主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,1億3030万5792円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告町,同D及び同Eは平成11年8月12日,同Cは同月19日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,大分県下毛郡耶馬渓町内にある診療所の実質的な代表者である原告が,同診療所に入院施設及び老人デイケア施設を増築する計画を立て,建設会社との間で増築工事請負契約を締結したが,工事代金を支払えなかったために同契約が解除され,別件訴訟において建設会社に対する損害賠償の支払を命じられたことにつき,被告町が工事代金を助成する旨合意したこと,被告らが銀行融資に対する協力や被告町における工事代金の予算の獲得を合意したこと,被告Cが町長の専決決裁により工事代金を支出する旨合意したこと,などを主張して,被告らに対し,債務不履行に基づき(なお,被告町に対しては,予備的に国家賠償法1条1項に基づき),損害賠償を請求している事案である。 1 争いのない事実及び証拠(甲1,2の(2)ないし(6),(10),(12),(18),6,7,9の(1),10ないし12,乙1ないし3,4の(1)ないし(5),5ないし7,9,18,19,証人F,同G,原告本人)により認められる事実(1) 当事者等原告は,平成5年11月から,北九州市内でH病院及びI病院を経営する医療法人J(以下「J」という。)の総事務長の地位にあり,平成13年7月からは,軽費老人ホームの施設長をしている。 被告Cは,平成8年5月1日から現在に至るまで,耶馬渓町の町長の地位にあり,被告Eは,同年6月24日から現在に至るまで,同町の助役の地位にある。 被告Dは,平成7年4月当時,耶 の施設長をしている。 被告Cは,平成8年5月1日から現在に至るまで,耶馬渓町の町長の地位にあり,被告Eは,同年6月24日から現在に至るまで,同町の助役の地位にある。 被告Dは,平成7年4月当時,耶馬渓町の助役の地位にあったが,平成8年2月26日に辞任した。 なお,耶馬渓町においては,平成7年4月当時,K(以下「K」という。)が町長の地位にあったが,同人は,平成8年3月8日,辞任した。 (2) 耶馬渓町内には,同町国民健康保険の直営診療所として,同町大字平田a番地のb所在の耶馬渓町国民健康保険L診療所(以下「L診療所」という。)が開設されていたが,平成7年3月末日,閉鎖された。 そのため,被告町は,民間を運営主体としてL診療所を再開することを計画し,同年5月ころ,Jに対し,L診療所の運営主体となるよう依頼し,Jは,これを承諾した。 (3) L診療所は,平成7年9月1日,医師M(以下「M医師」という。)を開設者として再開されたが,実質的には,Jが運営主体となってM医師を雇用し,同診療所に同医師が派遣される形態で業務が行われた。 (4) 被告町とJは,同年9月20日,JがL診療所を経営するに当たって赤字を生じさせた場合は被告町がその一部を助成すること,及び,その助成期間を開院後概ね二,三年間とすることを合意した。 (5) Jは,同年10月ころ,L診療所に入院施設を新設すること,及び,社会福祉法人Nを設立したうえで,老人保健施設を建設することを計画し,同月22日ころ,被告町の協力を得て,大分県知事に対し,老人保健施設の開設許可申請手続の前提となる設立希望調書を提出したが,同年12月4日ころ,大分県下毛郡内の他の医療法人による開設が許可されたため,Jによる老人保健施設の開設許可の見込みがない旨の連絡を受けた。 (6) Jは,同年12月ころ,福岡県知事 書を提出したが,同年12月4日ころ,大分県下毛郡内の他の医療法人による開設が許可されたため,Jによる老人保健施設の開設許可の見込みがない旨の連絡を受けた。 (6) Jは,同年12月ころ,福岡県知事の認可を受けた医療法人であるJが,厚生大臣の認可を受けずに大分県内で医療施設を開設するのは医療法に違反するとの指摘を受けたため,L診療所の経営から撤退せざるを得なくなった。 