平成13(行ウ)120 建築物除却命令等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年12月4日 東京地方裁判所 警察関係
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判決文本文81,073 文字)

主文 1 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らの訴えに基づき、被告東京都多摩西部建築指導事務所長との間で、同被告が、別紙土地目録記載の土地上に建築中の別紙建築物目録記載の建築物について、建築基準法68条の2、国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例7条に違反する部分を是正するために、建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることを確認する。 2 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らのその余の請求に係る訴え並びに別紙当事者目録第2、第3、第4の2及び第5記載の原告らの訴えをいずれも却下する。 3 訴訟費用のうち、別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らと被告東京都多摩西部建築指導事務所長との間に生じた費用のうち2分の1を被告東京都多摩西部建築指導事務所長の負担とし、その余を同原告らの負担とし、別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らと被告東京都建築主事との間に生じた費用は同原告らの負担とし、別紙当事者目録第2、第3、第4の2及び第5記載の原告らと被告らとの間に生じた費用は、同原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求(請求の趣旨) 1 被告東京都多摩西部建築指導事務所長が、明和地所株式会社、三井建設株式会社及び村本建設株式会社に対して別紙土地目録記載の土地(以下「本件土地」という。)上に建築中の別紙建築物目録記載の建築物(以下「本件建物」という。)について、次の命令を発しないことが違法であることを確認する(以下「本件不作為違法確認請求」という。)。 (1) 本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分の建築を禁止する。 (2) 本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分を除却せよ。 2 被告東京都多摩西部建築指導事務所長 建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分の建築を禁止する。 (2) 本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分を除却せよ。 2 被告東京都多摩西部建築指導事務所長は、明和地所株式会社、三井建設株式会社及び村本建設株式会社に対して本件土地上に建築中の本件建物について、次の命令をせよ(以下「本件義務付け請求」という。)。(1) 本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分の建築を禁止する。 (2) 本件土地上に建築中の本件建物について高さ20メートルを超える部分を除却せよ。 3 被告東京都建築主事は本件建物についての検査済証を交付してはならない(以下「本件予防的不作為請求」という。)。 (被告らの本案前の答弁)原告らの訴えをいずれも却下する。 (被告らの本案の答弁)原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件は、明和地所株式会社が国立市内の本件土地上に建設中の本件建物は、建築基準法68条の2に基づく「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」に違反した違法建築物であるとして、これにより日照、景観等について被害を受けると主張する原告らが、被告東京都多摩西部建築指導事務所長に対して、本件建物の違法部分について、建築基準法9条1項に基づく建築禁止命令及び除却命令を発しないという不作為が違法であることの確認及びこれらの各命令を発することを、また、被告東京都建築主事に対して、本件建物について検査済証を交付してはならないという不作為をそれぞれ求めて無名抗告訴訟を提起した事案である。 1 法令の定め(1) 建築基準法及びその関連法規等による建築物の高さ制限等ア市町村は、都市計画法(昭和43年法律第100号)12条の4の規定に基づく地区計画が定められておりかつ地区 案である。 1 法令の定め(1) 建築基準法及びその関連法規等による建築物の高さ制限等ア市町村は、都市計画法(昭和43年法律第100号)12条の4の規定に基づく地区計画が定められておりかつ地区整備計画も定められている区域について、当該区域内の建築物に関し、地区計画で定められた事項につき、条例の定めによって制限を加えることができる(建築基準法68条の2)。 イ国立市は、都市計画法12条の4の規定に基づき、東京都国立市中三丁目地区(以下「本件地区」という。)について、国立都市計画中三丁目地区地区計画(以下「本件地区計画」という。)を定めている。 本件地区計画は、その目的を、都市基盤が整備された地区において、低中層住宅地区及び学園地区の環境を維持保全し、大学通り沿道の都市景観に配慮したまちづくりを形成することを定めている。 そして、本件地区計画には、地区整備計画が定められており、同整備計画において、本件地区は、低層住宅地区1、同2、中層住宅地区、学園地区に区分され、建築物の高さが、それぞれ、低層住宅地区2については10メートル以下、中層住宅地区及び学園地区のうち、第一種低層住居専用地域(都市計画法8条1項1号)を除く地区について、20メートル以下に制限されている。 なお、第一種低層住居専用地域は、もともと10メートル又は12メートルの高さ制限がされており(建築基準法55条)、低層住宅地区1については、その全部が第一種低層住居専用地域に指定されている。 また、本件地区計画は、本件地区全部の地区について、建築物等の形態又は意匠の制限として、建築物の外壁等の色彩は、周辺環境に配慮した色調とすることを、垣又はさくの構造の制限として、道路に面して垣又はさくを設ける場合は、原則として、道路から高さ1メートル以上の部分については生け垣とすること 物の外壁等の色彩は、周辺環境に配慮した色調とすることを、垣又はさくの構造の制限として、道路に面して垣又はさくを設ける場合は、原則として、道路から高さ1メートル以上の部分については生け垣とすることを、土地利用の制限として、敷地面積1000平方メートルを超える敷地に建築物を建築するときは、良好な居住環境を確保するために必要な樹木を保全することを、それぞれ求めている。 ウ国立市は、建築基準法68条の2の規定に基づく条例として、国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例(平成11年国立市条例第30号。平成11年12月24日公布、平成12年1月1日施行。以下「本件建築条例」という。)を定め、平成12年国立市条例第1号による改正(平成12年2月1日公布、同日施行)後は、本件地区計画と同様に、本件地区の建築物の地盤面からの高さを、低層住宅地区2においては10メートル以下、中層住宅地区及び学園地区(第一種低層住居専用地域を除く。)においては20メートル以下に制限している(同条例7条)。 エ以上によれば、建築基準法上の制限として、本件地区の建築物の高さは、低層住宅地区2については10メートル以下、中層住宅地区及び学園地区(第一種低層住居専用地域を除く。)については20メートル以下にそれぞれ制限されている。 オ日影規制第二種中高層住居専用地域、容積率200%、第一種高度地区に指定されている地域にある高さ10メートルを超える建築物は、冬至日における真太陽時の午前8時から午後4時までの間に、建築敷地の平均地盤面から4メートルの高さの水平面に対して、敷地境界線から5メートルを超え10メートル以内の範囲では3時間以上、10メートルを超える範囲では2時間以上の日影を生じさせてはならない(建築基準法56条の2第1項、東京都日影による中高層建築物の 、敷地境界線から5メートルを超え10メートル以内の範囲では3時間以上、10メートルを超える範囲では2時間以上の日影を生じさせてはならない(建築基準法56条の2第1項、東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例(以下「日影条例」という。)3条)。 ただし、上記建築物が、第一種低層住居専用地域、容積率150%、第一種高度地区に指定されている地域に対して、日影を及ぼす場合には、冬至日における真太陽時の午前8時から午後4時までの間に、建築敷地の平均地盤面から1.5メートルの高さの水平面に対して、敷地境界線から5メートルを超え10メートル以内の範囲では4時間以上、10メートルを超える範囲では2時間30分以上の日影を生じさせてはならない(建築基準法56条の2第5項、日影条例3条)。 (2) 建築基準法の適用除外建築基準法及び同法に基づく条例等の規定の施行又は適用の際現に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物が、これらの規定に適合せず又は適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又はその部分に対しては、当該規定は、適用されない(建築基準法3条2項)。 (3) 違法建築物に対する是正命令東京都多摩西部建築指導事務所長は、その管轄内の建築基準法令の規定に違反した建築物について、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人、現場管理者等に対して、工事の停止、又は、相当の猶予期限を付けて、建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他建築基準法令の規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(建築基準法9条1項、東京都建築指導事務所設置条例2条、東京都建築指導事務所長委任規則)。(4)検査済証の交付木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを ができる(建築基準法9条1項、東京都建築指導事務所設置条例2条、東京都建築指導事務所長委任規則)。(4)検査済証の交付木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるものなどの一定の建築物については、建築主事が、当該建築物の建築工事完了後に当該建築物が建築基準関係規定に適合しているかを検査し、この検査において当該建築物が建築基準関係規定に適合していると判断したときには、建築主事は建築主に対して検査済証を交付しなければならない(建築基準法7条)。 そして、上記の建築物を新築する場合又は上記の建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕若しくは大規模の模様替の工事で、避難施設、消火設備、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の昇降機若しくは防火区画で政令で定めるものに関する工事を含む工事をする場合においては、建築主は、この検査済証の交付を受けた後でなければ、原則として、当該建築物を使用し、又は使用させることはできない。ただし、①建築主事が安全上、防火上及び避難上支障がないと認めて仮使用の承認をしたとき、②検査の申請が受理された日から7日を経過したときのいずれかに該当する場合には、検査済証の交付を受ける前においても、建築主は、当該建築物を、仮に使用し、又は使用させることができる(建築基準法7条の6)。 (5) 国立市都市景観形成条例等の定め国立市は、「国立市の都市景観の形成に関する基本事項を定めることにより、「文京都市くにたち」にふさわしく美しい都市景観を守り、育て、つくること」を目的として、国立市都市景観形成条例(平成10年国立市条例第1号。以下「景観条例」という。)を定め、同条例の施行に関し、国立市都市景観形成条例施行規則(平成10年国立市規則第10号)を設け、また、国立市長は、同条例25条の規定に基づいて大 10年国立市条例第1号。以下「景観条例」という。)を定め、同条例の施行に関し、国立市都市景観形成条例施行規則(平成10年国立市規則第10号)を設け、また、国立市長は、同条例25条の規定に基づいて大規模行為景観形成基準(平成10年3月国立市長告示第1号)を定めているところ、国立市都市景観形成条例施行規則11条、大規模行為景観形成基準によれば、高さ10メートルを超える建物の新築工事をしようとする建築主は、高さについて、まちなみとしての連続性、共通性を持たせ、周囲の建築物等との調和を図ることを配慮すべきことが定められている。 また、上記の建築主は、当該建築物の建築に必要とされる法定の手続をとる前に、市長に対して、その建築工事の内容を届け出なければならず(景観条例26条1項)、市長は、届け出られた建築工事が周囲の景観と調和していないなどと認めるときは、届出をした者に対し、建築工事に関して必要な措置を講ずるよう、助言又は指導をすることができ、届出をした者が指導に従わないときは建築主に対して勧告をすることができる(同条例28条)。そして、市長は、届出をした者が勧告に従わないときは、審議会の意見を聴取した上、その旨を公表することができる(同条例29条)。 (6) 東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例の定め東京都では、中高層建築物の建築に係る計画の事前公開並びに紛争のあっせん及び調停に関し必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域における健全な生活環境の維持及び向上に資することを目的として、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(昭和53年東京都条例第64号。以下「紛争予防条例」という。)を定め、建築主が、中高層建築物を建築しようとするときは、標識の設置や近隣関係住民に対する説明など 建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(昭和53年東京都条例第64号。以下「紛争予防条例」という。)を定め、建築主が、中高層建築物を建築しようとするときは、標識の設置や近隣関係住民に対する説明などを行わなければならないとされている(紛争予防条例5条、6条)。 2 前提事実(各項末尾掲記の証拠等によって認められる。)(1) 当事者等ア原告らa 別紙当事者目録第1記載の原告学校法人桐朋学園(以下「原告桐朋学園」という。)は、桐朋学園小学校、桐朋中学校、桐朋高等学校(以下、併せて「桐朋学園男子部門」という。)を設置している学校法人である(争いのない事実)桐朋学園男子部門は、本件建物の建設地である本件土地の北側に幅員5.4メートルの道路を挟んで隣接している。 (争いのない事実)原告桐朋学園は、本件地区の学園地区(第一種低層住居専用地域でない地区)に土地を所有している。 (甲8の1、10、67)b 別紙当事者目録第2記載の原告らは、いずれも桐朋学園男子部門に通学する児童、生徒である。 (弁論の全趣旨)c 別紙当事者目録第3記載の原告らは、いずれも桐朋学園男子部門に勤務する教職員及び事務員である。 (弁論の全趣旨)d 別紙当事者目録第4の1及び同2記載の原告らは、本件土地の境界線から本件建物の高さの2倍以内の範囲に居住している住民であり、本件建物の建設に反対する人々で組織された任意団体「2Hの会」の構成員である。 (弁論の全趣旨)別紙当事者目録第4の1 囲に居住している住民であり、本件建物の建設に反対する人々で組織された任意団体「2Hの会」の構成員である。 (弁論の全趣旨)別紙当事者目録第4の1記載の原告らのうち、原告P1及び同P2は、それぞれ、本件地区の低層住宅地区2に土地を所有し、原告P3は、本件地区の中層住宅地区(第一種低層住居専用地域でない地区)に土地を所有している。 (甲8の2・3、10、67、94の1)e 別紙当事者目録第5記載の原告らは、いずれも国立市及び大学通りの環境を守ろうとする人々で組織された任意団体「東京海上跡地から大学通りの環境を考える会」の構成員である。 (甲25、弁論の全趣旨)イ被告らa 被告東京都多摩西部建築指導事務所長(以下「被告建築指導事務所長」という。)は、建築基準法9条1項に基づき、本件建物について、是正命令を発する権限を有する特定行政庁である。 (争いのない事実)b 被告東京都建築主事(以下「被告建築主事」という。)は、建築基準法7条4項、5項に基づき、本件建物の建築工事の完了後に本件建物の適法性を審査し、これを適法と認めたときには、本件建物の建築主に対して検査済証を交付する権限を有する行政庁である。 (争いのない事実)ウ明和地所株式会社明和地所株式会社(以下「明和地所」という。)は、住宅地、工業用地等の開発、造成及び販売に関する業務等を行う株式会社であり、本件建物の建築主である。 (争いのない事実)(2) 大学通り周辺堀区の景観ア国立市の大学通りと呼ばれる地域は、高さ約2 務等を行う株式会社であり、本件建物の建築主である。 (争いのない事実)(2) 大学通り周辺堀区の景観ア国立市の大学通りと呼ばれる地域は、高さ約20メートルのイチョウ及び桜が植樹されている幅約43.6メートルの並木道である。 大学通りは、昭和57年の東京都主催の「新東京百景」、昭和61年の財団法人日本色彩研究所主催の「第1回公共の色彩賞」における環境色彩10選、平成6年の読売新聞社主催の「新・日本街路樹100景」にそれぞれ選ばれており、その景観が優れていることは一般に周知されている。 (甲20、21、23)イ大学通り沿いの地域のうち一橋大学より南に位置する地域は、桐朋学園男子部門、都立国立高校の各敷地及び本件土地を除き、その大部分が都市計画の用途地域区分において第一種低層住居専用地域に指定されており、低層住宅群を構成している。高さ20メートルを超える高層建築物は、この地域においては、本件建物のみである。 本件土地の北側には道路を挟んで桐朋学園男子部門が立地し、南側には障害者スポーツセンターやNTTの社宅などの3、4階までの建物が立地している。本件土地の西側には2、3階建ての低層住宅が立地している。 (甲9、10、11、12)ウ大学通り周辺地区は、大正後期から昭和初期に始まる開発の当初から、教育施設を中心とした閑静な住宅地を目指して整備され、美観を損なうと考えられる建物の建築や風紀を乱すと考えられる営業は行われなかった。 また、この地区においては、下記のとおり、環境や景観を守ることを目的とした市民運動が盛んに行われてきた。 昭和26年ころ、国立市の風紀が悪化したことから、市民グループが文教地区指定 れなかった。 また、この地区においては、下記のとおり、環境や景観を守ることを目的とした市民運動が盛んに行われてきた。 昭和26年ころ、国立市の風紀が悪化したことから、市民グループが文教地区指定運動を起こし、国立市は文教地区に指定された。 昭和44年ころ、大学通りに歩道橋を設置する計画が出されたことから、市民グループが、大学通りの美観の保護を理由として、歩道橋建設反対運動を起こし、訴訟を提起するなどした。 昭和48年ころ、建築基準法の改正に伴う用途地域の全面見直しに際して、大学通り沿道を第一種住居専用地域とするか第二種住居専用地域とするかが問題となり、市民グループが、第一種住専派と第二種住専派に分かれて、運動を起こし、その結果、大学通りの一橋大学より南側の地域の道路及び沿道20メートルの範囲等が第一種住居専用地域に指定された。 平成8年以降、大学通り沿いの地域のうち一橋大学以北の商業地域において高層建築物があいついで建設されたことから、市民グループが、景観権等の権利を主張して、市民運動を起こし、国立市及び東京都を被告として訴訟を起こすなどしている。 さらに、平成10年には、景観条例が制定され、大学通り周辺地区は、景観条例上の都市景観形成重点地区の候補地(景観条倒10条)に指定されている。 (甲3、4、18、19、28、61の1)(3) 本件紛争の経緯ア明和地所は、平成11年7月22日、東京海上火災保険株式会社から、本件土地を購入した。 (甲7の1ないし9)そして、明和地所は、同年8月18日、国立市に対し、本件建物の建築計画に関して、国立市開発行為等指導要綱に基づく事前協議書を提出した。 (甲60、63) て、明和地所は、同年8月18日、国立市に対し、本件建物の建築計画に関して、国立市開発行為等指導要綱に基づく事前協議書を提出した。 (甲60、63)また、明和地所は、同年8月ころ、少なくとも一部の近隣住民に対しては、「近隣説明書」と題する本件建物の建築計画の概要が記載された書面を2通ずつ配布した。 明和地所は、このころ、本件土地上に、高さ53.06メートル、地上18階、地下1階の建物を建築する予定であると発表していた。 (甲57の1・2)イ本件土地の近隣住民の一部は、同月27日、国立市議会に対し、本件建物の建築計画を周辺の環境と調和を持った計画に変更するよう明和地所に働きかけることを求める陳情書を提出した。 国立市議会は、同年9月22日、この陳情を採択した。 国立市長は、同年10月8日、明和地所に対し、景観条例に基づき、本件建物の建築計画を大学通り沿道の高さ約20メートルの並木に調和するように見直す旨指導した。 また、国立市長は、同日、被告建築指導事務所長に対し、明和地所に対して、国立市開発行為等指導要綱に基づく手続を踏む旨指導するよう要請した。 (甲58の1ないし3、59、60)ウ明和堀所は、同月19日、本件建物の建築計画を記載した標識を設置した。 (乙9)エ明和地所は、同年11月6日、本件土地の近隣住民及び国立市長からの再三の要求に応じ、近隣住民に対する本件建物の建築計画についての第1回説明会を開催した。 明和地所は、同月20日、第2回説明会を開催し、その際、本件建物を高さ43.65メートル、地上14階、地下1階の規模に変更すると発表し に対する本件建物の建築計画についての第1回説明会を開催した。 明和地所は、同月20日、第2回説明会を開催し、その際、本件建物を高さ43.65メートル、地上14階、地下1階の規模に変更すると発表した。 (甲56)オ国立市長は、同月24日、本件土地の建築物の高さを20メートル以下に制限する内容を含む本件地区計画の原案を作成した上、公告、縦覧に供した。 (甲60)力明和地所は、同月27日、第3回説明会を開催した。 (甲56)キ明和地所は、同年12月2日、被告建築主事に対し、本件建物に係る建築確認申請につき、法定期間内に処分を行うよう求めるとともに、東京都が明和地所に対して行った行政指導には従えないとの内容の上申書を提出した。 (争いのない事実)ク明和地所は、同月3日、被告建築主事に対し、本件建物に係る建築確認申請書を提出した。 (乙10)ケ明和地所は、同月18日、第4回説明会を開催した。 なお、これらの説明会においては、本件建物の建築計画を実行しようとする明和地所と建築計画の見直しを求める近隣佳民が鋭く対立し、双方の納得のいく結論は得られずに交渉は決裂した。 (甲56)コ同月24日には、本件建築条例が公布され、平成12年1月1日から施行された。 (乙11)サ明和地所は、同月5日、被告建築主事から、本件建物に係る建築確認通知を受け、同日、本件土地の根切り 年1月1日から施行された。 (乙11)サ明和地所は、同月5日、被告建築主事から、本件建物に係る建築確認通知を受け、同日、本件土地の根切り工事に着工した。 (乙12、13)シ国立市は、同月24日、本件地区計画を決定し、告示した。これにより、本件地区計画は、都市計画法上の地区計画として、本件土地を含む本件地区に対し、効力を生じた。 (甲67)ス原告らの一部を含む周辺住民等は、同日、東京地方裁判所八王子支部に対し、明和地所らを相手取り、本件建物の建築工事禁止の仮処分を求める申立てをした(平成12年ヨ第28号・第107号建築禁止仮処分申立事件)。 (甲25、乙23の1)セ明和地所は、同月26日、本件土地について、根切り工事によって掘った土地の周辺堀盤の崩落を防ぐための山留工事を開始した。 (乙13)ソ国立市長は、同月31日、国立市議会に対し、国立市本件地区内の建築物の高さを、各地区の区分に応じて制限する内容の本件建築条例の改正案を提出し、可決された。 (甲5)これを受けて、同年2月1日、上記改正条例である平成12年国立市条例第1号が公布、施行された。 これによって、本件土堀を含む本件地区内の中層住宅地区(第一種低層住居専用地域を除く。)は、この条例改正により、高さ20メートルを超える建築物を建築してはならないという建築基準法上の制限を受けることとなった。 (争いのない事実 域を除く。)は、この条例改正により、高さ20メートルを超える建築物を建築してはならないという建築基準法上の制限を受けることとなった。 (争いのない事実)タ明和地所は、本件条例の改正の施行後も、本件建物の建築計画を変更することなく、建築工事を続行した。 (争いのない事実)チ国立市都市景観形成審議会は、平成12年3月9日、景観条例に基づき、国立市長から明和地所に対して国立市長の指導に従うよう勧告をすべきである旨の決定をなし、同年4月5日、国立市長に対し、その旨の答申をした。 国立市長は、同年5月2日、上記答申を受けて、明和地所に対し、景観条例に基づき、周辺建築物や約20メートルの高さで並ぶイチョウ並木と調和するように本件建物の高さを低くするよう勧告を行った。 明和地所は、同月16日、上記の勧告に応じることは困難である旨の回答をした。 国立市都市景観形成審議会は、同年7月18日、国立市長に対し、上記回答を受けて、明和地所が本件景観形成に基づく国立市長の勧告に従わないとの事実を公表すべきである旨の答申を行った。 そして、国立市長は、同月27日、明和地所が景観条例に定める国立市長の勧告に従わない旨の事実を公表した。 (甲62の1・2)ツ東京地方裁判所八王子支部は、同年6月6日、前記仮処分申立てに対し、これを却下する旨の決定をした。 (乙23の1)テ東京高等裁判所は、同年12月22日、前記仮処分申立事件の抗告審決定(平成12年(ラ)第1328号建築禁止仮処分申立却下決定に対する抗告事件)として、申立てを却下した原審の判断を是認して抗告を却下す 東京高等裁判所は、同年12月22日、前記仮処分申立事件の抗告審決定(平成12年(ラ)第1328号建築禁止仮処分申立却下決定に対する抗告事件)として、申立てを却下した原審の判断を是認して抗告を却下する旨の決定(以下「東京高裁決定」という。)をしたが、その理由中において、以下のとおり述べて、本件建物は本件建築条例に違反している旨を判示した。 「建築基準法3条2項は、「条例の施行の際現に建築の工事中の建築物がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又は建築物の部分に対しては、当該規定は、適用しない。」と規定する。同条項の趣旨は、建築確認を受けて建築した建物であっても、後に法令の改正等により同法7条3項の検査済証の交付が受けられない事態があり得ることを当然の前提としながら、建物の建築が一般に高額の費用と相応の準備及び期間を要して完成に至るものであることにかんがみ、3条2項に該当する場合には、結果的に同法の規制に適合しないこととなっても、建築を許容することとするにあると解せられる。これにより、新たな規制によって法が実現しようとした目的は一部達成されないこととなるが、一方、建築主にとっては、法に適合するとの判断を受けて建築工事を開始したにもかかわらず、完成時には法に適合しないとされることによる予期しない損失を避けることができる。このような建築主の既得権の保護と新たな規制の目的の達成との調整を図る同条項の趣旨及び文言にかんがみると、「現に建築の工事中」であるといい得るためには、建築請負契約の締結や建築の材料、機械の敷地への搬入をし、敷地の掘削等敷地に改変を加えるだけでは足りず、建築物の躯体中の基礎を除いた部分の工事に至っていることまでは要しないものの、敷地において、地中であれ、地上であれ、計画され 、機械の敷地への搬入をし、敷地の掘削等敷地に改変を加えるだけでは足りず、建築物の躯体中の基礎を除いた部分の工事に至っていることまでは要しないものの、敷地において、地中であれ、地上であれ、計画された建築物の基礎又はこれを支える杭等の人工の構造物を設置する工事が開始され、外部から認識できる程度に継続して実施されていることを要すると解するのが相当である。 本件においては、前記のとおり、標記の日時当時、杭打ち、基礎又は地下の躯体工事に着手しておらず、建築物の基礎又は地下室部分を築造するために、地盤面以下の土を掘削して所要の空間を設ける根切り工事が実施されていたのである。同工事は、整地工事とは異なり、建築物の建築を前提とすることは明らかであるが、その施工対象は地盤の土壌であり、この段階では、地盤上又は地下において、右人工の構造物を設置する工事に着手していたと認めることはできない。 右によれば、相手方らの実施していた前記認定の作業の段階は、建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中」であったと認めることはできず、本件マンションは、その高さの点において本件建築制限条例に違反しており、建築基準法に適合しない建物に当たる。」(甲1)ト原告らは、平成13年1月10日付けで、被告建築指導事務所長に対し、建築基準法9条1項に基づき明和地所に対して本件建物についての是正命令を発するよう要求したが、同被告は、これを拒絶した。 (争いのない事実)ナ原告らは、同年3月、東京都知事に対し、東京都知事が、被告建築指導事務所長に対し、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分についての是正命令を発するよう指揮監督権を行使することを求める陳情を行った。 東京都 年3月、東京都知事に対し、東京都知事が、被告建築指導事務所長に対し、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分についての是正命令を発するよう指揮監督権を行使することを求める陳情を行った。 東京都建築指導部長は、同年5月、上記の陳情に対し、東京都は、建築基準法3条2項の「現に建築工事中の建築物」には根切り工事が始まった段階を含むとの解釈をとっており、建築基準法3条2項が本件建物に適用される結果、本件建物は建築基準法令に適合した適法なものであると解しているので、原告らの陳情を容れることができない旨を回答した。 (甲35、36の1、80)ニ原告桐朋学園らは、明和地所らを被告として、本件建物について、建築物撤去等請求事件を東京地方裁判所に提起し、現在、同訴訟は係属中である(原告桐朋学園外50名、被告明和地所外1名、東京地方裁判所平成13年(ワ)第6273号)。 (甲35、36の1)ヌ明和地所らは、現在、本件建物の高さ20メートルを超える部分の建築工事を続行中であり、平成13年7月22日の時点で、既に本件建物の躯体の工事を終えており、高さ43.65メートルの本件建物の外観を完成させ、同年8月以降は、テレビコマーシャルを流すなど、本件建物の販売準備行為を開始しているが、建築主事による検査済証の交付までには至っていない。 (甲90、弁論の全趣旨)(4) 本件土地及び本件建物の位置及び形状ア本件土地及び本件建物の位置本件土地は、第二種中高層住居専用地域、第一種高度地区、容積率200%に指定されている。また、本件土地は、本件地区計画において、中層住宅地区に指定されている。 土地は、第二種中高層住居専用地域、第一種高度地区、容積率200%に指定されている。また、本件土地は、本件地区計画において、中層住宅地区に指定されている。 (甲9、67、乙2)イ本件建物の形状本件建物は、高さ43、65メートル、地上14階、地下1階、建築面積6,401.98平方メートル、建ぺい率36.10%、容積率193.43%、総戸数343戸という規模の分譲マンションである。 その具体的形状は、別紙図面1のとおりである。 (乙10、13)なお、本件建物の北側には、ゴミ置き場、ゲスト用パーキング、バイク置き場(36台)、自転車置き場(535台)が作られる予定であり、また、本件建物の駐車場は、ゲスト用パーキングを含めて258台分が作られる予定である。 (甲45、乙13) 3 当事者双方の主張(原告らの主張)(1) 原告適格原告らは、以下のとおり、本件各請求を提起する法律上の利益を有するから、本件各請求について、それぞれ、原告適格を有するというべきである。 ア法律上保護された利益(ア) 環境権環境とは、人間が健康で快適な生活を維持、確保するための前提条件である。環境には、大気、水質、土壌、日照、通風、景観等により形成される自然的環境、遺跡や寺院等の歴史的遺産により形成される文化的環境のみならず、道路、公園、学校、上下水道等により形成される生活環境までも含まれる。 そして、環境権とは、上記の意味における良好な環境を享受し、これを支配しうる権利であって、憲法13条、25条、29条により保護されている。 すなわち、憲法25条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しているが、その 味における良好な環境を享受し、これを支配しうる権利であって、憲法13条、25条、29条により保護されている。 すなわち、憲法25条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しているが、その必須の前提条件として良好な環境が確保されなければならないから、同条項は、生命、身体、健康を生存権の内容として保護しているというべきである。そうすると、これらの保護法益が侵害されることのない程度の良好な環境を享受する権利もまた同条により保障されていると解される。 次に、憲法13条は、精神的被害や生活妨害を受けないという利益を幸福追求権の内容として保護していることも明らかである。たとえ物理的侵入がなく、直接の身体的拘束を伴うものでなくとも、人間の尊厳に対する侵害ないしは個々人の人格の自由な発展を阻害するものとして、のぞき見や盗聴などによる恣意的情報収集が非難されるのと同じように、景観破壊、環境破壊等は、個人の尊厳、人格に対する阻害要因として非難されなければならない。 さらに、憲法29条が保障する財産権もまた、環境が侵害されることによって害されることがある。例えば、大気や水、土壌の汚染により農作物に被害を生ずるとか、騒音等により土地の利用方法が制限され、居住用としては使えなくなるなどである。したがって、憲法29条の財産権も環境の保全に関連する権利である。 なお、環境基本法3条は、良好な「環境」が「人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること」を明言して、国民が良好な環境に対する権利を有することを肯定している。 以上のとおり、環境権は、憲法上保障される人格的権利である。 そして、環境に対する利益は、下記の景観に対する利益とともに、都市計画法、建築基準法、景観条例、本件建築条例、紛争予防条例等の関連法規によって構成される法体系において 保障される人格的権利である。 そして、環境に対する利益は、下記の景観に対する利益とともに、都市計画法、建築基準法、景観条例、本件建築条例、紛争予防条例等の関連法規によって構成される法体系において、個人の個別的利益として具体的に保護されていると解される。 (イ) 景観権a 景観権の一般的権利性景観は、土地の価格の決定要因として、「眺望、景観等の自然的環境の良否」が掲げられるように、これを享受する個人にとって一定の財産的価値を有する。 さらに、景観は、人間が健康で文化的な生活を営むための重要な要素であり、景観に対する権利は人格的権利であると理解すべきである。すなわち、環境権が憲法13条、25条、29条によって保障される人格的権利であるならば、環境の重要な要素であるところの景観に対する権利(景観権)もまた人格的権利として認められていると解すべきである。 b 国立市民の景観権前提事実記載の歴史的経緯に照らせば、国立市民が景観に対する高い意識を共有していることは明らかであり、そのような事情を有する国立市においては、景観権が、特に、権利として保護に値する程度にまで十分に成熟している。 ところで、国立市においては、都市景観形成基本計画の基本方針の重点地区である大学通りと青柳崖線の景観を保全することを具体的な目的とする景観条例を制定し、同条例においては、市長の責務、市民等の責務、事業者の責務が具体的に規定されおり、すでに、同条例によって、市民の具体的な景槻権が保護されているというべきである。 そして、環境、景観を必死に守ってきた国立市内でも環境、景観の最重点保護対象地域である本建築について、その美しい景観環境を維持、保全するため、本件地区計画が策定された。なお、同地区は、そもそも、その歴史的経緯から、概ね20メートルの高さで並ぶ大学通りの 観の最重点保護対象地域である本建築について、その美しい景観環境を維持、保全するため、本件地区計画が策定された。なお、同地区は、そもそも、その歴史的経緯から、概ね20メートルの高さで並ぶ大学通りの桜、銀杏並木と調和するような建物しか建てられないという内在的制約が存在する地域である。 さらに、この地区計画を条例化した本件建築条例が制定されたことにより、本件土地を含む本件地区には高さ20メートルを超える建築物を建築してはならないという法令上の具体的な制限が課せられることとなった。本件建築条例によるこの高さ制限が、本建築の環境や景観を維持、保全する趣旨であることは、地区計画、堀区整備計画の定め、都市計画法の定め、建築基準法の定めに照らせば明らかである。そして、優れた景観は、一般的抽象的な公益に吸収解消されるにとどまらず、その地域の居住者個々人の個別具体的利益としての性格を有する。 そうすると、同地区における景観利益は、都市計画法、建築基準法、国立市都市景観形成条例、本件建築条例、都紛争予防条例等の関連法規によって構成される法体系において、個人の個別的利益として具体的に保護されているというべきである。 (ウ) 日照建築基準法がいわゆる日影規制を通じて日照に対する利益を個人の利益として保護していることは明らかである。 イ各原告の原告適格原告らは、本件建物が完成されることにより、建築基準法及びその関連法規によって保護された利益である、景観権、環境権、日照権等の侵害を受けるものであるから、本件各請求について、いずれも、原告適格を有する。 (ア) 当事者目録第1記載の原告(原告桐朋学園)桐朋学園男子部門では、ひとりひとりの人間を大切にし、豊かな個性と自主の精神を育む人間教育を行うことを教育方針としており、原告桐朋学園がこの教育方針の下に児童 者目録第1記載の原告(原告桐朋学園)桐朋学園男子部門では、ひとりひとりの人間を大切にし、豊かな個性と自主の精神を育む人間教育を行うことを教育方針としており、原告桐朋学園がこの教育方針の下に児童、生徒を教育していく上で、国立市の環境、とりわけ大学通りの景観は非常に大切な役割を果たしている。これらの環境、景観は桐朋学園男子部門が児童、生徒に提供している教育環境の重要部分を構成している。 原告桐朋学園は、本件建物の敷地である本件土地の北側に幅員5.4メートルの道路を挟んで隣接し、本件建物が建築されることにより、日照、眺望、教育環境等について回復し難い重大な損害を被る。 (イ) 当事者目録第2記載の原告ら当事者目録第2記載の原告らは、従前、桐朋学園男子部門の有する良好な教育環境(日照、眺望もその重要な構成要素である。)を享受してきたところ、本件建物の建築により学習環境に回復し難い重大な損害を被り、心身の発育過程において好ましくない影響を被る。 また、上記原告らは、本件建物が完成し、被告建築主事により検査済証が交付され、購入者による使用行為が開始されると、上記損害が継続しているなか、その侵害が入居により、より強固かつ固定化されるうえに、常時、本件建物の使用者の目にさらされることでプライバシーを侵害され、さらには後述する交通事情の悪化により登下校時において生命、身体の危険にさらされることとなる。 (ウ) 当事者目録第3記載の原告ら当事者目録第3記載の原告らは、桐朋学園男子部門の有する良好な教育環境を最大限に活用した学校教育を当事者目録第2記載の原告児童、生徒らに提供すべく活動しており、その意味で、やはり原告桐朋学園男子部門の有する良好な教育環境を享受している。ところが、上記原告らは本件建物の建築により、その享受してきた良好な教育環境を決 告児童、生徒らに提供すべく活動しており、その意味で、やはり原告桐朋学園男子部門の有する良好な教育環境を享受している。ところが、上記原告らは本件建物の建築により、その享受してきた良好な教育環境を決定的に破壊され、回復し難い損害を被る。 本件建物についての検査済証の交付により、購入者による使用行為が開始されると、上記原告らは、損害が継続しているなか、その侵害が入居により、より強固かつ固定化されるうえに、プライバシーを侵害され、出退勤時に生命、身体の危険にさらされることは、当事者目録第2記載の原告らと同様である。 (エ) 当事者目録第4記載の原告ら当事者目録第4記載の原告らは、いずれも本件土地と隣接して、または本件土地の近隣に土地を所有し、居住している者であって、本件建物が建築されることにより、日照、眺望を阻害されるほか、自らが守り育んできた大学通りの景観、国立市の環境を決定的に破壊される。 本件建物についての検査済証の交付により、購入者による使用行為が開始されると、上記原告らは、損害が継続しているなか、その侵害が入居により、より強固かつ固定化されるうえに、上記原告らがプライバシーを侵害され、外出時に生命、身体の危険にさらされることとなることは当事者目録第2及び第3記載の原告らと同様である。 (オ) 当事者目録第5記載の原告ら当事者目録第5記載の原告らは、国立市の環境、とりわけ大学通りの景観に対する特別の愛着を有しているところ、この特別の愛着は上記原告らに固有の特殊な思い入れではなく、条例を制定するなどして環境、景観を保護してきた国立市民の共通の思いである。 本件建物の建築により大学通りの景観国立市の環境は決定的に破壊され、上記原告らは回復し難い損害を被る。また、本件建物について検査済証が交付されることにより、損害が継続しているな 通の思いである。 本件建物の建築により大学通りの景観国立市の環境は決定的に破壊され、上記原告らは回復し難い損害を被る。また、本件建物について検査済証が交付されることにより、損害が継続しているなか、その侵害が入居により、より強固かつ固定化されるうえに、上記原告らが本件建物付近を通行する際に生命、身体の危険にさらされることとなるのは当事者目録第2ないし第4記載の原告らと同様である。 (2) 本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求についてア被告建築指導事務所長の不作為原告らは、東京高裁決定を踏まえ、平成13年1月10日付内容証明郵便で、被告建築指導事務所長に対し、明和地所に対して建築基準法9条1項に基づき是正命令を発するよう請求したが、被告建築指導事務所長はこれを拒絶した。 被告建築指導事務所長は、本訴提起時点においても、明和地所に対して本件建築工事の中止、除去等の是正命令を発していない。 イ裁量権の収縮による本件是正命令の発令義務一般に、建築基準法9条1項の是正命令を発するかどうか等については特定行政庁の裁量が認められている。 しかし、裁量を無制限に認めることは、法の支配の観点から許されず、裁量行為に対しても、一定の条件の下で司法的統制が及ぶべきである。 そして、本件においては、後記のとおり、①本件建物の建築基準法違反の程度は著しく、②これによって原告らに生じている被害は重大であるとともに、③被告建築指導事務所長が是正命令を発することには何らの障害もなく、④明和地所による自発的な違反状態の解消は全く期待することができない、⑤違反状態の解消のために被告建築指導事務所長が発すべき是正命令の内容は、一義的に明確である、⑥本件の違反状態が発生するに至った原因は、被告建築主事が明和地所に対して行政指導を実施するなど違反状態の発生 態の解消のために被告建築指導事務所長が発すべき是正命令の内容は、一義的に明確である、⑥本件の違反状態が発生するに至った原因は、被告建築主事が明和地所に対して行政指導を実施するなど違反状態の発生を抑止する努力を全く払わないまま本件建築確認をなすに至った点にあり、本件の違反状態の発生については適切な権限行使を怠った被告建築主事、そしてこれと一体である被告建築指導事務所長の責任は極めて大きいなどの事情がある。 そうすると、本件においては、被告建築指導事務所長が本件是正命令権限を行使しないことは、著しい裁量権の濫用にあたるというべきであり、被告建築指導事務所長には、本件是正命令を発令すべき義務がある。ウ本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求の適法性被告建築指導事務所長は、上記のとおり、原告らの要請に対する拒否という形で、すでに、本件各是正命令を発しないという判断をして、行政庁としての第一次的判断権を行使したというべきであるから、本件審理の対象は、上記被告建築指導事務所長の第一次的判断の適法性であり、このような場合、本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求は、無名抗告訴訟として許容されると解される。 したがって、被告が主張する一義的明白性の要件は不要である。 仮に、被告らが主張するように、無名抗告訴訟の適法性の要件として、一義的明白性、緊急性、補充性の三要件が必要であると解したとしても、下記のとおり、本件においては、これらの要件はいずれも満たされている。 (ア) 一義的明白性本件においては、以下のとおり、①本件建物が違法であり、かつ、その違法の程度が著しい、②原告らが受ける損害が重大である、③被告建築指導事務所長が本件是正命令を発することに何ら障害がない、④建築主である明和地所が自発的に違法解消する見込みがないなどの事情があ その違法の程度が著しい、②原告らが受ける損害が重大である、③被告建築指導事務所長が本件是正命令を発することに何ら障害がない、④建築主である明和地所が自発的に違法解消する見込みがないなどの事情があることから、被告建築指導事務所長が有する是正命令権の裁量権は収縮し、本件建物に対し本件是正命令を発すべき義務があることが一義的に明白であるというべきである。 a 本件建物の違法性(a) 建築基準法3条2項の解釈建築基準法3条2項は、「条例の施行の際現に建築の工事中の建築物がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又は建築物の部分に対しては、当該規定は、適用しない。」と規定するところ、「現に建築の工事中」であるといい得るためには、直接基礎の場合には、建築物の一部である基礎工事がある程度進行しており、少なくとも配筋工事がなされていること、杭基礎をする場合には、実際に建築物の一部である杭を打ち、かつ杭工事がある程度進行していることを要すると解すべきである。 上記解釈が正当であることは、以下のとおり、条文の文言及び立法趣旨から明らかである。 すなわち、建築基準法3条2項は「現に建築…の工事中の建築物」については同項の適用は除外すると規定するが、「建築物」とは同法2条1号によれば「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」とされる。ところで「土地に定着する」とは、現に土地に付着しており、かつ社会通念上その性質として継続的に付着した状態となっていることをいう。そこで、同法3条2項により、本件建築条例の適用が除外されるためには、その施行の際に、土地とは明確に区別された土地に定着する建築物自体が存在しなくてはならない。ところが建築物の部分である躯体そのものの工事の一部である基礎工事 本件建築条例の適用が除外されるためには、その施行の際に、土地とは明確に区別された土地に定着する建築物自体が存在しなくてはならない。