平成14(行ウ)27 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年11月21日 札幌地方裁判所
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判決文本文12,730 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第1 請求の趣旨被告は,Aに対し,376万3200円及びこれに対する平成14年12月16日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。 第2 事案の概要本件は,原告が,B町の締結した水道管理に関する業務委託契約が水道法24条の3第1項の要件を満たしておらず違法であること及び上記委託契約締結手続に違法があることを理由とし,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号ただし書に基づき,上記委託契約を締結した地方公共団体の長であるAに対する賠償命令を発するよう求めた事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのないものは証拠を掲記しない。)(1)B町による委託契約の締結ア B町は,水道法3条4項所定の水道事業者であるが,平成14年5月31日,B郡B町字B番地所在のC株式会社(以下「本件受託者」という。)との間で,浄水場運転管理業務及び送水施設保守点検業務に係る業務委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 イ本件契約は,委託期間を平成14年6月1日から平成15年3月31日まで,委託料を1785万4200円(月額178万5420円)とし,B町の水道施設であるB浄水場施設及びH浄水場施設の維持管理及び運転操作監視業務を本件受託者に委託するものであった(甲3の水道施設管理業務委託仕様書(以下「仕様書」という。)1条)。本件受託者の従業員は,交代で平日の午前8時30分から午後5時までの間,B町の職員とともに業務に従事するほか(甲12,乙6,弁論の全趣旨),夜勤あるいは日勤という形式で本件契約に係る業務に従事することとされており,夜勤は,365日を通じて午後5時から翌日午前8時30分まで,日勤は,土曜日,日曜日,国民の祝日に関 乙6,弁論の全趣旨),夜勤あるいは日勤という形式で本件契約に係る業務に従事することとされており,夜勤は,365日を通じて午後5時から翌日午前8時30分まで,日勤は,土曜日,日曜日,国民の祝日に関する法律に規定する休日及び年末年始(12月31日から翌年1月5日まで)における午前8時30分から午後5時までとされている(仕様書4条)。本件契約における業務の詳細については,本件契約締結後,速やかに担当員と業務責任者が協議を行い確認することとされ,委託者は担当員を定めることができ,本件受託者は業務責任者を選任しなければならないこととされている(仕様書3条,6条,7条)。業務責任者は,現場の最高責任者として業務従事者の指揮監督を行うとともに,技術の向上及び事故の防止に努め,担当員と常に密接な連絡を取り,業務履行状況の報告及び担当員との協議を行うこととされている(仕様書8条)。また,本件受託者は,B町に対し,日ごとの業務履行結果,該当月分の業務履行結果,異常事態の発生及び業務運営上必要と思われる事項について,書面で報告をしなければならず,更に,緊急を要する事項は随時口頭での報告を行うものとされている(仕様書17条)。 (2)原告は,平成14年9月24日,B町監査委員に対し,本件契約が水道法24条の3,地方自治法234条,B町財務規則に違反することを理由として,地方自治法242条1項に基づく住民監査請求をした。 B町監査委員は,平成14年11月22日,上記請求を棄却し,その結果を原告に通知した。 2 争点(1)争点1・本件契約が水道法24条の3に違反するか。 ア原告の主張本件契約は,浄水場施設の日常の運転管理業務のうち,B町の職員が不在である平日の午後5時から翌日の午前8時30分までと土曜日・日曜日・祝日において,本件受託者の従業員の するか。 ア原告の主張本件契約は,浄水場施設の日常の運転管理業務のうち,B町の職員が不在である平日の午後5時から翌日の午前8時30分までと土曜日・日曜日・祝日において,本件受託者の従業員のみが,その判断に基づいて,浄水場の取水,導水,浄水,送水,配水施設の一体的運転に関する全ての技術業務を行うことを内容としており,同法24条の3に基づく委託に該当する。被告は,仕様書において本件受託者の業務責任者と協議すべきこととされている担当員を定めていないことなどからみても,本件受託者の従業員を指導監督していないのであって,本件契約が水道法24条の3に基づく委託であることは明らかである。 水道法施行令8条は,水道法24条の3第1項による業務を委託できる者の要件として,委託を受けて行う業務を適正かつ確実に遂行するに足りる技術的な基礎を有する者であることとし,同法24条の3第3項,第5項,同令9条は,委託を受ける水道管理業務の受託者は,水道の管理について技術上の業務を担当させるため,水道技術管理者たる資格を有する受託水道業務技術管理者を置かなければならないとしている。 