平成28年3月17日判決言渡平成24年(行ウ)第761号関税更正処分取消請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求(請求1と請求2は選択的請求) 1 取消請求(1) 別紙1「処分目録1」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が,各「処分日」欄記載の日付けで各「通知書番号」欄記載の通知書番号により原告に対して行った各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正のうち,同目録の各「申告税額」欄記載の金額を超える部分を,いずれも取り消す。 (2) 別紙2「処分目録2」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が,各「処分日」欄記載の日付けで各「通知書番号」欄記載の通知書番号により原告に対して行った各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各過少申告加算税賦課決定を,いずれも取り消す。 2 無効確認請求(1) 別紙1「処分目録1」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が,各「処分日」欄記載の日付けで各「通知書番号」欄記載の通知書番号により原告に対して行った各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正のうち,同目録の各「申告税額」欄記載の金額を超える部分が無効であることを確認する。 (2) 別紙2「処分目録2」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が,各「処分日」欄記載の日付けで各「通知書番号」欄記載の通知書番号により原告に対して行った同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税 申告に係る関税についての各過少申告加算税賦課決定が無効であることを確認する。 第2 事案の概要本件は,食肉の輸出入,販売等を行う株式会社である原告が,平成1 欄記載の輸入申告書番号の納税 申告に係る関税についての各過少申告加算税賦課決定が無効であることを確認する。 第2 事案の概要本件は,食肉の輸出入,販売等を行う株式会社である原告が,平成16年1月26日から平成17年2月7日までの間,前後823回にわたり,外国産冷凍豚部分肉(以下「本件各輸入貨物」という。)を輸入するに当たり,東京税関大井出張所ほか3庁において,課税価格が別紙3「更正後関税額等一覧表」(以下「別表」という。)の⑧「当初関税課税標準額(円)」欄記載の金額(合計130億8706万2033円)であり,関税暫定措置法(平成15年4月1日から平成16年3月31日までに輸入されたものについては平成16年法律第15号による改正前のもの。平成16年4月1日から平成17年3月31日までに輸入されたものについては平成17年法律第22号による改正前のもの。以下,「関税暫定措置法」という場合,特に断りのない限り,上記の輸入日に応じた改正前のものをいう。)2条2項,別表第1の3の規定するいわゆる豚肉の差額関税制度(以下「本件差額関税制度」という。)を適用した関税額が別表の⑩「当初関税額(円)」欄記載の金額(合計5億6268万4900円)であるとして輸入(納税)申告をし,その都度,各処分行政庁から本件各輸入貨物の輸入許可を受けたところ,各処分行政庁から,原告が輸入した本件各輸入貨物の正当な課税価格は別表の⑪「真正関税課税標準額(円)」欄記載の金額(合計71億1427万1755円)であり,本件差額関税制度によれば納付すべき関税額は別表の⑬「更正後関税額(円)」欄記載の金額(合計65億2424万4300円)であったから,原告は納付すべき関税額と申告関税額との差額である別表の⑭「納付すべき額(円)」欄記載の関税(合計59億6155万9300円 税額(円)」欄記載の金額(合計65億2424万4300円)であったから,原告は納付すべき関税額と申告関税額との差額である別表の⑭「納付すべき額(円)」欄記載の関税(合計59億6155万9300円)を免れているとして,平成19年2月20日及び同月21日付けで各更正及び各過少申告加算税賦課決定を受けたことから,国を被告とし,「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定」(平成6年条約第15号。以下,附属書を含めて「WTO協定」という。また,WT O協定のうち,前文,協定本体の部分,末文及び注釈を総称して,「WTO設立協定」といい,附属書は,順に「附属書1」,附属書1A」,「附属書2」などという。)の附属書1Aの一内容である「農業に関する協定」(以下「WTO農業協定」という。)4条2項が我が国において直接適用されることを前提として,同項に違反する本件差額関税制度が憲法98条2項により無効であると主張し,上記各更正のうちの申告税額を超える部分及び上記各過少申告加算税賦課決定の取消し又は無効確認を求める事案である。 1 関係法令等の定め本件の主な関係法令等の定めは,別紙4「関係法令等の定め」記載のとおりである。 2 前提事実(証拠等の掲記のないものは当事者間に争いがない。)(1) 本件差額関税制度の概要等本件差額関税制度の概要等は,別紙5「本件差額関税制度の概要等」記載のとおりである。(乙6の1ないし乙12)(2) 原告及びその関係者ア原告は,平成4年9月11日に設立された株式会社であり,牛,豚,馬,鶏等の肉及び内臓の輸出入並びに加工,販売等を目的とし,平成24年9月18日まではP1がその代表取締役を務めていた。(乙4の1)イ P2社(以下「P2」という。)は,デンマーク王国最大の豚と畜業者であり,日本を始め世界各国へ豚 工,販売等を目的とし,平成24年9月18日まではP1がその代表取締役を務めていた。(乙4の1)イ P2社(以下「P2」という。)は,デンマーク王国最大の豚と畜業者であり,日本を始め世界各国へ豚肉を供給していた。(乙5の6頁)ウ P3株式会社(以下「P3」という。)は,平成14年12月16日に,農水産物,畜産物の輸出入及び加工販売等を目的に設立された株式会社である。P3は,平成17年10月頃,原告に買収され,その後,P1がその代表取締役を務めるようになり,その本店所在地も原告と同所となっていた。(乙4の2,乙5の6頁,弁論の全趣旨)エ P4社(以下「P4」という。)は,平成13年,P1が出資して香港 を事業所所在地として設立された会社であり,当初は,P1が代表取締役を務めていたが,平成16年中には,P1に代わってP5が代表取締役に就任した。なお,P4の事業所所在地は香港であるが,実際の業務は,本邦においてP5が行っていた。(乙5の6頁)(3) 本件各輸入貨物に係る輸入(納税)申告の概要等原告は,P2から冷凍豚部分肉(関税定率法別表(関税率表)第1部第2類0203・29・2(以下,関税率表の分類番号を表記するに当たり,4桁の番号の場合には,「項」といい,さらに,「項」の下位の分類番号である6桁の番号の場合には,「号」と表記する。関税暫定措置法においても同様とする。)の規定する「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のうちの「二その他のもの」に該当するもの。本件各輸入貨物。)を輸入するに当たり,本件各輸入貨物がP2からP4に販売され,これをP4からP3が輸入したものとして,P3名義を用いて,別表記載のとおり,平成16年1月26日から平成17年2月7日ま 各輸入貨物。)を輸入するに当たり,本件各輸入貨物がP2からP4に販売され,これをP4からP3が輸入したものとして,P3名義を用いて,別表記載のとおり,平成16年1月26日から平成17年2月7日までの間,合計823回にわたり,東京税関大井出張所,大阪税関大手前出張所,大阪税関南港出張所及び大阪税関桜島出張所において,冷凍豚部分肉合計2227万5090.44kg(本件各輸入貨物)の真正な課税価格は別表の⑪「真正関税課税標準額(円)」欄記載のとおりであり,本件差額関税制度の適用を前提とすると関税額は別表の⑬「更正後関税額(円)」欄記載のとおりであるのに,課税価格が別表の⑧「当初関税課税標準額(円)」欄記載のとおりであり,本件差額関税制度を適用した関税額合計が別表の⑩「当初関税額(円)」欄記載のとおりである旨の輸入(納税)申告(以下「本件各輸入(納税)申告」という。)をして,各処分行政庁から輸入許可を受けた。(甲1,甲8,甲9,乙3の1ないし3,乙5)(4) 刑事事件 ア原告及びP1は,本件各輸入(納税)申告により納付すべき関税額と申告関税額との差額合計59億6155万9400円を免れたという関税法違反の罪により,平成19年2月26日,千葉地方裁判所に起訴された(以下,この起訴に係る刑事事件を「本件刑事事件」という。)。(甲1)イ千葉地方裁判所は,本件刑事事件について,平成21年3月26日,原告を罰金2億5000万円に,P1を懲役2年4月及び罰金1500万円に処する旨の判決をした。(乙3の1)ウ原告及びP1は,それぞれ,上記イの判決に対して東京高等裁判所に控訴したが,東京高等裁判所は,平成22年8月30日,原告及びP1による各控訴を棄却する旨の判決をした。(乙3の2)エ原告及びP1は,上記ウの判決に対して上告を イの判決に対して東京高等裁判所に控訴したが,東京高等裁判所は,平成22年8月30日,原告及びP1による各控訴を棄却する旨の判決をした。(乙3の2)エ原告及びP1は,上記ウの判決に対して上告をし,上告理由として本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項に違反するため憲法98条2項に違背するという主張も新たにしたものの,最高裁判所は,平成24年9月4日,上記上告を棄却する旨の決定をし,これにより,本件刑事事件に係る前記イの有罪判決が確定した。(甲8,甲9,乙3の3)(5) 更正等関税法107条,関税法施行令92条1項2号により東京税関長又は大阪税関長からそれぞれ権限の委任を受けた各処分行政庁(東京税関大井出張所長,大阪税関大手前出張所長,大阪税関南港出張所長及び大阪税関桜島出張所長)は,それぞれ,同法7条の16,12条の2の各規定に基づき,原告に対し,別紙1「処分目録1」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁において,各「処分日」欄記載の日付けで,各「通知書番号」欄記載の通知書番号の更正通知書により,各「輸入申告書番号」記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税について,関税額を別表の⑬「更正後関税額(円)」欄(別紙1「処分目録1」の各「輸入申告書番号」と同一の別表の②「申告番号」に係るもの。以下同じ。)記載の金額,納付すべき税額を別表の⑭「納付す べき額(円)」欄記載の金額とする各更正(以下「本件各更正処分」という。)をするとともに,別紙2「処分目録2」の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁において,各「処分日」欄記載の日付けで,各「通知書番号」欄記載の通知書番号の過少申告加算税賦課決定通知書により,各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税について,過少申告加算税の額を別表の⑱「加算税合計額(円)」欄( 通知書番号」欄記載の通知書番号の過少申告加算税賦課決定通知書により,各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税について,過少申告加算税の額を別表の⑱「加算税合計額(円)」欄(別紙2「処分目録2」の各「輸入申告書番号」と同一の別表の②「申告番号」に係るもの。以下同じ。)記載の金額とする各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。 (6) 不服申立ての経緯ア原告は,本件各更正処分等について,平成19年4月18日付けで東京税関長に対し,同月19日付で大阪税関長に対し,それぞれ異議申立てをした。 イ原告は,本件各更正処分等について,平成21年3月6日付けで財務大臣に対し,審査請求をしたが,審査請求があった日から3箇月を経過しても裁決はされなかった(7) 本件訴えの提起原告は,平成24年11月2日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 3 本件各更正処分等の根拠と適法性に関する被告の主張本件各更正処分等の根拠と適法性に関する被告の主張は,別紙7「本件各更正処分等の根拠及び適法性」記載のとおりである。 4 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,本件各更正処分等の適法性であり,具体的には,① WTO農業協定4条2項の我が国における直接適用可能性の有無,② 同項の我が国における直接適用可能性がある場合における本件差額関税制度の同項違反の有無が争われている。これらに関する当事者の主張は,別紙8「原告の主張」及 び別紙9「被告の主張」記載のとおりであり,その要旨は次のとおりである。 (1) WTO農業協定4条2項の直接適用可能性の有無(原告)ア関税法3条ただし書によりWTO農業協定4条2項が我が国において直接 の主張」記載のとおりであり,その要旨は次のとおりである。 (1) WTO農業協定4条2項の直接適用可能性の有無(原告)ア関税法3条ただし書によりWTO農業協定4条2項が我が国において直接適用されること関税法3条は,「輸入貨物(信書を除く。)には,この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課する。ただし,条約中に関税について特別の規定があるときは,当該規定による。」と規定しているところ,関税法基本通達(以下「基本通達」という。)3-1は「法3条ただし書《条約による特別規定》に定める「関税についての特別の規定」とは,関税の税率のほか関税の軽減,免除,払出しその他関税の賦課及び徴収に関しての国内法の規定に対する特別の規定をいう。」と定めている。 そして,WTO農業協定4条2項の内容は,端的にいうと,「課税標準及び税率を同項記載の禁止の制度に該当しないよう定めることの対外的約束」であり,「課税標準設定及び税率設定の禁止枠組み」を定めるものであるから,関税法3条ただし書の「特別の規定」に該当する。 したがって,WTO農業協定4条2項は,関税法3条ただし書により,我が国において直接適用される。 イ条約の直接適用可能性の基準(ア) 条約の直接適用可能性の有無は,主観的基準と客観的基準から判断する必要があるところ,主観的基準については,条約締結国の総意として直接適用可能性を排除しているのか否かと,当該国が直接適用を排除する国内法制を採用する意思を有するか否かをメルクマールとすべきである。 これに対し,条約の直接適用可能性が認められるための主観的要件として,条約締結国による私人の権利義務の創設の意思が必要であるとい う考え方は,直接適用される場面をあまりに狭く限定しすぎるという点と,個人の権利義務を創設して 性が認められるための主観的要件として,条約締結国による私人の権利義務の創設の意思が必要であるとい う考え方は,直接適用される場面をあまりに狭く限定しすぎるという点と,個人の権利義務を創設していなくても直接適用されている条約が現に存在することを説明できないという点に問題がある。 また,条約の直接適用可能性の主観的要件として,条約締結国が各国内で直接適用することを積極的に意図したことが必要であるという考え方も,特に多国間条約についてはそのような当事国の意思が見いだされることはほとんどないため,条約の直接適用可能性が認められる余地がなくなってしまう点に問題がある。 結局,条約の国内における完全実施の方法について各国の主権を尊重するには,「(条約中に直接適用可能性の排除が明示されない限り)原則として直接適用可能性は認めた上で,各々の国に,直接適用を排除する国内法制を採用するか否かの選択肢を与える」と解するほかはない。 (イ) また,条約の直接適用可能性の客観的基準としては,まず,当該条約の内容が明確であることが必要となり,次に,完全であること,すなわち,条約の執行に必要な機関や手続が定められていることが必要となる。 ウ WTO農業協定4条2項の直接適用可能性に係る主観的基準について(ア) WTO農業協定4条2項について,直接適用可能性についての主観的要件を充足するかを検討するに,主観的基準のうちの直接適用可能性を排除するという条約締結国の総意の有無については,WTO協定そのものは,各国が国内の条約違反状態の是正を,立法機関,行政機関だけではなく,司法機関によっても行うことを奨励こそすれ,排除するものではないと考えられること,また,WTO協定によって設立された世界貿易機関(以下「WTO」という。)は,1947年に締結された「関 ではなく,司法機関によっても行うことを奨励こそすれ,排除するものではないと考えられること,また,WTO協定によって設立された世界貿易機関(以下「WTO」という。)は,1947年に締結された「関税及び貿易に関する一般協定」(以下,「関税及び貿易に関する一般協定」を「GATT」という。)よりも実効性の高い紛争解決制度を用意 しており,WTOはGATT以上にWTO協定を各国が遵守するように体制強化を図っていることからすると,各国が自主的にWTO協定違反の国内状態を是正することは,WTOの目的に合致こそすれ,反するものではないことなどからすると,WTO農業協定4条2項については,直接適用可能性を排除するという条約締結国の総意は認められない。 (イ) 次に,我が国は,そもそも条約全般について直接適用可能性を排除するという法秩序は採用しておらず,また,関税に係る事項については,むしろ積極的に直接適用可能性を認める旨の関税法3条ただし書を用意しており,通商政策上もWTO協定の直接適用可能性を排除する国内法制を取りにくい政策を採用している。そして,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する国内法制が我が国には存在しない以上,我が国には,WTO農業協定4条2項について,その直接適用可能性を排除する意思は存在しないというべきである。 (ウ) 以上によれば,WTO農業協定4条2項は,我が国における直接適用可能性についての主観的基準を満たしている。 エ WTO農業協定4条2項の直接適用可能性に係る客観的基準について(ア) まず,WTO農業協定4条2項の規定内容をみると,「通常の関税」とは定率関税及び定額関税のことであり,また,「最低輸入価格」とは,一般に輸入産品の輸入価格と特定の価格限界との差額を関税額とするものであって,当該特定の輸入 2項の規定内容をみると,「通常の関税」とは定率関税及び定額関税のことであり,また,「最低輸入価格」とは,一般に輸入産品の輸入価格と特定の価格限界との差額を関税額とするものであって,当該特定の輸入産品が当該価格限界を下回って国内市場に侵入することのないようにする措置をいうことは明らかである。このように,「通常の関税」「最低輸入価格」の意味内容は自明であり,疑義をはさむ余地はないから,同項の内容が明確であることは明らかである。 (イ) 次に,完全性については,条約の執行に必要な機関や手続に欠けるか否かは各国ごとに補足的措置がとられているか否かによるところ,我が国において適当な機関や手続が既に存在するかどうかを検討するに, 機関としては税関があり,手続については関税三法が詳細に定めているのであるから,完全性に欠けるところはない。そもそも,関税法3条ただし書があることそれ自体が,そのような完全性の裏付けがあることを初めから前提としているところであるから,WTO農業協定4条2項が完全なものであることも明らかである。 (ウ) 以上のとおり,農業協定4条2項という条約条項は,明確であり,また,完全であるから,我が国における直接適用可能性についての客観的基準を満たしている。 オその他(ア) 日本国憲法の前文には「国際社会において名誉ある地位を占めたい」という理念が示されていること,また,他国における条約の実施状況を踏まえて裁判所が国際交渉における利益不利益を考慮すること自体が,行政府及び立法府の権限に属する判断をしていることであって職域を超えており,これこそがむしろ権力分立の理念に違背することからすると,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)及びヨーロッパ共同体(以下「EU」という。)がそれぞれの国内法秩序に従ってWTO協定の国内 えており,これこそがむしろ権力分立の理念に違背することからすると,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)及びヨーロッパ共同体(以下「EU」という。)がそれぞれの国内法秩序に従ってWTO協定の国内(域内)における直接適用を認めていないことは,我が国においてWTO農業協定4条2項の直接適用を認めない理由とはならない。 (イ) また,三権分立,国内法制の状況等を理由にWTO農業協定4条2項の直接適用を否定することはできない。 (ウ) さらに,国会が関税法3条ただし書を成立させ,また,WTO農業協定4条2項を承認している以上,国会又は政府の裁量権を理由にWTO農業協定4条2項の直接適用を否定することはできない。 カ直接適用可能性に関する結論以上によれば,WTO農業協定4条2項は,我が国において直接適用可能性を有している。 (被告)ア前提本件差額関税制度の有効性を判断するに当たり,WTO農業協定4条2項を裁判規範として用いるためには,同項について,我が国における直接適用可能性が認められなければならない。 イ条約の直接適用可能性の判断基準ある条約の規定を国内裁判所において直接裁判規範として適用するためには,① 条約締結国の国内裁判所で執行可能なものにするという条約条約締結国の具体的な意思が確認できること(主観的基準),及び,② その内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの具体性及び明確性があること(客観的基準)を要すると考えられる。 ウ WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する主観的基準を満たさないこと我が国は,WTO協定の交渉過程において,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性について議論されたとは認識しておらず,WTO協定の関連規定の内容やその交渉経緯,W する主観的基準を満たさないこと我が国は,WTO協定の交渉過程において,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性について議論されたとは認識しておらず,WTO協定の関連規定の内容やその交渉経緯,WTO農業協定4条2項の国内実施措置等によれば,我が国が,WTO農業協定4条2項について,私人に対し,「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していなかったことは明らかである。 したがって,WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する主観的基準を満たさない。 エ WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する客観的基準を満たさないこと条約解釈の原則に従って解釈したとしても,WTO農業協定4条2項の規定内容が,当該内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用 できるだけの具体性及び明確性を有するとは認められない。 オ直接適用可能性に関する結論以上によれば,WTO農業協定は,我が国において直接適用可能性を有していない。 (2) 本件差額関税制度のWTO農業協定4条2項違反の有無(原告)ア本件差額関税制度は通常の関税に該当しないこと本件差額関税制度のうち,関税として基準輸入価格と課税価格の差額を課すという部分は,従量税率でもなければ,従価税率でもなく,「通常の関税」ではないから,当該部分は「通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置(注)も維持し,とり又は再びとってはならない。」と定めるWTO農業協定4条2項に違反する。 また,WTO協定の附属書1にある日本国の譲許税率表には,上記の部分に関する記載は一切なく,現行の本件差額関税制度は,日本国の譲許表と異なっており,外見的にも実際的にも日本国は国際的 に違反する。 また,WTO協定の附属書1にある日本国の譲許税率表には,上記の部分に関する記載は一切なく,現行の本件差額関税制度は,日本国の譲許表と異なっており,外見的にも実際的にも日本国は国際的に二枚舌を使った結果となっている。 イ本件差額関税制度は最低輸入価格に該当すること本件差額関税制度は,課税価格と基準輸入価格の差額を関税として賦課するというものであり,基準輸入価格は特定の価格限界としての機能を有していることからすると,WTO農業協定4条2項(注)が,特に掲名して禁じている最低輸入価格に該当することは明らかである。 ウ本件差額関税制度のWTO農業協定への適合性の結論以上によれば,本件差額関税制度は,WTO農業協定4条2項,特に同項の(注)に違反する。 (被告)WTO農業協定4条2項は,関税という「税」の形式で課されていたとし ても,それが「従量税,従価税又はその組合せの形式で譲許」されていない場合は,そもそも「通常の関税」ではないとして,これを禁止しているものと解される。また,「通常の」関税の形式を採るものであっても,実質的にみて,関税化の特質である透明性及び予測可能性を著しく欠いている場合には,同項の趣旨目的に反し,同項に適合しないということができる。 しかるに,本件差額関税制度は,従量税と従価税の組合せで譲許された関税であるから,「通常の関税」に当たる。また,本件差額関税制度は,実質的にみて透明性及び予測可能性を著しく欠くものとはいえないから,WTO農業協定4条2項の趣旨にも反しない。さらに,効果の点に着目してみても,本件差額関税制度には輸入量規制効果や価格伝達阻害効果は認められず,第1次及び第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げたような「最低輸入価格」としての特徴を有するものではない。したがって してみても,本件差額関税制度には輸入量規制効果や価格伝達阻害効果は認められず,第1次及び第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げたような「最低輸入価格」としての特徴を有するものではない。したがって,本件差額関税制度は最低輸入価格又はこれに類する措置に当たらない。 以上によれば,本件差額関税制度は,WTO農業協定4条2項に違反するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 WTO農業協定4条2項の我が国における直接適用可能性の有無について(1) 問題の所在ア原告は,本件各更正処分等の前提となっている我が国における豚肉の輸入に係る本件差額関税制度について,WTO農業協定4条2項に違反するものであるから憲法98条2項により無効であり,それゆえ,本件各更正処分等は違法又は無効であると主張している。 