主文 一原告が別紙物件目録一記載の土地に対する平成六年度固定資産課税台帳の登録事項について行った審査の申出に対して、被告が平成七年五月二二日付けでした固定資産の価格を一三億三六〇三万七九〇〇円に修正する旨の決定のうち、一〇億四五〇〇万円を超える部分を取り消す。 二原告のその余の請求を棄却する。 三訴訟費用はこれを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 原告が別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)に対する平成六年度固定資産課税台帳の登録事項について行った審査の申出に対して、被告が平成七年五月二二日付けでした固定資産の価格を一三億三六〇三万七九〇〇円に修正する旨の決定のうち、一〇億三七二三万七四〇〇円を超える部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一請求原因 1 原告は本件土地について一〇〇〇分の八〇五の共有持分を有しており、本件土地の固定資産税の納税義務者である。 2 京都市長は平成六年度の本件土地の固定資産評価額を一四億八四四八万六六〇〇円と決定し、これを固定資産課税台帳に登録し、縦覧に供した。 原告は、平成六年四月二八日、被告に対し、本件土地につき、固定資産課税台帳の登録事項に関する審査の申出をしたところ、被告は、平成七年五月二二日付けで、固定資産の価格を一三億三六〇三万七九〇〇円に修正する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし、そのころ原告に送達した。 3 本件決定は、次の事由により違法である。 (一) 基準日の違法平成六年度の固定資産税の賦課期日は、地方税法(以下「法」という。)三四九条、三五九 決定」という。)をし、そのころ原告に送達した。 3 本件決定は、次の事由により違法である。 (一) 基準日の違法平成六年度の固定資産税の賦課期日は、地方税法(以下「法」という。)三四九条、三五九条によれば、平成六年一月一日である。しかるに、本件決定は、本件土地の固定資産評価の実質的な基準日を平成五年一月一日としている。 したがって、本件決定は、法三四九条、三五九条に違反する。 (二) 評価基準不適用の違法法三四一条五号に規定する「適正な時価」を求めるための方法、手続を規定するため、自治大臣は固定資産評価基準を定めなければならず(法三八八条一項)、市町村長はその固定資産評価基準(昭和三八年自治省告示一五八号により告示、平成五年一一月二二日自治省告示第一三六号により改正されたもの。以下「評価基準」という。)に従って固定資産の価格を決定しなければならないとされている(法四〇三条一項)。そして、評価基準によれば、各筆の宅地の評点数は路線価を基礎として「画地計算法」を適用して付設するものとし、市町村長は必要があるときは画地計算法の付表等に「所要の補正」をすることができるものとされている。 本件土地は、京都市内でも一番の商業地区かつ繁華街の四条通に面した建ぺい率八○パーセント、容積率七〇〇パーセントの高度有効利用が可能な地区にある。しかし、本件土地(別紙図面表示の赤線により囲まれた部分)は、南北の通路部分(別紙図面表示の青線により囲まれた部分)のみによって四条通に接している袋地であって、通路部分の幅員は、最も広い間口(南端)で一・三四メートル、最も狭い部分(北端)で一・〇七メートルである。本件土地の南側(四条通)を除く三方向にはいずれも他人所有の建物が建築されており、通路以外からの公道への通行は不可能である。右通路の幅員は建築基準法上の接道基 い部分(北端)で一・〇七メートルである。本件土地の南側(四条通)を除く三方向にはいずれも他人所有の建物が建築されており、通路以外からの公道への通行は不可能である。右通路の幅員は建築基準法上の接道基準を満たさないため、本件士地上の建物は、建築確認申請を必要とする新築・増築・大規模な修繕・大規模な模様替えができない。このように本件土地は、近隣土地に比して著しく利用が制限され、「適正な時価」の劣る土地である。 しかるに、本件決定は、本件土地の評価について「所要の補正」をしておらず、法四〇三条一項、三八八条一項に違反する。 4 本件土地の固定資産の価格平成六年度の本件土地にかかる標準宅地の地価公示価格一平方メートル当たり一三〇〇万円に、個別要因の標準化補正率一一〇分の一〇〇を乗じると、本件土地にかかる主要な街路の路線価は単位面積当たり一一八○万円となり、これに格差率○・九三を乗じて、本件土地にかかる街路の路線価は単位面積当たり一〇九〇万円となる。