しかし,本件受託者は,水道の運転管理の技術的な経験・知識を有さず,水道技術管理者たる資格を有する者を擁していない単なる警備会社であり,上記要件を満たしていない。 したがって,本件契約は,同法24条の3第1項の規定に違反する。 イ被告の主張水道法24条の3第1項に基づく業務の委託は,一定の要件を満たす者への法的責任を伴う業務委託であって,水道事業者の責任の下で行われる個々の業務委託,いわゆる手足の業務委託とは異なる。 本件契約は,B町の職員が勤務していない部分についての個々の業務委託をするものにすぎず,受託者が水道事業者とは別個・独立に業務処理を行うことを前提 の業務委託,いわゆる手足の業務委託とは異なる。 本件契約は,B町の職員が勤務していない部分についての個々の業務委託をするものにすぎず,受託者が水道事業者とは別個・独立に業務処理を行うことを前提とする同法24条の3第1項に基づく委託には当たらない。 (2)争点2・本件契約締結手続が地方自治法234条に違反するか。 ア原告の主張被告は,本件契約が地方自治法施行令167条の2第1項2号に定める場合に当たる旨主張するが,根拠はなく,本件契約を随意契約の方法によって締結したことは,地方自治法234条に違反する。 また,被告は,B町内及びその近隣に事業所を有する業者であることのみを契約の相手方の選考理由としているが,本件契約の性質又は目的からすると,相手方の技術的適性について考慮することなく本件受託者を選定したことも違法である。 イ被告の主張地方自治法234条1項,2項,同法施行令167条の2第1項2号は,契約の性質又は目的が競争入札に適しないものについて随意契約の方法により契約を締結することができる旨規定している。 被告は,本件契約が,住民の生命に関わる水道水の供給業務に関するものであるから,契約の相手方としては,緊急時に水道事業者であるB町の指示等に迅速に対応できるようB町に近い地域に事業所をもつ業者が適任と考え,B町に指名願いを届けている業者の中からB町及びその近隣自治体に所在する業者を調査したところ,委託に適する業者は,見積書を徴することとなった数社しか存在しなかった。このように,委託し得る業者は極めて少数であったので,本件契約は,その性質や目的から競争入札に適しないものであった。そのため,被告は,競争見積によって契約者を選定し,本件契約を締結した。 したがって,被告が,本件契約を随意契約の方法で締結したことは, 契約は,その性質や目的から競争入札に適しないものであった。そのため,被告は,競争見積によって契約者を選定し,本件契約を締結した。 したがって,被告が,本件契約を随意契約の方法で締結したことは,地方自治法234条に違反しない。 (3)争点3・本件契約締結手続がB町財務規則に違反するか。 ア原告の主張B町財務規則128条の2第3項は,随意契約による場合には,その関係書類にその根拠法令の条項を記載しなければならない旨規定しているが,平成14年5月28日付け起案「水道施設管理業務委託の契約締結について」には根拠法令が記載されておらず,本件契約締結手続は,上記規則に違反している。 また,本件受託者の見積書には,「受託者が被告に『競争入札参加資格審査申請書』に添付して届出を行っている使用印」の押印,「見積金額」の記載等がされておらず,B町財務規則120条4号に違反している。 イ被告の主張「水道施設管理業務委託の契約締結」と題する書面には,随意契約によることの根拠法令の条項が記載されていないが,そのような手続上の瑕疵は,直ちに実体法上の違法と評価されるべきものではないし,上記手続上の瑕疵は,支出負担行為の不必要性を基礎付けるものではなく,B町財務規則128条の2第3項に違反する事実はない。 また,B町財務規則120条は,一般競争入札と指名競争入札に適用される規定であって,随意契約には適用されない。なお,本件受託者の見積書には,見積金額は記載されているし,代表取締役の捺印もされている。 (4)争点4・本件契約締結手続が不正か。 ア原告の主張本件契約締結手続は,平成14年3月1日から開始されたが,本件契約に係る予算は,同月18日に議会で議決されたものであり,上記手続開始の時点では,地方自治法232条の3にいう予算や同法21 の主張本件契約締結手続は,平成14年3月1日から開始されたが,本件契約に係る予算は,同月18日に議会で議決されたものであり,上記手続開始の時点では,地方自治法232条の3にいう予算や同法214条にいう債務負担行為は存在せず,これらについての議会の議決も欠いている。 仕様書では,B町の2つの浄水場は,その構造が異なるにもかかわらず,区分されておらず,その記載事項は事実と異なる。これら仕様書の記載の誤りは,仕様書を前提として業者から見積書を徴していることからしても,委託料に影響を及ぼすものである。 また,本件契約は,退職職員の受託者への天下り条件として締結されたものである。このように,本件契約は,不正な手続の下にされた違法なものである。 