非公開決定」という。)を受けたため,被告に対し,その取消しを求めるとともに,本件文書の公開の義務付けを求める事案である(なお,原告は,被告において公文書として取り扱っていないものに限って公開を求める趣旨を,公開請求書上は明示していなかったが,本件非公開決定に係る異議申立審に至って,大阪市情報公開審査会の求釈明に答える形でこれを明らかにしている。)。 1 情報公開条例の定め(甲1)⑴ 情報公開条例2条2項は,同条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録(電子的方式, 磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同 「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録(電子的方式, 磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの(ただし,不特定多数のものに販売することを目的として発行されるものを除く。)をいう旨規定する。 ⑵ 情報公開条例5条は,何人も,同条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する公文書の公開を請求することができる旨規定する。 ⑶ 情報公開条例7条は,実施機関は,上記⑵の規定による公開の請求(以下「公開請求」という。)があったときは,公開請求に係る公文書に同条各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求をした者(以下「公開請求者」という。)に対し,当該公文書を公開しなければならない旨規定する。 ⑷ 情報公開条例10条2項は,公開請求に係る公文書を保有していないときは,公開をしない旨の決定をし,公開請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない旨規定する。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 ⑴ 大阪市長と職員が送受信した一対一メールの取扱い被告は,大阪市長が職員との間で送受信した一対一メールについて,①公用パーソナルコンピュータ(以下「公用PC」という。)の共有フォルダ(ネットワーク上の複数のユーザが参照することができるよう設定されたフォルダをいう。以下同じ。)で保有しているもの,②紙に出力(以下「プリントアウト」という。)したものを他の職員が保有しているもの及び③当該一対一メールの内容を転 参照することができるよう設定されたフォルダをいう。以下同じ。)で保有しているもの,②紙に出力(以下「プリントアウト」という。)したものを他の職員が保有しているもの及び③当該一対一メールの内容を転送先の公用PCで保有しているものについては,公開請求の対象となる「公文書」(情報公開条例2条2項)に該当し,その余のも のは「公文書」に該当しないとの取扱いをしている。(乙1)⑵ 本件非公開決定ア原告は,平成25年4月18日,情報公開条例の実施機関である大阪市長に対し,同市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールのうち,被告において公文書として取り扱っていないもの(本件文書)の公開請求をした。(甲2,甲7)イ大阪市長は,同年5月1日,本件文書は二人の間の送受信にとどまるものであり,組織共用の実態を備えていないから,公開請求の対象となる「公文書」(情報公開条例2条2項)に該当せず,したがって,本件文書は保有していないとして,本件文書の公開をしない旨の決定をし(本件非公開決定),これを原告に通知した。(甲3)⑶ 異議申立て原告は,同年6月28日,本件非公開決定を不服として,大阪市長に対し,異議申立てをしたが,同市長は,大阪市情報公開審査会に諮問した上で,平成26年9月18日,原告の異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲4~7)⑷ 本件訴訟の提起原告は,同年12月18日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,本件文書の「公文書」(情報公開条例2条2項)該当性,具体的には,本件文書が同項にいう「組織的に用いるもの」に該当するかであり,この点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (原告の主張)⑴ア情報公開条例2条2項にいう「組織的に用いるもの」 体的には,本件文書が同項にいう「組織的に用いるもの」に該当するかであり,この点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (原告の主張)⑴ア情報公開条例2条2項にいう「組織的に用いるもの」とは,作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,当該実施機関の組織において,業務上必要な ものとして,利用又は保存されている状態のものを意味すると解され,これに該当するかどうかは,当該文書等の①作成又は取得の状況,②利用の状況,③保存又は廃棄の状況等を総合的に考慮して実質的に判断すべきである。 