平成17(う)232 道路交通法違反,殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年3月30日 仙台高等裁判所 棄却
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判決文本文9,028 文字)

-1-主文本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中130日を原判決の刑に算入する。 理由 第1本件控訴の趣意は,弁護人荒井純哉が提出した控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用するが,論旨は,原判示第2の事実についての事実誤認及び量刑当を主張するものである。 第2そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。 控訴趣意中,事実誤認の主張について・所論は,原判示第2の殺人について,その外形的事実,すなわち被告人の運転する自動車が被害者をれき跨して死亡させた事実は認めるものの,被告人は,被害者と衝突するまで被害者を認識していなかったし,衝突後も衝突したのが人であるとの認識はなかった,したがって,未必的にも殺意はない,仮に衝突と同時に一瞬でも被害者を認識したとしても,被告人は,無免許運転の発覚を恐れ,周章狼狽してその場から逃げることだけを考えていたのであり,人を殺すことについての認容はなかった,したがって,被告人にこの場合何らかの故意があったとしても,殺意ではあり,,。 得ず最大限暴行の故意に止まるというべきであるなどというのであるしかしながら,原判示第2の事実につき,被告人に未必の殺意を認め,同事実を認定した原判決に事実誤認はなく(事実認定の補足説明)にお,ける説示も是認できるところであって,所論の指摘を踏まえて検討してもこれが左右される点は認められない。 すなわち,関係証拠によれば,被告人は,無免許,酒気帯びの状態で駐車場から自己の自動車(以下「被告人車」という)を運転して道路に出。 るに当たり,進行方向の原判示道路左側車線は客待ちタクシーが数珠繋ぎ-2-で停車していたため,対向車線に入って同道路を時速約30キロメートルで逆走し始めたこと,被害者は,客待ちタクシーの列の間 。 るに当たり,進行方向の原判示道路左側車線は客待ちタクシーが数珠繋ぎ-2-で停車していたため,対向車線に入って同道路を時速約30キロメートルで逆走し始めたこと,被害者は,客待ちタクシーの列の間を抜け,本件道路を左方から右方に小走りで横断中,被告人車の前部中央より左寄り付近が被害者の右腰部付近に衝突したこと,被害者は,衝突されたことでそのまま被告人車の前方に跳ね返され,約4.5メートル押し出され,前のめり状態となって下半身からくずれるように倒れ,道路に四つんばいの状態になったこと,被告人車は,衝突後約3.6メートル前進していったん停止したが,このときの被害者の転倒位置は,被告人車の前方約1メートルの地点であったこと,被告人は,いったん停止後,再び被告人車を発進させて前方に転倒していた被害者の身体に乗り上げさせ,車底部で被害者の身体を圧迫して進行し,ゴトン,ゴトンと音を立てながら車体を数回浮き沈みさせ,右タイヤが浮き上がり,被告人車はハンドルを取られたまま,道路前方右側の歩道に乗り上げた上,被害者の転倒地点から約14.8メートル先の歩道に面したホテルの壁面に衝突したこと,被害者は転倒地点から被告人車によりその進行方向約6.5メートル先まで引きずられたこと,被告人車の最低地上高は15センチメートル前後であり,重量は約1920キログラムであったこと,その後,被告人は,上記衝突でボンネットがめくれ上がった状態の被告人車を運転して,A通りの対向車線を逆走するなどして,停車中の車両等に次々と衝突した上,付近の路地に被告人車を乗り捨ててタクシーで逃走したこと,そして,午前2時30分ころ,保険代理店を経営する知人宅を訪れ,人を轢いて逃げてきた旨告げ,相手が死亡した場合に保険からいくら下りるのか,1億円くらい払わなければならないのか,などと質問 したこと,そして,午前2時30分ころ,保険代理店を経営する知人宅を訪れ,人を轢いて逃げてきた旨告げ,相手が死亡した場合に保険からいくら下りるのか,1億円くらい払わなければならないのか,などと質問したこと,などの事実が認められる。 