令和6年11月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第70366号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和6年8月30日判 決 原告株式会社プロフィットジャパン 同訴訟代理人弁護士下谷收下谷龍平 被告 RIZAP株式会社 同訴訟代理人弁護士佐藤亮壬生百香日向野百花 同訴訟代理人弁理士大谷寛主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、4億8709万7600円及びこれに対する令和5年7月13日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告に対し、別紙商品等表示目録記載1及び2の各表示 (以下、順に「原告表示1」及び「原告表示2」といい、これらを併せて「原告各表示」という。)は、原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの又は原告の著名な商品等表示に該当し、被告が、運営するジムに関して「コンビニジム」という表示(以下「被告表示」という。)を使用した行為は、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争に 該当すると主張して、不競法4条に基づき、合計4 「コンビニジム」という表示(以下「被告表示」という。)を使用した行為は、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争に 該当すると主張して、不競法4条に基づき、合計4億8709万7600円の損害金(不競法5条3項により算定される損害金4億4281万6000円及び弁護士費用に係る損害金4428万1600万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年7月13日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、原告は、被告による上記行為が別紙原告商標権目録記載1及び2の各登録商標(以下「原告各商標」という。)に係る各商標権(以下「原告各商標権」という。)を侵害することを理由として、上記と同額の損害賠償を予備的に請求する訴えの追加的変更が許されるべきであると主張する。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しな い限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)当事者原告は、フィットネスクラブのフランチャイズ事業を展開する株式会社である。 被告は、パーソナルトレーニングジムの運営等、美容ヘルスケア事業を 営む株式会社である。 原告による原告各表示の使用原告は、平成9年頃から、原告の運営するフィットネスクラブ(以下「原告施設」という。)の営業を示すものとして、少なくとも原告表示1を使用している(甲2、12)。 被告による被告表示の使用 被告は、令和4年7月頃から、全国各地に於いて、「ChocoZAP」という名称のフィットネスクラブ(以下「被告施設」という。)を運営している。 被告は、被告施設に関する立て看板(店頭表示板)、チラシ広告、ホームペー から、全国各地に於いて、「ChocoZAP」という名称のフィットネスクラブ(以下「被告施設」という。)を運営している。 被告は、被告施設に関する立て看板(店頭表示板)、チラシ広告、ホームページ、インターネット上のウェブ広告等の多数の媒体において、被告表 示を使用している(甲8、13、14、25ないし31)被告施設の店舗数は、令和5年3月時点で479店舗、同年4月時点で534店舗である。(弁論の全趣旨) 3 争点不競法2条1項1号所定の不正競争に係る争点(争点1) ア原告各表示が商品等表示として周知といえるか(争点1-1)イ被告表示の使用が原告の営業と混同を生じさせる行為といえるか(争点1-2)不競法2条1項2号所定の不正競争に係る争点原告各表示が商品等表示として著名といえるか(争点2) 不競法2条1項1号及び2号所定の不正競争に共通する争点(争点3)ア原告各表示と被告表示が類似しているか(争点3-1)イ被告表示が商品等表示として使用されているか(争点3-2)ウ被告表示の使用によって原告の営業上の利益(不競法4条)が侵害されたか(争点3-3) エ故意又は過失の有無(争点3-4)オ適用除外(不競法19条1項1号)の抗弁(争点3-5)カ損害の発生及び額(争点3-6) 4 争点に関する当事者の主張争点1-1(原告各表示が商品等表示として周知といえるか)について (原告の主張) 原告施設及び原告のフランチャイズ加盟店数等原告は、平成9年頃から原告各表示を施設名として使用したフィットネス事業を展開しており、原告各表示を広告宣伝等に使用する原告施設は、全国各地にあるフランチャイズ加盟店を含めて、現在に至るまでに、のべ は、平成9年頃から原告各表示を施設名として使用したフィットネス事業を展開しており、原告各表示を広告宣伝等に使用する原告施設は、全国各地にあるフランチャイズ加盟店を含めて、現在に至るまでに、のべ62店舗オープンしており、本件訴訟を提起した令和5年6月の時点でも、 20店舗存在していた。原告施設の会員数は、過去に会員であった者も含めて、少なくとも1万8753人である。 メディアでの掲載原告各表示を用いたフィットネス事業は、平成9年10月30日付けの日経流通新聞において、「低価格フィットネスクラブ事業」として記事が掲 載されたのを皮切りに、新聞、テレビ、雑誌等の各種マスメディアで取り上げられ、その後、平成17年には、雑誌「日経トレンディ」の「2006年ヒット予測ランキング」と題する記事(以下「日経トレンディの記事」という。)においてベスト5にランクインするに至っており、原告各表示は、平成17年には、独自の顧客集客力を有する表示として広く世間に浸透し、 全国的に誰でも知っている商品等表示となった。なお、日経トレンディの記事では、「“コンビニ”フィットネス」と表記されているが、掲載年である平成17年当時、コンビニフィットネスの名称を用いていた事業者は原告だけであったことからすれば、日経トレンディの記事は、原告各表示を使用した事業の宣伝広告と評価されるべきである。 各店舗におけるチラシ配布等の宣伝原告ないし原告のフランチャイズ加盟店は、高度の知名度を有するに至っていた平成17年以降も、原告各表示を使用した新聞の折り込みチラシによる原告施設の宣伝広告を行っており、各店舗の所在地から半径3キロメートルから5キロメートル圏内において、1回につき約2万枚を年6回 にわたり消費者に頒布している。その広告費等と 込みチラシによる原告施設の宣伝広告を行っており、各店舗の所在地から半径3キロメートルから5キロメートル圏内において、1回につき約2万枚を年6回 にわたり消費者に頒布している。