平成27(ワ)10139 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月28日 東京地方裁判所
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判決文本文28,670 文字)

- 1 -平成29年3月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第10139号地位確認等請求事件口頭弁論終結日平成29年3月7日判決 主文 1 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,平成26年2月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,31万2500円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,平成26年6月から本判決確定の日まで,毎年6月15日及び12月10日限り,各68万8500円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求主文第1項ないし第3項と同旨。 2 予備的請求被告は,原告に対し,5972万6843円及びこれに対する平成26年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 - 2 -本件は,被告が会社法上の会社分割(新設分割)の方法によって自社工場を分社化した際に,同会社分割により設立された会社(新設会社)において被告から労働契約を承継するとされた原告が,被告に対し,①主位的に,上記労働契約の承継は,原告との関係で手続に瑕疵があるので,原告はその効力を争うことができる旨を主張して,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と,同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求め,②予備的に,上記新設会社の一人株主であった被告が,会社分割前の説明に反して,同会社分割の1年半後に同新設会社の解散決議をし を有する地位にあることの確認と,同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求め,②予備的に,上記新設会社の一人株主であった被告が,会社分割前の説明に反して,同会社分割の1年半後に同新設会社の解散決議をして,同会社の従業員であった原告を失職させるに至った旨やこの失職を回避するために必要な措置を講じることを怠った旨等を主張して,故意又は過失による不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実又は後掲の証拠(枝番のあるものは枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によって認められる事実)当事者ア被告は,昭和48年9月20日に設立され,化粧品類及びその関連製品の製造,加工,輸出入及び売買等を目的とする株式会社である。 イ原告は,昭和61年1月13日,アルバイトとして被告で稼働し,昭和62年1月1日以降,被告との間で正規雇用に係る労働契約を締結した者である。 (甲1,25,乙1,弁論の全趣旨)関係法令等の定め(いずれも後記の本件会社分割当時に適用されるもの)ア会社法(平成17年法律第86号。平成23年法律第53号による改正前のもの。)762条1項一又は二以上の株式会社又は合同会社は,新設分割をすることができる。この場合においては,新設分割計画を作成しなければならない。 - 3 -764条1項新設分割設立株式会社(判決注・一又は二以上の株式会社が新設分割をする場合において,新設分割により設立する株式会社。同法763条柱書,同条1号参照。)は,その成立の日に,新設分割計画の定めに従い,新設分割会社(判決注・新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする株式会社。同条5号参照。)の権利義務を承継する。 イ会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12年法律第103号。 設分割会社(判決注・新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする株式会社。同条5号参照。)の権利義務を承継する。 イ会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12年法律第103号。平成17年法律第87号による改正後のもの。以下「承継法」という。)2条1項会社(株式会社及び合同会社をいう。以下同じ。)は,会社法第五編第三章及び第五章の規定による分割(吸収分割又は新設分割をいう。以下同じ。)をするときは,次に掲げる労働者に対し,通知期限日までに,当該分割に関し,当該会社が当該労働者との間で締結している労働契約を当該分割に係る承継会社等(・・・(中略)・・・新設分割にあっては同法第763条に規定する新設分割設立会社をいう。以下同じ。)が承継する旨の分割契約等(・・・(中略)・・・新設分割にあっては新設分割計画(同法第762条第1項の新設分割計画をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)における定めの有無,第4条第3項に規定する異議申出期限日その他厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。 一当該会社が雇用する労働者であって,承継会社等に承継される事業に主として従事するものとして厚生労働省令で定めるもの・・・(以下略)2条3項前二項・・・(中略)・・・の「通知期限日」とは,次の各号に掲げ - 4 -る場合に応じ,当該各号に定める日をいう。 一株式会社が分割をする場合であって当該分割に係る分割契約等について株主総会の決議による承認を要するとき当該株主総会・・・(中略)・・・の日の二週間前の日の前日・・・(以下略)3条前条第1項第1号に掲げる労働者が分割会社(判決注・2条1項の分割をする会社をいう。2条2項参照。)との間で締結している労働契約であって, 日の二週間前の日の前日・・・(以下略)3条前条第1項第1号に掲げる労働者が分割会社(判決注・2条1項の分割をする会社をいう。2条2項参照。)との間で締結している労働契約であって,分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがあるものは,当該分割契約等に係る分割の効力が生じた日に,当該承継会社等に承継されるものとする。 4条1項第2条第1項第1号に掲げる労働者であって,分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものは,同項の通知がされた日から異議申出期限日までの間に,当該分割会社に対し,当該労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて,書面により,異議を申し出ることができる。 7条分割会社は,当該分割に当たり,厚生労働大臣の定めるところにより,その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。(以下,これを「7条措置」という。)8条厚生労働大臣は,この法律に定めるもののほか,分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置に関し,その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。 - 5 -ウ商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正後のもの。以下「商法等改正法」という。)附則5条1項会社法の規定に基づく会社分割に伴う労働契約の承継等に関しては,会社分割をする会社は,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律第2条第1項の規定による通知をすべき日までに,労働者と協議をするものとする。(以下,この協議を「5条協議」という。)エ分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関す による通知をすべき日までに,労働者と協議をするものとする。(以下,この協議を「5条協議」という。)エ分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号。