平成13(行コ)1 所得税にかかる過少申告加算税の賦課決定処分取消請求控訴事件(原審・鳥取地方裁判所平成11年(行ウ)第1号)

裁判年月日・裁判所
平成14年9月27日 広島高等裁判所 松江支部 租税
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判決文本文6,488 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人らが控訴人に対し,亡A及び被控訴人Bの各平成8年分所得税につきなされた各過少申告加算税賦課決定は,国税通則法65条5項該当事由があるのにもかかわらず,これがないものとしてなされたものであるから違法であるとして,これらの賦課決定の取消しを求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠により認定した事実については,証拠を掲記する。)次のとおり訂正するほかは,原判決4頁1行目から6頁11行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁2行目の「原告A」を「亡A」と改め,以下原判決引用部分中の「原告A」をいずれも「亡A」と改める。 (2) 原判決4頁4行目の「原告B」及び5頁8行目の「原告B」をいずれも「被控訴人B」と改める。 (3) 原判決4頁5行目の「妻である。」の後に改行して,次を加える。 「亡Aは,平成13年5月20日死亡し,その子である被控訴人Cがその余の相続人の相続放棄により,単独で相続した。」(4) 原判決4頁7行目以下原判決引用部分中の「原告ら」をいずれも「亡A及び被控訴人B」と改める。 3 争点本件各修正申告における各修正申告書(以下「本件各修正申告書」という。)の提出が,国税通則法65条5項に定める「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるか否か 4 争点についての当事者の主張の要旨(1) 被控訴人ら原判決8頁1行目の「原告ら」を「亡A があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるか否か 4 争点についての当事者の主張の要旨(1) 被控訴人ら原判決8頁1行目の「原告ら」を「亡A及び被控訴人B」と改める他は,原判決7頁8行目から8頁8行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 控訴人国税通則法65条5項の解釈としては,税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し,これによりその後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に,納税者がやがて更正に至るべきことを認識したうえで修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないこと,言い換えれば同事実を認識する以前に自ら進んで修正申告を確定的に決意して修正申告書を提出することを必要とし,かつ,それをもって足りると解すべきであるが,修正申告書の提出が調査の前記段階後になされたときは,修正申告の決意は同段階後になされたものと事実上推定すべきであり,この推定を破るためには,例えば,調査の着手後でかつ調査が前記段階に至る前に,修正申告の決意とその内容を税務職員に進んで開示する等のことが必要であると解すべきであり(東京高裁判決昭和61年6月23日税務訴訟資料152号419頁参照),この事実上の推定を破るための事情としては,経験則上,「調査が前記段階に至る前における修正申告の決意とその内容の自発的開示行為(またはこれに匹敵する税務職員に対する客観的行為)」が必要であると解すべきである。 本件においては,平成9年3月28日ころ,税務職員の調査は本件各長期譲渡所得の申告漏れの事実を把握した 的開示行為(またはこれに匹敵する税務職員に対する客観的行為)」が必要であると解すべきである。 本件においては,平成9年3月28日ころ,税務職員の調査は本件各長期譲渡所得の申告漏れの事実を把握したうえで,亡A及び被控訴人Bが本件各確定申告を依頼したD税理士の事務所に電話して問い合わせをする等しており,調査はこの時点で更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達しており,本件各修正申告書が提出されたのは,その後である同年4月24日であるから,亡A及び被控訴人Bの本件各修正申告の決意は,調査が前記段階後になされたものと事実上推定される。