その広告費等として、例えば、令和4年 1月に開店したフランチャイズ店である戸越銀座店では、合計128万8705円を支出している。 また、原告は、フランチャイズ加盟店の拡大のために展示会へも出展するなどしており、令和4年度のフランチャイズ加盟店拡大のための活動費として、合計285万9020円を支出している。 各種SNSの投稿等原告ないし原告のフランチャイズ加盟店は、ツイッター(現在はX。以下、サービス名変更の前後を問わず「ツイッター」という。)やインスタグラムなどのSNSやYouTubeなどの媒体において、「コンビニフィットネス」の名称を用いて原告施設の宣伝を行っている。 書籍の販売約1万2000部出版され、様々なメディアで取り上げられた書籍である「やわらかい体は太らない」には、副題として原告各表示が記載されている。この書籍は、原告各表示を用いた事業のガイドブックとして売り出されたものであって、同書籍の副題は、出所識別機能を備えるものである ため、原告各表示の周知性の獲得に資するものといえる。 さらに、原告の代表取締役であったAi(以下「Ai」という。)は、多数の書籍を監修ないし著作しているところ、これらの書籍の発行部数は、少なくとも数万部であり、多いものでは10万部以上にのぼっていた。これらの書籍には、原告各表示が用いられていないものの、Aiは、全国的 に知名度が高く、消費者は、同人ひいては原告の手がける書籍であることを知って、これらの書籍を購入することが容易に想定し得る。また、原告施設の宣伝広告にお いられていないものの、Aiは、全国的 に知名度が高く、消費者は、同人ひいては原告の手がける書籍であることを知って、これらの書籍を購入することが容易に想定し得る。また、原告施設の宣伝広告においては、原告施設でAiの書籍と関連する施術が受けられることが掲載されている。これらのことからすると、Aiが監修ないし著作した書籍の存在及びその売上げからも、原告各表示の周知性は認め られるといえる。 小括以上によれば、原告各表示は、平成17年には全国的に高度の識別力と知名性を有しているといえ、本件訴訟提起時である令和5年6月においてもなお、周知性を維持していた。 (被告の主張) 原告施設及び原告のフランチャイズ加盟店数等全国のフィットネス施設数は、令和2年10月時点で、7893であるとも言われているところ、原告のフランチャイズ加盟店の店舗数は、そのうちの0.25%を占めるのみである。また、それらの各店舗の所在地は、10都道府県にとどまっており、全国的に進出しているとはいえない。 メディアでの掲載日経流通新聞は、事業者を対象としたマーケティング情報誌であって、その購読層は、事業者に限られている上、同新聞の記事は、原告表示2と同一の文字を縦方向に並べ替えて記載しているから、そのような記載をもって、原告各表示が全需要者層の間で周知性を獲得したということはでき ない。 また、日経トレンディの記事は、株式会社カーブスホールディングス等が運営する、女性専用のフィットネスジムに関する記事であり、一般論として、コンビニのような手軽な小規模フィットネスクラブがヒットすることを予測する旨記載しているものにすぎず、原告各表示を用いた原告施設 について言及した記事ではない。したがって、日経トレン として、コンビニのような手軽な小規模フィットネスクラブがヒットすることを予測する旨記載しているものにすぎず、原告各表示を用いた原告施設 について言及した記事ではない。したがって、日経トレンディの記事は、原告各表示と何ら関係のない記事であるから、原告各表示が周知性を有することの根拠にはならない。 各店舗におけるチラシ配布等の宣伝原告及び原告のフランチャイズ加盟店全20店舗の所在地から半径3キ ロメートルから5キロメートル圏内において継続的にチラシ等が頒布され たとしても、それによって日本全国において原告各表示が広く周知されたとはいえない。また、広告に関する支出の証拠とされる請求書からは、原告各表示の周知性獲得に資するために、どの地域で、どのような需要者層に対し、どのような宣伝が行われたのかが、明らかではない。 さらに、展示会への出展についても、原告が主張する展示会は、特定の 地域で主に事業者向けに開催されたものであると考えられるから、これをもって、原告各表示が全国の需要者層の間で周知性を獲得したということはできない。 各種SNSの投稿等原告ないし原告のフランチャイズ加盟店の各SNSアカウントに係るフ ォロワー数及びYouTubeに係る動画の登録者数は、いずれもごくわずかであって、これらの媒体を利用した広告により、原告各表示が全国的に広く知られ、周知性を獲得したとはいえない。 書籍の販売需要者は、通常、書籍の題号を、その書籍の内容を表示するものとして 認識し、出所識別表示としては認識しないものと解されるから、書籍「やわらかい体は太らない」において、副題として原告表示2が付されていることをもって、原告表示2が原告の商品等表示として使用されているとはいえない。 また、Aiが監 しないものと解されるから、書籍「やわらかい体は太らない」において、副題として原告表示2が付されていることをもって、原告表示2が原告の商品等表示として使用されているとはいえない。 また、Aiが監修ないし著作した書籍には、原告各表示が用いられてい ないから、これらの書籍の発行は、原告各表示が周知性を有することの根拠とならない。 小括以上のとおり、原告各表示は、平成17年の時点において、一般需要者又は取引者の間で全国的に広く知られておらず、周知性を獲得していない。 また、原告が主張する広告宣伝等は、いずれも原告各表示の周知性を基礎 付けるものとはいえず、本件訴訟提起時である令和5年6月においても、原告各表示は周知性を獲得していない。 争点1-2(被告表示の使用が原告の営業と混同を生じさせる行為といえるか)について(原告の主張) 原告は従前から原告各表示を用いて低価格帯フィットネスクラブを営んでおり、被告も同様に後発で被告表示を用いて被告施設という低価格帯フィットネスクラブないしジムを営んでいる。両者の事業形態は類似するものであって需要者も共通しているから、被告表示を用いた被告の営業は、原告の営業と混同を生ずるおそれがある。特に、被告表示を用いた広告のうち、「ライ ザップが作った」との語句を伴わない広告や、同語句を伴っていたとしてもそれが目立つように記載されず被告表示が独立して掲載されているように受け取られる広告については、需要者に対し、被告が原告と同一の営業主体であるとの印象をもたらすものである。また、後記(5)(原告の主張)のGoogleの検索結果の表示は、原告と被告の事業内容が同種であることから、 原告と被告を営業上の関係性を誤信させるものであるといえる。現に、原告 ものである。また、後記(5)(原告の主張)のGoogleの検索結果の表示は、原告と被告の事業内容が同種であることから、 原告と被告を営業上の関係性を誤信させるものであるといえる。現に、原告は、原告と被告とを同一の営業主体と間違えた者から問合せを受けたことがある。 (被告の主張)前記(1)(被告の主張)のとおり、原告各表示には周知性がなく、後記(4) (被告の主張)のとおり、原告各表示と被告表示とは類似していないから、一般取引者及び需要者が普通に払う注意を基準に判断すれば、混同のおそれは生じない。また、被告は、被告表示を用いる際、営業の提供主体として被告の名称であるライザップを明示し、かつ、被告施設名である「ChocoZAP」も明示しており、被告表示は、被告が提供するサービスである被告 施設が、便利な、屋内にある、トレーニングを行うための施設であることを 説明するものとして使用されている。このような使用方法及び使用態様からして、一般取引者及び需要者が普通に払う注意を基準に判断すると、混同のおそれはないといえる。 また、原告施設の提供価格と被告施設の提供価格が同程度であることから、直ちに、誤認混同が生じるとはいえないし、そもそも、原告施設の現在の提 供価格は、被告施設の提供価格よりも大幅に高額であって、原告施設及び被告施設がいずれも低価格帯で提供されているとする原告の主張は、その前提が誤っている。 以上によれば、被告表示の使用が原告の営業と混同を生じさせるおそれはない。 争点2(原告各表示が商品等表示として著名といえるか)について(原告の主張)前記(1)(原告の主張)のとおり、原告各表示は、広く一般消費者に認識されているところであり、全国的に高い認知度を誇っている。したがって 商品等表示として著名といえるか)について(原告の主張)前記(1)(原告の主張)のとおり、原告各表示は、広く一般消費者に認識されているところであり、全国的に高い認知度を誇っている。したがって、原告各表示は、周知であると同時に、「商品等表示」として著名なものといえる。 (被告の主張)前記(1)争点1-1(被告の主張)のとおり、原告各表示は周知でないから、著名性を有していないことは明らかである。 争点3-1(原告各表示と被告表示が類似しているか)について(原告の主張) 原告各表示と被告表示の要部原告各表示及び被告表示は、いずれも、運動施設との意味合いを持つ字句に、「コンビニ」という「利便性の高い小売店」との意味合いを持つ字句を合わせることで、特異性をもたらし識別性を生じさせることから、その要部は「コンビニ」である。 原告各表示と被告表示の類否 (ア) 外観原告各表示と被告表示は、両者ともに要部である「コンビニ」を頭に持ってきて「利便性の高い運動施設」である点を強調している。そして、黒字で構成され、全て同じ大きさの横文字配列であること、片仮名二単語の結合体であることに照らすと外観での類似性が認められる。 (イ) 観念原告各表示に含まれる「フィットネス」は、「フィットネスクラブ」の略としても用いられることがあり、それ単体で「運動施設」という観念を生じさせる。また、被告表示に含まれる「ジム」は「運動施設」の観念を生じさせる。 仮に、「フィットネス」単体からは「運動施設」との観念を生じ得ないとしても、「コンビニ」と一体化されることで、「コンビニ」の持つ「利便性の高い小型の小売店」という意味が「フィットネス」に加わるため、「コンビニフィットネス」には「便 運動施設」との観念を生じ得ないとしても、「コンビニ」と一体化されることで、「コンビニ」の持つ「利便性の高い小型の小売店」という意味が「フィットネス」に加わるため、「コンビニフィットネス」には「便利な、屋内にある、トレーニングを行うための施設」との観念が生じる。したがって、原告各表示の「コン ビニフィットネス」と被告表示である「コンビニジム」とは、観念における類似性が当然に認められる。 (ウ) 呼称原告各表示と被告表示の要部である「コンビニ」との呼称は同一である。 原告表示2についての被告の主張に対する反論特許庁は、被告が出願した「コンビニジム」(標準文字)の商標登録出願につき、第9類、第35類、第45類等の指定区分に係る役務において商標登録を認め(以下、この登録された商標を「被告商標」という。)、他方で、第41類の指定区分に係る役務(運動施設の提供、娯楽施設の提供、 運動用具の貸与等)については、商標法3条1項3号及び同法4条1項1 6号を理由として商標登録を拒絶した。しかし、特許庁は、拒絶理由のいずれかの理由を挙げれば足りるから、第41類の指定区分に係る役務について、同項11号を理由として商標登録を拒絶しなかったからといって、特許庁が、別紙原告商標権目録記載2の登録商標(以下「原告商標2」という。)と被告商標の類似性を否定したということはできない。また、本件 訴訟で問題となるのは、被告が運動施設の提供等(指定区分第41類)において、原告各表示と類似する被告表示を使用していることであるから、特許庁が、原告各表示が商標登録されている他の指定区分(第28類、第29類)について、被告商標の商業登録を認めたことをもって、被告表示と原告各表示との類似性が否定されるものではない。以上によれば、 特許庁が、原告各表示が商標登録されている他の指定区分(第28類、第29類)について、被告商標の商業登録を認めたことをもって、被告表示と原告各表示との類似性が否定されるものではない。以上によれば、被告 商標の登録出願に係る特許庁の審査の過程から、原告各表示と被告表示の類似性が否定されたと判断することはできない。 小括原告各表示と被告表示は、その要部において、外観、観念、呼称において類似し、取引の実情のもとにおいて、需要者が全体的に類似のものとし て受け取るおそれがあるから、原告各表示と被告表示は類似している。 仮に「コンビニ」を要部として切り出すことなく全体的に原告各表示と被告表示とを比較したとしても、原告各表示と被告表示は全体的に類似しているといえる。 (被告の主張) 原告表示1との類似性原告表示1及び被告表示を分離観察できないこと原告表示1は、「コンビニ」との文字が、「フィットネス」との文字と比較して2分の1以下の文字幅で記載されているなど、「フィットネス」との文字や人型のイラストより目立たない方法で記載されており、「コン ビニ」の部分が取引者及び需要者に対し商品又は役務の出所識別標識と して強く支配的な印象を与えるものとはいえない。また、被告表示は、同じ書体かつ同じ大きさの文字で横書きしたものであり、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから、「コンビニ」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くよう構成されているということもできない。また、原告表示1及び被告表示のいずれについても、 「コンビニ」以外の部分から、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとはいえない。 よって、原告表示1と被告表示の類否を判断するに当たっては、「コンビ 示1及び被告表示のいずれについても、 「コンビニ」以外の部分から、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとはいえない。 よって、原告表示1と被告表示の類否を判断するに当たっては、「コンビニ」のみについて両者を比較するのではなく、両者の全体を比較して判断するべきである。 