なお,医療法(平成9年12月17日号外法律第124号による改正前のもの。)68条の2,44条1項によれば,2以上の都道府県内で病院を開設する場合には,厚生大臣の認可がいるものとされている。 (7) そのため,原告は,同年12月ころ,JからL診療所の経営を引き継ぎ,L診療所代表の肩書で同診療所の実質的な経営者となり,M医師を雇用して診療業務を継続させ,また,O(以下「O」という。)を同診療所の事務員として採用した。 さらに,原告は,L診療所に新たに19床の入院施設及び老人デイケア施設を増築することを計画した(以下,この計画を「本件計画」といい,入院施設と老人デイケア施設を併せて「本件施設」という。)。 (8) 被告町は,平成8年1月8日,原告との間で,本件施設の建設用地とするため,L診療所に隣接した大分県下毛郡耶馬渓町大字平田字金引aのb及び同aのc所在の合計約300坪の土地(以下「本件隣接地」という。)を無償で貸与する旨の使用貸借契約を締結した。 (9) 被告町は,同年1月16日ころ,本件隣接地を買収する前提として,第2種農地である本件隣接地を原告が建設する本件施設の建設用地に転用するため,大分県知事に対し,農地法5条による農地転用の許可申請手続を行い,同年3月15日ころ,本件隣接地の所有権を取得した。 (10) 原告は,平成8年1月30日ころ,被告町町長のKからP銀行耶馬渓 るため,大分県知事に対し,農地法5条による農地転用の許可申請手続を行い,同年3月15日ころ,本件隣接地の所有権を取得した。 (10) 原告は,平成8年1月30日ころ,被告町町長のKからP銀行耶馬渓支店のQ支店長(以下「Q支店長」という。)の紹介を受け,同支店に対し,L診療所の建設資金の融資を依頼した。 (11) 原告は,同年2月27日,P銀行耶馬渓支店に対し,上記農地転用の許可申請手続に必要となる本件施設の建設資金についての融資証明を依頼し,同支店から,P銀行が原告の建設計画の内容を検討し,同銀行の融資条件を具備したと認めた場合には,建設資金を融資する予定があることを証明する旨記載された融資証明依頼書の交付を受けた。 (12) 原告は,同年3月ころ,P銀行耶馬渓支店から,本件施設の建設資金の融資を実行する条件として,①被告町が連帯保証をする,②診療所を原告と被告町との共同経営とする,③被告町が資金の全額を借り入れる,のいずれかを満たす必要がある旨の提示を受けた。 (13) 原告は,同年5月1日に被告Cが被告町の新町長に就任したことを受け,前町長のKとの間で本件計画に関して協議した内容を明確にしておくため,「K町政の打合せ事項」と題する書面を作成し,同年5月末日ころ,被告町に提出した。 同書面には,「・・・・L診療所に入院施設を建設する計画に変更。」,「資金は原則的に診療所側が準備し,土地および建設の一部を町が補助する。補助はデイケアの建築費を10年にわたり診療所に実行する。」,「L診療所は将来は医療法人としたい。町より3名の理事の任命。」,「診療所の有床化が諸計画の前提。資金はP銀行と話合い中。担保物件は提示済み。銀行の要望は下記の条件の内一つをクリアー。a)町が連帯保証 b)第三セクター c)赤字の全額補填診療所側として現在 ,「診療所の有床化が諸計画の前提。資金はP銀行と話合い中。担保物件は提示済み。銀行の要望は下記の条件の内一つをクリアー。a)町が連帯保証 b)第三セクター c)赤字の全額補填診療所側として現在Z銀行と接触。」などと記載されていた。 (14) 同年6月4日,耶馬渓町議会議員のほか,被告Cや被告町の課長等の出席による全員協議会(第1回)が開催され,同協議会において,本件計画について,「運営については第3セクターによる医療法人により運営する。」,「資金については当初L診療所で借入れ医療法人認可後切り替えを行う。」と記載された原告作成の計画文書が配布された。 (15) 同年6月10日,同町議会議員,被告C,被告町の課長等のほか,原告及びOの出席による全員協議会(第2回)が開催され,同協議会において,原告とOは,本件施設の建設資金や運営主体の問題について説明した。 (16) 原告は,同年6月14日,本件施設を建築することにつき,建築確認の申請手続を行い,建築主事から,同年7月22日付けの確認通知書の交付を受けた。 (17) 被告Cは,被告町を代表して,原告との間で,医療法人を設立し,L診療所の経営に当たることにつき,概ね下記の内容について合意したことを確認する旨の平成8年7月3日付け確認書(以下「本件確認書」という。)を作成した。 記ア医療法人を設立するに当たり,被告町より5名,L診療所より5名の理事を選出する。なお,理事長は医師のYをあてる。 イ医療法人設立の際,被告町の出資は,診療に必要な土地とする。 ウ被告町は,デイケア部分の建築費全額を10年間で分割助成する。 エ医療器機(CT)は,被告町が購入し,貸与する。 オ医療法人L診療所職員の採用に当たっては,地元雇用を最優先するものとする。 カ給食サ 町は,デイケア部分の建築費全額を10年間で分割助成する。 エ医療器機(CT)は,被告町が購入し,貸与する。 オ医療法人L診療所職員の採用に当たっては,地元雇用を最優先するものとする。 カ給食サービスを実施するに当たっては,地元商工業者に発注するものとする。 キ上記事項について,後日覚書を締結するものとする。 (18) 平成8年7月10日,原告を施主とする本件施設の増築工事につき,工事請負業者選定のための入札が実施され,耶馬渓町役場の町長室で入札書が開封され,R建設株式会社(以下「R建設」という。)が請負業者に決定した。 (19) R建設は,原告との間で,同年7月24日,R建設が本件施設の増築工事を行う旨の請負契約を締結し(以下「本件請負契約」といい,同契約に基づく同工事を「本件工事」という。),同日,本件工事に着工した。 (20) R建設は,平成8年7月24日,L診療所増築工事の起工式を開催し,同式には,施主の原告のほか,被告C,同Eや町議会議員等が参列した。 (21) P銀行耶馬渓支店のQ支店長は,同年7月25日,耶馬渓町役場を訪れ,住民課長のG(以下「G課長」という。)及び同課の保険主幹のF(以下「F」という。)に対し,原告に対する本件工事代金の融資については,①町が債務を保証すること,町営又は町の第3セクターが借主になること,のいずれかの要件を充足する必要があること,②平成8年7月16日に,本部へ正式の稟議を上げたが,融資が難しいと判断されたことを説明した。 また,同銀行中津支店長も,同年7月29日,同役場において,町長及びG課長に対し,同趣旨の説明をした。 (22) 原告は,同年7月30日,被告町の収入役のSから,P銀行からの融資の実行が難航しているため,同銀行以外の金融機関にも融資を依頼するよう指示を受け,T銀行やU銀行に対 ,同趣旨の説明をした。 (22) 原告は,同年7月30日,被告町の収入役のSから,P銀行からの融資の実行が難航しているため,同銀行以外の金融機関にも融資を依頼するよう指示を受け,T銀行やU銀行に対し,融資について相談した。 (23) 被告Cは,平成8年9月12日の耶馬渓町定例議会において,本件施設の増築工事の助成金として,被告町が1億3000万円を支出する旨の予算案を上程したが,同予算案は否決された。 (24) 原告が本件工事代金を支払わなかったため,R建設は,平成8年11月15日,本件工事を中止し,平成10年5月8日には,原告に対し,本件請負契約を解除する旨の意思表示をした。 (25) R建設は,原告を相手方として,福岡地方裁判所に本件請負契約の債務不履行に基づく損害賠償の支払を求める訴えを提起し(同裁判所平成10年(ワ)第1618号損害賠償請求事件),同裁判所は,平成11年6月15日,R建設の請求を認容し,原告がR建設に対し,1億0050万5792円及びこれに対する平成10年6月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払うよう命じる旨の判決をした。 2 当事者の主張(原告の主張)(1) 被告Cは,被告町を代表して,原告との間で,平成8年7月3日,本件確認書をもって,①被告町が,医療法人設立に必要な土地を無償で貸与すること,②被告町が,老人デイケア施設の建築費用全額を10年間で分割助成すること,③被告町が,医療器機(CT)を購入し,貸与すること,を合意した。 (2) 被告らは,原告との間で,平成7年12月24日ころから平成8年7月ころにかけて,被告らが,銀行に対し,本件工事代金の原告に対する融資を依頼し,融資の実行に向けて働きかけること,被告町が銀行から提示された融資の条件等を履行すること,及び,原告に対する銀行融資が実行されな かけて,被告らが,銀行に対し,本件工事代金の原告に対する融資を依頼し,融資の実行に向けて働きかけること,被告町が銀行から提示された融資の条件等を履行すること,及び,原告に対する銀行融資が実行されない場合には,町議会で承認を得て本件工事代金全額の予算を獲得すること,を合意した。 (3) 被告Cは,原告との間で,町議会から上記予算の承認を得られない場合には,5000万円以内の予算の支出については町長の専決事項として議会の承認が不要であるため,町長の専決処分を何度か実行することにより,町議会の議決を経ないで,本件工事代金全額を支出することを合意した。 (4) 被告C,同E及び同Dは,原告との間で,平成7年12月24日ころから平成8年10月16日ころまでの間に,本件工事代金については,被告町として,町長・助役として,さらには個人としても,被告らが責任をもって支出することを合意した。 (5) 被告町は,老人デイケア施設の建築費用を助成するとの本件確認書による合意(上記(1))に反し,原告に対し,建築費用(本件工事代金)の助成をしなかった。 被告らは,上記(2)の合意に反し,銀行融資の協力をしなかったため,原告に対する銀行融資は実行されなかった。 また,被告らは,上記(2)の合意に反し,耶馬渓町議会において本件工事代金の予算の獲得をせず,被告Cは,上記(3)の合意に反し,町長の専決処分による本件工事代金の支出をしなかった。 さらに,被告C,同E及び同Dは,上記(4)の合意を履行しなかった。 (6) そのため,原告は,本件工事代金を支払うことができず,本件請負契約が解除され,①前記のとおり,R建設に対し,1億0050万5792円及び遅延損害金の支払義務を負うに至り,また,原告は,②本件施設の設計を依頼した株式会社V設計事務所に対し,設計料750万円,③ 約が解除され,①前記のとおり,R建設に対し,1億0050万5792円及び遅延損害金の支払義務を負うに至り,また,原告は,②本件施設の設計を依頼した株式会社V設計事務所に対し,設計料750万円,③本件工事のコンサルタント業務を依頼した株式会社Wに対し,コンサルタント料1030万円,④本件施設の建設用地に存在した医師住宅の移転費用として,有限会社X工務店に対し,1200万円の各支払義務を負うに至り,上記支払義務の合計に相当する1億3030万5792円の損害を被った。 (7) 被告町に対する予備的主張被告Cが上記(1)ないし(4)の合意を履行せず,また,同E及び同Dが上記(2)及び(4)の合意を履行しなかったことは,原告に対する不法行為に当たり,被告町に国家賠償法に基づく賠償責任を発生せしめるものである。 (8) よって,原告は,被告らに対し,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,被告町に対しては,予備的に国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき,連帯して,1億3030万5792円,及び,これに対する訴状送達の日の翌日(被告町,同D及び同Eは平成11年8月12日,同Cは同月19日)から,それぞれ支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)(1) 原告の主張(1)記載の合意が成立したとの主張は,否認する。 被告町は,本件確認書において,医療法人が設立された場合に,当該医療法人に対して被告町が行う基本的事項を確認したにすぎず,医療法人でない原告個人に対し,老人デイケア施設の建築費用を助成することを確認したものではない。また,医療法人が設立されていない以上,建築費用の助成がされないのは当然のことであり,被告町に何ら債務不履行はない。 (2) 原告の主張(2)ないし(4)記載の合意が成立したとの主張は,いずれも否 い。