イ被告の主張年度開始前に,翌年度歳出予算の債務負担となるべき行為をすることは許されないが,年度早々に必要とされる物品の購入のための準備的行為として見積書を徴することは,単なる契約の申込みを受ける段階にとどまるものであるから差し支えなく,その一連の手続は正当なものである。仮に予算年度開始前に見積書を徴することが地方自治法232条の3の規定に反するとしても,その瑕疵は,予算議決により追認され,治癒されると解すべきである。 本件契約の仕様書には記載上の誤りがあるが,そのことが見積書の内容,委託料に影響を与えるものではない。本件契約は,職員の天下りを条件としたものではない。その他,本件契約には不正な点はない。 (5)争点5・損害ア原告の主張B町の浄水場は,本件契約が締結される以前の平成14年5月31日までは,B町が直接雇用する臨時職員によって行われており,その費用は,平成14年度の2か月間では一人当たり平均月額20万7900円であった。しかし,本件契約においては,職員に要する 14年5月31日までは,B町が直接雇用する臨時職員によって行われており,その費用は,平成14年度の2か月間では一人当たり平均月額20万7900円であった。しかし,本件契約においては,職員に要する費用は一人当たり平均月額29万7500円であり,平成14年度の実績と比較して一人当たり平均8万9600円高額になっており,平成14年12月までの7か月間では,6名分で376万3200円も高額になっている。B町は,本件契約によって以上のような不当な支出を余儀なくされたものであり,B町には,上記金額と同額の損害が生じている。 イ被告の主張B町における平成14年度の浄水場運転管理業務及び送水施設保守点検業務に要する費用は,本件契約もあって,平成13年度のそれより486万5000円の減少となっている。したがって,原告が主張するような損害は発生していない。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件契約の水道法24条の3違反の有無)について(1)原告は,水道事業者であるB町が,平成14年5月31日に本件受託者との間で締結した本件契約が水道法24条の3に違反すると主張する。 ところで,水道事業とは,一般の需要に応じて水道により水を供給する事業をいい(水道法3条2項),水道事業者とは,厚生労働大臣の認可を受けて水道事業を経営する者をいう(同法3条5項,6条1項)。 水道事業者は,原則として市町村であり(同法6条2項),水道の管理について技術上の業務を担当させるため,政令で定める資格を有する水道技術管理者一人を置かなければならない(同法19条1項本文,2項)。 水道事業者は,政令で定めるところにより,水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を,当該業務を適正かつ確実に実施することができる者として政令で定める要件に該当するものな 項本文,2項)。 水道事業者は,政令で定めるところにより,水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を,当該業務を適正かつ確実に実施することができる者として政令で定める要件に該当するものなどに委託することができ(同法24条の3第1項),この委託を受けた者(水道管理業務受託者)は,水道の管理について技術上の業務の管理を担当させるため,受託水道業務技術管理者一人を置かなければならない(同条の3第3項)。受託水道業務技術管理者は,委託された業務の範囲内で,水道技術管理者が従事する事務に従事し,及びこれらの事務に従事する他の職員の監督をしなければならない(同条の3第4項,同法19条2項)。この場合,水道技術管理者には,同法19条2項の規定は適用されず,受託水道業務技術管理者が,同項各号に掲げる事項に関する全ての事務に従事し,さらに,他の職員の監督も行う場合には,水道事業者は,水道技術管理者を選任する義務を免れる(同法24条の3第7項)。 また,上記委託がされた場合,委託の範囲内において,水道管理業務受託者を水道事業者と,受託水道業務技術管理者を水道技術管理者とみなし,水道管理業務受託者には,給水開始前の水質検査及び施設検査(水道法13条1項),定期及び臨時の給水検査(同法20条1項),健康診断の実施(同法21条1項),これらに関する記録の作成・保存(同法13条2項,20条2項,21条2項),給水装置の検査(同法17条),衛生上の措置(同法22条),給水の緊急停止(同法23条)等に関する規定(これらの規定に係る罰則を含む。)が適用され,他方,水道事業者及び水道技術管理者については,これらの規定は適用されない(同法24条の3第6項)。 水道法24条の3は,従来,水道事業の担い手である水道事業者の大半が中小規模の事業者(市町村 他方,水道事業者及び水道技術管理者については,これらの規定は適用されない(同法24条の3第6項)。 