イこれを本件についてみると,①本件文書は,庁内メールを利用して送受信された電子メールであるから,単なる私信などではなく,職務上の連絡,指示,報告等を目的として作成されるものであって,しかも,送受信者の一方は大阪市長なのであるから,重要な内容を含むものであると考えられる(作成の状況)。また,②本件文書の送信者は,職務上の連絡,指示,報告等を目的としてこれを送信しているため,受信者も,職務上の要請から,その内容を確認することになる上,送受信者は,時後においても,職務上の必要に応じてその内容を見直したり,第三者に転送したりするなどして本件文書を利用することがあると考えられる(利用の状況)。さらに,③本件文書は,送受信者がそれぞれアクセスすることが可能な形で,被告が管理する庁内コンピュータに保存されているのであって,職員が個人的に保存しているものではない(保存又は廃棄の状況)。 以上を総合すれば,本件文書が被告において,業務上必要なものとして,利用又は保存されていることは明らかというべきである。したがって,本件文書は,情報公開条例2条2項本文にいう「組織的に用いるもの」に該当する。 ば,本件文書が被告において,業務上必要なものとして,利用又は保存されていることは明らかというべきである。したがって,本件文書は,情報公開条例2条2項本文にいう「組織的に用いるもの」に該当する。 ⑵ この点,被告は,一対一メールは,電話や口頭によるのと同様に一過性の意思伝達を行うものにすぎないのであるから,その記載内容にかかわらず,業務上必要なものとして利用又は保存される状態には至っていないと主張する。しかしながら,電子メールでのやり取りは,電磁的記録として庁内コンピュータに保存されて記録化されるものであって,記録化されることのない電話や口頭によるやり取りとは決定的に性質を異にするから,一過性の意思 伝達であるということは到底できない。 また,被告は,一対一メールは,他の職員に転送したものや,プリントアウトして回覧したもの等を除き,組織的な利用には供されていないと主張するが,一対一メールであっても,大阪市長が職員との間で送受信した電子メールであれば,その内容は当然被告の業務に関するものであるから,組織的な利用に供されていないということはできないはずである。 したがって,被告の上記各主張はいずれも失当である。 (被告の主張)⑴ 本件文書は大阪市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールであるところ,一般的に,一対一メールは,電話や口頭によるのと同様に一過性の意思伝達を行うものにすぎないのであるから,その記載内容にかかわらず,業務上必要なものとして利用又は保存される状態には至っていないというべきである。実質的にみても,本件文書は,①個人が作成し,又は受信したものにすぎず(作成又は取得の状況),②他の職員に転送したものや,プリントアウトして回覧したもの等を除き,組織的な利用には供されておらず(利用の状況), も,本件文書は,①個人が作成し,又は受信したものにすぎず(作成又は取得の状況),②他の職員に転送したものや,プリントアウトして回覧したもの等を除き,組織的な利用には供されておらず(利用の状況),しかも,③送受信者の個人的な判断で廃棄することが可能なものであるから(保存又は廃棄の状況),業務上必要なものとして利用又は保存される状態に至っていないことは明らかである。したがって,本件文書は,情報公開条例2条2項本文にいう「組織的に用いるもの」に該当しない。 なお,大阪市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールのうち,①公用PCの共有フォルダで保有しているもの,②プリントアウトしたものを他の職員が保有しているもの及び③当該一対一メールの内容を転送先の公用PCで保有しているものについては,業務上必要なものとして利用又は保存される状態に至っていると考えられるが,このような一対一メールについては,被告において公文書として扱っているため,本件文書(大 阪市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールのうち,被告において公文書として取り扱っていないもの)には含まれていない。 ⑵ この点,原告は,電子メールでのやり取りと,電話や口頭によるやり取りとは,記録化の有無の点で性質を異にすると主張する。確かに,電子メールでのやり取りは,庁内コンピュータに一時的に保存されるものであるが,その性質は,電話や口頭によるやり取りの際に,その内容を個人がメモに取ることと何ら変わりのないものであるから,この点をもって,電子メールでのやり取りと,電話や口頭によるやり取りの性質が異なるということはできない。 また,原告は,一対一メールであっても,大阪市長が職員との間で送受信した電子メールであれば,その内容は当然被告の業務に関するも 取りと,電話や口頭によるやり取りの性質が異なるということはできない。 また,原告は,一対一メールであっても,大阪市長が職員との間で送受信した電子メールであれば,その内容は当然被告の業務に関するものであるから,組織的な利用に供されていないということはできないと主張するが,一対一でのやり取りにとどまっていることは,その内容が組織的な利用に至らないものであることの証左とみるべきである。原告の主張を前提にすると,大阪市長が職員との間で送受信した一対一メールは,その内容にかかわらず,あまねく公文書に該当することになるが,このような解釈が電子メールの使用実態から著しくかい離したものであることは明らかである。 したがって,原告の上記各主張はいずれも失当である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提となる事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 電子メールの使用状況ア職員に対する電子メールアドレスの付与被告においては,庁内情報ネットワークを構築しており,庁内メールの使用等に供するため,市長及びパーソナルコンピュータを利用する職員に 対し,個人用メールアドレス(以下「個人用アドレス」という。)を一人につき一つ付与するほか,各課ないしグループに対しても,その内部で共有して利用することのできる組織用メールアドレスを付与している。(甲7,乙4)イ電子メールの保管被告が管理する庁内コンピュータ内には,各個人用アドレスに対応するメールボックス(以下「個人用メールボックス」という。)が作成されており,個人用アドレスを利用して送受信された電子メールは,それぞれ送信者側においては送信済みメールとして,受信者側においては受信メールとして個人用メールボックスに保存される。個人用メールボックスにア おり,個人用アドレスを利用して送受信された電子メールは,それぞれ送信者側においては送信済みメールとして,受信者側においては受信メールとして個人用メールボックスに保存される。個人用メールボックスにアクセスをすることができるのは,原則として,対応する個人用アドレスの付与を受けた職員のみである。個人用メールボックスには容量制限があるが,保存された電子メールが自動で削除される仕組みは採られておらず,不要となった電子メールは職員が適宜削除する必要がある。 ⑵ 電子メールと公文書管理ア大阪市公文書管理条例2条3項は,同条例において「公文書」とは,情報公開条例に規定する「公文書」等をいう旨規定し,さらに,同条例5条2項及び6条1項は,被告の機関は,公文書の分類に関する基準を定めるとともに,同基準に従い,公文書を簿冊に編集しなければならない旨規定する。(乙7)イ被告における電気通信回線を利用した公文書の発送,収受及び編集について必要な事項を定めること等を目的として作成された「電気通信回線を利用した公文書の取扱いに関する要領」(以下「本件要領」という。)は,電子メールアドレスを用いて電磁的記録を送受信した場合で,次のいずれかに該当するときは,当該電磁的記録を公文書として収受し,その内容を文書管理システムに記録し,若しくは用紙に出力してこれを簿冊に編集し, 又は保存期間1年未満のものに限りその内容を組織共用フォルダ内に記録しなければならない旨規定する。(乙3~6)2以上の職員が共用する電子メールアドレスを用いて電磁的記録の送受信を行ったとき職員が自己の電子メールアドレスを用いて2以上の職員に対し同時に電磁的記録を送信し,又は職員が自己の電子メールアドレスを用いて受信した電磁的記録が2以上の職員に対し同時に送信されたもので たとき職員が自己の電子メールアドレスを用いて2以上の職員に対し同時に電磁的記録を送信し,又は職員が自己の電子メールアドレスを用いて受信した電磁的記録が2以上の職員に対し同時に送信されたものであるとき を用いて電磁的記録を送受信したときであって,転送,プリントアウトその他の方法により当該送受信した電磁的記録について他の職員と共用するとき⑶ 大阪市長が送受信した一対一メールの取扱状況被告は,大阪市長が職員との間で送受信した電子メールについて,本件要領に従い,次のア~ウに限って公開請求の対象となる公文書に該当すると解し,これらを専用フォルダに登録し,公開請求がされた場合には上記専用フォルダのみを対象文書の検索対象とする取扱いをしている。