平成24年厚生労働省告示第518号による改正前のもの。以下「本件指針」という。)第2「分割会社及び承継会社等が講ずべき措置等」の1項「労働者及び労働組合に対する通知に関する事項通知の時期」「法(判決注・本件指針の引用部分における「法」とは「承継法」のことをいう。)第2条第1項及び第2項の労働者又は労働組合への通知は,次に掲げる会社法(平成17年法律第86号)に規定する日のうち,株式会社にあっては,イ又はロのいずれか早い日と同じ日に・・・(中略)・・・行われることが望ましいこと。 イ吸収分割契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置く日ロ株主総会を招集する通知を発する日・・・(以下略)」第2の4項「労働者の理解と協力に関する事項」商法等改正法附則第5条の協議イ労働者との事前の協議商法等改正法附則第5条の規定により,分割会社は,法第2 - 6 -条第1項の規定による通知をすべき日(以下「通知期限日」という。)までに,承継される事業に従事している労働者と,会社分割に伴う労働契約の承継に関して協議をするものとされていること。 分割会社は,当該労働者に対し,当該効力発生日以後当該労働者が勤務することとなる会社の概要,当該労働者が法第2条第1項第1号に掲げる労働者に該当するか否かの考え方等を十分説明し,本人の希望を聴取した上で,当該労働者に係る労働契約の承継の有無,承継するとした場合 することとなる会社の概要,当該労働者が法第2条第1項第1号に掲げる労働者に該当するか否かの考え方等を十分説明し,本人の希望を聴取した上で,当該労働者に係る労働契約の承継の有無,承継するとした場合又は承継しないとした場合の当該労働者が従事することを予定する業務の内容,就業場所その他の就業形態等について協議をするものとされていること。 ロ法第7条の労働者の理解と協力を得る努力との関係当該協議は,承継される事業に従事する個別労働者の保護のための手続であるのに対し,法第7条の労働者の理解と協力を得る努力は,下記のとおり,会社分割に際し分割会社に勤務する労働者全体の理解と協力を得るためのものであって,実施時期,対象労働者の範囲,対象事項の範囲,手続等に違いがあるものであること。 ・・・(中略)・・・ホ協議開始時期分割会社は,通知期限日までに十分な協議ができるよう,時間的余裕をみて協議を開始するものとされていること。 ヘ会社分割の無効の原因となる協議義務違反商法等改正法附則第5条で義務付けられた協議を全く行わなかった場合又は実質的にこれと同視し得る場合における会社分 - 7 -割については,会社分割の無効の原因となり得るとされていることに留意すべきであること。 法第7条の労働者の理解と協力を得る努力イ内容分割会社は,法第7条の規定に基づき,当該会社分割に当たり,そのすべての事業場において,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との協議その他これに準ずる方法によって,その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとすること。 「その他これに準ずる方法」としては,名称のいかん 場合においては労働者の過半数を代表する者との協議その他これに準ずる方法によって,その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとすること。 「その他これに準ずる方法」としては,名称のいかんを問わず,労働者の理解と協力を得るために,労使対等の立場に立ち誠意をもって協議が行われることが確保される場において協議することが含まれるものであること。 ロ対象事項分割会社がその雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める事項としては,次のようなものがあること。 会社分割をする背景及び理由効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行に関する事項労働者が法第2条第1項第1号に掲げる労働者に該当するか否かの判断基準法第6条の労働協約の承継に関する事項会社分割に当たり,分割会社又は承継会社等と関係労働組合又は労働者との間に生じた労働関係上の問題を解決するた - 8 -めの手続・・・(中略)・・・ニ開始時期等法第7条の手続は,遅くとも商法等改正法附則第5条の規定に基づく協議の開始までに開始され,その後も必要に応じて適宜行われるものであること。」工場の分社化とそれに伴う原告の労働契約等ア被告は,昭和51年2月に厚木工場を完成させ,同所で自社ブランドの化粧品等の製造を行っていたが,平成24年7月2日,会社法上の新設分割の方法によって厚木工場につき会社の分割(以下「本件会社分割」という。)をして,被告の100パーセント子会社であるオアスグローバルマニュファクチュアリング株式会社(以下「オアス」という。)を設立した。 イ原告は,平成24年当時,被告の厚木工場の製造ラインで勤務していたところ,前記アのとおり,同年7月2日に同工場が被告から分社化されることに伴って,同年6月10日付けで 」という。)を設立した。 イ原告は,平成24年当時,被告の厚木工場の製造ラインで勤務していたところ,前記アのとおり,同年7月2日に同工場が被告から分社化されることに伴って,同年6月10日付けで被告とオアスに対して秘密保持に関する誓約書をそれぞれ提出した上,同年7月2日までにオアスとの間の雇用契約書に署名押印し,その労働契約が被告からオアスへ承継される取扱いとなった。 (甲1,5~7,乙2,弁論の全趣旨)ウ平成24年5月当時,被告の厚木工場のA工場長(なお,同工場長は,オアス設立後,その代表取締役に就任した。)からは,原告を含む同工場の従業員らに対し,同工場が被告から分社化されるのに際して,同従業員らの労働契約関係は従前と同じ条件のまま新設会社に移行する旨の説明がされたところ(この点は争いがない。),オアスにおける原告の給与は,月額合計31万2500円(基本給月額30万6000円,家族手当月額6500円)であり,当月末日締め,当月25日払とされていた。 - 9 -(甲7,9の1~4,12,弁論の全趣旨)オアスによる原告の解雇等アオアスは,原告に対し,平成26年1月20日付け解雇通知書をもって,オアスの一人株主である被告が同月31日にオアスの解散決議をすることを踏まえ,それを理由に同日付けでオアスを解雇する旨の意思表示をした。 イオアスは,平成26年1月31日,株主総会の決議により解散した。 (甲8,乙2) 3 争点主位的請求(地位確認請求,賃金請求及び賞与請求)に関してア本件会社分割に伴う原告の労働契約の承継に関する手続が5条協議の趣旨に違反するかどうか(争点1)イ原告が被告に対して退職の意思表示をしたかどうか(争点2)ウ原被告間の労働契約が黙示に合意解除されたかどうか(争点3) 約の承継に関する手続が5条協議の趣旨に違反するかどうか(争点1)イ原告が被告に対して退職の意思表示をしたかどうか(争点2)ウ原被告間の労働契約が黙示に合意解除されたかどうか(争点3)エ原告の主位的請求が信義則に反する訴権の行使といえるかどうか(争点4)オ賃金請求権の額(争点5)カ賞与請求権の有無(争点6)予備的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)に関してア不法行為の成否(争点7)イ損害額(争点8)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件会社分割に伴う原告の労働契約の承継に関する手続が5条協議の趣旨に違反するかどうか)原告の主張ア会社分割においては,労働者保護の見地から,分割会社は労働者との間で株式会社の新設分割において,新設会社への労働契約の承継の有無,分 - 10 -割後の業務の内容・就業場所・就業形態等について会社の考え方を説明し,本人の希望を聴取し,協議をしなければならないところ,承継法3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で,商法等改正法附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議(5条協議)が全く行われなかった場合,又は,上記協議が行われたものの,その際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,当該労働者は当該承継の効力を争うことができるものとされている(最高裁平成20年(受)第1704号同22年7月12日第二小法廷判決・民集64巻5号1333頁参照)。 