昭和35(ネ)1088 売掛代金請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和36年2月13日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主 文 原判決をとりけす。 被控訴人は控訴人にたいし、金三十三万三千五百六十五円および内金二十三万七 千七百三十円にたいする昭和二十四年九月十六日から、内金九万五千八百三十五円

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判決文本文3,806 文字)

主 文 原判決をとりけす。 被控訴人は控訴人にたいし、金三十三万三千五百六十五円および内金二十三万七 千七百三十円にたいする昭和二十四年九月十六日から、内金九万五千八百三十五円 にたいする同年同月八日から各支払ずみまで年六分の割合の金員を支払うべし。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 この判決は控訴人において金十五万円の担保を供するときはかりに執行すること ができる。          事    実  控訴代理人は主文第一ないし三項と同旨の判決および仮執行の宣言をもとめ、被 控訴代理人は控訴棄却の判決をもとめた。  当事者双方の事実上、法律上の主張、証拠の提出、援用、認否は、原判決の事実 らんにしるすところを引用するほか控訴代理人においてつぎのとおり補足してのべ た。  本件公団は、終戦後における総合的な経済統制の一翼を担う国家行政組織の一部 門として設立されたものであり、「経済安定本部総務長官の定める割当計画および 配給手続にしたがい、命令で定める油脂、油糧原料、油かす等(以下油糧という) の適正な配給に関する業務を行うことを目的」(旧油糧砂糖配給公団法第一条)と し、この目的にしたがい「物価庁の定める価額による国内産油糧及び輸入油糧の一 手買取及び一手売渡の業務を行う」(同法第一五条)こととされていた。このよう に油糧公団は油糧等の一手買取又は一手売渡という行為を行うために取引界に登場 したのであるが、しかしそれは決して一般経済主体と同様の地位に立ち同様の目的 すなわち営利活動をする趣旨で設けられたものではなく、一般経済主体間における 経済秩序の調整という当時における最も重要かつ緊急な経済政策を実施するため に、すなわち優れた行政的な性格をもつ国家活動を行う目的をもつて設置運営され ていたものである。換言すれば、公団は営利活動 ける 経済秩序の調整という当時における最も重要かつ緊急な経済政策を実施するため に、すなわち優れた行政的な性格をもつ国家活動を行う目的をもつて設置運営され ていたものである。換言すれば、公団は営利活動を目的とする一般経済主体の一員 たる地位にあるのではなく、逆にその外にあつてかかる経済主体を対象とし、その 経済活動を規整することを直接の目的とし、この目的の下に個々の活動がなされて いたのである。そしてその活動の方法、態容は一般私法行為の形態をとつて行われ たのであるが、それは単に当時の経済事情、経済構造に即応した経済統制を実施す るため合目的的技術的な手段としてそうあつたものであるにすぎない。したがつて 公団の行う買収及び一手売渡が一般私法法規の適用を受ける行為ではあるものの、 その故に直ちにこれをもつて営利行為としての商行為と断ずることは論理上一般私 法行為と商行為とを同一視する誤りを犯すとともに、実質的には公団の性格及びそ の活動の本質を見誤つているものといわざるを得ない。  さらに、公団の一手買取及び一手売渡においては、その取得価額と売渡価額の間 に一定の開きが生ずるように定められていたのではあるが、この差額はもともとこ れをもつて公団の直接の経費を賄うことのみのため算定されているにとどまり、そ れ以外に公団の利益が見込まれていたわけのものではない。したがつてかような価 額の開きがあるからといつて公団の一手買取、一手売渡の行為を商法第五〇一条第 一号の商行為と断定することは公団及びその活動の本質を見失つたためかあるいは 商法の解釈を誤つた結果といわなければならない。  したがつてまた公団が商人となるいわれはないものである。  なお民法第一七三条は日常頻繁に行われる取引関係の特則であつて、買主が消費 者であるため計算関係がはつきりしない場合にのみ適用さるべき規定である。 たがつてまた公団が商人となるいわれはないものである。  なお民法第一七三条は日常頻繁に行われる取引関係の特則であつて、買主が消費 者であるため計算関係がはつきりしない場合にのみ適用さるべき規定である。本件 のごとく債務者が商人(株式会社)であつて商法上商業帳簿、特に日記帳を備え日 々の取引その他財産に影響を及ぼすべき一切の事項を整然明瞭に記載することを要 するものとし、かつ該帳簿は十年間保存すべきものとされていること等から、証拠 方法の保存維持が十分である場合には民法第一七三条の適用はないものと解すべき である。  