外観原告表示1と被告表示は、①原告表示1には人型のイラスト部分及び「BODYMAINTENANCE」との英文字部分があるのに、被告表示にはいずれも存しないこと、②片仮名部分については、「コンビニ」との文字が一致するのみで、それ以外の文字は異なっている上、文字の 配置も、原告表示1が二段であるのに対し、被告表示は一段でまとまりよく配置されていること、③原告表示1の文字部分のフォントは丸みを帯びているのに対し、被告表示のフォントは角ばったものであることから、その外観上、相違点が多数存している。 したがって、原告表示1と被告表示の外観が類似するとはいえない。 観念原告表示1の文字部分である「BODYMAINTENANCE」のうち、「BODY」からは「体」との観念が、「MAINTENANCE」からは「維持管理」という観念が、それぞれ生じる。また、同文字部分である「コンビニフィットネス」のうち、「コンビニ」からは、それが 「コンビニエンス」の略称と考えられることから、「便利さ」「利便性」 との観念が生じ、「フィットネス」からは「健康」「体力」「健康の維持・増進を目指して行う運動」との観念が生じる。他方、被告表示の「コンビニ」からは「便利さ」「利便性」との観念が生じるものの、「ジム」からは「屋内にある、トレーニングを行うための施設」との観念が生じる。 よって、原告表示1からは、「体の維持管理 他方、被告表示の「コンビニ」からは「便利さ」「利便性」との観念が生じるものの、「ジム」からは「屋内にある、トレーニングを行うための施設」との観念が生じる。 よって、原告表示1からは、「体の維持管理」、「利便性のある健康の維 持・増進を目指して行う運動」等の、健康維持のための行為そのものについての観念が生じるのに対し、被告表示からは、「便利な、屋内にある、トレーニングを行うための施設」との施設に関する観念が生じるから、原告表示1と被告表示の観念が類似するとはいえない。 称呼 原告表示1と被告表示は「コンビニ」の部分が共通しているに過ぎず、称呼において類似しているとはいえない。 小括以上のとおり、原告表示1と被告表示は、外観、観念及び称呼のいずれにおいても類似していないから、取引の実情の下において、取引者及 び需要者が、原告表示1と本件表示の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれはなく、原告表示1と被告表示は類似していない。 原告表示2との類似性原告表示2及び被告表示を分離観察できないこと 原告表示2の「コンビニ」との文字は、「フィットネス」との文字と同じ大きさ同じ書体で記載されており、「コンビニ」の部分だけが独立し、見る者の注意を引くように構成されているという事はできず、「コンビニ」が取引者及び需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは言えない。また、被告表示である「コンビニ ジム」は、同じ書体かつ同じ大きさの文字で横書きしているものであり、 その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから、「コンビニ」の文字部分だけが独立し、見る者の注 ジム」は、同じ書体かつ同じ大きさの文字で横書きしているものであり、 その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから、「コンビニ」の文字部分だけが独立し、見る者の注意を引くよう構成されているということもできない。また、本件においては、「コンビニ」以外の部分から、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとも言えない。よって、原告商標2と被告表示の類否を判断するにあたっては、「コ ンビニ」のみを比較するのではなく、原告表示2全体と被告表示全体とを比較して判断すべきである。 外観原告表示2と被告表示は、「コンビニ」との文字が一致するのみで、それ以外の文字は異なっている上、文字の配置も、原告表示2は二段であ るのに対し、被告表示は一段でまとまりよく配置されており、そのフォントも、原告表示2は丸みを帯びているのに対し、被告表示は角ばっているなど、外観上特徴を異にしているから、原告表示2と被告表示の外観が類似するとはいえない。 観念 前記ア(ウ)(被告の主張)(ただし、「BODYMAINTENANCE」に係る主張を除く。)のとおり、原告表示2と被告表示の観念が類似するとはいえない。 称呼原告表示2と被告表示は、「コンビニ」の部分が共通しているに過ぎず、 称呼において類似しているとはいえない。 特許庁の判断原告は、被告による被告商標の登録出願に対し、刊行物等提出書を提出し、第41類を指定区分とする登録出願については、「コンビニジム」と原告商標2が類似する(商標法4条1項11号)、第9類、第35類、 第45類を指定区分とする登録出願については、原告商標2に周知性が あることを論拠に、「コンビニジム」と原告商標2に「混同を生じる る(商標法4条1項11号)、第9類、第35類、 第45類を指定区分とする登録出願については、原告商標2に周知性が あることを論拠に、「コンビニジム」と原告商標2に「混同を生じるおそれがある」(同項15号)と主張したが、特許庁は、商標法4条1項11号及び15号を根拠とする拒絶査定をしなかった。この判断は、特許庁が「コンビニジム」と原告商標2の類似性及び原告商標2の周知性を否定したことの証左に他ならない。 さらに、被告商標は、先願商標である「コンビニフィットネス」と同一の指定区分(第16類、第28類、第29類)で商標登録されているから、特許庁が、「コンビニジム」と「コンビニフィットネス」が類似しないと判断したことは明白である。 これらの特許庁の判断からしても、原告商標2と同一の原告表示2と 被告表示とが類似していないということができる。 小括以上によれば、原告表示2と被告表示は、外観、観念及び称呼のいずれにおいても類似していないから、取引の実情の下において、取引者及び需要者が、原告表示2と被告表示の外観、称呼、又は観念に基づく印 象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれはなく、原告表示2と被告表示は、類似していないといえる。 争点3-2(被告表示が商品等表示として使用されているか)について(原告の主張)被告は、被告表示を被告施設に係る広告物に付して使用しており、その使 用の態様も、他の単語や文章と組み合わせた使用だけでなく、「コンビニジム」の表示のみを独立させて強調する広告を行っている。また、検索エンジンであるGoogleにおいて、「コンビニフィットネス」と検索すると、スポンサー表示として、被告表示が原告より上位に表示される。これらのことから を独立させて強調する広告を行っている。また、検索エンジンであるGoogleにおいて、「コンビニフィットネス」と検索すると、スポンサー表示として、被告表示が原告より上位に表示される。