イ上記判旨を踏まえれば,5条協議は,分割会社からの一方的な説明や,それに対する質問の受付を行っていたということでもって「協議」を代替でき 2日第二小法廷判決・民集64巻5号1333頁参照)。 イ上記判旨を踏まえれば,5条協議は,分割会社からの一方的な説明や,それに対する質問の受付を行っていたということでもって「協議」を代替できるものではないことはいうまでもなく,分割会社と個々の労働者(労働組合が個々の労働者の意向を代理して特定して述べる場合を含む。)との間で,実際かつ個別に行われるべき必要があるし,個別労働者が協議において自らの労働契約の承継に係る意向等を明らかにすることができるものでなくてはならず,分割会社のなす説明が,特に雇用継続や将来の見通しについて,根拠のないもの又は虚偽のものであれば,個々の労働者の労働契約の承継の是非についての意向を誤らせるものであるから,協議として不十分であるといわざるを得ない。 また,5条協議の労働者保護の趣旨に鑑みれば,その実施時期は,分割会社が分割計画書を作成し,これを公表して,個々の労働者が労働契約のびロに鑑みて,分割計画書を本店に据え置く日又は株主総会の招集通知を発する日のいずれか早い日までに相当の期間を置いて行われなければなら - 11 -ないというべきである。 ウ 5条協議の実施時期に関して,仮に被告の主張する平成24年6月12日を期限とすることを前提としたとして,被告は,それまでに,平成24年5月の厚木工場での朝礼におけるA工場長による説明,同年6月7日のカフェテリア(社員食堂)での被告の人事部担当者による説明会等を実施し,個別の質問を受け付けたこと等でもって,5条協議を個別に実施したと推認できるとか,商法等改正法や承継法が5条協議の実施を求めた趣旨に反するものではない旨を主張する。 は,分割会社が,労働者に対し,新設される会社の概要,当該労働者が承継法2条1項1号に掲げる労働者に該当するか否かの考え方等を 承継法が5条協議の実施を求めた趣旨に反するものではない旨を主張する。 は,分割会社が,労働者に対し,新設される会社の概要,当該労働者が承継法2条1項1号に掲げる労働者に該当するか否かの考え方等を十分説明することを前提に,「本人の希望を聴取した上で,当該労働者に係る労働契約の承継の有無,承継するとした場合又は承継しないとした場合の当該労働者が従事することを予定する業務の内容,就業場所その他の就業形態等について協議をするもの」であるところ,本件では,上記説明会等でそもそも本件分割に伴う労働契約の承継に関して被告から原告を含む従業員らに対して十分な説明がされていない上,上記内容に沿った協議が全く行われておらず,それどころか,特に平成24年6月7日のカフェテリアでの説明会では,契約が承継されると被告が決定した従業員に対して,雇用関係の承継についての異議を聴取しない旨を繰り返し述べることに終始し,労働契約の承継に係る意向を従業員らの側で明らかにする機会は全く与えられなかった。また,新設される会社についても「社名が変わるだけで他に変わりはないから安心するように」という旨の明るい見通しを述べるだけで,本件指針に沿った説明や協議は果たされていない。 以上のような事情を踏まえれば,本件では,本件会社分割に伴い原告の労働契約が被告からオアスに承継されるに当たって,5条協議は全く行わ - 12 -れなかった,あるいは会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかであり,そうすると,原告は,前記判例に従って,同承継の効力を争うことができ,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と,同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求めることができるというべきである。 被告の主張ア本件会社分 ,同承継の効力を争うことができ,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と,同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求めることができるというべきである。 被告の主張ア本件会社分割当時における被告の人事部担当者や,オアスの人事労務手続の担当者等が全員退職し,当時のやり取りに係るメール等のデータが削除されていること,被告がオアス解散後の平成26年6月に本社オフィスを移転したことで資料等が整理されたために従前の状況について詳細を確認することが難しい状況に置かれていること等の事情があるものの,そのような限定された状況の中から明らかとなる事実からでも,被告が,原告を含む従業員らに対し,本件会社分割に伴う労働契約の承継に関して,個別協議を実施していたことを合理的に推認することができる。 つまり,被告においては,平成23年末頃までに厚木工場を分社化する方針を決定したところ,①被告が本件会社分割について相談していた弁護士が平成24年4月11日付けで「労働者との個別協議(商法改正附則§5)」の実施を求めた日程表を人事労務手続担当者に送付していること,②被告が,原告を含む従業員らに対し,平成24年5月の厚木工場での朝礼におけるA工場長による説明,同年6月7日のカフェテリアでの被告の人事労務手続担当者による説明会等において,多数回にわたり,本件会社分割に伴う労働契約の承継に係る説明を実施していること,③退職に係る被告に宛てた誓約書及び入社に係るオアスへの誓約書を原告が上司から手交されていること,④前記②の同月7日実施に係るカフェテリアでの説明会で被告の人事部担当者が不明な点についての質問を受け付ける旨を明らかにしたところ(甲18),同月12日の段階で,被告の下に個々の従業 - 13 -員から一定数の質問が寄せられていたこと(乙 会で被告の人事部担当者が不明な点についての質問を受け付ける旨を明らかにしたところ(甲18),同月12日の段階で,被告の下に個々の従業 - 13 -員から一定数の質問が寄せられていたこと(乙12),⑤原告が,おそらく本件会社分割に伴う労働契約の承継を争うために同年5月24日付けで外部労働組合に一時加入したにもかかわらず,わずか1週間後に同組合を脱退し(乙13,14),同年6月以降,上記の各誓約書及びオアスとの間の雇用契約書への署名捺印及びその提出に唯々諾々と応じ,労働契約の承継に何ら異議を述べていなかったことに照らせば,被告が原告に対して個別協議を適切に実施していたことが合理的に推認できる。 なお,被告が本訴において上記のように本件に関わる詳細を確認するこよる本訴提起が後れてなされたことも影響しているものといえ,5条協議違反の有無を検討するに当たって,この点を看過すべきではない。特に,原告が,本訴における従前の主張に反し,当事者尋問において初めて,上司であるBスーパーバイザーとの間で個別面談を実施して自身の希望を述べる機会があったことを明言するに至ったことに照らせば,被告の5条協議違反の有無を検討するに当たって,Bスーパーバイザー及びその上司であったCの証人尋問が必要不可欠であり,原告の上記のような本訴提起の後れと本訴手続内における供述の変遷をさて措いて,被告の正当な主張立証の機会を奪うことは許されない。 イまた,そもそも原告が引用する判例も,労働契約の承継に同意した社員についてまでも,個別に面談を実施しなければならない旨を判示したものではなく,本件において,前記アのとおり,被告が平成24年5月以降多数回の説明会を実施し,質問を受け付けたところ,被告の下に個々の従業員から一定数の質問が寄せられていることに鑑みれば,仮に原 たものではなく,本件において,前記アのとおり,被告が平成24年5月以降多数回の説明会を実施し,質問を受け付けたところ,被告の下に個々の従業員から一定数の質問が寄せられていることに鑑みれば,仮に原告との間で個別協議がなされていなかったとしても,それは,原告が各誓約書やオアスとの雇用契約書に署名捺印した上でこれらを提出し,労働契約の承継に同意しており,もはや個別面談の実施が必須の状況になかったからにほか - 14 -ならず,そのような事情を踏まえれば,被告において,承継法が5条協議を求めた趣旨に反するものと評価されるいわれはない。 本件において被告が行った手続,すなわち,会社分割の計画及び会社分割が社員の労働条件に与える影響の有無や内容等について社員全体への説明会を開催し,個別の質問等がある社員に対しては会社の人事担当者や上司に個別に相談をするよう呼びかけ,その上で質問や自己の希望に関する相談をしてきた社員については個別に面談を行うという手続は,会社分割時の5条協議義務履践の方法として実務上極めて一般的かつ広く行われている方法であり,これでもって5条協議違反を問われるならば,会社分割手続の法的安定性は著しく損なわれ,将来において企業再編等を検討する会社は,会社分割に伴う労働契約承継の効力が否定されるリスクを恐れ,会社分割手続を選択すること自体を避けざるを得なくなり,企業組織再編の実務に与える影響は計り知れない。 