平成30(行ウ)53 遺族厚生年金不支給処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月18日 大阪地方裁判所
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判決文本文15,462 文字)

【機密性2】- 1 - 令和元年7月18日判決言渡平成30年(行ウ)第53号遺族厚生年金不支給処分取消等請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 厚生労働大臣が平成28年7月11日付けで原告に対してした遺族厚生年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2 厚生労働大臣が平成28年10月12日付けで原告に対してした未支給の 保険給付を支給しない旨の決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,平成28年▲月▲日に死亡したAの内縁の妻であるとして,遺族厚生年金の裁定の請求をするとともに,Aの老齢厚生年金に係る未支給の保険給付の支給の請求をしたところ,厚生労働大臣から,原告はAの配偶者に該当 しないなどとして,平成28年7月11日付け及び同年10月12日付けで,それぞれ不支給とする決定(以下,併せて「本件各不支給決定」という。)を受けたため,被告を相手に,本件各不支給決定の取消しを求める事案である。 1 法令の定め等(1) 未支給の保険給付の支給請求権者 厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)37条1項は,保険給付の受給権者が死亡した場合において,その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは,その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。厚年法3条2項),子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の 親族であって,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは,- 2 - 自己の名で,その未支給の保険給付の支給を請求することができる旨規定する。 (2) 遺族厚生年金の受給権 親族であって,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは,- 2 - 自己の名で,その未支給の保険給付の支給を請求することができる旨規定する。 (2) 遺族厚生年金の受給権者厚年法59条1項本文は,遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)の配偶者, 子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持したものとする旨規定する。 (3) 平成23年▲月▲日付け年発〇第〇号日本年金機構理事長宛て厚生労働省年金局長通知別添「生計維持・生計同一関係等に係る認定基準及びその取扱いについて」(以下「本件基準」という。)の定め(乙6) ア本件基準6(重婚的内縁関係)(1)(認定の要件)は,届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合の取扱いについては,婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして,届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であるから,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り,内縁関 係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとする旨定める。 イ本件基準6(1)①は,「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているとき」には,次のいずれかに該当する場合等が該当するものとして取扱うこととする旨定める。 (ア) 当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止している と認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき(イ) 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって,その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し,当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき (イ) 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって,その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し,当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるときウ本件基準6(1)②は,「夫婦としての共同生活の状態にない」といい得る ためには,次に掲げる全ての要件に該当することを要するものとする旨定- 3 - める。 (ア) 当事者が住居を異にすること。 (イ) 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと。 (ウ) 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。)(1) Aの身分事項等ア A(昭和14年▲月▲日生まれ)は,昭和38年▲月▲日にB(昭和17年▲月▲日生まれ。)と婚姻した。 イ Aは,平成5年頃,Bと生活を共にしていた大阪府a市b町所在の自宅(以下「b町の自宅」という。)を出てBと別居するようになり,その後,京都市内において原告との同居を開始した(甲3,弁論の全趣旨)。 ウ Aは,平成12年▲月▲日,老齢厚生年金の裁定を受けてその受給を開始した(甲5)。 エ A(当時76歳)は,平成28年▲月▲日,京都市内の病院で死亡した(甲1,6,7)。なお,Aの死亡時において,同人とBとの法律上の婚姻関係は存続していた。 (2) 原告の身分事項原告(昭和20年▲月▲日生まれ)は,昭和42年▲月▲日に前夫と婚姻 したが,平成10年▲月▲日に同人と協議離婚した(乙5)。 (3) 本件各不支給決定の経緯等ア原告は,平成28年6月10日,厚生労働大臣に対し,Aの内縁の妻 和42年▲月▲日に前夫と婚姻 したが,平成10年▲月▲日に同人と協議離婚した(乙5)。 (3) 本件各不支給決定の経緯等ア原告は,平成28年6月10日,厚生労働大臣に対し,Aの内縁の妻として,遺族厚生年金の裁定の請求をするとともに,Aの老齢厚生年金に係る未支給の保険給付の支給の請求をした(甲8,10)。 イ厚生労働大臣は,平成28年7月11日付けで,原告に対し,厚年法5- 4 - 9条の定める遺族に該当しない(被保険者等の配偶者に該当しない)ことを理由として,遺族厚生年金を支給しない旨の決定をした(甲11)。 ウ原告は,平成28年7月22日,近畿厚生局社会保険審査官に対し,上記イの決定につき審査請求をした(甲13)。 エ厚生労働大臣は,平成28年10月12日付けで,原告に対し,Aの死 亡当時,AとBとの婚姻関係が形骸化していたとは認められないことを理由として,未支給の保険給付を支給しない旨の決定をした(甲12)。 オ原告は,平成28年10月20日,近畿厚生局社会保険審査官に対し,上記エの決定につき審査請求をした(甲15)。 カ原告は,平成29年1月6日,上記ウ及びオの各審査請求をした日から, いずれも2月以内に近畿厚生局社会保険審査官による決定がなかったため,厚年法90条3項の規定により同審査官が上記各審査請求を棄却したものとみなし,社会保険審査会に対し,本件各不支給決定につき再審査請求をした(甲14)。 キ社会保険審査会は,平成29年9月29日付けで,上記カの再審査請求 を棄却する旨の裁決をした(甲16)。 (4) 本件訴えの提起原告は,平成30年3月30日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件における主たる争点は,Aの内縁の妻であった原告が,厚年法37 旨の裁決をした(甲16)。 (4) 本件訴えの提起原告は,平成30年3月30日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件における主たる争点は,Aの内縁の妻であった原告が,厚年法37条1 項,59条1項所定の「配偶者」に該当するか(以下,この要件を「配偶者要件」という。)であるが,Aにはその死亡時に法律上の妻であるBがいたため,いわゆる重婚的内縁関係が存在する場合(法律上の婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合)における配偶者要件該当性が問題となる。 