そして,この事実の推定を破るべき税務職員に対する客観的行為はなされていないから,本件各修正申告書の提出は,「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当せず,本件各賦課決定は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件各修正申告における本件各修正申告書の提出が,国税通則法65条5項に定める「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるものであり,同条項の適用がないものとしてなされた本件各賦課決定は違法な処分であるから,いずれも取り消されるべきものと判断するが,その理由は,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第四争点に対する判断」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決9頁8行目の「一三ないし二〇」を「13,14,16ないし20」と改め,9行目の「一〇、」の次に「13,14,」を加える。 (2) 原判決10頁3行目以降引用部分の「原告A」をいずれも「亡A」と改める。 ( 目の「一三ないし二〇」を「13,14,16ないし20」と改め,9行目の「一〇、」の次に「13,14,」を加える。 (2) 原判決10頁3行目以降引用部分の「原告A」をいずれも「亡A」と改める。 (3) 原判決10頁3行目の「原告B」を「被控訴人B」と改める。 (4) 原判決10頁5行目の「E」の次に「(以下,F及びEを併せていう場合は「E夫妻」という。)」を加える。 (5) 原判決10頁5行目の「等分の」を削除し,同行の「共有地」の次に「(持分各4分の1)」を加える。 (6) 原判決10頁9行目以降引用部分の「原告ら」をいずれも「亡A及び被控訴人B」と改める。 (7) 原判決11頁5行目の「証人D」を「D」と,同行以降引用部分の「証人D」をいずれも「D税理士」とそれぞれ改める(8) 原判決12頁2行目の「賛同した。」を「賛同したため,亡A及び被控訴人Bは,E夫妻とともに平成8年分の所得税について,本件土地の売却代金による長期譲渡所得を除外して確定申告し,その後に同所得について修正申告をすることにより高額納税者の公示の対象とならないようにすることとした。」と改める。 (9) 原判決12頁4行目の「証人G」を「G」と改め,同行の「(以下「証人G」という。)」を削除する。 (10) 原判決12頁10行目から13頁2行目までを削除する。 (11) 原判決13頁10行目の「誤信し、」の次に「確定申告期限までに本件土地の譲渡所得を除外してE夫妻の各確定申告をし,その後」を加える。 (12) 原判決13頁11行目の「修正申告書」の前に「各」を加える。 (13) 原判決14頁3行目の「後日」を「平成9年5月16日」と改め,同行の「公示された」の次に「(この公示の内容は,同月17日新聞報道された。)」を加える。 (14) 原判決14頁7行目の「証人H」を「H」と, 14頁3行目の「後日」を「平成9年5月16日」と改め,同行の「公示された」の次に「(この公示の内容は,同月17日新聞報道された。)」を加える。 (14) 原判決14頁7行目の「証人H」を「H」と,同行以降引用部分の「証人H」をいずれも「H調査官」とそれぞれ改める。 (15) 原判決14頁8行目の「始めるとともに」を「始め,平成9年3月26日には本件各確定申告について本件各長期譲渡所得が除外されていることを認識し」と改める。 (16) 原判決16頁7行目の「まず、」から25頁10行目の「いうべきである。」までを,次のとおり改める。 「国税通則法65条5項によれば,過少申告がなされた場合であってもその後修正申告書の提出があり,その提出がその申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときには過少申告加算税を賦課しないこととされており,その趣旨は,過少申告がなされた場合には,修正申告書の提出があったときでも原則として過少申告加算税は賦課されるものであるが,「申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知」することなく自発的に修正申告を決意し,修正申告書を提出した者に対しては,例外的に過少申告加算税を賦課しないこととし,もって,納税者の自発的な修正申告を歓迎し,これを奨励することを目的とするものというべきである。また,同条項の文理からすれば,申告に係る国税についての調査が開始された後に修正申告書の提出があった場合においても,それが当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合には過少申告加算税を賦課しないとされていることも考慮すると,同条項の解釈としては,税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正で があるべきことを予知してされたものでない場合には過少申告加算税を賦課しないとされていることも考慮すると,同条項の解釈としては,税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し,これによりその後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に,納税者がやがて更正に至るべきことを認識したうえで修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないこと,すなわち,同事実を認識する以前に自ら進んで修正申告を確定的に決意して,これに基づいて修正申告書を提出することを必要とし,かつ,それをもって足りると解すべきである。 