これらのことからすると、被告は、被告表示を自他識別機能又は出所表示機能を果たす態様で 使用しているといえるから、商品等表示の「使用」(不競法2条1項1号)に 該当する。 (被告の主張)被告は、被告施設が、便利な、屋内にある、トレーニングを行うための施設である、という被告事業の内容・特徴等を叙述、表現するために被告表示を使用しているに過ぎず、被告表示を自他識別機能又は出所表示機能を果た す態様で使用していない。よって、被告による被告表示の使用は、商品等表示の「使用」(不競法2条1項1号)には該当しない。また、特許庁は、被告が商標登録を出願した「コンビニジム」が、第41類の指定区分にかかる役務(運動施設の提供、娯楽施設の提供、運動用具の貸与等)との関係で、識別力がないと判断し、商標法3条1 項3号を理由の一つとして商標登録を拒 絶しているから、被告表示は、自他識別機能又は出所表示機能を果たさない。 争点3-3(被告表示の使用によって原告の営業上の利益(不競法4条)が侵害されたか)について(原告の主張)被告による被告表示の使用は、混同惹起行為(不競法2条1項1号)及び 著名表示冒用行為(同項2号)にほかならず、同行為類型自体が原告に対する加害類型といえ、利益侵害のおそれが推定される。 (被告の主張)被告表示の使用は混同惹起行為及び著名表示冒用行為のいずれにも該当しないから、営業上の利益の侵害はない。 争点3-4(故意又は過失の有無)(原告の主張)被告表示は原告各表示に類似し、原告各表示は原告 同惹起行為及び著名表示冒用行為のいずれにも該当しないから、営業上の利益の侵害はない。 争点3-4(故意又は過失の有無)(原告の主張)被告表示は原告各表示に類似し、原告各表示は原告各商標と同一であるから、原告各商標に係る商標権の侵害行為について過失があったものと推定され(商標法39条、特許法103条)、その結果、被告表示の使用による不正 競争についても、過失が推定される。また、被告は、原告と市場において競 合するフィットネス事業を営んでおり、被告施設の展開を始めた令和4年7月当時において、原告の事業内容を容易に知り得る状況にあったから、これを知っていたものであり、仮に知らなかったとしても、原告各表示を用いた事業の存在に気づかなかったことについて、少なくとも過失がある。 (被告の主張) 不競法に過失の推定規定はない。被告表示の使用は不正競争に該当せず、営業上の利益の侵害もないから、被告には故意又は過失はない。 争点3-5(適用除外(不競法19条1項1号)の抗弁)について(被告の主張)被告は、自社の広告等において、被告表示を、手軽に通える運動施設を意 味する形容句として、記述的に使用しているにすぎない。すなわち、被告表示は、被告又はその事業を示す固有名詞ではなく、手軽に通える運動施設を示す普通名称又は慣用表示として、記述的、説明的用法で使用されているというべきであり、消費者においても、上記意味合いを認識し、手軽に利用できる形態のサービスであると認識するにすぎない。 特許庁も、前記(5)(被告の主張)のとおり、41類の指定役務「運動施設の提供」に関連して、被告表示は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきであるとして、識別力がないと判断 前記(5)(被告の主張)のとおり、41類の指定役務「運動施設の提供」に関連して、被告表示は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきであるとして、識別力がないと判断している。 以上によれば、被告による被告表示の使用は、普通名称又は慣用表示を普 通に用いられる方法で使用したにすぎないから、不正競争に当たらない。 (原告の主張)「コンビニジム」という名称は、被告以外の競業他社は用いておらず、競業者間において普通名称として使用され、その結果として消費者が普通名称として認識したという関係にない。そのため、被告表示は、適用除外の要件 である普通名称等には当たらない。被告が「コンビニジム」を商標登録して いることからしても、被告表示に識別力があることは明らかである。 争点3-6(損害の発生及び額)について(原告の主張)使用料相当損害 4億4281万6000円被告は、令和4年7月から令和5年4月末日までに被告表示を用いた店 舗を632店舗展開している。原告は、原告各表示を用いたフランチャイズ加盟店から、加盟金として220万円、ロイヤリティとして1店舗当たり月額8万8000円を得ている。もっとも、加盟金は、原告各表示を用いることの許諾、すなわち営業表示の使用権設定の対価のみでなく、原告各表示を用いた営業主体として相応しい営業方法についての指導や経営指 導に対する対価を含むものである。そのため、加盟金のうち、原告各表示の使用料の占める割合を15%とするのが相当である。 したがって、不競法5条3項により、被告施設の店舗数632店舗に加盟金220万円の15%を乗じた額である2億0856万円及び令和4年7月から令和5年4月末までの各月の被告施設の店舗数に1店舗当たり8 たがって、不競法5条3項により、被告施設の店舗数632店舗に加盟金220万円の15%を乗じた額である2億0856万円及び令和4年7月から令和5年4月末までの各月の被告施設の店舗数に1店舗当たり8 万8000円を乗じた額を合計した2億3425万6000円の合計4億4281万6000円の使用料相当損害金が発生したといえる。 弁護士費用相当額の損害金 4428万1600円前記アの使用料相当損害金の1割である4428万1600円とするのが相当である。 合計 4億8709万7600円(被告の主張)被告表示の使用は、不正競争に該当しないから、損害は観念し得ない。 また、原告各表示を用いた原告のフィットネス事業は、平成9年から20年以上継続しているが、その店舗数は20店舗にとどまっていることからす ると、原告各表示には顧客吸引力がなく、原告各表示の使用がサービスの購 買動機の形成に寄与していないといえる。したがって、仮に被告表示の使用が不正競争に該当するとしても、原告には不競法5条3項により算定される実施料相当額の損害も生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 不競法2条1項1号所定の不正競争を理由とする請求の当否について 認定事実後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 フランチャイズ加盟店を含む原告施設の店舗数等原告各表示を用いた原告施設は、フランチャイズ加盟店を含めて、平成9年以降、のべ62店舗がオープンした。現在の原告のフランチャイ ズ加盟店数は、20店舗であり、全国各地に所在している。また、原告施設の会員数は、過去に会員であった者も含め、のべ1万9408人である。(甲7、11、12、23、弁論の全趣旨)原告施設は、プール、ジ 20店舗であり、全国各地に所在している。また、原告施設の会員数は、過去に会員であった者も含め、のべ1万9408人である。(甲7、11、12、23、弁論の全趣旨)原告施設は、プール、ジム、スタジオなどを併設しない、トレーニング及びマッサージ設備のみを備えた施設である(甲2)。 