平成30(受)755 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年11月7日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所 平成29(ネ)516
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判決文本文3,219 文字)

- 1 -平成30年(受)第755号地位確認等請求事件令和元年11月7日第一小法廷判決 主文 1 原判決中,被上告人の労働契約上の地位の確認請求及び平成27年4月1日以降の賃金の支払請求を認容した部分を破棄する。 2 前項の部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 3 上告人のその余の上告を棄却する。 4 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人石井将,同宮原三郎,上告復代理人渡邊典子の上告受理申立て理由第1について 1 本件は,上告人との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して就労していた被上告人が,上告人による解雇は無効であると主張して,上告人に対し,労働契約上の地位の確認及び解雇の日以降の賃金の支払を求める事案である。 2 原審の確定した事実関係等の概要及び記録によって認められる本件訴訟の経緯は,次のとおりである。 (1) 上告人と被上告人との間の労働契約等ア上告人は,建築物の総合的な管理に関する業務等を目的とする株式会社である。 イ被上告人は,平成22年4月1日,上告人との間で,契約期間を同日から同23年3月31日までとする有期労働契約を締結し,上告人が指定管理者として管理業務を行う市民会館で勤務することとなった。なお,上記労働契約には,契約期間の満了時の業務量,従事している業務の進捗状況,被上告人の能力,業務成績及- 2 -び勤務態度並びに上告人の経営状況により判断して契約を更新する場合がある旨の定めがあった(以下,被上告人と上告人 間の満了時の業務量,従事している業務の進捗状況,被上告人の能力,業務成績及- 2 -び勤務態度並びに上告人の経営状況により判断して契約を更新する場合がある旨の定めがあった(以下,被上告人と上告人との間の労働契約を「本件労働契約」という。)。 その後,本件労働契約は,上記と同様の内容で4回更新され,最後の更新において,契約期間は平成26年4月1日から同27年3月31日までとされた。 ウ上告人は,平成26年6月6日,被上告人に対し,同月9日付けで解雇する旨の意思表示をした(以下,これによる解雇を「本件解雇」という。)。 (2) 第1審における経緯被上告人は,平成26年10月25日,上告人に対し,労働契約上の地位の確認及び本件解雇の日から判決確定の日までの賃金の支払を求める本件訴訟を提起し,同年12月18日の第1回口頭弁論期日において,最後の更新後の本件労働契約が,契約期間を同年4月1日から同27年3月31日までとする有期労働契約である旨の訴状に記載した事実を主張した。 第1審は,平成29年1月26日に口頭弁論を終結し,同年4月27日,被上告人の請求を全部認容する判決を言い渡した。同判決は,その理由において,本件解雇には有期労働契約の契約期間中の解雇について規定する労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由がある」とはいえず,本件解雇は無効であるとし,被上告人は労働契約上の権利を有する地位にあるというべきであるとした。 (3) 原審における経緯上告人は,第1審判決に対して控訴をし,本件労働契約が契約期間の満了により終了したことを抗弁として主張する旨の記載がされた控訴理由書を提出した。 被上告人は,上記の主張につき,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨を申し立てるとともに,雇用継続への合理的期待 したことを抗弁として主張する旨の記載がされた控訴理由書を提出した。 被上告人は,上記の主張につき,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨を申し立てるとともに,雇用継続への合理的期待が認められる場合には,解雇権の濫用の法理が類推され,契約期間の満了のみによって有期労働契約が当然に終了するものではないところ,本件労働契約の契約期間が満了した後,契約の更新があり得ないような特段の事情はないから,その後においても本件労働契約- 3 -は継続している旨の記載がされた控訴答弁書を提出した。 原審は,平成29年9月14日の第1回口頭弁論期日において,上告人の上記の主張は時機に後れた攻撃防御方法に当たるとしてこれを却下し,口頭弁論を終結した。 3 原審は,上記事実関係等の下において,本件解雇には労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由がある」とはいえず,本件解雇は無効であるとし,最後の更新後の本件労働契約の契約期間が平成27年3月31日に満了したことにより本件労働契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく,被上告人の労働契約上の地位の確認請求及び本件解雇の日から判決確定の日までの賃金の支払請求を全部認容すべき旨の判断をした。 4 しかしながら,原審の上記判断のうち,契約期間の満了により本件労働契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく,被上告人の労働契約上の地位の確認請求及びその契約期間が満了した後である平成27年4月1日以降の賃金の支払請求を認容した部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 前記事実関係等によれば,最後の更新後の本件労働契約の契約期間は,被上告人の主張する平成26年4月1日から同27年3月31日までであるところ,第1審口頭弁論終結時において,上記契約期間が満了し 前記事実関係等によれば,最後の更新後の本件労働契約の契約期間は,被上告人の主張する平成26年4月1日から同27年3月31日までであるところ,第1審口頭弁論終結時において,上記契約期間が満了していたことは明らかであるから,第1審は,被上告人の請求の当否を判断するに当たり,この事実をしんしゃくする必要があった。 そして,原審は,本件労働契約が契約期間の満了により終了した旨の原審における上告人の主張につき,時機に後れたものとして却下した上,これに対する判断をすることなく被上告人の請求を全部認容すべきものとしているが,第1審がしんしゃくすべきであった事実を上告人が原審において指摘することが時機に後れた攻撃防御方法の提出に当たるということはできず,また,これを時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして却下したからといって上記事実をしんしゃくせずに被上告人の- 4 -請求の当否を判断することができることとなるものでもない。 ところが,原審は,最後の更新後の本件労働契約の契約期間が満了した事実をしんしゃくせず,上記契約期間の満了により本件労働契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく,原審口頭弁論終結時における被上告人の労働契約上の地位の確認請求及び上記契約期間の満了後の賃金の支払請求を認容しており,上記の点について判断を遺脱したものである。 5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,労働契約上の地位の確認請求及び平成27年4月1日以降の賃金の支払請求を認容した部分は破棄を免れない。そして,被上告人が契約期間の満了後も本件労働契約が継続する旨主張していたことを踏まえ,これが更新されたか否か等について更に審理を尽くさせるため,同部分につ 支払請求を認容した部分は破棄を免れない。そして,被上告人が契約期間の満了後も本件労働契約が継続する旨主張していたことを踏まえ,これが更新されたか否か等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。 なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官木澤克之裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官山口厚裁判官深山卓也)

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