2 そこで,これを本件についてみるに,亡A及び被控訴人Bは,E夫妻とともに,高額納税者として公示されることを回避するために,D税理士が税務署において高額納税者の公示のための資料収集手続が終了すると考えていた平成9年4月20日ころにその終了を確認したうえで,本件各長期譲渡所得についての修正申告をする決意をしたうえで本件各長期譲渡所得を除外して本件各確定申告をし(同年3月13日),この決意に基づいて同年4月24日本件各修正申告書を控訴人に提出して,本件各修正申告をしたものと認められるというべきである。すなわち,亡A及び被控訴人Bとしては,意を通じていたE夫妻が予定どおり修正申告をすれば,本件各長期譲渡所得を除外して本件各確定申告がなされていることは税務職員に容易に発覚するものであることは自明であったというべきであり(実際にもE夫妻の平成9年3月25日の各修正申告によりH調査官は翌日の同月26日には亡A及び被控訴人Bの本件各確定申告において,本件各長期譲渡所得が除外さ のであることは自明であったというべきであり(実際にもE夫妻の平成9年3月25日の各修正申告によりH調査官は翌日の同月26日には亡A及び被控訴人Bの本件各確定申告において,本件各長期譲渡所得が除外されていることを認識している。),本件各長期譲渡所得に係る所得税を免れる可能性はほとんどなかったものであって,亡A及び被控訴人Bのみが予定に反して本件各修正申告をしないという事態は想定し難いものといえるから,亡A及び被控訴人Bは,本件に関するH調査官の調査開始以前から修正申告をする決意をしていたものと認められ,また,本件各修正申告がH調査官による問い合わせから約1か月後になされている点は,D税理士のいささか怠慢を思わせる点はあるものの当初の予定からするとそれほど遅延しているものではなく,本件に関するH調査官の調査開始以前からの修正申告の決意に基づいて本件各修正申告がなされたものと解することの妨げにはならない。 なお,亡A及び被控訴人Bは,本件各確定申告の時点において,これらが過少申告となることは当然認識していたものであるから,本件に関してH調査官から問い合わせがあった平成9年3月28日の時点で,将来の更正の可能性を予知したものということができるが,前記のとおり,本件各修正申告の決意はそれ以前になされていたものと認められる本件においては,同事実は前記判断に差違をもたらさない。 控訴人が引用する東京高裁判決の,税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し,これによりその後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に,修正申告書の提出がなされたときは,修正申告 の後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に,修正申告書の提出がなされたときは,修正申告の決意は同段階後になされたものと事実上推定すべきであり,この推定を破るためには,例えば,調査の着手後でかつ調査が前記段階に至る前に,修正申告の決意とその内容を税務職員に進んで開示する等のことが必要であると解すべきである旨の判示は,国税通則法65条5項の適用による過少申告加算税を賦課しないことが例外的な処置であることからして,傾聴すべきで,事実上の推定をいう点は当裁判所も異論がないが,事実上の推定を破る事情についての例示は,一つの例であるというにすぎず,同推定を破るためには必ず税務職員に対する関係で修正申告の決意と内容を開示することが必要であると解するものであるとすれば,裁判所の自由なる心証形成を,特段の法的根拠もなく制限するものであってこれは取り得ないというべきである。」(17) 原判決25頁11行目の「(なお、被告は」から26頁11行目の「与えない。」までを,次のとおり改める。 「被控訴人らは,平成9年3月13日,亡Aが本件各確定申告書に押印するためにD税理士事務所に来所した際,亡Aの面前で,D税理士が鳥取税務署の資産課税部門に電話して,後日修正申告する旨を担当の統括国税調査官に伝言してくれるよう申し入れたと主張し,これに沿う証人D,証人Gの各証言部分及び亡Aの供述部分等が存するが,確定申告書の提出前に修正申告する旨を伝えたという点の不自然さからして,他に客観的裏付けのない前記各証言部分及び供述部分はそのままには採用できず,認めるには至らない。しかし,同事実は,前記判断に影響を及ぼさない。」(18) 原判決28頁6行目の「(なお、」から して,他に客観的裏付けのない前記各証言部分及び供述部分はそのままには採用できず,認めるには至らない。しかし,同事実は,前記判断に影響を及ぼさない。」(18) 原判決28頁6行目の「(なお、」から9行目の「付言しておく。)」までを削除する。 (19) 原判決28頁11行目から29頁1行目にかけての「ことは否定できない」を削除する。 2 よって,本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所松江支部裁判長裁判官宮本定雄裁判官吉波佳希裁判官植屋伸一

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