平成29年4月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26第2399号損害賠償請求事件主文 1 被告A,被告B及び被告学校法人Cは,原告らそれぞれに対し,連帯して,各3131万5646円及びこれに対する平成23年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告らの,その余を被告A,被告B及び被告学校法人Cの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告らそれぞれに対し,連帯して,各3688万8352円及びこれに対する平成23年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,被告学校法人Cが運営するD幼稚園において,同幼稚園の園児であったE(当時3歳。)がプール活動中に溺れ死亡した事故(本件事故)に関し,Eの両親である原告らが,E所属の組の担任である被告A及び同組と合同でプール活動を行った組の担任である被告Fには,園児の動静を注視し本件事故を防ぐ安全配慮義務違反が,園長であった被告B,主任であった被告G及び運営者である被告学校法人Cには,被告A及び被告Fに対する指導監督義務違反又はD幼稚園のプール活動における安全管理体制構築義務違反があり,被告学校法人Cには保育契約上の債務不履行責任及び使用者責任が,被告Bには代理監督者責任があるなどと主張し,被告A,被告F及び被告Gに対しては民法70 9条又は719条1項に基づき,被告学校法人Cに対しては民法709条,719条1項,415条又は715条1項に基づき,被告Bに対しては民法709条,719条1項又は715条2 ては民法70 9条又は719条1項に基づき,被告学校法人Cに対しては民法709条,719条1項,415条又は715条1項に基づき,被告Bに対しては民法709条,719条1項又は715条2項に基づき,各3688万8352円の損害賠償及びこれに対する本件事故の日である平成23年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 1 前提事実(争いがないか,後掲証拠等により容易に認定できる事実)⑴ 原告Hと原告Iは夫婦であり,Eは原告らの長男である。原告らは,本件事故当時,被告学校法人Cとの間で,Eを預け保育を行わせる保育契約を締結していた。 ⑵ Eは,平成23年7月11日午前11時48分頃,D幼稚園内のプールで溺れ,同日午後2時2分,搬送先の病院で溺水吸引による溺死と判定された(本件事故。乙B14)。 ⑶ア被告Aは,平成23年3月に短期大学を卒業し,同年4月にD幼稚園に採用されて,本件事故時は新任教諭であり,Eが所属していた④組の担任であった(甲10の5)。 被告Fは,平成20年3月に短期大学を卒業し,同年4月にD幼稚園に採用されて,本件事故時は勤務歴3年の教諭であり,②組の担任であった(甲11)。 被告Gは,昭和61年からD幼稚園に教諭として勤務しており,本件事故時は主任という立場であり,担任の組は持たず,後輩の教諭達の相談に乗ること,園長から教諭達への指示事項の伝達,後輩教諭の指導,保護者役員会への出席及び未就園児の保護者への対応などを業務としていた(甲12)。 被告Bは,平成15年7月31日,D幼稚園の園長に就任し,本件事故時も同職にあり,園長として,D幼稚園における園務をつかさどり,所属 職員を監督する職責を負っていた(甲19の1,学校教 。 被告Bは,平成15年7月31日,D幼稚園の園長に就任し,本件事故時も同職にあり,園長として,D幼稚園における園務をつかさどり,所属 職員を監督する職責を負っていた(甲19の1,学校教育法27条)。 被告学校法人Cは,D幼稚園を運営する学校法人であり,理事長であるJは,被告Bの長男である(甲2,19の2)。 イ D幼稚園は,本件事故当時,年少,年中及び年長組からなる3年保育を実施しており,総園児数は309名,そのうち,3,4歳児を対象とした年少組の園児数は合計86名で,①組から⑤組までの5組があり,それぞれ担任が配置されていた。各組の園児数は,①組から③組は各20名で,④組と⑤組は,各13名であった。④組及び⑤組の園児数が他の組より少ない理由は,担任が新任教諭であったからであり,他方で,園児数の多い①組から③組にはパート採用での補助担任がつけられていた。 (以上について甲19の2)ウ D幼稚園の園舎1階には,別紙見取図(省略)のとおり直径約4.15ないし4.57メートルのほぼ円形で深さ約0.65ないし0.7メートルの水遊び用の屋内プール(本件プール)が設置されていた(甲6の1)。 ⑷ 本件事故について,被告Aには,少なくとも,Eが溺れていることの発見が遅れた過失がある(弁論の全趣旨)。 2 争点⑴ 被告F,被告B,被告学校法人C及び被告Gの過失並びに被告学校法人Cの契約上の義務違反行為の有無⑵ 被告Aの過失と本件事故の因果関係の有無⑶ 被告Bの代理監督者責任の有無⑷ 損害 3 当事者の主張⑴ 争点⑴(被告F,被告B,被告学校法人C及び被告Gの過失並びに被告学校法人Cの契約上の義務違反行為の有無)についてア原告ら 被告Fについて の主張⑴ 争点⑴(被告F,被告B,被告学校法人C及び被告Gの過失並びに被告学校法人Cの契約上の義務違反行為の有無)についてア原告ら 被告Fについて被告Fは,被告Aとともに,②組及び④組の園児を監視すべき立場にあり,3,4歳の園児は成人に比して極めて溺れやすいこと,被告Aが新任教諭でありその配慮が不十分になりがちとなることからすれば,本件プール内の園児の動静を注視し,園児が溺れるような事態が生じた場合には,直ちに発見して救助し必要な措置を執るなど,園児の生命身体の安全に配慮すべき義務があった。 