全国のフィットネスクラブ施設数は、令和2年10月の時点で、7893店舗あり、そのうち小規模型(プール、ジム、スタジオを兼ね備えた施設とは異なり、サーキットトレーニング主体の施設)とされる店舗は、2189店舗ある(乙9)。 マスメディアによる紹介 平成9年10月30日付けの日経流通新聞において、原告が、同年11月から、初期投資額と運営経費を既存のフィットネスクラブに比べて大幅に引き下げた低価格のフィットネス事業を展開すること、同事業の名称は「コンビニフィットネス」であることなどを内容とする記事が掲載された(甲2の1)。 日経BP社が出版する雑誌「日経トレンディ」の平成17年12月号 において、平成18年に流行すると予想される物やサービスをランキング形式で紹介する「2006年ヒット予測ランキング」と題する記事が掲載された。同記事では、「“コンビニ”フィットネス」が5位として紹介されており、女性専用の小型フィットネスクラブが爆発的に増え、新市場を作ることが予想される旨、その主役は、米国で約8000店を展 開するフィットネスクラブ「カーブス」であり、「カーブス」は、平成17年夏に日本に上陸したが、平成18年から全国展開し、1年間に300ないし400店舗を出す予定である旨、同業他社も拡大路線を目指しており、店舗数は一挙に増えそうな勢いである旨などが記載されていた。 ただし、同記事において、原告や原告施設に 全国展開し、1年間に300ないし400店舗を出す予定である旨、同業他社も拡大路線を目指しており、店舗数は一挙に増えそうな勢いである旨などが記載されていた。 ただし、同記事において、原告や原告施設については、言及されていな かった。(甲2の2、乙20)前記(ア)のほか、原告施設は、原告各表示とともに、短時間でできるフィットネスクラブとして、以下のとおり、マスメディアにより紹介された(甲2、弁論の全趣旨)。 平成19年6月18日付け産経新聞 平成22年9月26日放送のフジテレビ「とくダネ」平成22年11月27日付け読売新聞平成22年12月15日放送のフジテレビ「めざましニュース」平成23年2月18日放送のNHK「BIZスポワイド」平成23年9月25日付け雑誌「サンデー毎日」 平成24年3月1日発行の雑誌「月刊レジャー産業資料」平成29年8月号の雑誌「ビジネスチャンス」チラシ配布等による宣伝広告原告及び原告のフランチャイズ加盟店は、各原告施設のある場所から半径3キロメートルから5キロメートル圏内を対象として、原告表示1 が記載された新聞の折り込みチラシを、1回につき約2万枚、年6回に わたり、近隣住民に配布している(甲12、弁論の全趣旨)。 令和4年1月に開店した原告のフランチャイズ店である戸越銀座店は、同月から同年6月にかけて、チラシの配布に係る費用を含めて、合計128万8705円の広告宣伝費を支出した(甲4、12、弁論の全趣旨)。 原告は、令和4年度には、フランチャイズやレジャー、サービスに関 する展示会の出展費用等として、合計285万9020円を支出した(甲5、22、弁論の全趣旨)。 SNSのフォロワ 趣旨)。 原告は、令和4年度には、フランチャイズやレジャー、サービスに関 する展示会の出展費用等として、合計285万9020円を支出した(甲5、22、弁論の全趣旨)。 SNSのフォロワー数等原告及び原告のフランチャイズ加盟店は、ツイッター、インスタグラム等のSNSや、YouTube等の動画共有プラットフォームにおいて、 原告各表示の全部又は一部を用いて原告施設の宣伝広告を行っている。原告施設に関する令和5年9月27日時点におけるSNS等のアカウントのフォロワーないし登録者の人数は、次の一覧表記載のとおりである。(甲3の2ないし4、乙14,15)SNS等アカウント名人数X(旧ツイッター)コンビニフィットネス鹿浜 コンビニフィットネス@ベルツリー 7コンビニフィットネス日暮里 コンビニフィットネスたかだ インスタグラムコンビニフィットネスフィフティークラブ藤沢 コンビニフィットネス鹿浜 コンビニフィットネス川西 コンビニフィットネス日暮里 YouTubeジャパンプロフィット 書籍の販売 出版社である現代書林は、原告の代表者であるBiを著作者とする「やわらかい体は太らない」という題号の書籍を出版したところ、同書籍の表紙には、副題として「わたしでもできちゃうコンビニフィットネス®・ブック」と記載されていた。同書籍は、平成22年9月に各種メデ ィアの記事で紹介され、また、第1刷で8000部発行された。(甲6、32)いわゆる100円ショップを経営する株式会社大創産業(以下「ダイソー」という。)は、平成16年頃から平成23年頃までの間、原告の当時の代表取締役であったAiを監修者として れた。(甲6、32)いわゆる100円ショップを経営する株式会社大創産業(以下「ダイソー」という。)は、平成16年頃から平成23年頃までの間、原告の当時の代表取締役であったAiを監修者として、「かんたんマッサージ」、 「どこでもストレッチ」及び「やっぱりダイエット」という各題号の書籍を販売した。ただし、同書籍には、原告各表示は用いられていなかった。(甲33ないし35、弁論の全趣旨)Aiは、前記(イ)の書籍の監修以外にも、多数の書籍の監修ないし著作をしており、うちいくつかは、発行部数が不明であるものの、ベスト セラーとされている(甲37ないし40、42)。 原告施設の宣伝広告においては、原告施設においてAiの書籍と関連する施術が受けられること及び同書籍の表紙の写真を掲載していたものがあるが、同書籍の題号は「1分間BMストレッチダイエット」等であり、その表紙の写真上、原告各表示の記載は読み取れない(甲41)。 争点1-1(原告各表示が商品等表示として周知といえるか)について前記(1)の認定事実を踏まえて、原告各表示が原告の商品等表示として周知であるか否かについて検討する。 原告施設は、運動設備を日本国内の各所において提供するフィットネスクラブであるから、その需要者は、日本全国でフィットネスクラブへの入 会を考えている者であると認められる。これを前提として、原告及び原告のフランチャイズ加盟店の店舗数及び会員数についてみると、前記(1)アの認定事実のとおり、全国のフィットネスクラブ施設数は、令和2年10月の時点で、原告施設と同規模と解される小規模型だけでも2189店舗あるのに対し、原告及び原告のフランチャイズ加盟店の店舗数は、現時点で 20店舗であり、既に閉鎖した店舗を含む累計でも62店舗 の時点で、原告施設と同規模と解される小規模型だけでも2189店舗あるのに対し、原告及び原告のフランチャイズ加盟店の店舗数は、現時点で 20店舗であり、既に閉鎖した店舗を含む累計でも62店舗にすぎず、そ の会員数も、のべ2万人弱にとどまるから、原告施設のシェアは、小規模型のフィットネス施設の市場全体においては僅かであって、その利用者も限定されているといわざるを得ない。そうすると、原告施設が全国各所に存在していることを踏まえても、原告施設の存在により、原告各表示が、需要者である日本全国のフィットネスクラブへの入会を考えている者の間 において広く知られていたとは認められない。 