これに本件土地の個性率による減価割合○・四二を乗じると単位面積当たりの評点数は四五七万八○○○点となり、これに地積二二六・五七平方メートルを乗じた評点数は一〇億三七二三万七四六〇点となる。一点当たり一円に右評点数を乗じると、本件土地の固定資産の価格は一〇億三七二三万七四〇〇円(一〇〇円未満切捨て)となる。 5 よって、原告は、本件決定のうち一〇億三七二三万七四〇〇円を超える部分の取消しを求める。 二請求原因に対する認否 1 請求原因第1、第2項の事実は認める。 2(一) 同3項(一)のうち、平成六年度の固定資産税の賦課期日が平成六年一月一日であることは認め、その余は争う。 (二) 同(二)の事実のうち、本件土地が四条通に面した建ぺい率八○パーセント、容積率七〇〇パーセントの地区にあること、本件土地が 資産税の賦課期日が平成六年一月一日であることは認め、その余は争う。 (二) 同(二)の事実のうち、本件土地が四条通に面した建ぺい率八○パーセント、容積率七〇〇パーセントの地区にあること、本件土地が南北の通路部分のみによって四条通に接している袋地であり、通路部分の幅員は、最も広い部分で一・三四メートル、最も狭い部分で一・〇七メートルであること、本件土地の南側を除く三方向にはいずれも他人所有の建物が建築されており、通路以外からの公道への通行は不可能であること、右通路の幅員は建築基準法上の接道基準を満たさないため、本件土地上で建物を建築するのに制限があることは認め、その余は否認ないし争う。 3 同4の主張は争う。 三被告の主張 1 評価基準によれば、宅地の評価については、市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区等に区分し、当該各地区についてその状況が相当に相違する地区域ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し、その標準宅地について、売買実例価格から評定する適正な時価を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設し、その路線価を基礎として「画地計算法」を適用して各筆の宅地の評点数を付設するものとされている。 また、評価基準は、市町村長は必要があるときは「画地計算法」の付表等に「所要の補正」をすることができるとしている。京都市はこれを受けて、固定資産評価要綱及び固定資産評価要領(以下「要領」という。)を作成している。 2 本件土地の固定資産価格の算出根拠は次のとおりである。 (一) 地目平成六年度の賦課期日(平成六年一月一日)において、本件土地は家屋の敷地の用に供されており、地目は宅地である。 (二) 地積平成六年度の賦課期日における本 根拠は次のとおりである。 (一) 地目平成六年度の賦課期日(平成六年一月一日)において、本件土地は家屋の敷地の用に供されており、地目は宅地である。 (二) 地積平成六年度の賦課期日における本件土地の登記地積は二二六・五七平方メートルである。 (三) 用途地区の区分本件土地の所在する区域は、阪急河原町駅付近のデパート等を中心に店舗や事務所等が集中する地域であり、評価基準の用途区分上、高度商業地区に該当する。 (四) 状況類似地域の区分京都市長は街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便を総合的に考慮し、概ねその状況が類似していると認められる河原町通から寺町通までの四条通に沿接する画地により形成される地域を本件土地にかかる状況類似地域としている。 (五) 主要な街路の選定京都市長は、地価公示法に基づく標準地である下京区<以下略>ほかから中京区<以下略>まで(四条河原町交差点北西角付近の富士銀行河原町支店及びユーハイムビル前)の四条通に北接する区間を本件土地にかかる主要な街路に選定している。 (六) 標準宅地の選定京都市長は、本件宅地にかかる主要な街路に沿接する地価公示法に基づく標準地(地価公示地点)と同一地点である下京区<以下略>ほかを本件土地にかかる標準宅地に選定している。 (七) 本件土地にかかる主要な街路の路線価の付設平成四年の本件土地にかかる標準宅地の地価公示価格一平方メートル当たり二五〇〇万円に、当該宅地にかかる個別要因の標準化補正率一一〇分の一〇〇、平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正率一〇〇〇分の八○二、同年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率一〇〇〇分の八七九を乗じ、その七割程度を求めると、本件土地にかかる主要な街路の路線価は単位面積当たり一一二〇万円とな 時点修正率一〇〇〇分の八○二、同年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率一〇〇〇分の八七九を乗じ、その七割程度を求めると、本件土地にかかる主要な街路の路線価は単位面積当たり一一二〇万円となる。 (八) 本件土地にかかる街路の路線価の付設京都市長は、四条通に沿接する下京区<以下略>から同町<以下略>まで(四条河原町西入北側のからふね屋珈琲四条店から花遊小路まで)の四条通に北接する区間を本件土地にかかる街路の区間に選定している。 そして、本件土地にかかる街路に沿接する宅地と主要な街路に沿接する標準宅地における価格形成要因を総合的に考慮した結果、街路条件、最寄り駅からの距離等の接近条件及び行政的条件については同等と認められるが、環境条件については、本件土地にかかる主要な街路に沿接する宅地と比較して土地利用状況が劣ることから、格差率は七パーセントと認定できる。 本件土地にかかる主要な街路の路線価単位面積当たり一一二〇万円に格差率○・九三を乗じると、本件土地にかかる街路の路線価は単位面積当たり一〇四〇万円となる。 (九) 本件土地にかかる評点数の付設本件土地にかかる街路の路線価単位面積当たり一〇四〇万円に、袋地奥行価格逓減率○・九〇、袋地均衡補正率○・七〇、特別事情による補正率○・九〇を乗じると、本件土地にかかる評点数は単位面積当たり五八九万六八○○点となり、これに地積二二六・五七平方メートルを乗じると、評点数は一三億三六〇三万七九七六点となる。 (一〇) 本件土地の固定資産価格一点当たり一円に評点数一三億三六〇三万七九七六点を乗じると、本件土地の固定資産価格は一三億三六〇三万七九〇〇円(一〇〇円未満切り捨て)となる。 3 基準日の適法性(一) 土地の固定資産評価に当たっては、評価基準に基づき、全国の土地を同一の基準で評価する 、本件土地の固定資産価格は一三億三六〇三万七九〇〇円(一〇〇円未満切り捨て)となる。 3 基準日の適法性(一) 土地の固定資産評価に当たっては、評価基準に基づき、全国の土地を同一の基準で評価すること、市町村長が評価した後、都道府県間及び各都道府県内の市町村間の評価の均衡を図るための所要の調整が行われること等から、一連の評価事務には相当の期間を要する。法第四一〇条は、固定資産の評価額を毎年二月末までに決定しなければならないと定めているところから、基準年度の賦課期日から評価事務に要する期間をさかのぼった時点の地価を基準として、賦課期日における評価額を決定することは法が当然に予想しているものである。 (二) 原告の主張する、平成六年一月一日における地価公示価格(一平方メートル当たり一三〇〇万円)を基礎に算出した路線価(単位面積当たり一〇九〇万円)は、被告が平成四年地価公示価格をもとに平成五年一月一日時点までの時点修正を行い、その七割程度を目途に評価した単位面積当たり一〇四〇万円を上回るものである。 4 評価基準の適法性(一) 袋地均衡補正率要領第二節8(11)は「袋地評点算出法」として、袋地(幅員が概ね二メートル未満の通路のみによって路線に接している画地)について、路線価に「袋地奥行価格逓減率」を乗じて求めた評点数から、三割以内の評点数を控除した評点数による(補正率の適用については、用途地区に応じて(1)商業地区、併用地区及び観光地区内の場合は原則として三割(2)その他の地区内の場合は原則として二割とする。)ものと定めている。この袋地均衡補正率による補正は、評価基準の「所要の補正」として定めたものである。 本件土地は高度商業地区に所在する袋地であることから、袋地均衡補正率は三割となる。 (二) 特別事情による補正率要領第二節8(1 による補正は、評価基準の「所要の補正」として定めたものである。 本件土地は高度商業地区に所在する袋地であることから、袋地均衡補正率は三割となる。 (二) 特別事情による補正率要領第二節8(18)は「その他の補正の適用を受ける土地の評点算出法」として、当該路線に沿接する他の画地との評価の均衡上、補正の必要があると認められる画地について、画地計算の方法を適用して算出した評点数から、利用価値の減少する程度に応じて、一割以内の評点数を控除した評点数によるものと定めている。 