二組合同のプール活動は例外的な形態であったこと,プールの監視が被告Aと被告Fの2名のみであったこと,プール活動は二組合計29名もの園児が入り乱れることからすれば,②組の園児がプールサイドに移動したという一事をもって被告Fが④組の園児を監視する義務は消滅しない。 それにもかかわらず,被告Fは,自己の組の園児の動静に気を取られ,本件プール内の被告Aの組の園児の動静を注視せず,被告Aの配慮が不十分であることにも気が付かず,上記義務を怠った。 被告B及び被告学校法人C(以下,併せて「被告Bら」という。)についてa 被告Bは,本件事故当時,D幼稚園の園長として,園務を執り行い,施設の管理,職員の指導教育・監督をすべき立場にあったため,幼年である園児の身体の安全へ向けた安全管理体制を構築し,またかかる安全体制に基づき,職員を適切に配置したり,配置される職員に対する指導教育・訓練・監督を徹底しなければならない義務があった。 被告学校法人Cは,本件保育契約を含む保育契約に基づき,預かった園児の生命身体に危険が生じないよう,その安全に配慮す 対する指導教育・訓練・監督を徹底しなければならない義務があった。 被告学校法人Cは,本件保育契約を含む保育契約に基づき,預かった園児の生命身体に危険が生じないよう,その安全に配慮すべき義務があった。 b 被告Bらは,具体的には,下記の義務を負う。 ① 被告A及び被告Fに対し,プール活動上起こり得る事故の原因やその防止策,事故が発生した場合の対応方法について予め十分な指導教育・訓練を行い,それらがプール活動に携わる職員に周知徹底されているかを常に確認し,周知徹底が不十分と考えられる職員に対しては,個別に必要な指導教育・訓練を施す義務(指導教育義務)。 特に,プール活動が3,4歳児には危険であること及び被告Aが新人であり園児に対する監視が不十分になるおそれがあることからすれば,被告Bらは,被告Aに対しては,プール活動のいかなる具体的場面においても,プール全体の園児の行動を見渡せ,かつ園児から目を離す時間を可能な限り短くするようにし,園児が溺れていると疑われる状況を発見した場合には安全を確認すること並びにプール活動後の片付け方法及び危急時の対応方法を,被告Fに対しては,新任教諭である被告Aの監視が不十分となりがちであることを想定して被告Aの組にも注意を向けるべきこと,監視の連携を密にとることをそれぞれ指導・教示すべきであった。 ② 本件プール内にて園児とプール活動を行う被告A及び被告F以外にも,園児を常時監視する職員を配置し,プール活動中の具体的場面においても常に一定の能力を有する複数の目によって園児の行動を監視する体制を十分構築し,実践する義務(監視体制構築義務)。 特に,プール活動が3,4歳児には危険であること,被告Aが新人であり園児に 定の能力を有する複数の目によって園児の行動を監視する体制を十分構築し,実践する義務(監視体制構築義務)。 特に,プール活動が3,4歳児には危険であること,被告Aが新人であり園児に対する監視が不十分になるおそれがあること,本件事故の直前にも文科省から注意喚起がなされていたことからすればこの義務があったのは明白である。 c 以上の義務があったにもかかわらず,D幼稚園は安全対策のマニュアルも不存在で,安全管理体制に基づく指導教育・訓練・監督が欠如し,監視員の配置も不適切で,被告A及び被告Fへの上記指導がなさ れておらず,被告Bらはいずれの義務も怠った。 被告Gについて被告Gは,D幼稚園の主任として,被告Bが行うべき園児の安全管理体制の構築を補完する役割に当たるとともに特に危険の大きいプール遊びを実施する場合には,担任その他の職員を適切に配置し,配置された職員の指導・監督に当たるべき義務があった。 しかし,D幼稚園において水遊び実施時の指導ルールは存在しておらず,プール前のミーティングにおいても安全面の具体的指導は行われていなかった。また,被告Gは,被告Aへのプール活動の安全面に関する指導を行っていないし,被告Fに対して被告Aへの指導についての指導を行わなかった。にもかかわらず,勤務歴3年の被告F及び勤務歴3箇月の被告Aにプール遊びの監視を任せるという不十分な配置を容認した。 したがって,被告Gは,勤務歴3年の被告F及び勤務歴3箇月の被告Aにプール遊びの監視を任せて不適切な配置を容認した上,具体的な指導・監督をせず,上記義務を怠った。 イ被告ら 被告F担任は,園児のプール遊びに際し,自己の担任する組の園児につい 監視を任せて不適切な配置を容認した上,具体的な指導・監督をせず,上記義務を怠った。 イ被告ら 被告F担任は,園児のプール遊びに際し,自己の担任する組の園児についてその生命身体の安全に配慮して動静を注視する監視義務を負うのであって,他の組の園児についてまで監視義務を負うことはない。 被告Fは被告Bから自分の組は担任が責任を持ってみるよう指導されていたこと,二組合同でのプール遊びにおける監視体制について何ら指導や指示を受けていなかったこと,本件事故当日②組の園児が④組の園児より先に本件プールから上がり,この際本件プールに異常はなかったこと,被告Fはプールサイドにいる②組の園児に集中する必要があり,本件プールにいる④組まで監視することは不可能であったこと及び被告 Aの担任としての能力に問題はなく被告Fも被告Aに対し園児から目を離さずにプール遊びを行うべきことが理解できる指導を行ったことからすれば,被告Fには,被告Aの組の園児であるEの監視義務はなく,Eが溺れたことの発見が遅れた過失はない。 被告Ba そもそも本件事故は,遊具の片付け時に発生したものではなく,④組が自由遊びを行っている時間帯に発生したものであり,遊具の片付け方法につき被告Aに教示指導等を行う義務を負うという原告らの主張は失当である。 