以上の主張に反する原審の判断は法律の適用又は解釈を誤つたものというべきで ある。          理    由  控訴人の請求原因として主張する(一)ないし(四)の事実は当事者間に争な く、被控訴人の抗弁(イ)については、当裁判所はみぎ抗弁を理由ないものと判断 するものであつて、その理由は原判決理由中この点に関する部分を引用するほか、 「原審証人Aの証言も原審の認定を支持する証拠というべきである」とつけ加え る。  被控訴人の抗弁(ロ)については、当裁判所は原審と見解を異にしみぎ抗弁を理 由ないものと判断するものであつてその理由はつぎのとおりである。  油糧砂糖配給公団(旧油糧配給公団)は油糧等の適正な配給に関する業務を行う ことを目的として設立された法人であり(昭和二十二年法律第二〇三号油糧配給公 団法、昭和二十五年法律第五九号にて油糧砂糖配給公団法と改称第一条)、基本金 は全額政府出資にかかり、運営資金は必要かあるときは復興金融公庫から借入れ (同法第三条)、総裁、副総裁、理事、監事等の役員は主務大臣の任命にかかり (同法第一一条)、役員および職員はこれを官吏その他政府職員とし、原則として 官吏に関する一般法令に従い(同法第一四条)、経済安定本部総務長官の 総裁、副総裁、理事、監事等の役員は主務大臣の任命にかかり (同法第一一条)、役員および職員はこれを官吏その他政府職員とし、原則として 官吏に関する一般法令に従い(同法第一四条)、経済安定本部総務長官の定める割 当計画および配給手続ならびにこれらに関する指示にもとづき主務大臣の監督に従 い物価庁の定める価格による油糧等の一手買取および一手売渡等の業務を行うもの である(同法第一五条)。  すなわち同公団は終戦後の窮乏したわが国経済情勢に対応して政府の行つた物資 統制上の配給統制機関の一つとして設立された臨時的な法人であり、前記各法条よ りすれば政府企業に近い形態をとる公法人であるというべきである。  <要旨>ところで公法人といえどもそれが営業的活動をなす場合においては商人た る面の存することを否むことはで</要旨>きないのであるけれども、本件油糧砂糖配 給公団は前記のとおり戦後における経済復興のために必要とされる重要物資たる油 糧、砂糖の適正な統制配給を至上目的とし、国の経済政策遂行の機関たる性格を有 するものである。また毎年事業年度の各期の財産目録、貸借対照表、損益計算書を 経済安定本部総務長官に提出しその承認を受け、会計検査院の検査を受け承認を受 けなければならず、又剰余金は国庫に納付することとなつている(同法第一九条) こと等にかんがみるときは、同公団の経営については営利的事業に必ず伴うところ の能率的な事業の運営というよりはむしろ公正な事務処理が要請せられていること があきらかで、たとえ物価庁の定める油糧売渡と買取の価格に一定の差額があり収 支の均衡がはかられているとしても、同公団の行う一手買取および一手売渡の業務 を目して商人の営業活動と類似するものとなすを得ず、またみぎ行為をもつて商法 第五〇一条第一号にいう商行為ということはできない。  したがつて油糧砂糖配給公 も、同公団の行う一手買取および一手売渡の業務 を目して商人の営業活動と類似するものとなすを得ず、またみぎ行為をもつて商法 第五〇一条第一号にいう商行為ということはできない。  したがつて油糧砂糖配給公団は商行為を業とする者となしがたく、民法第一七三 条第一号にいう卸売商人または小売商人にあたらないから本件油糧の売却代金債権 は同法条による二年の時効にかかるものではないと解すべきである。被控訴人の時 効の抗弁は採用のかぎりでない。  そうすると、被控訴人は控訴人にたいし本件油糧売買代金の清算差額合計金三十 三万三千五百六十五円およびみぎの内金二十三万七千七百三十円にたいする支払請 求の日の翌日たる昭和二十四年九月十六日以降内金九万五千八百三十五円にたいす るその支払請求の日の翌日たる同年同月八日以降各支払ずみまで遅延損害金を支払 うべき義務があるものであつて、被控訴人は商人(株式会社)でありその油糧の買 入は反証なきかぎりその営業のためになされた行為であるから商法第五一四条によ りみぎ遅延損害金の法定利率は年六分というべきである。  してみると控訴人の本訴請求は全部正当として認容すべく、みぎと反対の原判決 はとりけしをまぬがれない。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第九六条、 第八九条を適用して主文のとおり判決する。  (裁判長判事 牧野威夫 判事 谷口茂栄 判事 満田文彦)

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