ところが建築物の部分である躯体そのものの工事の一部である基礎工事がすでになされて(杭基礎の場合は杭打ちが既になされて)初めて「建築物」があったと考えられるのであり、根切り工事を含む土地の掘削などの土工事をしているだけでは、何ら「建築物」は存しないことは明らかである。そうすると、土工事のみでは同条項に言う「現に建築…の工事中の建築物」に該当しないと解される。換言すれば、「現に建築の工事中の建築物」に該当するためには、文言上、(杭を打たない)直接基礎の場合には、建築物の一部である基礎工事がある程度進行しており、少なくとも配筋工事がなされていること、杭基礎をする場合には、実際に建築物の一部である杭を打ち、かつ杭工事がある程度進行していることを要すると解すべきである。また、建築基準法3条2項が、同法6条1項や3条3項3号で用いられている「工事の着手」という文言を用いず、これらと明確に区別して、「現に建築工事中の建築物」という文言を用いていることからも、上記見解が正当であると解される。 そして、建築基準法3条2項の立法趣旨は、建築主の既得権の保護と新たな規制の目的の達成との調整を図ることであり、この立法趣旨からも、建築主の既得権の保護と新たな規制の目的の達成との調整点としては、基礎工事または杭工事が開始されてからある程度経過してから新法令の適用除外を認める見解が妥当と解される。 さらに、「現に建築工事中の建築物」に対する保護は、その沿革、文言上の体裁からいって、建築基準法3条2項の核心である「現に存する建築物」に対する規定について、その外延を拡大したものと理解されるものであって、「現に存する建築物」に対する規 保護は、その沿革、文言上の体裁からいって、建築基準法3条2項の核心である「現に存する建築物」に対する規定について、その外延を拡大したものと理解されるものであって、「現に存する建築物」に対する規定に準じて解するべきであり、土地に付着する物が何も存在しない場合に、「現に建築工事中の建築物」が存したとは到底いえない。 これに対し、根切り工事の開始時点で建築基準法3条2項の適用除外を認める見解もあるが、同条項の「現に存する建築物」(既存建築物)及び「現に建築…の工事中の建築物」には確認を受けていないものも含まれるとされているので、この見解によれば、新法が成立した後、確認の有無にかかわらず新法が施行されるまでの間にほんの僅か土工事を開始することにより全てのケースにおいて建築基準法3条2項の適用除外が認められることになり、同条項の存在意義自体が全くなくなるほか、単なる土の掘削だけではそれが根切り工事かどうかも不明であり、基準としては極めて不当であることから、建築基準法3条2項についてこのような見解をとることは誤りである。 (b) 本件建築条例施行時における、本件建築工事の進捗状況本件において、本件建築条例施行時である平成12年2月1日には、当該敷地上に従来建てられていた東京海上の建物(以下「旧建物」という。)のガラの除去作業も含めて根切り工事の10%程度(全体では全工程の約400分の1である0. 26%程度)しか進捗しておらず、基礎工事、杭工事は全くなされていなかった。 (c) 本件建物の違法性以上によれば、本件建物について、本件においては建築基準法3条2項による新法令の適用除外はなく、本件敷地には高さ20メートルを超える建築物は建築できないという本件建築条例が適用されることとなるから、本件建物は、高さ20メートルを超える部分において建築基 3条2項による新法令の適用除外はなく、本件敷地には高さ20メートルを超える建築物は建築できないという本件建築条例が適用されることとなるから、本件建物は、高さ20メートルを超える部分において建築基準法令に適合しない違法建築物である。 (d) 本件建物の違法性の程度が著しいこと本件建物は、本件建築条例の定める高さの2倍強である44メートルもの高さの建築物を建築し、違法部分が極めて大きく、違法性の程度が客観的に甚だしいことに加え、下記に詳述するとおり、明和地所が本件指導要綱等に定める手続を全く無視していること、しかも明和地所は禁反言の原則に違反し、抗告審における原告らとの合意をも無視していることなどに照らすと、本件建物(ないしその建築工事)の高さ20メートルを超える部分は、極めて高度の違法性を有する。 I 明和地所による手続の不遵守明和地所は、以下のとおり、法令に定められた各種の手続を遵守していない。 ① 国立市開発行為等指導要綱に定める手続の不遵守明和地所は、本件指導要綱の定めに従い、平成11年10月1日及び本件建築確認申請後である同年12月10日、国立市に対して事業計画事前審査願を提出したが、国立市は、明和地所が近隣住民に対する説明会を開催したとはいえないことから、未だ事前協議は終了していないとして、その受理を拒絶した。 したがって、明和地所は本件指導要綱に定める事前協議の手続を完了していない。 ② 国立市都市景観形成条例に定める手続の不遵守明和地所は、国立市都市景観形成条例を無視する態度を貫いている。 ③ 都紛争予防条例に定める手続の不遵守中高層建築物の建築主は、「近隣関係住民からの申出があったときは、建築に係る計画の内容について、説明会等の方法により、近隣関係住民に説明しなければならない」とされている。ところが、明和地所 不遵守中高層建築物の建築主は、「近隣関係住民からの申出があったときは、建築に係る計画の内容について、説明会等の方法により、近隣関係住民に説明しなければならない」とされている。ところが、明和地所は、形式的な説明会を開催しただけであり、これにより、上記説明義務を遵守したとはいえない。 また、明和地所は上記説明会の開催に先立ち、近隣住民らに対し近隣説明書を配布しているが、その配布先は恣意的であり、内容も不正確、不十分であったから、この説明書配布をもって説明義務を遵守したとはいえない。 以上によれば、明和地所が原告らを含む近隣住民に対し、本件建物の建築計画について、都紛争予防条例が求める説明を行っていないというべきである。 Ⅱ 合意違反(ないし禁反言)明和地所は、本件建物建築に先立ち、近隣住民に対し、行政指導を守ると明言していたにもかかわらず、前記のとおり、行政指導に従っていない。また、仮処分抗告審において、本件建築条例施行当時に、「現に建築工事中の建築物」が存在すると認められない場合、建築確認を得ていたとしても、高さ20メートルを超える部分について、建築基準法令に違反し、その部分を建築することができないことについては争わないと明言し、仮処分抗告審が本件建物が高さ20メートルを超える部分において建築基準法に適合しない違法建築物であることを明示したにもかかわらず、本件建物の建築工事を強行している。これらの明和地所の行動は、禁反言の原則に反している。 b 本件建物による行政目的の阻害行政庁の権限不行使が裁量権の濫用にあたるか否かの判断にあたっては、当該権限がいかなる趣旨、目的で行政庁に付与されているのか、その行政目的との関連で判断されなければならない。 本件建築条例等による高さ規則の目的は、本件建築条例1条の規定する「良好な都市環境の は、当該権限がいかなる趣旨、目的で行政庁に付与されているのか、その行政目的との関連で判断されなければならない。 本件建築条例等による高さ規則の目的は、本件建築条例1条の規定する「良好な都市環境の確保」であり、本件地区計画が目標・土地利用の方針として掲げる「大学通り沿道の都市景観に配慮したまちづくり」と「低中層住宅地区及び学園地区の住環境と教育環境の維持保全」である。 本件の高さ規制の趣旨・目的がこのようなものである以上、被告建築指導事務所長としては、上記のような環境・景観の保全という本件高さ規制の趣旨・目的の達成に寄与すべきであるとの見地から、本件建物について是正命令の権限を行使すべきか否かを決すべき責務があり、環境・景観に対する侵害如何は、本件建物に対して是正命令を発すべきか否かを判断するための極めて重要な要素である。 ところが、本件建物が建築されることにより、環境・景観に対して不可逆的かつ重大な侵害が発生する。 したがって、このことからだけみても、被告建築指導事務所長には、本件各是正命令を発すべき義務があるというべきである。 c 原告らが本件建物により受ける重大な損害原告らは、本件建物が建築されると、以下のような重大な損害を被る。(a)環境破壊I 環境権侵害本件建物の周辺は、調和のとれた落ち着きのある都市景観を形成した環境にある地域であり、大学通の並木(概ね高さ20メートル程度である。)は、その主たる構成要素である。 ところが、本件建物は、コンクリート製の巨大人工構造物であり、並木の2倍以上もあり、周辺の良好な環境を決定的に破壊するものである。Ⅱ 教育環境の破壊憲法26条がすべての国民に公教育を受ける権利を保障したことに対応し、教育基本法10条2項は「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」が教育行政の任務 破壊するものである。Ⅱ 教育環境の破壊憲法26条がすべての国民に公教育を受ける権利を保障したことに対応し、教育基本法10条2項は「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」が教育行政の任務であると明記している。そして学校教育法施行規則は、1条1項において学校の施設設備の設置基準を定め、同条2項において「学校の位置は、教育上適切な環境に、これを定めなければならない。」と規定している。学校教育は、適切な施設が整備され、かつ良好な環境の下において初めて充分な効果を発揮し得るものである。 したがって、良好な学校環境を維持保全していくことは、原告桐朋学園の責務であり、この責務を全うするために、原告桐朋学園には、良好な教育環境を維持保全していく権利があるというべきである。そして、この良好な教育環境の主たる構成要素は、国立市の良好な環境、及び大学通りの並木と建築物との調和のとれた景観である。 ところが、本件建物が完成することにより、国立市の良好な環境、大学通りの調和のとれた景観は破壊され、その結果、原告桐朋学園は良好な教育環境を侵害される。また、原告桐朋学園に勤務する当事者目録3記載の原告らも原告桐朋学園の履行補助者として原告桐朋学園と同様に良好な教育環境を享受しているところ、本件建物が完成することによりこれを侵害される。 Ⅲ 学習環境の破壊憲法26条は教育を受ける権利を定めるにとどまらず、子どもに学習権を保障したものと解すべきである。そして、良好な学習環境は学習権を充足するための必須の前提条偉であるから、学習権は、学習によって子どもが成長、発達していくために必要な学習環境に関する権利である学習環境権を包含しているというべきである(憲法26条、教育基本法10条2項、学校教育法3条、同施行規則1条1項、同2項参照)。 ところで、学習環境 していくために必要な学習環境に関する権利である学習環境権を包含しているというべきである(憲法26条、教育基本法10条2項、学校教育法3条、同施行規則1条1項、同2項参照)。 ところで、学習環境には①家庭、②学校、③地域が含まれる。このうち、学校という学習環境は、物理的環境のみならず、子どもが学習し、成長、発達していくうえで子どもに影響を及ぼす環境の全てをいう。 そして、子どもにとって、学校という学習環境は非常に重要であるところ、本件建物が完成することにより、桐朋学園男子部門に通う児童、生徒らは、毎日あふれる日の光の中で朝礼、駆け足、運動体育の授業、課外活動をしていたのに、日影の中でこれらのことをせねばならず、また、霜がなかなか溶けずに午前中はグランドを使用できない日が多数生じるという重大な損害を被る。 次に、子どもたちにとって地域という学習環境も重要である。そして、国立市は緑の豊かな並木と建築物との調和のとれた景観を大切に育ててきた市であり、大学通りは新東京百景にも選定されたほどの並木通りであって、このような地域において学習している桐朋学園男子部門に通う児童、生徒らにとって、国立市あるいは大学通りという地域が、その保有する学習環境の重要な一部を形成していることは明らかである。 ところが、本件建物が完成することにより、桐朋学園男子部門に通う児童、生徒らは、大学通りに出現した大学通りと不調和でアンバランスな高層、巨大マンションの脇を通学し、学校においては高層、巨大マンションに心理的圧迫感、威圧感を受けながら学習することになり、従前享受してきた良好な学習環境を害されることとなる。 (b) 景観破壊大学通りの景観は・国立市民が70有余年にわたりさまざまな闘争、運動をとおして守り、育んできた景観である。こうした国立市民の努力により、大 きた良好な学習環境を害されることとなる。 (b) 景観破壊大学通りの景観は・国立市民が70有余年にわたりさまざまな闘争、運動をとおして守り、育んできた景観である。こうした国立市民の努力により、大学通りは、東京都の中でも、そして日本の中でも、有数の優れた景観を形成するに至っている。 したがって、本件においては、本件土地を含む大学通りにおいては、客親的な景観価値があり、原告らは、この大学通りの景概を重要な目的としてそれぞれの住所地に居住し、教育を行い、教育を受けており、場所的価値の景観依存性があり、上記の景観を維持することが土地利用との調和というべきであるから、原告らの景擬利益が法律上保護される利益であることは明らかである。 ところが、このような大学通りの景観は、高さ44メートルのコンクリート製巨大人工構造物である本件建物によって、決定的に破壊され、失われてしまうのである。本件建物による被害は極めて重大である。 (c) 日照被害Ⅰ 日照権の人格権的側面日照権は、人格権に由来するものであって個人の尊厳に密接に関わる権利であるから、他の権利に比して優越的な地位を与えられなければならない。いわんや本件において近隣住民の日照権と比較衡量されるのは明和地所の営業上の利益にすぎないから、軽々しく日照被害は受任限度の範囲内にとどまるといった判断をすべきでない。 Ⅱ 目照被害の程度が著しいこと① 原告P3の日照被害の状況原告P3には、冬至のみならず、春分や秋分においても大きな日照被害が生ずる。 原告P3の地盤面の高さは本件建物の地盤面より約1メートル低い。 冬至における本件建物の地盤面プラス0.5メートルの日影図によれば、本件建物が建築されると、冬至において、日の出から午前11時ころまで日影を生ずることとなる。現在、原告P3の家では、午後 ル低い。 冬至における本件建物の地盤面プラス0.5メートルの日影図によれば、本件建物が建築されると、冬至において、日の出から午前11時ころまで日影を生ずることとなる。現在、原告P3の家では、午後には30分程度しか陽が当たらないため、午前中に洗濯物を干しているが、その貴重な午前中の太陽も奪われてしまい、大きな被害を受けることになる。 春分、秋分の日における本件建物の地盤面プラス0.5メートルにおける日影図によれば、春分、秋分の日においても、相変わらず朝から午前11時まで、原告P3に重大な日照被害を生じることが明らかである。 なお、原告P3は、本件建物と原告P3宅の南側のP4宅の複合日影によって日照被害を受けている。 建築基準法上の日影規制は、同一敷地上に2以上の建物がある場合を除き、複合日影は全く考慮していない。既存の建物と新たに建築される建物のそれぞれが建築基準法上の日影規制に適合するとしても、両者の日影が複合すれば、極めて大きな日照阻害を受けることがある。このような場合、それぞれの建物について独立に、建築基準法上の日影規制に適合しているか否かをもって受忍限度が判断されるとすれば、被害者に極めて酷な結果となる。被害者は、ひとたび建物が建築されれば以後数十年間にわたり継続的一方的に日照被害を強いられる。これに対し、加害者には他の場所を選んで建物を建築するという選択の余地がある。加害者に一定の責任を認めることこそが、被害者と加害者の実質的な利害調整を図るという受忍限度論の趣旨に合致する。したがって、このような場合においては、既存建物と新たに建築される建物とを合わせた全加害建物による全被害を一体と捉え、その結果、受忍限度を超える被害が認められれば、新しく建築される建物について建築差止めを求めることができるとされなければならない。 ② 築される建物とを合わせた全加害建物による全被害を一体と捉え、その結果、受忍限度を超える被害が認められれば、新しく建築される建物について建築差止めを求めることができるとされなければならない。 ② 原告桐朋学園の日照被害の状況原告桐朋学園が受ける日照被害は主にグラウンドに生じる。 しかし、グラウンドは駆け足、体操、朝礼、課外活動に欠かせず、学校教育における体育教育の重要性に照らすと、被害は教室における被害と全く同一である。 そして、グラウンドが日影となることによって、概ね次のようなグラウンド状態の悪化が懸念される。すなわち、冬季においては、午前8時の時点でグラウンドの大半が日影となることから、霜などは溶けず、グラウンドはぬかるんだ状態で、体育科授業等の基礎施設としての機能を有しなくなるだけでなく、朝礼、朝の駆け足、体操、昼休み、放課後等の自由時間における自由な遊びもできなくなり、学校施設たる運動場としての機能を有しなくなる。雪が降ったりすれば、なかなか雪が融けないために、相当の期間、グラウンドが使用できなくなるおそれがある。 桐朋学園男子部門のグラウンドに生じる日照被害の具体的状況は次のとおりである。 西グラウンドについては、冬至のころの午前8時ころには西グラウンドの2分の1が日影に覆われる。 西グラウンドは午前7時30分ころからクラブ活動、生徒のランニング、自主トレーニング等のために使用され始めるが、本件建物が建築されると、冬至を中心とする冬季における同時刻ころには朝陽が差さなくなる。そして、朝陽が差さないことにより、霜や雪は凍結し、あるいは地面が十分に乾かないうちにランニング等に使用される結果、グラウンドは劣悪な状態になる。 中央グラウンドは、冬至のころの午前8時ころには中央グラウンドの72%が日影に覆われる。冬至のころの あるいは地面が十分に乾かないうちにランニング等に使用される結果、グラウンドは劣悪な状態になる。 中央グラウンドは、冬至のころの午前8時ころには中央グラウンドの72%が日影に覆われる。冬至のころの午前9時ころには中央グラウンドの15%が日影に覆われる。中央グラウンドもまた午前7時30分ころからクラブ活動、生徒のランニング、自主トレーニング等のために使用され始めるが、本件建物が建築されると、冬至を中心とする冬季における同時刻ころには朝陽が差さなくなる。そして、朝陽が差さないことにより、霜や雪は凍結し、あるいは地面が十分に乾かないうちにランニング等に使用される結果、ぐちゃぐちゃの状態で踏み固められ、グラウンドは劣悪な状態になる。 小学校グラウンドは、冬至のころの午前8時ころには小学校グラウンドの4分の1が日影に覆われる。冬至のころの午前9時ころには小学校グラウンドの23%が日影に覆われる。冬至のころの午後4時ころには小学校グラウンドの37%が日影に覆われる。 小学校グラウンドは多くの児童が午前8時から8時30分まで外遊びをし、8時30分からは体操とランニングを行っている場所である。また、月曜日と金曜日には午前8時30分頃から50分まで小学校グラウンドで全校朝礼を行っている。しかし、やはり本件建物が建築されることにより朝陽が差さなくなるので、冬季におけるグラウンド状態は劣悪となる。 以上のような本件建物による日照被害に対し、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分が除却された場合、真太陽時午前8時の時点において、西グラウンドにはほとんど日影が生じなくなり、中央グラウンドと小学校グラウンドにはそれぞれ一部に日影が生じるものの、本件建物による日影よりも、日影に覆われる部分の範囲が大幅に縮小され、真太陽時午前9時の時点では、桐朋学園男子部門 生じなくなり、中央グラウンドと小学校グラウンドにはそれぞれ一部に日影が生じるものの、本件建物による日影よりも、日影に覆われる部分の範囲が大幅に縮小され、真太陽時午前9時の時点では、桐朋学園男子部門のグラウンドには、本件建物による日影がほとんど生じなくなる。 さらに、被告らが仮定の建物として想定した6階建ての建物による日影についても、真太陽時午前8時の時点において、西グラウンドにはほとんど日影が生じなくなり、中央グラウンドと小学校グラウンドにはそれぞれ一部に日影が生じるものの、本件建物による日影よりも、日影に覆われる部分の範囲が大幅に縮小され、真太陽時午前9時の時点では、桐朋学園男子部門のグラウンドには、ほとんど日影が生じなくなる。 ③ 原告P5の日照被害の状況原告P5宅の地盤面の高さは、本件建物の地盤面より約1メートル低い。 冬至における本件建物の地盤面プラスO.5メートルにおける日影図、冬至の日における本件建物の日影は、真太陽時で午後2時30分頃から、中央標準時で午後2時10分頃から発生し、日没に至るまで長時間にわたって原告P5宅の窓や庭に悪影響を及ぼす。冬季には、同人が楽しみにしている西日が当たらなくなり、非常に寒くなる。 冬至における本件建物の地盤面プラス3メートルにおける日影図によれば、冬至の日における本件建物の日影は、真太陽時で午後2時40分から、中央標準時で午後2時20分頃から原告P5宅の屋根に影響を及ぼし始め、その30分後には原告P5宅の屋根全体をすっぽりと包み込み、その後日没に至るまで陽は全く差さない。 春分、秋分における本件建物の地盤面プラス0.5メートルにおける日影図によれば、春分、秋分の各日においても相変わらず、午後3時過ぎから日没まで、原告P5宅の窓や庭に長時間にわたって日影が生じることが明らかである。 ける本件建物の地盤面プラス0.5メートルにおける日影図によれば、春分、秋分の各日においても相変わらず、午後3時過ぎから日没まで、原告P5宅の窓や庭に長時間にわたって日影が生じることが明らかである。 このように原告P5宅は1年間のうち少なくとも半年間以上は午後3時以降の日照を奪われることになるのであって、被害は重大である。 ④ 原告P6及び同P7の日照被害の状況原告P6及び同P7の自宅の地盤面の高さは本件建物の地盤面より約1メートル低い。 冬至の日における本件建物の地盤面プラス0.5メートルにおける日影図によれば、冬至の日における本件建物の日影は、真太陽時で午後2時15分頃から、中央標準時で午後1時55分から発生し、日没に至るまで長時間にわたって原告P6及び原告P7の自宅の窓や庭に日影を生じさせる。冬季には西日があたらなくなり、非常に寒い。 冬至の日における本件建物の地盤面プラス3メートルにおける日影図によれば、冬至の日における本件建物の日影は、真太陽時で午後2時20分頃から、中央標準時で午後2時00分頃から、原告P6及び同P7の自宅の2階の窓に日影が生じ始め、その後、日没に至るまで長時間にわたって陽が差さなくなることが明らかである。 Ⅲ 日照被害と日影条例との関係被告らは、原告らが本件建物によって被る日照被害がいずれも日影条例の基準に適合しているので、司法による事前救済を要するほどの重大な損害とはいえないと主張する。 しかし、日影条例は、1つの最低基準を示したものにすぎず、これに適合しているからといって、重大な日照被害がないとする根拠にはならない。 そして、本件の高さ規制は、「大学通り沿道の都市景観に配慮したまちづくり」と「低中層住宅地区及び学園地区の住環境と教育環境の維持保全」を目的として策定された地区計画が、「良好な都 拠にはならない。 そして、本件の高さ規制は、「大学通り沿道の都市景観に配慮したまちづくり」と「低中層住宅地区及び学園地区の住環境と教育環境の維持保全」を目的として策定された地区計画が、「良好な都市環境を確保する」との目的のもとに本件建築条例により条例化され、建築基準法上の制限としての効力を生じるに至ったものであるから、本件高さ制限により、日影条例の規制を上回る豊かな日照を個別具体的に保護したものと解される。 ところが、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分は、前記のとおり、本件条例の高さ制限に反した違法建築物である。 そうすると、本件においては、日影条例の基準への適合によって日照被害が正当化されるものではない。 したがって、本件建物による日照被害が重大か否かは、日影条例の基準に適合しているか否かとは無関係に、現実の被害の程度それ自体に着目して判断する必要がある。