また,被告Bは,被告Aに対し,水遊びの遊具の片付け時に特化して,具体的にいかなる方法で行うべきかをあらかじめ具体的に教示し,かつ,これを実際のプール活動において実践できるようになるまで繰り返し指導教育・訓練を施す義務までは負っていない。そして,被告Bは,被告Aを含む各教諭に日常保育中における教示・指導及び水遊びにおける園児の行動を把握 プール活動において実践できるようになるまで繰り返し指導教育・訓練を施す義務までは負っていない。そして,被告Bは,被告Aを含む各教諭に日常保育中における教示・指導及び水遊びにおける園児の行動を把握するための教示・指導を行ったし,被告Aは,幼稚園教諭としての活動状況に問題もなかったのであるから,被告Bが被告Aに対する個別の指導等をすべき義務はなかった。 被告Fについても,ある組に所属する園児の監視義務を負うのは,当該組の担任であって,被告Aの水遊びの監視状況に問題もなかったのであるから,被告Bが被告Fに対する指導等をする義務を負うことはない。 b 本件事故当時,複数監視体制は幼稚園設置基準(乙B9)やプール安全標準指針(乙B10,11)などにおいて義務付けられておらず,プール活動の内容もあくまで水遊びであって溺水の危険性は低く,本件プールの構造も直径約4.15ないし4.57メートルの比較的小さな円形であって監視しやすいものであったこと,実際のプール活動 の状況としても,水深が20センチメートルと3歳児が転んで起き上がれなくなるのは稀な状況で,本件プール内の園児も11名と少人数で,補助教諭であるKがプール外の活動を補助しており被告Aが本件プール内の監視に集中できる体制がとられていたことからすれば,被告Aが一人で監視することは十分可能であり,複数監視体制を取るべき義務はなかった。 被告学校法人Ca 被告学校法人Cが,被告B,被告G,被告F又は被告Aに不法行為責任が成立する場合に使用者責任を負うことは認めるが,被告学校法人Cの指導教育義務違反及び監視体制構築義務違反は争う。 b 被告学校法人Cが,被告Aに対し,プール活動における注意点を教示する義務があることは認めるが 任を負うことは認めるが,被告学校法人Cの指導教育義務違反及び監視体制構築義務違反は争う。 b 被告学校法人Cが,被告Aに対し,プール活動における注意点を教示する義務があることは認めるが,被告Aは,国家資格である幼稚園教諭二種免許を有しており,被告学校法人Cが,被告Aに対し,原告らが主張するような具体的かつ詳細な内容についてまで教示する義務や,これを実践できるようになるまで繰り返し指導等すべき義務まではない。 被告学校法人Cは,被告Aに対し,プール活動中に園児から目を離さないように具体的に指導,助言をしているのだから指導教育義務違反はない。 c 本件事故当時,幼稚園の水遊びについて監視業務と指導業務を分けるべきであるという提言や,監視員を配置すべきであるというガイドラインは存在せず,被告学校法人Cに複数の教諭による監視体制の構築義務はなかった。 被告G被告F及び被告Aは担任としての能力に問題がなかったこと,D幼稚園の本件プールの規模や構造に安全上の問題はなく,補助教諭も配置さ れていたことからすれば,二組合同のプール遊びにおいて,指導担当者として被告F及び被告Aを配置したことに過失はない。 また,D幼稚園において,プール遊び実施時の指導ルールについて担任間のミーティングを通して周知させるシステムが構築されていたこと,被告Gは上記システムを通じて,被告F及び被告Aが水遊びの指導・監視方法を身に付けていることを確認し,指導も行っていたことからすれば,被告Gは,被告F及び被告Aに対する指導等を怠っておらず過失はない。 ⑵ 争点⑵(被告Aの過失と本件事故の因果関係の有無)についてア原告ら被告Aの過失は,④組の担任として,園児を ,被告F及び被告Aに対する指導等を怠っておらず過失はない。 ⑵ 争点⑵(被告Aの過失と本件事故の因果関係の有無)についてア原告ら被告Aの過失は,④組の担任として,園児を監視し,その生命身体の安全に配慮すべき義務があったにもかかわらず,本件事故当時,プールサイドに散乱したビート板・遊具の片付けに気を取られ,本件プール内の園児の動静を注視せず,この義務を怠ったというものであり,これとEの死亡は直接に結びついており,因果関係は存在する。 イ被告A被告Aの監視等に係る過失は,被告学校法人Cの指導・教育体制不足,被告B,被告G及び被告Fの監視不足という過失が重なって生じたものであり,被告Aの過失のみでは本件事故は発生し得なかったという意味で,被告Aの過失行為とEの死亡との間には相当因果関係がない。 また,被告Aとしては可能な救命措置を施した一方,被告Bの救命措置が不適切であった上に蘇生の可能性があったことからすると,被告Aの行為とEの死亡との間には相当因果関係がない。 ⑶ 争点⑶(被告Bの代理監督者責任の有無)についてア原告ら被告Bは,本件事故当時,D幼稚園の園長として多数の園児を預かる幼 稚園の園務を執り行い,同園施設の管理,同園職員の指導教育・監督をすべき立場にあった。このことは園の就業規則からも,D幼稚園の運営に関する実質的な被告Bの影響力からも明らかである。よって,被告Bは,被告学校法人Cに代わり,職員である被告A及び被告Fのプール活動を監督する地位にある代理監督者であった。 そして,D幼稚園のカリキュラムに基づいて行われたプール活動に関し,被告A及び被告Fがその義務違反によって原告らに損害を与えたことは上記のとおりであるた る地位にある代理監督者であった。 そして,D幼稚園のカリキュラムに基づいて行われたプール活動に関し,被告A及び被告Fがその義務違反によって原告らに損害を与えたことは上記のとおりであるため,被告Bは民法715条2項の責任を負う。 イ被告B被告Bが,被告学校法人Cに代わり,被告Aあるいは被告Fのプール活動を監督する代理監督者であることは争わない。 