イこの点,WTO協定は,二以上の国際法主体にその効果が帰属する文書による合意であるから,その一部であるWTO農業協定を含めて条約であるところ,我が国において国会による承認を経て締結し公布された条約は,他に特段の立法措置を講ずるまでもなく当然に,憲法98条2項,7条1 号により国内的効力を有し,法律に優位するものと解される。 しかしながら,このことは,我が国の憲法体制の下において,条約が他に特段の立法措置を講ずるまでもなく我が国の法体系に受け容れられ(すなわち,自動的に受容され),国内的効力を有することを意味しているにとどまるから,それ以上の措置を必要とすることなく,個々の国民が条約を直接の法的根拠として具体的な権利ないし法的地位を主張したり,あるいは,裁判所が法的紛争を解決するに当たり条約を直接適用して結論を導いたりすることが可能か(条約がそのまま国内で裁判規範として適用可能か)は別途問題となる。これが本件において検討されるべ たり,あるいは,裁判所が法的紛争を解決するに当たり条約を直接適用して結論を導いたりすることが可能か(条約がそのまま国内で裁判規範として適用可能か)は別途問題となる。これが本件において検討されるべき条約の直接適用可能性の問題である。 ウなお,条約の直接適用可能性の有無は,当該条約全体として判断されるのではなく,個々の条項について判断されるべきものであるから,条約中の特定の条項について直接適用可能性が認められるからといって,他の条項についても直ちに直接適用可能性が認められるということにはならない。 例えば,WTO協定の附属書1Aに含まれる1994年のGATTの譲許表に関する規定は,我が国において直接適用可能性を有するものとされているが(基本通達3-2。甲20,甲21),そうであるからといって,同じくWTO協定に含まれるWTO農業協定4条2項についても当然に直接適用可能性が認められることにはならない。 エこの点,原告は,関税法3条が「輸入貨物(信書を除く。)には,この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課する。ただし,条約中に関税について特別の規定があるときは,当該規定による」と規定しているところ,同条ただし書により,WTO農業協定4条2項が我が国において直接適用されることは明らかであるかのような主張をしている。 しかしながら,同条ただし書は,条約中の関税に関する規定全般につい て無条件に直接適用を認めるというものではなく,当該条項が直接適用可能性を有している場合には適用されるということを注意的に規定したものと解するのが相当であるから,同条ただし書の存在をもって,直ちにWTO農業協定4条2項が我が国において直接適用可能性を有するものと解することはできず,同項が我が国において直接適用可能性を有するか否かは するのが相当であるから,同条ただし書の存在をもって,直ちにWTO農業協定4条2項が我が国において直接適用可能性を有するものと解することはできず,同項が我が国において直接適用可能性を有するか否かは,関税法3条ただし書の存在にかかわらず,具体的に検討すべきことになる。 (2) 条約の直接適用可能性の判断基準についてア前記(1)イで説示したとおり,我が国では,所定の公布手続を了した条約は,他に特段の立法措置を講ずるまでもなく,当然に国内的効力を承認しているものと解されるところ,国内的効力が認められた条約が国内において直接適用可能か否かは,次のとおり,主観的基準と客観的基準によって判断するのが相当である。 イまず,条約の直接適用可能性の有無の判断においては,主観的基準として,条約締結国の具体的な意思如何が重要となる。 なぜなら,そもそも国家等の国際法主体は,それぞれ交渉して条約を締結する権限を有しているのであって,当該条約の条項が条約締結国の内部的法秩序においてどのような効力を生じるかについても,自由に合意することが可能であり,それゆえに当該条約の条項の直接適用可能性の有無の判断においては,条約締結国が当該条約の直接適用可能性についてどのような意思を有していたのかが極めて重要な要素となるからである。 そして,具体的には,条約の条項の直接適用可能性の有無は,それぞれの条約締結国において,当該条項につき,国内において直接適用可能性を有するものとして当該条約を締結しているか否かによって決せられるべきものと解するのが相当である。 なお,上記のような条約締結国の意思は,必ずしも条約規定の文言のみ に示されるのではなく,場合に応じて,条約締結国間の合意や条約の作成,実施の過程の事情などをも考慮して判断されるものであるから,条約の特 ような条約締結国の意思は,必ずしも条約規定の文言のみ に示されるのではなく,場合に応じて,条約締結国間の合意や条約の作成,実施の過程の事情などをも考慮して判断されるものであるから,条約の特定の条項についての直接適用可能性の有無は,当該条項の文言のみによって判断されるべきものではなく,当該条約の全体の構成や内容,交渉経過を踏まえて判断されるべきことになる。 ウ次に,条約の規定を国内的に直接適用するためには,客観的基準として,当該規定の文言につき条約解釈の原則に従って解釈した上で,そのまま国内的に適用できる程度に明確であることが必要であると解される。 なぜなら,権力分立の原則によれば,法の定立は原則として立法府の権限であり,不明確で国家に広い裁量の余地を残している条約の規定について,司法府がこれを直接適用すると,実質的に司法府が法の定立をすることになり,立法府の権限を侵害し,また,法的安定性も害することとなるため,一般的抽象的な概念を含んでいる条約規定や,一般的抽象的原則を定めるにすぎない条約規定が直接適用されることは許容し得ないからである。 また,条約の直接適用可能性が認められるためには,当該条項が上記のような狭い意味で明確であることに加え,当該条項の執行に必要な機関や手続について定められているという意味で,完全でなければならないと解される。 なぜなら,条約は,条項の執行に必要な機関や手続については定めていないことが少なくなく,このような完全ではない条約の条項は,例え狭い意味で明確で具体的な内容をもっていても,実際上直接適用されるのは困難だからである。 エ以上によれば,条約の直接適用可能性の有無は,それぞれの条約締結国において,当該条約の条項につき,国内において直接適用可能性を有するものとして当該条約を締結している るのは困難だからである。 エ以上によれば,条約の直接適用可能性の有無は,それぞれの条約締結国において,当該条約の条項につき,国内において直接適用可能性を有するものとして当該条約を締結しているか否かという主観的基準と,その内容 を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの明確性,完全性があるかという客観的基準によって判断されるべきことになる。 オこれに対し,原告は,直接適用可能性の主観的要件として,直接適用可能であるという積極的な当事国の意思を厳格に要求すると,ほとんどの条約(規定)は直接適用可能でないことになってしまうなどとして,条約については,原則として直接適用可能性を認めた上で,条約の直接適用可能性において問題とされる条約締結国の意思は,直接適用可能性を排除する基準として意味を持つものと解すべきであると主張する。 しかしながら,前記イで説示したとおり,そもそも,条約は国家間の合意であるから,条約の直接適用可能性の有無については,条約締結国の意思が重要となることは否定することができず,また,条約は,国家と国家の権利義務関係を定めるものであって,必ずしも個人の権利等を直接創設するものではないことや,条約の条項を遵守するということとこれを国内で直接適用することは別の問題であることからすると,条約の条約締結国において,条約の条項を遵守するという意思を有しているということ以上に,原則として条約の条項の直接適用可能性を認める意思を有していることまで推認することはできないから,条約の条項の直接適用可能性が認められるためには,条約締結国において条約の当該条項について直接適用可能性を認める意思を有していることが必要であると解さざるを得ないというべきである。そして,この点に関しては,条約締結国において,当該条約の条項 は,条約締結国において条約の当該条項について直接適用可能性を認める意思を有していることが必要であると解さざるを得ないというべきである。そして,この点に関しては,条約締結国において,当該条約の条項を「国内で直接適用する」という意思が明示的あるいは直接的に示されているという意味で積極的な意思を確認することが困難であったとしても,問題となるのは飽くまで条約締結国において当該条項を直接適用可能であることを認めていたかどうかであり,当該条約の条項において加盟国の国内における直接適用可能性の有無が明記されていなかったとしても,交渉経過や条文の規定内容等から,直接適用可能であることを 前提とした締結されたかどうかの判断は可能なことも想定され,ほとんどの条約(規定)が直接適用可能でないということになるとまではいえない。 したがって,条約の直接適用可能性の主観的要件として,原則として直接適用可能性が認められることを前提として,条約締結国がこれを排除する意思を有していたか否かを問題とすべきであるという原告の主張については,採用することはできない。 (3) WTO協定の概要証拠(甲2,甲3,甲4,甲19,甲25,乙8,乙10の2,乙13,乙14,乙36,乙37,乙38,乙39,乙44)及び弁論の全趣旨によれば,WTO協定に至る経緯及びその内容は,次のとおりであると認めることができる。 ア関税その他の貿易障害を実質的に軽減するための多国間協定としては,1947年(昭和22年)にGATTが締結されていたものの,実際に行われている多様な貿易に十分な規律を及ぼし多角的自由貿易体制を効果的に維持,強化することができない状況になってきたことから,物品の貿易のみならず,サービス,知的所有権,貿易関連投資等の新分野をも包括的にカバーするルールの策定に向 を及ぼし多角的自由貿易体制を効果的に維持,強化することができない状況になってきたことから,物品の貿易のみならず,サービス,知的所有権,貿易関連投資等の新分野をも包括的にカバーするルールの策定に向けて,1986年(昭和61年)にウルグアイ・ラウンド交渉が開始された。 WTO協定は,このウルグアイ・ラウンド交渉の成果として,1994年(平成6年)4月15日にモロッコのマラケシュにおいて作成されたものであり,1995年(平成7年)1月1日にその効力を生じ,世界貿易機関(WTO)が発足した。 WTO協定は,我が国において批准,承認され,平成6年12月28日,条約第15号として公布された。我が国は,WTOの原加盟国の一つである。 (以上につき,甲2,甲19,乙8の12頁以下,乙10の2の資料3, 乙13の8頁以下,13頁,乙37の908頁)イ GATTを継承したWTO協定は,前文,協定本体の部分,末文,注釈及び附属書(大きく分けると4つ)によって構成されており,加盟国は,WTO協定を,附属書4の複数国間貿易協定を除いて一括して受諾している。そのため,附属書1,2及び3は,全てのWTO加盟国を拘束するのに対し(WTO設立協定2条2項),附属書4の複数国間貿易協定は,それぞれの協定を受諾した加盟国のみを拘束するとされている(同条3項)。 (甲4のⅶ頁,甲25の2頁,乙13の13頁以下)ウ WTO設立協定は,前文,末文,注釈のほか,WTO基本的な組織及び手続について規定する16の条文によって構成されている。 (甲4のⅶ頁,甲17,乙13の15頁以下,乙44,弁論の全趣旨)(ア) WTO協定前文は,「この協定の締約国は,貿易及び経済の分野における締約国間の関係が,生活水準を高め,完全雇用並びに高水準の実質所得及び有効需要並びにこ 15頁以下,乙44,弁論の全趣旨)(ア) WTO協定前文は,「この協定の締約国は,貿易及び経済の分野における締約国間の関係が,生活水準を高め,完全雇用並びに高水準の実質所得及び有効需要並びにこれらの着実な増加を確保し並びに物品及びサービスの生産及び貿易を拡大する方向に向けられるべきであることを認め,他方において,経済開発の水準が異なるそれぞれの締約国のニーズ及び関心に沿って環境を保護し及び保全し並びにそのための手段を拡充することに努めつつ,持続可能な開発の目的に従って世界の資源を最も適当な形で利用することを考慮し,更に,成長する国際貿易において開発途上国特に後発開発途上国がその経済開発のニーズに応じた貿易量を確保することを保証するため,積極的に努力する必要があることを認め,関税その他の貿易障害を実質的に軽減し及び国際貿易関係における差別待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取極を締結することにより,前記の目的の達成に寄与することを希望し,よって,関税及び貿易に関する一般協定,過去の貿易自由化の努力の結果及びウルグァイ・ラウンドの多角的貿易交渉のすべての結果に立脚する統合された一層永続 性のある多角的貿易体制を発展させることを決意し,この多角的貿易体制の基礎を成す基本原則を維持し及び同体制の基本目的を達成することを決意して,次のとおり協定する。」旨定めている。 (イ) WTO設立協定2条は,その2項において,附属書1,附属書2及び附属書3に含まれている協定及び関係文書は,WTO設立協定の不可分の一部を成し,全ての加盟国を拘束する旨,その3項において,附属書4に含まれている協定及び関係文書は,これらを受諾した加盟国についてはこの協定の一部を成し,当該加盟国を拘束するが,これらを受諾していない加盟国の義務又は権利を創設するこ ,その3項において,附属書4に含まれている協定及び関係文書は,これらを受諾した加盟国についてはこの協定の一部を成し,当該加盟国を拘束するが,これらを受諾していない加盟国の義務又は権利を創設することはない旨定めている。 (ウ) WTO設立協定11条は,WTO設立協定の効力発生の日における1947年のGATTの締約国及び欧州共同体であって,WTO設立協定及び多角的貿易協定を受諾し,かつ,1994年のGATTに自己の譲許表が附属され,サービス貿易一般協定に自己の特定の約束に係る表(約束表)が附属されているものは,WTOの原加盟国となる旨定めている。 (エ) WTO設立協定16条4項は,加盟国は,自国の法令及び行政上の手続を附属書の協定に定める義務に適合したものとすることを確保する旨定めている。 (オ) WTO設立協定には,WTO協定の各条項について,加盟国の国内における直接適用可能性があると定めた条項は存在しない。 エ附属書1では,貿易に関する各加盟国の規制を一定の規律の下に置く実体的な規則及び関連する手続規則が定められており,物品の貿易に関する多角的協定(附属書1A),サービスの貿易に関する一般協定(附属書1B)及び知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(附属書1C)によって構成されている。(甲3の218頁,甲4,甲19,甲25,乙13の13頁,102頁以下,乙14の218頁以下,乙37,乙39,弁論の 全趣旨)(ア) 附属書1Aには,1947年のGATT(WTO協定発効前に改正等が行われた規定を含む。),WTO協定発効前に1947年のGATTの下で発効した議定書及び1947年のGATTの条文に関する了解等から構成される1994年のGATTが含まれている。 1947年のGATTでは,「各締約国は,他の締約国の通商に対 947年のGATTの下で発効した議定書及び1947年のGATTの条文に関する了解等から構成される1994年のGATTが含まれている。 1947年のGATTでは,「各締約国は,他の締約国の通商に対し,この協定に附属する該当の譲許表の該当の部に定める待遇より不利でない待遇を許与するものとする。」と規定されており(1994年のGATT2条1項(a)で読み替え。),GATTと不可分一体のものとして附属されている譲許表には(GATT2条7項),WTO加盟国のそれぞれの関税譲許,非関税譲許及び農業補助金に関する約束が具体的に記載されている。なお,譲許表のうちの我が国の国別表(第38表)では,豚肉の関税には従量税率と従価税率だけで構成されている。 (イ) 附属書1Aの一部であるWTO農業協定は,ウルグアイ・ラウンド交渉の結果作成されたものであり,農産品貿易における自由競争をゆがめるような国内助成や輸出補助金を削減するとともに,農産品の輸入に際して執られる通常の関税以外の措置を原則として全て通常の関税に転換し(いわゆる関税化),全ての関税を譲許し引き下げるという約束の実施に関する規律を定めたものである。 WTO農業協定4条2項は,「加盟国は,次条及び附属書5に別段の定めがある場合を除くほか,通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置(注)も維持し,とり又は再びとってはならない。」と規定して,加盟国における非関税措置の関税化を義務付けている。 また,WTO農業協定4条2項は,注として,「これらの措置(注:本文でいう「通常の関税に転換することが要求された措置その他これに 類するいかなる措置」のこと)には,輸入数量制限(quantitativeimportrestrictions),可変輸入課徴金(varia 関税に転換することが要求された措置その他これに 類するいかなる措置」のこと)には,輸入数量制限(quantitativeimportrestrictions),可変輸入課徴金(variableimportlevies),最低輸入価格(minimumimportprices),裁量的輸入許可(discretionaryimportlicensing),国家貿易企業を通じて維持される非関税措置(non-tariffmeasuresmaintainedthroughstate-tradingenterprises),輸出自主規制(voluntaryexportrestrains)その他これらに類する通常の関税以外の国境措置(特定の国について承認された1947年のガットの規定からの逸脱として維持されているものであるかないかを問わない。)が含まれるが,1994年のガット又は世界貿易機関協定附属書1Aに含まれている他の多角的貿易協定における国際収支に関する規定その他の農業に特定されない一般的な規定に基づいて維持される措置は含まれない。」と規定している。 (ウ) 附属書1Bの「サービスの貿易に関する一般協定」(以下「GATS」という。)では,「加盟国は,この協定の対象となる措置に関し,他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し,他の国の同種のサービス及びサービス提供者に与える待遇よりも不利でない待遇を即時かつ無条件に与える。」(2条1項),「加盟国は,第1条に規定するサービスの提供の態様による市場アクセスに関し,他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し,自国の約束表において合意し,特定した制限及び条件に基づく待遇よりも不利でない待遇を与える」(16条1項),「加盟国は,その約束表に記載した分野において,か 盟国のサービス及びサービス提供者に対し,自国の約束表において合意し,特定した制限及び条件に基づく待遇よりも不利でない待遇を与える」(16条1項),「加盟国は,その約束表に記載した分野において,かつ,当該約束表に定める条件及び制限に従い,サービスの提供に影響を及ぼすすべての措置に関し,他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し,自国の同種のサービス及びサービス提供者に与える待遇よりも不利でない待遇を与える」(17条1項)などと規定されている。 オ GATTにおける紛争解決手続は実効性に欠けるものであったのに対し, WTO協定は,WTOは附属書2の紛争解決に係る規則及び手続に関する了解を運用するものとした上で(WTO設立協定3条3項),附属書2の「紛争解決に係る規則及び手続に関する了解」において,概要として次のような内容の紛争解決手続(以下「WTO紛争解決手続」という。)を定めている。(甲34,乙13,乙36,乙38,乙44,弁論の全趣旨)(ア) WTO紛争解決手続では,紛争当事者にとって相互に受け入れることが可能であり,かつ,対象協定に適合する解決が明らかに優先されるべきであるとされており,相互に合意する解決が得られない場合には,WTO紛争解決手続の第一の目的は,通常,関係する措置がいずれかの対象協定に適合しないと認められるときに当該措置の撤回を確保することであるとされている(3条7項)。また,問題となっている措置が対象協定に適合しないと判断される場合,「当該措置を直ちに撤回することが実行可能でない場合に限り,かつ,対象協定に適合しない措置を撤回するまでの間の一時的な措置としてのみ,」代償に関する規定を適用すべきであるとされている(3条7項)。 (イ) WTO紛争解決手続において,ある加盟国が,他の加盟国が協定に違反 合しない措置を撤回するまでの間の一時的な措置としてのみ,」代償に関する規定を適用すべきであるとされている(3条7項)。 (イ) WTO紛争解決手続において,ある加盟国が,他の加盟国が協定に違反していることを理由として違反申立てをするに当たっては,まず,その紛争の相手国に対して協議を要請し,相手国と協議を行うものとされている(4条1項ないし6項)。 なお,WTO紛争解決手続においては,その自動性や予測可能性が高まった結果,GATTの紛争解決手続よりも,紛争当事国間の協議によって解決する紛争が増えたとされている。 (ウ) 紛争当事国間で協議が整わず,紛争を解決することができない場合には,紛争解決機関による小委員会(パネル)の設置を要請することができる(4条7項。相手国が協議の要請に回答しない場合について4条3項)。 小委員会(パネル)では,独立性等が確保される3名の委員が,事実の認定,協定の適用について判断をして,紛争当事国,加盟国及び紛争解決機関に報告するものとされているが,パネルが紛争当事国に対して和解を促すことが奨励されており,そのための特別な仕組みも設けられている。 (エ) 紛争当事国は,小委員会(パネル)の報告中の法的事項に関して,上級委員会に対し申立てをすることができる。 上級委員会は7人の専門家によって構成され,そのうちの3人で構成される部会が審理を担当し,小委員会の報告の法的認定を支持し,修正し又は取り消す旨の報告をする。 (オ) 小委員会又は上級委員会の報告が紛争解決機関によって採択された場合には,被申立国は採択された報告を実施する義務を負う。 (カ) 被申立国が採択された報告を実施しない場合,申立てを行った加盟国は,代償交渉を行うことになるが,代償交渉についての合意が成立しなかった場合,紛争解決 は採択された報告を実施する義務を負う。 (カ) 被申立国が採択された報告を実施しない場合,申立てを行った加盟国は,代償交渉を行うことになるが,代償交渉についての合意が成立しなかった場合,紛争解決機関の承認を得て,相手方加盟国に対し対象協定に基づく譲許その他の義務の履行を停止することができる。 (4) WTO農業協定4条2項に係る条約の直接適用可能性の主観的基準についてア前提本件で問題となるWTO農業協定4条2項の我が国における直接適用可能性の有無については,まず,主観的基準について,我が国が,同項につき,我が国で直接適用可能性を有するものとしてWTO協定を締結しているかについて検討する。 イ締約国の間でWTO協定ないしWTO協定4条2項が直接適用可能性を有するものとして締結されているか否か(ア) まず,前記(3)で認定したWTO協定の内容等によれば,そもそも WTO協定は,加盟国間の国際貿易関係を規律し,多角的貿易体制の基礎を成す基本原則を維持するとともに同体制の基本目的を達成するものとして位置付けられており,WTO協定自体は,その基本的な性格として,国家と私人との間の権利義務を規定することを直接的な目的とした条約であるとは認められない。 (イ) また,WTO設立協定には,締約国の国内における直接適用可能性を否定した条項は存在しないものの,直接適用を否定した条項が存在しないことをもって直ちに直接適用可能性を前提として締結されていると認めることはできないし,むしろ,前記(3)エ(ウ)のとおり,GATSには直接適用可能性を認めるかのような個別の規定が存在するのに対し,WTO設立協定自体には,WTO協定について,当然に加盟国の国内における直接適用可能性を認めるかのような条項は存在しないことに加え,前記(3) 可能性を認めるかのような個別の規定が存在するのに対し,WTO設立協定自体には,WTO協定について,当然に加盟国の国内における直接適用可能性を認めるかのような条項は存在しないことに加え,前記(3)ウ(エ)のとおり,WTO設立協定16条4項が,加盟国は,自国の法令及び行政上の手続を附属書の協定に定める義務に適合したものとすることを確保することを定めていることからすると,締約国の間で,WTO協定が加盟国の国内において当然に直接適用可能性を有するものとして締結されたものではないことがうかがわれる。 (ウ) さらに,前記(3)オのとおり,WTO協定では,信頼性の高い,包括的な紛争解決手続であるWTO紛争解決手続が整備されているところ,WTO協定において紛争解決制度が整備されていること自体,WTO協定が加盟国の国内で直接適用されることを当然の前提とはしていないことをうかがわせるものといえる。 また,WTO協定における紛争解決手続の内容をみても,紛争当事者(加盟国)相互にとって受け入れることが可能であり,かつ,対象協定に適合する解決が明らかに優先されるべきであるとされていること,WTO紛争解決手続において,ある加盟国が,他の加盟国が協定に違反し ていることを理由として違反申立てをするに当たっては,その紛争の相手国に対して協議を要請するものとされており,協議によって紛争が解決されない場合に初めて小委員会(パネル)の設置を要請できるとされていることなどからすると,WTO協定における紛争解決手続においては,加盟国相互間による協議(合意)による解決が優先されているものと解される。また,上記のような協議(合意)による解決が得られない場合でも,WTOの紛争解決制度の目的は,「通常,関係する措置がいずれかの対象協定に適合しないと認められるときに当該 先されているものと解される。また,上記のような協議(合意)による解決が得られない場合でも,WTOの紛争解決制度の目的は,「通常,関係する措置がいずれかの対象協定に適合しないと認められるときに当該措置の撤回を確保することである」とされていることや,問題となっている措置が対象協定に適合しないと判断される場合,「当該措置を直ちに撤回することが実行可能でない場合に限り,かつ,対象協定に適合しない措置を撤回するまでの間の一時的な措置としてのみ,」代償に関する規定を適用すべきとされていること,「最後の解決手段」として,「紛争解決機関の承認を得て,他の加盟国に対し対象協定に基づく譲許その他の義務の履行を差別的に停止することができる」とされていることからすると,WTO紛争解決手続は,加盟国による対象協定に適合しない措置の撤回の確保に向けられているものと解される。 