また、原告らが被る日照被害が、本来は原告らが被るはずのなかった被害であることも十分考慮されなければならない。 (d) その他の被害I ビル風の発生本件建物が建築されると、ビル風が発生し、近隣住民はもとより、桐朋学園男子部門に通う児童、生徒らが何らかの事故に遭遇する危険が増大する。すなわち、近隣住民はもちろん、桐朋学園男子部門に通う児童、生徒ら、前記障害者施設の利用者らが本件土地周辺の歩道や道路を毎日歩行していることは前述のとおりであるところ、本件建物が建築されると、かなりの頻度で突風が起こると予想され、歩行者が転倒したり、飛来物によって怪我をする危険が増大する。 Ⅱ 圧迫感、天空狭窄の被害圧迫感、天空狭窄を生じさせることは人格権侵害である。 そもそも人格権とは、人間がその生命、健康に対して有する権利である。その権利の内容について具体的に言えば、生命、身体、健康そ 、天空狭窄の被害圧迫感、天空狭窄を生じさせることは人格権侵害である。 そもそも人格権とは、人間がその生命、健康に対して有する権利である。その権利の内容について具体的に言えば、生命、身体、健康そのものを維持する権利及び適切な質、量の水や空気、大気、太陽を確保する権利を含んでいる。前者は「人格権としての身体権」と、後者は「人格権としての平穏生活権」と呼ぶことができる、さらに、人格権は憲法上も人権として保障されている(憲法25条、同13条)。しかも人格権は憲法が構成する法秩序の最も根本に位置する基本原理である個人の尊厳に直接関わる権利である以上、他のいかなる利益あるいは権利よりも優越的な地位を与えられるべき権利である。 平穏生活権には、清浄な水や大気、太陽を享受する権利が含まれる。都市部における建築物の高層化、棚密化は日照阻害のほか、圧迫感、天空狭窄の問題を生ぜしめているところ、みだりに圧迫感、天空狭窄の被害を受けないという利益もまた人格権たる平穏生活権の一環として保護される権利である。 ところが、本件建物が建築されると、桐朋学園男子部門の教室や、特にグラウンドからの祖界を遮るため、開放感を失うなど子どもたちへの心理的影響が大きく、桐朋学園男子部門の児童、生徒らに対し圧迫感、威圧感、天空狭窄の被害を与えるものである。 特に圧迫感については、客観的な測定方法として、形態率という手法があり、これによると、本件建物の形態率は受忍限度とされる4%をはるかに超える数値が出ている。 Ⅲ 交通事故に遭遇する危険性が増大すること本件建物が完成し、検査済証が交付され、使用行為が開始されると、原告らの交通事故に遭遇する危険性が増大する。 Ⅳ 原告らのプライバシー侵害本件建物が完成し、使用行為が開始されると、本件建物の開口部からは桐朋学園男子部門の が交付され、使用行為が開始されると、原告らの交通事故に遭遇する危険性が増大する。 Ⅳ 原告らのプライバシー侵害本件建物が完成し、使用行為が開始されると、本件建物の開口部からは桐朋学園男子部門の敷地のほぼ全体を見渡すことができ、子どもたちが心理的悪影響を被ることになり、また、本件建物の近隣に居住する当事者目録第3及び第4記載の原告らに対してもプライバシー侵害が生じる。 (e) 日照、景観、環境等の原告らの利益が、都市計画法及び建築基準法によって保護された利益であることⅠ 都市計画法上保護された利益被告らは、本件地区計画が区域内全体について調和のとれた環境及び都市景観の維持及びその育成を目的とするものであって、特定の利益を保護したものではないと主張する。 しかし、規制の趣旨目的が公益にあることは、必ずしも当該規制が個人の個別具体的利益を保護する趣旨を有しないことを意味するものでなく、都市計画法上の規制が具体的な内容を有する規制である限り、その空間で生活し活動する居住者の側からみれば、当該規制により一定の居住環境が確保され快適な生活が保障されるという個別具体的な利益がもたらされる。すなわち、都市計画法上の規制は、具体的な内容を有する規制である限り、居住者の個別具体的な利益と密接不可分に結びついている。 そうすると、本件地区計画によって、区域内の空間の土地利用に高さ20メートルという具体的規制が加えられることにより、一定の居注環境が確保され、区域内及び隣接地の居住者には、優れた景観、豊かな日照、圧迫感のない生活等快適な生活の保障という個別具体的な利益が、都市計画法上も保護されているというべきである。 Ⅱ 建築基準法上保護された利益本件高さ規制によって原告らが得られる優れた景観、豊かな日照、圧迫感のない生活その他の諸利益は、建築基 体的な利益が、都市計画法上も保護されているというべきである。 Ⅱ 建築基準法上保護された利益本件高さ規制によって原告らが得られる優れた景観、豊かな日照、圧迫感のない生活その他の諸利益は、建築基準法が原告らの個別具体的利益として保護している利益である。 まず、建築基準法は、単に一般的抽象的な漠然とした公益のみを保護する法体系ではなく、個人の個別具体的な利益を保護し、これを通じて公益の実現を図る法体系である。 そして、建築基準法68条の2は、建築規制の基準と内容の一部を条例と地区計画に委任しており、同条に基づいて策定、制定された本件地区計画及び本件建築条例は、前記のとおり、優れた景観、豊かな日照、圧迫感のない生活等を原告らの個別具体的な利益として保護している。 そうすると、行政法規が規制の基準や内容を下位法令に委任している場合、下位法令が個人の個別具体的利益を保護する趣旨の規定を置いていれば、当該利益は法律上保護された利益となると解されるから、上記原告らの利益は、建築基準法上保護された利益というべきである。 (f) 原告らの損害が受忍限度内ではないこと被告らは、原告らの日照被害及びプライバシー侵害が受忍限度内であるとの理由で、一義的明白性の要件を欠くと主張する。 しかし、本件においては、以下の事情に照らすと、一義的明白性の要件の判断要素として受忍限度を論じる必要がないというべきであり、仮に受忍限度を考慮する必要があるとしても、受忍限度を超える損害が生じるというべきである。 Ⅰ 原告らの地区計画上の地位原告らのうち当事者目録原告欄第1記載の原告(原告桐朋学園)並びに同第4記載の原告らのうち原告P1、同P3、同P8、同P9、同P2及び同熊谷豊は、本件地区計画の対象地の地権者である。 上記地権者のうち原告桐朋学園は、本件地区計画の 載の原告(原告桐朋学園)並びに同第4記載の原告らのうち原告P1、同P3、同P8、同P9、同P2及び同熊谷豊は、本件地区計画の対象地の地権者である。 上記地権者のうち原告桐朋学園は、本件地区計画の対象地内の最大の土地を所有する地権者であり、本件建築条例の適用を受け、その所有土地に高さ20メートルを超える建築物を建築できないという制限を受けた者である。また、上記地権者のうち原告P1と同P2は高さ10メートルを超える建築物を、同P3と同P9は高さ20メートルを超える建築物を、それぞれその所有土地に建築できないという制限を受けた者である。 これらの原告らは、本件地区計画によって、国立の住民が築き、維持してきた大学通りの景観を守り、豊かな日照、圧迫感のない生活を確保するため、今後は高層建築物を建てられず、所有土地の価値が下落することとなることを十分理解し、納得したうえで、地権者として当該地区計画に同意した。 すなわち、本件地区計画の策定により、上記地権者は、自らの所有土地に高さ20メートル又は高さ10メートルを超える建築物を建築できないという制限を受けることを代償として、この代償と引換えに、優れた景観、豊かな日照、圧迫感のない生活等本件地区計画がもたらす利益を享受するという互換的利害関係に立つものである。 そして、本件地区計画による規制は、本件地区計画により履行されるべき個々人の義務は、地区内の他の者も同様の義務を履行することによって初めて、その行政目的を達成する。このような地区計画の性質により、本件地区計画により義務を負う者は、地区内の他の者が同様の義務を負うことによって受ける利益を、法的な利益として主張することができ、地域の特性を破壊する、規制に違反する建築を防止・排除して地域の特性を回復することができると解すべきである。 そうする 同様の義務を負うことによって受ける利益を、法的な利益として主張することができ、地域の特性を破壊する、規制に違反する建築を防止・排除して地域の特性を回復することができると解すべきである。 そうすると、上記地権者は、そもそも本件建物による被害の存否と程度にかかわらず、本件地区計画上の地位に基づき、被告建築指導事務所長に対し、本件建物について是正命令を発令すべきことを求める行政介入請求権を有するというべきである。 したがって、上記地権者である原告らが被告建築指導事務所長に対し本件是正命令の発令を求める本件義務付け請求は、上記地権者が本件建物により被る被害の存否や程度如何にかかわらず適法である。 Ⅱ 受忍限度と地域性との関係受忍限度の判断においては、その判断要素として、地域性、加害建物と被害建物の各用途、公法的規制の有無等が挙げられている。 中でも、地域性は、重要な判断要素であるとされている。本件建物の敷地は、第2種中高層住居専用地域とされているものの、本来、第1種低層住居専用地域、第1種高度地区であるべき土地である。付近一帯は、現状、低層住宅地として閑静な町並みが形成されており、住民相互に違いの日照を尊重しながら豊かな日照を享受している。このような本件建物の敷地や付近一帯の歴史性、地域性、土地利用の現状等に鑑みると、本件地域の柱民に対しては、都心部の住宅密集地におけるような基準で、日照の受忍限度を考えるべきではなく、高度の日照の保護が与えられるべきである。 d 本件是正命令を発することに障害はないこと本件建物は、制限高度の2倍を超える高さを有する違法建築物であるから、被告建築指導事務所長が本件是正命令を発することは可能であるし、そのことに何らの障害もない。 しかも、本件是正命令は、明知地所に何らの不利益を及ぼすものではなく、仮に 有する違法建築物であるから、被告建築指導事務所長が本件是正命令を発することは可能であるし、そのことに何らの障害もない。 しかも、本件是正命令は、明知地所に何らの不利益を及ぼすものではなく、仮に何らかの不利益が生ずると仮定しても、それは明和地所が自ら招いた不利益であり、何ら保護に値する利益ではない。 e 自発的な違反解消の見込がないこと東京高裁決定が、本件建物のうち高さ20メートルを超える部分が違法建築物であると明確に判断したため、原告らは、明和地所に対し、平成13年1月、建築工事の中止と高さ20メートルを超える部分の自発的な撤去を求めた。ところが、明和地所は、前記東京高裁決定における判断が仮処分事件における理由中の判断であること、前記東京高裁決定の主文においては建築の禁止と既に建築済みの部分の撤去が命じられていないこと等を理由に、原告らの申入れに応じようとせず、現在も本件建物の建築工事を続行している。 したがって、本件において、明和地所が自発的に違反状態を解消する見込みは全くない。 f 是正命令の内容の一義的明確性本件において被告建築指導事務所長が発すべき是正命令の内容は、請求の趣旨第2項に記載したとおりであり、一義的に明確である。 すなわち、本件において、原告らの上記のような損害を未然に防止し、あるいは回復するには、本件建物の高さを20メートル以下に制限するほかなく、他に被告建築指導事務所長がとり得る是正命令はなく、どのような是正措置をとるかについて被告建築指導事務所長の裁量はないというべきである。 g 被告建築主事の先行行為に基づく被告建築指導事務所長の作為義そもそも、被告建築主事は、明和地所による本件建築確認申請にあたり、近隣住民との事前協議が成立しているかどうかを考慮すべきであり、前記のとおり、本件指導要綱に基づく近 く被告建築指導事務所長の作為義そもそも、被告建築主事は、明和地所による本件建築確認申請にあたり、近隣住民との事前協議が成立しているかどうかを考慮すべきであり、前記のとおり、本件指導要綱に基づく近隣住民との事前協議を遂げたいまま行われた本件建物の建築確認申請を受理すべきでなかった。 すなわち、建築主が行政指導に従えない旨を真撃かつ明確に表明するまでは行政指導を継続しつつ建築確認を留保することは違法でなく、さらに建築主の上記内容の真摯かつ明確な表明があっても、当該建築主が受ける不利益と右行政指導が目的とする公益上の必要性とを比較衡量して建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反する場合には、行政指導を継続しつつ建築確認を留保することは違法でないというべきである。 本件において、明和地所は被告建築主事に対し、平成11年12月2日、法定期間内(建築確認申請受理から21日以内)に処分をなすよう求めるとともに、東京都の行政指導には従えない旨の上申書を提出しているが、①当該上申書が提出された時点において本件建築確認申請は現に受理されていなかったうえ、②本件建築確認申請が受理された平成11年12月3日の1週間後である同月10日、明和地所は本件指導要綱に基づいて国立市に対して事業計画事前審査願を提出していることから、行政指導への不服従の意思が真撃であるかどうかについて、なお確認する必要があった。 さらに、被告建築主事が建築確認を留保しても、現に工事を開始していなかった明和地所に生じる不利益は、開始後に本件工事を差し止められ、あるいは完成部分の除却を命じられた場合に比して、格段に軽微であった。これに対して本件建物が建築されることにより生ずる原告らの不利益は前述のとおり重大かつ回復し難いものである。したがって、明和地所の行政指導に対する不協力は社会通念 た場合に比して、格段に軽微であった。これに対して本件建物が建築されることにより生ずる原告らの不利益は前述のとおり重大かつ回復し難いものである。したがって、明和地所の行政指導に対する不協力は社会通念上正義の観念に反するものであった。 したがって、本件においては、被告建築主事が行政指導を継続しつっ建築確認を適法に留保することが可能であったし、国立市という地域の特殊性、本件確認申請がなされた当時の住民の反対運動の状況、国立市の対応等にかんがみれば、被告建築主事には、行政指導を継続しつつ建築確認を留保すべき義務があったというべきである。 ところが、被告建築主事は、上記経緯を近隣住民、原告桐朋学園等利害関係人に何ら照会することなく、漫然と本件建築確認をなしたのであり、被告建築主事には事実確認を怠り、建築確認処分について認められる時期に関する裁量権の行使を誤った違法がある。 このように、被告建築主事が違法な建築確認をなした本件においては、事後的に違法建築物の出現を規制すべき権限を委ねられている被告建築指導事務所長が本件是正命令を発すべき必要性はいっそう高まるというべきであり、被告建築主事と一体をなす被告建築指導事務所長には被告建築主事の違法な先行行為に基づき本件是正命令を発する義務が生じるというべきである。 (イ) 緊急性本件建築工事を放置することにより、原告らの上記のような重大な損害が発生、拡大し、特に、交通事故に遭遇する危険性やプライバシー侵害は、本件建物が完成し検査済証が交付されることによって具体的現実的に発生する。 したがって、これを防止するためには、一刻も早く本件建築工事を禁止、是正する必要がある。本件建築工事が時々刻々と進行し、原告らに生じる被害が時々刻々と増大している現時点において、被告建築指導事務所長は本件是正命令を発す 止するためには、一刻も早く本件建築工事を禁止、是正する必要がある。本件建築工事が時々刻々と進行し、原告らに生じる被害が時々刻々と増大している現時点において、被告建築指導事務所長は本件是正命令を発するタイミングに関する裁量を有しない。 (ウ) 補充性被告建築指導事務所長が本件是正命令を発すべきか否かに関して、原告らが取消訴訟を提起する余地はなく、補充性が認められることは明らかである。 被告らは、原告らが別件の民事訴訟として、明和地所らに対して建築物撤去等請求訴訟を提起しているから、本件訴訟が不適法になると主張するが、民事訴訟と行政事件訴訟とはそれぞれ要件も効果も異にしているから、民事訴訟と行政事件訴訟との間で補充性を検討することは誤りである。 (3) 本件予防的不作為請求についてア予防的不作為請求訴訟の適法性要件未だ処分がなされていない段階において、将来なされるであろうと予測される行政処分を予防する訴訟(いわゆる予防訴訟ないし予防的不作為請求訴訟)については、予め裁判所の介入を必要とするだけの訴えの客観的利益が必要であるといわれている。 そして、この点について、判例上、処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情が要求されている。学説も、一般に、①当該行政処分が行われる蓋然性があること、②当該行政処分が違法であることが明白であること、③行政処分が行われると回復し難い損害が生ずること、④損害を回避するための他の適切な法的手段がないことを要件としている。 イ本件予防的不作為請求の適法性本件建物は、「木造以外の建築物で二以上の階数を有…するもの」(建築基準法6条1項3号)に該当するから、建築主である明和地所は 法的手段がないことを要件としている。 イ本件予防的不作為請求の適法性本件建物は、「木造以外の建築物で二以上の階数を有…するもの」(建築基準法6条1項3号)に該当するから、建築主である明和地所は、被告建築主事から本件建物についての検査済証の交付を受けた後でなければ、これを使用し、又は使用させることはできない(同法7条の6第1項)。 そこで、本件における訴えの客観的利益の有無をみると、①被告建築主事が本件建物について検査済証を交付される高度の蓋然性が存在すること、②本件建物に対して検査済証を交付することが違法であることは明白であること、③本件建物について検査済証が交付されると原告らに回復し難い損害が生ずること、④この損害の発生を回避するためには被告建築主事に対して本件建物についての検査済証の交付を禁止するほか適切な手段がないことから、本件においては予防訴訟が許容されるというべきである。 (ア) 検査済証が交付される蓋然性被告建築主事は、原告らが東京高裁決定を携えて、本件是正命令の発令を求めた際、行政実務における解釈によれば本件建物は適法であり、完成すれば検査済証を交付する旨を断言していた。 (イ) 検査済証交付の違法性前記のとおり、本件建物が高さ20メートルを超える部分において建築基準法に適合しない違法建築物であることは明らかである。そして、明和地所は、テレビコマーシャルや立看板で、本件建物の年内完成、初春発売を具体的に宣伝し、販売準備活動をさかんに行っているから、明和地所が任意に本件建物を高さ20メートル以下に縮小することは現実的に想定し難い。 したがって、本件建物が建築基準関係規定に適合していないから、本件建物について、検査済証を交付することは明らかに違法である。 さらに、平成12年2月1日時点における本件建物建築工事の進 定し難い。 したがって、本件建物が建築基準関係規定に適合していないから、本件建物について、検査済証を交付することは明らかに違法である。 さらに、平成12年2月1日時点における本件建物建築工事の進捗状況について、被告建築主事は現場に臨むなどの方法による調査、確認をしていないのであって、被告建築主事は本件建物が建築基準関係規定に適合することの根拠資料を有していないから、本件建物についての検査済証の交付は、根拠資料による裏付けがないというほかない。 (ウ) 回復し難い重大な損害の発生被告建築主事が、本件建物について検査済証を交付した場合、本件建物の使用が具体的に開始されることとなり、現時点においては危惧されるにとどまっているプライバシーの侵害や交通事故に遭遇する危険性の増大といった不利益が現実化する。また、日照阻害、景観破壊などは入居により侵害態様がより強固となり固定化される。さらに、本件建物について使用行為が開始されることにより、その存在自体が既成事実と化し、本件是正命令の請求自体が困難となる。 被告らは、被害の回復がいかに困難であろうとも、事後的に回復可能であれば予防的不作為訴訟は許容されないと主張するが、景観破壊、日照阻害、教育環境破壊などは金銭賠償では回復できない性質のものである。また、違法の重大性に鑑みれば受忍限度ははるかに超えるし、本件建築条例の立法目的が無に帰することになる。 以上によれば、原告らは被告建築主事が本件建物について検査済証を交付することにより回復し難い損害を被ることとなる。 (エ) 他に適切な救済手段がないこと原告らに上記損害が発生するのを回避するためには、被告建築主事に対し本件建物についての検査済証の交付を禁じるほかに適切な手段が存在しない。 (オ) 訴えの成熟性一般に、いわゆる予防的不作為請求訴 原告らに上記損害が発生するのを回避するためには、被告建築主事に対し本件建物についての検査済証の交付を禁じるほかに適切な手段が存在しない。 (オ) 訴えの成熟性一般に、いわゆる予防的不作為請求訴訟の適法性を限定する根拠としては、行政の第一次的判断権を尊重しなければならないという点が挙げられており、被告は、本件検査済証を交付するか否かについても、被告建築主事の第一次的判断権を留保する必要があると主張する。 しかし、本件においては、以下のとおり、被告建築主事の第一次的判断権を尊重すべきとはいえない。 すなわち、本件で問題となっているのは検査済証の交付処分である。検査済証交付の過程は、建物が完成して完了検査がなされ、建築主から申請があれば、建物が建築基準法に適合している限り必ず交付されるという構造になっている。建築主事には検査済証を交付するか否かの裁量の余地はない。すなわち、建築物が建築基準関係法令に適合しているか否かは、一義的に確定可能である建築基準法令に適合しているか否かの判断に際しては、一部技術的専門的な知見を要する部分もあるが、何も建築主事に限らずとも、技術的専門的な知見を有する者であれば何人といえども適合不適合を判断できる。要するに、検査済証を交付するか否かについて建築主事に裁量が認められているわけではないし、建築基準法令に適合するか否かの事実認定に関して裁量に相当する権限が建築主事に与えられているわけでもない。検査済証交付処分はいかなる点から見ても裁量処分ではない。 ところが、建築主の明和地所が自発的に建築基準法違反状態を解消する見込みは全くなく、建物が完成すれば、明和地所が検査済証交付の申請を行うことは確実であり、これを受ける被告建築主事は、本件建物が建築基準法違反建物ではないと広言し、検査済証の交付申請があれば交付する 込みは全くなく、建物が完成すれば、明和地所が検査済証交付の申請を行うことは確実であり、これを受ける被告建築主事は、本件建物が建築基準法違反建物ではないと広言し、検査済証の交付申請があれば交付すると明言している。しかも、明和地所は、現在も本件建物の建築工事を強行し、本件建物はほぼ完成に近づいている。検査済証の交付が行われることは目前に差し迫っているのである。 以上のような事情によれば、本件においては、検査済証の交付は、確実かつ明白であり、切追しているおり、行政の第一次的判断権が行使されたと同視し得る事情が顕著である。 したがって、本件予防的不作為請求は、訴えとして成熟しており、適法である。 (被告らの主張)(1) 原告適格ア行政事件訴訟における原告適格行政事件訴訟法9条は、行政処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者に限り提起することができる旨規定するところ、ここにいう法律上の利益を有する者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られると解されている。 そして、この法律上保護された利益とは、当該処分の根拠となった行政法規が、他の目的、特に公益性の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果、たまたま一定の者が受けることになる反射的利益ないし事実上の利益とは区別されるべきものである。 すなわち、原告らに原告適格が認められるのは、建築基準関係法令が原告らに対し、原告らが主張する権利等について、一般抽象的にではなく、個別的かつ具体的に保護することを目的としている場合に限られるものである。 イ原告らの原告適格(ア) 原告らが主張する生活環境上の利益のうち、日照は、建築基準 権利等について、一般抽象的にではなく、個別的かつ具体的に保護することを目的としている場合に限られるものである。 