しかし,被告Bは,代理監督者としての注意義務を尽くしており,本件事故は,被告Bが監督義務を果たしていたにも関わらず発生したものであるから,被告Bは責任を負わない。 具体的には,本件事故は,被告Aが,プール活動内に本件プール内の園児全体に目を配らず,園児の行動を十分注視することを怠ったことにより生じた事故であり,被告Bが代理監督者として負う義務は,プール活動に携わる被告Aに対し,被告Aが園児から目を離して事故が発生することを防止するために,プール活動時に,園児全体を見渡せる立ち位置や監視方法等を指導教示する義務である。D幼稚園では,日常の保育活動における安全管理体制の統一的な指導方法を教諭間で共有する方法が構築されていたこと,プール活動時の指導方法を確立させ教諭間で指導方法を共有するシステムを構築していたこと,被告Aへの指導についてもプール活動に関する統一的な運用を確立した上で,被告Fら先輩教諭を通じて被告Aに対し,園児の安全を確保する立ち位置や監視方法等を指導教示していたことからすれば,被告BがD幼稚園の園長としての指導監督義務を果たしてい たのは明らかである。 ⑷ 争点⑷(損害)についてア原告ら Eに生じた損害計5706万9732円a 入院診療費 たのは明らかである。 ⑷ 争点⑷(損害)についてア原告ら Eに生じた損害計5706万9732円a 入院診療費 55円b 刑事記録謄写費 3万8440円c 葬儀等費用 401万3405円d 慰謝料 3000万円e 逸失利益 2301万7832円526万7600円(基礎収入)×(1―0.5(生活費控除率))×8.7394(ライプニッツ係数) 原告らの損害各3688万8352円aEに生じた損害の相続各2853万4866円b 固有の慰謝料各500万円c 弁護士費用 335万3486円イ被告ら原告ら主張の損害について争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ⑴ 本件事故に係る事実経過(甲6の2,10の1~5・10,11,13~16,乙B1,4,5,被告F本人,被告B本人)ア D幼稚園においては,平成23年7月11日(以下⑴において日にちの記載を省略する),当該年度で3回目の年少組のプール活動が予定されていた。もともとは各組毎にプール活動を行う予定であったが,当日のプール 活動の開始が遅れたため,急遽二組合同でプール活動を行うこととなった。 順番は,①組と⑤組,③組,②組と④組であった。 D幼稚園において,合同でのプール活動は以前にもあり,被告Fも経験があった の開始が遅れたため,急遽二組合同でプール活動を行うこととなった。 順番は,①組と⑤組,③組,②組と④組であった。 D幼稚園において,合同でのプール活動は以前にもあり,被告Fも経験があった。 イ被告Fは,午前11時30分頃,②組の園児18名と本件プール内に入ってプール活動を開始し,被告Aは,午前11時35分頃,④組の園児11名と本件プール内に入り,②組と合流してプール活動を始めた。 被告Fは,その後,②組のプール活動を止めさせ,②組の園児に本件プール内の遊具であるヘルパー(腕用の浮き輪)を持ってこさせる片付け作業を行った後,②組の園児をプールサイドに上がらせ,自らもプールサイドに上がり,北側壁面に設置されたシャワーで②組の園児の体を洗い始めた。体を洗い終わった②組の園児は,プールサイドを通り,本件プールの西側に設置された出入口から外に出て,②組の補助を行っていたKに体を拭いてもらっていた。 被告Aは,②組の園児が上がった後,本件プール内にフープを立て,園児がそのフープをくぐり抜けるという遊びを3回行った。本件プール内は,フープをくぐる園児もいれば,それ以外の自由遊びを行う園児もいるという状態であった。 被告Aは,その後,プール活動を終えるために,手を2回たたいて園児を静かにさせてから,園児に対し遊具を持ってくるよう声をかけ,片付け作業を開始した。この時,園児は銘々遊具を持ってきたため,本件プール内は園児が入り乱れた状態であった。被告Aは,本件プール東側のヘルパーを片付ける籠の前に本件プール内で壁を背にして立ち,園児がヘルパーやビート板等の遊具を持ってくるのを受け取ったり,同人らが被告Aの前に置いていった遊具を拾ったりし,ヘルパーを持てるだけ持つと後ろの籠に入れ,ビート板はプールサイドに置いた。被告Aは,ヘルパーを後ろ やビート板等の遊具を持ってくるのを受け取ったり,同人らが被告Aの前に置いていった遊具を拾ったりし,ヘルパーを持てるだけ持つと後ろの籠に入れ,ビート板はプールサイドに置いた。被告Aは,ヘルパーを後ろの 籠に入れる際,足先を本件プールに向けたまま上半身をひねるようにし,後ろをそれぞれ一,二秒程度向いた。また,被告Aは,ビート板をプールサイドに置こうとした際,ヘルパーを入れた籠の後ろに置かれたビート板の整頓も同時に行ったため,この間30秒程度は園児から目を離していた。 ウ被告Aがヘルパーを二,三回籠に入れ,ビート板の整理を終え,再び園児から受け取ったヘルパーを籠に入れるために本件プールに背を向けたとき,被告Fから声をかけられた。 被告Fは,本件プール北側のプールサイドで②組の園児にシャワーを浴びせていたところ,午前11時48分頃,Eが本件プールの中央付近にうつぶせに浮かんでいるのを発見し,被告Aに対し,声をかけた。 被告Aは,被告Fから声をかけられて本件プールを注視し,うつ伏せになっているEを発見し,すぐにEを水中からすくいあげた。その時のEの状態は,顔色も唇も青ざめていてぐったりしており,名前を呼んでも返事をしなかった。被告Aは,被告Fから,「事務所,事務所」と声をかけられ,Eを抱いて事務所に向かったが,誰もいなかったため,ランチガーデンに出て,Eに心臓マッサージを行った。 