この特別事情による補正は、評価基準の「所要の補正」として定めたものである。 本件土地は、容積率七〇〇パーセントの高度利用の見込まれる都心地域に位置しているが、袋地であるため建築制限等を受け、宅地としての利用価値は四条通に面する周辺の宅地と比較して相当に劣っていると認められるため、同項(4)「その他特別の事情により、著しい利用価値の減少が認められるもの」として補正率は一割になる。 5 原告主張の本件土地の減価割合について原告が本件土地の個性率による減価割合として主張する〇・四二は、鑑定人Aの鑑定結果に基づくものであるが、右鑑定は本件土地を単独評価したものであり、各市町村間における評価の均衡が無視されているうえ、階層別・位置別効用比格差の判定等に誤りがある。京都市内特有の袋地の持つ次元の異なる効用である「静けさ」、「安らぎ」、「落ち着き」、「謎めかしさ」、「神秘性」といった効用を勘案し、加えて本件土地上の建物は、店舗として盛業していることを考慮するべきである。 四原告の反論要領所定の袋地均衡補正率及び特別事情による補正率による補正は、「所要の補正」を加えたことにはならない。 1 袋地均衡補正率は、商業地区を併用住宅地区・観光地区内の袋地と同じく一律に三割とし、かつ三 要領所定の袋地均衡補正率及び特別事情による補正率による補正は、「所要の補正」を加えたことにはならない。 1 袋地均衡補正率は、商業地区を併用住宅地区・観光地区内の袋地と同じく一律に三割とし、かつ三割を上限とするものであり、著しく合理性に欠ける。評価基準は間口狭小な土地について、間口狭小補正率表等の補正率を修正して適用する場合のあることを定めており、その修正した補正率を適用して補正すれば三割を超える補正は当然あり得る。 2 特別事情による補正率は一割を上限とするものであるが、対象土地の著しい利用価値の減少等の特別事情の場合に一割の補正に限定する合理的理由はない。 五被告の再反論 1 袋地均衡補正率について袋地均衡補正率が用途地区に応じて一律に補正率を定めたのは、袋地であることにより宅地本来の効用を果たすことが困難となるために生じる価格差が、宅地の用途、目的によって異なると考えられるためである。もともと評価基準が画地計算法の付表等において、用途地区にかかわらず(奥行長大補正率等)又は用途地区に応じて(奥行価格逓減率、間口狭小補正率等)一律に補正率を定めているのであるから、要領において、袋地均衡補正率が用途地区に応じて一律に定められていることをもって、評価基準に定める「所要の補正」に当たらない違法なものであるとする原告の主張は失当である。 また、商業地区等について補正率を三割としたのは、評価基準において無道路地の均衡補正率の上限が三割とされていることから、通路部分を通じて直接路線に接している要領に定める袋地について、市町村長が評価基準の無道路地の補正率を超える補正率を設けることはできないからである。 2 特別事情による補正について特別事情による補正率の上限を一割としたのは、評価基準所定の画地計算を行った後に適用される二次的な補正率であ 補正率を超える補正率を設けることはできないからである。 2 特別事情による補正について特別事情による補正率の上限を一割としたのは、評価基準所定の画地計算を行った後に適用される二次的な補正率であり、評価基準所定の画地計算の趣旨に反しない範囲で定めなければならないからである。 第三証拠証拠関係は、本件記録中の書証及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。 理由 一前提事実 1 争いがない事実原告が本件土地について一〇〇〇分の八〇五の共有持分を有しており、本件土地の固定資産税の納税義務者であること、京都市長が平成六年度の本件土地の固定資産評価額を一四億八四四八万六六〇〇円と決定し、これを固定資産課税台帳に登録し、縦覧に供したこと、原告が平成六年四月二八日、被告に対し、本件土地につき、固定資産課税台帳の登録事項に関する審査の申出をしたところ、被告は、平成七年五月二二日付けで、固定資産の価格を一三億三六〇三万七九〇〇円に修正する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし、そのころ原告に送達したことは当事者間に争いがない。 