このように,WTO協定を巡る紛争については,第一次的には加盟国間の協議や交渉によって解決が図られることが予定されており,WTO紛争解決手続による最終的な救済も,加盟国による対象協定に適合しない措置の撤回によって図られることが前提となっているものと解される。 しかるに,仮にWTO協定が加盟国の国内で当然に直接適用可能なものであるとすると,上記のような協議や交渉による解決の手段を結果的に否定するという事態が生じかねず,上述したWTO紛争解決手続の内容からすると,WTO協定は,締約国の間において加盟国の国内で当然に直接適用可能であることを前提として締結されたものではないことが うかがわれる。 もとより,原告が指摘するように,WTO協定の加盟国の国内においてWTO協定の直接適用可能性が有るものとされれば,私人において,WTO協定自体に基づいて国内裁判所に訴えを提起し,あるいは,WT もとより,原告が指摘するように,WTO協定の加盟国の国内においてWTO協定の直接適用可能性が有るものとされれば,私人において,WTO協定自体に基づいて国内裁判所に訴えを提起し,あるいは,WTO協定違反を主張して国内裁判所の判断を求めることが可能となるため,WTO協定の国内的実施について私人による監視をすることが期待できるということになり,WTO協定の定める義務が履行される実効性がより高まるということはできるものの(甲17の80頁以下,甲34の7頁以下),そもそも,WTO協定の定める義務履行の実効性が高まるということ自体から直ちに,締約国が直接適用可能性があることを前提としてWTO協定を締結していたと推認することはできないというべきであるし,一方で,前記(3)オのとおり,WTO協定には実効性の高い紛争解決手続が設けられているところ,WTO協定の国内における直接適用可能性を認めた場合には,他国との協議や交渉による解決の途が閉ざされる可能性があることからすると,WTO協定の締約国が国内における直接適用によってWTO協定の実効性を高めることを当然の前提としてWTO協定を締結したとまで認めることはできず,結局のところ,原告が主張するWTO協定の義務履行の実効性の向上自体は,WTO協定が加盟国の国内で当然に直接適用可能であることを前提として締結されたことを直ちに基礎付けるものではないというべきである。 (エ) 加えて,証拠(甲15の126頁,甲17の89頁,乙45の32頁以下)及び弁論の全趣旨によれば,WTO協定の主要条約締結国(WTOの主要加盟国)である米国では,条約は,憲法,制定法とともに,「国の最高法規」としての国内的効力が与えられるとともに,連邦の法律と同等の効力を持つことが判例上確立しているとされているものの,WTO協定を締 盟国)である米国では,条約は,憲法,制定法とともに,「国の最高法規」としての国内的効力が与えられるとともに,連邦の法律と同等の効力を持つことが判例上確立しているとされているものの,WTO協定を締結した際に制定したウルグアイ・ラウンド協定法(Urguay RoundAgreementAct)において,WTO協定の直接適用可能性を否定しており,結局,米国は,当然に直接適用可能性があるものとしてWTO協定を締結してはいないものと認めることができる。 また,証拠(甲17の90頁以下,乙26の265頁,乙28の訳文10頁以下,乙29の92頁)及び弁論の全趣旨によれば,WTO協定締結に関するEUの理事会決定94/800の前文では,「附属書を含め,世界貿易機関設立協定は本来的に共同体又は加盟国の裁判所において直接に援用され得ない」とされており(甲17の94頁,乙26の265頁,乙28の訳文11頁),EUでWTO協定が直接効果(直接適用可能性)を持つかが争われた1999年のポルトガル対理事会事件(PortugueseRepublicvCounciloftheEuropeanUnion, C-149/96)において,欧州司法裁判所は,① WTO協定が1947年のGATTと同様に依然として「相互かつ互恵的な取決めを締結する」ことを目的とする交渉原則に基礎を置いていること(パラ42),② WTO紛争解決手続も交渉による解決の余地を残していること,③ EUの主要な貿易相手国がWTO協定の直接適用可能性を否定していること(パラ43)等を理由として,「共同体法がWTOルールに適合するよう確保する役割が,共同体の司法権に直接委ねられるのを受け容れるならば,共同体の立法機関又は執行機関は,共同体の貿易相手国の立法機関又は執行機関が享受 由として,「共同体法がWTOルールに適合するよう確保する役割が,共同体の司法権に直接委ねられるのを受け容れるならば,共同体の立法機関又は執行機関は,共同体の貿易相手国の立法機関又は執行機関が享受してきた裁量権を行使する機会を奪われることになる。」(パラ46)と判示し,WTO協定の直接効果(直接適用可能性)を否定したものと認めることができる。 このように,WTOの主要加盟国である米国及びEUでは,WTO協定の締結当初から,WTO協定が国内(域内)において当然に直接適用可能性があるものとは取り扱われていないことからすると,少なくとも,締約国の間で,WTO協定が加盟国の国内において直接適用可能性があ ることを当然の前提として締結されたわけではないことがうかがわれる。 (オ) WTO農業協定4条2項についてみても,同項は,前記(3)エ(イ)のとおり,農産品の輸入に際して執られる通常の関税以外の措置を原則として全て通常の関税に転換するという趣旨の関税に関する国家間の合意に係る条項である。 この点,そもそも関税とは,輸入貨物に課し,原則としてその貨物を輸入する者から徴税する租税であり,財政収入を主要な目的として課される財政関税と,国内産業の保護を主要な目的として課される保護関税とがあるところ,我が国を含め先進国の関税は,一般には保護関税であるとされている(乙7の674頁,乙8の12頁)。そして,このような国内産業の保護を目的とする関税の性格に加え,関税を,いかなる品目につき,いかなる範囲で課するかという点に関しては,関係国も多大な利害関係を有しており,国家間の交渉を経た上で決せられるべき性質のものであることからすると,関税が関税について合意された条約の条項に適合するかどうかに関する紛争については,本来的に国家間において解決すべきも 有しており,国家間の交渉を経た上で決せられるべき性質のものであることからすると,関税が関税について合意された条約の条項に適合するかどうかに関する紛争については,本来的に国家間において解決すべきものであり,国家と私人との間で解決するという性格のものではないと考えられ,そうすると,関税について定めるWTO農業協定4条2項は,他のWTO協定の条項と同様,基本的には加盟国の国内における直接適用可能性を認めることを前提として締結されたものではないと考えるのが自然である(関税に関する規定であっても,例えば譲許表等の規定について,それぞれの締約国において国内での直接適用可能性を認めるということは,別の問題である。)。 また,WTO農業協定4条2項は,「加盟国は」と規定していることからすると,通常の解釈によれば,同項は,加盟国に向けた規範として,加盟国に対し,農産品貿易に係る国際的な規律を強化する目的の下,締約国に対して特例措置を適用したものを除き通常の関税以外の国境措置 を包括的に関税化する国際法上の義務を負わせることを規定するものと解するのが自然である(乙13の115頁)。 この点,原告は,WTO農業協定4条2項は,GATT時代になし得なかった農業分野での完全関税化を実現したものであり,WTO農業協定の要というべき条項であり,WTO農業協定の中でも,特に各国の遵守が求められる規定という位置付けがされており,とりわけ,同項の(注)で列挙された,最低輸入価格制度,可変課徴金といった個別の制度は,WTO農業協定締結時にこれを採用する国が存在したため,各個別の制度を厳に禁止する趣旨で,わざわざ個別に制度を列挙して掲名したものであるとして,加盟国の国内において直接適用可能性が認められると主張する。しかしながら,原告が主張する点を考慮しても,関 ,各個別の制度を厳に禁止する趣旨で,わざわざ個別に制度を列挙して掲名したものであるとして,加盟国の国内において直接適用可能性が認められると主張する。しかしながら,原告が主張する点を考慮しても,関税が条約の条項に適合するかどうかという紛争が本来的に国家間で解決されるべきものであるということが左右されるものではなく,同項が加盟国の国内において直接適用可能性を有することを前提としてWTO協定が締結されたものと認めることはできない。 そうすると,WTO農業協定4条2項の性格やその規定内容をみても,同項が加盟国の国内において当然に直接適用可能性を有するものとしてWTO協定が締結されたとは認められない。 (カ) 以上のとおり,①aWTO協定自体は,その基本的な性格として,国家と私人との間の権利義務を規定することを直接的な目的としているとは認められないこと,bWTO設立協定自体には,WTO協定について,当然に加盟国の国内における直接適用可能性を認めるかのような条項は存在せず,一方で,WTO設立協定16条4項が,加盟国において,自国の法令及び行政上の手続をWTO協定に適合したものにするように定めていること,cWTO協定では,信頼性の高い,包括的な紛争解決手続であるWTO紛争解決手続が整備されており,その内容も, 加盟国相互間による協議(合意)による解決が優先されるものとなっていること,dWTOの主要加盟国ではWTO協定には国内(域内)における直接適用可能性がないものとして取り扱われていることなどからすると,WTO協定自体について,WTO協定が条約締結国の国内において当然に直接適用可能性を有するものとして締結されたものとは認められず,また,② WTO農業協定4条2項自体についても,これが国内産業の保護を目的とする関税について規定 協定が条約締結国の国内において当然に直接適用可能性を有するものとして締結されたものとは認められず,また,② WTO農業協定4条2項自体についても,これが国内産業の保護を目的とする関税について規定するものであり,当然に加盟国の国内において直接適用されるというような規定内容になっていないことからすると,WTO農業協定4条2項につき,加盟国の国内において当然に直接適用可能性を有するものとしてWTO協定は締結されたものではないと認めるのが相当である。 ただ一方で,WTO農業協定4条2項について,それが加盟国の国内において直接適用可能性を有するものとして取り扱われることが否定されているとも解されないから,WTO農業協定4条2項が我が国において直接適用可能性を有するか否かについては,我が国が同項につき直接適用可能性を有するものとしてWTO協定を締結したか否かを検討する必要がある。 ウ我が国がWTO農業協定4条2項につき我が国で直接適用可能性を有するものとしてWTO協定を締結したか(ア) 証拠(乙47)及び弁論の全趣旨によれば,我が国においては,条約の締結に当たり,一般的には,当該条約上の義務を国内的に実施し得る体制が整っていることを締結の前提としており,そのために国内立法措置が必要であれば,このような措置を執った上で条約を締結しているものと認めることができる。 そうすると,条約を締結するに当たり,当該条約上の義務を実施するための国内立法措置が執られている場合には,一般的に,我が国におい て,当該義務につき直接適用することは想定されていないというべきである。 (イ) しかるに,証拠(甲20,乙13の110頁,乙48)及び弁論の全趣旨によれば,我が国がWTO協定を締結するに当たっては,WTO協定を国内的に実施するための国内措置 ないというべきである。 (イ) しかるに,証拠(甲20,乙13の110頁,乙48)及び弁論の全趣旨によれば,我が国がWTO協定を締結するに当たっては,WTO協定を国内的に実施するための国内措置を執ることが必要とされ,WTO農業協定4条2項が関係する関税化については,その実施のため,関税定率法等の改正,加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の改正,主要食糧の需給,価格安定法の制定等の立法措置が執られているものと認められる一方,同項の直接適用可能性の有無について,国会において説明や議論が行われたと認めるべき証拠はない。 (ウ) そうすると,我が国は,WTO協定を締結するに際し,WTO農業協定4条2項が直接適用可能性を有することを前提とした対応を行っておらず,同項については,専ら関係する国内法の整備等によって間接的にこれを適用することが予定されていたものと解されるから,我が国は,同項について,直接適用可能性を有しないことを前提としてWTO協定を締結したものと認めるのが相当である。 なお,WTO協定の附属書1Aに含まれる1994年のGATTの譲許表に関する規定(甲2,甲19,乙10の2)は我が国において直接適用可能性が認められるものとされているところ(基本通達3-2。甲20,甲21),証拠(乙49)及び弁論の全趣旨によれば,この譲許表については,WTO農業協定4条2項とは異なり,WTO協定を締結する以前の段階で,国会において,直接適用可能性を有することを前提とした説明がされていたものと認められ,また,譲許法の定める譲許税率は,WTO農業協定4条2項に比べ,その内容が明確であり,直接適用可能性を認めた場合における適用要件や効果も明確に定まるものであることからすると,我が国は,WTO農業協定4条2項とは異なり,上 記の譲許表について 2項に比べ,その内容が明確であり,直接適用可能性を認めた場合における適用要件や効果も明確に定まるものであることからすると,我が国は,WTO農業協定4条2項とは異なり,上 記の譲許表については我が国における直接適用可能性があるものとして締結したものと解するのが相当である。 (エ) これに対し,証拠(甲31,甲32)及び弁論の全趣旨によれば,財務省関税課長は,平成26年8月5日に開かれた関税・外国為替等審議会関税分科会企画部会において,経済連携協定と関税関係法令との関係について,関税法3条の規定に基づいて,輸入貨物には原則として関税法,関税定率法,その他の関税に関する法律により関税を課するということになっているが,一方で,同条ただし書の規定に基づいて,経済連携協定等といった条約中に関税についての特別の規定があるときは,これら条約中の規定を直接適用して関税を課すこととされている旨発言しており,また,財務省ホームページにおいて,関税法3条ただし書に関する質問に対して,「WTO協定等の条約において輸入者等の権利義務及び関税率適用のための課税要件が明確であり,国内法の規定を整備することなくその適用が可能なものについては,関税法第3条ただし書により条約の規定を適用されることとされております。したがいまして,この場合の条約の規定については,同時に国内法たる性質を持つものであると解されます。」と回答しているものと認められるところ,原告は,上記の財務省関税課長の発言や財務省ホームページの記載を根拠として,WTO農業協定4条2項が我が国で直接適用可能性を有していると主張している。 しかしながら,前記(1)エで説示したとおり,関税法3条ただし書は,直接適用可能性を有する条約について,国内で適用されるということを注意的に示したものであり,上記の を有していると主張している。 しかしながら,前記(1)エで説示したとおり,関税法3条ただし書は,直接適用可能性を有する条約について,国内で適用されるということを注意的に示したものであり,上記の財務省関税課長の発言も財務省ホームページの記載も,直接適用可能性が認められる条約については,関税法3条ただし書によって我が国において適用が認められるという上記の考え方や,あるいは,前記(ウ)で説示したとおり,現にWTO協定の一 部である1994年のGATTの譲許表に関する規定が我が国において直接適用されるということなどを前提としたものと解するのが相当であり,WTO協定の全ての条項が当然に関税法3条ただし書により我が国で直接適用されるとしたものと解することはできないから,上記の財務省関税課長の発言及び財務省ホームページの記載は,我が国がWTO農業協定4条2項につき国内における直接適用可能性があることを前提としてWTO協定を締結したことの根拠となるものとはいえない。 (オ) また,証拠(甲28)及び弁論の全趣旨によれば,財務省関税局(以下「関税局」という。)は,「WTO農業協定第4条(市場アクセス)は裁判規範性があります」とメールで回答したことがあるものと認められるところ,原告は,上記の回答は,我が国がWTO協定の我が国における直接適用可能性を認めたものであると主張する。 しかしながら,証拠(乙52)及び弁論の全趣旨によれば,上記回答は,財務省ホームページにおける「関税局・各関税へのご意見・ご要望の受付」というサイトに寄せられた質問に対するものであるところ,このサイトを通じた関税局の回答は,税関ホームページの掲載内容の更なる充実や使い易さの利便性の向上を図るとともに,一般国民の税関行政及び関税制度に関する理解と協力を求めることを目的と であるところ,このサイトを通じた関税局の回答は,税関ホームページの掲載内容の更なる充実や使い易さの利便性の向上を図るとともに,一般国民の税関行政及び関税制度に関する理解と協力を求めることを目的として,行政サービスの一環,あるいは,税務行政に関する広報サービスとして,財務省関税局総務課広報係が,関税局及び各税関を窓口として,一般国民からの関税局及び各税関に対する意見,要望及び質問等を受け付け,これらに対してメールで回答を行っているというものにすぎず,上記ホームページには「免責事項」として「当ホームページに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが,財務省は利用者が当ホームページの情報を用いて行う一切の行為について,何ら責任を負うものではありません。」との注意書きが置かれているものと認められるほか, 国際約束の解釈に関する事務は外務省の所掌とされていること(外務省設置法4条5号)などからすると,関税局又は各税関が独自に行った上記回答をもって,我が国の公式見解と解することはできず,WTO農業協定4条の我が国における直接適用可能性を肯定する根拠とするのは相当ではないというべきである。 (カ) さらに,証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,在ジュネーブ国際機関日本政府代表部は,韓国政府からの質問に対して1996年(平成8年)7月29日に回答文書(甲30)を提出しており,原告の訳文によると,韓国政府から,① 「国内法規に関連の規定がない場合,WTO協定は適用されるか。」,② 「現行の国内法の規定がWTO協定に適合しない場合,WTO条約の規定は適用されるか。」という質問がされたのに対し,我が国において,① 「WTO条約を実施するために必要な国内法の改定は行われている。」「関税法が,WTO協定の規定が直接適用可能であ ,WTO条約の規定は適用されるか。」という質問がされたのに対し,我が国において,① 「WTO条約を実施するために必要な国内法の改定は行われている。」「関税法が,WTO協定の規定が直接適用可能であることを確認している。」,② 「もし国内法とWTO協定に矛盾があれば,WTO協定が国内法に優先する。」と回答しているものと認められるところ,原告は,上記の回答は,我が国がWTO協定の我が国における直接適用可能性を認めたものであると主張する。 しかしながら,上記の回答について,被告は,WTO協定が直接適用可能性を有しているのであれば,関税法3条ただし書により,我が国において法律に優先して適用されるということを示しているだけで,WTO協定が我が国において当然に直接適用可能性を有することを示すものではないと主張しており,上記の回答のうちの①については,必ずしもWTO協定の全ての条項が直接適用可能性を有するということを前提としたものではなく,直接適用可能性のある条項を前提とした回答であると解することができるし,②についても,同様に,直接適用可能性がある条項を前提としたものと解することができることからすると,上記の 回答をもって直ちに,我が国がWTO農業協定4条2項が直接適用されることを前提として同項を含むWTO協定を締結したとまでは認められないというべきである。 (キ) その他,原告は,我が国において,憲法98条2項や前文が国際協調主義を定め,条約が法律に優先するという公定解釈が存在するほか,関税法3条ただし書により,関税に関する事項について直接適用可能性を積極的に認めていこうとする国内法制を採っているとして,我が国がWTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する意思を有していないなどと主張するが,前記(1)イで説示したとおり,一般的に 用可能性を積極的に認めていこうとする国内法制を採っているとして,我が国がWTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する意思を有していないなどと主張するが,前記(1)イで説示したとおり,一般的に条約が国内法に優位すると解されていることは,当該条約に直接適用可能性が認められることと論理的関連性はないというべきであるし,また,原告が言及する関税法3条ただし書が直接適用可能性が認められる条約の規定は直接適用するということを注意的に定めた規定(確認規定)にすぎないことは前記(1)エで説示したとおりであるから,原告の主張する憲法に係る公定解釈や関税法3条ただし書の存在は,直ちに我が国がWTO農業協定4条2項につき国内において直接適用可能性を有するものとしてWTO協定を締結したという根拠となるものとはいえない。 また,原告は,我が国が,外国政府の施策や措置を評価する基準としてWTO協定や経済連携協定等の国際的に合意されたルールを用いるという立場に立っているとして(甲23,甲25の11頁),これもWTO農業協定4条2項の直接適用可能性を認めるべき根拠として主張するが,そもそも,我が国において,WTO協定4条2項につき国内における直接適用可能性がないものとしてWTO協定を締結したとしても,我が国がWTO農業協定4条2項を遵守する意思がないことを意味するものではないことは明らかであり,我が国が原告の主張するような立場に立っているとしても,そのことをもって,我が国がWTO農業協定4条 2項の国内における直接適用可能性を認めてWTO協定を締結したと認めることはできない。 エ小括以上によれば,我が国は,WTO協定を締結するに際し,WTO農業協定4条2項が直接適用可能性を有することを前提としていたとは認められないから,条約の直接適用可能性 めることはできない。 エ小括以上によれば,我が国は,WTO協定を締結するに際し,WTO農業協定4条2項が直接適用可能性を有することを前提としていたとは認められないから,条約の直接適用可能性の有無についての主観的基準からすると,WTO農業協定4条2項は,我が国における直接適用可能性はないものと認めるのが相当である。 したがって,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性が認められることを前提として,同項に違反する本件差額関税制度が憲法98条2項により無効になるという原告の主張は,その前提を誤るものであって採用することができない。 2 本件各更正処分等の適法性(1) 本件各更正処分の適法性本件各輸入(納税)申告の概要等は,前提事実(3)のとおりであり,原告が実質的な輸入者としてP2から輸入した冷凍豚部分肉に係る課税価格は,別表の⑪「真正関税課税標準額(円)」欄記載のとおりである。そして,本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項に違反するものとして憲法98条2項により無効とならないことは,前記1で説示したとおりであり,前提事実(1)の本件差額関税制度の概要等(別紙5「本件差額関税制度の概要等」の第2の1(2)ウ)のとおりの本件差額関税制度によれば,本件各輸入貨物に係る関税額は,別表の⑬「更正後関税額(円)」欄記載のとおりとなる(関税法13条の4及び国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額)。 そして,本件各更正処分(前提事実(5))によって原告に課された本件各輸入貨物に係る関税額は,上記の関税額と一致するから,本件各更正処分は適 法なものと認めることができる。 (2) 本件各賦課決定処分の適法性ア上記(1)のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告は本件各輸入貨物に係る から,本件各更正処分は適 法なものと認めることができる。 (2) 本件各賦課決定処分の適法性ア上記(1)のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告は本件各輸入貨物に係る関税について,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,関税法12条の2第3項に規定する正当な理由を認めることはできない。 イ関税に係る過少申告加算税の税率は,原則としては更正によって増加した関税額(納付すべき額)の10%であるが(関税法12条の2第1項),増差税額が過大である場合には,一定額を超える部分について,更に5%加重される。具体的には,増差税額が当初申告税額又は50万円のいずれか多い金額を超える場合には,当該超える部分の5%に相当する金額が加重される(同条2項)。 本件各輸入(納税)申告は,いずれも増差税額が当初申告税額及び50万円を超えることから,これらのうちの多い金額の超える部分の5%に相当する金額が加重されることとなり,本件各更正処分により新たに納付すべきこととなった関税額を基準として過少申告加算税額を計算すると,別表の⑱「加算税合計額(円)」欄記載のとおりとなる。 ウそして,本件各賦課決定処分(前提事実(5))によって原告に課された過少申告加算税の額は,上記イの過少申告加算税の額と一致するから,本件各賦課決定処分は適法なものと認めることができる。 3 結論以上によれば,本件各更正処分等の取消し又は無効確認を求める原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田稔 裁判官齊藤充洋 裁判官池 ととし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田稔 裁判官齊藤充洋 裁判官池本拓馬 (別紙4)関係法令等の定め 1 関税法(1) 関税法3条は,その本文において,輸入貨物には,関税法及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課する旨,そのただし書において,条約中に関税についての特別の規定があるときは,当該規定による旨,それぞれ定めている。 (2) 関税法6条は,関税は,この法律又は関税定率法その他関税に関する法律に別段の規定がある場合を除く外,貨物を輸入する者が,これを納める義務がある旨定めている。 (3) 関税法6条の2第1項1号は,関税額の確定については同項2号に掲げる関税以外の関税は,納付すべき税額又は当該税額がないことが納税義務者のする申告により確定することを原則とし,その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が関税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税関長の調査したところと異なる場合に限り,税関長の処分により確定する方式(以下「申告納税方式」という。)