エ被告Bは,②組の補助をしていたKから,Eが溺れたという報告を受け,ランチガーデンでEと被告Aを見つけ,被告Aを自分の組の園児の下に戻らせてEの対応に当たった。被告Bは,Eを逆さにする,Eの背中をたたく,Eの口の中に手を入れるなどして,水を吐かせようとした後,事務所に連れていきベッドに寝かせ,パンツをはきかえさせてタオルで巻き,被告Gに,Eを園 たった。被告Bは,Eを逆さにする,Eの背中をたたく,Eの口の中に手を入れるなどして,水を吐かせようとした後,事務所に連れていきベッドに寝かせ,パンツをはきかえさせてタオルで巻き,被告Gに,Eを園医であるLクリニックまで連れて行かせた。 オ D幼稚園の教諭は,午前11時51分,Lクリニックに電話をし,Eが溺れたことについて知らせた。Eは,その2,3分後にLクリニックに運ばれたが,その時点では既に心肺停止の状態にあり,午前11時54分,Lクリニックから救急車の要請がなされ,その後大和市立病院に搬送され たものの,午後2時2分頃,溺水吸引による溺死と判定された。 カ Eが溺れた時点について,被告Bは,Eが自由遊びの時間に溺れたと主張する。 しかし,上記イのとおり,被告Aは自由遊びの後,プール活動を終えるために手を2回たたいて園児を静かにさせてから同人らに対し遊具を持ってくるよう声をかけ,片付け作業を開始していること及びフープ遊びをしている最中は園児も落ち着いて並んでいる状態であったこと(乙B1)からすると,自由遊びの最中にEが溺れていたのであれば,自由遊びの最中又は片付け開始の際に被告Aが,溺れているEを発見できたと思われる。 また,片付け作業中は,園児がプールに入り乱れた状態であったため,被告Aがプールに背を向けていなくても溺れているEを見逃していた可能性は十分あり得る。これに加えて,被告Aが片付け作業を開始してから溺れたEを発見するまでの時間は一,二分であったこと(乙B1)及びEは本件事故において少なくとも1分から2分程度水に浸かっていたと考えられること(甲17の1,乙B2)から片付け開始後にEが溺れ始めても時間的な矛盾はないと認められることも併せ考えれば,片付け作業中にEが溺水したと認めるのが相当である。 よっ に浸かっていたと考えられること(甲17の1,乙B2)から片付け開始後にEが溺れ始めても時間的な矛盾はないと認められることも併せ考えれば,片付け作業中にEが溺水したと認めるのが相当である。 よって,Eは,片付け開始後,被告Aが片付け作業のために園児から背を向けたりし,園児が本件プール内を入り乱れていた時に溺れたと考えるのが相当であり,被告Bの主張は採用することができない。 また,以上によれば,被告Aには,④組の担任として,園児を監視し,その生命身体の安全に配慮すべき義務があったにもかかわらず,本件事故当時,プールサイドに散乱したビート板・遊具の片付けに気を取られ,本件プール内の園児の動静を注視せず,この義務を怠ったという過失があったということができる。 ⑵ 本件事故時のD幼稚園の体制 アプール活動の実施状況(甲9,10の10,11,19の2)D幼稚園では,水に親しむことを目的として,本件プールを利用したプール活動(水遊び)が行われており,年少組では一年度に3回のプール活動が予定されていた。 当該プール活動は,原則として各組の担任がそれぞれ担当することとされており,補助教諭が配置されている場合でも,その職務内容は主として着替えの手伝いや保育室までの誘導などであり,担任以外にプールを継続的に監視する職員は配置されていなかった。 イ教諭への指導状況(甲10の5・7・9・10,11,乙B1,4,5,被告F本人,被告B本人) D幼稚園のプール活動に関して,被告Bは,各教諭に対して,子供から目を離さないことを繰り返し指導し,プール活動が始まる前には各学年毎に注意事項について話し合うように指示をしていた。 プール活動の実施方法については,各学年の担任が,活動開始前に話し合って 供から目を離さないことを繰り返し指導し,プール活動が始まる前には各学年毎に注意事項について話し合うように指示をしていた。 プール活動の実施方法については,各学年の担任が,活動開始前に話し合って決定しており,先輩の教諭が後輩の教諭を指導するという形になっていた。具体的には,プール活動が近づいてきた時期に,その年のプール係である教諭が,D幼稚園の教諭全員に対し,前年の活動内容を振り返りながら指導内容等を確認し,これを受けて各学年毎でもミーティングを開き,上記指導内容についてもう一度確認した。 また,D幼稚園では,園児がけがをした場合等には,一人で判断することなく,すぐに事務室に連れていくように指導がされていた。 被告Fは,日頃,被告Bから,自分の組は担任が責任を持ってみるようにと指導されていた。 被告Aへの指導について,被告Fは,他の年少組の教諭2名と共に,被告Aともう1名の新任教諭の指導に当たった。被告Fにとって最も経験が長い教諭として後輩の教諭に教えるのはこれが初めてのことであっ た。また,被告Fは,被告Bや被告Gから「よくみてあげてね」と告げられていたものの,具体的な指導内容に関する教示はなかったため,被告Aに対し,自分が先輩教諭から指導された方法と同じ様に指導した。 被告Aは,平成23年度のプール活動を開始する前に,被告F及び他の年少組の教諭2名から,2回にわたり,プール活動に関する説明を受けた。1回目は,被告F及び他の年少組の教諭1名が,被告A及びもう1名の新任教諭に,「年少☆プール指導等について」「3・4・5歳児のあそび」というプリント(甲20の1・2。以下,併せて「指導プリント」という。)を渡し,子供たちがいる場を想定して実践しつつ説明した。 2回目は,被告Fに他の2名の 指導等について」「3・4・5歳児のあそび」というプリント(甲20の1・2。以下,併せて「指導プリント」という。)