2 本件土地の形状等証拠(甲第一、第二、第五号証、乙第一号証の六、第二号証、鑑定人B、同Aの各鑑定の結果、検証の結果並びに弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる(ただし、争いのない部分も含まれている。)。 (一) 本件土地は、阪急電鉄京都線河原町駅の西方約一〇〇メートル、主要幹線街路四条通(幅員二二メートル)に面して位置し、南北の幹線街路河原町通にも近接する良好な街路条件下にあり、また両側歩道上にはアーケードが設置されており、商業地として申し分のない条件下にある。また、京都屈指の商業立地性を有する四条河原町交差点に比較的近接し、繁華性・集客性に大変優れており、中低層の店舗ビル 両側歩道上にはアーケードが設置されており、商業地として申し分のない条件下にある。また、京都屈指の商業立地性を有する四条河原町交差点に比較的近接し、繁華性・集客性に大変優れており、中低層の店舗ビル、飲食店及びデパート等が建ち並ぶ繁華街地域にある。 本件土地は、商業地域(建ぺい率八○パーセント、容積率七〇〇パーセント。ただし、耐火構造であれば建ぺい率は一〇〇パーセント。)、四五メートル高度地区、第二種建造物修景地区、駐車場整備地区、防火地域に指定されている地域に存する。 (二) 本件土地の公簿上の面積は二二六・五七平方メートル、実測面積は二二四・一六平方メートルである。 本件土地は旗竿状の袋地で、四条通との接道部である南北通路部分は、間口(南端)一・三四メートル、北端一・〇七メートル、奥行四・五七メートルであり、北側の長方形部分は、間口(東西)約一一メートル、奥行(南北)約二〇メートルである。 本件土地の北側の長方形部分には別紙物件目録二記載の建物が存在し、飲食店(和食料理)として利用されている。しかし、通路部分の間口(一・三四メートル)は建築基準法上の接道要件を満たさないため、本件土地単独での再建築は困難である。 本件土地の表地(京都下京区<以下略>)は実測面積四八・五五平方メートルで、四条通に面しており、土地上の建物は宝石店として利用されている。 二基準日の違法性の有無について平成六年度の固定資産税の賦課期日は平成六年一月一日であるところ、証拠(甲第一号証、乙第八号証の一)によれば、京都市長及び被告は平成四年地価公示価格をもとに、平成五年一月一日時点までの時点修正を行い、その七割程度を目途に本件土地にかかる主要な街路の路線価を単位面積当たり一一二〇万円と付設したことが認められる。 原告は、本件決定は、本件土地の固定資産税評 成五年一月一日時点までの時点修正を行い、その七割程度を目途に本件土地にかかる主要な街路の路線価を単位面積当たり一一二〇万円と付設したことが認められる。 原告は、本件決定は、本件土地の固定資産税評価の実質的な基準日を平成五年一月一日とするもので、基準日の違法があると主張する。 しかし、土地の評価については、評価基準に基づき、すべての土地を同一の基準で評価すること、市町村長が評価した後、都道府県間及び各都道府県内の市町村間の均衡を図るため、それぞれ所要の調整を行うこと等から、一連の評価事務には相当の期間を要するものである。このため、これらの手続を経て、二月末日までに価格を決定しなければならない等の物理的制約を考慮すると、基準年度の賦課期日から評価事務に要する期間をさかのぼった時点の時価を基準として賦課期日における価格を評価することは、技術的にやむを得ない措置というべきである。 なお、仮に平成六年一月一日における地価公示価格が固定資産税評価額を下回った場合についても、それは価格調査後の地価変動の結果に過ぎず、著しく合理性を欠くような特段の事情がない限り、これによって既に決定された価格の適法性に影響を与えるものではないと解されているところ、本件においては、原告の主張する平成六年一月一日における地価公示価格(一平方メートル当たり一三〇〇万円、乙第一号証の四)を基礎に算出した本件土地にかかる主要な街路の路線価単位面積当たり一一八〇万円は、被告が評価した一平方メートル当たり一一二〇万円を上回るものであるから、右特段の事情は認めることはできない。 したがって、本件決定が評価基準における算定基準日に反し無効であるとの原告の主張は、採用することができない。 三評価基準不適用の違法性の有無について 1 固定資産税は、資産の所有という事実に着目して課税さ って、本件決定が評価基準における算定基準日に反し無効であるとの原告の主張は、採用することができない。 