平成18(ソ)6 文書提出命令に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年5月16日 名古屋地方裁判所 その他 一宮簡易裁判所 平成18(サ)2019
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判決文本文5,141 文字)

平成18年(ソ)第6号文書提出命令に対する即時抗告事件(原審・一宮簡易裁判所平成18年(サ)第2019号)決定岐阜市a町b丁目c番地抗告人A信用金庫同代表者代表理事B同代理人弁護士C愛知県一宮市d字ef番地相手方D同代理人弁護士E同F相手方(原告)とG(被告)との間の一宮簡易裁判所平成17年(ハ)第551号不当利得返還請求事件(以下「本件訴訟」という。)について,同裁判所が平成18年3月14日にした文書提出命令に対し,抗告人から即時抗告の申立てがあったので,当裁判所は次のとおり決定する。 主文 原決定を次のとおり変更する。 抗告人は,別紙文書目録記載の文書を,本決定書送達の日から1か月以内に一宮簡易裁判所に提出せよ。 申立費用(原審で審尋に要した費用を含む。)は抗告人の負担とする。 事実 及び理由第1抗告の趣旨及び理由並びに相手方の意見本件抗告の趣旨及び理由は,別紙抗告状〔添付省略〕に記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は別紙意見書〔添付省略〕のとおりである。 第2事案の概要 一件記録によれば,本件の経緯の概要は,次のとおり認められる。 (1)本件訴訟は,相手方が,G(以下「被告」という。)との間の継続的な金銭消費貸借契約(以下「本件貸金契約」という。)に基づき,被告から借入と弁済とを繰り返してきたところ,本件貸金契約の約定利率及び遅延損害金の割合が利息制限法所定の利率及び遅延損害金の割合を超過するものであり,当該超過分の元本充当により借入金債務が完済された上,過払いが生じたとして,相手方が被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金148万4150円の返還等を求めたものである。 (2)本件訴訟において,相手方は,記憶によれ 借入金債務が完済された上,過払いが生じたとして,相手方が被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金148万4150円の返還等を求めたものである。 (2)本件訴訟において,相手方は,記憶によれば本件貸金契約の開始は昭和58年年末ころから昭和59年の初めころであるが,それを示す証拠は所持していないと主張し,被告も,平成12年1月6日以前の相手方との取引に関する資料は所持していないと主張したことから,相手方は,相手方が被告に対する返済金の振込みに使用していた,抗告人に設けられた被告名義の普通預金口座(以下「本件預金口座」という。)中,相手方による昭和58年1月から平成12年1月6日までの入金年月日及び入金額につき調査嘱託の申立てをした。これに対し,抗告人は,調査嘱託の回答について被告の同意が得られないから,守秘義務の観点から回答できないと返答した。 (3)相手方は,過払金の金額等を立証するためには,上記回答を拒絶された文書の提出が必要だとして,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)220条4号に基づき,本件預金口座の昭和58年12月から平成12年1月6日に至る取引の明細が記載された文書を対象として,本件文書提出命令の申立てをした。 被告は,立証対象が確定されていないから証拠調べの必要性がない,対象文書には,被告の顧客の氏名,返済額が記載されているところ,これらの事項は被告が被告の顧客に対して負う守秘義務の対象であって民訴法197条1項2号又はその類推適用若しくは同項3号に該当し,しかも黙秘の義務を 免除されていないものが記載されている場合に当たるから,民訴法220条4号ハにより提出義務を負わない,相手方は,自己が振り込みを依頼をした金融機関に対して文書の提出命令を求めることが可能であるから文書提出の必要性がない,相手方は,証拠方法 当たるから,民訴法220条4号ハにより提出義務を負わない,相手方は,自己が振り込みを依頼をした金融機関に対して文書の提出命令を求めることが可能であるから文書提出の必要性がない,相手方は,証拠方法を失うことを認識しながら振込依頼書等を破棄したのであるから,文書提出命令の申立ては信義則に反すると主張し,同申立の却下を申し立てた。 