水道法24条の3は,従来,水道事業の担い手である水道事業者の大半が中小規模の事業者(市町村)であり,水質等の管理体制がきわめて脆弱であることから,技術力の高い第三者(他の水道事業者等)に業務を委託して適正に管理を行うための規定を整備するため,平成13年法律第100号によって新設された規定である(乙1)ところ,前記のとおり,同条の3による委託が行われた場合には,水道事業者及び水道技術管理者が,委託の範囲内でその業務及び責任から解放され,水道管理業務受託者及び受託水道業務技術管理者が,これに代わって業務に従事し,刑事責任を含めた責任を負うとされており,これによれば,同条の3において想定されている委託の形態は,水道事業の全部又は独立した一部分の運営管理が,水道業務受託者のみによって独立して行われるものであるというべきであり,このような責任の移管を伴う委託である場合に同条の3が適用されるというべきである。 これを本件についてみると,前記前提となる事実(1)イのとおり,本件受託者は,本件契約において,平日の午前8時30分から午後5時までの間は,B町の職員とともに業務に従事するほか,水道事業者たるB町に対し,日ごと,あるいは月ごとに業務内容を書面で報告することや,緊急を要する事項については随時口頭で報告することが義務付けられており,水道事業受託者として独立してB町の水道業務を行うものとはいえない。 したがって,本件契約は,水道法24条の3にいう委託であるとはいえず,本件契約が同条の3の要件を満たしておらず違法であるとする原告の主張は採用することができない。 (2)これに対し,原告は,B町の職員が,本件受託者の従業員を指導監督しておら いう委託であるとはいえず,本件契約が同条の3の要件を満たしておらず違法であるとする原告の主張は採用することができない。 (2)これに対し,原告は,B町の職員が,本件受託者の従業員を指導監督しておらず,このことは,被告が,仕様書上,本件受託者の業務責任者と協議することとされている担当員を定めていないこと(甲18)などからも明らかであるなどと主張して,本件契約が,実質的には水道法24条の3の委託に該当するものである旨主張する。 しかし,被告が担当員を定めるか否かは,仕様書の文言上,被告の裁量とされていると解するのが相当であり,担当員が定められていないことから直ちに,本件受託者の職員に対する被告の監督が及ばないと解することはできない。なお,証拠(甲17)によれば,D保健所が,仕様書には,B町の水道技術管理者による本件受託者の職員に対する監督が十分行われないと考えられる内容がある旨の指摘をしたことが認められる。しかし,この指摘も本件契約が本件受託者の責任において業務を実施させようとするものではなく,今後そのような契約にするのであれば,水道法24条の3第1項等の規定に則った手当をする必要がある旨を指摘するものであるから,本件契約においては,なお,B町の水道技術管理者の責任の下で水道事業が行われていることを前提としたものであると認めるのが相当であって,上記のようなD保健所の指摘があるからといって,本件契約に基づく委託が,実質的に水道法24条の3に定める委託と同じであるとはいえない。 2 争点2(本件契約の地方自治法234条違反の有無)について(1)前記前提となる事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。 ア B町は,B浄水場及びH浄水場の施設管理・運営業務を委託すべく,平成14年3月1日,株式会社E,F株式会社及 )前記前提となる事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。 ア B町は,B浄水場及びH浄水場の施設管理・運営業務を委託すべく,平成14年3月1日,株式会社E,F株式会社及び本件受託者の3社から仮見積書を徴収し,同月26日から見積価格が最低であった本件受託者と協議を開始し,同年5月31日,本件受託者との間で随意契約の方法により,本件契約を締結した(甲3,乙6,7)。 上記の仮見積書を提出した株式会社Eは,G市に本店を置く会社であり,建築物清掃業務や浄化槽の管理及び清掃業務を営むことを目的とする。F株式会社は,H市に本店を置く会社であり,廃棄物の収集,運搬,処理や泌尿浄化槽工事,下水道工事の設計,施工,建物,道路,河川及び公園その他遊園施設の清掃,保守,管理等を営むことを目的とする。本件受託者は,B町に本店を置く会社であり,建物,道路,公園及び遊園施設の清掃,保守,管理業務や警備の請負及びその保障業務,浄化槽の清掃,管理業務等を営むことを目的とする会社である(甲13)。 イ被告は,平成14年3月のB町定例議会において,従来の管理体制を見直して水道事業の経費削減に努めたい旨発言し,さらに,同年6月のB町定例議会において,委託をすることによって水道事業の人件費が657万6000円節減される旨発言した(甲9,甲10)。 また,B町水とまちなみ課長は,平成14年3月の予算委員会において,本件契約の締結は,浄水場の運営を従来の一人体制から二人体制にすることによって安定した飲料水の供給をしていくことと,人件費を節減することを考慮してしたものである旨発言した(甲12)。 (2)地方自治法は,普通地方公共団体が締結する契約につき,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結すると規定し(同法234条 考慮してしたものである旨発言した(甲12)。 (2)地方自治法は,普通地方公共団体が締結する契約につき,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結すると規定し(同法234条1項),指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることを認めている(同条2項)。そして,随意契約の方法によって契約を締結できる場合については,地方自治法施行令167条の2第1項に列挙されており,同項2号は,契約の性質又は目的が競争入札に適しないものをするときには随意契約によることができるものと規定している。 上記の性質又は目的が競争入札に適しないものとは,不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように当該契約の目的物の性質から契約の相手方が自ずから特定のものに限定されてしまう場合や,契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成するうえで必要とされる場合など当該契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難というべき場合のほか,競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが,不特定多数の者の参加を求め,競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において,当該契約の目的,内容に照らし,それに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定し,その者との間で契約を締結するという方法をとることが,当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成するうえでより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合もこれに該当するものというべきである。そして,普通地方公共団体の締結する契約が上記のような場合に るうえでより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合もこれに該当するものというべきである。そして,普通地方公共団体の締結する契約が上記のような場合に該当するか否かは,前記の地方自治法及び同法施行令の趣旨を勘案し,その契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して,契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である(最高裁昭和62年3月20日判決・民集41巻2号189頁)。 (3)そして,水道事業が町民の生命や健康に係わる事業であることに加え,前記(1)イの被告及びB町水とまちなみ課長の各発言からすれば,本件契約の究極的な目的は,町民の生命及び健康にとって好ましい清浄な水道水を安定的に供給すると共に,そのための経費を削減することにあるというべきである。 ところで,前記認定事実のとおり,本件契約は,B町の職員が不在の時間帯にも本件受託者の職員が,B町の浄水施設の管理運営を行うというものであり,その時間帯もB町の職員とともに業務に従事する時間帯よりも多く,水道事業が,町民の生命や健康に関わる事業であることからすると,本件契約の相手方には水道事業に関する経験や技術を備えることが重視されるべきであると考えられる。 したがって,本件契約が随意契約の方法で締結されることが契約担当者の合理的な裁量判断として許容されるのは,本件契約の上記のような特質や目的に鑑み,契約の相手方の規模や信用はもとより,水道事業や,これに関連あるいは類似する業務に対する技術や経験の程度から,本件受託者を相手方として本件契約を締結することが,清浄な水道水を安定的かつ低コストで町民に供給するという目的を実現する上で有益であると判断される場合であって,このような場合でないのに随意契約の方法を選 託者を相手方として本件契約を締結することが,清浄な水道水を安定的かつ低コストで町民に供給するという目的を実現する上で有益であると判断される場合であって,このような場合でないのに随意契約の方法を選択したときは,その選択は裁量違反となるといわざるを得ない。 しかし,上記認定事実によれば,B町の担当職員は,本件契約を締結するに当たり,B町及びその近隣に事務所を有する業者であることを指標として任意に選択した3社に仮見積書を提出させ,その見積価格が最低であった本件受託者を本件契約の相手方として選択したものであるところ,3社とも,浄水槽の管理など,一応水道事業と関連し得る業務を事業の目的とはしているものの,その実績は不明であって,このほかに,上記職員が,本件契約の締結に当たって,仮見積書を提出した3社の企業規模や信用状況,水道事業に関する経験や技術ないし水道事業と関連あるいは類似する業務の実績等について具体的に検討したことを窺わせる主張及び証拠はない。