が適用される旨定めている。 (4) 関税法7条は,その1項において,申告納税方式が適用される貨物を輸入しようとする者は,税関長に対し,当該貨物に係る関税の納付に関する申告をしなければならない旨,その2項において,同条1項の申告は,政令で定めるところにより,同法67条(輸出又は輸入の許可)の規定に基づく輸入申告書に,同条の規定により記載すべきこととされている当該貨物に係る課税標準その他の事項のほか,その税額その他必要な事項を記載して,これを税関長に提出することによって行なうものとする旨定めている。 申告書に,同条の規定により記載すべきこととされている当該貨物に係る課税標準その他の事項のほか,その税額その他必要な事項を記載して,これを税関長に提出することによって行なうものとする旨定めている。 (5) 関税法7条の16は,その1項において,税関長は,納税申告があった場合において,その申告に係る税額等の計算が関税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該税額等がその調査したところと異なるときは,その 調査により,当該申告に係る税額等を更正する旨定めている。 (6) 関税法12条は,その1項本文において,納税義務者が法定納期限までに関税(附帯税を除く。以下同じ。)を完納しない場合又は同法13条の2(過大な払戻し等に係る関税額の徴収)の規定により過大に払戻し若しくは還付を受けた関税額を徴収される場合には,当該納税義務者は,その未納又は徴収に係る関税額に対し,法定納期限(当該過大に払戻し又は還付を受けた関税については,その払戻し又は還付を受けた日)の翌日から当該関税額を納付する日までの日数に応じ,年7.3%の割合を乗じて計算した金額に相当する延滞税を併せて納付しなければならない旨,同項ただし書において,納期限(当該過大に払戻し又は還付を受けた関税については,その納税告知に係る納期限)の翌日から2月を経過する日後の延滞税の額は,その未納に係る関税額に年14. 6%の割合を乗じて計算した額とする旨,その3項において,延滞税の額の計算の基礎となる関税額が1万円未満である場合においては,1項の規定を適用せず,当該関税額に1万円未満の端数がある場合においては,これを切り捨てて計算する旨,その4項において,延滞税の額が1000円未満である場合においては,これを徴収せず,当該延滞税の額に100円未満の端数がある場合においては,これを切 ある場合においては,これを切り捨てて計算する旨,その4項において,延滞税の額が1000円未満である場合においては,これを徴収せず,当該延滞税の額に100円未満の端数がある場合においては,これを切り捨てる旨,それぞれ定めている。 (7) 関税法12条の2は,その1項において,同法7条1項(申告)の規定による申告(以下「当初申告」という。)があった場合において,修正申告又は更正がされたときは,当該納税義務者に対し,当該修正申告又は更正に基づき同法9条1項又は2項(申告納税方式による関税等の納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨,その2項において,前項の場合において,同項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る関税について修正申告又は更正がされたときは,その関税に係る累積増差税額を加算した金額)がその関税に係る当初申告に係る税額に相当する金額と50万円 とのいずれか多い金額を超えるときは,同項の過少申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,同項の規定により計算した金額に,当該超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは,当該納付すべき税額)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする旨,その3項において,前二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,前二項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,前二項の規定を適用する旨,その5項におい のがある場合には,前二項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,前二項の規定を適用する旨,その5項において,前条3項及び4項(延滞税)の規定は,過少申告加算税について準用するとし,この場合において,同条3項中「関税額」とあるのは「税額」と,「第一項」とあるのは「次条第一項及び第二項」と,同条4項中「千円」とあるのは「五千円」と読み替えるものとする旨,それぞれ定めている。 (8) 関税法13条の4は,国税通則法118条1項及び2項(国税の課税標準の端数計算)の規定は関税の課税標準の端数計算について,同法119条1項及び3項(国税の確定金額の端数計算)の規定は関税の額の端数計算について,同法第120条1及び2項(還付金等の端数計算)の規定は関税に係る払い戻し又は還付の額の端数計算について準用する旨定めている。 2 関税定率法(1) 関税定率法3条は,関税は,輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課す旨定めている。 (2) 関税定率法3条及び別表(関税率表)第1部第2類0203(以下,関税率表の分類番号を表記するに当たり,4桁の番号の場合には,「項」といい,さらに,「項」の下位の分類番号である6桁の番号の場合には,「号」と表記する。関税暫定措置法においても同様とする。)は,豚肉の関税は,「いのしし のもの」を除いて,価格を課税標準として税率5%とする旨定めている。 3 関税暫定措置法(昭和35年法律第36号)(1) 関税暫定措置法(平成15年4月1日から平成16年3月31日までに輸入されるものは平成16年法律第15号による改正前のもの。平成16年4月1日から平成17年3月31日までに輸入されるものは平成17年法律第22号による改正前 4月1日から平成16年3月31日までに輸入されるものは平成16年法律第15号による改正前のもの。平成16年4月1日から平成17年3月31日までに輸入されるものは平成17年法律第22号による改正前のもの。)2条2項及び別表第1の3(暫定関税率表)は,豚肉の関税について,課税価格が1kgにつき,① 従量税適用限度価格(基準輸入価格から1kg当たりの従量税額を控除した価格)以下のものについては,貨物重量を基準として課する税率(従量税),② 従量税適用限度価格を超え,分岐点価格(基準輸入価格を③の税率に1を加えた数で除して得た価格)以下のものについては,従量税を基準輸入価格と課税価格との差額に引き下げた額(差額関税),③ 分岐点価格を超えるものについては,課税価格を基準として課する税率(従価税)という3つの税率を定めているところ,「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のうちの「二その他のもの」(同表0203項29号2)については,上記①について,1kgにつき482円,上記②について,1kgにつき部分肉に係る基準輸入価格と課税価格との差額,上記③について,4.3%と定めており,同法別表第1の3の2(基準輸入価格表)は,上記の基準輸入価格を1kgにつき546円53銭と定めている(同表3項1号)。 (2) 関税暫定措置法(平成15年4月1日から平成16年3月31日までに輸入されるものは平成16年法律第15号による改正前のもの。平成16年4月1日から平成17年3月31日までに輸入されるものは平成17年法律第22号による改正前のもの。)7条の6は,その1項において,平成7年度から平成16年度までの各年度において,「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの ものは平成17年法律第22号による改正前のもの。)7条の6は,その1項において,平成7年度から平成16年度までの各年度において,「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のう ちの「二その他のもの」(同表0203項29号2)について,次の各号に掲げる場合に該当する場合には,当該各号に定める期間内に輸入されるものに課する関税の率は,別表第1の3第0203項12号2の(1)中「同表第三項第一号」(1kgにつき546円53銭)とあるのは「同表第三項第二号」(1kgにつき681円08銭)と読み替えて適用する同表に定める税率とする旨定めている。 ア当該年度の初日から当該年度の第1四半期,第2四半期及び第3四半期に属する各月の末日までの豚肉等の輸入数量が,当該年度の前年度までの過去3年度における各年度の初日から同年度の当該各月の属する四半期の末日までの豚肉等の輸入数量を合計したものの3分の1に相当する数量に100分の119を乗じて得た数量としてあらかじめ財務大臣が告示する数量を超えた場合その超えることとなった月の属する四半期の翌四半期の初日(その超えることとなった月が6月,9月又は12月であるときは,当該超えることとなった月の翌々月の初日。)から当該年度の末日まで。(1号)イ当該年度中の豚肉等の輸入数量が,当該年度の前年度までの過去3年度における各年度の豚肉等の輸入数量を合計したものの3分の1に相当する数量に100分の119を乗じて得た数量としてあらかじめ財務大臣が告示する数量を超えた場合当該年度の翌年度の初日(その超えることとなった月が3月であるときは,同年度の5月1日。)から同年度の第一四半期の末日まで。(2号) 4 国税通則法国税通則法119条は, る数量を超えた場合当該年度の翌年度の初日(その超えることとなった月が3月であるときは,同年度の5月1日。)から同年度の第一四半期の末日まで。(2号) 4 国税通則法国税通則法119条は,その1項において,国税(自動車重量税,印紙税及び附帯税を除く。)の確定金額に100円未満の端数があるとき,又はその全額が100円未満であるときは,その端数金額又はその全額を切り捨てる旨定めている。 5 WTO協定(平成6年条約第15号) WTO農業協定4条2項は,「加盟国は,次条及び附属書5に別段の定めがある場合を除くほか,通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置(注)も維持し,とり又は再びとってはならない。」と定め,その(注)として,「これらの措置には,輸入数量制限(quantitativeimportrestrictions),可変輸入課徴金(variableimportlevies),最低輸入価格(minimumimportprices),裁量的輸入許可(discretionaryimportlicensing),国家貿易企業を通じて維持される非関税措置(non-tariffmeasuresmaintainedthroughstate-tradingenterprises),輸出自主規制(voluntaryexportrestrains)その他これらに類する通常の関税以外の国境措置(特定の国について承認された1947年のガットの規定からの逸脱として維持されているものであるかないかを問わない。)が含まれるが,1994年のガット又は世界貿易機関協定附属書1Aに含まれている他の多角的貿易協定における国際収支に関する規定その他の農業に特定されない一般的な規定に基づいて維持される措 を問わない。)が含まれるが,1994年のガット又は世界貿易機関協定附属書1Aに含まれている他の多角的貿易協定における国際収支に関する規定その他の農業に特定されない一般的な規定に基づいて維持される措置は含まれない。」と定めている。 6 関税法基本通達(甲21)(1) 関税法基本通達3-1は,関税法3条ただし書(条約による特別の規定)に定める「関税についての特別の規定」とは,関税の税率のほか関税の軽減,免除,払戻しその他関税の賦課及び徴収に関しての国内法の規定に対する特別の規定をいう旨定めている。 (2) 関税基本通達3-2は,関税法3条ただし書に規定する条約に規定された税率の適用については,次によるとした上,その(1)の第1文において,WTO協定の附属書1Aの1994年の「関税及び貿易に関する一般協定」のWTO協定に附属する譲許表の第38表の日本国の譲許表に掲げられている税率は,関税定率法の別表の税率及び関税暫定措置法の規定に基づく税率より低い場合に適用される旨定めている。 以上 (別紙5)本件差額関税制度の概要等第1 我が国における輸入貨物に係る関税の概要 1 関税の課税標準及び関税率について輸入貨物には,関税法及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課することとされており,条約中に関税についての特別の規定があるときは,当該規定によるものとされている(関税法3条)。また,関税は,輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課すこととされ(関税定率法3条),税率については,関税定率法,関税暫定措置法等により定められている(関税暫定措置法1条)。 関税は,課税方法の違いにより,従価税と従量税とに分類することができる。 従価税とは,課税物件たる物品の価格を課税標準として課される租税であり,従量税とは,課税物 れている(関税暫定措置法1条)。 関税は,課税方法の違いにより,従価税と従量税とに分類することができる。 従価税とは,課税物件たる物品の価格を課税標準として課される租税であり,従量税とは,課税物件たる物品の個数,重量,長さ,容積,面積等の数量を課税標準として課される租税である。また,関税には,上記のような単純な従価税や従量税のほかに,従価税と従量税を組み合わせた関税,選択税(一品目について従価税率と従量税率の2種を定め,そのうちいずれか税額の高い方又は低い方を課する方式の関税)や複合税(一品目について従量税と従価税とを結合した関税。例えば,従量金額に従価金額を加えたものを関税としたり,従量金額から従価金額を控除したものを関税としたりするものなど。)などもある。 2 輸入貨物の課税価格の決定方法について関税の課税標準である輸入貨物の課税価格の決定方法については,関税定率法4条から4条の4までに規定されているところ,関税定率法4条1項は,原則的な課税価格の決定方法を定めており,輸入貨物の課税価格は,原則として当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時に買手により売手に対し又は売手のために,当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格(以下「現実支払価格」という。)に,その含まれていない限度において,同項各号に掲 げる運賃等の額を加えた価格とする旨定めている。 第2 本件差額関税制度の概要 1 本件差額関税制度の仕組み(1) 関税関係法規ア本件差額関税制度とは,我が国に輸入される豚肉に対し,関税暫定措置法2条2項,別表第1の3(暫定関税率表)及び別表第1の3の2(基準輸入価格表)によって定められた暫定税率で課される関税の組合せの制度である。 イ関税定率法3条及び別表(関税率表)第1部第2類0203(以下,関 1の3(暫定関税率表)及び別表第1の3の2(基準輸入価格表)によって定められた暫定税率で課される関税の組合せの制度である。 イ関税定率法3条及び別表(関税率表)第1部第2類0203(以下,関税率表の分類番号を表記するに当たり,4桁の番号の場合には,「項」といい,さらに,「項」の下位の分類番号である6桁の番号の場合には,「号」と表記する。関税暫定措置法においても同様とする。)によれば,豚肉の関税率は,「いのししのもの」を除いて,輸入価格に対する5%の従価税とされている。 ウ一方,WTO協定の附属書1Aの一部である1994年の「関税及び貿易に関する一般協定」(以下,「関税及び貿易に関する一般協定」を「GATT」という。)では,「各締約国は,他の締約国の通商に対し,この協定に附属する該当の譲許表の該当の部に定める待遇より不利でない待遇を許与するものとする。」と規定され(GATT2条1項(a)),GATTに附属する譲許表は,GATTと不可分一体のものとされているところ(GATT2条7項),関税法3条ただし書は,条約中に関税について特別の規定があるときは,当該規定によると規定していることから,我が国における豚肉の関税率は,GATTに附属された譲許表の定める税率を超えることができないということになる。 エそこで,我が国は,1994年のGATTを含むWTO協定の締結に伴う国内法的措置として,関税暫定措置法別表第1の3の関税率表0203 項において,豚肉について,上記の譲許表の定める水準の範囲内で関税定率法及び譲許表に定める税率に代わる暫定税率を規定しており,これが平成7年4月から施行されている現行の本件差額関税制度となっている。 (2) 関税暫定措置法上の具体的な仕組みア本件差額関税制度は,輸入品の価格が一定の価格以下の場 定税率を規定しており,これが平成7年4月から施行されている現行の本件差額関税制度となっている。 (2) 関税暫定措置法上の具体的な仕組みア本件差額関税制度は,輸入品の価格が一定の価格以下の場合には,豚肉の重量1kg当たりの従量税(ただし,課税後の価格が一定の基準輸入価格を超えるときには,基準輸入価格と輸入価格の差額に引き下げた額)を課すことにより,国内養豚農家を保護する一方,輸入品の価格が一定の価格より高いときには,一定率の従価税を課すことにより,輸入品の関税負担を軽減し,消費者等の利益を図るという関税の組合せの制度である。 イ本件差額関税制度の仕組みについて,輸入品の輸入価格を横軸,関税を課した課税後の価格を縦軸で表したグラフで図示すると,別紙6「図面目録」記載①の図のとおりとなる(乙10の2の2頁)。 この図でいう「枝肉」とは,関税暫定措置法別表第1の3の関税率表0203項11号及び0203項21号に規定している「枝肉及び半丸枝肉」のことであり,関税局の通達(平成13年3月28日付財関225号)における分類例規の一部改正後の分類例規2類0203項によると,「原則として,畜産物の価格安定等に関する法律施行規則別表第1に定める方法により整形した豚肉をいうものとする。具体的には,と体をはく皮又ははく毛し,内臓,頭部その他を除去したものを『枝肉』といい,当該「枝肉」をせきついの中央にそって半体に切断したものを『半丸枝肉』という。」とされている(乙11)。 一方,上記の図でいう「部分肉」とは,関税暫定措置法別表第1の3の関税率表0203項12号,0203項19号,0203項22号及び0203項29号に規定している「部分肉」のことであり,具体的には,枝肉から更に分割,整形し部位別に切り分けた肉のことである。 また,「基 3項12号,0203項19号,0203項22号及び0203項29号に規定している「部分肉」のことであり,具体的には,枝肉から更に分割,整形し部位別に切り分けた肉のことである。 また,「基準輸入価格」とは,関税暫定措置法別表第1の3の2において,豚肉の種類及び輸入期間ごとに定められている価格であり,ウルグアイ・ラウンド交渉により譲許した従量税を引き下げ,この価格を超える部分を関税として徴収しないこととして定められたものであり,豚肉の種類や輸入時期によって定まる固定された価格である。 そして,「分岐点価格」とは,基準輸入価格を従価税の税率に1を加えた数で除したものをいい,「従量税適用限度価格」とは,基準輸入価格から1kg当たりの従量税額を控除した価格という。 ウ本件差額関税制度により本件各輸入貨物に適用される関税率(ア) 通常の場合における関税率について豚肉については,関税暫定措置法2条,別表第1の3及び別表第1の3の2に基づき,具体的には,課税価格が1kgにつき,① 従量税適用限度価格以下のものについては,貨物重量を基準として課する税率(従量税),② 従量税適用限度価格を超え,分岐点価格以下のものについては,従量税を基準輸入価格と課税価格との差額に引き下げた額(差額関税),③ 分岐点価格を超えるものについては,課税価格を基準として課する税率(従価税)という3つの税率が定められている。 そして,本件各輸入貨物である「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のうちの「二その他のもの」(関税暫定措置法2条2項及び別表第1の3の0203項29号2)については,通常時における基準輸入価格は1kgにつき546円53銭とされており,税率は次のとおりとなる。 ① の「二その他のもの」(関税暫定措置法2条2項及び別表第1の3の0203項29号2)については,通常時における基準輸入価格は1kgにつき546円53銭とされており,税率は次のとおりとなる。 ① 従量税適用限度価格(基準輸入価格546円53銭/kg-従量税額482円/kg=64円53銭/kg)以下のもの…従量税(482円/kg) ② 従量税適用限度価格を超え分岐点価格(基準輸入価格546円53銭/kg÷(1+従価税率0.043)=約524円/kg)以下のもの…基準輸入価格(546円53銭/kg)-課税価格③ 分岐点価格を超えるもの…従価税(4.3%)(イ) 関税の緊急措置がとられた場合の関税率についてa 豚肉の輸入数量の急増に対応するため,豚肉の輸入数量がある基準を超えた場合には,関税暫定措置法7条の6に基づく措置がとられ,基準輸入価格,又は,従量税及び従価税の税率が引き上げられる(以下,同条1項に基づく措置を「第1項措置」,同条2項に基づく措置を「第2項措置」,同条3項に基づく措置を「第3項措置」という。)。 b 第1項措置は,①年度初日から各月末まで(第3四半期まで)の豚肉等の輸入数量の累計が,直近3年度の間における,年度初日から当該各月の属する四半期末までの平均輸入数量の119%を超えた場合又は②年度初日から各月末までの豚肉等の輸入数量の累計が,直近3年度の平均輸入数量の119%を超えた場合,以後,所定の期間中に行われる輸入に対し,本件各輸入貨物である「豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)」のうちの「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のうちの「二その他のもの」(関税暫定措置法2条2項及び別表第1の3の0203項29号2)について,基準輸入価格が1kgにつき681円08銭まで,これに の「冷凍したもの」のうちの「その他のもの」のうちの「二その他のもの」(関税暫定措置法2条2項及び別表第1の3の0203項29号2)について,基準輸入価格が1kgにつき681円08銭まで,これに基づいて計算される分岐点価格が1kgにつき約653円(681円08銭/kg÷1.043=約653円)まで,それぞれ引き上げられる。 要件及び発動期間を整理すると,次の表のとおりとなる。 超える月基準数量発動日終了日4月直近3年間の4~6月の平均輸入数量×119% 7月1日 翌年3月31日 5月6月8月1日7月直近3年間の4~9月の平均輸入数量×119% 10月1日 8月9月11月1日10月直近3年間の4~12月の平均輸入数量×119% 1月1日 11月12月2月1日1月直近3年度の平均輸入数量×119% 4月1日 6月30日 2月3月5月1日c 本件各課税処分の対象となった本件輸入(納税)申告の期間においては,別表の③「第1項措置発動期間」欄のとおり,第2項措置及び第3項措置は発動されなかったが,第1項措置が発動されていた時期があったところ(乙6の1及び2,弁論の全趣旨),第1項措置が発動されていた時期の冷凍豚部分肉に係る適用税率は,次のとおりとなる。 ① 従量税適用限度価格(681円08銭/kg-482円/kg=199円08銭/kg)以下のもの…従量税(482円/kg)② 従量税適用限度価格を超え分岐点価格(約653円/kg)以下のもの…基準輸入価格(681円08銭/kg)-課税価格③ 分岐点価格を超えるもの…従価税(4.3%) 2 本件 482円/kg)② 従量税適用限度価格を超え分岐点価格(約653円/kg)以下のもの…基準輸入価格(681円08銭/kg)-課税価格③ 分岐点価格を超えるもの…従価税(4.3%) 2 本件差額関税制度が設けられた経緯 (1) はじめに豚肉は,夏場は豚が太りにくくなり出荷頭数が減少すること等により価格が上昇する一方,秋から冬にかけては出荷頭数が増加すること等により価格が下落することから,年間を通じた価格変動が激しいという特性がある一方で,国産と輸入品との品質の差が小さい等の特徴がある。 昭和40年代前半に国内外から豚肉の輸入自由化を求める声が高まる中,輸入数量制限が撤廃されると,安価な豚肉が大量輸入され,国内養豚の生産基盤が縮小する懸念があった一方で,消費者に豚肉を安定供給することも期待された。このため,昭和46年10月に豚肉の輸入が自由化された際,安価な豚肉が大量に輸入されることによる国内需給の混乱を防止するとともに,国内生産に影響を与えないようにする一方で,高価な豚肉を低関税で輸入することができるようにして,豚肉の安定供給を図ることを目的として,かつての差額関税制度(以下「旧差額関税制度」という。)が設けられた。 しかし,その後,昭和61年(1986年)から開始され,平成6年(1994年)4月15日に世界貿易機関(以下「WTO」という。)加盟の120数か国が調印して妥結したウルグアイ・ラウンド交渉の最終結果を受けて,必要な制度変更が行われ,現在の本件差額関税制度となった。具体的には,従量税適用と従価税適用の分岐となる輸入価格である分岐点価格が譲許表で定められるとともに,分岐点価格以下のものに課していた関税を従量税に置き換えて譲許した上で,更に関係国との協議の結果を踏まえて,分岐点価格を引き下げるとともに なる輸入価格である分岐点価格が譲許表で定められるとともに,分岐点価格以下のものに課していた関税を従量税に置き換えて譲許した上で,更に関係国との協議の結果を踏まえて,分岐点価格を引き下げるとともに,従量税のうち基準輸入価格を超える部分を自主的に引き下げることとしたものであり,その経緯の詳細は,次のとおりである。 (2) ウルグアイ・ラウンド交渉合意前ウルグアイ・ラウンド交渉合意前の旧差額関税制度は,別紙6「図面目録」記載②の図のとおり,輸入価格が分岐点価格以下のもの(上記の図のAの部 分)は,畜産物の価格安定等に関する法律(平成14年法律第126号による改正前のもの)に基づく豚肉の安定基準価格と安定上位価格の合計額の2分の1に相当する額として定められる基準輸入価格(部分肉については,はく皮した枝肉に係る基準輸入価格を0・75で除して得た額)と輸入価格の差額が課税され,輸入価格が分岐点価格を超えるもの(上記の図のBの部分)は,従価税(5%)が課せられる仕組みとなっていた。また,分岐点価格も基準輸入価格と連動して毎年度変わり得るものであった(その場合の数式は,分岐点価格=基準輸入価格÷(1+従価税率/100)の式で求められていた。)。(乙10の2の3頁)上記の「安定基準価格」と「安定上位価格」は,農林水産省が毎年,豚肉の生産条件等を考慮し,畜産振興審議会(現食料・農業・農村政策審議会)の意見を聴いて決定するものであったことから(平成14年法律第126号による改正前の畜産物の価格安定等に関する法律3条1項。