を渡し,子供たちがいる場を想定して実践しつつ説明した。 2回目は,被告Fに他の2名の年少組の教諭も加え,指導プリントの読み合わせを行った。上記説明で被告Aが教わったのは,プールに入る前の流れや準備体操,プールに行ってからの流れ等であった。特に,子供の安全に関して被告Aが教わったのは,本件プールが円形のプールであるためプールの側面に背を向けて壁に沿って歩くと全体的に子供が見えやすいという監視方法,プールサイドを走らせないこと及びシャワーの温度を事前に確認しておくことであった。 被告Aは,平成23年6月27日,初めてのプール活動を行った。当該プール活動には,被告Fも参加したが,本件プール内での園児への指導などの具体的な活動は,被告Aが行い,被告Fは,補助や遊び方に関するアドバイスを行った。被告Aは,同年7月4日,2回目のプール活動を行った。当該プール活動は,被告Aのみで行われ,途中,被告Gが様子を見て写真を撮ったものの,特に指導を行わなかった。 上記プール活動や普段の保育を通して,被告Aの幼稚園教諭としての能力等に疑問を感じさせる出来事は生じなかった。 ⑶ 本件事故当時のプールの安全管理に関する規定等(甲18の1・2,乙B10,11) プールの安全管理に関する規定としては,プールの施設面,管理・運営面で配慮すべき基本的事項等について示した「プールの安全標準指針」(平成19年3月文部科学省・国土交通省。以下「安全標準指針」という。)が存在しており,平成23年6月に,神奈川県民局くらし文化部学事振興課長からD幼稚園を含む神奈川県下の私立幼稚園宛てに送付された「水泳等の事故防止に 学省・国土交通省。以下「安全標準指針」という。)が存在しており,平成23年6月に,神奈川県民局くらし文化部学事振興課長からD幼稚園を含む神奈川県下の私立幼稚園宛てに送付された「水泳等の事故防止について(通知)」と題する書面でも引用,添付がなされていた。 これは,「遊泳利用に供することを目的として新たに設置するプール施設及び既に設置されているプール施設のうち,第一義的には,学校施設及び社会体育施設としてのプール,都市公園内のプール」を対象とするものであるが,「水遊び用プールなど遊泳利用に供することを目的としていないプールにおいても,本指針の趣旨を適宜踏まえた安全管理等を実施することが望ましい」とされている。 そして,安全標準指針の監視員等の教育訓練についての内容を見ると,安全管理に携わる全ての従事者に対し,プールの構造設備及び維持管理,事故防止対策,事故発生等緊急時の措置と救護等に関し,就業前に十分な教育及び訓練を行うこととされ,監視員については,一定の泳力を有する者等,監視員として業務を遂行できる者とし,プール全体がくまなく監視できるよう施設の規模に見合う十分な数の監視員を配置することなどが示されていた。 ⑷ 本件事後のD幼稚園の対応(甲10の7,57~59,62)本件事故後,D幼稚園では,被告Bの指示により,学年毎の一週間の活動予定表に,本件事故日についてもともと「プール活動」という記載しかなかったものに「②,④ 11:30~11:45 うき輪をうでに付け水遊びを楽しむ」という二組合同の活動が予定されていたかのような記載を加え,本件事故前は存在しなかった「安全管理体制について≪水遊び年少児≫」「改訂版安全管理体制について≪水遊び年少児≫」という2種類のプリントの作成及び保護者説明会での配布をし,並びに本件事故前からD 本件事故前は存在しなかった「安全管理体制について≪水遊び年少児≫」「改訂版安全管理体制について≪水遊び年少児≫」という2種類のプリントの作成及び保護者説明会での配布をし,並びに本件事故前からD幼稚園に存在 していたが教諭らはその存在を知らなかった「安全管理マニュアル」の存在の職員への周知及び各教室への備付けを行った。 被告Bは,上記行為のうち指示をしたのは活動予定表の書換えのみであると供述する(被告B本人)が,D幼稚園の教諭らの供述調書(甲10の7,57~59)の記載に照らし,上記のとおり認定するのが相当である。 2 争点に対する判断⑴ 争点⑴(被告F,被告B,被告学校法人C及び被告Gの過失並びに被告学校法人Cの契約上の義務違反行為の有無)についてア被告Fの過失について原告らは,被告Fは,②組及び④組の園児も監視すべき立場にあったと主張する。 しかし,前記認定事実⑴カのとおり,Eは,②組の園児がプールから上がった後,④組の片付け時間中に溺れたと認められること,被告Fは②組の担任として②組の園児を監視する義務があったところ,②組の園児はプールから上がった後シャワーを浴びたり,ランチガーデンに向かうなどプールサイドを頻繁に歩き,プールサイドから転落する危険性があったこと(甲11,乙B4)や②組が上がった後の被告Fはプールサイドで②組の園児にシャワーを浴びせ,④組の園児は本件プール内にいたこと(前記認定事実⑴ウ)からして,被告Fが②組及び④組の園児全員を同時に監視することは事実上極めて困難であったと認められ,被告Fが②組の園児の監視を優先し,結果的に④組の園児の監視を不十分に行ったとしても直ちに被告Fの過失ということはできない。 その他,被告Fに原告主張の過失 極めて困難であったと認められ,被告Fが②組の園児の監視を優先し,結果的に④組の園児の監視を不十分に行ったとしても直ちに被告Fの過失ということはできない。 その他,被告Fに原告主張の過失のあることを認めるに足りる証拠は存在しない。 イ被告Bらの過失について 原告らは,被告Bらには,①指導教育義務違反,②監視体制構築義務 違反があると主張するところ,被告Bは所属職員を監督すべき園長として,水難事故の発生を防止するための教諭らに対する教育・訓練等の安全対策を講ずる職責を負い,被告学校法人Cは,原告らと締結した保育契約に基づき園児の生命身体に危険が生じないよう,その安全に配慮すべき義務があったということができる。 