(乙1)ア一対一メールのうち公用PCの共有フォルダに保有しているもの又はプリントアウトしたものを他の職員が保有しているものイ一対一メールの内容を転送先の公用PCで保有しているものウ一対多数の形で送受信されたもの(いわゆる同報メール,CC〔カーボンコピー〕,BCC〔ブラインドカーボンコピー〕を利用して送信されたメール) 2 争点に対する判断⑴ 情報公開条例2条2項本文は,同条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって, 当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう旨規定する。そして,ここでいう「組織的に用いるもの」とは,作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,当該実施機関の組織において,業務上必要なものとして,利用又は保存されている状態のものをいうと解される。そして,作成又は取得された文書が,どのような状態に ての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,当該実施機関の組織において,業務上必要なものとして,利用又は保存されている状態のものをいうと解される。そして,作成又は取得された文書が,どのような状態にあれば「組織的に用いるもの」に該当するかどうかは,①当該文書の作成又は取得の状況,②当該文書の利用の状況及び③当該文書の保存又は廃棄の状況等を総合的に考慮して実質的に判断すべきである。 ⑵ア本件文書は,大阪市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールのうち,被告において公文書として取り扱っていないものである。ここで,被告が公開請求の対象となる公文書として取り扱っているものは前記認定事実⑶のとおりであるから,結局,本件文書は,大阪市長が職員との間で庁内メールを利用して送受信した一対一メールから,公用PCの共有フォルダに保有しているもの,プリントアウトしたものを他の職員が保有しているもの及び他の公用PC(すなわち他の個人用アドレス)に転送されたものを除いたもの,つまり,上記一対一メールのうち,プリントアウトしたものを含め送受信者以外の職員に保有されていないものということになる。 このような本件文書の保存状況からは,本件文書が専ら個人の便宜のために作成,利用されていることがうかがわれる上,一対一メールは,その性質上,会議日程等の通知や調整といった,業務との関わりに乏しい事務的,単発的な事項の伝達に利用されることが少なくないものと思われる。 以上のような作成,利用及び保存の状況にある電子メールは,業務上必要なものとして,利用又は保存されている状態には至っていないというべきであるから,本件文書には「組織的に用いるもの」に該当しない一対一メ ールが相当数含まれるものと考えられる。 しかしながら,①本件文書の送受信者の一方 ている状態には至っていないというべきであるから,本件文書には「組織的に用いるもの」に該当しない一対一メ ールが相当数含まれるものと考えられる。 しかしながら,①本件文書の送受信者の一方は,被告の業務を統括する大阪市長であるところ,大阪市長は,その職責に鑑み,確定した職務命令を発したり,逆に職務命令に基づく報告を受けたりするなど,職員との間で,被告の業務と密接に関連し継続利用が予定される情報を頻回にやり取りすることが見込まれること,また,②被告の業務の中には緊急性及び迅速性が要請されるものがあり,そのような場合には,書面の受渡しに代えて電子メールの送受信により情報伝達を行うことも多いと考えられること,一方で,③上記①の情報は,その性質に照らし,口頭のみでやり取りされることが考え難いこと等の事情を併せ考えれば,本件文書が送受信された平成24年11月17日から同年12月17日までの1か月間に,大阪市長が一対一メールを利用して職員に確定した職務命令を発したこと,及び職員から職務命令に基づく報告を受けたことがあったものと推認される。 そして,このような業務と密接に関連し継続利用が見込まれる情報の伝達に一対一メールが利用された場合には,送受信者は,当該電子メールを個人用メールボックスに長期間にわたって保有し,必要に応じてコピーファイルを貸与された公用PC内の記録媒体に記録したり,プリントアウトしたものを保有したりするなどして,他の職員への配付や,後任者への引継ぎに備えて当該電子メールを保存することも十二分に想定される。 