ウちなみに,原告は,5条協議の実施時期について,分割会社が分割計画書を作成し,これを公表するまでに(本件でいえば平成24年5月16日までに),あるいは,分割計画書を本店に据え置く日又は株主総会の招集通知を発する日のいずれか早い日までに相当の期間を置いてなされるべき旨を主張するが,本件会社分割は,株主総会の決議による 5月16日までに),あるいは,分割計画書を本店に据え置く日又は株主総会の招集通知を発する日のいずれか早い日までに相当の期間を置いてなされるべき旨を主張するが,本件会社分割は,株主総会の決議による承認を要するもので,同決議が平成24年6月27日付けでなされたことからすると,協議を行う期限は同月12日であり(商法等改正法附則5条,承継法2条3項1号),原告の上記主張は理由がないものといわざるを得ない。いずれにせよ,被告は,その期限までに,多数回にわたる説明を実施し,質問も受け付けていたのであるから,何ら違反を問われるいわれはない。 2 争点2(原告が被告に対して退職の意思表示をしたかどうか)被告の主張仮に本件会社分割に伴う原告の労働契約の承継が5条協議の趣旨に違反す - 15 -るものであったとしても,原告は,被告に対し,「今般私は,2012年(判決注・平成24年)7月1日付をもって,貴社を退職することになりました」と記入された誓約書を署名捺印の上で提出して退職の意思表示を明らかにし,被告はこれを受領して承認しているから,原被告間の退職合意が有効に成立している。 原告の主張上記誓約書の文言上,その趣旨が退職の意思表示ではなく,会社分割後の守秘約束にあることは明白で,事実経過を記載したにすぎない前段部分をもって,原告が被告を退職する旨の意思表示をしたとはいえない。 3 争点3(原被告間の労働契約が黙示に合意解除されたかどうか)被告の主張原告が被告からの退職に言及した誓約書を差し入れたこと,そして,その後,被告とは別会社であるオアスで勤務を開始し,その時点から約2年9か月,オアスを解雇されてから1年2か月もの間,原告が被告からの退職を何ら争ってこなかったことを踏まえると,原被告間の労働契約は,少なくとも黙示 会社であるオアスで勤務を開始し,その時点から約2年9か月,オアスを解雇されてから1年2か月もの間,原告が被告からの退職を何ら争ってこなかったことを踏まえると,原被告間の労働契約は,少なくとも黙示的に合意解除されたものと解すべきである。 原告の主張被告は,平成24年当時,本件会社分割に伴う労働契約承継の手続を原告に対して取っていたものであるところ,同契約の承継とは,同契約の一方当事者が変更するのみで,同契約自体はそのまま存続することを意味するから,これに伴う手続に同契約を退職する旨の意思表示が含まれると考える余地はなく,原被告間に退職の意思表示に関するやり取りがない以上,「原告が被告からの退職を争ってこなかった」という被告の主張は前提を欠くものというほかない。 4 争点4(原告の主位的請求が信義則に反する訴権の行使といえるかどうか)被告の主張 - 16 -原告が本件会社分割に伴いオアスで勤務を開始してから約2年9か月,オアスを解雇されてから1年2か月もの間,労働契約の承継の効力を全く問題としてこなかったにもかかわらず,そのような状況を前提とする被告やオアスの企業活動が長期間にわたって継続してきたことに鑑みると,原告が,本訴において,突如としてこれを争うことは,信義則に反する訴権の行使に当たり,不適法であることは明らかである。 原告の主張かつて被告の従業員であって本件会社分割に伴ってオアスで勤務するようになった原告は,被告によるオアスの解散のため失職するまで,オアスが被告の子会社として従前と変わらず営業を続ける旨の被告の説明を信じていたし,上記解散のため失職して初めて不利益を生じたのであるから,提訴が遅いという趣旨の被告の主張が当を得ないことは明らかである。 原告は,上記解雇の前後を通じて,裁判で被告の責任 告の説明を信じていたし,上記解散のため失職して初めて不利益を生じたのであるから,提訴が遅いという趣旨の被告の主張が当を得ないことは明らかである。 原告は,上記解雇の前後を通じて,裁判で被告の責任を追及する可能性がある旨を予告しており,被告の代理人弁護士もその点は了知していたもので(甲24),法的構成の検討などのために,解雇から本訴提起までにやや時間を要したことはあるものの,不法行為に基づく請求権の消滅時効が3年であることとの均衡を実質的に考えても,原告が本訴において労働契約の承継の効力を争うことが,信義則に反する訴権の行使に当たるなどといえないことは明らかである。 5 争点5(賃金請求権の額)原告の主張原告の給与は,少なくとも月額合計31万2500円(基本給30万6000円,家族手当6500円)を下らず,その支払方法は,当月末日締め,当月25日払とされていた。 被告の主張原告の主張する給与は,オアス在職当時のものにすぎず,被告在職当時の - 17 -ものではない。 6 争点6(賞与請求権の有無)原告の主張原告の賞与は,平成25年の実績についてみれば,同年6月14日に68万8500円,同年12月10日に68万8500円が支給されたもので,平成26年以降の支給額がこれを下回る理由はないというべきである。 被告の主張被告の給与規定には,「会社は,毎年6月および12月に会社の業績を考慮した上で,賞与を支給することがあります。」とあるにすぎず,賞与の支給の有無は被告の裁量に委ねられており,無条件に賞与の支払義務を負担するものではない。 7 争点7(不法行為の成否)原告の主張仮に原告の労働契約のオアスへの承継が無効でなかったとしても,被告は,確たる根拠もないままに明るい見通しを適当に述べて,原 を負担するものではない。 7 争点7(不法行為の成否)原告の主張仮に原告の労働契約のオアスへの承継が無効でなかったとしても,被告は,確たる根拠もないままに明るい見通しを適当に述べて,原告を含む自社従業員との労働契約をオアスに承継させておきながら,短期間のうちにオアスへの発注を打ち切り,一人株主としてオアスの解散決議を行って,原告を含む従業員らを失職させ,さらにその際に失職回避のために必要な措置を講ずることなく,故意又は過失によって,その労働契約上の権利を侵害した。 被告の主張被告が平成25年8月以降にオアスへの発注を取りやめて外注に切り替えたことや,平成26年1月にオアスの解散決議を行ったことは,オアスの赤字状態が改善せず,事業としての継続性が見込めなかったことに起因するものであり,いずれの行為にも違法性はなく,不法行為として評価されることはあり得ない。まして,被告が当初からオアスの解散を計画していたようなことは全くない。オアスの株主である被告が具体的な法律上の根拠なくオア - 18 -スの従業員の失職を回避するために必要な措置を講ずる根拠もない。 8 争点8(損害額)原告の主張ア賃金に係る逸失利益 5372万1993円失職直前の平成25年の年収・542万6464円×ライプニッツ係数9.9(失職時50歳から再雇用後の定年である65歳までの14年1月に対するもの)イ退職金に係る逸失利益 57万5137円退職年金規定に基づき,被告から得られたであろう退職金731万3081円から,オアスから受領した退職金673万7944円を控除した金額。 ウ弁護士費用相当損害上記ア及びイの合計額の10パーセントである542万9713円エ以上によれば,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠 た退職金673万7944円を控除した金額。 ウ弁護士費用相当損害上記ア及びイの合計額の10パーセントである542万9713円エ以上によれば,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償として合計5972万6843円及びこれに対する不法行為の日(被告がオアスの解散決議をして原告を失職させるに至った日)である平成26年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 被告の主張争う。原告の主張する利益は実質的に未就労状態における将来分の賃金を請求することにほかならず,不法行為との関係で法律上保護に値する利益とは評価し得ない。 