他方で,安全配慮義務等の具体的内容は法律や契約で定められていないため,被告Bらが,D幼稚園の教諭に対し指導・教示すべき内容や構築すべき体制については,当時の幼稚園の状況に即して具体的に検討しなくてはならない。 指導教育義務違反についてa 原告らは,被告Bらは,被告Aに対し,プール活動のいかなる場面においても,プール全体の園児の行動を見渡せ,かつ園児から目を離す時間を可能な限り短くするようにし,園児が溺れていると疑われる状況を発見した場合に安全を確認するように指導・教示すべきであったと主張する。 しかし,前記認定事実⑵イのとおり,D幼稚園において,プール活動の実施方法については先輩の教諭が後輩の教諭を指導する形がとられていること,被告Aも被告Fから指導プリントなどの使用により,プール活動の流れや全体的に子供が見えやすい監視方法等を教わって故までのプール活動や普段の保育を通して,被告Aの幼稚園教諭としての能力等に疑問を感じさせる出来事はなかったこと,被告Aは被 用により,プール活動の流れや全体的に子供が見えやすい監視方法等を教わって故までのプール活動や普段の保育を通して,被告Aの幼稚園教諭としての能力等に疑問を感じさせる出来事はなかったこと,被告Aは被告Bから通常の保育において子供達から目を離さないように指導されていたこと(甲10の5,乙B1)も併せ考えれば,プール活動の場面において園児を見渡し,園児から目を離す時間を可能な限り短くすべきであることは,上記教育内容から当然に想定される内容であり,被 告Bらが改めて指導・教育すべきものということはできないし,逆に被告Bらがこれに反する内容の指導・教育をしていたと認めるべき証拠はない。 b 原告らは,被告Bらは,被告Fに対し,被告Aの組にも注意を向けるべきこと,監視の連携を密にとるように指導・教示すべきであったと主張する。 しかし,上記アのとおり,被告Fが,自己が担任である②組の園児の監視を優先したことは過失とはいえず,被告Bらが,当該状況で②組だけでなく④組の園児にも注意を配ることを被告Fに教示すべき義務は認められない。また,本件プールの当時の大きさが直径4.15ないし4.57メートルであり,見通しを遮るものがなかったこと(前記前提事実⑶ウ,別紙見取図(省略))からすれば本件プール内にいてもプール全体を見渡せると推認できること,本件事故時に本件プールの中に入っていた④組の園児が11名であったこと(前記認定事実⑴イ)からすれば,本件事故当時被告Aのみでも監視は可能な状況であったというべきであるから,被告Bらにこのようなプール活動において被告Fに監視の連携を密にとるように指導・教示すべき義務は認められない。 c 原告らは,特に,被告Bらが,被告Aに対し,プール活動後の片付け方法に関する指導・教育を行わなかったことをもって被 いて被告Fに監視の連携を密にとるように指導・教示すべき義務は認められない。 c 原告らは,特に,被告Bらが,被告Aに対し,プール活動後の片付け方法に関する指導・教育を行わなかったことをもって被告Bらの過失である旨主張しているが,前記前提事実⑷及び前記認定事実⑴カのとおり,本件事故は,被告Aが遊具の片付け作業に気を取られ,本件プール全体に目を配って園児の行動を注視する義務を怠った結果,Eの溺水を見逃したものであり,被告Aの不注意に起因するところが大きく,原告らの主張する指導・教示を行うことで本件事故が直ちに回避できたとは認められず,被告Bらが前記認定事実⑵イのような指導・ 教育を行っていたことについて直ちに過失があるということはできない。 d なお,前記認定事実⑴ウないしオによれば,本件事故の発生直後,D幼稚園においてEの救命のために執られた措置は,被告Aが心臓マッサージをし,被告Bが水を吐かせようとしたほかには,園医であるLクリニックに電話連絡をして運び込んだことのみであると認められるところ,Lクリニックは,Eが運び込んだ後に自ら救急要請をしていることからして,園児の危急の際の搬送先としては疑問があり,D幼稚園から直接救急要請がなされなかったことについては,不適切との感を免れないが,仮に,D幼稚園から直接救急要請がなされたとしても,その場合に,Eの救命に至ったことを認めるに足りる証拠は存在しない。 監視体制構築義務違反について原告らは,被告Bらには,被告A及び被告F以外にも,園児を常時監視する職員を配置し,プール活動中の具体的場面においても常に一定の能力を有する複数の目によって園児の行動を監視する体制を十分構築し,実践する義務があったと主張する。 前記認定事実⑶ 監視する職員を配置し,プール活動中の具体的場面においても常に一定の能力を有する複数の目によって園児の行動を監視する体制を十分構築し,実践する義務があったと主張する。 前記認定事実⑶のとおり,平成23年6月に送付された「水泳等の事故防止について(通知)」に引用されている文部科学省・国土交通省作成の「安全標準指針」においては,十分な数の監視員の配置について言及されている。 しかし,前記本件事故当時,被告Aのみでも監視は可能な状況であったというべきであり,また,当時の幼稚園の状況として,プール活動においては,必ず活動を行う者の他に監視に従事する者を設置する慣例となっていたとは,原告ら提出の証拠(甲17,63~65)に照らしても認めることはできないことも併せ考えれば,被告 Bらに,原告ら主張の監視体制を構築する義務があったと認めることはできない。 その他,被告Bらに原告ら主張の過失のあることを認めるに足りる証拠は存在しない。 ウ被告Gの過失について原告らは,被告Gの指導・教示義務違反及び適切な教諭の配置義務違反を主張する。 しかし,D幼稚園において,被告A及び被告Fへの指導・教示義務違反があったとは認められないことは,前記イで説示したとおりである。 