三評価基準不適用の違法性の有無について 1 固定資産税は、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であるから、課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法三四一条五号)とは正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうものと解すべきである。したがって、土地の「適正な時価」の算定は、鑑定評価理論に従って個々の土地について個別的、具体的に評価することが最も正確な方法である。 しかし、課税対象となる土地は全国に大量に存在し、これらについて反復、継続的にそれぞれ一定の時間的制約の中で課税の基礎となるべき価格の評価を実施することは困難であるため、法は、評価方法を自治大臣の定める評価基準によらしめることとし、画一処理の便宜を図っているのである。 したがって、右評価基準はそれ自体が絶対的な評価ではなく、「適正な時価」を算出するための一手段に過ぎないものである。本件においては、直截に「適正な時価」を評価した鑑定人Aの鑑定の結果(以下「A鑑定」という。)が存するのであるから、右評価基準に依る必要はない。 2(一) A鑑定本件土地の平成六年一月一日時点における正常価格は一〇億四五〇〇万円である。 (1) 平成五年一月一日時点の標準画地更地価格類似の実際の取引事例から求めた比準価格は、①取引事例比較法によれば一平方メートル当たり一五〇〇万円、②収益還元法によれば収益価格は一平方メートル当たり九九一万八六〇〇円、③地価公示価格を基準とする価格は一平方メートル当たり一五二三万八〇九五円であり、①ないし③を総合すれば、標準画地の更地価格は一平方メートル当たり一五〇〇万円である。 (2) 本件土地の個性率① ③地価公示価格を基準とする価格は一平方メートル当たり一五二三万八〇九五円であり、①ないし③を総合すれば、標準画地の更地価格は一平方メートル当たり一五〇〇万円である。 (2) 本件土地の個性率① 階層別・位置別効用比較差に着目する試算法本件土地は、単独では再建築が困難な土地であり、建替えによる利用効率の上昇を望めず、現況利用を持続せざるを得ないので、現況利用に基づく効用比と袋地でない標準画地において実現されるべき最有効使用に基づく効用比との格差比較をすると、袋地としての個性率は二〇・六パーセントである。 ② 表地の全面買収コストに着目する試算法本件土地の袋地状態を解消する手段として表地の買収が考えられる。ただし、その際は本件土地所有者の表地の必要度及び表地買収後の一体画地としての価値上昇から見て、表地の買収価格は相当高額となることが推定され、この点のデメリットを控除すれば、袋地としての個性率は七八・三パーセントである。 ③ 表地の進入路拡幅コストに着目する試算法本件土地は通路部分の間口が二メートル以下であり、建築基準法の接道要件を満たしておらず再建築困難であるので、再建築可能な最低限の接道間口二メートルに進入路を拡幅するために必要なコストを控除することも考えられる。進入路部分として幅一メートル、地積四・五七平方メートルの表地を買収するものとみなし、この点のデメリットを控除すれば、袋地としての個性率は七一パーセントである。 ④ 京都市の固定資産評価要領に基づく試算法要領に基づいて、袋地奥行価格逓減率〇・九〇、袋地均衡補正率〇・七〇を乗じると、本件土地の袋地としての個性率は六三パーセントとなる。これに特別事情による補正率〇・九〇を乗じると五六・七パーセントとなる。 ⑤ 評価基準に基づく試算法評価基準に基づいて、袋地奥行価格逓減率〇 と、本件土地の袋地としての個性率は六三パーセントとなる。これに特別事情による補正率〇・九〇を乗じると五六・七パーセントとなる。 ⑤ 評価基準に基づく試算法評価基準に基づいて、袋地奥行価格逓減率〇・九三、間口狭小〇・八〇、奥行長大〇・九〇を乗じると、本件土地の袋地としての個性率は六七パーセントとなる。 「①対②③の平均値」を六対四とすれば、本件不動産の袋地としての個性率は四二パーセントである。 (3) 鑑定評価額平成五年一月一日から平成六年一月一日の時点修正率はマイナス二六パーセントである。 以上より、本件土地の平成六年一月一日の鑑定評価額は一〇億四五〇〇万円となる。 (計算式)一平方メートル当たり一五〇〇万円(平成五年一月一日の標準画地更地価格)×○・七四(時点修正)×〇・四二(本件土地の個性率)×二二四・一六平方メートル(実測面積)=約一〇億四五〇〇万円(二) A鑑定に対する被告の主張これに対し、被告はA鑑定の個性率の算定には誤りがある旨指摘し、乙第二五号証に右主張に沿う記載がある。