配偶者要件については,被保険者等又は受給権者の生活実態に即し,現実的 な観点から理解すべきであるところ,いわゆる重婚的内縁関係が存在する場合- 5 - においては,原則として,法律上の婚姻関係にある者が配偶者要件に該当するというべきであり,重婚的内縁関係にある者が配偶者要件に該当し得るといえるのは,法律上の婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合,すなわち,事実上の離婚状態にある場合に限られるというべきである(最高裁判所昭和58年4月14日第一小 法廷判決・民集37巻3号270頁,最高裁判所平成17年4月21日第一小法廷判決・集民216号597頁参照)。そして,一般に,法律上の婚姻関係が事実上の離婚状態にあるか否かについては,①別居の経緯,②別居の期間,③婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無,④別居後における経済的依存の状況,⑤別居後における婚姻当事者間の音信・訪問の状況,⑥重婚的内縁 関係の固定性等の諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきであると解されており,本件においても,このような基本的な判断枠組みに則って判断すべきである(本件基準もこのような判断枠組みを前提とするも 関係の固定性等の諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきであると解されており,本件においても,このような基本的な判断枠組みに則って判断すべきである(本件基準もこのような判断枠組みを前提とするものであると解され,このような判断枠組みによることについて,当事者間に特段の争いはない。)。 したがって,本件の主たる争点の実質的な内容は,AとBとの法律上の婚姻 関係が,上記の諸般の事情を総合的に考慮した結果,事実上の離婚状態にあったと認められるか否かである。 4 争点に対する当事者の主張(原告の主張)以下の諸事情を総合的に考慮すると,AとBとの婚姻関係は,事実上の離婚 状態にあったというべきである。 (1) 別居の経緯及び期間Aは,原告と同居して共に生活をするために,平成5年▲月頃,Bと別居するようになり,その後,死亡した平成28年▲月まで22年以上もの長期間にわたりBと別居していた。 (2) 婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無- 6 - 上記(1)のとおり,AとBとは22年以上も別居を継続していたのであり,その間,二人は関係修復のために同居を試みるということもせず,Aと原告とが生活をしていた京都市c区内のマンションの一室(以下「dのマンション」という。)にBが訪ねてくるということも一切なかった。このように,AとBとの間で実質的な婚姻関係の修復に向けた努力がされた形跡はない。 Aは,別居当初から,Bとは離婚して原告と婚姻することを意図していたのであり,そのことは「平成14年中にBと離婚します。」などと記載した文書(甲19)を作成していることからも明らかである。また,Bも,Aとの間の長男であるCの結婚式の際に,Aから離婚の申出があったのに対し黙ってこれを否定しなかったのであって,生活 。」などと記載した文書(甲19)を作成していることからも明らかである。また,Bも,Aとの間の長男であるCの結婚式の際に,Aから離婚の申出があったのに対し黙ってこれを否定しなかったのであって,生活補償の点を除けば,離婚してもか まわないと考えていたというべきである。 以上のとおり,AとBには実質的な婚姻関係を継続させる意思はなかったのであり,別居によって破綻が明確となった夫婦関係の修復に向けた努力は,両者の間では何ら行われていない。 (3) 別居後におけるBの経済的依存状況 上記のとおり,AはBとの離婚の意思を明確に有しており,そもそもBに対して生活費の経済的援助を継続的に行う意思を有していたとは到底考えられない。 仮に,AからBへの送金等があったとしても,それは,平成19年頃,AがCから京都の家(dのマンション)を壊しに行くなどと強く言われ,その 害悪を避けるため,言われるがまま自己名義の口座に入金していたにすぎない。したがって,AがBを配偶者として遇し,夫としての責任を果たす意思に基づいて経済的な援助を実行していたものでないことは明らかである。 (4) 別居後における音信・訪問の状況Aは,平成5年にBと別居して以降,B及びその家族とはほとんど連絡を 取らず,たまに子であるCや娘らと連絡を取ることはあっても,B本人とは- 7 - 基本的に連絡を取ることがなかった。 (5) 重婚的内縁関係の固定性原告とAとは,平成5年に同居を開始し,平成7年▲月頃にdのマンションを購入して転居し,法律婚の夫婦と外見上は何ら変わらない生活を22年以上送ってきたのである。