また,勤務歴3年の被告Fが新任の被告Aを指導するという職員の配置が不適切であると認めるに足りる証拠も存在しない。 その他,被告Gに原告ら主張の過失のあることを認めるに足りる証拠は存在しない。 エ以上によると,被告F,被告Bら及び被告Gに民法709条に基づく責任(被告学校法人Cについてはさらに同法415条に基づく責任)があるとは認められず,これらの被告らに同法719条1項の責任があるとも 以上によると,被告F,被告Bら及び被告Gに民法709条に基づく責任(被告学校法人Cについてはさらに同法415条に基づく責任)があるとは認められず,これらの被告らに同法719条1項の責任があるとも認められない。 ⑵ 争点⑵(被告Aの過失と本件事故の因果関係の有無)について被告Aは,本件事故は,被告学校法人Cの指導・教育体制不足並びに被告B,被告G及び被告Fの監視不足という過失が重なって生じたものであり,被告Aのみの過失では本件事故は発生し得なかったと主張する。 しかし,④組の担任として,園児を監視し,その生命身体の安全に配慮すべき義務があったにもかかわらず,本件事故当時,プールサイドに散乱したビート板・遊具の片付けに気を取られ,本件プール内の園児の動静を注視せず,この義務を怠ったという被告Aの過失(前記前提事実⑷,前記認定事実⑴カ)がなければ,本件事故が生じなかったことは明らかであり,被告Aの 上記主張は採用することができない。 また,被告Aは,被告Aとしては可能な救命措置を施した一方,被告Bの救命措置が不適切であった上に蘇生の可能性があったことからすると,被告Aの行為とEの死亡との間には相当因果関係がないと主張する。しかし,前記⑴イD幼稚園から直接救急要請がなされたとしても,その場合に,Eの救命に至ったことを認めるに足りる証拠は存在しない。被告Bがより適切な措置を執っていたとして,その場合に,Eの救命に至ったことを認めるに足りる証拠も存在しない。結局,被告Aの過失によって本件事故が生じた後,被告Aの過失とは無関係に,他の者の作為又は不作為を原因としてEが死亡したとは認められず,被告Aの過失とEの死亡との間には相当因果関係があるというべきである。 ⑶ 争点⑶(被告Bの代理監督者責任の有無)について 係に,他の者の作為又は不作為を原因としてEが死亡したとは認められず,被告Aの過失とEの死亡との間には相当因果関係があるというべきである。 ⑶ 争点⑶(被告Bの代理監督者責任の有無)についてア被告Bの代理監督者性について被告Bが民法715条2項にいう「代理監督者」に該当することは双方争いがなく,実際,被告学校法人Cの経営は被告Bの息子であるJが行っていたものの,D幼稚園の運営等は園長である被告Bが担っていたと認められる(被告B本人)ことから,被告Bが被告Aの事業の執行に関する代理監督者であると認められる。 イ被告Bの注意義務の履行について被告Bは,代理監督者としての注意義務を果たした旨主張する。 のとおり,被告Aにはプール活動後の片付け方法等具体的に教示されていない部分もあること,指導の内容は被告Fに任されており,被告Bが指導の内容を具体的に指示せず,指導後に具体的な内容を確認していないこと(被告B本人)等を総合的に勘案すれば,被告Bが本件事故発生の防止のために相当の注意を払ったとは認められない。 よって,被告Bは,個人として不法行為責任(民法709条)を負わないものの,代理監督者として,被告Aの不法行為に関して連帯して責任を負う。 ⑷ 争点⑷(損害)について本件事故により原告らに生じた損害は,以下のとおりと認められる。 ア原告らが相続したEの損害各2551万5646円入院診療費(甲24) 55円葬儀等費用(甲26~31) 401万3405円慰謝料 2400万円死亡逸失利益 2301万7832円 葬儀等費用(甲26~31) 401万3405円慰謝料 2400万円死亡逸失利益 2301万7832円Eは本件事故当時3歳の男児であり,本件事故がなければ18歳から67歳まで49年間稼働可能であったことが推認できる。そうすると,Eの死亡による逸失利益は,基礎収入526万7600円(賃金センサス平成23年度版第1巻第1表・産業計・企業規模計・学歴計・男子労働者)を基礎として,これから必要生活費5割を控除し,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると,次式のとおり,表記金額となる。 526万7600円×(1―0.5)×8.7394≒2301万7832円原告は刑事記録謄写費も損害として主張するが,同費用と被告Aの過失との間には相当因果関係が認められない。 総額 5103万1292円イ原告ら固有の慰謝料各300万円ウ弁護士費用各280万円エ総額各3131万5646円第4 結論よって,原告らの請求は,被告Aに対して民法709条に基づき,被告学校 法人Cに対して同法715条1項に基づき及び被告Bに対して同条2項に基づき各3131万5646円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,上記被告らに対するその余の請求及びその余の被告らに対する請求にはいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官 主文 の請求及びその余の被告らに対する請求にはいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 横浜地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官石橋俊一 裁判官菅野正二朗 裁判官馬渡万紀子
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