第4 当裁判所の判断 1 主位的請求(地位確認請求,賃金請求及び賞与請求)に関して,争点1(本件会社分割に伴う原告の労働契約の承継に関する手続が5条協議の趣旨に違反するかどうか)について - 19 -はじめに原告は,本件会社分割に伴い原告の労働契約が被告からオアスに承継されるに当たって,5条協議が全く行われなかった,あるいは会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかであるので,原告において上記承継の効力を争うことができ,したがって,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と,同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求めることができる旨を主張するのに対し,被告は,被告が原告に対して労働契約の承継に当たって個別協議を実施したことが合理的に推認できることや,本件の事情に鑑みて,被告において承継法が5条協議を求めた趣旨に反するものと評価されるいわれはない旨等を主張するので,以下,検討する。 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠(枝番のあるものは特に断らない限り枝番を含む て承継法が5条協議を求めた趣旨に反するものと評価されるいわれはない旨等を主張するので,以下,検討する。 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠(枝番のあるものは特に断らない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,次のような事実が認められる。 ア被告は,化粧品類及びその関連製品の製造,加工,輸出入及び売買等を目的とする株式会社であるところ,厚木工場(昭和51年2月完成)で自社ブランドの化粧品等の製造を行っていた。 (前記前提事実ア,同ア)平成24年4月9日,当時の被告代表者であるD元社長は,被告の従業員のうちマネージャー以上の役職にある者に対し,国内外への自社以外の企業やベンダーとのビジネス拡大(OEM市場への参入,海外顧客への販売,海外ベンダーからの購入等)を実現するために,同年7月2日に「製造並びに物流部門を独立した法人格として,分社化すること」(本件会社分割)を決定した旨等を公表した。また,この発表内容は,その後,同年4月25日に,メールでもって,他の一般従業員にも周知された。 - 20 -(甲3,乙3)D元社長の上記発表を踏まえて,被告から委任を受けた弁護士(本訴の被告訴訟代理人弁護士らではない。)は,遅くとも平成24年4月11日までに,本件会社分割に係る日程表を作成し,これを被告の人事労務手続担当者であるEらに送付した。その日程表には,予定事項として,同年5月中旬頃に「労働者との個別協議(商法改正附則§5)」を行う旨が記載されていた。 (乙6,弁論の全趣旨)イ原告は,平成24年当時,被告の厚木工場の製造ラインで勤務していたところ,同年5月上旬頃の同工場における朝礼の場で,他の従業員とともに,A工場長から本件会社分割に関する説明を受けた。その内容について,原告は,A工場長か ,被告の厚木工場の製造ラインで勤務していたところ,同年5月上旬頃の同工場における朝礼の場で,他の従業員とともに,A工場長から本件会社分割に関する説明を受けた。その内容について,原告は,A工場長から,厚木工場を分社化する目的として,被告の製品に加えて他の化粧品会社の製品を作ること(OEM市場への参入),分社化した後の従業員の労働条件について,何も変わらず,同じ職場(厚木工場)で同じ賃金で働いてもらうという説明があったものと認識している。 (前記前提事実ア,原告2,3,8頁)他方で,被告の人事・総務本部は,A工場長を通じて,原告に対し,平成24年5月7日から同月22日頃にかけて, 本件会社分割(厚木工場の分社化)による組織再編成という名目の下,退職勧奨を行い,同年5月24日までにこれを受け入れるかどうか,その意向を明らかにするよう要請した。ちなみにその内容は,仮に同年6月30日付けで退職した場合,退職一時金(確定給付年金及び特別退職加算金)として合計約1350万円が支払われ,再就職支援サービスを受けることができるというものであった。 原告は,その当時,高校に就学中の子を二人抱え,住宅ローンも残っ - 21 -ていたこともあり,上記退職勧奨を受け入れ難かったため,同月23日,全国一般労働組合全国協議会神奈川(以下,単に「労働組合」という。)に加入し,同月24日に労働組合を通じてその旨を被告に通告した。 それを踏まえて,A工場長は,同月31日,原告と面談し,労働組合に加入したことで想定される不利益等,具体的には,労働組合に加入したところで,団体交渉の期日設定等に時間を要するだけで,早期に問題が解決するものではないとか,原告及び原告と同様に当時被告で勤務する原告の配偶者が陰口を叩かれ他の従業員が距離を置くようになる,労働 たところで,団体交渉の期日設定等に時間を要するだけで,早期に問題が解決するものではないとか,原告及び原告と同様に当時被告で勤務する原告の配偶者が陰口を叩かれ他の従業員が距離を置くようになる,労働組合に入ったから被告に残って仕事を続けられると思ったかもしれないがそのようなことは絶対にない,被告に残っても出社したところで仕事が割り当てられずに放置されるだけで辛い思いをする等の事情を様々に述べた上で,労働組合が原告の雇用を守ってくれることはないが,他方で,原告自らの考えで労働組合を脱退したことにすれば,一緒に野球部で活動している仲であることも踏まえ,被告による原告への上記退職勧奨をなかったものとしてリストラの対象から外すとともに,業績評価の良くない原告の今後の努力にもよるが,本件会社分割によって新設される会社(オアス)の最高責任者(代表取締役)として原告の雇用を守る旨を約束した。 これを受けて,原告は,同日,労働組合を脱退した。 (甲16,26,27,乙13,14,原告3~7,22頁,弁論の全趣旨)ウ被告は,平成24年5月16日,本件会社分割に係る新設分割計画書を作成し,同月22日にこれを本店に据え置いた。 (乙8,弁論の全趣旨) 被告は,原告に対し,平成24年6月4日付け「会社分割に伴う労働契約の承継に関する通知書」(以下「本件通知書」という。)を交付し, - 22 -本件会社分割に係る新設分割計画を作成したことを踏まえ,承継法2条1項に基づき,承継会社(オアス)に承継される事業の概要(被告の「生産物流本部及び人事・総務部門の一部に関する事業」),会社分割が効力を生ずる日以後における商号・住所所在地・事業内容・雇用予定者員数(被告が「713人」,オアスが「210人」),効力発生日(「平成24年7月2日」),効 務部門の一部に関する事業」),会社分割が効力を生ずる日以後における商号・住所所在地・事業内容・雇用予定者員数(被告が「713人」,オアスが「210人」),効力発生日(「平成24年7月2日」),効力発生日以後における債務の履行の見込みに関して特段の問題がないこと,労働契約を承継する旨の新設分割計画における定めがあること,原告が承継法2条1項1号に定める承継会社(オアス)に承継される事業に主として従事する社員に該当すること,原告の承継会社(オアス)における就業場所・業務内容・就業形態(厚木工場の製造に関する部門でこれに関する業務を行うこと),承継法4条1項等に定める異議申し出の期間が平成24年6月11日から同月25日までであること等を通知した。 (甲4)エA工場長は,平成24年6月7日,厚木工場の朝礼で,原告を含む被告の同工場における従業員に対し,本件会社分割の概要(目的,新会社の名称や役員の構成等)について説明をした。 (甲17)また,同日夕方には,厚木工場内のカフェテリアで,被告の人事労務手続担当者であるEが,原告を含む被告の同工場における従業員に対し,再度,本件会社分割の概要について説明をした。 Eは,具体的に,被告の生産・物流本部に属している従業員が全員オアスに労働契約を承継されること,平成24年6月4日付けの本件通知書は合意書の類ではなくて飽くまで会社からの通知書であるので中身をよく読むこと,同通知書には平成24年6月11日から同月25日までの異議申立期間が案内されているが,ここにいう異議申立ては,被告か - 23 -らオアスに労働契約が承継されないとされた者が行うことができるものであって,同契約を承継されるとされた者が被告からオアスに行きたくない旨を申し立てることができることを意味するものではないこ 3 -らオアスに労働契約が承継されないとされた者が行うことができるものであって,同契約を承継されるとされた者が被告からオアスに行きたくない旨を申し立てることができることを意味するものではないこと等を説明した上,何か不明な点があれば職場の上司や人事労務手続担当者の方に質問をして構わない旨を伝えた。 