そして,被告及び水とまちなみ課長の議会又は予算委員会での発言によっても,本件契約は,主として,B町の水道事業における人件費の削減を目的として締結されたものであることが窺えるだけで,本件契約を締結するに当たり,本件受託者を相手方として随意契約の方法を選択することが,清浄な水道水を安定的かつ低コストで町民に供給するという目的を実現するために合理的であると判断されると認めることはできない。 したがって,B町の担当職員の適切な裁量判断により,随意契約の方法が選択されたものとはいえないから,本件受託者を相手方とする本件契約の締結は,裁量を誤ったものであり,地方自治法234条1項,2項,同法施行令167条の2第1項2号に違反するものといわざるを得ない。 なお,正常な水道水を安定的かつ低コスト 相手方とする本件契約の締結は,裁量を誤ったものであり,地方自治法234条1項,2項,同法施行令167条の2第1項2号に違反するものといわざるを得ない。 なお,正常な水道水を安定的かつ低コストで町民に供給するという目的達成のためには,一般競争入札が必ずしも適切な方法であるとは考え難いが,そのことは上記判断に影響を及ぼすものではない。 3 争点3及び4(B町財務規則違反の有無及び契約締結手続の不正の有無)について原告は,本件契約がB町財務規則128条の2第3項,同規則120条4号に違反すると主張する。 しかし,上記2の認定判断のとおり,本件契約を裁量を誤って随意契約の方法で締結したことが地方自治法234条,同法施行令167条の2第1項2号に違反するから,同規則128条の2第3項あるいは同規則120条4号に違反するか否かについては判断するまでもない。 また,原告は,本件契約締結手続には,予算の議決なくして見積書を徴したこと,仕様書の記載に誤りがあること,職員の天下りを条件としたことの不正があると主張する。 しかし,契約の締結と異なり,見積書を徴することによって,B町が債務を負担することはなく,見積書の徴収は,予算の定めに基づいてされなければならないものではない。また,B町には,2つの浄水場があり,その構造が異なるのに,仕様書の別紙にはこれらが区別して記載されておらず,各浄水場の設備の名称等も正確に記載されず,浄水場に存在しないとされる設備が記載されていたり,作業内容の一部が記載されていなかったりしていることについては当事者間に争いがないが,これらの記載上の不備は,実際の水道事業の内容と大きくかけ離れたものではなく,このことは,本件契約を無効とすべきほどの影響を及ぼす程度のものであるとは認められない。本件契約が,B町の職 いがないが,これらの記載上の不備は,実際の水道事業の内容と大きくかけ離れたものではなく,このことは,本件契約を無効とすべきほどの影響を及ぼす程度のものであるとは認められない。本件契約が,B町の職員の天下りを条件に締結されたものであると認めるに足りる証拠はない。 4 争点5(損害)についてそこで,次に,B町長(地方公共団体の長)であるAに損害賠償責任があると仮定して,損害について検討する。 上記認定判断のとおり,本件契約は水道法24条の3に違反するものではなく,本件契約の締結を裁量を誤って随意契約の方法でしたことに違法があったにすぎない。 そして,そのことによる損害は,例えば,競争入札が相当とされるのであれば,契約締結手続に競争原理が導入された場合に落札価格となったであろう金額と実際に締結された契約による委託料との差額というべきであり,また,上記目的達成のために必要な経験や技術を有すると認められる者との間で随意契約を締結することが相当とされるのであれば,それによる契約と本件契約における委託料との差額というべきである。 原告は,本件契約が水道法24条の3に違反する内容のものであることを前提として本件契約締結前の職員に対する賃金等と,本件契約を締結したことによって支出することとなった委託料とを比較して,後者が前者を上回るから,その差額分が損害であると主張する。 原告の上記主張は,本件契約締結前に一人当たりの嘱託職員に要した費用と本件契約による委託料の職員一人当たりの額との比較のみで,本件契約によることでB町の水道事業の人件費が増大する結果になるかのようにいうなものである。しかし,乙第5号証によれば,B町の浄水場における業務に従事する職員のうち町職員の人件費は,嘱託職員の人件費や委託業務による人件費よりも割高であること, 大する結果になるかのようにいうなものである。しかし,乙第5号証によれば,B町の浄水場における業務に従事する職員のうち町職員の人件費は,嘱託職員の人件費や委託業務による人件費よりも割高であること,本件契約により,B町浄水場での業務に従事する町職員が減り,その分を嘱託職員と委託業務とによることとすれば,全体としては人件費が安くなることが認められる。したがって,本件契約の締結による人件費の増大が損害であるとの主張を前提としても,本件においては損害の立証がない。 よって,本件契約締結手続の違法に基づいて損害が生じていると認めることはできない。 5 結論よって,原告の本件請求は,理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部裁判長裁判官笠井勝彦裁判官寺西和史裁判官片山博仁

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