原告とAとの内縁関係は,十分に安定し固定した ものとなっていたといえる。 (被告の主張)以下の諸事情を総合的に考慮すると,AとBとの 上は何ら変わらない生活を22年以上送ってきたのである。原告とAとの内縁関係は,十分に安定し固定した ものとなっていたといえる。 (被告の主張)以下の諸事情を総合的に考慮すると,AとBとの婚姻関係が事実上の離婚状態にあったということはできない。 (1) AとBに離婚意思がなかったこと AとBとは平成5年頃に別居しているものの,その後,離婚に向けた法的手続は取られていないし,AがBとの離婚を成立させるべく具体的な交渉を行っていたなどの事情もない。その間,Aは,後記(2)のとおり,Bに対して継続的な送金等を行って同人の生活を経済的に支えるとともに,後記(3)のとおり,音信や交流も保たれていたのであって,これらの事情は,AとBに 離婚意思がなかったことを裏付けている。 また,Aは,自らが死亡した場合にはdのマンションを原告に譲渡する旨の遺言書(甲18,乙10)を作成しているところ,これらは,Aが死亡した場合に原告はdのマンションを所有することができず,原告の住居として確保することができないことを懸念したものと考えられる。すなわち,Aは, 同人が死亡した場合,原告が相続によりdのマンションを取得することができないことを前提に上記各遺言書を作成したものと考えられる。 さらに,Cも,本訴において,AとBに離婚意思がなかったことを明確に証言している。 (2) Aが別居開始当時から死亡直前までBに対する送金等を行い,同人の生 活を経済的に支えていたこと- 8 - Cの証言やA名義の預金口座の取引履歴によれば,Aは別居開始当時から死亡直前までBに対し継続的に一定額の送金等を行っていたことが認められるところ,当該経済的援助はAにとって相当に大きい負担であったと考えられる一方,当該援助がなければBが生活を維 は別居開始当時から死亡直前までBに対し継続的に一定額の送金等を行っていたことが認められるところ,当該経済的援助はAにとって相当に大きい負担であったと考えられる一方,当該援助がなければBが生活を維持することはできなかったと考えられる。また,Aは,Bが居住するb町の自宅に係る固定資産税を負担 していた。 以上によれば,Aは,Bを配偶者として遇し,夫としての責任を果たす意思に基づいて経済的な援助を実行していたと推認することができる。 (3) AとBは,別居後も音信及び交流を保っていたことAは,Bと別居した後も,平成12年のCの結婚式に参列し,平成21年 の長女の夫の葬儀に参列するなど,AとBないしその家族が全く没交渉でなかったことは明らかである。 AとBとの具体的な音信や交流の状況は明らかでないが,Cの証言等によれば,AとBが面会することもあったことや,頻繁ではないとしても,AとBとは連絡を取り,送金額等について協議していたことがうかがわれる。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲1~8,14,18~20,乙1~4,7~20,証人C,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) AとBとの婚姻等A(当時23歳)は,昭和38年▲月▲日,B(当時20歳)と婚姻し,長女及び次女をもうけ,その後,C(昭和44年▲月▲日生まれ)をもうけた。 (2) Aの平成5年までの生活状況 Aは,昭和47年▲月以降,b町の自宅において,B及び上記子らと生活- 9 - していたが,長女及び次女は,平成5年までには婚姻するなどして独立し,同年当時,b町の自宅では,A,B及びCが生活をしていた。 Bは,b町の自宅1階で薬剤師として薬局を営んでいた時期があったが していたが,長女及び次女は,平成5年までには婚姻するなどして独立し,同年当時,b町の自宅では,A,B及びCが生活をしていた。 Bは,b町の自宅1階で薬剤師として薬局を営んでいた時期があったが,平成5年頃には薬局を営んでいなかった。 (3) Aと原告との交際の開始等 Aは,京都市内において,製薬会社の営業職として勤務し,同市内の病院に出入りしていたところ,昭和63年頃,介護士として同病院に出入りしていた原告と知り合った。その後,Aと原告とは,平成二,三年頃に,男女としての交際を開始した。 (4) AとBとの別居等 ア A(当時54歳)は,平成5年▲月頃,b町の自宅を出て行きB(当時51歳)と別居するとともに,(住所省略)のアパートで原告(当時48歳)と同居するようになった。なお,この時点において,BはAが原告と交際していたことを知らず,他に,AとBとが不仲になっていたとか既に婚姻関係が破綻していたとかといった事情は見当たらない。 