そして,引き続きA工場長も,Eと同様の説明をし,「会社分割に伴う労働契約の承継に関する通知書」には従業員にとって不利益になるようなことは一切書かれていないから,安心して被告からオアスに移り,オアスにおいて被告で行ってきたとおりの仕事をするよう伝えた。 (甲18,原告9,10頁) Eが質問を受け付ける旨を伝えたことを受けて,厚木工場において勤務する被告の従業員からは,平成24年6月12日までに,被告の人事労務手続担当者に対し,本件会社分割に関して,これによる利点又は欠点は何か,またそもそもその必要性があるのか等の質問が寄せられた。なお,原告自身は,被告の人事労務手続担当者に対して,本件会社分割に関して特段の質問を寄せてはいない。 (乙12,弁論の全趣旨)オ原告は,平成24年6月10日付けで,被告とオアスに対して,退社あるいは入社に当たって秘密保持を約束する旨の誓約書に署名押印してこれらを提出するとともに,被告から平成24年6月11日頃にオアスとの間の雇用契約書の配布を受け,遅くとも同年7月2日までにこれに署名押印をした。 (前記前提事実イ,ウ,甲5~7,乙11,原告10,20,21頁,弁論の全趣旨)カ被告は,平成24年6月27日,株主総会において,本件会社分割に係る新設分割計画を承認した。 - 24 -そして,同年7月2日,本件会社分割によって,オアスが設立され,原告の労働契約は,同日以降,被告からオアス 27日,株主総会において,本件会社分割に係る新設分割計画を承認した。 - 24 -そして,同年7月2日,本件会社分割によって,オアスが設立され,原告の労働契約は,同日以降,被告からオアスに承継される取扱いとなった。 (前記前提事実ア,乙8,弁論の全趣旨)検討ア法は,会社の分割における個々の労働者の労働契約の承継について,分割会社が作成する新設分割計画の定めに従うものとする(会社法764条1項)一方で,労働契約の承継のいかんが労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものであることから,分割会社が個々の労働者の労働契約の承継について決定するに先立ち,承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議(5条協議)を行わせることとし(商法等改正法附則5条1項),当該労働者の希望等をも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって,労働者の保護を図ろうとする趣旨に出たものと解されるところ,承継法3条所定の場合には労働者はその労働契約の承継に係る分割会社の決定に対して異議を申し出ることができない立場にあるが,上記のような5条協議の趣旨からすると,承継法3条は適正に5条協議が行われて当該労働者の保護が図られていることを当然の前提とするものといえる。 そうすると,株式会社の新設分割において,承継法3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で,商法等改正法附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議(5条協議)が全く行われなかった場合,又は,上記協議が行われたものの,その際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,当該労働者は当該承継の効力を争うことができ,分割会社との 議が行われたものの,その際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,当該労働者は当該承継の効力を争うことができ,分割会社との労働契約上の地位確認の訴えを提起することができるものと解される(最高裁平成20年(受)第1704号同22年7月12日第二小法廷判決・民集64巻5号1333頁参照)。 - 25 -そして,5条協議等において分割会社が説明等すべき内容等については,本件指針(平成12年労働省告示第127号「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針継される営業に従事する労働者に対し,当該分割後に当該労働者が勤務する会社の概要や当該労働者が上記営業に主として従事する労働者に該当するか否かを説明し,その希望を聴取した上で,当該労働者に係る労働契約の承継の有無や就業形態等につき協議すべき旨を定めているが,その定めるところは合理性を有するといえるから,本件において5条協議が法の求める趣旨に沿って行われたかどうかを判断するに当たっては,それが本件指針に沿って行われたものであるか否かも十分に考慮されるべきである。 イこれを本件についてみると,まずもって,本件会社分割に関して5条協議を実施すべき期限は,通知期限日である平成24年6月12日(本件会社分割に係る事項について承認した同月27日開催の株主総会の二週間前の日の前日。承継法2条1項,同条3項1号及び本件指針第2の)と想定されるところ,前記前提事実及び認定事実によれば,被告は,上記期限までに,本件会社分割に関して,①D元社長が平成24年4月9日から同月25日にかけて,一定の役職にある者や,その他の一般従業員に対し,OEM市場へ 前記前提事実及び認定事実によれば,被告は,上記期限までに,本件会社分割に関して,①D元社長が平成24年4月9日から同月25日にかけて,一定の役職にある者や,その他の一般従業員に対し,OEM市場への参入等によるビジネス拡大を実現するために本件会社分割を実施することを決定した旨を公表したほか,②A工場長が,同年5月上旬頃,厚木工場での朝礼で,原告の含む従業員に対し,OEM市場への参入等を目的として同工場が分社化されるが,従業員の労働条件(勤務場所,業務内容及び賃金の額等)には特段変更がない旨を説明し,③さらに,同年6月4日に,同日付けの本件通知書で,原告について,その労働契約が被告からオアスに承継されることが決定された旨を通知した後であるが,同月7日,被告の人事労務 - 26 -担当者であるEが,原告を含む厚木工場の従業員に対し,被告の生産・物流本部に属する従業員全員の労働契約がオアスに承継されること,労働契約を承継されない者については一定の期間異議申立てをすることができるが,労働契約を承継されると決定された者については承継されたくない旨を申し立てることはできないこと,何か不明な点があれば個別の質問を受け付ける旨を説明したことが認められる。 これらの事実を総合すれば,被告は,本件会社分割に係る事項について承認する株主総会の開催日から逆算して当初想定される通知期限日までに,原告に対して,少なくとも,本件会社分割の目的(OEM市場への参入等によるビジネス拡大等)や,それによる労働条件(勤務場所,業務内容及び賃金の額等)の変更が特段ない旨を大まかに説明していたものといえる。 その上で,分割後の会社(オアス)の概要等に関する上記のような大まかな説明を踏まえて,原告が労働契約をオアスに承継されることに関する希望を被告から聴取された 大まかに説明していたものといえる。 その上で,分割後の会社(オアス)の概要等に関する上記のような大まかな説明を踏まえて,原告が労働契約をオアスに承継されることに関する希望を被告から聴取されたかどうか,さらにそのような希望聴取の上で原告の労働契約の承継の有無や就業形態等につき協議がされたかどうかについてみるに,前記認定事実によれば,①5条協議に係る個別協議の実施が当初予定されていた平成24年5月中旬と同時期頃(同月7日から同月22日頃)に,被告は,A工場長を通じて,原告に対し,退職勧奨を行っており,②しかも,A工場長は,そのような退職勧奨に対抗すべく労働組合に加入した原告に対し,同月31日,労働組合に加入したところで原告の雇用が守られることはなく,解決に時間を要するばかりか,かえって仕事を割り当てられないというような形でもって冷遇されるにすぎず,他方で,原告自らの考えで労働組合を脱退したことにすれば,被告からの退職勧奨をなかったものとして原告をリストラの対象から外すとともに,同工場長がオアスの最高責任者(代表取締役)と - 27 -してオアスにおいて原告の雇用を守る旨を約束し,③これを受けて,原告は,同日のうちに労働組合を脱退して,その4日後である同年6月4日に,本件通知書にあるとおり,原告の労働契約が被告からオアスに承継されることが決定した旨が原告に通知されたという事実経過がある。 これら一連の経過に鑑みれば,原告は,自身の労働契約について,A工場長との上記面談等を通じて,本件会社分割に伴う労働契約の承継に関する希望を聴取されたのではなく,むしろ,労働組合に加入したまま,冷遇されつつも,被告に対してリストラの不当性を訴えて争い続けるか,それとも,労働組合を脱退してオアスの代表取締役に就任する予定であるA工場長の庇護の たのではなく,むしろ,労働組合に加入したまま,冷遇されつつも,被告に対してリストラの不当性を訴えて争い続けるか,それとも,労働組合を脱退してオアスの代表取締役に就任する予定であるA工場長の庇護の下でオアスの従業員として勤務するかの選択を迫られる中で,後者の道を選ばざるを得ないと考えるに至ったにすぎないものといえる。 