これらの事実,特に被害者は被告人の目前で被告人車前部に衝突されていることに加え,被告人車の停止距離等からみて,状況的に被告人が衝突前に被害者を目撃,認識していないことは考え難いし,また衝突後は衝撃-3-がある上,被害者は,衝突されてから被告人車の約4.5メートル前方へ押し出されるなどして崩れるように倒れていることからみて,人にぶつかったことの認識を欠くとも考え難い。 被告人は,原審及び当審公判において,衝突時に被害者を全く見ていない旨供述するのであるが,その供述によれば,右側歩道上の歩行者を首を後方にまで回して見ていて,前方に視線を戻そうとしたときに衝撃を感じ,。 たのでブレーキを掛けるととも下を向いて目をつぶったというのであるしかし,被告人は,人通りもあり,走行車線には客待ちタクシーが列をなしているため対向車線を逆走していたのであり,たとえ歩行者からにらまれたものとしても,にらみ返すために首を後方に回してまで歩行者を見るということ自体が不自然であるばかりでなく,自車に何か衝撃を感じたのであれば,衝撃を感じた方向に視線を向けるのが自然であって,何かが迫ってきて衝突しそうになるのを見たわけでもないのに,反射的に下を向くとか,目をつぶるというのは考えがたく,不可解な行動というほかないし,言うところの右側の歩行者についても,その数や位置に捜査段階の途中から変遷が見られる。さらに,被害者との衝突の認識の有無等について述べるところも後記のとおり捜査段階の供述と対比して不合理に変遷している。このような点からみて, いても,その数や位置に捜査段階の途中から変遷が見られる。さらに,被害者との衝突の認識の有無等について述べるところも後記のとおり捜査段階の供述と対比して不合理に変遷している。このような点からみて,被告人の上記公判供述は信用できない。 これに対し,被告人は,すでに弁護人を選任してその法的助言を受け得る状態あった1月28日の時点の取調べ以降,一時未必的殺意を認める供述をした場合はもとより,これを否認している場合においても,被告人車が歩行者すなわち被害者と衝突し,崩れるように倒れるのを目撃した点については明確にこれを認め,あるいは被告人車の前に被害者が見えた時にはどんと鈍い音がし咄嗟にブレーキを踏んだ趣旨の供述をしており,1月30日の本件犯行現場での実況見分でも同様の指示をしており,これらの,,供述等は前記認定事実とも一定程度符合するもので相応の信用性があり-4-このことに当時被告人が飲酒酩酊していたことやその後興奮状態で必死の逃走をしていることなどを勘案すれば,被告人が直前に被害者に気付いていても不思議がなく,また,発見,衝突,ブレーキが感覚的に全て同時的に生起したような印象を持ってもおかしくない。なお,捜査段階後半で,被害者が左前方に倒れたので引くことはないと思ったとか車がスムーズに走らない感覚はホイールが縁石に当たっていると思ったからなどという供述もしているが,原判決指摘の点に加え,防犯ビデオの内容にも照らし,信用性がない。 以上指摘の点に照らせば,それを同時的というか否かはともかく,被告人は,本件衝突直前に被害者を認めて急ブレーキを掛けたが,被害者に衝突させ,被害者がしゃがみ込むように倒れたのを認めたとする原判決の説示は十分是認できるところである。 もっとも,被告人車停止後は,倒れた被害者が前方の死角に入った可能性はあるもの けたが,被害者に衝突させ,被害者がしゃがみ込むように倒れたのを認めたとする原判決の説示は十分是認できるところである。 もっとも,被告人車停止後は,倒れた被害者が前方の死角に入った可能性はあるものの,目前で衝突した被害者が,被告人車の前方に倒れていること,少なくともその可能性が十分あることは容易に認識し得るところであり,被告人は,衝突した人物が見当たらないのに,それを確かめようともせず,事態の発覚を避けるべく逃走を図って構わず発進し,さらに,そ,,,,ればかりでなく発進後被害者の身体に被告人車を乗り上げてゴトンゴトンと音を立て,右タイヤが浮き上がる程であったのに,そして自車が何かに乗り上げたとすればそれは被害者の身体以外にはないことは明らかであるにもかかわらず,被告人は前進を止めようとせず,アクセルをふかしてエンジンの回転数を上げ,結局被害者を約6.5メートル引きずり,その後,その先のホテルの壁面に衝突までしているのであるから,この点においても,被告人は被害者の身体をれき跨することがあることを知り,あるいは知ったまま,敢えて被告人車を発進し進行したことは明らかというべきである。 -5-また,被告人の犯行後の行動を見ても,被告人車をホテルの壁面に衝突,,,させて停止した後もボンネットがめくれ上がった状態で運転を強行し大通りの反対車線を逆走し,次々と停車車両等に被告人車を衝突させるなどして逃走を図っているのであり,被告人が周章狼狽していることが見て取れるが,無免許,酒気帯び運転であったとはいえ,被告人が人以外の物に衝突したと認識していたのであれば,さほど強い衝撃もなかったのであるから,これほど狼狽するとは考え難いし,深夜保険代理店を営む知人方を訪れて自賠責の死亡保険金のことを質問するなどという非常識な行動に及んだ と認識していたのであれば,さほど強い衝撃もなかったのであるから,これほど狼狽するとは考え難いし,深夜保険代理店を営む知人方を訪れて自賠責の死亡保険金のことを質問するなどという非常識な行動に及んだのも,人身事故を起こし,被害者を被告人車でれき跨したとの認識があったからこそのものと考えれば,容易に理解できるのである。 そして,被告人車は,2トン近い重量があるから,これを走行させて被害者をれき跨等すれば,被害者が死亡する危険性があることは明らかであり,無免許運転等の発覚を恐れて周章狼狽していたとしても,その認識や予見に欠けるところはないと認められる。 これらの諸点からすると,被告人は,被告人車を被害者に衝突させる交,,,通事故を起こしたことから無免許酒気帯び運転が発覚するのを恐れて被害者が被告人車の前方に倒れていることがあること及び2トン近い重量のある被告人車を乗り上げさせ,被害者をれき跨すれば,被害者が死亡する危険性があることを認識,認容しながら,どういう事態が生じようが構わないとの意図のもとで,あえて被告人車を発進,前進させて被害者の身体をれき跨したものであるから,未必の殺意があるといわざるを得ないのであり,したがって,未必の殺意を認定した原判決に誤りはない。 以下,所論を踏まえて補足する。 ・所論は,被害者の身長や被告人車バンパーの地上高に照らせば,被害者が衝突時にまっすぐ立っていたという事実と被告人車の前部バンパーが被害者の右腰部に衝突したという事実は両立しない,というのである。 -6-しかしながら,被害者の腰の高さと被告人車の前部バンパーの高さは一致しないものの,2名の目撃者は衝突部位を腰部と言っているし,被告人車の衝突位置は,前部バンパーに限られるものではなく,前部バンパーからフロントグリルにかけての一帯であることは容易 ンパーの高さは一致しないものの,2名の目撃者は衝突部位を腰部と言っているし,被告人車の衝突位置は,前部バンパーに限られるものではなく,前部バンパーからフロントグリルにかけての一帯であることは容易に推測できるし,被害者も小走り状態であって動いているから,直ちに両立しえないとはいえないし,その如何が判決に影響を及ぼすことはない。 所論は,目撃者が衝突直前に被告人車のフロントが一瞬下がった旨供述するが,自動車が急制動したときブレーキの効き始めで車体の前部が下がることは一般的知識ではない,被告人車には油圧式アクティブサスペンションが搭載されており,制動時の上下動を抑える機能が付いているばかりでなく,アンチロックブレーキシステムが採用されており,急制動時に車輪がロックせず急停止しにくい状態となっているから,被告人車が時速約30キロメートルで進行中急制動した場合,ブレーキの効き始めに車体前部が下がる事実を認めるに足りる証拠はない,スリップ痕が残らない程度の停止状態で,それ以前のブレーキが効き始めた時点で急制動の影響でフロントが下がったとは考えられない,などというのである。 しかしながら,走行中の自動車に制動が掛かれば重心が前に移動し,前,,部が沈むことはよく知られた現象であるしそれがブレーキの効き始めか停止の直前かによって変わることはない。