相手方は,相手方の記憶に基づいて過払い金の再計算を行い,請求を拡張したから証拠調べの必要性はある,民訴法220条4号ハの該当性を検討するに当たっては,被告が被告の顧客に対して負う守秘義務及び職務上の秘密を検討する必要はない,相手方以外の者の振込名はカタカナで記載されていると考えられるから,個人を識別ないし特定可能な情報とはいえず,個人情報漏洩やプライバシーの問題は発生しないし,仮にその危険があるとしてもその部分を黒塗りするなどして開示すれば足りる,申立人が返済金の振込みに際して利用した各銀行に対して文書提出命令の申立てをすることは実効性がなく,事実上不可能である,貸金業者に取引履歴の一般的な開示義務を課した金融庁のガイドライン及び契約書等を紛失した借主の過失を問題とせず取引履歴の開示を拒否した貸金業者に対して慰謝料の支払いを命じた最高裁第三小法廷平成17年7月19日判決の趣旨からすれば,文書提出命令を申し立てることにつき信義則の制約は受けないと反論した。これに対し,被告は,前記判決は,借主が書類を敢えて破棄した場合については何も判示していないと主張したが,原決定は相手方の申立てを全部認容した。 (4)抗告人は,本件抗告において,抗告人は昭和59年6月29日以降の文書しか所持していないから,原決定がそれ以前の文書の提出を命じた部分は存在しない文書の提出を命ずる点で違法である,抗告人はその取引先に対する守秘義務 告において,抗告人は昭和59年6月29日以降の文書しか所持していないから,原決定がそれ以前の文書の提出を命じた部分は存在しない文書の提出を命ずる点で違法である,抗告人はその取引先に対する守秘義務を負っているから,民訴法220条4号ハの除外事由に該当すると主張した。 相手方は,原決定は抗告人の所持する文書中,昭和58年12月から平成12年1月6日の期間内の取引にかかる部分を提出するよう求めているに過ぎないから原決定に違法はない,相手方は被告口座の履歴中相手方が振り込んだ履歴のみの開示を求めているのであるから,被告と相手方との関係でその情報を相手方に開示しても被告の営業秘密やプライバシー権の侵害等の問題は生じず,結局抗告人が被告に対して守秘義務を負うこともない,またカタカナで記載された氏名が開示されたからといって個人の識別はできない,仮に除外事由が認められたとしても,文書提出の必要性が高い場合には文書提出者に不法行為は成立しないところ,本件では文書提出の必要性が極めて高いと主張した。 第3当裁判所の判断 文書の存在について一件記録によれば,抗告人は,平成18年3月2日の時点で,申立てにかかる文書の昭和59年6月29日から平成11年1月末日までの部分はマイクロフィルムによる記録として,同年2月1日から平成12年1月6日までの部分は電磁的記録として保管しており,毎月,7年前の応当月の取引経過をマイクロフィルムで保存し,当該部分の電磁的記録を消去していることが認められる。 そうすると,申立てにかかる文書中,昭和59年6月28日以前の取引経過に関する文書は存在しないことが推認され,この期間にかかる申立てを認容した原決定は相当ではないといわざるを得ない。 文書提出の必要性についてそもそも,証拠の採否は,その性質上受訴裁判所の専権に属 に関する文書は存在しないことが推認され,この期間にかかる申立てを認容した原決定は相当ではないといわざるを得ない。 文書提出の必要性についてそもそも,証拠の採否は,その性質上受訴裁判所の専権に属するものであり,その前提となる文書提出の必要性の判断も同様であると解されるから,かかる理由は抗告の理由とはなし得ない。したがって,抗告人の文書提出の必要性についての主張は採用できない。 仮に第三者についてのみ,これを抗告の理由となし得ると解したとしても, 一件記録によれば,相手方は,本件貸金契約を締結した理由は遊興費を得るためであったから,家族に遊興費借入の事実が発覚しないよう,契約書や支払明細書等,一切の資料をその都度破棄していたことが認められるし,相手方が返済金の振り込みに使用した金融機関は多数あり,これらの各金融機関に文書提出命令を申し立てたとしても,返済期間が長期にわたることからその作業は困難を極めると推認される。 