イ Aは,別居当初は,Bに対し,仕事の都合でb町の自宅を出るといった趣旨の説明をしていたが,その後間もなくして,他の女性と生活を共にするためである旨告白した。そのため,AとBとの間では,離婚するかどうかについての話合いが行われ,その中で,Bから離婚の申出がされたこともあったが,Aがその必要はないなどと述べたため,離婚するには至らな かった。 (5) 別居後のBの経済状況等ア Aは,別居当初,Bに対し,月10万円から15万円程度の生活費をb町の自宅まで持参し,又は送金するなどしていた。特に,別居当初は,定期的にAがb町の自宅を訪れることがあり,その際には,Bに上記生活費 を渡すとともに,一定時間,Bと会話をするなどしていた。 - 10 - イその後, どしていた。特に,別居当初は,定期的にAがb町の自宅を訪れることがあり,その際には,Bに上記生活費 を渡すとともに,一定時間,Bと会話をするなどしていた。 - 10 - イその後,Aは,遅くとも平成19年7月までに,Bへの生活費の支払を,A名義の預金口座を使って行うようになった。すなわち,Aは,①平成19年7月10日から平成23年12月6日までの期間は,ほぼ毎月,5万円から10万円を,②平成23年12月15日から平成28年2月16日までの期間は,偶数月の中旬に5万円又は7万円を,京都市内の銀行等に おいて入金し,それを,Bが(住所省略)の銀行で出金していた(なお,平成28年▲月▲日の入金は,原告がAから依頼されて行ったものである。)。 また,Aは,Bとの別居後も,b町の自宅に係る固定資産税を自ら負担して支払っていた(なお,Bは,平成24年▲月頃に(住所省略)の別の 住居に転居するまで,b町の自宅で暮らしていた。)。 ウ Cは,AとBが別居した後も,平成12年に婚姻して独立するまでBと共にb町の自宅で生活し,その間,会社員として勤務していたが,Aと原告との別居の前後を通じて,CがBに生活費を渡したことはなかった。 エ Bは,Aとの別居後,カラオケボックスでの配膳などのパートを不定期 にしていたが,定職に就くことはなかった。また,b町の自宅の1階を店舗として賃貸に出すことができたが,賃料は月額4万円であり,賃借人がいない時期もあった。 オ Bは,平成19年▲月▲日から老齢基礎年金の支給を受けており,その受給額は年〇万〇円であった。 (6) AとBとの交流等ア Cは平成12年▲月▲日に婚姻したところ,Aは結婚式に先立つ親族同士の顔合わせの機会に参加し,同年▲月▲日に開催された結婚式にも参列 は年〇万〇円であった。 (6) AとBとの交流等ア Cは平成12年▲月▲日に婚姻したところ,Aは結婚式に先立つ親族同士の顔合わせの機会に参加し,同年▲月▲日に開催された結婚式にも参列した。同日には,AとBとの二人での写真(乙17の1)が撮影されている。 イ A(当時70歳)及びB(当時67歳)は,平成21年▲月頃,(住所省- 11 - 略)で行われた長女の夫の葬儀に参列したところ,両名は,その日,Aの運転する自動車で(住所省略)まで帰った。 (7) Aと原告の生活状況等ア Aと原告は,平成7年▲月頃,原告名義で購入したdのマンションに転居した(購入代金については,原告が約200万円を,Aが1700万円 余りを出捐した。)。 なお,原告は平成10年▲月▲日に,Aは平成12年▲月▲日に,それぞれ住民票上の住所をdのマンションに異動している。 イ Aは,平成11年▲月,60歳でいったん上記製薬会社を退職した後,平成12年▲月から嘱託社員として同社で2年間勤務し,平成15年▲月 から平成24年ないし平成25年頃まで,タクシー運転手として勤務した。 Aは,平成12年▲月▲日,老齢厚生年金の裁定を受けてその受給を開始したところ,その受給額は,概ね,年260万円から280万円程度(停止額があるときを除く。)であった。なお,Aの老齢厚生年金については,平成11年▲月分から平成19年▲月分まで配偶者加給年金額が加算され ているところ,これは,Aが老齢厚生年金の申請時にBを「配偶者」であるとして申告・登録したため,Bが65歳となった平成19年▲月分まで,Bを対象者として加給年金額が加算されたものである。 ウ原告は,平成10年▲月▲日に前夫と離婚し,その後,AにもBと離婚するように求めるようになっ たため,Bが65歳となった平成19年▲月分まで,Bを対象者として加給年金額が加算されたものである。 ウ原告は,平成10年▲月▲日に前夫と離婚し,その後,AにもBと離婚するように求めるようになったが,この頃以降に,AがBに対し離婚を申 し出たことをうかがわせる事情は見当たらない。 Aは,平成11年▲月▲日付けで,「平成14年中にBと離婚します。直ちにDと結婚します。もし出来なかった場合Dとも別れます。」などと記載した文書(甲19)を作成し,原告に渡した。