そこで、以下検討する。 (1) まず、被告は、A鑑定が前記(一)(2)のとおり①ないし③の各試算法のウエイト付について「①対②③の平均値」を六対四としている点をとらえて、①試算を主とする理論的な根拠はなく、「①対②③の平均値」は五対五が限度であると主張する。 しかし、A鑑定が右ウエイトを採用する理由として挙げる、②③の各試算は価値上昇の期待性のみを反映するもので実現が保証されるものではなく、これらから求められた個性率は上限値として位置づけせざるを得ないとの主張は十分首肯しうるものであり、現に本件土地の表地上の建物は宝石店として利用されており、近隣は集客性に優れた商業地であることに鑑みればその買収は相当困難であることが予測されるから、A鑑定の いとの主張は十分首肯しうるものであり、現に本件土地の表地上の建物は宝石店として利用されており、近隣は集客性に優れた商業地であることに鑑みればその買収は相当困難であることが予測されるから、A鑑定の右算定は合理性を有すると認められ、これに反する証拠はないものである。 (2) 次に、被告は、A鑑定の①効用比較差に基づく値である二〇・六パーセントは、制限容積率七〇〇パーセントを完全に充足した建物を本件土地上の建物との対比において導かれたものであるが、本件土地の存する四条通の北側、新京極通から裏寺通までの東西約一五〇mの間に存する全一七棟の一棟当たり平均は三・三階にすぎないから、三階で最有効使用の範囲にあるとみるべきであると主張する。 しかし、本件土地上の建物を含む右一七棟の敷地の属性としては三階を超える建物を建築することが可能なのであるから、仮に現在の建物が三階であったとしても、これを最有効使用であると見る合理的理由はないといわざるを得ない。 (3) さらに、被告は、京都市内特有の袋地の持つ次元の異なる効用である「静けさ」、「安らぎ」、「落ち着き」、「謎めかしさ」、「神秘性」といった効用を挙げ、本件土地上の建物が店舗として盛業していることを考慮して、階層別効用比を本件土地上の建物の一階部分を七〇、二階部分を四〇であると主張する。 しかし、被告が挙げる右のような効用は見方を変えれば、見つけにくい、分かりにくい、近づきにくい、さびしい、入りにくいなどの消極的な効用にほかならないのであって、これらが客観的な交換価値に積極的な影響を持つものであるかどうかは大いに疑問である。また、本件土地上の建物が盛業しているとしても、和食料理店という現在の経営形態ゆえに、袋地であることにより被るデメリットが他の業種に比して比較的小さいということに過ぎず、それとても飲 いに疑問である。また、本件土地上の建物が盛業しているとしても、和食料理店という現在の経営形態ゆえに、袋地であることにより被るデメリットが他の業種に比して比較的小さいということに過ぎず、それとても飲食店において出入り口が公道に面していないことによるデメリットを補うものではない。 とすれば、A鑑定が本件土地が正面道路から直接建物を視認しがたい、いわゆる「裏地」であることを理由に現況利用を前提とした効用比を一階部分を五〇、二階部分を三五としたことには十分合理性があると認められ、他にこの鑑定に反する事実を認めるに足りる証拠はない。 (4) 以上のとおり、A鑑定の個性率の算定は正当なものであり、この評価を左右する事情は認めがたいから、右(一)(1)ないし(3)の計算式に従い、本件土地の平成六年一月一日時点における正常価格は一〇億四五〇〇万円であることが認められる。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件決定のうち、一〇億四五〇〇万円を超える部分は、評価基準における「所要の補正」をしなかったことに帰着するから違法といえる。 四結論よって、原告の請求は、本件決定のうち、一〇億四五〇〇万円を超える部分の取消しを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民訴法六一条、六四条を適用して、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成一〇年七月二二日)京都地方裁判所第三民事部裁判官山本和人裁判官平井三貴子裁判長裁判官大出晃之は、転補につき、署名押印することができない。 裁判官山本和人 印することができない。 裁判官山本和人
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