また,被告人の捜査段階の供述によれば,被告人車のアクティブサスペンションは古くなってへたってきていたためか足回りが弱ってきており,走行時に多少のショック音を感じる状態であった,などというのであるから,相当程度に劣化していたことが被告人の供述から認められるし,他方アンチロックブレーキシステムによって車輪のロックは防止され,ブレーキ痕は残りにくくなるが,それによって急停止しにくくなるとか,ブレーキの掛かり方 化していたことが被告人の供述から認められるし,他方アンチロックブレーキシステムによって車輪のロックは防止され,ブレーキ痕は残りにくくなるが,それによって急停止しにくくなるとか,ブレーキの掛かり方が弱くなるといったことはないから,被告人車が上記各機能を備えているからといって,目撃-7-者の供述の信用性が左右されることはない。 また所論は,上記目撃者の位置関係から,被告人車の前部は見えない,別の目撃者は,被告人車のフロントが沈み込むような感じがしたのは,被害者と衝突した後一時停止した時であると供述している,などというのである。 しかし,前者については,目撃者の目の位置は,被告人車との間に停車するタクシーよりも高い位置にあるから,被告人車の前部が見えないということはできない。後者についても,両者の供述が矛盾するものとはいえないし,先の目撃者の供述の信用性が左右されるものではない。 所論は,防犯カメラに撮影された被告人車の画像に基づく走行経過の解析等により,急制動直前の被告人車の時速が約27.4キロメートルという結論には疑問がある,被告人車が急制動して停止できたのは,体重約80キログラムの被害者と衝突したからであり,この衝撃力を無視して単純に衝突から停止までの距離である3.65メートルを制動距離と考えることはできない,などというのである。 しかしながら,走行する2トン近い被告人車の重量に比較すれば被害者の体重は小さいから,その影響は大きくはないものと考えられるばかりでなく,制動距離が3.65メートルの場合直前の速度が時速約27.4キロメートルであることに,時速約30キロメートルで走行する被告人車がブレーキを掛けた場合,空走時間を0.75秒とすると空走距離だけでも約6.25メートルとなることを併せ考えると,被告人は,衝突を感じてからブレー ることに,時速約30キロメートルで走行する被告人車がブレーキを掛けた場合,空走時間を0.75秒とすると空走距離だけでも約6.25メートルとなることを併せ考えると,被告人は,衝突を感じてからブレーキを掛けたのでは衝突地点から約3.65メートルの地点で停止することは不可能であったというべきであり,この点からも被告人が衝突前に被害者を発見しブレーキを掛けていたことが裏付けられる。 所論は,本件犯行後被告人が訪れた保険代理店を経営する知人Bの検察官調書は信用できない,というのである。 -8-しかしながら,原判示のとおり,Bの検察官調書の内容は具体的かつ自然であること,Bは被告人の知人であって,あえて被告人に不利な虚偽の供述をする理由はないこと,被告人の警察官調書の内容と符合すること,などから,Bの検察官調書の信用性を認め,一方Bの原審公判供述は,被告人をかばう姿勢が顕著で信用できないとした原判決の説示は是認できる。 所論は,被告人の主観面の推測,捜査段階の供述の信用性等の判示につき,様々な疑問を提起するが,これまでの説示に照らしていずれも理由がないものであり,被告人の公判供述が信用できず,他方,被告人の捜査段階の供述が相応に信用できることは前記指摘のとおりである。 所論は,被告人に対する取調べ方法について種々主張し,特に検察官調書は恫喝,誘導して勝手に作文したものである,などというのであり,被告人の原審及び当審公判供述によっても,嘘でもいいから殺意があったと言え,などと殺意を認めるように迫られたなどと供述するのであるが,弁護人の法的助言を受け得る状況にあった上,被告人は,結局,いったん未必の殺意を認めた後にもこれを否定する趣旨の調書が取られていることに照らしても,不当な強制,誘導があったとは認められないし,殺意を否定できる心理状態において 況にあった上,被告人は,結局,いったん未必の殺意を認めた後にもこれを否定する趣旨の調書が取られていることに照らしても,不当な強制,誘導があったとは認められないし,殺意を否定できる心理状態において,被害者の存在を認識したことを認めているのであるから,その点に関する信用性は高いものと認められる。 所論は,防犯カメラの画像及びこれから解析される被告人車の位置などと照らし合わせながら,被告人,被害者及び目撃者らの行動につき種々主張する。 