また,Aは,平成11年▲月▲日付けでAが死亡した場合にはdのマンションを原告に譲渡する旨記 載した遺言状(乙10)を作成し,平成15年▲月▲日付けでAが原告よ- 12 - り先に死亡した場合にはdのマンションを原告に譲渡する旨のほか,「遺族年金の件,平成5年より同居の内縁の妻Dに譲渡致します」と記載した遺言書(甲18)を作成した。 エ dのマンションについては,平成24年▲月▲日付け贈与を原因としてAから原告に対する持分6分の1の移転登記がされ,更に,平成28年▲ 月▲日付け贈与を原因としてAから原告に対する持分全部の移転登記がされている。 (8) Aの死亡前後の状況ア Aは,平成24年頃から体調を崩すことが多くなり,入院することもあったが,当初,体調不良の原因は判明しなかった。 イ Aは,平成27年▲月頃,体調を崩して1か月程度入院した後,平成28年▲月に再度体調が悪化した。Aは,同年▲月中旬頃,更に体調を崩して入院し,間質性肺炎と診断された。その間のAの看病は原告が行った。 他方で,BやCらは,Aが入院していることを知らされていなかった。 ウ Aは,平成28年▲月下旬頃,危篤状態となり,その旨が原告からBや Cらに伝えられた。Bは, のAの看病は原告が行った。 他方で,BやCらは,Aが入院していることを知らされていなかった。 ウ Aは,平成28年▲月下旬頃,危篤状態となり,その旨が原告からBや Cらに伝えられた。Bは,その日のうちに,Cらと共に,Aが入院していた京都市内の病院を訪問し,Aを見舞った。その際,原告とBが初めて顔を合わせ,Bは原告に対しお礼を述べ,原告はBに対し謝罪をするなどした。 エ Aは,平成28年▲月▲日,入院先の病院において死亡したが,それま での間,Bは,複数回,Aの見舞いのために病院を訪れた。 オ Aの葬儀は,Cを喪主として(住所省略)で執り行われ,Bも原告も参列した。 2 事実認定の補足説明(1) 原告は,上記認定事実(4)イについて,Aは別居当初からBと離婚するこ とを意図していたなどとして,Aが離婚する必要がないと述べたとは考えら- 13 - れないと主張する。しかしながら,本件全証拠によっても,別居当初のみならず,別居後22年以上の間に,AがBに離婚を申し出たり,離婚するための法的手続を取ろうとしたりした様子はうかがわれない。上記認定事実(4)アのとおり,Aがb町の自宅を出て行った平成5年当時に,AとBとが不仲になっていたとか既に婚姻関係が破綻していたとかといった事情が見当た らないことからすれば,Aの不貞行為を知ったBが周囲の助言等も踏まえて離婚を申し出たが,Aがこれに応じなかったという経緯が特に不自然であるとはいえず,現に両名が長期間にわたり別居していたにもかかわらず離婚手続に至っていないこと等に照らせば,Aが離婚する必要はないなどと述べたため離婚するには至らなかったという経緯を,その当時にBから聞いていた とするCの証言は信用することができる。 原告は,その本人尋問において,AはB らせば,Aが離婚する必要はないなどと述べたため離婚するには至らなかったという経緯を,その当時にBから聞いていた とするCの証言は信用することができる。 原告は,その本人尋問において,AはBに何度も離婚を申し出たが,Bがこれに応じなかったと聞いている旨供述するが,重婚的内縁関係にある原告からBとの離婚を求められているにもかかわらず,そのための行動を取っていないAが,原告に対しては,Bが応じてくれないために離婚することがで きないと虚偽の説明をしていたとも考えられるから,原告の上記供述に基づき,AがBに離婚を求めていたとの事実を認定することはできない。 (2) 原告は,上記認定事実(5)アについて,CはAがb町の自宅に来たのを見たことがあるわけではないし,Aが職場のある京都市内から,わざわざ仕事を抜け出してb町の自宅まで生活費を手渡しに行くとは考えられないなど と主張する。しかしながら,Aが製薬会社で営業職として勤務していたことやα市とβ市との間の距離等に照らすと,Aが,日中,空き時間ができたときにb町の自宅を訪れていたとしても必ずしも不自然とはいい難い。また,CがAに対して否定的な感情を抱いていたため,BがAと会っていることをCに伝えないようにしていたと思われるという点や,Cはb町の自宅の灰皿 に煙草の吸い殻が残っていたことをきっかけとしてAがb町の自宅に来た- 14 - ことを知ったという点など,Cの証言内容は具体的かつ自然であるし,CはAがb町の自宅に来たことを具体的に知ったのはその1回だけであると証言するなど記憶に従って正直に証言している様子がうかがわれることからしても,Aがb町の自宅を訪れていたとするCの証言は信用することができる。 