イ原告らの原告適格(ア) 原告らが主張する生活環境上の利益のうち、日照は、建築基準法により保護された利益であるといえるが、その余の利益は、建築基準法上は、同法が公共の福祉増進を目的とする結果、一定の者が受ける反射的利益にすぎない。 (イ) ところが、本件建物によって、日照が直接阻害されることを具体的に主張するのは、原告らのうち、原告桐朋学園と同P3、同P6、同P7、同P5のみである。 したがって、上記原告桐朋学園、同P3、同P10、同P7、同P5を除く原告らには、原告適格がない。 仮に、建築基準法が、隣接地住民の日照の他に、通風、安全、衛生上の利益を具体的利益として保護するとしても、原告らの全ては、これらの利益を具体的に主張していないから、この点においても、原告らの原告適格は認められない。 (2) 無名抗告訴訟の要件原告らの請求の趣旨第1項ないし第3項は、義務付け訴訟であれ、予防的不作為請求訴訟であれ、無名抗告訴訟として提起されているものであり、無名抗告訴訟が適法に成立するためには、①行政庁が処分をなすべきこと又はなすべからざることについて法律上覊束されており行政庁に自由裁量の余地が全く残されていないなど、第一次的判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要ではないこと(行政庁の作為義務の一義的明白性=明白性の要件)、②事前の救済を認めないで、事後的救済を図るのでは、回復し難い重大な損害を被るなど、事前救済の必要性が顕著であること(緊急性の要件)、③他に適切な救済方法がないこと(補充性の要件)の3要件を満たす必要があるものである。 このように、無名抗告訴訟は、法定抗告訴訟や民事訴訟によっては救済されない場合の補充的な訴 と(緊急性の要件)、③他に適切な救済方法がないこと(補充性の要件)の3要件を満たす必要があるものである。 このように、無名抗告訴訟は、法定抗告訴訟や民事訴訟によっては救済されない場合の補充的な訴訟形式であり、特に行政事件としては、行政事件訴訟法の処分取消訴訟中心主義の例外にあたるものであるから、その要件は厳格に解するべきである。 (3) 本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求について本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求に係る訴えは、以下のとおり、上記の一義的明白性、緊急性、補充性のいずれの要件も満たしておらず、不適法であり、却下されるべきである。 ア一義的明白性(ア) 被告建築指導事務所長の自由裁量建築基準法は、建物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものであり(同法1条)、同法9条1項により、是正命令の権限が特定行政庁に付与された趣旨も、その行使によって、上記行政目的の達成に寄与すべきことにあるから、特定行政庁は、かかる見地に立った上で、同法に違反する建築物又は工作物の違反の内容及び程度並びにこれにより近隣住民の受ける被害の内容及び程度、是正命令により建築主の受ける損失の程度、建築主による自発的違反解消措置のとられる見込み等諸般の事椿を総合考慮した上で、その合理的な判断により、上記各権限の行使をするか否か、行使するとした場合は、いつ、いかなる方法で行うかなどを決するべきものであり、したがって、上記各権限の行使及び不行使については、行政庁の広範な裁量に委ねられていると解される。 そうすると、本件建物について是正命令等を発するか否かは、被告建築指導事務所長が、その自由裁量により、上記諸般の事情を総合的に考慮した上で、 いては、行政庁の広範な裁量に委ねられていると解される。 そうすると、本件建物について是正命令等を発するか否かは、被告建築指導事務所長が、その自由裁量により、上記諸般の事情を総合的に考慮した上で、合理的な判断により決すべきことであるから、その第一次的判断権は、被告建築指導事務所長に留保されており、被告建築指導事務所長が本件是正命令を発すべきことが一義的に明白であるとはいえない。 (イ) 裁量権収縮論について原告らは、本件是正命令権限の行使、不行使につき、被告建築指導事務所長が有する裁量権も、その不行使によって原告らの被る損害が重大であり、裁量権が収縮して権限を行使すべき法的義務が生じるから、原告らは、被告建築指導事務所長に対し、上記権限の行使を請求し得ると主張する。 しかし、裁量権収縮理論が仮に認められるとしても、以下のとおり、①そもそも本件建物は適法であること、②原告らが受ける本件建物による生活利益の侵害の程度が軽微であることから、被告建築指導事務所長の裁量権が収縮したとはいえない。 a 本件建物は適法であること(a) 建築基準法3条2項の趣旨建築基準法3条2項によれば、「この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替えの工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又は、これらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は適用しない。」とされている。 同項の趣旨は、既存建築物や現に工事中の建築物に対して、建築の時点で適法であった建築物が、その後に施行又は適用されるに至った基準法令に適合しない場合に、その建築物を違反建築物として取扱うことは、建築物の所有者 は、既存建築物や現に工事中の建築物に対して、建築の時点で適法であった建築物が、その後に施行又は適用されるに至った基準法令に適合しない場合に、その建築物を違反建築物として取扱うことは、建築物の所有者等に対して酷であることから、そのような場合には、当該建築物及びその敷地に対しては、低触する新規定の適用を除外することとして救済するものとしたものである。 そして、一般的に、建築工事は、用地取得、建築設計図の作成、関係行政機関等との協議、建築確認申請、建築確認通知の取得等の各手続を経て、建物の建築が適法に行われるものであり、建築主は、着工までに多大な時間と費用をかけていることが通常である。そこで、法は、既得権の保護、法的安定の観点から、原則として、建築後又は着工後の規定を適用しないこととしたものである。 したがって、建築主の既得権の保護と適用となるべき建築基準法及び同法に基づく命令並びに条例の規定に対する法的安定性の確保を鑑みれば、「現に建築の工事中の建築物」として、建築基準法3条2項が適用となる時点は、建築工事において、具体的な建築物の規模、用途等が決定し、もはや建築変更が容易ではないと外形的に看取できる工程の段階をいうと解される。 ところで、根切り工事とは、「建造物の基礎又は地下室部分を築造するために地盤面以下の土地を掘削して所要の空間を造ること」をいうものであり、これは、既に決定した設計図に基づき敷地内の特定の位置に、建物の底面の形に合わせて掘削を行い、発生した土を搬出し、その位置に建築物の基礎を設置することを目的とする工事である。そして、根切り工事は、基礎や地階部分の建築計画に従って、根切り工事の実施計画が策定されることから、建築計画の変更に伴い基礎等の計画が変更された場合には根切り工事の変更が不可欠であり、そのために、新たなコスト 切り工事は、基礎や地階部分の建築計画に従って、根切り工事の実施計画が策定されることから、建築計画の変更に伴い基礎等の計画が変更された場合には根切り工事の変更が不可欠であり、そのために、新たなコスト負担や工事変更のための準備作業が必要となる。 そうすると、工事着工後の法令改正に伴う建築主の予期せぬ損失を回避するという既得権保護を目的とする建築基準法3条2項の趣旨に鑑みれば、根切り工事は、建築物そのものの工事と密接不可分、かつ、一連の工程と評価できるものであり、建築工事の第一段階というべきであるから、根切り工事は、建築工事の着工にあたり、根切り工事の進行段階に達した建築物は、「現に建築の工事中の建築物」に該当すると解すべきである。 このように解しても、根切り工事が一定の深さまで進捗し、山留めH鋼の打設が開始されている状態は、客観的に明らかであるから、これをもって「現に建築工事中の建築物」が存在するといっても、人によって、あるいは事件によって、その適用結果が異なることはないし、一般的確実性を害することもない。 なお、建築基準法3条2項の「現に存する建築物」は、その存在自体が客観的に明らかであるから、建築確認を得ているかどうかは問わないとしても、「現に建築工事中の建築物」については、建築確認を得ていなければ、どのような建築物の建築が計画されているのか客観的に知ることはできないから、建築確認を得た計画建築物について、現に建築工事中である場合に、本条項の適用があると解すべきである。 (b) 本件建物が、本件建築条例施行時に、「現に建築の工事中」であったこと本件建物は、平成12年2月1日の改正本件建築条例施行時において、根切り工事による掘削が一定の深さまで進捗し、法面の崩落を防止するための山留めH鋼の打設を開始しており、建築工事に着工してい こと本件建物は、平成12年2月1日の改正本件建築条例施行時において、根切り工事による掘削が一定の深さまで進捗し、法面の崩落を防止するための山留めH鋼の打設を開始しており、建築工事に着工しているということができる。そして、その後の工事の進捗状況からみても、建築工事が継続して行われていることが、外形的、客観的にみて看取できるものである。 そうすると、本件建物は、平成12年2月1日時点において、建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中の建築物」に該当し、改正本件建築条例の建物の高さ制限の適用が除外となることは明らかであるから、本件建物の高さ20メートルを超える部分についても、適法な建築物である。 したがって、被告建築揖導事務所長が、本件建物が建築基準関係法令に違反するとして、是正命令等を発するべき理由は、何ら存しないものであるから、被告建築指導事務所長が是正命令等を発すべき、一義的明白な義務が存在しないことは明らかである。 b 原告らが本件建物により受ける損害が軽微であること仮に、本件建物の高さ20メートルを超える部分が違法であったとしても、以下のとおり、原告らの主張する生活利益の被害は、いずれも受忍限度の範囲内のものであるか、被告建築指導事務所長が是正命令権の裁量判断において考慮すべき利益にあたらないものであるから、被告建築指導事務所長が是正命令権を行使するか否かは、未だ裁量の範囲内にあるというべきである。 すなわち、仮に、裁量権の収縮理論をとったとしても、原告らの主張する損害は極めて、軽微なものであり、これによって被告建築指導事務所長の裁量権が収縮することはない。 (a) 是正命令権限の行使、不行使の判断において考慮されるべき、第三者の利益侵害被告建築指導事務所長が、本件是正命令権限を行使すべきか否かについて、判断する 長の裁量権が収縮することはない。 (a) 是正命令権限の行使、不行使の判断において考慮されるべき、第三者の利益侵害被告建築指導事務所長が、本件是正命令権限を行使すべきか否かについて、判断する際に考慮すべき第三者の利益は、建築基準法及びその関係法規によって保護された利益の侵害の有無とその程度のみであるというべきである。 (b) 原告らが主張する損害の法的性質原告らの主張する権利侵害のうち、建築基準法及びその関係法規によって保護された法的利益といえるのは、日照のみである。 すなわち、環境権、眺望権、景観、その他の生活環境の悪化、プライバシーに関する権利、その他の原告らが主張する生活上の利益は、いずれも、建築基準法及びその関係法規によって保護された利益ではない。 すなわち、建築基準法に立ち返ってみても、同法の諸規定のうち、都市計画区域内の建築物の高さに関する諸規定(同法第3章第4節中の諸規定)は、主として都市計画の観点からその区域内の建築秩序を維持して都市環境を整備保全し、これを向上するという公共の福祉増進の目的を有することは否めないところであるが、上記規定のうち、建築基準法56条の2の規定は、上記目的とともに、住民が都市計画区域内において快適で文化的な生活をなし得るよう、これに必要な日照を最低限度確保して、その利益を保護し、上記利益に対する侵害防止を図る目的をも有していることは明らかである。また、建築基準法56条の2の規定は建築物の高さを規制することによってその周辺住民の日照を個別的かつ具体的に保護したものということができる。 しかし、建築基準法中、原告らの主張するような生活環境上の利益のうち、日照を除くその余の利益については、これを個別的かつ具体的に保護した規定を見出し難い。 これに対し、原告らは、原告らの主張する環境権、景 建築基準法中、原告らの主張するような生活環境上の利益のうち、日照を除くその余の利益については、これを個別的かつ具体的に保護した規定を見出し難い。 これに対し、原告らは、原告らの主張する環境権、景観等は、景観条例、紛争予防条例、本件建築条例により具体的に保護された利益であると主張するが、以下のとおり、景観条例及び紛争予防条例は、建築基準関係法規ではなく、また、特定の者の利益を法令上保護する趣旨の規定ではなく、本件建築条例も、建築物の高さの最高限度を制限するにすぎず、日照以外の利益を個人に対し具体的に保護した規定と解することはできない。 Ⅰ 景観条例について景観条例は、国立市の都市景観の形成に関する基本的事項を定めることにより、「文教都市くにたち」にふさわしい美しい都市景観を守り、育て、つくることを目的とし(1条)、市民、行政、事業者など多くの人と組織の自覚と協力(3条、7条、9条)によって、都市景観の形成が推進されるように制定されたものと解される。 しかし、景観条例は、市長が、事業者等に対して、行政指導によって、国立市の政策目標に合致するように事業者等を誘導し、指導に従わないときには、その事実を公表できるとするにすぎないものである。 そうすると、景観条例は、国立市の政策判断により、事業者等に協力を求め、都市景観の保護等を目的として制定されたものであるから、建築物について、直接、建築制限等の規制効果を及ぼすものではなく、建築基準関係法令ではなく、また、近隣の個々の住民の権利・利益を具体的に保護するものではないというべきである。 Ⅱ 紛争予防条例紛争予防条例は、中高層建築物の建築に係る計画の事前公開並びに紛争のあっせん及び調停に関し必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域における健全な生活環境の維持及び向 防条例紛争予防条例は、中高層建築物の建築に係る計画の事前公開並びに紛争のあっせん及び調停に関し必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域における健全な生活環境の維持及び向上に資することを目的としている(1条)。 すなわち、紛争予防条例は、事前に計画の公開を行うことにより、紛争を予防するなどして、建築主と近隣関係住民との紛争の予防及び自主的な紛争の解決を図ることを目的とするものである。 そうすると、紛争予防条例は、建築物について、建築制限等の規制効果を直接及ぼすものではなく、建築基準関係法令ではなく、また、近隣の個々の住民の権利・利益を保護するものでもない。 Ⅲ 都市計画法と地区計画都市計画法12条の4において規定される地区計画とは、良好な市街地の環境を形成していくためには、細路地、小公園等の宅地周りの施設と建築物の形態、敷地等に関する事項を一体的に定めることのできる計画制度を設け、これに基づき開発行為、建築行為等を誘導し、規制していく必要から策定されるものである。 そして、本件地区計画は、中層住宅地に建築する建築物の高さを20メートルに制限することにより、低中層住宅地区及び学園地区の環境を維持保全し、大学通り沿道の都市景観に配慮したまちづくりを形成することを目的とし、良好な住宅地区及び学園地区への誘導を図るため、建築物等の敷地面積の最低限度、建築物等の高さの最高限度、建築物等の形態及び意匠の制限及び垣又はさくの構造の制限を定めることを建物等の整備方針としているものである。 そうすると、本件地区計画は、地区計画内全体の調和のとれた環境及び都市景観の維持及びその育成を目的とするものと解され、本件地区計画は、特定の利益を保護したものではないことは、明らかである。 さらに、本件建築条例は、建築基準法68条の2 全体の調和のとれた環境及び都市景観の維持及びその育成を目的とするものと解され、本件地区計画は、特定の利益を保護したものではないことは、明らかである。 さらに、本件建築条例は、建築基準法68条の2第1項の規定に基づいて制定され、地区計画の区域内における建築物の用途等に関する制限を定めることにより、適正かつ合理的な土地利用を図り、もって良好な都市環境を確保することを目的とし(同条例1条)、国立市が定めた地区整備計画区域について、その区域内に建築してはならない建築物、容積率の最高限度、建築物の高さの最高限度等を定めているにすぎないのである。 したがって、本件地区計画を本件建築条例に盛り込むことにより、建築基準法68条の2第1項の規定に基づき、建築物等の高さを20メートル以内とすることは、あくまでも建築物等の高さについて規定するものにすぎず、本件地区計画内に居住する住民に対し、特定の利益を供与するものではない。 (c) 原告らの損害が軽微であることについて建築基準法及び関係法規によって保護された利益である日照について、本件建物によって原告らが受ける被害は、以下のとおり、極めて軽微である。 そして、本件建物によって侵害されると原告らが主張する、環境、景観は、いずれも抽象的、主観的なものにとどまり、そもそも、法律上保護された利益といい得るほどに成熟したものではないから、被告建築指導事務所長が本件是正命令を発するか否かの裁量判断における考慮対象とはなり得ないものである。 さらに、プライバシー、その他の生活利益の侵害については、前記のとおり、建築基準法及びその関係法令によって保護された利益ではないので、被告建築指導事務所長の本件裁量判断における考慮の対象にはならないというべきであるが、仮に考慮すべきであるとしても、本件においては、具体的な被害 法及びその関係法令によって保護された利益ではないので、被告建築指導事務所長の本件裁量判断における考慮の対象にはならないというべきであるが、仮に考慮すべきであるとしても、本件においては、具体的な被害がないか、あるいは極めて軽微な被害であって、受忍限度の範囲内の被害であるから、被告建築指導事務所長の上記裁量権を収縮させるものにはなり得ない。 Ⅰ 環境破壊及び景観喪失について原告らの主張する環境権、景観権及び眺望権は、法律上認められた権利ではない。 いわゆる環境権について、それ自体を認めた判例は存在しない。ただ、環境権中の人格権と目しうるようなものについては、公法上、あるいは私法上の法理と手続に従って、保護されるべきものと解される。こうした人格権と目しえないような環境権の実現については、積極的な立法的・行政的措置を待たなければならず、景観権及び眺望権についても同様に解すべきである。 すなわち、憲法上明文で規定されていない権利が、憲法の解釈上、基本的人権として保障されているというためには、当該権利が憲法上是認されているか否かの前に、その権利の内容(権利主体を含む。)が一義的に明確なものであって、権利として保護に値する程度に成熟したものであり、その権利を保障することによってその権利主体が国家権力あるいは他の国民に対してどのような請求ができるのかが明確になっている必要がある。 しかしながら、原告らの主張するこれら権利、その他生活環境の悪化(ビル風の発生、圧迫感、天空狭窄の被害、交通事故に遭遇する危険性の増大)は法律上の権利としての保護に値する程度に成熟したものとはいえないものである。 したがって、原告らの主張する権利侵害のうち、日照に関する主張以外の環境権、景観権、眺望権、プライバシーに関する権利、その他の利益は、建築基準法によって保護 成熟したものとはいえないものである。 したがって、原告らの主張する権利侵害のうち、日照に関する主張以外の環境権、景観権、眺望権、プライバシーに関する権利、その他の利益は、建築基準法によって保護された利益でないことは明らかである。 原告らは、環境権の侵害、教育環境の破壊、学習環境の破壊を主張するが、これらが、法律上保護された利益及び法が保護する利益ではなく、いずれも、抽象的であるから、被告建築指導事務所長の裁量権の濫用の有無について、論じるほど成熟した権利とはいい難い。 原告らは、景観権を人格的権利として、高さ44メートルの本件建物により、大学通りの景観が損なわれるとして、原告及び国立市民の景観利益の侵害を主張する。 しかしながら、景観権は、その権利として保護に値する程度に成熟したものとなっているとはいい難く、社会通念上、権利内容が成熟し、一義的かつ明確に定まっているとはいえない。 すなわち、原告らの主張する景観とは、本件地区計画内において、建築物の高さが20メートル以内に規制されることによって得られる、いわば、街並みの調和性を利益としているものに思われるが、その利益自体、法律上の利益でなく、極めて主観的・抽象的な利益にすぎず、被告建築指導事務訴長の上記裁量判断において、考慮の対象とはなり得ない。 Ⅱ 日照被害について原告らのうち、日照被害を主張する原告桐朋学園、同P5、同P6、同P7及び同P3については、いずれも、日影条例の定める規制値内にあり、原告らが主張する日照被害は受忍限度の範囲内のものである。 すなわち、1年のうち、もっとも日影が生じる冬至日の午前8時から午後4時までの8時間中、少なくとも4時間以上の日照が確保されているのであり、本件建物による日照被害により、上記原告らに対して著しい生命・身体への影響、財産上の損 も日影が生じる冬至日の午前8時から午後4時までの8時間中、少なくとも4時間以上の日照が確保されているのであり、本件建物による日照被害により、上記原告らに対して著しい生命・身体への影響、財産上の損害を与えるものではない。 そして、原告らの主張する日照被害は、楽しみにしている西日がささなくなるなど、いずれも、主観的・抽象的な被害を主張するにすぎない。 したがって、被告建築指導事務所長の上記裁量権を収縮させるほどの法益侵害は認められない。 Ⅲ その他生活環境の悪化について原告らが主張するビル風の発生による被害及び交通事故の遭遇の危険性の増大は、確かに、本件建物の完成によって、ビル風が発生したり、交通量が増大することはあるかもしれないが、これらにより、原告らが被害を受けるとする被害は、あくまでも予測の域を出るものではなく、その蓋然性は明らかでない。 また、原告らは、圧迫感、天空狭窄の被害を主張するが、本件建物による圧迫感の実態は、受忍限度を超えるものとはいえない。 Ⅳ プライバシーの侵害についてプライバシーの権利とは、「家庭内の私事その他個人の私生活に係る事柄、又はそれを他人や社会から知られず、干渉されない権利」をいうものであり、学校教育の場において、教室の状況を第三者に見られることをもって、これをプライバシーの権利の侵害として考えることは適当とはいえないし、そもそも、本件建物の壁面から、最も近い桐朋学園男子部門の教室まで、道路及びグラウンドを挟んで、直線距離にしておよそ120メートルであるところ、社会通念上、これだけの距離があれば、教室中の詳細を窺うことはできない。 また、本件建物の入居者により、当事者目録第4の1・2記載の原告らのプライバシーが侵害され得る状態になるとしても、このような近隣住宅から日常生活の様子の一部が窺えるよ の詳細を窺うことはできない。 また、本件建物の入居者により、当事者目録第4の1・2記載の原告らのプライバシーが侵害され得る状態になるとしても、このような近隣住宅から日常生活の様子の一部が窺えるような状況は、日常生活においてはある程度やむを得ない。 c 結論以上のとおり、本件建物は適法であり、原告らが受ける生活利益の侵害の程度は軽微であるから、被告建築指導事務所長の裁量権が収縮することはなく、本件義務付け請求は、無名抗告訴訟の要件たる明白性の要件を満たさないものである。 イ緊急性原告らの主張する損害は、事後的救済を図るのでは回復し難い損害ではなく、また、生命、身体に直接影響するような重大な損害でもないから、司法による事前救済の必要性が顕著とはいえず、無名抗告訴訟の要件としての緊急性の要件を満たしていない。 