- 1 -主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人石田英治の上告受理申立て理由について 本件は,被上告人が,上告人に対し,自動継続特約付き定期預金(以下「自動継続定期預金」という。)の元本200万円並びにこれに対する預金の預入日の翌日である昭和62年2月24日から支払済みまで約定の年3.86%の割合による利息及び遅延損害金の支払を求める事案である。 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 (1)被上告人は,昭和62年2月23日,A信用組合に対し,200万円を次の約定で預け入れた(以下,この預入れによる預金契約を「本件預金契約」という。)。 ア利息年3.86%イ期間1年ウ満期日昭和63年2月23日(2)本件預金契約においては,特約として,本件預金契約が満期日に前回と同一の期間の預金契約として自動的に継続されること,預金者が本件預金契約の継続を停止するときは満期日までにその旨を申し出るべきこと(以下,この申出を「継続停止の申出」という。)などが定められている(この特約は一般の金融機関において通常用いられている自動継続定期預金の特約と同旨のものであり,以下,このような特約を「自動継続特約」という。)。なお,上記特約によれば,預金者から- 2 -本件預金契約の解約の申入れがあっても,A信用組合がこれに応じない場合には,預金者は,直ちに預金の払戻しを受けることはできず,その後に到来する満期日においてそれ以降自動継続の取扱いがされなくなって初めて預金の払戻しを受けることができることとされている。 (3)その後,A信用組合は,合併によりB信用組合となり,B信用組合は,平成14年8月19日,上告人に対し,営業の全部を譲渡した。 (4)被上告人は,平成14年8月13 ができることとされている。 (3)その後,A信用組合は,合併によりB信用組合となり,B信用組合は,平成14年8月19日,上告人に対し,営業の全部を譲渡した。 (4)被上告人は,平成14年8月13日,B信用組合に対し,本件預金契約に係る定期預金証書を提示し,本件預金契約の解約を申し入れて(以下,この解約申入れを「本件解約申入れ」という。),同契約に基づく預金(以下「本件預金」という。)の払戻しを請求した。 これに対し,B信用組合は,本件預金が既に払い戻されているとして,本件解約申入れに応じなかった。 (5)被上告人は,平成15年6月23日,本件訴えを提起したが,上告人は,同年9月5日の第1審第1回口頭弁論期日において,本件預金契約締結の約3か月後である昭和62年5月26日に同契約は解約され,本件預金は払い戻されたとして,弁済の主張をするとともに,本件預金の払戻請求権の消滅時効が既に完成しているとして,これを援用した。 第1審,原審とも,本件預金の弁済の事実は認められないとした。他方,本件預金の払戻請求権の消滅時効について,第1審は,本件預金契約締結後最初に到来する満期日(以下「初回満期日」という。)である昭和63年2月23日から時効が進行するから,その後10年の経過によりこれが完成したとして,被上告人の請求を棄却したのに対し,原審は,上記消滅時効は,本件解約申入れ後最初に到来- 3 -する満期日である平成15年2月23日から進行するから,いまだ完成してはいないとして,第1審判決を取り消して被上告人の請求を認容した。 4(1)自動継続定期預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日における払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約と 預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日における払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約として継続させることを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が,自動継続定期預金契約は,自動継続特約の効力が維持されている間は,満期日が経過すると新たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため,預金者は,解約の申入れをしても,満期日から満期日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができない。したがって,初回満期日が到来しても,預金払戻請求権の行使については法律上の障害があるというべきである。 もっとも,自動継続特約によれば,自動継続定期預金契約を締結した預金者は,満期日(継続をしたときはその満期日)より前に継続停止の申出をすることによって,当該満期日より後の満期日に係る弁済期の定めを一方的に排除し,預金の払戻しを請求することができる。しかし,自動継続定期預金契約は,預金契約の当事者双方が,満期日が自動的に更新されることに意義を認めて締結するものであることは,その内容に照らして明らかであり,預金者が継続停止の申出をするか否かは,預金契約上,預金者の自由にゆだねられた行為というべきである。したがって,預金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求することを前提に,消滅時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することが- 4 -できると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契 時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することが- 4 -できると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契約の趣旨に反するというべきである。そうすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。 以上によれば,自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,預金者による解約の申入れがされたことなどにより,それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものと解するのが相当である。 (2)前記事実関係等によれば,本件預金契約は,本件解約申入れのあった平成14年8月13日の後における初めての満期日である平成15年2月23日において,それ以降自動継続の取扱いがされることがなくなったものと解されるから,本件預金の払戻請求権の消滅時効は,同満期日から進行するというべきである。 以上のとおりであるから,被上告人の請求を認容した原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官藤田宙靖裁判官上田豊三裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官田原睦夫)
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