また,原告は,その本人尋問において,平成19年7月まで など記憶に従って正直に証言している様子がうかがわれることからしても,Aがb町の自宅を訪れていたとするCの証言は信用することができる。 また,原告は,その本人尋問において,平成19年7月まではAからBへの金銭の支払はなく,平成19年頃にCから脅迫されて金銭の支払をするようになった旨供述するが,別居開始から14年が経過し,かつ,Bが老齢基礎年金の受給を開始している平成19年7月になって,BないしCから生活費支払の要求があり,Aからの送金が開始されたというのはいかにも不自然 である。AがBに送金をしている事実を原告に秘していたとしても何ら不自然ではなく,原告の上記供述があるからといって,別居開始当時から生活費の支払があったとするCの証言の信用性が否定されることにはならない。 3 検討(1) 判断枠組み 上記認定事実を前提に,前記第2の3において説示した判断枠組みに則り,AとBとの法律上の婚姻関係が事実上の離婚状態にあったと認められるかについて,検討する。 (2)ア別居の経緯及び期間について上記認定事実によれば,Aは,平成5年▲月頃,既に交際していた原告 と同居するために一方的にb町の自宅を出てBと別居するようになり,その後,平成28年▲月に死亡するまで,22年以上にわたりb町の自宅に戻ることなく京都市内で原告と同居して生活を共にし,Bとの別居を継続したものと認められる。 もっとも,別居を開始した時点において,AとBとが不仲になっていた とか既に婚姻関係が破綻していたとかといった事情は見当たらず,AがB- 15 - と別居するに至ったのは,専ら原告との交際を理由とするものであったと考えられる。また,22年以上という別居期間は,それ自体として長期に及ぶものであるが,AとBとの婚姻関係は別居 - 15 - と別居するに至ったのは,専ら原告との交際を理由とするものであったと考えられる。また,22年以上という別居期間は,それ自体として長期に及ぶものであるが,AとBとの婚姻関係は別居開始までに30年以上維持されていたのであり,当該期間との比較においては,上記別居期間をもって必ずしも長期に及ぶとまではいえないと評価する余地もある。 イ婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無について上記認定事実のほか,他の証拠によっても,A及びBが,婚姻関係を維持ないし修復するために積極的な努力をした様子はうかがわれず,両名共に,別居状態を解消して夫婦としての共同生活を回復しようとする意思を有していなかったものと推認される。 もっとも,上記認定事実によれば,AとBとの間では,平成5年の別居開始当初に離婚するかどうかについての話合いが行われ,その中で,BからAに離婚を申し出たものの,Aがその必要はないなどと述べたことから離婚するには至らなかったというのである。また,平成10年には原告が前夫と離婚し,その後は,Aに対しBと離婚するように強く求めるように なったが,Aは,Bと離婚すると記載した文書を原告に渡すなどしつつ,他方で,Bに対しては,離婚協議を申し出るなどといった具体的な行動に出た様子はうかがわれず,むしろ,後記ウ及びエのとおり,AからBに対し継続的に経済的援助が行われるとともに,一定の音信が保たれていたことが認められる。これらの事情からすれば,A及びBは,夫婦としての共 同生活を回復しようとする意思は有していなかったものの,法律上の婚姻関係自体を維持し続ける意思は有していたものと考えられる。 この点に関し,原告は,その本人尋問において,平成27年▲月頃,Aと共に京都家庭裁判所に行き,離婚調停の申立 いなかったものの,法律上の婚姻関係自体を維持し続ける意思は有していたものと考えられる。 この点に関し,原告は,その本人尋問において,平成27年▲月頃,Aと共に京都家庭裁判所に行き,離婚調停の申立てに関する相談をしたが,準備すべき書類が多すぎて申立てを断念した旨供述するが,Aに真に離婚 意思があったとすれば,準備すべき書類が多いといった程度の理由で離婚- 16 - 調停の申立てを断念するとは考え難く,仮に原告が供述するとおりの事実があったとしても,Aとしては,原告から求められて家庭裁判所に赴いたにすぎず,真実は調停の申立てをする意思を有していなかったものと考えるのが自然である。 ウ別居後における経済的依存の状況について 上記認定事実によれば,Aは,平成5年の別居開始当初から死亡する直前の平成28年▲月まで,Bに対し,継続的に相応の金額の生活費の支払を行っていたところ,その金額や,上記認定の当時のBの経済状況等に照らせば,BがAから支払われる生活費に依存して生活を維持していたことは明らかということができる。 