そうすると,原告は,被告から本件会社分割の目的や,それによる労働条件の変更が特段ない旨を他の従業員と一緒に大まかに説明されてはいたものの,結局のところ,原告とA工場長との間の個別の話合いにおいては,リストラや,労働組合に加入してリストラに抗うことでもって不利益を被る蓋然性が高いことを示唆される中で,労働組合を脱退することと引替えに労働契約のオアスへの承継の選択を迫られたにすぎず,そのような話合いの内容は,原告が労働契約をオアスに承継されることに関する希望の聴取とは程遠く,これをもって5条協議というに値するか甚だ疑問であるし,少なくとも,法が同協議を求めた趣旨に反することが明らかであると認められる。 これに対し,被告は,間接的な事情を様々に挙げて(前記第3の1 ア①ないし⑤参照),被告が原告に対して個別協議を適切に実施していたことが合理的に推認できる旨を主張する。 しかしながら,これら被告が挙げる事情をもってしても,原被告間で - 28 -具体的にどのような個別の話合いがされたかは明らかではなく,むしろ,前記のとおり,少なくとも原告とA工場長との個別の話合いの内容を踏まえれば,これが5条協議を求めた法の趣旨に反することは明らかであるから,被告の上記各主張を採用することはできない。 なお,原告は,本訴の当事者尋問において,突如として,平成24年6月4日付けの本件通知書を受け取った後に,Bスーパーバイザーと ることは明らかであるから,被告の上記各主張を採用することはできない。 なお,原告は,本訴の当事者尋問において,突如として,平成24年6月4日付けの本件通知書を受け取った後に,Bスーパーバイザーと二人で話し合う機会を持ち,被告に残りたいという原告の希望を伝える機会があった旨を供述するが(原告16,25,26頁等),前記のとおり,同年5月の時点で,A工場長から被告でのリストラの対象となっていることや,リストラに抗っても仕事が割り当てられずに冷遇される旨を告げられ,他方で,労働組合から脱退することと引替えにオアスでの雇用を守ることを約束されたにもかかわらず,その後にオアスに行かずに被告に残りたいなどと希望することは不自然かつ不合理であるし,いずれの当事者からも原告の上記供述内容に係る主張立証がされたことがこれまでに一切なく,本訴の終盤である当事者尋問において突如として原告がこれを供述したこと等に鑑みれば,原告の上記供述をにわかに信用することはできない。また,仮に,上記供述のとおり,同年6月4日に本件通知書を受け取った後に,原告がBスーパーバイザーに対し,労働契約をオアスに承継されることを望まず,被告に残りたいという希望を伝える機会が実際にあったのだとしても,原告とBスーパーバイザーとの話合いの内容が客観的かつ具体的に定かでないことはもちろんのこと,そもそも,株主総会の開催日から逆算して想定される当初の通知期限日(同月12日)には至っていないものの,既に同月4日には本件通知書にあるとおり原告の労働契約がオアスに承継されることが正式に決定されており,その後に承継に係る原告の希望を聴取したところで,そのような決定に先立って5条協議を尽くすという法の趣旨がもはや維持 - 29 -されているものではなく,その聴取内容が同決定に何らの影響 おり,その後に承継に係る原告の希望を聴取したところで,そのような決定に先立って5条協議を尽くすという法の趣旨がもはや維持 - 29 -されているものではなく,その聴取内容が同決定に何らの影響も与えていないと考えられることからすると,これでの判断が左右されるものではない。 次に,被告は,必ずしも5条協議について個別の協議が必須とされるものではなく,仮に原被告間で個別の協議がされていなかったとしても,本件の場合,原告が各誓約書やオアスとの雇用契約書に署名捺印の上でこれらを提出し,労働契約の承継に同意しており,もはや個別面談の実施が必須の状況になかったと考えられることからすると,被告において,承継法が5条協議を求めた趣旨に反するものと評価されるいわれはない旨を主張する。 しかしながら,本件指針は,5条協議につき,承継される営業に従事する労働者に対し,当該分割後に当該労働者が勤務する会社の概要や当該労働者が上記営業に主として従事する労働者に該当するか否かを説明し,その希望を聴取した上で,当該労働者に係る労働契約の承継の有無や就業形態等につき協議すべきであるとして,その協議の内容及びプロセスを重視するものであるところ,被告の上記主張は,その点を看過して,要するに承継に関する同意さえあるならば,承継に係る協議は,個別のものであろうが,そうでなかろうが,その内容や存在を重視する必要はないというに等しく,本末転倒であって,上記のとおり,協議の内容及びプロセスを重視し,他方で,承継の有効要件として労働者の同意まで求めるものではない法の趣旨目的を蔑ろにするもので,失当というほかない。 なお,この点に関連して,被告は,被告が実践した「会社分割時の5条協議義務履践の方法として実務上極めて一般的かつ広く行われている方法」でもって5条協議違反 蔑ろにするもので,失当というほかない。 なお,この点に関連して,被告は,被告が実践した「会社分割時の5条協議義務履践の方法として実務上極めて一般的かつ広く行われている方法」でもって5条協議違反が問われた場合の実務上の影響を様々に主張するが,,原告とA工場長と - 30 -の間の個別の話合いの内容についてみれば,原告が労働契約をオアスに承継されることに関する希望の聴取とは程遠く,少なくとも法が同協議を求めた趣旨に反することが明らかであると認められるというものであって,被告がいうところの「会社分割時の5条協議義務履践の方法として実務上極めて一般的かつ広く行われている方法」それ自体の妥当性を論ずるものではないことを念のため付言する。 さらに,被告は,被告が本件に関わる詳細を確認することが難しい状況に陥ったのは,原告による本訴提起が後れてなされたことも影響しており,5条協議違反の有無を検討するに当たって,この点を看過すべきではない旨を主張するものの,消滅時効にかかる請求でもないのに,自己の証拠の散逸等の責任を原告に転嫁するものにすぎず,失当である。 この点に関連して,被告は,原告が,本訴における従前の主張に反し,当事者尋問において初めて,Bスーパーバイザーとの間で個別面談を実施して自身の希望を述べる機会があったことを明言するに至ったことに照らせば,被告の5条協議違反の有無を検討するに当たって,Bスーパーバイザー及びその上司であったCの証人尋問が必要不可欠である旨を照),証人Bスーパーバイザー及び証人Cの証拠申出(平成29年2月27日付け証拠申出書参照)をするが,その証拠申出がされたのが,弁論準備手続の終結(平成28年11月22日の第6回弁論準備手続期日)及び人証の証拠調べ(平成28年12月20日の第7回口頭弁論期日)の後 日付け証拠申出書参照)をするが,その証拠申出がされたのが,弁論準備手続の終結(平成28年11月22日の第6回弁論準備手続期日)及び人証の証拠調べ(平成28年12月20日の第7回口頭弁論期日)の後であり,口頭弁論の終結が予定されていた第8回口頭弁論期日であるところ,本件会社分割に伴う原告の労働契約の承継が5条協議の趣旨に違反するかどうかが争点となることは,訴状及び答弁書が陳述された平成27年6月4日の第1回口頭弁論期日の時点で既に明らかとなっており,その争点に関連して,原告と被告との間の5条協議の有無や内容 - 31 -が具体的に問題とされることも自明であるから,被告において事実関係の確認(第1回口頭弁論調書参照)をするに当たって,原告の供述の変遷を待つまでもなく,早期に原告の上司であるBスーパーバイザーやCから事情聴取をして,その内容に基づく立証を検討すべきことは容易に予測できるのであって,被告において,口頭弁論の終結間際にならなければ上記証拠申出をできなかった合理的な理由があるとは認め難く,上記のとおり自己の証拠の散逸等の責任を原告に転嫁する姿勢に終始したことに鑑みても,上記証拠申出は,時機に後れてなされたものというべきであり,かつ,その点について,被告には少なくとも重過失があるというべきである。そして,被告の上記証拠申出を許すことになれば,それら証人が体験したであろう事実をまず陳述書とともに主張上で明らかにさせ,これに対する原告の反論の機会を与える必要が生じ,その上で人証調べを行うこととなるもので,これにより訴訟の完結を遅延させることとなるものと認められる。