よって,文書提出の必要性は認められるから,この点に関する抗告人の主張は採用できない。 除外事由の該当性について抗告人は,民訴法220条4号ハ規定の同法197条1項2号に列挙された職業を有する者ではないことから,同号の適用はないが,同項3号に該当する可能性がある。 そこで,別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)が同号に該当するか否かについて検討すると,同号が「技術又は職業の秘密に関する事項」について証言拒絶権を認めた趣旨は,技術又は職業の秘密が公開されるとその技術の存在価値が失われ,又はその職業を維持することが困難になることから,その技術又は職業を保護する点にあることに鑑みると,同号の「職業の秘密」とは,その秘密が公開されてしまうと,当該職業に深刻な影響を与え,以後の職業の維持,遂行が不可能あるいは困難に になることから,その技術又は職業を保護する点にあることに鑑みると,同号の「職業の秘密」とは,その秘密が公開されてしまうと,当該職業に深刻な影響を与え,以後の職業の維持,遂行が不可能あるいは困難になるものであって,裁判の公正という利益よりも秘密保持の利益を有する程度の重要性を有するものと解すべきである。 そこで本件文書が「職業の秘密」に該当するか検討すると,金融機関は,一般に,当該顧客との間の取引及びこれに関連して知り得た当該顧客に関する情報を秘密として管理することによって顧客との間の信頼関係を維持し,その業務を円滑に遂行していることが認められるから,金融機関が顧客の取引明細を公開すれば,顧客が当該金融機関との取引を避ける等,職業の維持遂行に支障 を来す可能性は否定できない。本件では,一件記録によれば,本件預金口座の取引明細には相手方以外の被告の顧客による借入金の返済の事実,具体的には氏名及び返済金額が記載されていると推認されるから,抗告人が本件文書を公開することにより,抗告人の営業に支障を来すとも考えられる。 しかし,前記のとおり,本件文書中,昭和59年6月29日から平成11年1月末日までの部分はマイクロフィルムに,同年2月1日から平成12年1月6日までの部分は電磁的記録に記録されていることが認められるから,本件預金口座を使用して行われた取引経過中,振込者が相手方であるものだけに特定して開示することは可能であり(したがって,他の顧客分は除かれる。この点まで提出義務があるとは認められない。),本件文書は相手方と被告との間の本件訴訟においてのみ使用されるのであるから,裁判資料の閲覧が自由であることを考慮しても,本件文書の開示を認めた場合に,抗告人の職業に深刻な影響を与え,以後の職業の維持,遂行が不可能あるいは困難になるとまではいうこ み使用されるのであるから,裁判資料の閲覧が自由であることを考慮しても,本件文書の開示を認めた場合に,抗告人の職業に深刻な影響を与え,以後の職業の維持,遂行が不可能あるいは困難になるとまではいうことはできない。 よって,本件文書に記載された内容は「職業の秘密」に当たらず,この点に関する抗告人の主張を採用することはできない。 結論 以上のとおり,昭和59年6月29日から平成12年1月6日までの本件預金口座における被告の取引経過を記載した文書は存在し,かつ,これは民訴法220条4号の除外事由に該当せず,他に文書提出命令の発令を妨げる事情も見当たらない本件では,前記文書に対する文書提出命令は理由がある。 よって,これと結論を異にする原決定を前記のとおり変更し,主文のとおり決定する。 平成18年5月16日名古屋地方裁判所民事第3部裁判長裁判官徳永幸藏 裁判官野口卓志裁判官大澤多香子 (別紙)文書目録A信用金庫H支店のG名義の普通預金口座(口座番号○○○○○○)の昭和59年6月29日から平成12年1月6日までの取引明細のうち,振込が原告名義によって行われた部分について,その振込年月日及び振込額が記載されたもの

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