なお,安定基準価格は,その額を下って指定食肉等の価格が低落することを防止することを目的として定められ,安定上位価格は,その額を超えて指定食肉等の価格が騰貴することを防止することを目的として定められる(同条3項)。),当時 額を下って指定食肉等の価格が低落することを防止することを目的として定められ,安定上位価格は,その額を超えて指定食肉等の価格が騰貴することを防止することを目的として定められる(同条3項)。),当時の基準輸入価格は,毎年度変わり得るものであった。 旧差額関税制度は,前記のとおり,昭和46年10月に創設され,ウルグアイ・ラウンド交渉の妥結後の平成7年4月における制度変更まで実施されていた。 (3) ウルグアイ・ラウンド交渉による譲許(ステップ1)豚肉の関税は,ウルグアイ・ラウンド交渉の過程において,まず,別紙6「図面目録」記載③の図のとおり,輸入価格が分岐点価格以下のもの(上記の図のAの部分)については,基準期間(1986年から1988年まで)における豚肉の内外価格差(国内と外国における豚肉の価格の差のことをいう。)の平均値に相当する関税相当量である1kgにつき425円(以下の 税率に関する具体的な数値は枝肉に係るものである。)を従量税として課し,分岐点価格を超えるもの(上記の図のBの部分)については,5.0%の従価税を課すこととして,従量税と従価税に置き換えて関税化した上,譲許された。分岐点価格は,基準期間における分岐点価格の平均である1kgにつき553円(枝肉ベース)とされた。(乙10の2の4頁)このように旧差額関税制度を従量税と従価税に置き換えて関税化したのは,1991年(平成3年)12月に,その当時のGATT事務局長であったP6がウルグアイ・ラウンド交渉の妥結を目指して示した最終合意文書案(以下「P6・ペーパー」という。)において提案された,加盟国において国境措置を包括的に関税化するという提案内容(乙13の105頁)に基づくものであった。このP6・ペーパーに示された包括的関税化の考え方に基づき,加盟国間で具体的な において提案された,加盟国において国境措置を包括的に関税化するという提案内容(乙13の105頁)に基づくものであった。このP6・ペーパーに示された包括的関税化の考え方に基づき,加盟国間で具体的な交渉がなされたが,このような交渉過程における加盟国の合意事項は,関税の具体的な削減率等を定めた加盟国に共通に適用される基本ルールである「ModalitiesfortheEstablishmentofSpecificBindingCommitmentsundertheReformProgramme:NotebytheChairmanoftheMarketAccessGroup」(いわゆるモダリティ文書)と呼ばれる合意された作業用文書に記載されている(乙10の2の添付資料2,乙14)。このような交渉の過程で,加盟国は,農産品の関税化を要請されたが,このモダリティ文書に記載されているとおり,この関税化に当たり,加盟国は,従価税か従量税かのいずれで譲許してもよいが,実際の内外価格差(国内と外国における実際の価格差のことをいう。)といった客観的な数値を用いるべきであるとされていた(乙10の2の添付資料2)。豚肉についての我が国の上記ステップにおける譲許は,このような合意にのっとったものであった。また,その際,従量税と従価税との分岐点価格は,1986年から1988年の3か年の分岐点価格の平均値として計算上求められた価格であった。(乙10の2) (4) ウルグアイ・ラウンド交渉による譲許(ステップ2)次に,この関税をウルグアイ・ラウンド交渉過程において,農産品の品目毎の最低削減率である15%を削減して譲許水準とすることとされた(1995年度から2000年度まで段階的に引き下げた。)。このような合意事項は,前 ウルグアイ・ラウンド交渉過程において,農産品の品目毎の最低削減率である15%を削減して譲許水準とすることとされた(1995年度から2000年度まで段階的に引き下げた。)。このような合意事項は,前記のモダリティ文書に記載されている。(乙10の2の添付資料2)豚肉の場合,この15%を削減するという合意に基づき,従量税は1kgにつき425円から361円(枝肉ベース)に,従価税は5.0%から4.3%に引き下げることとされた。また,分岐点価格についても,従量税の削減額と同額の1kgにつき64円削減し,1kgにつき553円から489円(枝肉ベース)に引き下げることとされた(別紙6「図面目録」記載④の図)。 (乙10の2)この豚肉についての譲許の内容を含む譲許表は,平成6年(1994年)4月15日に調印されたウルグアイ・ラウンド最終合意によるWTO協定の附属書1Aの一部となり,その後必要な国内批准手続を経て,同年12月28日付の官報で公告(乙10の2の添付資料3・同日付け官報)されている。 前記のとおり,この譲許表は,関税法3条ただし書により我が国において直接効力を有しており,関税の税率における上限を画するものとなっているが,後記(5)のとおり,関税暫定措置法でこの上限の範囲内で従量税部分の税率が修正されている(ステップ3)。 (5) ウルグアイ・ラウンド交渉における関係国との協議の結果に基づく自主的引下げ(ステップ3)さらに,ウルグアイ・ラウンド交渉における関係国との協議を踏まえて,ウルグアイ・ラウンド交渉で譲許した範囲内で従量税部分を自主的に引き下げることとされた。すなわち,別紙6「図面目録」記載⑤の図のとおり,まず,分岐点価格について,ステップ2(前記(4)参照)において譲許した1kgにつき489円から393円(枝肉ベース)まで更に き下げることとされた。すなわち,別紙6「図面目録」記載⑤の図のとおり,まず,分岐点価格について,ステップ2(前記(4)参照)において譲許した1kgにつき489円から393円(枝肉ベース)まで更に引き下げることとされた。 このように分岐点価格を引き下げたのは,関係国からの強い要請に応じるものであり,平成6年10月21日の内閣の閣議決定により決定され,関係国にその旨通報された(乙10の2の添付資料4・同日付け閣議決定案。この閣議決定案は同報告書添付資料5におけるWTO事務局から加盟国への回付内容と同内容であり,閣議決定案のまま閣議決定されている。)。このステップにおいて,分岐点価格1kgにつき393円(枝肉ベース)及び524円(部分肉ベース)から,逆算して,基準輸入価格409円90銭(枝肉ベース,393円/kg×(1+4.3/100))及び546円53銭(部分肉ベース,524円/kg×(1+4.3/100))が計算され,これが,現行の関税暫定措置法別表第1の3の2の基準輸入価格とされている。 さらに,分岐点価格の前後で課税後の価格が逆転しないように,別紙6「図面目録」記載⑤の図のとおり,分岐点価格ちょうどで輸入されるものの課税後の価格1kgにつき409円90銭(枝肉ベース)を基準輸入価格とし,分岐点価格以下で輸入されるものに課される従量税のうち基準輸入価格を超える部分は課さない仕組みとされた。 この自主的引下げについては,1994年(平成6年)12月27日付で,日本国政府から当時のGATT事務局に通報され,1995年(平成7年)2月16日付でWTO事務局から加盟国に回付されている(乙10の2の添付資料5)。 以上のとおり,豚肉の旧差額関税制度は,ウルグアイ・ラウンド交渉を経て,従量税と従価税との組合せによる関税とされ,平成7 6日付でWTO事務局から加盟国に回付されている(乙10の2の添付資料5)。 以上のとおり,豚肉の旧差額関税制度は,ウルグアイ・ラウンド交渉を経て,従量税と従価税との組合せによる関税とされ,平成7年4月から施行されている現行の本件差額関税制度となった。 以上 (別紙7)本件各更正処分等の根拠及び適法性 1 原告が納税すべき関税額について本件各更正処分等の対象となった本件各輸入(納税)申告は,すべて,P2製の冷凍豚部分肉(本件各輸入貨物)の輸入に係るものである。 本件各輸入貨物の価格については,P1が,P2と交渉して別表の⑥「真正単価」欄記載の真正単価を決定し,本件各輸入貨物の代金については,上記の真正単価に別表の⑦「合計重量(kg)」欄記載の貨物重量を乗じた金額が送金されていたから,上記の真正単価に上記の貨物重量を乗じた別表の⑪「真正関税課税標準額(円)」欄記載の価格が関税定率法4条1項にいう現実支払価格となり,本件各輸入貨物の課税価格ということになる。 上記の真正単価に基づき算出された現実支払価格に基づいて本件各輸入貨物について関税額を計算すると,別表の⑬「更正後関税額(円)」欄記載のとおりとなる。なお,税率については,第1項措置の発動期間内か否かで異なることから,以下,それぞれ具体例を挙げて説明する。 (1) 第1項措置の発動期間外(平成16年4月1日から同年7月31日までの間)の輸入(納税)申告のもの従量税適用限度価格は1kgにつき64.53円,基準輸入価格は1kgにつき546.53円,分岐点価格は1kgにつき524円である。 東京税関大井出張所長に対する平成16年4月1日付け輸入(納税)申告(申告番号11494767900)を例とすると,次のとおりとなる。 ア真正単価(別表の⑥欄) 24円である。 東京税関大井出張所長に対する平成16年4月1日付け輸入(納税)申告(申告番号11494767900)を例とすると,次のとおりとなる。 ア真正単価(別表の⑥欄) 300円/kg上記金額は,P2作成の請求書(インボイス)に記載された金額である。 イ関税率(別表の⑫欄) 246.5300円/kg上記金額は,真正単価1kgにつき300円と基準輸入価格1kgにつき546.53円との差額である。 ウ合計重量(別表の⑦欄) 2万7245.28kg豚肉の重量である。 エ更正後関税額(別表の⑬欄) 671万6700円上記ウの合計重量に,上記イの関税率を乗じ,関税法13条の4及び国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額である。 (2) 第1項措置の発動期間(平成15年8月1日から平成16年3月31日までの間及び平成16年8月1日から平成17年3月31日までの間)内の輸入(納税)申告のもの従量税適用限度価格は1kgにつき199.08円,基準輸入価格は,1kgにつき681.08円,分岐点価格は1kgにつき653.0009円である。 東京税関大井出張所長に対する平成16年1月28日付け輸入(納税)申告(申告番号11473574000)を例とすると,次のとおりとなる。 ア真正単価(別表の⑥欄) 580円/kg上記金額は,P2作成の請求書(インボイス)に記載された金額である。 イ関税率(別表の⑫欄) 101.0800円/kg上記金額は,真正単価1kgにつき580円と基準輸入価格1kgにつき681.08円との差額である。 ウ合計重量(別表の⑦欄) 税率(別表の⑫欄) 101.0800円/kg上記金額は,真正単価1kgにつき580円と基準輸入価格1kgにつき681.08円との差額である。 ウ合計重量(別表の⑦欄) 2万7041.30kg輸入(納税)申告した豚肉の重量であるエ更正後関税額(別表の⑬欄) 273万3300円上記ウの合計重量に,上記イの関税率を乗じ,関税法13条の4及び国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額である。 2 原告が納付すべき過少申告加算税について (1) 過少申告加算税の税率は,原則としては更正によって増加した関税額(納付すべき額)の10%である(関税法12条の2第1項)が,増差税額が過大である場合には,一定額を超える部分について,更に5%加重される。具体的には,増差税額が当初申告税額又は50万円のいずれか多い金額を超える場合には,当該超える部分の5%に相当する金額が加重される(同条2項)。 本件各輸入(納税)申告は,いずれも増差税額が当初申告税額及び50万円を超えることから,当該超える部分の5%に相当する金額が加重されることとなる。 本件各更正処分により新たに納付すべきこととなった関税額を基準に,過少申告加算税額を計算すると,別表の⑱「加算税合計額(円)」欄記載の金額となる。 (2) 具体的に,東京税関大井出張所長に対する平成16年4月1日付け輸入(納税)申告(申告番号11494767900)を例とすると,次のとおりとなる。 ア加算税10%(別表の⑮欄) 61万円上記金額は,関税法12条の2第1項の規定により,更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった関税額(ただし,同条5項の規定により読み替えて準用す ⑮欄) 61万円上記金額は,関税法12条の2第1項の規定により,更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった関税額(ただし,同条5項の規定により読み替えて準用する同法12条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に10%を乗じて計算した金額である。 イ加算税5%(別表の⑰欄) 27万4000円上記金額は,関税法12条の2第2項の規定により,更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった関税額のうち,当初申告税額を超える部分に相当する金額(別表の⑮欄。ただし,同条5項の規定により読み替えて準用する同法12条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に5%を乗じて計算した金額である。 ウ加算税合計額(別表の⑱欄) 88万4000円 上記金額は,上記アの金額と上記イの金額の合計額である。 3 本件各更正処分等の適法性(1) 本件各更正処分の適法性本件各輸入貨物に係る原告の納付すべき関税額は,前記1のとおり算出されるものであり,この金額は,別表の⑬「更正後関税額(円)」欄記載の税額のとおりであるところ,これらの金額は,いずれも本件各更正処分における金額と同額であるから,本件各更正処分はいずれも適法である。 (2) 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性上記(1)のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告は本件各輸入貨物に係る関税について,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,関税法12条の2第3項に規定する正当な理由は存しない。 したがって,本件各更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,前記2のとおり,関税法12条の2第1項,2項及び5 ていたことについて,関税法12条の2第3項に規定する正当な理由は存しない。 したがって,本件各更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,前記2のとおり,関税法12条の2第1項,2項及び5項の規定に基づき,関税について,本件各更正処分によって新たに納付すべきこととなった税額にそれぞれ上記規定に定める税率を乗じて算出されるものであり,この金額は,別表の⑱「加算税合計額(円)」欄記載の税額のとおりであるところ,これらの金額は,いずれも本件各賦課決定処分における金額と同額であるから,本件各賦課決定処分は,いずれも適法である。 以上 (別紙8)原告の主張第1 WTO農業協定4条2項の直接適用可能性 1 直接適用可能性の概念条約の「直接適用可能性」とは,要するに,「それ以上の措置の必要性なしに適用され得る」ということを意味する。 2 関税法3条ただし書によりWTO農業協定4条2項は直接適用されること(1) 関税法3条ただし書我が国は,関税に係る条約の直接適用に関し,国内法によって明確な規定を設けて,大方針を明確にしている。その国内法とは,関税法3条ただし書である。具体的には,同条は,「輸入貨物(信書を除く。)には,この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課する。ただし,条約中に関税について特別の規定があるときは,当該規定による。」と規定している。 したがって,条約中に関税について特別の規定があるときは,関税法3条ただし書により,当該特別の規定が我が国において直接適用されることになる。 (2) 関税法3条ただし書による譲許表の直接適用例えば,WTO協定には日本国の譲許表(端的にいうと,譲許表記載の水準を超えないように関税率を定めることに関する対外的約束であり,譲許表記載の関税 (2) 関税法3条ただし書による譲許表の直接適用例えば,WTO協定には日本国の譲許表(端的にいうと,譲許表記載の水準を超えないように関税率を定めることに関する対外的約束であり,譲許表記載の関税率を「譲許税率」という。)が設けられているところ,譲許表は「税率の所定の水準を超える税率の禁止」を定めるものであるがゆえに,税率に係る「特別の規定」(関税法3条ただし書)に該当する。 したがって,我が国の法律の定める関税率が譲許税率を超える場合,譲許税率が関税法3条ただし書によって直接適用されることにより,法律の定める関税率のうちの譲許税率を超える部分は無効となる。 (3) WTO農業協定4条2項は,関税法3条ただし書の「条約中の関税についての特別の規定」に該当すること関税法基本通達3-1は,「法3条ただし書≪条約による特別規定」に定める「関税についての特別の規定」とは,関税の税率のほか関税の軽減,免除,払い出しその他関税の賦課及び徴収に関しての国内法の規定に対する特別の規定をいう。」と定めており,関税の税率のほかに,賦課及び徴収を含めて,すべてにわたる適用があるとしている。 そして,WTO農業協定4条2項の内容は,端的にいうと「課税標準及び税率を同項記載の禁止の制度に該当しないよう定めることの対外的約束」であり,「課税標準設定及び税率設定の禁止枠組み」を定めるものであるから,関税法3条ただし書の「特別の規定」に該当する。 (4) WTO協定の関税法3条ただし書による直接適用に関する日本国政府の見解ア日本国政府は,これまでに,WTO協定に関する直接適用について,公式な見解を示している。 イまず,日本国政府が示した公式な見解で最も重要なものは,アンチダンピング委員会におけるわが国政府の見解G/ADP/Q1/JPN/6( TO協定に関する直接適用について,公式な見解を示している。 イまず,日本国政府が示した公式な見解で最も重要なものは,アンチダンピング委員会におけるわが国政府の見解G/ADP/Q1/JPN/6(甲30)であり,これは,在ジュネーブ国際機関日本政府代表部が,1996年7月29日,韓国が発した質問に対して提出した回答であって,「WTO協定18条5項および32条6項に従って行う法令規則の通告」と題する文書である。 この文書において,「我が国の関税法は,WTO協定の規定は直接適用可能である(canbedirectlyapplied)と確認している。仮に抵触があれば,WTO協定が国内法に優越する」との見解を表明している。 ウまた,財務省の関税課長は,関税・外国為替審議会関税分科会企画部会(平成26年8月5日)において,関税法3条ただし書について,「同3 条ただし書の規定に基づきまして,経済連携協定等といった条約中に関税についての特別の規定があるときは,これら条約中の規定を直接適用して関税を課すこととされてございます。」と述べている。 エ財務省ホームページでは,関税法3条ただし書についての質問に対し,「WTO協定等の条約において輸入者等の権利義務及び関税率適用のための課税要件が明確であり,国内法の規定を整備することなくその適用が可能なものについては,関税法第3条ただし書により条約の規定を適用されることとされております。したがいまして,この場合の条約の規定については,同時に国内法たる性質を持つものであると解されます。」との返答がされている。 オ以上によれば,WTO農業協定4条2項が関税法3条ただし書によって我が国において直接適用されるという原告の主張は,まさに,日本国政府が明言して公表している取扱いと全く合致する。 ている。 オ以上によれば,WTO農業協定4条2項が関税法3条ただし書によって我が国において直接適用されるという原告の主張は,まさに,日本国政府が明言して公表している取扱いと全く合致する。 3 条約の直接適用可能性の基準(要件)関税法3条ただし書によって,「条約中の関税についての特別の規定」に該当すると言っても,直接適用可能性がないような条約の規定がある場合に,それもが直接適用されるわけではない。当然のことながら,直接適用するのにふさわしい規定でなければ直接適用することができないからである。 そして,条約の直接適用可能性は,主観的基準と客観的基準から判断する必要がある。 4 条約の直接適用可能性についての主観的基準(1) 直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国による私人の権利義務の創設の意思は必要ではないこと直接適用可能性が認められるための主観的基準として,条約締結国による私人の権利義務の創設の意思が必要であるという考え方は,直接適用される場面をあまりに狭く限定しすぎるという点と個人の権利義務を創設していな くても直接適用されている条約が現に存在することを説明できないという点で問題がある。 特に後者については,譲許表による譲許税率を考えれば分かり易い。すなわち,譲許表とは,譲許表記載の水準を超えないよう関税率を定めることの対外的約束であって,何らかの個人の権利義務を創設するものではないから,もし主観的要件として個人の権利義務の創設の意思が必要であるとの立場をとってしまうと,譲許表は主観的要件を欠き直接適用可能性がないとの結論が導かれてしまうが,実際には,譲許表については直接適用可能性が認められている。 (2) 直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国が直接適用することを積極的に意図したことは必要では いとの結論が導かれてしまうが,実際には,譲許表については直接適用可能性が認められている。 (2) 直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国が直接適用することを積極的に意図したことは必要ではないことア次に,直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国が直接適用することを積極的に意図したことは不要である。 イまず,直接適用可能性の主観的基準として,直接適用についての条約締結国の積極的意図を要求してしまうと,このような積極的意図がない条約は,直接適用可能性がないということになってしまうところ,例えば,特に多国間条約については,この条約は直接適用可能であるという積極的な当事国の意思が条約の中で明示されることはほとんどなく,条約の「準備作業」を調べてみても,特に多数国間条約の場合は,そのような当事国の意思が見いだされることはほとんどないし,条約の個々の規定についても,それが直接適用可能であるという積極的な当事国の意思が出されることはほとんどないことから,直接適用可能であるという積極的な当事国の意思を厳格に要求すると,ほとんどの条約(規定)は直接適用可能ではないことになってしまう。 ウこのような見解に対しては,WTO協定の中でも直接適用を義務付けている附属文書がある(GATSなど)という反論が予想されるものの,直 接適用を義務付けることを明示していることと,直接適用可能ではないということとの間には大きな差がある。すなわち,当事国が条約の直接適用を排除する否定的な意思を条約の中で明示した場合について,条約の当事国は,特定の国内的実施の方法を規定し,条約の直接適用可能性を否定することもできる。条約自体が当事国の意思に基づいて成立するのであるから,当事国のこのような意思も尊重される必要があり,そうでなければ,条約が直接適用 実施の方法を規定し,条約の直接適用可能性を否定することもできる。条約自体が当事国の意思に基づいて成立するのであるから,当事国のこのような意思も尊重される必要があり,そうでなければ,条約が直接適用されることを望まない国家はそもそも条約を締結しないということになってしまう。 エ条約の直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国が直接適用することを積極的に意図したことが必要であるという立場に立つと,ある国が,かかる積極的意図が認められない条約について,条約の直接適用,すなわち,条約違反の国内状態について,国内司法機関が是正を行った場合,当該国の処理は条約の使い方を誤っているとの認定を招くことになってしまう。 しかしながら,各国の憲法秩序,国内法秩序は多様であり,条約の国内完全実施をどのように実現するかは,各国の主権の問題である。そして,条約締結時に,条約の国内完全実施の方法について,直接適用の方法によることを明示的に排除していないのであれば,当然,条約締結国の一つが,直接適用の方法によって国内完全実施を行うことも,主権の行使方法として許されるべきものである。 したがって,直接適用可能性の主観的基準として,直接適用についての積極的意図を要求する見解は,結果として,他国の主権行使を不当に制約することになり,採ることができない。 (3) 条約が国内において直接適用可能かを決定するのは国内法であることア結局のところ,各国ごとの是正方法(これはすなわち主権の行使である。)を尊重するためには,「(条約中に直接適用可能性の排除が明示されない限 り)原則として直接適用可能性は認めた上で,各々の国に,直接適用を排除する国内法制を採用するか否かの選択肢を与える」と解する以外に,整合性ある解釈論を構成することはできない。 イ WTO協定 り)原則として直接適用可能性は認めた上で,各々の国に,直接適用を排除する国内法制を採用するか否かの選択肢を与える」と解する以外に,整合性ある解釈論を構成することはできない。 イ WTO協定もそうであるが,二国間協定はいざ知らず,多国間協定の場においては,締約当事国の関心は,条約が完全に実施されることにだけある。 すなわち,各国ごとに憲法秩序,国内法秩序は異なる,ということが当然の前提となっているため,条約が国内でどのように実施されるかということについて,締約当事国には関心がないのが通常である。 つまり,条約の直接適用可能性についての主観的基準として,直接適用についての積極的意思なるものを要求する見解は,現在の多国間条約締結交渉の実態をそもそも無視した机上の空論という他はない。 (4) 直接適用可能性についての主観的要件の総括前記(3)アで述べたとおり,条約の国内における完全実施の方法について各国の主権を尊重するには,「(条約中に直接適用可能性の排除が明示されない限り)原則として直接適用可能性は認めた上で,各々の国に,直接適用を排除する国内法制を採用するか否かの選択肢を与える」と解する以外に,各国それぞれの主権と整合する解釈論を構成することはできない。そして,かかる解釈論を採用した場合,条約の直接適用可能性の主観的基準は,① 条約締結国の総意として直接適用可能性を排除しているのか否かと,② 当該国が直接適用を排除する国内法制を採用する意思を有するか否かがメルクマールとなる。 