また、前記(1)ウの認定事実のとおり、原告及び原告のフランチャイズ加盟店が行っている新聞の折り込みチラシの配布は、各原告施設のある場所から半径3キロメートルから5キロメートル圏内を対象とするものにすぎず、上記各原告施設の周辺地域に限定されていること、原告及び原告のフ ランチャイズ加盟店の店舗数が既に閉鎖した店舗を含む累計でも62店舗にすぎないことからすると、チラシの配布による知名度の獲得は、日本全国に及ぶものであったということはできない。さらに、前記(1)エの認定事実のとおり、原告及び原告のフランチャイズ加盟店が原告施設の宣伝広告を行っているツイッター及びインスタグラムのアカウントのフォロワー数 並びにYouTubeの登録者数は、九つのうち七つのアカウントで100人を切っていて、それらの中にはフォロワー数が0人のものや一桁のものも存在し、最もフォロワー数の多いアカウントであっても305人にすぎないことからすると、SNS等による宣伝の効果も限定的であるといわざるを得ない。 これらのことからすれば、原告及び原告のフランチ し、最もフォロワー数の多いアカウントであっても305人にすぎないことからすると、SNS等による宣伝の効果も限定的であるといわざるを得ない。 これらのことからすれば、原告及び原告のフランチャイズ加盟店が、チラシの配布等のために一定の広告宣伝費を支出し、また、SNS等でも宣伝広告を行っており、その宣伝広告に伴って、原告各表示が一定の範囲には知られているだろうと推測されるとしても、そのような宣伝広告により、原告各表示が、需要者である日本全国のフィットネスクラブへの入会を考 えている者の間において広く知られるに至ったとまでは認められないとい うべきである。 マスメディアによる原告施設の紹介等の状況についてみると、前記(1)イ(ア)の認定事実のとおり、日経流通新聞は、平成9年10月30日付けで、原告が同年11月から「コンビニフィットネス」の名称でフィットネス事業を開始することを内容とする記事を掲載した。しかし、同新聞は、一般 的な全国紙でないから、その読者は限られていると解されるし、同記事は、原告各表示そのものが掲載されたものではない上、同記事が掲載された時点において、原告各表示を用いた原告施設でのフィットネス事業はいまだ開始されていなかったことからすると、同記事に原告が展開する予定のフィットネス事業の名称が「コンビニフィットネス」と記載があることをも って、原告各表示自体が、日本全国のフィットネスクラブへの入会を考えている者の間において広く知られたものと認めることはできない。 また、前記(1)イ(イ)の認定事実のとおり、平成17年に発行された雑誌「日経トレンディ」は、「2006年ヒット予測ランキング」と題する記事で「“コンビニ”フィットネス」を5位とする記事を掲載しているものの、 同記事は 定事実のとおり、平成17年に発行された雑誌「日経トレンディ」は、「2006年ヒット予測ランキング」と題する記事で「“コンビニ”フィットネス」を5位とする記事を掲載しているものの、 同記事は、「カーブス」が展開する女性専用の小型フィットネスクラブが流行するというものであって、原告や原告施設に関する記載を含むものではない。そうすると、同記事に表示された「“コンビニ”フィットネス」という表記は、原告の事業や原告施設の名称として記載されたものではなく、手軽で便利な運動施設の意味で記載されたものであることは明らかである。 したがって、同記事において「“コンビニ”フィットネス」と表記されていることを、原告各表示の周知性の有無の判断に当たって考慮することが相当とはいえない。 さらに、前記(1)イ(ウ)の認定事実のとおり、平成19年から平成29年までの間に、テレビの情報番組や新聞等に、短時間でできるフィットネス クラブとして、原告各表示とともに原告施設が紹介されているものの、そ のような紹介がされたのは、平成19年から平成29年までの約10年間でわずか8回にとどまることからすると、上記のマスメディアによる原告施設の紹介が原告各表示の認識の定着に寄与した程度が高いとは考え難く、それが周知性獲得に及ぼした影響は、限定的であったといわざるを得ない。 原告が主張する各種書籍の販売について検討すると、前記(1)オの認定事 実のとおり、原告の代表者が執筆した「やわらかい体は太らない」という題号の書籍には、同書籍の表紙に副題として「コンビニフィットネス®」と記載されていたものである。しかし、書籍の題号は、その書籍の内容を要約して示すのが通例であって、必ずしも出所表示機能を果すものでないと解されるところ、同書籍の副題が「わ 「コンビニフィットネス®」と記載されていたものである。しかし、書籍の題号は、その書籍の内容を要約して示すのが通例であって、必ずしも出所表示機能を果すものでないと解されるところ、同書籍の副題が「わたしでもできちゃうコンビニフィッ トネス®・ブック」であることからすれば、同書籍の内容が手軽で簡単にできる運動に関するものであることを説明する趣旨で記載されているとみる余地があり、需要者であるフィットネスクラブへの入会を考えている者もそのように認識する可能性があるというべきである。したがって、同書籍が販売されていた事実を原告各表示の周知性の有無の判断に当たって考慮 することが相当であるとはいえない。 さらに、ダイソーの各店舗で販売された書籍「かんたんマッサージ」、「どこでもストレッチ」及び「やっぱりダイエット」(甲33ないし35)や、Aiが監修ないし著作したその他の多数の書籍(甲37,28、40、42)についてみても、これらの書籍にはそもそも原告各表示が用いられ ていないから、原告各表示の周知性の有無の判断に当たって考慮することはできないというべきである。この点、原告は、これらの書籍を監修ないし著作したAiが、原告の当時の代表取締役であって、全国的に知名度が高いことから、消費者は、同人ひいては原告の手がける書籍であることを知ってこれらの書籍を購入することが容易に想定しうること、原告施設の 宣伝広告において、Aiの書籍と関連する施術が受けられることを掲載し ていることから、これらの書籍が販売されていたことも、原告各表示の周知性獲得に寄与するものである旨主張する。しかし、本件全証拠によっても、Aiが、その当時、全国的に知名度が高かったとの事実を認めることができず、また、Aiが、原告の代表者であることを消費 各表示の周知性獲得に寄与するものである旨主張する。しかし、本件全証拠によっても、Aiが、その当時、全国的に知名度が高かったとの事実を認めることができず、また、Aiが、原告の代表者であることを消費者が認識していたとの事実も認めることができないから、原告の上記主張は、その前提を 欠くものであって、採用することができない。 以上の検討結果によれば、原告が主張する事情のうち、原告各表示の周知性の有無の判断に当たって考慮することが相当であると認められるものは、原告及び原告のフランチャイズ加盟店の店舗数及び会員数、各店舗におけるチラシやSNSによる広告宣伝、日経トレンディの記事を除く新聞 やテレビ等の媒体に掲載された記事等における原告施設の紹介に限られるというべきである。