すなわち、前記のとおり、原告らの主張する環境権、景観権、眺望権は、そもそも、法律上認められた権利ではなく、仮に、法律上保護された利益だとしても、建築基準法の保護する利益にはあたらないから、建築基準法上の行政庁の権限行使についての無名抗告訴訟における緊急性の要件の有無の判断要素とはならないものである。また、建築基準法で保護された利益である日照については、上記のとおり、建築基準法及び日影条例の基準には適合しており、原告らが被る日照被害は、極めて軽微であって、回復し難い重大な損害にはあたらないというべきである。 以上によれば、本件において、回復し難い重大な損害はなく、緊急性の要件を満たさない。 ウ補充性本件建物については、別訴建築物撤去等請求事件が提起され、同原告らは、本件建物の高さ20メートルを超える部分が本件建築条例に違反していることの確認、本件建物の高さ20メートルを超える部分の建築を禁止すること、同部分の撤去をする 撤去等請求事件が提起され、同原告らは、本件建物の高さ20メートルを超える部分が本件建築条例に違反していることの確認、本件建物の高さ20メートルを超える部分の建築を禁止すること、同部分の撤去をすること、1000万円の損害賠償などを請求しているものである。 すなわち、上記別訴事件には本訴と同趣旨の請求があることから、これに別訴原告らが勝訴することにより、本件原告らが主張する損害を防止又は回復することは可能であるから、本訴のように行政庁に第一次的判断権・裁量権が存する場合において、無名抗告訴訟によって、損害の防止又は回復を求めるまでもないことは明らかである。 したがって、本訴以外に適切な救済方法があり、本訴によらなければ原告らが救済されないという事情は存在しないことは明らかであるから、本件義務付け請求について、補充性の要件を満たさない。 エ結論以上によれば、本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求に係る訴えは、無名抗告訴訟の要件である明白性、緊急性、補充性のいずれの要件も欠いており、不適法であるから、却下されるべきである。 (4) 本件予防的不作為請求について原告らの上記請求は、予防的不作為請求と解されるところ、予防的不作為請求訴訟については、具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度の下においては、義務違反の結果として将来何らかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけで、その処分の発動を差し止めるため、事前に当該義務の存否の確定を求めることが当然に許されるわけではなく、当該義務の履行によって侵害を受ける権利の性質及び侵害の程度、違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし、当該処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、 度、違反に対する制裁としての不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし、当該処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めなければ著しく不相当な特段の事情がある場合は格別、そうでない限り、あらかじめ上記のような義務の存否の確定を求める法律上の利益を認めることはできないと解される。 ところが、本件において、上記のような予防的不作為請求訴訟を許容すべき特段の事情はなく、本件不作為義務の存否の確定を求める法律上の利益は認められない。 すなわち、原告らの主張する損害にかかる利益のうち、法的利益といえるのは、日照のみであるところ、日照の被害は、建築物の構造そのものから生ずるもので、是正命令や当事者の協議によらなければ排除できないものである。そして、検査済証の交付は、建築等の工事が完了した建築物及びその敷地が建築関係法規に適合していることを公権的に判断した結果を公証する行為であって、建築物の新築の場合にあっては、それを受けなければ当該建築物の使用を開始することができないという法的効果が付与されているにすぎない。 したがって、検査済証の交付と原告らの主張する日照の被害は何ら因果関係がなく、検査済証の不交付により、原告らの法的利益は回復されないから、原告らは、本件予防的不作為請求に係る訴えの利益を有しない。 また、本件予防的不作為請求は、無名抗告訴訟でもあるところ、下記のとおり、無名抗告訴訟の要件である、明白性、緊急性、補充性のいずれの要件も満たされていない。 以上によれば、本件予防的不作為請求に係る訴えは、不適法であり、却下されるべきである。 ア明白性建築基準法7条5項は、建築主事は、工事完了の検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が、建 以上によれば、本件予防的不作為請求に係る訴えは、不適法であり、却下されるべきである。 ア明白性建築基準法7条5項は、建築主事は、工事完了の検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が、建築基準関係法令に適合していることを認めたときは、建築主に検査済証を交付しねければならない旨規定する。 この場合、完了検査の内容は、当該建築物及びその敷地が建築完了の時に建築基準関係法令に適合しているか否かであり、対象建築物が確認処分どおり完成されたか否かではない。 そして、当該建築物及びその敷地が、建築基準関係法令に適合しているか否かは、一義的に明白なものではなく、建築主事の技術的・専門的な判断に委ねられているというべきである。 そして、建築主事は、当該建築物が建築基準関係法令に適合している場合には、検査済証を交付しなければならず、付近住民と建築主との間で、紛争があることを考慮して、検査済証の交付を拒否することは許されない。そのような他事考慮による検査済証の不交付は、建築主に対する不法行為となり得るものである。そもそも、前記のとおり、本件建物は、高さ20メートルを超える部分についても、適法な建築物である。 さらに、建築主事は、当該建築物が建築基準関係法令に適合しているか否かを技術的、専門的な観点から判断し、適合している場合には、検査済証を交付しなければならないとされている。 しかしながら、完了検査は、工事の完了後に行われるもので、現時点において、被告建築主事に対して検査済証の不交付を求める請求は、明白性の要件を欠き、不適法である。 したがって、本件建物が・建築基準関係法令に適合しているか否かは、被告建築主事の技術的、専門的判断に委ねられており、かつ、他事考慮は許されないものであるから、本件予防的不作為請求は、無名抗告訴訟の要件たる明白性 本件建物が・建築基準関係法令に適合しているか否かは、被告建築主事の技術的、専門的判断に委ねられており、かつ、他事考慮は許されないものであるから、本件予防的不作為請求は、無名抗告訴訟の要件たる明白性の要件を満たさないことは明らかである。 イ緊急性原告らの主張する日照以外の利益は、建築基準法の保護する利益には当たらない。また、本件建物による日影は、建築基準法及び日影条例の基準に適合しているものであり、その侵害の程度は重大ではない。 また、原告らの主張する損害は、その実質として、極めて軽微である。 仮に、本件建物が完成し、これにより予期せぬ損害が発生したとしても、民事上の解決方法として、当該完成建物の全部又は一部取り壊しによって、損害を払拭することは十分に可能である。したがって、原告らにおいて、事後において回復し難い重大な損害が差し迫っているものではない。 そうすると、原告らの主張する損害は、事後的救済を図るのでは回復し難い重大な損害とはいえず、司法による事前救済の必要性が顕著であるとはいえず、無名抗告訴訟の要件である緊急性の要件を満たしていない。 ウ補充性原告らは、明和地所を被告とする建築物撤去等請求事件を提起しており、この訴訟において、原告らが勝訴することにより、原告らが主張する損害の防止又は回復が可能であるから、現時点において被告建築主事を被告とする本件予防的不作為請求をする必要はない。すなわち、本件予防的不作為請求以外に適切な救済方法があるから、補充性の要件を満たしていない。 4 争点以上によれば、本件の主たる争点は次のとおりである。 (1) 本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否(2) 本件予防的不作為請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否第3 当裁判所の判断 1 本件不 である。 (1) 本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否(2) 本件予防的不作為請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否第3 当裁判所の判断 1 本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否(1) いわゆる義務付け訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟の適法要件本件義務付け請求は、被告建築指導事務所長が、建築基準法9条に基づいて請求の趣旨2(1)及び(2)記載の是正命令(以下「本件各是正命令」という。)を発令することを求めるものであって、行政庁の公権力の行使の発動を求める給付訴訟であり、本件不作為違法確認請求は、被告建築指導事務所長が本件各是正命令を発令しないことが違法であることの確認を求めるものであって、行政庁の公権力の不行使の違法を確認する確認訴訟であるが、いずれもその実質は、行政庁に対する公権力の行使を義務付けることを求める、いわゆる義務付け訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟と解される。 ところで、行政事件訴訟法3条1項は、同条2項ないし5項に定める法定抗告訴訟以外のいわゆる無名抗告訴訟についてもこれを否定する趣旨とは解されないから、無名抗告訴訟は、その訴えの性質に即して、一定の要件の下で許容されているというべきである。そして、義務付け訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟が許容されるためには、三権分立の原則からして、行政権の行使・不行使について行政庁の有する第一次的判断権が尊重されるべきものであること、同法は、法定抗告訴訟として4つ訴訟類型を定め、原則として、これらの法定訴訟によって国民の権利救済が図られることを予定していることなどからすれば、①行政庁が当該行政権を行使すべきこと又はすべきでないことが一義的に明白であって、行政庁の第一次的判断権を て、これらの法定訴訟によって国民の権利救済が図られることを予定していることなどからすれば、①行政庁が当該行政権を行使すべきこと又はすべきでないことが一義的に明白であって、行政庁の第一次的判断権を尊重することが重要でない場合(一義的明白性の要件)、②事前審査を認めないと、行政庁の作為又は不作為によって受ける損害が大きく、事前救済の必要性があること(緊急性の要件)、③他に適切な救済方法がないこと(補充性の要件)をいずれも満たしていることが必要であると解される。 そこで、本件において、本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る各訴えについて、これらの各要件を満たしているといえるか否かを順次検討する。 (2) 一義的明白性の要件についてア建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令の裁量性建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令は、特定行政庁(建築基準法2条36号)において、建築基準法が規定する行政目的達成のために、同法に違反する建築物又は建築物の敷地について、①違反の有無、内容及び程度、②違反によって阻害される行政目的の内容及び程度、③違反により近隣住民の受ける被害の内容及び程度、④是正命令により建築主の受ける不利益の程度、⑤建築主による自発的な違反解消措置のとられる見込み、⑥建築主に対する指導など他の手段による違反解消の見込みなどの諸般の事情を考慮した上で、その合理的な判断に基づいて、発せられるものであり、是正命令権限を行使するとした場合は、誰に対し、どのような内容の是正命令を発令するか、いつ是正命令を発令するか、どのような手続を経て是正命令を発令するか等を決した上で、行使されるものであり、上記のような各判断は、特定行政庁の裁量に委ねられていると解される。 しかしながら、このような行政庁に裁量が委ねられた行為についても、具体的事 命令を発令するか等を決した上で、行使されるものであり、上記のような各判断は、特定行政庁の裁量に委ねられていると解される。 しかしながら、このような行政庁に裁量が委ねられた行為についても、具体的事情の下において、当該権限が付与された趣旨・目的に照らし、当該権限を行使しないことが著しく不合理であり、裁量権の濫用・逸脱と認められるような特段の事情がある場合には、当該権限を行使すべき一義的に明白な義務があるというべきであり、この場合には、もはや行政庁の第一次的判断権を尊重することは重要でないというべきである。 イ本件における裁量判断の考慮事情そこで、本件において、被告建築指導事務所長が建築基準法9条1項に基づく本件各是正命令を発しないことが裁量権の濫用・逸脱と認められるような特段の事情があるか否かについて、裁量判断において考慮されるべき上記各事情に即して、具体的に検討する。 (ア) 本件建物が建築基準法に違反するか否か。 本件においては、そもそも、本件建物が、建築基準法に違反しているのか否かの点について、当事者間に争いがある。 すなわち、本件建物は、43.65メートルの高さを有し、建築基準法68条の2、本件建築条例の規定する高さ20メートルの制限に適合しない建築物であることは前提事実記載のとおりであるが、建築基準法3条2項によれば、建築基準法に基づく条例の施行の際現に建築の工事中の建築物が、その条例に適合しない場合においては、当該建築物に対しては、その条例が適用されないとされていることとの関係で、本件建物についても、本件建築条例に係る改正条例が施行された時点において「現に建築の工事中の建築物」と認められる状態にあったか否かにつき、前記のとおり、当事者双方の見解が対立しているものである。 a そこで、まず、建築基準法3条2項にいう「現に建 施行された時点において「現に建築の工事中の建築物」と認められる状態にあったか否かにつき、前記のとおり、当事者双方の見解が対立しているものである。 a そこで、まず、建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中の建築物」とは、どのような場合をいうのかについて検討する。 建築基準法3条2項は、新規定の適用又は施行時において「現に建築の工事中」であった建築物については、その建築を許容し、結果的に新規定に適合しなくなった建築物を容認することとして、新たな規定による行政目的の達成を一部後退させて、建築主の期待を保護することとしたが、その反面において、新規定の適用又は施行時において「現に建築の工事中」でなかった建築物については、新規定を適用し、その結果、適法に建築確認を受けた建築物であっても、同法7条3項の検査済証の交付は受けられず、同法9条の是正命令の対象となるなど、建築主に一定の不利益が生じることをやむを得ないものとして、新たな規定による行政目的の達成を優先することを明らかにしている。 上記の規定は、一般に、建物の建築が高額の費用と相当の準備及び期間を要して完成に至るものであり、建築主の既得権あるいは期待権を保護すべき要請が強いという一面がある一方、建築基準法及びその関係法令による建築規制は、安全、防火・消火・衛生・避難・周辺住民に対する影響等の重要な行政目的を達成するために行われるものであり、その新規定は、より現状にふさわしいものとして立法者により定められるものであるから、そのような行政目的の達成のためには、なるべく全ての建築物に対し適用されることが望ましいということとの調整を図る趣旨で設けられた規定であると解される。 このような建築基準法3条2項の趣旨に照らすと、「現に建築の工事中の建築物」に該当するか否かは、当該建物が保護されるか否か が望ましいということとの調整を図る趣旨で設けられた規定であると解される。 このような建築基準法3条2項の趣旨に照らすと、「現に建築の工事中の建築物」に該当するか否かは、当該建物が保護されるか否かの重要な基準であるから、同項の文言を解釈するに際しては、同項の文理に即して客観的に明確な基準となるように解釈する必要があるというべきである。また、同項の文言からすれば、「現に建築の工事中の建築物」として同項の適用を受ける対象は、当該対象建築物の建築計画について同法6条1項の定める建築主事の建築確認を得ているものには限られないというべきである。そこで、これらのことからすれば、「現に建築の工事中の建築物」であるといい得るためには、建築物の建築の工事が行われていることが外部から客観的に認識できる程度に継続して実施されていることを要すると解するのが相当である。 ところで、建物の建築は、一般に、建物敷地の取得、建物建築請負契約締結、建築設計、既存建築物の除却、建物建築現場の整地、建物建築現場の仮囲い、建物建築現場への資材搬入、根切り工事、杭打ち、基礎工事、躯体工事などの各段階を経て行われる。 そして、上記各段階に即して検討するに、建築請負契約の締結や建築現場の整地、建築現場への資材の搬入の段階にある場合には、建築物の工事が行われていることが外部から客観的に認識することは困難であり、「現に建築の工事中の建築物」に該当しないことは明らかである。 次に、建築物の基礎又は地下室部分を築造するために地盤面以下の土を掘削して所要の空間を設ける工事である根切り工事については、根切り時における周辺地盤の崩壊を防止する工事である山留めの工事も含め、建築物の建築を前提とする工事であるということはできるが、将来建築物となる人工の構造物は全く存在しない段階であり、建築物 ては、根切り時における周辺地盤の崩壊を防止する工事である山留めの工事も含め、建築物の建築を前提とする工事であるということはできるが、将来建築物となる人工の構造物は全く存在しない段階であり、建築物の建築の工事が行われていることが、外部から客観的に認識できるともいえない。また、根切り工事に着手した段階では、当該建築物の建築計画について建築確認を得ていない場合、建築物を建築するための工事であるかどうかさえ、外部からは明らかでなく、また、人工の構造物の全く存在しない、その段階であれば、建築計画の変更も容易であるということができる。 これらのことからすれば、根切り工事の着手及びその継続をもって、「現に建築の工事中の建築物」と解することはできないというべきである。 そうすると、結局、「現に建築の工事中」であるといい得るためには、敷地において、計画された建築物の基礎又はこれを支える杭等の人工の構造物を設置する工事が開始され、外部から認識できる程度に継続して実施されていることを要すると解すべきである(前記の東京高裁決定も、以上と同旨の考え方に立っているものと解することができる。)。 これに対し、被告らは、新規定の施行又は適用時において、根切り工事の段階であった建築物に対して新規定が適用されることになると、振切り工事の変更を余儀なくされた建築主は、新たなコスト負担や工事変更のための準備作業をしなければならなくなり、既得権保護を目的とする建築基準法3条2項の趣旨に反するから、根切り工事の段階にある場合には、「現に建築の工事中の建築物」に該当すると主張する。しかし、前述のとおり、建築物の完成までには、建物敷地の取得、建物建築請負契約締結、建築設計、既存建築物の除却、建物建築現場の整地、建物建築現場の仮囲い、建物建築現場への資材搬入、根切り工事、杭打ち、 かし、前述のとおり、建築物の完成までには、建物敷地の取得、建物建築請負契約締結、建築設計、既存建築物の除却、建物建築現場の整地、建物建築現場の仮囲い、建物建築現場への資材搬入、根切り工事、杭打ち、基礎工事、躯体工事などいくつもの段階があり、これらのいずれの段階であっても、新規定が適用されれば、建築主の期待が損なわれ、そのために、新たなコスト負担や工事変更のための準備が必要になるという不利益が生じることには変わりがないというべきであるが、その程度には、各段階に応じて自ずと差違があり、建築基準法3条2項は、これらの各段階において予想される不利益の程度、工事変更の容易性の有無、新規定の行政目的の可及的実現の必要性、基準としての明確性を総合勘案した上で、前記のような基準を設けたものと解されるから、被告らの上記主張は、前記解釈を左右するものとはいえない。 さらに、被告らは、建築基準法3条2項の「現に存する建築物」は、その存在自体が客観的に明らかであるから、建築確認を得ているかどうかは必要ないが、「現に建築の工事中の建築物」については、どのような建築物の建築が計画されているのか客観的に不明であるため、建築確認を得た計画建築物について、現に建築工事中である場合にのみ、本条項の適用があると主張し、建築確認の有無によって同項の適用の有無の客観性を担保するかのように主張するが、同項の適用を受けるために、建築確認が必要である場合とそうでない場合があるとする解釈は、同項の文言に明らかに反しており、採用できない。 ちなみに、被告らは、行政解釈として、「一般的には根切り工事あるいは基礎ぐい打ち工事に着手している段階をもって着工」としていると主張し、第147回国会衆議院建設委員会における政府参考人答弁(乙7)を援用するが、第31回国会参議院建設委員会においては り工事あるいは基礎ぐい打ち工事に着手している段階をもって着工」としていると主張し、第147回国会衆議院建設委員会における政府参考人答弁(乙7)を援用するが、第31回国会参議院建設委員会においては、「現に建築の工事中」より早い時期を示す概念である「工事の着手(建築基準法6条1項)」に関し、「工事をする場合に、根切りをするとかあるいは山どめ等の工事をするというのは、建築工事そのものの工事というようには取り扱っていないわけでございます。従いまして確認前におきましても、基礎のために勉面を掘るというようなことはできるように取り扱っておるわけです。」と政府委員である建設省住宅局長が答弁しており(甲91)、行政解釈自体、必ずしも一貫したものとはいえない。 b 本件建物の違法性以上を前提に、本件建物が「現に建築の工事中の建築物」に該当するか否かについて検討する。 証拠によれば、本件建物の建築工事の進行状況については、平成12年1月5日、本件土堀に対する根切り工事が開始され、同月26日、山留H鋼の打設(周囲の土圧により、根切り工事による掘削杭が内側に膨張することを防止するために、山留め壁を補強する支柱を設置する工程)が開始されたこと、同年2月1日の時点では、根切り工事の約16%(根切り工事全体の土砂量である28,985立方メートルのうち、4,691.5立方メートル)が終了した段階であり、山留工事については約10%(総数量1,918.5メートルのうち、185メートル)が終了した段階であったこと、同日時点では、基礎工事、杭工事はなされていなかったことがそれぞれ認められる(乙13、14)。 そうすると、本件建物は、本件建築条例改正が施行された平成12年2月1日当時において、根切り工事が進行し、山留めの工事を継続中であったことは認められるが、杭打ちや基 れ認められる(乙13、14)。 そうすると、本件建物は、本件建築条例改正が施行された平成12年2月1日当時において、根切り工事が進行し、山留めの工事を継続中であったことは認められるが、杭打ちや基礎工事などが着手されておらず、本件建物の敷地において、将来建築物となる人工の構造物が何ら存在していなかったものと認められる。 以上によれば、本件建物は、建築基準法3条2項にいう「現に建築の工事中の建築物」に該当しないといわざるを得ず、本件建物に対しては、本件建築条例が適用されるというべきである。 