しかしながら,これらの主張を検討しても,例えば,被告人車と同型車において,運転席から見て正面から左前方に40度から60度までの20度の範囲が左前ピラーによる死角部分であるとする点については,控訴趣意書別紙図面2の赤斜線部分は,同図面上正面から左前方へ約20度から-9-40度の範囲となっており,所論指摘の甲58の実況見分調書の死角部分と異なるし,また,被害者が左斜め後ろから被告人車前部に飛び出したと主張する点については,被告人車の移動を考えない主張であり,いずれも前記認定を左右するものではない。 ・その他所論が種々主張するところを踏まえて検討しても,原判決に事実誤認はない。 控訴趣意中,量刑不当の主張について所論は,被告人を懲役9年に処した原判決の量刑は重きに過ぎる,というのである。 そこで検討するに,本件は,被告人が,無免許かつ酒気帯びの状態で自動車を運転し(原判示第1,その際,自車を道路を横断中の被害者に衝)突させて転倒させたが,その場から逃走しようと考え,未必の殺意をもって自車を発進させて被害者の身体に乗り上げさせるなどし,その身体を自車車底部で圧迫しながら進行して,被害者に多発肋骨骨折及び肺損傷等の傷害を負わせ,これによる呼吸不全により死亡させ(同第2,上記交通)事故を起こしたのに,救護 に乗り上げさせるなどし,その身体を自車車底部で圧迫しながら進行して,被害者に多発肋骨骨折及び肺損傷等の傷害を負わせ,これによる呼吸不全により死亡させ(同第2,上記交通)事故を起こしたのに,救護義務及び報告義務を尽くさず(同第3,その)後道路に停車中の自動車3台に次々自車を衝突させるなどの交通事故を起こしたのに,警察官に報告しなかった(同第4,という道路交通法違反)及び殺人の事案である。 原判決が適切に説示するとおり,被告人は,運転免許取消後も自動車を所有して日常的に無免許を繰り返し,飲食店に自動車を運転して赴いた挙げ句,本件無免許,酒気帯び運転に及んだものであり,殺人についても,人身事故を起こしたことを認識しながら,自己の保身を優先させ,そのためには被害者の生命を奪うことがあってもやむを得ないという,身勝手で生命の尊厳を顧みないことから出たものであり,その動機及び犯行の経緯に酌量の余地はない。その態様は,路上に転倒している被害者に約1.9-10-トンもの重量を有する自動車を乗り上げさせ車底部で圧迫するという残酷なものであり,もとより生命を奪ったというその結果は重大である。被害者の無念の程は察するに余りあり,母親ら遺族が被告人に対し厳しい処罰感情を有するのも当然である。 ,。 被告人は不合理な弁解に終始しており真摯な反省の態度は見られない任意保険にも加入していなかったため,原判示のとおり被害弁償には問題を残している。 原判示第3,第4の犯行についても,いずれも犯行の発覚を免れるため,,。 のもので動機経緯に酌むべき点はなく逃走の態様も危険で悪質である被告人は,道路交通法違反による罰金前科2犯を有し,交通法規に対する安易な態度が認められる。 そうすると,被告人の刑事責任は重いといわなければならず,本件が計画的なものではな 態様も危険で悪質である被告人は,道路交通法違反による罰金前科2犯を有し,交通法規に対する安易な態度が認められる。 そうすると,被告人の刑事責任は重いといわなければならず,本件が計画的なものではなく,殺意も未必的なものに止まったこと,原判示第4の各物損被害者との間で示談が設立していること,原審公判で,妻が今後の監督を誓い,義父が社会復帰後の雇用を約束していること,幼い子がいることなど,原判決言渡し当時の事情に加えて,被告人は,当審公判において被告人なりの反省の言葉を述べ,遺族に対し謝罪の手紙を送ったこと,遺族に対し自賠責保険金が支払われたこと,妻が慰謝の努力をしたことなど,新たに生じあるいは判明した事情も認められるが,これら一切の事情をしん酌しても,原判決の量刑が重過ぎるとはいえない。 第3よって,論旨はいずれも理由がないから,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における未決勾留日数中130日を原判決の刑に算入することにつき刑法21条を適用して,主文のとおり判決する。 平成18年3月30日仙台高等裁判所第1刑事部-11-裁判長裁判官田中亮一裁判官根本渉裁判官・木順子

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