すなわち,ある条約が,ある国において,直接適用可能性が認められるための主観的基準を整理して述べれば,条約締結国の総意として,直接適用可能性を排除していないこと,及び,当該国において,当該条約の直接適用可能性を排除する国内法制採用の意思がないことの が認められるための主観的基準を整理して述べれば,条約締結国の総意として,直接適用可能性を排除していないこと,及び,当該国において,当該条約の直接適用可能性を排除する国内法制採用の意思がないことの2つとなる。 (5) WTO農業協定4条2項について条約締結国の総意として直接適用可能性を排除していないことア WTO農業協定4条2項につき,直接適用可能性についての主観的基準のうち,直接適用可能性を排除するという条約締結国の総意はない。 (ア) 「関税と貿易に関する一般協定」(以下「GATT」という。)及びその発展的解消であるWTO協定は,第二次世界大戦が各国のブロック経済の採用によって起こったことの反省として生み出された自由貿易体制を目指すものであって,WTO協定そのものには,これを各国が積極的に遵守することを奨励こそすれ,抑圧する契機は存在し得ない。 したがって,WTO協定そのものは,各国が国内の条約違反状態の是正を,立法機関,行政機関だけではなく,司法機関によっても行うことを奨励こそすれ,排除するものではないところであり,実際,WTO協定内に,国内司法機関による是正を排除する旨の条項は存在しない。 (イ) また,WTO農業協定4条2項は,GATT時代になしえなかった農業分野での完全関税化を実現したものであり,WTO農業協定の要というべき条項であって,WTO農業協定の中でも,特に各国の遵守が求められる規定として位置付けられる。 特にWTO農業協定4条2項の(注)で列挙された最低輸入価格制度,可変課徴金等の個別の制度は,WTO農業協定締結時にこれを採用する国が存在したため,各個別の制度を厳に禁止する趣旨でわざわざ個別に制度を列挙して掲名したものであり,世界貿易機関(以下「WTO」という。)体制の下では絶対的に禁止され 農業協定締結時にこれを採用する国が存在したため,各個別の制度を厳に禁止する趣旨でわざわざ個別に制度を列挙して掲名したものであり,世界貿易機関(以下「WTO」という。)体制の下では絶対的に禁止されるべきものである。 したがって,WTO農業協定4条2項は,同項違反という条約違反状態の是正を,ある国が,立法機関,行政機関だけではなく,司法機関によっても行うことを奨励こそすれ,排除するものではない。 (ウ) さらに,WTOは,GATTよりも実効性の高い紛争解決制度を用 意しており,WTOはGATT以上にWTO協定を各国が遵守するための体制強化を図っているところである。それゆえ,各国が自主的にWTO協定違反の国内状態を是正することは,上記のようなWTOの目的に合致こそすれ,反するものではない。 この点については,WTOの紛争解決制度の存在(及びその前提としての加盟国間での協議,交渉による解決の予定)をもって,WTO協定違反の是正方法はこの紛争解決制度(ないし,その前提としての加盟国間の協議,交渉)の利用に限定されるかのような考え方もある。 しかしながら,WTO協定における紛争解決制度(ないし,その前提としての加盟国間の協議,交渉)は,WTO協定違反についての「国家間」の紛争を解決する場というだけのことであって,それ以上でも,以下でもない。すなわち,この紛争解決制度(ないし,その前提としての加盟国間の協議,交渉)は,WTO協定違反を自国で自覚していても,他国の指摘をうけるまで条約違反状態を放置することを許容するというシステムではない。 また,この紛争解決制度(ないし,その前提としての加盟国間の協議・交渉)の存在は,ある国が,立法機関,行政機関が是正しないWTO協定違反の国内状態を,司法機関によって自主的に是正するという主権の行使 た,この紛争解決制度(ないし,その前提としての加盟国間の協議・交渉)の存在は,ある国が,立法機関,行政機関が是正しないWTO協定違反の国内状態を,司法機関によって自主的に是正するという主権の行使について,何か制約をもたらすものでもない。 このように,紛争解決制度の存在は,WTO協定の直接適用可能性を排除するという機能を持たないのである。 イ以上のとおり,WTO農業協定4条2項には,直接適用可能性を排除するという締約国の総意は認められない。 (6) 我が国においてWTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する国内法制採用の意思がないことア WTO農業協定4条2項の直接適用可能性に係る主観的基準に関し,我 が国において,同項の直接適用可能性を排除する国内法制採用の意思はない。 イ我が国は,憲法98条2項で国際協調主義を定め,かつその前文においても「国際社会において名誉ある地位を占めたい」と宣言しているように,また,条約と法律とでは条約の方が優先するとの公定解釈が存在しているとおり,そもそも,条約についての直接適用可能性を排除するという国内法制を採用していない。 ウまた,関税法3条ただし書にあるとおり,関税に関する特別の条約規定を直接適用する旨の定めまであり,むしろ,関税に関する事項については,条約についての直接適用可能性を積極的に認めていこうとする国内法制を,我が国は採用している。 エさらに,我が国は,WTO協定の規定に適合していない各国の制度を不公正貿易報告書として発行して国内外に訴え,各国に対しWTO協定の遵守を求めていく,ということを通商政策の柱としており,かかる通商政策を説得力あらしめるため,WTO協定の規定の直接適用可能性を排除する国内法制は採り得ないという状況にもある。 オ加えて,実際問題とし 求めていく,ということを通商政策の柱としており,かかる通商政策を説得力あらしめるため,WTO協定の規定の直接適用可能性を排除する国内法制は採り得ないという状況にもある。 オ加えて,実際問題として,我が国には,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する国内法制は存在しない。 カ以上のとおり,我が国は,そもそも条約全般について直接適用可能性を排除するという法秩序は採用しておらず,また,関税に係る事項については,むしろ積極的に直接適用可能性を認めようとする関税法3条ただし書を用意しているのであり,さらに,通商政策上もWTO協定の直接適用可能性を排除する国内法制を取りにくい政策を採用しており,加えて,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する国内法制が我が国には存在しない以上,我が国には,WTO農業協定4条2項について,その直接適用可能性を排除する意思は存在しないというべきである。 (7) 小括以上のとおりであるから,WTO農業協定4条2項は,直接適用可能性についての主観的基準を満たしている。 5 条約の直接適用可能性についての客観的基準(1) 明確性ア条約の規定が明確でなければ,直接適用可能性はない。例えば,一般的抽象的な概念を含んでいる条約条項は,直接適用され得ない。 イこの点,WTO農業協定4条2項についてみるに,そこでいう「通常の関税」とは定率関税及び定額関税のことであり,また,「最低輸入価格」とは,一般に輸入産品の輸入価格と特定の価格限界との差額を関税額とするものであって,当該特定の輸入産品が当該価格限界を下回って国内市場に侵入することのないようにする措置であるから,これらの内容は自明であり,疑義を挟む余地はない。その他「これに類する」の解釈については,本件では主として最低輸入価格が問題 価格限界を下回って国内市場に侵入することのないようにする措置であるから,これらの内容は自明であり,疑義を挟む余地はない。その他「これに類する」の解釈については,本件では主として最低輸入価格が問題となる以上,少なくとも本件には関係がないし,関係があるにしても,「解釈」によって判断することは法の適用に関する通常の手段であり,「一義的に解釈を示す」ことができないということはありえない。 (2) 完全性次に,条約が直接適用可能性を有するためには,客観的基準として,条約条項の完全性が必要となる。条約の執行に必要な機関や手続についての定めがなければ,実際上直接適用されることは困難であるから,ここでいう完全性とは,条約の執行に必要な機関や手続が定められているという意味である。 そして,条約の執行に必要な機関や手続に欠けるか否かは,各国ごとに補足的措置がとられているか否かによるから,条約の条項が完全であるか否かは国ごとに異なることになる。 我が国について,WTO農業協定4条2項の執行に必要な機関や手続が定 められているかについてみるに,機関としては税関があり,手続は関税三法が詳細に定めているのであるから,WTO農業協定4条2項は完全性に欠けるところはない。そもそも,関税法3条ただし書があることそれ自体が,そのような完全性の裏付けがあることを初めから前提としているところである。 (3) 小括以上のとおりであるから,WTO農業協定4条2項という条約条項は,直接適用可能性についての客観的基準を満たしている。 6 被告の主張に対する反論等(1) アメリカ合衆国(以下「米国」という。)とヨーロッパ共同体(以下「EU」という。)がそれぞれの国内法秩序に従ってWTO協定の国内(域内)の直接適用を認めていないことは,我が国において直接適用を 1) アメリカ合衆国(以下「米国」という。)とヨーロッパ共同体(以下「EU」という。)がそれぞれの国内法秩序に従ってWTO協定の国内(域内)の直接適用を認めていないことは,我が国において直接適用を認めない理由とならないことア他国の事情が影響を与えないこと米国及びEUにおいてWTO協定は直接適用されていないから,我が国においても裁判所がWTO協定に直接適用可能性を認めて外交交渉の手足を縛るべきでないといういう考え方もあるが,直接適用可能性は,それぞれの国の憲法秩序(米国の場合)ないし共同体法秩序(EUの場合)の問題であって,外交交渉の手足を縛るとか縛らないとかの判断は,我が国の憲法秩序を揺るがす理由とはなり得ない。 また,日本国憲法の前文には「国際社会において名誉ある地位を占めたい」という理念が示されている。そうである以上は,この理念の体現を,他国の法秩序のあり方との比較によって妨害するようなことがあってはならない。 さらに,事柄は,罪刑法定主義の問題であり,基本的人権に関わるものであるから,そもそも外交交渉の有利不利といった程度の理由により,個人の罪責を問う,問わないなどということの判断が左右されるべきではな い。 したがって,裁判所が,国際交渉における利益不利益を考慮すること自体が,行政府及び立法府の権限に属する判断をしていることであって,職域を超えており,これこそがむしろ権力分立の理念に違背するというべきである。 イ我が国の通商政策我が国は,諸外国に対しWTO協定や経済協定等の国際ルールの遵守を求めるという通商政策を採用している。そして,そのことを国内外に示すために,我が国は,毎年,「不公正貿易報告書」を作成し,WTO協定や経済協定等の国際ルールの遵守の確保を訴え続けている。すなわち,我が国は, う通商政策を採用している。そして,そのことを国内外に示すために,我が国は,毎年,「不公正貿易報告書」を作成し,WTO協定や経済協定等の国際ルールの遵守の確保を訴え続けている。すなわち,我が国は,特定国との貿易に関し自国に不利な結果が生じていることだけを理由にして,相手国が適用する政策,措置を非難するということは決して行わず,常に,WTO協定を基本とする国際ルールに違反しているということを根拠にして,相手国が適用する政策,措置を非難するという方針を採用してきたのである。 このように,相手国に対してルールの遵守を求めるというのが我が国の基本スタンスなのであるから,その通商政策を実効あらしめるため,すなわち,我が国が行う相手国に対する非難を説得力あらしめるためには,その大前提として,我が国自身がその国際ルールを守るということが必要になる。 もし,米国やEUにおいて直接適用が否定されている以上,WTO協定の義務履行に著しい不均衡を生じるおそれがあるので,WTO協定の直接適用は否定するなどという上記通商政策に反する立論を示すとすると,諸外国に,「日本政府は,他国に対しては国際ルールの遵守と言っているけれども,自国では,これを守らないことにお墨付きを与えているではないか」とつけ込ませる格好の材料を与えるもので,むしろ逆に通商交渉にお ける我が国の交渉力を大幅に削ぐということになりかねない。我が国が国民の最善の利益に繋がるよう,高邁な理念を持って通商政策を展開しているにもかかわらず,それを根幹から揺るがすこととなる結果を導く結論を裁判所が示すとすると,これこそは行政の裁量権行使に対する司法による悪しき浸食である。三権分立の原則に鑑みても裁判所がそのような判断を示すことはできないと言わなければならない。 ウ東京高等裁判所平成25年1 とすると,これこそは行政の裁量権行使に対する司法による悪しき浸食である。三権分立の原則に鑑みても裁判所がそのような判断を示すことはできないと言わなければならない。 ウ東京高等裁判所平成25年11月7日判決及び最高裁判所平成26年3月28日決定の理解(ア) 上記ア及びイからすると,東京高等裁判所平成25年11月7日判決(以下「東京高裁平成25年判決」という。)は,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性についての判断を誤ったものというべきである。 (イ) まず,そもそも,東京高裁平成25年判決は,関税法3条ただし書について触れるところがなく,これは適用すべき法令について誤ったものではないかと考えられる。 また,東京高裁平成25年判決については,① 我が国は,WTOのアンチダンピング委員会において,「我が国の関税法は,WTO協定の規定は直接適用可能である(canbedirectlyapplied)と確認し,仮に抵触があれば,WTO協定が国内法に優越する」との見解を1996年に表明していること,② 関税法3条は,輸入貨物への課税に関し,「ただし,条約中に関税について特別の規定があるときは,当該規定による」と定めていること,③ 差額関税も関税法および関税定率法に基づいて徴収されるものであることから,我が国の公的見解からすると関税法3条によりWTO協定との抵触が問題となる可能性は残ると思われることなどを指摘され,批判されている。 (ウ) 次に,東京高裁平成25年判決の上告審である最高裁判所平成26年3月28日決定(以下「最高裁平成26年決定」という。)について は,仮に最高裁判所が,東京高裁平成25年判決と同じく関税法3条ただし書の存在に気が付かないまま,憲法98条2項に照らしてWTO農業協定4条2項の直接適用について否 決定」という。)について は,仮に最高裁判所が,東京高裁平成25年判決と同じく関税法3条ただし書の存在に気が付かないまま,憲法98条2項に照らしてWTO農業協定4条2項の直接適用について否定したとすると,本来,最高裁平成26年決定においては,上告人の憲法98条2項違反をいう主張に対し,「憲法98条2項違反をいう点は,……であるから,前提を欠き」との記載がなされる性質のものであると思われるところ,最高裁平成26年決定は「上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張」とするのみである。 そうすると,最高裁平成26年決定を,「東京高裁判決が示した農業協定4条2項は直接適用されないとの結論を支持するものである」と理解することは誤解であるように思われる。最高裁平成26年決定は,東京高裁平成25年判決について,「適用法条の誤りがあるに過ぎないのであるから上告理由にはならない」と述べているだけのことであると理解されるように思われるからである。 エ小括以上のようなことであるから,米国とEUがそれぞれの国内法秩序に従ってWTO協定の国内(域内)適用を認めていないことは,我が国において直接適用を認めない理由となり得ない。 (2) 三権分立,国内法制の状況等を理由にWTO農業協定4条2項の直接適用を否定する主張は失当であること被告において,「我が国の三権分立の在り方や国内法制の状況等から検討すると,WTOは加盟国の利益の均衡に基づいて貿易自由化を推進する多国間条約体制であるという性格を有するものであるから,我が国国内におけるWTO協定の実施の在り方においては,各加盟国の多様な政策判断や我が国の国内情勢等を総合考慮する必要がある。」という主張がされることも想定される。 しかしながら,このような言明について るWTO協定の実施の在り方においては,各加盟国の多様な政策判断や我が国の国内情勢等を総合考慮する必要がある。」という主張がされることも想定される。 しかしながら,このような言明については,仮にそれを支持するとしても,そうであるからといって,関税法3条ただし書において直接適用が明定されていることを無視する理由にはなり得ず,ましてやその帰結として個人の罪責を問う結果となることを許すものではあり得ない。 「加盟国の利益の均衡」とか「多様な政策判断」とか「我が国の国内情勢等」といった程度のあいまいな理由によって,罪刑法定主義を蔑ろにしたり,個人の基本的人権が蹂躙したりされることが許されるものではない。 (3) 国会又は政府の裁量権を理由に,WTO農業協定4条2項の直接適用を否定する主張は失当であること被告において,「どの品目についてどのような関税制度を設けるかは柔軟に決定することが必要であり,こうした役割を最適に果たし得るのは国会又は政府であって,その柔軟な意思決定を可能にするために国会又は政府に広範な裁量権を与えることが相当である。」という主張がされることも想定される。 しかし,我が国は,そのような裁量権に基づいてWTO協定を締結し,国会はこれを承認しているところ,WTO農業協定4条2項は,その重要な中身を構成する条約条項である。そうすると,右裁量権行使の結果として,現在のWTO農業協定4条2項があるということである。 また,我が国の政府は,WTO協定の締結前に,関税法3条ただし書を国会に提出し,国会はこの法条を可決成立させていた。つまり,政府は,ウルグアイ・ラウンドの交渉を続けている経過において,関税法3条ただし書が既に長年にわたって施行されていることを十分に意識していたのであり,また,この交渉中,この条項が廃 せていた。つまり,政府は,ウルグアイ・ラウンドの交渉を続けている経過において,関税法3条ただし書が既に長年にわたって施行されていることを十分に意識していたのであり,また,この交渉中,この条項が廃止されることが想定される状況にもなかったということには特に注意しなければならない。 このように,我が国の政府及び国会は,その裁量権の行使により,関税法3条ただし書を存置しつつ,WTO農業協定4条2項という条約条項の締結,承認を行っていたのであり,我が国の憲法秩序は条約優位なのであるから, 政府,国会に裁量権があると言っても,自らが意思決定した条約条項に基づく義務に違背する法律を成立,施行,適用する裁量までもが,政府及び国会に与えられているわけではないから,「柔軟に決定する必要」があるとしても,WTO農業協定4条2項に明白に違反するような内容を法定する裁量権は,政府にも国会にもないのである。 以上によれば,関税法3条ただし書があるにもかかわらず,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性を否定するということは,結局のところ,既に国会の議決を経た条約条項であって,かつ,直接適用しなければならないことが法律上も明示されているものについて,裁判所がこれを裁判規範として使ってはならないということと同じであり,相当ではない。 7 直接適用可能性に関する結論以上によれば,WTO農業協定は,我が国において直接適用可能性を有しており,法律の定める関税の仕組みがWTO農業協定4条2項で禁止される制度に該当する場合,同項が直接適用されて,当該仕組みが無効化されるのである。 第2 本件差額関税制度は農業協定4条2項に違背すること 1 本件差額関税制度は,通常の関税に該当しないこと「通常の関税」とは,従量税,従価税又はその組合せをいうところ,本件 化されるのである。 第2 本件差額関税制度は農業協定4条2項に違背すること 1 本件差額関税制度は,通常の関税に該当しないこと「通常の関税」とは,従量税,従価税又はその組合せをいうところ,本件差額関税制度のうちの関税として基準輸入価格と課税価格の差額を課すという部分は,従量税率でもなければ,従価税率でもないから,上記の部分は,「通常の関税」ではなく,「通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置(注)も維持し,とり又は再びとってはならない。」と定めるWTO農業協定4条2項に違背する。従量税が適用になる部分の税率の引下げが自主的に行われたものであったとしても,従量税であったものが従量税でなくなったとすれば,その関税は,従量税,従価税又はその組み合わせではなくなり,通常の関税ではないということになる。 なお,WTO協定の一部である我が国の譲許税率表には,関税として基準輸 入価格と課税価格の差額を課すという部分に関する記載は一切ないのであって,当該部分は従量税率がそのまま適用される表現になっている。したがって,現行の本件差額関税制度は,日本国の譲許表と異なっており,外見的にも実際的にも我が国は国際的に二枚舌を使った結果となっている。 2 本件差額関税制度は最低輸入価格又は可変輸入課徴金に該当すること(1) WTO農業協定4条2項は,可変輸入課徴金や最低輸入価格を禁止している。① 可変輸入課徴金とは,基準価格(境界価格)と国際価格(輸入価格)との差額を調整金として徴収するものであり,国際価格が変動すると調整金の額も変動するために,可変輸入課徴金という呼称が与えられる。EU(欧州連合)は,ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて可変課徴金を廃止して,一般関税に移行したことは周知のとおりである。また,② 最低輸 の額も変動するために,可変輸入課徴金という呼称が与えられる。EU(欧州連合)は,ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて可変課徴金を廃止して,一般関税に移行したことは周知のとおりである。また,② 最低輸入価格とは,一般に輸入産品の輸入価格と特定の価格限界との差額を関税額とするものであって,当該特定の輸入産品が当該価格限界を下回って国内市場に侵入することのないようにする措置である。 (2) 本件差額関税制度は,課税価格と基準輸入価格の差額を関税として賦課するというものであり,基準輸入価格が特定の価格限界としての機能を有していることからすると,WTO農業協定4条2項の(注)が,特に掲名して禁じている最低輸入価格に該当することは明らかである。 すなわち,1995年にWTOが発足し,新たにWTO農業協定によって農産物についても関税化が導入されるまでは,我が国では海外の安い豚肉の輸入により畜産農家が損害を受けないように,国内価格を参考にして基準価格を設け,輸入肉がこれより低い価格で輸入されるときは,基準価格との差額を関税として徴収することによって,輸入肉が国内市場に出る時は国内産肉と競争関係に立つように操作されていた。これが農業産品の関税化を規定したWTO農業協定4条2項の(注)が禁止する輸入数量制限,可変輸入課徴金,最低輸入価格,裁量的輸入許可等のうち可変輸入課徴金ないし最低輸 入価格に当たるとされることを予期して,対策として考案されたのが,従量税による関税化による譲許を得た上,これを一方的に一定額まで免除して実質的に従前の差額関税制度を維持するという解決策であったことは明らかである。 そして,関税化に当たって従価税とするか従量税とするかはWTO加盟国が自由に決められることであり,譲許表に記載すれば特に他の加盟国から異議が出て交渉の対 という解決策であったことは明らかである。 そして,関税化に当たって従価税とするか従量税とするかはWTO加盟国が自由に決められることであり,譲許表に記載すれば特に他の加盟国から異議が出て交渉の対象とならない限り,そのまま承認される。我が国が提示した1kgにつき482円という従量税はそのままでは極端に高い国内価格をもたらすことになるため,豚肉輸出国の反発を招くのみならず,国内的にも実行不可能である。そこで,基準価格を超える税額を免除するということで関係国の了承を得たとされているが,結果は従前の制度とほとんど異ならないこととなった。 (3) 本件差額関税制度には,わずかながら従量税となっている部分はあるものの,部分肉の輸入価格が1kgにつき64.53円以下の豚肉などはあり得ないことであって,輸入実績も皆無であるのであるから,従量税部分の存在を理由として本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項の(注)に規定された最低輸入価格に該当しないなどということはできない。 (4) そうすると,本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項に違背することが明らかである。 これは,平成12年農林水産省文書「WTO農業交渉の課題と論点」や農林水産省食肉鶏卵課長による「わが国における最近の食肉需給動向と今後の見通し」という講演の講演録が収録された「自由化後の牛肉流通食肉研究会編」において,本件差額関税制度がWTO農業協定が締結される以前の差額関税制度を維持又は復活したものであると述べられていることからも明らかである。 (5) そして,我が国の実定法秩序において,条約は法律に優越するから,関税 暫定措置法の定める本件差額関税制度のうち,関税として基準価格と課税価格の差額を課すとする部分の規定は,WTO農業協定4条2項に違背するのであるから,無効であ 条約は法律に優越するから,関税 暫定措置法の定める本件差額関税制度のうち,関税として基準価格と課税価格の差額を課すとする部分の規定は,WTO農業協定4条2項に違背するのであるから,無効である。 3 被告の主張に対する反論等(1) 現行の本件差額関税制度がWTO協定の発効後も残存していることがWTO協定農業協定に違反しないことを意味しないことア WTO農業協定4条2項に違反する本件差額関税制度が,同項の発効後も残存できたのは,当時の農水省による国内外に対する欺罔的説明がされたからである。 イ GATTウルグアイ・ラウンドにおいて食肉類についての交渉に当たった当時の担当官である食肉鶏卵課長は,講演資料として使用された別紙6「図面目録」記載⑥の4つの図により,自分がいかにして各国の担当者を欺罔して,廃止したはずの豚肉の差額関税制度を復活させたかを詳しく説明している。 (ア) 上記の4つの図のうちの左上の図が,GATTウルグアイ・ラウンド交渉が妥結するまでに施行されていた豚肉の差額関税制度であり,1993年当時の分岐点460円よりも低い価格で輸入された豚肉は,すべて差額関税の下にあった。 ところが,このような差額関税制度は,1kgにつき482.5円を最低輸入価格とする最低価格輸入制度以外の何ものでもあり得ない。これはGATTウルグアイ・ラウンドの合意の禁じるところである。認められるものは,従価税率か,従量税率か,それらの混合でしかない。 (イ) そこで,当時の農林水産省が考えて我が国の譲許税率表として提出したものは,前記の4つの図のうちの左下の図のような従価税率と従量税率の組合せであった。なお,譲許税率とは,関税についてはここまで引き下げるという国際約束のことを言う。 (ウ) 我が国の譲許表もWTO協定の不可分 図のうちの左下の図のような従価税率と従量税率の組合せであった。なお,譲許税率とは,関税についてはここまで引き下げるという国際約束のことを言う。 (ウ) 我が国の譲許表もWTO協定の不可分の一部であり,従って,国際条約であり,憲法98条2項に従って遵守する義務を負うものである。 (エ) しかしながら,前記の左下の図に見るように,譲許税率表を図に直して見ると,不自然なぎざぎざがある税率構造になってしまう。 (オ) そこで,農林水産省は,前記の4つの図のうちの右下図のように従量税部分の突出した部分を切り取って,なめらかな折れ線グラフにするという説明を編み出した。切り取った部分については,譲許税率表よりは関税負担が減少しているのであるから,国際条約に違反したことにはならないという説明がつけられている。 ウところが,上記のような説明は,単なる詭弁でしかない。すなわち,減税であろうとなかろうと,結果として生じている折れ線グラフのフラットな部分は,WTO農業協定4条2項の(注)が明文で禁じている最低輸入価格となっている。あるいは少なくとも,同項本文のいう「通常の関税」ではない。すなわち,説明の仕方をどのように工夫しようとも,本件差額関税制度は結果としてWTO農業協定4条2項違反なのである。しかも,同項本文の末尾には,わざわざ「又は再びとってはならない。」とまで記されているところである。 エそもそも,譲許税率表に示した従量税の定め方が,あらかじめ差額関税部分を生じてしまうような税率であって,左下図のぎざぎざを生じてしまうようなことを仕組むから,このような減税という説明をすることが可能になるのである。当初から,きちんとした従量税率の定め方をしておけば,ぎざぎざを生じる必要もなく,そうすればぎざぎざを取るために減税をする必要もなく, から,このような減税という説明をすることが可能になるのである。当初から,きちんとした従量税率の定め方をしておけば,ぎざぎざを生じる必要もなく,そうすればぎざぎざを取るために減税をする必要もなく,減税をした結果として最低輸入価格制度を作出するという事態にはならなかったのである。 オなお,現在では,このような差額関税制度があるのも,豚肉ただ一つについてのみである。 このことは,本件差額関税制度が,いかに異常な関税であり,決して「通常の関税」の範疇には入らないことを示す証左でもある。 (2) WTO加盟国に対する通知はWTO農業協定4条2項違反の瑕疵を治癒するものではないことア譲許表記載の関税からその一部を免除した実行税率への変更については,我が国の政府からWTOに報告がなされ,1995年2月28日付けでWTO加盟国に対する通知(以下「本件通知」という。)もされている。 イ本件通知は,1994年12月27日に我が国の政府代表部からGATT事務局に提出され,WTO協定成立後の1995年2月16日付けで一定範囲に配布されたことが窺える「L/7621」と題されるGATTの頭書がある書面であると考えられるところ,そこでは,「ゲート・プライス」を将来引き下げることが約されているとともに,そのゲート・プライスより低い価格による輸入豚肉については,譲許関税額を超えない従量税(specificduty)を課すると述べられているだけで,具体的な適用税率については何も述べていない。実際問題として,その内容を具体的な「税率」として表示することは不可能で,「ゲート・プライスと輸入価格の差額に相当する関税」と言わざるとえず,これは従量税として正確に表示できない性質のものである。 また,本件通知のもととなったのは,P7駐米大使からP8通 不可能で,「ゲート・プライスと輸入価格の差額に相当する関税」と言わざるとえず,これは従量税として正確に表示できない性質のものである。 また,本件通知のもととなったのは,P7駐米大使からP8通商代表に提出されたとされる書簡の「附属書2:豚肉に関する措置」のようであるが,その(5)には,「1994年の関税及び貿易に関する一般協定に付属する日本国の譲許表に規定されている適用のある関税率よりも高くない税率の従量税を適用する」と記載されており,WTOに提出されたとされる上記書面はその翻訳と見て取れる。このP7大使の書面は平成6年10月21日閣議決定案「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定に付属される農業に関する協定の実施に関連する我が国政府の措置等について」と題する 書面に付された別紙1とされているので,同じ頃に作成され,P8通商代表に手交されたと推測される。 ウしかしながら,そもそも,譲許税率より低い実行税率を採用することは日常的なことであって,「通知」しなければできないことではないから,本件通知はWTOにおいて何ら実体法上の効果を持つことのない単なる通知文書にすぎず,本件通知が加盟国に対してされたとしても,関税暫定措置法2条2項及び同法別表第1の3の豚肉に係る部分がWTO違反であることは,何ら治癒されるものではない。 エまた,本件通知では,その2(5)において,「GP(=分岐点価格のこと)の水準未満のc.i.f 価格で輸入される豚肉及び豚肉加工品について,日本国政府は,…日本国の譲許表において規定されている適用のある関税率よりも高くない税率の従量税を適用する」と記載されている。 しかしながら,「GP」の水準未満の現行の豚肉に係る我が国の関税制度は,1kgにつき48.9円(WTO成立当時は1kgにつき58円)以下の枝肉 も高くない税率の従量税を適用する」と記載されている。 しかしながら,「GP」の水準未満の現行の豚肉に係る我が国の関税制度は,1kgにつき48.9円(WTO成立当時は1kgにつき58円)以下の枝肉については従量税を,そして,1kgにつき48.9円からGPまでの枝肉については基準輸入価格と輸入価格との差額の関税を課すという内容になっている。 このうち,1kgにつき48.9円(WTO成立当時は1kgにつき58円)以下で輸入される枝肉は現実には存在せず,取引される蓋然性もゼロというほかないから,この部分の存在により,本件差額関税制度が最低輸入価格を定めたものではないということはできない。 また,基準輸入価格と輸入価格との差額を関税として課す部分については,そもそも「基準輸入価格と輸入価格との差額」という形でしか,税率を表現することはできず,これを「従量税」として表示することは不可能である。 つまり,本件通知は,現実には「従量税」なるものを課すことはないに もかかわらず,言葉の記載上「譲許表において規定されている…関税率よりも高くない税率の従量税を適用する」との欺瞞的表現を行うことで,各国に対し,あたかも,我が国は豚肉に対して従量税を課すかのように欺罔行為を行ったものなのである。 このような我が国の行為は,各国を欺罔するものとして,国際的に許されることのない暴挙と言わざるを得ない。 (3) 譲許関税額よりも低くてもWTO農業協定への適合性は別途問題とされるべきことア譲許税率は上限を定めるものであるから,譲許税率を下回る税率を採用することは認められる。 イしかしながら,自由競争市場というものは,品質と価格による競争が保障されて初めて実現されるものである。これは,独占禁止法を学ぶ際の初歩であり,同法が定められている我が国で ることは認められる。 イしかしながら,自由競争市場というものは,品質と価格による競争が保障されて初めて実現されるものである。これは,独占禁止法を学ぶ際の初歩であり,同法が定められている我が国では,既に公知の事実である。裏を返せば,品質と価格による競争が阻害されれば,自由競争市場は歪められてしまうということである。 この点,無論,関税は,国内業者保護のために,輸入産品の価格にハンディキャップを負わせるものであるから,元来,価格競争を歪める効果を持っている。 しかしながら,従量税,従価税の場合には,国外の業者が価格の引き下げをすれば,「輸入価格+関税」の合計額は,原則,それに併せて何かしらは下がり,従量税,従価税の下では,価格引き下げ努力が完全に無効化されることは原則としてなく,国内業者は,国外業者による不断の価格引き下げ圧力に晒されるし,また,国外業者同士も,当該域内において価格競争を繰り広げることになるものである。このように,従価税,従量税は,価格競争を歪ませるといっても,その歪みの程度は,そこまで大きくはないものである。そうであるからこそウルグアイ・ラウンドの農業交渉では 「関税化」即ち「従量税又は従価税のみを認める」という理念が掲げられて,例外を一切認めないこととしたのである。 これに対して,最低輸入価格制度の場合,当該最低輸入価格から価格の引下げを行っても,その引下げ分が全て関税として賦課されるため,「輸入価格+関税」の合計額は変わらないことになってしまう。つまり,同制度は,国外業者の引下げ努力を,完全に無効化してしまう。その結果,国内業者は,国外業者相互間の不断の価格引下げ圧力に晒されることがなくなってしまい,また,国外業者同士も,差額関税制度を採用する輸出相手国に関しては価格競争を行う意義を失うことになって 。その結果,国内業者は,国外業者相互間の不断の価格引下げ圧力に晒されることがなくなってしまい,また,国外業者同士も,差額関税制度を採用する輸出相手国に関しては価格競争を行う意義を失うことになってしまうのである。 このように,最低輸入価格制度は,国内業者と国外業者の価格競争及び国外業者同士の価格競争を歪ませる程度が極めて大きいことから,WTO農業協定4条2項は,特に明示的に最低輸入価格制度を制度として採用することを禁止しているのである。 ウ以上のとおり,最低輸入価格制度がWTO農業協定4条2項によって禁止されるのは,関税額の多寡ではなく,上記イで述べたとおり,同制度自体が内包する極度の市場歪曲性にあるから,関税額が譲許表より低いことは最低輸入価格制度の内包する市場歪曲性を何ら治癒するものではなく,譲許表より低い関税額を定めている最低輸入価格制度も,市場を大きく歪曲するものであるから,やはりWTO農業協定4条2項違反となるものである。 なお,チリ・プライスバンド事件では,チリ政府が最初に採用した関税の計算方法によれば,場合によって関税額が譲許関税額を超える場合があったところ,これが違法であるとされたことから,チリ政府は法律を改正し,関税額はどんな場合も譲許額を超えないものとすると定めたが,これについて再び争われた事件(いわゆる21.5 条事件)において,WTO上級委員会は,関税額が譲許額を超えないとしてもWTO農業協定違反を治癒 するものではないと判断している。 第3 結論 1 現行関税暫定措置法の定める本件差額関税制度が無効である場合に適用されるべき関税率関税には,国定税率と協定税率とがある。国定税率の方が低い場合,協定税率ではなく,国定税率が適用される(これを国際租税法の領域では,プリザベーション・クローズとい ある場合に適用されるべき関税率関税には,国定税率と協定税率とがある。国定税率の方が低い場合,協定税率ではなく,国定税率が適用される(これを国際租税法の領域では,プリザベーション・クローズという場合がある。)。 そして,我が国において,国定税率を定める一般法は関税定率法であり,関税暫定措置法はその一般法に対する特別法であるから,特別法たる関税暫定措置法が無効であるということになると,特別法の存在によって施行が封じられていた一般法が適用になる。 この点,一般法である関税定率法の定める豚肉の関税率は,関税定率法3条及び関税定率法別表によって,例えば0203項11号2について,5%と定められており,日本国の譲許表のぎざぎざ様の協定税率と比較するとき,国定税率である5%の従価税率は,分岐点価格以上の輸入価格を除けば,譲許税率より低いのであるから,国定税率である5%が適用になる。 2 本件の場合そこで,本件の場合についてこれをみると,本件各更正処分における納付すべき関税の額はすべて誤りであることが明らかである。 3 結論よって,本件各更正処分等は取り消されなければならない。 以上 (別紙9)被告の主張第1 WTO農業協定4条2項には直接適用可能性(裁判規範性)が認められないこと 1 はじめに(1) 本件においてWTO農業協定4条2項を裁判規範として用いるためには,同条項に直接適用可能性が認められなければならないことア被告の主張被告は,本件において,国内の司法裁判所がある事項を判断するに当たり直接適用して結論を導き出すことができる法規範という意味で「裁判規範」という語を用いている。また,被告は,本件において,ある条項が「直接適用可能」であれば,同条項には上記の意味にお 判断するに当たり直接適用して結論を導き出すことができる法規範という意味で「裁判規範」という語を用いている。また,被告は,本件において,ある条項が「直接適用可能」であれば,同条項には上記の意味における裁判規範性が認められるという関係に立つことを意味するものとして「直接適用可能」という語を用いている。 したがって,本件差額関税制度の有効性を判断するに当たり,WTO農業協定4条2項を裁判規範として用いるためには,同条項に直接適用可能性が認められなければならない。 なお,我が国において国会による承認を経て締結し公布された条約は,憲法98条2項,7条1号により国内的効力を有し,法律に優位すると解されている。しかし,これは,我が国の憲法体制においては,条約が他に特段の立法措置を講ずるまでもなく我が国の法体系に受け容れられること(すなわち自動的に受容されること)を意味しているにとどまるから(条約の国内的効力の問題),個々の国民が条約を直接の法的根拠として具体的な権利ないし法的地位を主張したり,あるいは,裁判所が法的紛争を解決するに当たり条約を直接適用して結論を導いたりすることが可能かという問題(条約の直接適用可能性の問題)は,条約の国内的効力の問題とは 別途検討する必要がある(東京高裁平成5年3月5日判決・判例時報1466号40頁,東京高裁平成25年11月27日判決(以下「東京高裁平成25年判決」という。)。 イ原告の主張に対する反論(ア) 上記アに関し,原告は,憲法は「憲法-条約-法律というハイアラーキー」を定めているから,「ある条約条項が直接適用可能ではなく,法律によって国内法化されている場合を考えて,当該条約条項を国内法化する法律が,当該条約条項に違反した内容になっているのではないかということを 定めているから,「ある条約条項が直接適用可能ではなく,法律によって国内法化されている場合を考えて,当該条約条項を国内法化する法律が,当該条約条項に違反した内容になっているのではないかということを裁判所において判断することができるか否か(すなわち,裁判規範性)についても『直接適用可能性とイコールという理由で裁判規範性がない』という趣旨までをも含む言明であるとすれば,それは短絡的である」,「直接適用可能でなくとも,法律の条約適合性を判断する裁判規範として位置付けることは可能である」などと主張し,その実例として,租税条約における限度税率を例に挙げる。 (イ) しかし,原告は,一般的に条約が国内法に優位すると解されていることを強調するが,原告が提出した証拠においても,一般的に条約が国内法に優位すると解されていることと,当該条約に直接適用可能性が認められることとの間には何らの論理的関連性もないことが述べられている。 (ウ) したがって,原告の上記主張はいずれも理由がない。 (2) 直接適用可能性の判断基準(要件)について条約は,国際法の一形式であるが,これを締結するのは国家であって,国家間の権利義務関係を定立することを主眼とする。このため,条約が直接国内法上の効果を期待し,国民に権利を与え義務を課すことをも目的とする場合には,原則として,その目的を達成するため国家機関に立法義務を課し又は行政措置を執ることを命じ,これを受けて,立法機関が法律を制定し,ま た,行政機関が法令に基づきその権限内にある事項について行政措置を執ることになる。したがって,条約の内容が私人相互間又は私人と国家間の法律関係に適用可能なものとして裁判所等の国家機関を拘束するためには,原則として,上記のような国内措置による補完が必要であり,現にそのような国内法が がって,条約の内容が私人相互間又は私人と国家間の法律関係に適用可能なものとして裁判所等の国家機関を拘束するためには,原則として,上記のような国内措置による補完が必要であり,現にそのような国内法が多数制定されている。 これに対し,例外的に,条約の規定がそのままの形で国内的に直接適用し得ると判断される場合がある。いかなる場合に条約の直接適用が可能となるかについては,一般に,「第一に『主観的要件』として,条約の作成・実施の過程の事情により,私人の権利義務を定め直接に国内裁判所で執行可能な内容のものにするという,条約締結国の意思が確認できること」,「第二に『客観的要件』として,私人の権利義務が明白,確定的,完全かつ詳細に定められていて,その内容を具体化する法令にまつまでもなく国内的に執行可能な条約規定であること」を考慮して判断せざるを得ないとか,内容が明確かつ具体的で国家の裁量の余地がない条約(規定)であることを要するなどとされている。 よって,ある条約の規定を国内裁判所において直接裁判規範として適用するためには,① 条約締結国の国内裁判所で執行可能なものにするという条約条約締結国の具体的な意思が確認できること(主観的基準),及び,② その内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの具体性及び明確性があること(客観的基準)を要すると考えられる。 2 WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する主観的基準を満たさないこと(1) 被告の主張前記1(2)で述べたとおり,条約の直接適用可能性についての主観的基準(要件)を満たすためには,条約締結国の国内においてまで,当該条約における個人の権利義務や規制等をそのまま創設するという条約締結国の意思が 確認できることが必要である。 しかるに,我が国は,WTO )を満たすためには,条約締結国の国内においてまで,当該条約における個人の権利義務や規制等をそのまま創設するという条約締結国の意思が 確認できることが必要である。 しかるに,我が国は,WTO協定の交渉過程において,WTO農業協定4条2項の直接適用可能性について議論されたとは認識しておらず,WTO協定の関連規定の内容やその交渉経緯,WTO農業協定4条2項の国内実施措置等によれば,我が国が,WTO農業協定4条2項について,私人に対し,「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していなかったことは明らかである。 したがって,WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する主観的基準を満たさない。 その要点は以下のとおりである。 ア WTO農業協定はWTO協定の一部であるところ,WTO協定は,加盟国間の国際貿易関係を規律し,多角的貿易体制の基礎を成す基本原則を維持するとともに同体制の基本目的を達成するものとして位置づけられており,各加盟国に対して,自国の法令等をWTO農業協定を含む附属書の定める義務に適合したものとすることを義務付けている。これによれば,WTO農業協定4条2項は,私人の権利義務を定め,また,それが直接適用されることを予定しているとはいい難い。 また,WTO協定を巡る紛争については,第一次的には加盟国間の協議や交渉によって解決が図られることが予定されている上,WTO紛争解決手続による救済は,加盟国による対象協定に適合しない措置の撤回によって図られ,私人に対する損害賠償等は想定されていない。WTO協定における紛争解決手続は,飽くまで加盟国間の紛争解決のための場を提供するものであり,私人が関与することは想定されていない。 以上のとおり,WTO協定 に対する損害賠償等は想定されていない。WTO協定における紛争解決手続は,飽くまで加盟国間の紛争解決のための場を提供するものであり,私人が関与することは想定されていない。 以上のとおり,WTO協定の性格やその関連規定の内容を検討すると,WTO農業協定4条2項は加盟国に直接適用されることを予定していな いものと考えるのが自然である。 イ世界貿易機関(以下「WTO」という。)の主要加盟国であるアメリカ合衆国(以下「米国」という。)及びヨーロッパ共同体(以下「EU」という。)では,WTO協定の締結当初から,WTO協定は国内において直接適用可能性がないものとして取り扱われていることが認められ,主要加盟国においては,当初から,WTO協定は原則として直接適用可能性がないものとして理解されていたことがうかがわれる。そして,我が国は,WTO農業協定4条2項の交渉過程において,その直接適用可能性が加盟国間で議論されたとも認識していない。そうすると,同規定に直接適用可能性が認められないことは,加盟国間においても前提とされていたことがうかがわれる。 ウまた,WTO農業協定の作成経緯を踏まえると,市場アクセスについて定めるWTO農業協定4条2項の趣旨は,農産品貿易に係る国際的な規律を強化する目的の下,締約国に対して特例措置を適用したものを除き通常の関税以外の国境措置を包括的に関税化する国際法上の義務を負わせることを規定するものであり,私人の権利義務に着目したものとはいえない。 以上のとおり,WTO農業協定4条2項の性格やその規定内容から見ても,我が国が,WTO農業協定4条2項が私人に対し「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していたことをうかがわせる事情は認められ が,WTO農業協定4条2項が私人に対し「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していたことをうかがわせる事情は認められない。 エさらに,我が国による条約の締結に当たっては,一般的に,当該条約上の義務を国内的に実施し得る体制が整っていることが締結の前提であり,そのために国内立法措置が必要であれば,かかる措置を執った上で条約を締結することとされているから,条約を締結するに当たり,当該条約上の義務を実施するための国内立法措置が執られている場合には,一般的に, 我が国において,当該義務につき直接適用することは想定されていないというべきである。 しかるに,我が国がWTO協定を締結するに当たっては,WTO協定を国内的に実施するための国内措置を執ることが必要とされ,WTO農業協定4条2項が関係する関税化については,その実施のため,関税定率法等の改正,加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の改正,主要食糧の需給・価格安定法の制定等の立法措置が執られた。 このように,WTO協定の締結に当たっては,WTO農業協定4条2項の実施に関連して関税定率法等の改正等の立法措置が執られたほか,同項の直接適用可能性について国会等において議論が行われたことも確認されていない。 オ以上のとおり,WTO協定の性格やその関連規定の内容,他の主要加盟国におけるWTO農業協定を含むWTO協定の取扱い,WTO農業協定4条2項の性格及び規定内容並びにその国内実施に関連する措置等に照らしても,我が国が,WTO農業協定4条2項について,私人に対し,「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していなかったことは明らかである。 WTO農業協定4条2項について,私人に対し,「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接に国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していなかったことは明らかである。 (2) 原告の主張に対する反論ア原告は,条約の直接適用可能性が認められるための主観的基準として,条約締結国による私人の権利義務を創設する意思が必要であるという主張について,前近代的なものであるなどと主張する。そして,直接適用可能性が認められていることに争いがない譲許表を例に挙げ,これは個人の権利義務を創設するものではないから被告の主張によると直接適用可能性は認められないはずであるから,被告は自己矛盾に陥っているなどと主張する。 しかしながら,前記のとおり,条約は,原則として国家間の権利義務関係を定めるものであるから,我が国において条約の内容が私人相互間又は私人と国家間の法律関係に適用可能なものとして裁判所等の国家機関を拘束するためには,原則として国内措置が必要であるとされている。例外的に,当該条約について国内措置が執られていなくとも,直接に国内裁判所で執行可能な内容のものとする国家の意思が認められる場合には,国内裁判所でこれを執行したとしても,立法や行政による裁量権の行使を制約することはないとされている。 そして,被告は,上記の観点から,我が国が,WTO農業協定4条2項について,私人に対し,「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認めてこれを直接国内裁判所で執行可能にするなどという意思を有していたとはいえないから,同条項に直接適用可能性を認めることはできないと主張したものである。すなわち,被告は,主観的基準(要件)として,「条約締結国による私人の権利義務の創設の意思」が必要であるなどと主張しているのではな 同条項に直接適用可能性を認めることはできないと主張したものである。すなわち,被告は,主観的基準(要件)として,「条約締結国による私人の権利義務の創設の意思」が必要であるなどと主張しているのではなく,「国内措置なしに国内裁判所で執行可能にする意思」が必要であると主張したものである。そして,本件において,国内裁判所がWTO農業協定4条2項を裁判規範として用いて本件差額関税制度の効力を判断できるということは,実質的には,我が国が,同条項について,私人に対し「通常の関税」に当たらない国境措置を適用されない権利を認め,これを国内措置なしに国内裁判所で執行可能とする意思を有していたということができるところ,被告は,前記(1)のとおり,WTO農業協定4条2項の性格等に鑑みると,我が国がこのような意思を有していたとはいえないと主張したものである。 したがって,原告の上記主張は,被告の主張を正解しない誤ったものであって,理由がない。 イまた,原告は,直接適用可能性の主観的基準として,条約締結国の積極 的な意思を要求する見解は,結果として,他国の主権行使を不当に制約することになるなどと主張する。 しかし,本件で問題となっている条約の直接適用可能性とは,条約を直接の法的根拠として,個々の国民が具体的な権利ないし法的地位を主張したり,あるいは,国内の司法裁判所が法的紛争を解決するに当たり条約を直接適用して結論を導き出したりすることができるか否かという問題であり,これは純粋な国内問題である。 したがって,直接適用可能性の主観的基準として,我が国の積極的な意思を要求することは,他国の主権行使と何ら関係がなく,原告の上記主張は理由がない。 ウさらに,原告は,条約締結国の意思は直接適用可能性を排除する基準としてのみ機能すると主張するが,条約は原 な意思を要求することは,他国の主権行使と何ら関係がなく,原告の上記主張は理由がない。 ウさらに,原告は,条約締結国の意思は直接適用可能性を排除する基準としてのみ機能すると主張するが,条約は原則として,国家と国家の権利義務関係を定めるにすぎず,国民の権利等を直接創設するものではないという国際法上の原則からすれば,やはり,条約が直接適用可能であるかどうかは,厳格に考える必要があり,条約の規定を国内的に直接適用するためには,条約締結国の国内においてまで,当該条約における国民の権利義務や規制等をそのまま創設するという条約締結国の意思が確認できることが必要である。