したがって,被告の上記証拠申出は,民事訴訟法157条1項により却下するのが相当である。なお,仮に,原告が当事者尋問で供述するとおり,平成24年6月4日に本件通知書を ることとなるものと認められる。したがって,被告の上記証拠申出は,民事訴訟法157条1項により却下するのが相当である。なお,仮に,原告が当事者尋問で供述するとおり,平成24年6月4日に本件通知書を受け取った以降に,原告がBスーパーバイザーに対して,労働契約をオアスに承継されることを望まず,被告に残りたいという希望を伝える機会が実際にあったのだとしても,既にその時点では本件通知書にあるとおり原告の労働契約がオアスに承継されることが正式に決定されており,Bスーパーバイザーによる原告からの聴取内容が同決定に何らの影響も与えていないと考えられ,そのような決定に先立って5条協議を尽くすという法の趣旨がもはや維持されているものではないから,それでもっとおりである。 小括 - 32 -以上によれば,本件会社分割に伴って原被告間でもたれた話合いの内容は,少なくとも,法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるから,原告は,本件会社分割による被告からオアスへの労働契約承継の効力を争うことができるものといえる。 2 主位的請求(地位確認請求,賃金請求及び賞与請求)に関して,争点2(原告が被告に対して退職の意思表示をしたかどうか),争点3(原被告間の労働契約が黙示に合意解除されたかどうか)及び争点4(原告の主位的請求が信義則に反する訴権の行使といえるかどうか)について検討ア前記前提事実に加え,前記1の認定事実及び証拠(甲5)並びに弁論の全趣旨によれば,本件会社分割に伴って原告の労働関係が平成24年7月2日に被告からオアスに承継されることを前提に,原告が平成24年6月10日付けで,被告に対し,「今般私は,2012年(判決注・平成24年)7月1日付をもって,貴社を退職することになりましたが,業務上知り得た会社,関係会社,顧 れることを前提に,原告が平成24年6月10日付けで,被告に対し,「今般私は,2012年(判決注・平成24年)7月1日付をもって,貴社を退職することになりましたが,業務上知り得た会社,関係会社,顧客または,他の社員に関する秘密事項,在職中知り得た機密事項及び貴社の不利益となる事項の保全に留意するとともに,退社後もこれを他に漏らさない事を確約いたします。」と印字された誓約書に署名押印の上,これを提出したことが認められる。 被告は,上記誓約書の文言のうち,「貴社を退職することになりました」等の部分を踏まえて,原告が被告に対して退職の意思表示をした旨を主張するほか,これに加えて,原告が被告からの退職を長期にわたって争ってこなかったことから,原被告間の労働契約が黙示的に合意解除された旨を主張する。 しかしながら,上記誓約書の記載を全体としてみれば,これは,退職の意思表示をするというよりも,秘密保持を誓約する内容のものであることは明らかである。また,そもそも,原被告間の労働契約は,本件会社分割 - 33 -当時,それに伴ってオアスに承継する取扱いとされていたのであるから,そのような状況下において,被告を「退職」するという言い回しが例えば上記誓約書等で用いられたことがあったとしても,それが「退社」という事実上の意味を超えて原被告間の労働契約を将来に向けて合意解約するというような法的意味合いを持って用いられたものとはいえないし,原告が同労働契約を将来に向けて合意解約する意味合いでの「退職」の法的効力を争うことも観念し難いと言わざるを得ない。 イまた,本訴の提起自体は,原告が本件会社分割に伴いオアスで勤務を開始した平成24年7月2日から約2年9か月後,オアスを解雇された平成26年1月31日から約1年2か月後の平成27年4月11日になされ また,本訴の提起自体は,原告が本件会社分割に伴いオアスで勤務を開始した平成24年7月2日から約2年9か月後,オアスを解雇された平成26年1月31日から約1年2か月後の平成27年4月11日になされたものであるものの,本件の全証拠及び弁論の全趣旨からうかがわれる本件の経過に鑑みると,また,本訴の請求が消滅時効にかかるものでもないことからすると,これが信義則に反する訴権の行使に当たるとはいえない。 小括以上によれば,争点2(原告が被告に対して退職の意思表示をしたかどうか),争点3(原被告間の労働契約が黙示に合意解除されたかどうか)及び争点4(原告の主位的請求が信義則に反する訴権の行使といえるかどうか)に関する被告の主張は,いずれも理由がない。 したがって,争点1ないし4についての以上の検討結果から,原告の被告に対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求は理由がある。 3 主位的請求に関して,争点5(賃金請求の額)及び争点6(賞与請求権の有無)について賃金請求の額(争点5)前記のとおり,本件会社分割においてなされた原被告間の話合いは,法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであり,原告は,同会社分割に伴う労働契約の承継の効力を争うことができるから,被告に対し,労働契約 - 34 -に基づき賃金債権を有するということになる。 そして,被告における賃金等の条件がそのまま原告とオアスの間の労働契約に承継されたこと(前記前提事実ウ,甲7,原告27頁,弁論の全趣旨)からすると,原告の賃金は月額31万2500円で,その支払方法は当月末日締の当月25日払いであり,被告との関係で,少なくとも同年2月1日分以降(前記前提事実オアスの原告に対する平成26年1月31日付けでの解雇がなされた以降)の賃金は未払であると認 支払方法は当月末日締の当月25日払いであり,被告との関係で,少なくとも同年2月1日分以降(前記前提事実オアスの原告に対する平成26年1月31日付けでの解雇がなされた以降)の賃金は未払であると認められる。 そうすると,被告は,原告に対し,労働契約に基づき,平成26年2月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,31万2500円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延利息の支払義務を負うものといえる。 賞与請求権の有無(争点6)被告における賞与については,その給与規定25条1項に「会社は,毎年6月および12月に会社の業績を考慮した上,賞与を支給することがあります。」という旨の定めがある(乙27)ところ,このような定めを字句のとおりに解すれば,会社の業績を考慮した上で被告の裁量により支給の有無と支給される場合の金額が決定されることになっており,不支給とされる余地があり得るものの,原告が被告で勤務していた当時に,給与規程25条2項所定の3月期の決算賞与については,会社の業績に応じて支払われなかったケースがある一方で,同規定25条1項所定の夏季賞与及び年末賞与が支払われなかったケースはないこと(乙27,原告27,28頁,弁論の全趣旨)を踏まえれば,賞与の支給が原則としてある旨の合意が原告と被告との間の労働契約の内容を成しているものと解するのが相当である。 そして,前記のとおり,被告における賃金等の条件がそのまま原告とオアスの間の労働契約に承継されたことに加え,原告の賞与について,オアスへ労働契約が承継される取扱いとなる直近の支給額よりも減額すべき事情が特 - 35 -に見当たらないことに照らせば,毎年6月15日及び12月10日に,各68万8500円の賞与請求権が生じるものと認めるのが 承継される取扱いとなる直近の支給額よりも減額すべき事情が特 - 35 -に見当たらないことに照らせば,毎年6月15日及び12月10日に,各68万8500円の賞与請求権が生じるものと認めるのが相当である(甲10の1・2,弁論の全趣旨)。 そうすると,被告は,原告に対し,平成26年6月から本判決確定の日まで,毎年6月15日及び12月10日限り,各68万8500円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延利息の支払義務を負うものといえる。 4 結論以上によれば,原告の主位的請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。なお,仮執行免脱宣言は相当ではないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官湯川克彦 裁判官上田真史 裁判官原島麻由

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