したがって、本件建物のうち地盤面からの高さ20メートルを超える部分は、本件建築条例、建築基準法68条の2に違反する違法建築物であるというほかない。 (イ) 本件建物の違反の内容及び程度本件建物は、本件建築条例の制限する高さ20メートルをはるかに越える高さ約44メートルの建築物であることは前記認定のとおりであり、高さ制限という明確な内容の規制について、その規制値を2倍を超えるほど大幅に上回るものであるから、違反の程度は極めて著しい。 (ウ) 違反によって阻害される行政目的の内容及び程度建築基準法68条の2によれば、市町村が、地区整備計画の定められた地区計画等の区域内において、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で当該地区計画等の内容として定められたものについては、建築物の利用上の必要性、当該区域内における土地利用の状況等を考慮し、適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため、合理的に必要と認められる限度において、特に重要な事項につき、政令で定める基準に従い、条例で制限として定めることができるとされている。 そして、上記の地区計画とは、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様 る基準に従い、条例で制限として定めることができるとされている。 そして、上記の地区計画とは、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、及び保全するための計画をいい(建築基準法2条22号、都市計画法12条の4第1項1号)、健全な住宅市街地における良好か居柱環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域に該当する場合などにおいて、定めるものとされている(都市計画法12条の5第1項)。 国立市においては、このような都市計画法に基づく地区計画として、本件地区計画を定め、その目的は、「都市基盤が整備された地区において、低中層住宅地区及び学園地区の環境を維持保全し、大学通りの沿道の都市景観に配慮したまちづくりを形成すること」と明記され、土地利用の方針について、「低中層住宅地区及び学園地区の住環境と教育環境を維持保全し、周辺の住宅地と調和した緑豊かでゆとりのあるまちづくりを進める。」と規定されている。 そして、本件地区計画には地区整備計画が定められており、同地区整備計画には、前記法令の定めに記載のとおり、建物外観や垣等について、景観に配慮を求める趣旨の規定があるほか、本件地区のうち、すでに高さ12メートル又は10メートルを超える建築物を建てられないこととされている第一種低層住居専用地域を除く地区(以下「本件高さ制限地区」という。)の建築物の高さが、具体的に制限され、この高さ制限は、本件建築条例により、建築基準法68条の2に基づく制限として、建築基準法施行令136条の2の4の定める基準に従い、規制されることとなった。そして、本件建築条例においても、「適正かつ合理的な土地利用を図り、もって良好な都市環境を確保すること」を目的とする旨が定められている 行令136条の2の4の定める基準に従い、規制されることとなった。そして、本件建築条例においても、「適正かつ合理的な土地利用を図り、もって良好な都市環境を確保すること」を目的とする旨が定められている(同1条)。 以上のような本件建築条例及びその関連法規が定める趣旨、目的、とりわけ本件地区計画において、「大学通りの沿道の都市景観に配慮したまちづくり」と特に明記されていること、本件地区内で建築できる最も高い建物の高さが、大学通りの並木の平均的な高さでもある20メートルとされていること、前提事実記載のとおり、大学通りの景観は、国立市民が特に大切に維持・保全を図ってきたという歴史的経緯が認められること、国立市では、景観条例を定めるなど、住民、行政、議会などの関係各層において、景観を維持・保全することに強い関心を有していると認められること、強制力を有しない景観条例によって景観の維持・保全を図るには限界があることなどに鑑みると、本件建築条例、本件地区計画、本件地区整備計画、建築基準法、都市計画法によって、本件地区の建築物の高さを規制した趣旨は、既に存在する大学通りという特定の具体的な景観を、将来的にも維持、保全を図るという行政目的を実効的に実現することにあると解される。 ところが、本件建物は、本件建築条例による制限高さの20メートルをはるかに超えて約44メートルもの高さを有する巨大な鉄筋コンクリート造の建築物であり、これが概ね高さ20メートルの並木を中心として連なる大学通りの景観を、客観的に定められた基準値に反し、大きく破壊することは明らかであるから、大学通りの景観を維持し、都市環境を維持、保全するという本件建築条例、建築基準法の前記のような行政目的を著しく阻害していると認められる。 (エ) 違反によって生じる近隣住民の被害の有無、内容及び程度 大学通りの景観を維持し、都市環境を維持、保全するという本件建築条例、建築基準法の前記のような行政目的を著しく阻害していると認められる。 (エ) 違反によって生じる近隣住民の被害の有無、内容及び程度次に、本件違反によって近隣住民にいかなる被害を及ぼしているかについて検討する。 a 是正命令権限行使の裁量判断において考慮すべき近隣住民の被害建築基準法9条に基づく是正命令権限が行政庁に付与された趣旨が、同法の定める規制を実効性あるものにして、その行政目的の実現を担保することにあると解されることから、上記是正命令権限を行使すべきか否かの判断において、考慮の対象となるべき近隣住民の被害は、是正命令権限の行使によって保護されることが法律上予定されている利益、すなわち建築基準法が定める各種の規制によって法律上保護されていると解される利益に係る被害に限られるものと解すべきである。 そして、ある規制を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり、当該規制が不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該規制の趣旨・目的、当該行政法規が当該規制を通じて保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきであると解される。 b 建築基準法により法律上保護された利益そこで、上記の観点から、被告建築指導事務所長が本件建物の違法部分に対する是正命令権限を行使しないことにより、原告らが被害を受けると主張する日照、景観、環境、そのほかの利益について、建築基準法によって法律上保護された利益に該当するか否か 所長が本件建物の違法部分に対する是正命令権限を行使しないことにより、原告らが被害を受けると主張する日照、景観、環境、そのほかの利益について、建築基準法によって法律上保護された利益に該当するか否かについて検討する。 (a)日照建築基準法56条の2が、都市計画区域内において、周辺住民が快適で文化的な生活を送るために必要な日照を最低限度確保する趣旨で、建築物の高さ規制を設けていることは明らかであるから、建築基準法自体が、建築物の高さ規制によって、周辺住民個々人の個別的利益としての日照を保護しているということができる。 そして、本件建築条例が建築物の高さを規制した趣旨が良好な都市環境の維持にあることは前記のとおりであって、良好な都市環境の中には日照の確保された環境も当然に含まれるから、本件建物の違法な部分により害される周辺住民の日照に対する利益は、建築基準法によって法律上保護された利益であると解される。 (b) 景観前記のとおり、建築基準法、都市計画法、本件地区計画、本件地区整備計画、本件建築条例によって、本件地区内の建築物の高さを制限した行政目的は、大学通りの景観を含む都市環境の維持、保全である。 そこで、上記の高さ規制が、大学通りの景観を含む都市環境を維持、保全するという一般的公益の保護に加えて、景観及び環境を享受する個々人の個別的利益をも保護している趣旨を含むものであるかどうかについて検討する。 まず、本件建築条例は、前記のとおり、単に、一般的抽象的な意味における景観の維持・保全を図ろうとしたものではなく、前記のとおり、歴史的に既に存在している大学通りという特定の景観(高さ20メートルの美しい並木通りの景観)を維持・保全するという具体的な目的を実現するために、強制力のない景観条例によっては実効的に景観を維持するという行政目的を達 ている大学通りという特定の景観(高さ20メートルの美しい並木通りの景観)を維持・保全するという具体的な目的を実現するために、強制力のない景観条例によっては実効的に景観を維持するという行政目的を達成できないことから、是正命令という行政目的実現を担保する規定のある建築基準法に基づく規制として、建築物の高さを具体的に制限したものである。 したがって、本件高さ規制によって、国立市民が享受することができるようになった景観の利益は、抽象的、主観的、一般的なものではなく、並木通りの高さである20メートルを超えない高さの建築物で構成される景観という、客観的な基準によって、その美しさの維持が法的に図られた大学通りという特定の景観を享受する具体的、客観的な利益であるということができる。 そこで、このように具体化された公益としての景観の有する特質について検討する。 景観は、通りすがりの人にとっては一方的に享受するだけの利益にすぎないが、ある特定の景観を構成する主要な要素の一つが建築物である場合、これを構成している空間内に居住する者や建築物を有する者などのその空間の利用者が、その景観を享受するためには、自らがその景観を維持しなければならないという関係に立っている。しかも、このような場合には、その景観を構成する空間の利用者の誰かが、景観を維持するためのルールを守らなければ、当該景観は直ちに破壊される可能性が高く、その景観を構成する空間の利用者全員が相互にその景観を維持・尊重し合う関係に立たない限り、景観の利益は継続的に享受することができないという性質を有している。すなわち、このような場合、景観は、景観を構成する空間を現に利用している者全員が遵守して初めてその維持が可能になるのであって、景観には、景観を構成する空間利用者の共同意識に強く依存せざるを得ないと 。すなわち、このような場合、景観は、景観を構成する空間を現に利用している者全員が遵守して初めてその維持が可能になるのであって、景観には、景観を構成する空間利用者の共同意識に強く依存せざるを得ないという特質がある。 このような景観の特質をふまえて、さらに検討すると、本件地区のうち高さ制限地区の地権者は、法令等の定め記載のとおり、本件建築条例及び本件地区計画により、それぞれの区分地区ごとに10メートル又は20メートル以上の建築物を建てることができなくなるという規制を受けているところ、これら本件高さ制限地区の地権者は、大学通りの景観を構成する空間の利用者であり、このような景観に関して、上記の高さ規制を守り、自らの財産権制限を受忍することによって、前記のような大学通りの具体的な景観に対する利益を享受するという互換的利害関係を有していること、一人でも規制に反する者がいると、景観は容易に破壊されてしまうために、規制を受ける者が景観を維持する意欲を失い、景観破壊が促進される結果を生じ易く、規制を受ける者の景観に対する利益を十分に保護しなければ、景観の維持という公益目的の達成自体が困難になるというべきであることなどを考慮すると、本件建築条例及び建築基準法68条の2は、大学通りという特定の景観の維持を図るという公益目的を実現するとともに、本件建築条例によって直接規制を受ける対象者である高さ制限地区地権者の、前記のような内容の大学通りという特定の景観を享受する利益については、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 そして、本件高さ制限地区地権者の景観の利益は、街並みの高さを20メートルにするという客観的数値によって、保護の対象となる利益の範囲及び内容の外延が明確である。 そうすると、本件高さ制限地区の地権者の て、本件高さ制限地区地権者の景観の利益は、街並みの高さを20メートルにするという客観的数値によって、保護の対象となる利益の範囲及び内容の外延が明確である。 そうすると、本件高さ制限地区の地権者の大学通りの景観に対する利益は、本件建築条例及び建築基準法によって保護された法律上の利益に該当すると解するのが相当である。 他方、本件高さ制限地区の地権者以外の者についての景観に対する利益は、本件建築条例及び建築基準法68条の2が目的とする大学通りの景観を維持、保全するという公益目的の反射的利益にすぎず、建築基準法によって保護された法律上の利益には該当しないと解される。 (c) 環境建築基準法、都市計画法、本件地区計画、本件地区整備計画及び本件建築条例の趣旨、目的は前述のとおりであり、良好な都市環境(ビル風の発生のない環境、圧迫感・天空狭窄のない環境を含む。)に対する個別的利益の保護を図ることをうかがわせる規定はないこと、すでに述べた景観以外には「良好な都市環境」の内容を具体的に明らかにした規定などもないこと、良好な都市環境の中で生活、教育、学習する利益は、景観に対する利益と異なり、専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考慮すると、本件建築条例及び建築基準法68条の2は、良好な都市環境を享受するという個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解すべきである。 (d) そのほか原告らが被害を受けると主張する利益原告らは、プライバシーや交通事故の増える危険性などを本件建物建築によって受ける被害であると主張するが、これらの被害は、建物の建築そのものによって生じる被害ではなく、建物が使用されることによって生じる可能性のある被害にすぎないから、いずれも、建築基準法によって法律上保護された利益ということはできな これらの被害は、建物の建築そのものによって生じる被害ではなく、建物が使用されることによって生じる可能性のある被害にすぎないから、いずれも、建築基準法によって法律上保護された利益ということはできない。 c そこで、次に、上記のような建築基準法によって保護された周辺住民の利益について、どのような被害が生じるおそれがあるか検討する。 (a) 日照被害について証拠によれば、原告らが受ける日照被害について、以下の事実が認められる。 Ⅰ 原告桐朋学園の日照被害桐朋学園男子部門は、第一種中高層住居専用地域、第1種高度地区、容積率150%に指定されている土地にあり、本件土地の北側に幅員5.4メートルの道路を挟んで隣接している。桐朋学園男子部門の敷地は、南側部分がグラウンドになっており、そのグラウンドは、東側から、小学校グラウンド、中央グラウンド、西グラウンドと3つの部分に分かれている。 (甲9、10、12、32)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面からマイナス2メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、午前8時ころには、桐朋学園男子部門の中央グラウンド及び西グラウンドの大部分に広がっている。この日影は、午前9時ころには、グラウンドの一部に縮まり、午前10時ころには、ほとんどグラウンド上に及ばなくなり、その後しばらく、ほとんどグラウンド上に及ばない。午後4時ころになると、日影が小学校グラウンドの一部に及ぶようになる。 (甲32)本件建物に代えて、高さ20メートルで他の建築基準関係法令にも適合した建物(以下「仮定建物」という。その形状は、別紙図面2のとおりである。)を建築したと仮に考えた場合は、仮定建物がその平均地盤面からマイナス1メート 、高さ20メートルで他の建築基準関係法令にも適合した建物(以下「仮定建物」という。その形状は、別紙図面2のとおりである。)を建築したと仮に考えた場合は、仮定建物がその平均地盤面からマイナス1メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、午前8時ころには、桐朋学園男子部門のグラウンドにかかるが、本件建物の日影よりも大分小さい。そして、午前9時以降は、ほとんどグラウンド上に及ばなくなる。午後4時ころには、仮定建物の日影は、小学校グラウンドの一部に及ぶ。 (甲92の3)本件建物の平均地盤面から4メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至においては、桐朋学園男子部門のグラウンドのほとんどの部分で2時間未満である。また、上記水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、桐朋学園男子部門のグラウンドにかかる部分については、本件土地の境界線から5メートルを超えて10メートル以内の範囲では3時間未満であり、10メートルを超える範囲では2時間未満である。 上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間は、本件建物と同様、グラウンドのほとんどの部分で2時間未満である。上記水平面に対して仮定建物が2時間ないし3時間の日影を生じさせる範囲も、本件建物の場合とほとんど同一である。 (乙20、21)Ⅱ 原告P3の日照被害原告P3の所有地は、第二種中高層住居専用地域、第1種高度地区、容積率200%に指定されている。 (甲9)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面から0.5メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、日の出から午前10時ころまで、原告P3の住居部分全体 (甲9)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面から0.5メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、日の出から午前10時ころまで、原告P3の住居部分全体を覆っている。その後、日影は徐々に後退して、午前11時ころには、原告P3の住居部分に及ばなくなる。 (甲46)本件建物が、春分及び秋分において、上記水平面に対して生じさせる日影は、日の出から午前9時ころまで、原告P3の住居部分全体を覆っている。その後、日影は後退していき、午前10時ころには、日影は同住居部分に及ばなくなる。 (甲47)仮定建物が、冬至において、その平均地盤面からマイナス1メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、日の出から午前10時ころまで、P3の住居部分全体を覆っている。その後、日影は徐々に後退して、午前11時ころには、P3の住居部分にほとんど及ばなくなる。 (甲92の3)P3宅は、本件建物の日影とともに、隣家のP4宅の日影の影響も受ける。P3宅は、冬至において、本件建物の日影によって、日の出から午前10時ころまで全体を覆われ、午前10時30分ころにも半分以上を覆われた状態になる。その上、P3宅は、P4宅の日影によって、午後1時ころにはその大部分を覆われ、午後2時ころからは全体を覆われることになる。 (甲89)本件建物の平均地盤面から4メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至において、原告P3の所有地にかかる部分については、2時間以上3時間未満である。 上記水平面に対し仮 本件建物の平均地盤面から4メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至において、原告P3の所有地にかかる部分については、2時間以上3時間未満である。 上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間も、本件建物と同様、原告P3の所有地にかかる部分につき、2時間以上3時間未満である。上記水平面に対して仮定建物が2時間ないし3時間の日影を生じさせる範囲は、本件建物の場合とほとんど同一である。 (乙20、21)Ⅲ 原告P5の日照被害原告P5の所有地は、第一種低層住居専用地域、第1種高度地区、容積率150%に指定されている。 (甲9)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面から0.5メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、午後2時ころには、原告P5の住居部分に及んでいない。この日影は、午後3時ころに、原告P5の住居部分に少しかかるようになり、午後4時ころには、同住居部分全体を覆うようになる。 (甲49)本件建物が、春分及び秋分において、上記水平面に対して生じさせる日影は、午後3時ころには、原告P5の住居部分に及んでいないが、午後4時ころには、同住居部分全体を覆っている。 (甲51)本件建物の平均地盤面から15メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至において、原告P5の所有地にかかる部分については、2時間30分未満であ。 上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間も、本件建物と同様、原告P5の所有地にかかる部分につき、2時間30分未満である。 の所有地にかかる部分については、2時間30分未満であ。 上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間も、本件建物と同様、原告P5の所有地にかかる部分につき、2時間30分未満である。 (乙20、21)Ⅳ 原告P6の日照被害原告P6の所有地は、第一種低層住居専用地域、第1種高度地区、容積率150%に指定されている。 (甲9)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面から0.5メートルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、午後2時ころには、原告P6の住居部分に及んでいないが、午後3時ころには、同住居部分全体を覆うようになる。 (甲49)本件建物の平均地盤面から1.5メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至において、原告P6の所有地にかかる部分については、2時間30分未満である。 上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間も、本件建物と同様、原告P6の所有地にかかる部分につき、2時間30分未満である。 (乙20、21)Ⅴ 原告P7の日照被害原告P7の所有地は、第一種低層住居専用地域、第1種高度地区、容積率150%に指定されている。 (甲9)本件建物が、冬至において、本件建物の平均地盤面から0.5メ一トルの高さの水平面に対して生じさせる日影は、午後2時ころには、原告P7の住居部分に及んでいないが、午後3時ころには、同住居部分の大部分を覆うようになる。 (甲49)本件建物の平均地盤面 後2時ころには、原告P7の住居部分に及んでいないが、午後3時ころには、同住居部分の大部分を覆うようになる。 (甲49)本件建物の平均地盤面から1.5メートルの高さの水平面に対して、本件建物の日影が生じる時間は、冬至において、原告P7の所有地にかかる部分については、2時間30分未満である。上記水平面に対し仮定建物の日影が生じる時間も、本件建物と同様、原告P7の所有地にかかる部分につき、2時間30分未満である。 (乙20、21)以上を前提に、原告らが受ける日照被害について検討する。 原告P3が受ける日照被害については、本件建物が、本件建築条例の高さ制限の範囲内の建物であったとしても、本件建物とほぼ同様の日照被害が生じることが認められるから、原告P3が受ける日照被害は、本件建物が本件建築条例に違反していることによって生じる損害とはいえないため、本件是正命令権限を行使すべきか否かの考慮の対象とはなり得ないといわざるを得ない。 