そうすると,被告が的確な反証を行わない本件においては,本件文書の中には,確定した職務命令及び職務命令に基づく報告に利用されたものがあると認めるのが相当であり,これらの電子メールは,その作成,利用及び保存の状況に照ら 確な反証を行わない本件においては,本件文書の中には,確定した職務命令及び職務命令に基づく報告に利用されたものがあると認めるのが相当であり,これらの電子メールは,その作成,利用及び保存の状況に照らし,業務上必要なものとして,利用又は保存されている状態にあるというべきであるから,「組織的に用いるもの」に該当すると解すべきである。また,このような本件文書が,「公文書」該当性のその他の要件,すなわち,「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した 文書…電磁的記録」であって,被告が「保有しているもの」に該当すること(本件文書は被告が管理する庁内コンピュータ内に作成された個人用メールボックスに保存されている〔前記認定事実⑴イ〕。)は明らかである。 イこの点,被告は,一般的に,一対一メールは,電話や口頭によるのと同様に一過性の意思伝達を行うものにすぎないのであるから,その記載内容にかかわらず,業務上必要なものとして利用又は保存される状態には至っていないと主張する。しかしながら,上記アのとおり,一対一メールであっても,その記載内容によって業務上必要なものとして利用又は保存されている状態にあるか否かは異なると考えられるから,一対一メールが,その記載内容にかかわらず,業務上必要なものとして利用又は保存される状態には至っていないとの被告の主張は採用することができない。 また,被告は,一対一メールの性質は,電話や口頭によるやり取りの際に,その内容を個人がメモに取ることと変わりがないものであるとも主張する。しかしながら,送信された一対一メールは,送信者と受信者それぞれによって保有されることになるのであるから(本件に即していえば,個人用アドレスを利用して送受信された電子メールは,送信者の個人用メールボックスに送信済みメールとして,また,受信者の と受信者それぞれによって保有されることになるのであるから(本件に即していえば,個人用アドレスを利用して送受信された電子メールは,送信者の個人用メールボックスに送信済みメールとして,また,受信者の個人用メールボックスに受信メールとしてそれぞれ保存されることになる〔前記認定事実⑴イ〕。),一方当事者のみが保有するにすぎない個人的なメモと同視することはできないというべきである。 ⑶ 以上によれば,本件文書には,「公文書」(情報公開条例2条2項)に該当するものが含まれるというべきである。なお,前示のとおり,被告は本件文書を「公文書」として取り扱っていないが,このことは本件文書の「公文書」該当性を左右するものではない。 したがって,大阪市長が,本件文書は公開請求の対象とされている「公文書」に該当せず,本件文書は保有していないとしてした,本件文書を公開し ない旨の決定(本件非公開決定)は違法であるから,本件非公開決定の取消しを求める原告の請求は,理由がある。 3 本件文書の公開の義務付けを求める請求について本件文書のうち,指示書や報告書といった書面を作成して行うことが相当な内容のものについては,前記2⑶のとおり,「公文書」に該当するが,その記載内容には情報公開条例7条の非公開情報が含まれている可能性が否定できない(本件要領も一定の要件の下において非公開情報を記録した電子メールを送信することを許容している〔本件要領3条2項参照〕。)。そうすると,本件では,大阪市長が本件文書のうち「公文書」に該当するものの公開決定をすべきであることが情報公開条例の規定から明らかであると認められるということはできないし,公開決定をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるということもできない(行政事件訴訟法37条の3第 公開条例の規定から明らかであると認められるということはできないし,公開決定をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるということもできない(行政事件訴訟法37条の3第5項)。したがって,本件文書の公開の義務付けを求める原告の請求は,理由がない。 4 結論以上のとおり,本件非公開決定の取消しを求める原告の請求は,理由があるからこれを認容し,原告のその余の請求は,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官角谷昌毅 裁判官松原平学 (別紙)文書目録 「A市長が大阪市の職員(特別職含む)と一対一で送受信したメールのすべて(平成24年11月17日~平成24年12月17日)」(大阪市において公文書として取り扱っていないものに限る。)

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