そして、前記アないしウで説示したとおり、原告施設の店舗数及び各店舗の利用者数は多くなく、そのシェアは市場全体の僅かな部分を占めるにすぎず、チラシやSNS等の宣伝広告の効果も限定的であること、テレビや新聞、雑誌等のマスメディアにおける露出は、いずれ も原告各表示の認識の定着に寄与した程度が高いとはいえないことからすると、これらの原告施設の展開状況や宣伝広告により、原告各表示が、原告が主張する平成17年以降、需要者である日本全国のフィットネスクラブへの入会を考えている者の間において広く認識されていると認めることができず、仮に特定の地域に限定したとしても、いずれかの地域の需要者 の間で広く認識されていると認めるに足りる証拠はない。 小括以上によれば、原告各表示が、需要者である日本全国又はいずれかの地域のフィットネスクラブへの入会を考えている者の間において、原告商品等表示として周知であると認めることはできないから、その余の争点について判 断する 示が、需要者である日本全国又はいずれかの地域のフィットネスクラブへの入会を考えている者の間において、原告商品等表示として周知であると認めることはできないから、その余の争点について判 断するまでもなく、被告による被告表示の使用が不競法2条1項1号に該当 するとはいえず、同号に基づく原告の請求は理由がない。 2 不競法2条1項2号所定の不正競争を理由とする請求の当否について前記1で説示したとおり、原告各表示には、不競法2条1項1号の周知性が認められないから、争点2(原告各表示が商品等表示として著名といえるか)についても、同項2号の著名性がないことは明らかであるというべきである。 したがって、その余の争点について判断するまでもなく、被告による被告表示の使用行為が、不競法2条1項2号に該当するとはいえず、同号に基づく原告の請求も理由がない。 3 商標権侵害を理由とする予備的請求に係る訴えの追加的変更が許されるか否かについて 原告は、令和5年6月22日、原告各表示が原告の商品等表示として周知又は著名なものであり、被告による被告表示の使用が不競法2条1項1号又は2号所定の不正競争に該当すると主張して、同法4条に基づく損害賠償を請求する本件訴訟を提起し、令和5年8月28日の第1回口頭弁論期日以降、同請求について前記第2の3の各争点につき、主張及び証拠の整理が行われ、 同年10月19日の第1回弁論準備手続期日、同年12月8日の第2回弁論準備手続期日及び令和6年2月26日の第3回弁論準備手続期日において、当事者双方により数次にわたる準備書面の陳述及び書証の提出がされたこと、その結果、第3回弁論準備手続期日において、受命裁判官による不正競争に当たらない旨の心証開示を受け、当事者双方において和解による解決 者双方により数次にわたる準備書面の陳述及び書証の提出がされたこと、その結果、第3回弁論準備手続期日において、受命裁判官による不正競争に当たらない旨の心証開示を受け、当事者双方において和解による解決を検討 することとなったこと、同年4月19日の第4回弁論準備手続期日においては、受命裁判官の交代があったことから、当事者双方による準備書面の陳述及び書証の提出された後、原告が和解金額について検討することと併せて、当事者双方がこれまでの主張の要約書面を提出することになったこと、同年5月23日の第5回弁論準備手続期日までの間に、和解による解決が困難と なったこと、原告が、原告各商標権の侵害に基づく損害賠償請求について予 備的に主張する旨記載された同日付けの準備書面を提出し、同期日において、同準備書面を陳述したことは、いずれも当裁判所に顕著である。 前記(1)の本件訴訟の経過からすれば、当事者双方が従前の主張の要約書面を提出することとなった令和6年4月19日の第4回弁論準備手続期日の時点では、不競法に基づく損害賠償請求についての審理は概ね尽くされていた といえる。他方で、原告が、本件訴訟において、原告各商標と同一の原告各表示が周知又は著名な原告の商品等表示に当たるとして、不競法に基づく損害賠償を請求し、同請求に係る主張及び立証を積み重ねていることからすれば、原告は、本件訴訟を提起する時点で、原告各商標権の侵害に基づく損害賠償を選択的又は予備的に請求することが可能であったというべきである。 しかるに、原告は、本件訴訟提起から約11か月も経過し、不競法に基づく損害賠償請求の審理が概ね尽くされた時点で、和解による解決が困難となったことを契機として、本件訴訟提起時から請求することが可能であった原告各商標権侵害に基づ 起から約11か月も経過し、不競法に基づく損害賠償請求の審理が概ね尽くされた時点で、和解による解決が困難となったことを契機として、本件訴訟提起時から請求することが可能であった原告各商標権侵害に基づく損害賠償請求を予備的に追加しようとしたものである。 そして、このような予備的請求の追加に係る訴えの変更がされれば、原告各 商標権の侵害の有無について更に審理を尽くす必要が生じることは明らかである。 以上によれば、商標の類否の判断と不競法上の類否の判断とが一定程度重複することを考慮しても、原告による原告各商標権侵害に基づく訴えの追加的変更は、「著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき」(民訴法143条 1項ただし書)に当たり、かつ、「不当である」と認められる(同条4項)から、これを許さない旨の決定をする。 第4 結論以上によれば、本件訴訟における審判の対象である原告の不競法2条1項1号及び2号の不正競争に係る各損害賠償請求はいずれも理由がないから、これ らをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 塚田久美子 (別紙)商品等表示目録 塚田久美子 (別紙)商品等表示目録 以上 (別紙)原告商標権目録 1 登録番号第4645036号登録日平成15年2月14日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第41類スポーツ・健康管理について知識の教授、運動施設の提供 2 登録番号第5164488号登録日平成20年9月5日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第16類新聞,写真立て,紙製包装用容器第28類運動用固定式自転車,筋力トレーニング用器具・用具,運動用トレッドミル,エクササイズトレーニング用運動器具・用具,コンディショニング用器具・用具,ローラーで身体をマッサージするリラクゼーション用器具・用具,エアーバッグで身体をマッサージするリラクゼーション用器具・用具,その他の運動用器具・用具 第29類アミノ酸・ビタミン・カルシウム等を主原材料とする粉末状・粒状・錠剤状・顆粒状・液状・カプセル状・固形状・ゼリー状等の加工食品以上
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