次に、原告桐朋学園の受ける日照被害については、本件建物が本件建築条例に違反することによって生じる日照被害が存在することは認められるが、その内容は、グラウンドについてのみ生じるものであって、主として午前9時ころまでの早朝に生じるものであることからすると、重大な日照被害が生じるものとは認められない。 さらに、原告P5、同P7、同P6については、本件建物によって受ける日照被害と、仮に本件建物が本件建築条例の制限内であった場合に受ける日照被害の差は、証拠上必ずしも明らかではないが、本件建物の違法部分によって、重大な日照被害を受けていることはうかがわれない。 なお、被告らは、本件建物によって生じる日影が、いずれも日影条例 受ける日照被害の差は、証拠上必ずしも明らかではないが、本件建物の違法部分によって、重大な日照被害を受けていることはうかがわれない。 なお、被告らは、本件建物によって生じる日影が、いずれも日影条例の制限内であることを理由に、原告らに生じる日照被害は受忍限度内であると主張するが、本件建築条例は、前記のとおり、建築物の高さを規制するものであり、良好な環境の維持という目的の中には、周辺住民の日照の十分な確保という側面も有すると認められることからすると、本件建築条例の高さ制限に違反する違法建物によって生じる日照被害が、日影条例の制限内にあるということだけの事実をもって、直ちに受忍限度内であるとは認められない。 (b) 景観被害前提事実及び証拠(甲90)によれば、本件高さ制限地区の地権者らの景観に対する利益が重大な被害を受けることは明らかである。 すなわち、同地区の地権者らが、維持、保全してきた景観は、本件建物により、回復し難い破壊を受け、前記のような内容の景観を享受する利益が著しく損なわれ、その被害は重大である。 (オ) 是正命令権限を行使することによって予想される建築主の不利益の有無及び程度まず、本件建物の高さ20メートルを超える部分のうち、未だ完成していない部分について、被告建築指導事務所長が是正命令権限を行使して建築禁止命令を発した場合に、建築主である明和地所が被る損失について検討する。 前記のとおり、本件建物に対しては、本件建築条例が適用される結果、高さ20メートルを超える部分は、そもそも建築することが許されていないものであるから、これを建築できないことによって建築主である明和地所に生じる不利益は、もともと、建築主として当然受忍しなければならないものであり、是正命令権限を行使するか否かの裁量判断において、考慮の対象とはならな これを建築できないことによって建築主である明和地所に生じる不利益は、もともと、建築主として当然受忍しなければならないものであり、是正命令権限を行使するか否かの裁量判断において、考慮の対象とはならないというべきである。 次に、本件建物の高さ20メートルを超える部分のうち、既に建築済みの部分について、被告建築指導事務所長が是正命令権限を行使して、除却命令を発した場合における、建築主である明和地所が受ける損失について検討する。 この場合は、既に建築された部分を除却することにより、建築主において、除却のための費用が生じるだけでなく、当該部分を建築するために投じた高額の費用も全て無駄となることから、高さ20メートルを超える違法部分のうち既に建築された部分が大きくなればなるほど、建築主である明和地所が被る損失が大きくなることが予想される。 ところで、本件においては、現時点において、前提事実記載のとおり、少なくとも本件建物の躯体部分は既に完成されており、高さ20メートルを超える約22メートルが違法建築部分となっていることが認められるから、今後被告建築指導事務所長が除却命令を発すれば、明和地所において極めて大きな損失を被ることは明らかである。 しかしながら、他方、本件建物の高さ20メートルを超える部分は、本来違法であるにもかかわらず、明和地所が建築を続行したことによって完成するに至ったにすぎないから、建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使するか否かの判断においては、建築主に当該不利益を受忍させることが相当でないと認められるような特段の事情が存する場合でない限り、このような既成事実を自ら積み重ねた結果として生ずる建築主の不利益を過度に考慮するのは相当でないというべきである。 そこで、本件建物の建築についての明和地所側の事情について検討する。 合でない限り、このような既成事実を自ら積み重ねた結果として生ずる建築主の不利益を過度に考慮するのは相当でないというべきである。 そこで、本件建物の建築についての明和地所側の事情について検討する。 前提事実によれば、本件建物の敷地である本件土地は、美しい景観を有し、国立市民により大切に維持されてきたことが一般にも周知されている大学通りに面していること、明和地所は、本件建物の建築計画の段階である平成11年10月8日、国立市長から、景観条例に基づいて、本件建物の建築計画を高さ20メートルの並木に調和するように指導を受けていること、本件建物の敷地を含む本件地区において建築物の高さを20メートルに制限する旨の本件地区計画が、本件建物の建築確認申請を提出する前の段階である平成11年11月24日には公告、縦覧に供され、明和地所においても、当然その内容を認識し得る状況にあったこと、本件建物の建築確認申請提出後、建築確認通知を受ける前の段階である平成11年12月24日、改正前の本件建築条例が公布され、本件地区計画が決定、告示された平成12年1月24日以後には、本件建物が本件地区計画に反しており、本件地区計画にかかる高さ制限が、条例改正によって建築基準法に基づく規制となることが客観的に予想される状況にあったことなどに照らすと、明和地所は、相当早い段階から、本件土地については、高さ20メートルを超える建物が建築できなくなることを認識していたと認められ、少なくとも本件建物の建築確認を受ける直前の段階においては、極めて近い将来に、建築基準法上、本件建物の敷地に建築できる建築物の高さが20メートル以下に制限されるであろうことを十分認識した上で、本件建物の建築工事に着工したという事情が認められる。 他方、本件建築条例が施行された時点において、本件建物の根切り工 きる建築物の高さが20メートル以下に制限されるであろうことを十分認識した上で、本件建物の建築工事に着工したという事情が認められる。 他方、本件建築条例が施行された時点において、本件建物の根切り工事が相当程度進捗していたこと、被告ら行政庁が根切り工事が進行・継続している場合は、「現に建築の工事中の建築物」に該当するという見解を示していたことから、明和地所は、本件建物に対しては、本件建築条例が適用されないとの認識に立ち、本件建築工事を続行したとの事情も窺われる。 しかしながら、前提事実によれば、本件の原告らの一部を含む周辺住民等から、明和地所に対し、本件建物の建築工事禁止を求める仮処分が申し立てられ、その審理の中で、建築基準法3条2項の解釈について、被告らと異なる解釈のあり得ることも主張されたことにより、明和地所は、その審理の結果、裁判所から本件建物に本件建築条例が適用されるという解釈を示される可能性を認識していたと認められるにもかかわらず、その審理結果を待つことなく本件建物の建築続行し、未だ建物の躯体工事が完成する以前の段階である平成12年12月22日、東京高裁決定により、本件建物に対しては本件建築条倒が適用されるという解釈が示され、本件建物が違法建築物として除却され得る可能性を一層強く認識し得た状況下において、さらにその建築を続行して現在に至っているという事情が認められる。 そうすると、明和地所は、将来、本件建物が違法建築物と判断され、是正命令によって違法部分の除却をしなければならない事態に至ることがあり得ることをも認識し、その場合に自らが受ける危険や不利益についても十分に承知しながら、あえて、本件建物の建築を停止することなく、本件建物の違法部分の建築を続行していたと認めることができる。このような場合において、是正命令権限行使の らが受ける危険や不利益についても十分に承知しながら、あえて、本件建物の建築を停止することなく、本件建物の違法部分の建築を続行していたと認めることができる。このような場合において、是正命令権限行使の判断の際に、建築主の不利益を過度に考慮するとすれば、客観的には違法であるにもかかわらず、建築主側が作出した既成事実や駆け込み着工を安易に追認する結果となり、法の公正かつ公平な適用を害することになるというべきである。 なお、明和地所は、前提事実記載のとおり、国立市都市景観形成審議会の答申を受けて国立市長が行った景観条例に基づく勧告に対しても、これに応じることを拒否するなどの事情も認められる。 以上のような事情の下においては、本件違法部分の除却によって生じる不利益を明和地所に受忍させることが相当でないと認められるような特段の事情は存しないというべきである。 (カ) 建築主による自発的違反解消の見込みの有無前提事実記載の経緯に照らすと、明和地所が自発的に本件違反を解消する見込みは全くないというほかない。 (キ) 建築主に対する指導など、他の手段による違反解消の見込み前提事実記載のとおり、明和地所は、これまで、強制力を伴わない事実上の指導に対しては、一切応じてこなかったものであり、指導などの強制的でない手段による違反解消の見込みもないと認められる。 ウ検討以上によれば、①本件建物は、地盤面からの高さ20メートルを超える部分について、本件建築条例、建築基準法68条の2に明確に違反する違法建築物であり、その違反の程度は著しいこと、②本件建物の違反部分により本件建築条例、建築基準法68条の2の規制によって達成しようとした景観と都市環境の維持という行政目的は大きく阻害されていること、③近隣住民の受ける被害にあっては、日照については、それほど重大な より本件建築条例、建築基準法68条の2の規制によって達成しようとした景観と都市環境の維持という行政目的は大きく阻害されていること、③近隣住民の受ける被害にあっては、日照については、それほど重大な被害が生じているとは認められないものの、本件高さ制限地区内の地権者の景観に対する利益については重大な被害を生じさせていること、④建築主である明和地所に発生することが予想される不利益は、本件建物が違法建築物であることによって生じる不利益であって、これを考慮すべき特段の事情は存しないこと、⑤明和地所による自発的な違反解消の見込みは全くないこと、⑥是正命令以外の手段による違反解消の見込みもないことなどの事情が認められ、このような具体的事情の下では、被告建築指導事務所長が建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を全く行使しないことは、裁量権の逸脱に当たり違法というべきであり、同被告において前記の違反状態を解消するために上記是正命令権限を行使すべきことは一義的に明白な義務というべきである。 しかし、是正命令を発するためには、原則として、是正命令の相手方に対する告知、聴聞の機会を付与するなどの手続を経て行うことが法律上要求されていること(建築基準法9条)、建築主側に対して必要最小限以上の不利益を生じさせないよう配慮する必要があること、本件違反を是正するためには、建築禁止命令や除却命令など違反解消に最も効果的な権限を行使すべきであるということはできるものの、そのために、どの範囲の者に対し、どのような種類の命令を発するべきかという点についてまでは一義的に明白とまではいえないことなどに鑑みると、是正命令権限の行使の方法及び内容として、いつ、どの範囲の者に対し、どのような手続を経て、いかなる是正命令を発すべきかの点については、なお、被告建築指導事務所長の裁量の範 えないことなどに鑑みると、是正命令権限の行使の方法及び内容として、いつ、どの範囲の者に対し、どのような手続を経て、いかなる是正命令を発すべきかの点については、なお、被告建築指導事務所長の裁量の範囲内にあるものというべきである。 以上によれば、被告東京都建築事務所長に対し、本件各是正命令を発令することを求める本件義務付け請求に係る訴えは、無名抗告訴訟の一義的明白性の要件を欠くといわざるを得ないが、同被告に対し、本件各是正命令を発令しないことが違法であることの確認を求める本件不作為請求に係る訴えには、同被告が建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることの確認を求める請求も含まれていると解されることから、本件不作為請求に係る訴えのうち、上記請求部分に限っては、無名抗告訴訟としての一義的明白性の要件を満たしているというべきである。 (3) 緊急性ア緊急性の判断内容前記のとおり、いわゆる義務付け訴訟が適法とされるためには、行政庁が行政権限を発動しないことにより、事後的な救済によっては、回復し難い損害を被るおそれがあることが必要であると解されるが、当該行政権限の行使によって保護されることが予定されている利益に係る損害でなければ、行政庁の行政権限を発動しないことによる損害とはいえないことから、上記にいう損害とは、当該行政権限の根拠法規によって、法律上保護された利益に係るものでなければならないと解すべきである。 そして、かかる損害があるか否かは、権利救済の必要性の有無を判断するための要素であるから、上記のような損害を被るおそれがある者のみについて、緊急性の要件が満たされていると認めることができるというべきである。 イそこで、本件においては、前記のとおり、建築基準法によって保護された利益は、本件建物の周辺住民の日照 それがある者のみについて、緊急性の要件が満たされていると認めることができるというべきである。 イそこで、本件においては、前記のとおり、建築基準法によって保護された利益は、本件建物の周辺住民の日照についての利益と本件高さ制限地区の地権者の景観についての利益であるから、原告らのそれぞれについて、このような利益にかかる損害を被るおそれがあるかどうか個別に検討する。 (ア) 本件高さ制限地区の地権者別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らは、本件高さ制限地区内の土地を所有する地権者である。上記原告らは、建築基準法上保護された利益である景観について、既に述べたとおり、重大な被害を被るおそれがあるというべきである。 そして、調和のとれた景観が形成されるまでには相当長期間を要するのに対し、景観は、前記のとおり、非常に破壊されやすいものであって、しかも、いったん破壊された景観は、容易には回復し得ないものであるところ、本件建物について、今後検査済証が交付され、本件建物に多数の入居者が居住し始めるなどの既成事実が積み重ねられていくと、もはや、上記景観被害を回復することは事実上不可能となるため、事前救済を求める必要性が高いというべきである。 したがって、これらの原告については、緊急性の要件を満たしていると認めることができる。 なお、原告らは、原告明石忠保も本件高さ制限地区の地権者であると主張するが、同原告の妻が本件高さ制限地区内に所有権を有していることは認められるものの、同原告自身が所有権あるいは借地権等を有しているとの立証がなく、同原告が本件高さ制限地区の地権者であるとは認められない。 (イ) 日照被害を受ける近隣住民本件建物により、日照被害を受けると主張している原告らのうち、原告P3については、本件高さ制限地区の地権者でもあるため、緊急性の要 の地権者であるとは認められない。 (イ) 日照被害を受ける近隣住民本件建物により、日照被害を受けると主張している原告らのうち、原告P3については、本件高さ制限地区の地権者でもあるため、緊急性の要件を満たしていることは、既に述べたとおりである。 原告P5、同P6及び同P7については、前記認定のとおり、本件建物の違法部分によって、同原告らに重大な目照被害が生じているとまでは認められず、事後的な救済によっては回復し難い重大な損害を被るおそれがあると認めることはできないというほかなく、緊急性の要件を満たさないというべきである。 (ウ) 上記以外の原告らこれらの原告が主張している損害は、プライバシー侵害、景観被害、環境悪化、交通事故の危険性の増大などであり、これらの損害は、いずれも、すでに述べたとおり、建築基準法及びその関連法規によって保護された法律上の利益にかかるものではないから、これらの原告については、事前の救済を認めるべき緊急の必要性は満たさないというべきである。 ウなお、被告らは、緊急性の要件を満たすためには、生命、身体に直接かかわるような重大な法益について損害が発生するおそれがあることが必要であると主張するが、無名抗告訴訟としての義務付け訴訟の適法要件としての緊急性の要件をそのように限定して解釈しなければならない根拠は見出し難く、被告らの上記主張は採用できない。 (4) 補充性本件においては、前定事実記載のとおり、本件建物について建築基準法6条1項に基づく建築確認を受けた時点においては、本件建物は、なんら建築基準法に違反していなかったことから、原告らにおいて、建築確認の取消しを求めて訴えを提起しても、救済は望めないというほかない。 また、原告らにおいて、検査済証を交付しないよう求める本件予防的不作為請求にかかる訴えは、後記 たことから、原告らにおいて、建築確認の取消しを求めて訴えを提起しても、救済は望めないというほかない。 また、原告らにおいて、検査済証を交付しないよう求める本件予防的不作為請求にかかる訴えは、後記のとおり不適法であって許されない。そして、検査済証が交付された後にその取消しを求める訴訟についても、原告らに原告適格を認めることは困難であり、不適法であると解されることから、これらによる救済の余地はない。 そうすると、本件においては、義務付け訴訟を提起するより他に適切な救済手段はないというほかない。 特に、本件においては、当事者間において、建築基準法3条2項の解釈に相違があることが紛争の主たる原因になっているにもかかわらず、これを適切に解決する手段は、ほかに見出せない。 これに対し、被告らは、原告らが明和地所を相手に民事訴訟を提起していることから、これによる救済が可能であるとして、補充性の要件を満たさないと主張する。 しかし、民事訴訟と行政事件訴訟とでは、当事者、要件、効果を全て異にするから、民事訴訟によって損なわれた原告らの法律上の利益が完全に救済される保証はなく、民事訴訟の存在又は係属を理由に補充性の要件を満たさないとする被告の主張は採用できない。 なお、この種の訴訟を認めないと、建築基準法が、同法68条の2により、各市町村の地域の実情に即した規制を設けることを予定しているにもかかわらず、その是正命令権限を行使する行政庁が都道府県にある場合、市町村が同条に基づく条例を設けて、市町村独自の行政目的を実効的に達成しようとしても、都道府県の行政庁が適切に是正命令権限を行使しないときは、市町村において、当該行政目的達成を担保する手段が全くないこととなり、建築基準法68条の2の立法趣旨が損なわれる事態が生ずることも十分予想される。現に、本件 庁が適切に是正命令権限を行使しないときは、市町村において、当該行政目的達成を担保する手段が全くないこととなり、建築基準法68条の2の立法趣旨が損なわれる事態が生ずることも十分予想される。現に、本件紛争においても、上記建築基準法3条2項の解釈のほか、建築基準法に基づいて景観を実効的に維持、保全しようとした国立市の意思が、被告建築指導事務所長に十分反映されていないことも、その一因をなしているものと考えられるが、このような事態を適切に解決する手段は、ほかに見出せない。 (5) 原告適格について上記緊急性の要件を満たしていると認められる原告ら(当事者目録第1及び第4の1記載の原告ら)は、被告建築指導事務所長が是正命令権限を行使しないことにより、自己の法律上の利益について損害を被るおそれがあると主張しているのであり、いずれも原告適格を認めることができる。 (6) 結論以上によれば、別紙当事者目録第1及び第4の1記載の原告らについては、本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求に係る訴えのうち、被告建築指導事務所長が、本件建物について、建築基準法68条の2、本件建築条例7条に違反する部分を是正するために、是正命令権限を行使しないことが違法であることの確認を求める部分に限り、明白性、緊急性、補充性の各要件を満たし、原告適格も肯定できるから、適法な訴えであり、その請求には理由があると認められるが、同原告らのその余の訴え及び同原告らを除くその他の原告らの訴えについては、いずれも不適法であるというべきである。 2 検査済証の交付についての予防的不作為請求に係る訴えの適法性及びその請求の当否上記訴えは、行政庁に対して予防的に不作為を求める無名抗告訴訟である。 そこで、かかる予防的不作為訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟の許容性について検討すると る訴えの適法性及びその請求の当否上記訴えは、行政庁に対して予防的に不作為を求める無名抗告訴訟である。 そこで、かかる予防的不作為訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟の許容性について検討すると、具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度の下においては、当該処分によって侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度、不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らし、上記処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的にその処分の適否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合は格別、そうでない限り、あらかじめ処分の不作為を求める法律上の利益を認めることはできないと解すべきである。 ところで、検査済証交付は、当該建物が建築基準法に適合しているという公証的効果を有し、一定の建築、改築等の場合においては、検査済証が交付されるまでは、原則として、当該建物の使用が禁止されており(建築基準法7条の6)、本件建物についても、検査済証が交付されるまでは使用が禁止されている。 そこで、原告らが検査済証の不交付を予防的に求める法律上の利益の有無について検討するに、検査済証が交付されて本件建物が使用されるようになると、原告らが主張する損害のうち、プライバシー侵害や交通事故の危険性増大などの可能性が生じる関係にはあるが、これらの損害は、前述のとおり、建築基準法によって保護された利益に係る損害とはいえない。そうすると、これらの損害を理由に、原告らに本件検査済証の不交付を求める法律上の利益はないというほかない。 また、日照や景観などの建築基準法によって保護された利益に係る損害は、本件建物が使用されることによって生じる損害ではなく、本件建物が存在することそのものによる損害であるから、こ いというほかない。 また、日照や景観などの建築基準法によって保護された利益に係る損害は、本件建物が使用されることによって生じる損害ではなく、本件建物が存在することそのものによる損害であるから、これらの損害は、検査済証交付処分によって生じる損害ということもできない。 したがって、原告らには、検査済証を交付してはならないとの不作為を求める法律上の利益はないというべきであり、本件予防的不作為請求に係る訴えは不適法である。 第4 結論以上によれば、本件各請求のうち、当事者目録第1及び第4の1記載の原告らが、被告建築指導事務所長が、本件建物について、建築基準法68条の2、本件建築条令7条に違反する部分を是正するために、建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることの確認を求める請求は、理由があると認められるが、上記原告らのその余の請求に係る訴え及び当事者目録第2、第3、第4の2及び第5記載の原告らの請求に係る訴えはいずれも不適法である。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官馬渡香津子

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