また,上記生活費の金額や当時のAの経済状況等に照らせば,Bに対する生活費の継続的な支払は,Aにとっても相応の負担になっていたと考えられるところ,それでもなお生活費の支払を継続したのは,夫としてBの生活を経済的に支える責任があるとの意識に基づくものであったと考えられる。この点は,Aが,体調が悪化していた平成28年▲月にも,原告に 依頼してまで生活費の入金をしていることからも裏付けられる。 この点に関し,Aが平成19年頃にCから脅迫されて金銭の支払をするようになったと述べる原告の供述を採用することができないことは,上記2(2)において説示したとおりであり,他に,本件において,Aが,BないしCとの Aが平成19年頃にCから脅迫されて金銭の支払をするようになったと述べる原告の供述を採用することができないことは,上記2(2)において説示したとおりであり,他に,本件において,Aが,BないしCとの軋轢や諍いを避け,原告との平穏な生活を維持するために,やむ なく上記生活費の支払を継続していたことをうかがわせるような事情は見当たらない。 エ別居後における婚姻当事者間の音信・訪問の状況について上記認定事実によれば,Aは,少なくとも別居開始当初は定期的にb町の自宅を訪れ,Bに生活費を渡すとともに一定時間会話をするなどしてい たほか,冠婚葬祭には夫婦として出席・参列していたことが認められる(C- 17 - の結婚式で二人での写真が撮影されていることや,長女の夫の葬儀の日にAの運転する自動車で二人で帰宅していること等からは,二人がそれぞれ父親・母親というだけでなく,夫婦として振る舞っていた様子もうかがわれないではない。)。 上記認定を超えて,別居期間全体を通じてAとBとが定期的に面会し, 又は連絡を取り合っていたことを認めるに足りる的確な証拠はないものの,上記のとおり,AがBに対し定期的に生活費を支払っていた上,その金額や支払の頻度が変更されていることなどに照らせば,AとBとの間で一定の音信が保たれていた旨のCの証言は信用することができる。 また,上記認定事実によれば,Bは,平成28年▲月下旬頃にAが危篤 状態となったことを知らされると,Cらと共に,その日のうちに,Aが入院していた病院を訪問し,その後も,Aが死亡するまで複数回にわたり見舞いに行ったことが認められる。 オ重婚的内縁関係の固定性について上記認定事実によれば,Aと原告とは,平成5年に同居を始めて以来, 22年以上にわたり事実上の夫婦とし で複数回にわたり見舞いに行ったことが認められる。 オ重婚的内縁関係の固定性について上記認定事実によれば,Aと原告とは,平成5年に同居を始めて以来, 22年以上にわたり事実上の夫婦として共同生活を送っていたのであり,その内縁関係は安定的かつ固定的なものであったと認められる。 (3) AとBとの婚姻関係の評価以上によれば,AとBとは平成5年▲月頃に別居を開始してから平成28年▲月にAが死亡するまで別居を継続し,その間,両名が婚姻関係を維持な いし修復するために積極的な努力をした様子は認められず,その別居状態は固定化していたということができるのに対し,Aと原告との内縁関係は安定的かつ固定的なものであったと認められる。しかしながら,他方で,A及びBは法律上の婚姻関係自体は維持し続ける意思を有していたこと,Aは夫としてBの生活を経済的に支える責任があるとの意識に基づき,別居期間中, 継続的にBに相応の金額の生活費を支払い,Bの生活を維持していたこと,- 18 - 別居期間中もAとBとの間で一定の音信は保たれており,BはAが危篤状態になった際には直ちに見舞いに訪れ,その後も複数回にわたりAの病院に見舞いに訪れていたことが認められる。 以上の事情を総合的に考慮すれば,AとBとの間には,なお夫婦として最低限の関係性は維持されていたというべきであるところ,別居期間について, 同居期間との比較においては必ずしも長期に及ぶとまではいえないと評価する余地があることにも鑑みれば,社会通念に照らし,AとBとの法律上の婚姻関係が実体を失って形骸化していたとまで評価するのは相当でない。したがって,AとBとが事実上の離婚状態にあったとまで認めることはできない。 4 本件各不支給決定の適法性以上によれば,原告はAの 体を失って形骸化していたとまで評価するのは相当でない。したがって,AとBとが事実上の離婚状態にあったとまで認めることはできない。 4 本件各不支給決定の適法性以上によれば,原告はAの配偶者に該当しないとして,原告に対しAに係る遺族厚生年金及び未支給の保険給付をいずれも支給しないものとした本件各不支給決定が違法であるということはできない。 5 結論 よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官森田亮 - 19 - 裁判官渡邊直樹

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