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 エ以上のとおり,原告の直接適用可能性の主観的基準に係る主張は,その前提において誤りがあるから,原告が主張するところの「直接適用可能性についての2つの要件」及びこれに基づく本件への当てはめもまた,誤っている。 オその他,原告は,我が国においてWTO農業協定4条2項の直接適用可能性を排除する意思がないなどと主張し,その理由として,条約が法律に優先するという公定解釈が存在し,また,我が国は,関税に関する事項に ついて直接適用可能性を積極的に認めていこうとする国内法制を採っているなどとも主張する。 しかし,前記1(1)アのとおり,一般的に条約が国内法に優位すると解されていることは,当該条約に直接適用可能性が認められることと何ら論理的関連性がない。また,原告が言及する関税法3条ただし書は,直接適用可能性が認められる条約の規定は直接適用するということを注意的に定めた規定(確認規定)にすぎないから,直接適用可能性を積極的に認めた規定といえないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 カまた,原 接適用するということを注意的に定めた規定(確認規定)にすぎないから,直接適用可能性を積極的に認めた規定といえないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 カまた,原告は,① 「直接適用がある条約条項について国内法化する立法があったからといって,直接適用が排除されることにはならない」から,WTO農業協定4条2項の国内法化措置が行われているのであれば,直接適用は問題とならないとする被告の主張は失当であり,また,② 同項の国内法化措置について裁判所が同項を裁判規範として用いて条約違反との判断をすることに何らの障害もないなどと主張する。 しかし,被告は,上記①について,我が国がWTO農業協定を含むWTO協定を締結するに当たり,WTO農業協定4条2項に関する義務を国内的に実施するための立法措置を執っているから,WTO農業協定4条2項を直接適用可能とする意思があったとはいえないと主張したものであり,WTO農業協定4条2項そのものが別途「国内法化」されたと主張しているものではない。そうすると,WTO農業協定4条2項そのものが別途「国内法化」されたことを前提とする原告の上記①及び②の主張は,被告の主張を正解しておらず,その前提において誤っており,失当である。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 3 WTO農業協定4条2項は直接適用可能性に関する客観的基準(要件)を満たさないこと (1) 被告の主張ア権力分立の原則によれば,法の定立は原則として立法府の権限であり,司法府が不明確で国家に広い裁量の余地を残している条約の規定を直接適用すると,実質的に司法府が法の定立をすることになり,立法府の権限を侵害することになるなどとされている。これによれば,一般的抽象的な概念を含んでいる条約の規定は, 余地を残している条約の規定を直接適用すると,実質的に司法府が法の定立をすることになり,立法府の権限を侵害することになるなどとされている。これによれば,一般的抽象的な概念を含んでいる条約の規定は,一般的には国家に合理的な裁量の余地を残していると解されることから,いわゆる客観的基準に基づけば具体性及び明確性を欠き,国内的に直接適用できる規定であるということはできない。 すなわち,条約の規定を国内的に直接適用するためには,当該規定の文言につき条約解釈の原則に従って解釈した上で,そのまま国内的に適用できる程度に明確であることが必要である。条約解釈の原則に従って解釈したとしても依然として規定の意味内容が不明確であるもの(一般的抽象的な概念を含んでいる場合など,国家に裁量の余地を残す規定であると解されるようなものを含む。)は,いわゆる客観的基準における明確性を欠くことになる。 イこの点,WTO農業協定4条2項をみると,同項は,「通常の関税に転換することが要求された措置」を禁止しており,これに該当する措置がどのようなものであるかについて,その(注)で,「…最低輸入価格…その他これらに類する通常の関税以外の国境措置…が含まれる」と例示している。WTO農業協定は条約であるから,前記アで述べたとおり,条約解釈の原則に従って「文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い」解釈されなくてはならないところ(条約法条約31条1項),WTO農業協定4条2項によって禁止される措置は,その(注)に例示が置かれているものの,こうした措置を特定するための明確な基準はどの条文にも含まれていないため,これらの意義は明確でないといわざるを得ない。 2006年の第2次チリ価格帯事件における小委員会(パネル)報告は,上記のよう 特定するための明確な基準はどの条文にも含まれていないため,これらの意義は明確でないといわざるを得ない。 2006年の第2次チリ価格帯事件における小委員会(パネル)報告は,上記のような条約解釈の原則を踏まえて,「最低輸入価格」の一応の定義を示しているが,当該措置に該当するか否かを判断するための明確な基準までも解釈により示すことは困難である。すなわち,第1次及び第2次チリ価格帯事件の小委員会や上級委員会において,条約法条約に規定された解釈の原則に従って判断してもその解釈が分かれたように,WTO農業協定4条2項の趣旨目的に照らして解釈してもなお,「通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置」,さらには「…可変輸入課徴金,最低輸入価格,…これらに類する通常の関税以外の国境措置」について完全に具体的かつ明確な解釈を確定させることは困難であるといわざるを得ない。 ウまた,上記のとおり,国家に合理的な裁量の余地を残していると解される規定は国内的に直接適用できないと解されるところ,WTO農業協定4条2項は,これに違反した場合の効果については何ら定めていないから,その効果は一義的に明らかでなく,加盟国の裁量に委ねられていると解される。 エ以上によれば,条約解釈の原則に従って解釈したとしても,WTO農業協定4条2項の規定内容が,当該内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの具体性及び明確性を有するとは認められない。 (2) 原告の主張に対する反論原告は,WTO農業協定4条2項が「最低輸入価格を維持し,とり又は再びとってはならない」と規定していることに疑義を挟む余地はない上,「最低輸入価格」の定義についても一切争いがない,一義的に明確なものであるとし,同項は国内法として直接適用可 価格を維持し,とり又は再びとってはならない」と規定していることに疑義を挟む余地はない上,「最低輸入価格」の定義についても一切争いがない,一義的に明確なものであるとし,同項は国内法として直接適用可能な程度に規定内容が明確である旨主張する。 しかし,上記のとおり,「最低輸入価格」の意義は,WTOの紛争解決手 続における小委員会及び上級委員会による判断でも一応の定義が示されているにとどまる上,第1次及び第2次チリ価格帯事件においても,チリの価格帯制度の最低輸入価格該当性について判断するに当たり,この定義に該当するか否かが決め手とされていたものでもない。WTO農業協定4条2項は,通常の関税に転換することを要求された措置等を執ってはいけないという意味では明確であるものの,かかる措置の内容は一義的に明確ではないのである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 4 まとめ以上のとおり,WTO農業協定4条2項を裁判規範として用いるためには,同条項に直接適用可能性が認められなければならないところ,直接適用可能性は,主観的基準及び客観的基準を満たすか否かを踏まえて判断されるべきである。 そして,主観的基準を満たすためには,条約締結国の国内においてまで,当該条約の規定を直接適用するという条約締結国の意思が確認できる必要があるところ,WTO農業協定4条2項の関連規定の内容やその交渉経緯等によれば,我が国が,WTO農業協定4条2項について,個人の権利義務や規制等をそのまま創設したり,同条項を直接適用したりする意思を有していなかったことは明らかであるから,主観的基準を満たさないといえる。また,WTO農業協定4条2項の規定内容は,当該内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの具体性及び明確性を有するとも認められないから, あるから,主観的基準を満たさないといえる。また,WTO農業協定4条2項の規定内容は,当該内容を具体化する法令を待つまでもなく国内で直接適用できるだけの具体性及び明確性を有するとも認められないから,客観的基準も満たさないといえる。 したがって,WTO農業協定4条2項には直接適用可能性が認められないから,これを裁判規範として用いることはできない。 第2 本件差額関税制度はWTO農業協定4条2項に適合していること 1 被告の主張 (1) WTO農業協定4条2項の解釈についてア条約の解釈については条約法条約31条及び32条で定められているところ,条約の規定を適用する上では,当該規定の文言につき,上記条約解釈の原則に従って解釈する必要がある。 イまず,WTO農業協定4条2項は「通常の関税」に当たらない措置を禁止したものであるところ,この「通常の関税」をその用語が用いられていた通常の意味や経緯等に従って解釈すると,「従量税,従価税又はその組合せの形式で譲許されたもの」をいうと解される。第1次チリ価格帯事件の上級委員会も,「通常の関税」とは「従価税又は従量税(又はその組合せ)の形式をとるもの」であるとして,同様に解している。 したがって,関税という「税」の形式で課税されていたとしても,それが「従量税,従価税又はその組合せの形式で譲許」されていない措置は,そもそも「通常の関税」に当たらないから,WTO農業協定4条2項に適合しない。 ウ次に,WTO農業協定4条2項の趣旨目的は,加盟国において従来様々な非関税措置によって農業貿易が阻害されてきた状況を踏まえ,農業保護のためには専ら関税による保護だけが許されるとして,貿易障壁をより透明にするとともに障壁の高さの測定を容易にし,農産品についての市場アクセスを改善しようと 貿易が阻害されてきた状況を踏まえ,農業保護のためには専ら関税による保護だけが許されるとして,貿易障壁をより透明にするとともに障壁の高さの測定を容易にし,農産品についての市場アクセスを改善しようとした点(関税化)にある。 この点について,第1次チリ価格帯事件の上級委員会は,チリの価格帯制度がWTO農業協定4条2項に適合しているか否かを判断するに当たり,「経験的根拠に基づくアプローチ」を行って,「注1に記載された全ての国境措置が,通常の関税が行う方法と違った方法で,農産物輸入の量を規制し,価格を歪曲する共通の目的と効果を持っていることに注目する。さらに,これら措置の全てが,また,共通して,国内価格を海外価格変動から切り離し,したがって,海外価格の国内市場への伝達を妨げている。」 (パラ227)と述べ,その上で,チリの価格帯制度は,透明性や予測可能性を著しく欠く手段を採用しており,いずれも輸入量規制効果及び価格伝達阻害効果を持っているとして,WTO農業協定4条2項に適合しないと判断している。そして,同上級委員会が,「…透明性の欠如及び税水準の予測可能性の欠如は,輸入量規制をもたらす。(中略)また,海外価格の国内市場への伝達を妨げて輸入価格の歪曲の一因となる。」と判断していることに鑑みると,当該措置が実質的に透明性及び予測可能性を著しく欠いている場合には,通常であれば,輸入量規制効果及び価格伝達阻害効果があるということができる。 したがって,上述した「通常の関税」の形式を満たす措置であっても,実質的に見て透明性及び予測可能性を著しく欠いている場合には,WTO農業協定4条2項の趣旨目的に反し,同条項に適合しないと考えられる。 エ以上の点をまとめると,WTO農業協定4条2項の解釈については,①関税という「税」の形式で課税 く欠いている場合には,WTO農業協定4条2項の趣旨目的に反し,同条項に適合しないと考えられる。 エ以上の点をまとめると,WTO農業協定4条2項の解釈については,①関税という「税」の形式で課税されていたとしても,それが「従量税,従価税又はその組合せの形式で譲許」されていない措置は,そもそも「通常の関税」ではない。また,「通常の」関税の形式を採るものであっても,② 実質的に見て,関税化の特質である透明性及び予測可能性を著しく欠いている場合には,WTO農業協定4条2項の趣旨目的に反し,同条項に適合しないということができる。 なお,第1次及び第2次チリ価格帯事件の上級委員会は,チリの価格帯制度が透明性及び予測可能性を著しく欠いていることを認めた上で,その効果にも言及しているが,これは,WTO農業協定4条が市場アクセスの改善を志向している点を踏まえ,方法だけでなく効果の点からも,チリの価格帯制度が同条項に反していることを明らかにするとともに,(注)に挙げられた措置との類似性を具体的に検討したためとも考えられる。 (2) 本件差額関税制度は最低輸入価格又はこれに類する「措置」に当たらな いことアはじめに本件差額関税制度は,従量税と従価税の組合せで譲許された関税であるから,「通常の関税」に当たる。また,本件差額関税制度は,実質的に見て透明性及び予測可能性を著しく欠くものとはいえないから,WTO農業協定4条2項の趣旨にも反しない。さらに,効果の点に着目して見ても,本件差額関税制度には輸入量規制効果や価格伝達阻害効果は認められず,第1次及び第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げたような「最低輸入価格」としての特徴を有するものではない。したがって,本件差額関税制度は最低輸入価格又はこれに類する措置に当たらない。 ず,第1次及び第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げたような「最低輸入価格」としての特徴を有するものではない。したがって,本件差額関税制度は最低輸入価格又はこれに類する措置に当たらない。 以下,上記の点を更にふえんして述べる。 イ本件差額関税制度は「通常の関税」に当たること本件差額関税制度は,輸入価格が分岐点価格以下の場合には,豚肉の重量1kg当たりの従量税(ただし,課税後価格が一定の基準輸入価格を超えるときには,基準輸入価格と輸入価格の差額に引き下げた額)を課すことにより,国内養豚農家を保護する一方,輸入価格が分岐点価格より高いときには,一定率の従価税を課すことにより,輸入品の関税負担を軽減し,消費者等の利益を図るという関税の組合せの制度である。これは,ウルグアイ・ラウンド農業交渉以前は関税譲許の対象とはなっていなかった豚肉について,ウルグアイ・ラウンド農業交渉の結果,モダリティ文書に従って譲許したものである。 したがって,同制度は「通常の関税」に当たるものである。 ウ本件差額関税制度は,透明性及び予測可能性を著しく欠く措置ではないこと(ア) WTO農業協定4条2項は,貿易障壁をより透明にし,障壁の高さの測定を容易にすることで,農産品についての市場アクセスを改善しよ うとした規定であることから,ある措置について透明性及び予測可能性が実質的に欠如しているか否かは,当該措置の結果として生じる課税水準と関連づけて検討されるべきである。第1次チリ価格帯事件の上級委員会も同様の点を検討している。 (イ) このような課税水準との関係から本件差額関税制度を見るに,本件差額関税制度において課税額を変動させる諸要素(従量率,従価率,基準輸入価格,分岐点価格及び従量税適用限度価格)は,いずれも,当該数値自体 のような課税水準との関係から本件差額関税制度を見るに,本件差額関税制度において課税額を変動させる諸要素(従量率,従価率,基準輸入価格,分岐点価格及び従量税適用限度価格)は,いずれも,当該数値自体又はその算出方法が法律で明確に規定されている。 したがって,第1次チリ価格帯事件の上級委員会が述べているような事態,すなわち,「輸出者が,関税額が幾らになるかを知らず合理的に予測することもできない」事態は,本件差額関税制度の下では生じ得ない。チリの価格帯制度は,変動する下限価格と参照価格との差に基づいて追加の従量税を課すものであり,下限価格と参照価格の決定過程が不透明であったため,譲許税率の範囲内で幾らの追加税が課されるのかが予測できないものであったが,このような特徴は本件差額関税制度にはないのである。 (ウ) よって,本件差額関税制度は透明性及び予測可能性の欠如という特徴的な性質を持っていないから,これが実質的にWTO農業協定4条2項の趣旨目的に反する措置であるともいえない。 エ本件差額関税制度は,その効果の点から見ても,「最低輸入価格」としての特徴を有するものではないこと(ア) 以上のとおり,本件差額関税制度は「通常の関税」の形式を有している上,実質的に見て透明性及び予測可能性が欠如する措置ではないから,WTO農業協定4条2項の趣旨目的には反しない。 したがって,本件差額関税制度は,WTO農業協定4条2項に適合した措置といえる。このことは,次に述べるとおり,本件差額関税制度の 効果等に照らしても明らかである。 (イ) 第1次チリ価格帯事件の上級委員会は,(注)に列挙された措置がいずれも輸入量規制効果及び価格伝達阻害効果を有しているとし,また,第1次及び第2次のチリ価格帯事件において,「最低輸入価格」とは,「本 第1次チリ価格帯事件の上級委員会は,(注)に列挙された措置がいずれも輸入量規制効果及び価格伝達阻害効果を有しているとし,また,第1次及び第2次のチリ価格帯事件において,「最低輸入価格」とは,「本質的に,通常輸入産品の取引価格と特定の価格限界との差額に基づいて査定される輸入関税を賦課することによって,当該特定の輸入産品が当該価格限界を下回って国内市場に侵入することのないようにする措置」と定義されており,その特徴として第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げたのは,① ある船荷に適用できる参照価格が下限価格を下回った場合,追加の従量税はそれらの数値の差に基づいて付加されること,② 当該措置によって,チリ市場における産品の輸入価格が下限価格以下に下がることは非常にありそうもないこと,③ 下限価格は,少なくとも国内目標価格の代理又は代替物になる程度まで機能すること,④ 下限価格と比較して参照価格が低くなればなるほど,追加従量税は高くなり,保護貿易の効果はそれだけ大きくなること,⑤ 措置によって国内市場への世界価格の下落の伝搬が歪められることである。 (ウ) 以下,上記の各点について,本件差額関税制度と比較する。 a 確かにウルグアイ・ラウンド農業交渉前の豚肉の差額関税制度では,最低輸入価格として機能し得る基準輸入価格が存在したが,ウルグアイ・ラウンド農業交渉合意によってこのような基準輸入価格を含む豚肉の差額関税制度は廃止され,輸入価格と分岐点価格の高低のみによって従価税又は従量税が課されることとなり(関税譲許。ステップ1。 別紙6「図面目録」記載③の図),その後,国際的合意に基づいて従価税及び従量税が引き下げられた(ステップ2。別紙6「図面目録」記載④の図)。すなわち,ステップ1及びステップ2では,輸入される豚肉に課される関税は,輸入価格 の図),その後,国際的合意に基づいて従価税及び従量税が引き下げられた(ステップ2。別紙6「図面目録」記載④の図)。すなわち,ステップ1及びステップ2では,輸入される豚肉に課される関税は,輸入価格が分岐点価格以下であれば従量税 のみであり,輸入価格が分岐点価格を上回れば従価税のみであり,輸入価格が下落すれば,従量税であれ従価税であれ,いずれにせよ課税後の価格も下落するのである。 したがって,ステップ1及びステップ2を経た後の差額関税制度は,輸入価格の下落によって保護貿易の効果が大きくなるとか(輸入量規制効果),国内市場への世界価格の下落の伝搬が歪められる(価格伝達阻害効果)などといった,第2次チリ価格帯事件上級委員会が挙げる最低輸入価格に共通する特徴(前記(イ)④及び⑤)を有していないことは明らかである。 b また,関係国との協議を踏まえて,国内措置として従量税部分を自主的に引き下げることとなったこと(ステップ3。別紙6「図面目録」記載⑤の図)に伴い,輸入価格が分岐点価格と同額の場合の課税後の価格を「基準輸入価格」とし,輸入価格が分岐点価格以下の場合の従量税のうち基準輸入価格を超える部分はこれを課さない仕組みとしたが,ステップ3において新しく設定された基準輸入価格の機能を分析すると,これは障壁を低減させる方向に働くものでしかなく,譲許された従量率に基づく課税の一部を免除して貿易を促進するものと評価できる。 そうすると,ステップ3を経た後の差額関税制度についても,輸入価格の下落によって保護貿易の効果が大きくなるとか,国内市場への世界価格の下落の伝搬が歪められるなどといった,第2次チリ価格帯事件上級委員会が挙げる最低輸入価格の共通の特徴(前記ア④及び⑤)を有していないことは明らかである。 c 以上のように,「基準輸 への世界価格の下落の伝搬が歪められるなどといった,第2次チリ価格帯事件上級委員会が挙げる最低輸入価格の共通の特徴(前記ア④及び⑤)を有していないことは明らかである。 c 以上のように,「基準輸入価格」が持つ意味は,ウルグアイ・ラウンド農業交渉合意前と後とでは,180度異なるのである。 (エ) したがって,上記で述べた最低輸入価格の特徴を勘案しても,本件 差額関税制度が,性質や方法,効果の面において,最低輸入価格と十分な「相似性又は類似性」を有するとか「同じ種類又は性質」であるとは認められない。 (3) まとめ以上のとおり,第1次チリ価格帯事件の上級委員会によるWTO農業協定4条2項の解釈によれば,本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項に適合しているか否かを判断するに当たっては,それが「通常の関税」の形式を採るものか否か,実質的に見て,関税化の特質である透明性及び予測可能性を欠くものか否かという観点から検討すべきである。 そして,本件差額関税制度は,従量税及び従価税の組合せの形式で譲許されたものであるから,「通常の関税」の形式を採るものであり,また,透明性及び予測可能性が欠如するという性質も有していない。 更に付言すれば,本件差額関税制度は,WTO農業協定4条2項の(注)に列挙された「措置」が共通して有するとされる効果(輸入量規制効果及び価格伝達阻害効果)を有するものではなく,また,第2次チリ価格帯事件の上級委員会が挙げた「最低輸入価格」の特徴を有するものでもない。 したがって,本件差額関税制度はWTO農業協定4条2項に適合しているというべきである。 2 原告の主張に対する反論(1) 原告は,「通常の関税」とは「従価税,従量税又はその組合せ」であるところ,従量税を自主的に引き下げたことによって従量税であったも 合しているというべきである。 2 原告の主張に対する反論(1) 原告は,「通常の関税」とは「従価税,従量税又はその組合せ」であるところ,従量税を自主的に引き下げたことによって従量税であったものが従量税でなくなったなどとし,本件差額関税制度はその定義上「通常の関税」ではなくなったと主張する。 しかし,一般に従量税とは,課税物件たる物品の個数,重量,長さ,容積,面積等の数量を課税標準として課される租税であって,例えば,重量を課税標準とする場合には,「重量×○円/kg」と表せるところ,輸入価格が従量 税適用限度価格を超えて分岐点価格以下である場合には,「1キログラムにつき枝肉(部分肉)に係る基準輸入価格と課税価格との差額」が課せられ(関税暫定措置法別表第1の3),これは,課税物件たる物品の重量を課税標準として課される租税である。 したがって,従量税を自主的に引き下げた部分についても,その課税の実質が従量税であることには変わりがないから,これが従量税でなくなったことを前提とする原告の上記主張は理由がない。 (2) また,原告は,本件差額関税制度において,従量税適用限度価格以下で輸入される蓋然性はないから,基準輸入価格が価格限界としての機能を持ち,最低輸入価格に当たる旨主張する。 しかし,平成16年に従量税適用限度価格以下で1万559kg輸入された実績があるから,原告の主張は前提において誤っている。また,前記1で述べたとおり,被告は,本件差額関税制度に従量税適用限度価格帯があることのみを理由として,本件差額関税制度が最低輸入価格に当たらないと主張しているものでもない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (3) さらに,原告は,WTO農業協定4条2項が最低輸入価格制度を禁止するのは,これが自由競争市 輸入価格に当たらないと主張しているものでもない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (3) さらに,原告は,WTO農業協定4条2項が最低輸入価格制度を禁止するのは,これが自由競争市場を大きく歪めるからであるとした上で,本件差額関税制度は,国外業者の引下げ努力を完全に無効化し,価格競争を歪ませる程度が極めて大きいなどとも主張する。 しかし,WTO農業協定の作成経緯に鑑みれば,WTO農業協定4条2項の趣旨は,農産品貿易に係る国際的な規律を強化する目的の下,それまで鉱工業品に比べて限定的な形でのみ「関税と貿易に関する一般協定」の規律が適用され,関税以外の貿易障壁が残っていた農産品貿易について,特例措置を適用したものを除き通常の関税以外の国境措置を包括的に関税化する国際法上の義務を負わせることを規定するものである。すなわち,同項は,関税 以外の措置による貿易障壁をなくすことに主眼が置かれており(第1次チリ価格帯事件のパネル報告パラ7.57及び7.58),同項の(注)に列挙された措置は,過去に採られてきた非関税障壁の実例を列挙したものにすぎない(第1次チリ価格帯事件の上級委員会報告パラ209)。 したがって,原告の上記主張はその前提において誤っている。 (4) 以上のとおり,本件差額関税制度がWTO農業協定4条2項に違反しているとする原告の主張はいずれも理由がない。 なお,原告は,公刊された書籍(甲24)の記述を取り上げて,本件差額関税制度が最低輸入価格であることは所管官庁の農林水産省が認めているなどとも主張するが,そもそも同書籍は1994年(平成6年)に刊行されたものである。我が国は,ウルグアイ・ラウンド交渉合意を受けて,平成7年4月に差額関税制度を従価税及び従量税の組合せの形に変更しているから,上記 が,そもそも同書籍は1994年(平成6年)に刊行されたものである。我が国は,ウルグアイ・ラウンド交渉合意を受けて,平成7年4月に差額関税制度を従価税及び従量税の組合せの形に変更しているから,上記書籍の記述は,WTO農業協定締結以前の差額関税制度について述べたものにすぎない。したがって,原告の上記主張も失当である。 以上
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