また,医療法人が設立されていない以上,建築費用の助成がされないのは当然のことであり,被告町に何ら債務不履行はない。 (2) 原告の主張(2)ないし(4)記載の合意が成立したとの主張は,いずれも否認する。 仮に,被告Cが,町長の専決処分により本件工事代金を支出する旨の発言をしたとしても,このような支出は,地方自治法に違反するものであり,この発言に拘束力はなく,これを履行しないからといって,何ら債務不履行にはならない。 第3 当裁判所の判断 1 本件確認書による合意(原告の主張(1))の成否について原告は,本件確認書により,被告町が,老人デイケア施設の建築費用全額を助成する旨の合意をしたにもかかわらず,建築費用の助成をしなかったと主張するので,上記合意の成否について検討する。 被告Cが,原告との間で,本件確認書を作成し,同書に,被告町がデイケア部分の建築費全額を10年間で分割助成する旨の記載があることは,前記認定のとおりである。 しかしながら,前記認定及び証拠(甲2の(10),(13),証人F,同G,原告本人)によれば,原告は,平成8年1月末ころから,P銀行耶馬渓支店に対し,L診療所の建設資金の融資を依頼し,同年3月ころには,同支店から,融資を実行するためには,①被告町が連帯保証をする,②診療所を原告と被告町との共同経営とする,③被告町が資金の全額を借り入れる,のいずれかを満たす必要があるとの条件の提示を受けていたこと,原告は,上記条件の提示を受けて,被告町との共同出資により共同経営することが予定された,いわゆる第3セクターの医療法人を設立し,将来的に同法人への融資に切り替えることにより,当初の原告に対する融資を実現させることを計画し,同計画は全員協議会で提案されたが,本件確認書を作成した同年7月当時,耶馬渓町議会に議案として提出され 将来的に同法人への融資に切り替えることにより,当初の原告に対する融資を実現させることを計画し,同計画は全員協議会で提案されたが,本件確認書を作成した同年7月当時,耶馬渓町議会に議案として提出される段階には至っていなかったこと,本件確認書は,医療法人を設立する際,被告町が診療所用地や医療器械を提供することや,被告町側から理事の半数を選出することなど,第3セクターの医療法人の設立に関する合意が記載されているが,同時に,同書による合意事項については後日覚書を締結する旨記載されていること,本件合意書は,銀行融資のための資料にするとの理由で,原告の依頼により作成されたものであること,が認められ,これらの事実を総合考慮すれば,本件確認書は,本件請負契約の締結時期が迫り,銀行からの融資の実現を急いでいた原告の要望により,銀行から提示された条件を充足しているように見せて融資を円滑に実行させるため,便宜的に作成されたものであり,本件確認書の作成によって,被告町が老人デイケア施設の建築費用を助成する旨の合意をした趣旨とは解することができないというべきである。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 2 原告の主張(2)の合意の成否について(1) 原告は,被告らとの間で,平成7年12月24日ころから平成8年7月ころにかけて,被告らが,銀行に対し,原告への融資を依頼し,融資の実行に向けて働きかけること,被告町が銀行から提示された融資の条件等を履行すること,及び,原告に対する銀行融資が実行されない場合には,町議会で承認を得て本件工事代金全額の予算を獲得することを合意したと主張し,その具体的内容として,①被告Dが,平成7年12月24日,P銀行耶馬渓支店の個人に対する3億3000万円の融資が可能であり,保証人は不要である,赤字の場合は被告町が 獲得することを合意したと主張し,その具体的内容として,①被告Dが,平成7年12月24日,P銀行耶馬渓支店の個人に対する3億3000万円の融資が可能であり,保証人は不要である,赤字の場合は被告町が赤字を填補する旨の発言をしたこと,②被告町のS収入役が,平成8年7月30日,町からの補助金は1億4000万円,銀行融資は2億6000万円となる,融資については,町当局がP銀行に依頼している旨の発言をしたこと,③同日,同銀行耶馬渓支店のQ支店長が,町からの融資要請が強く,同銀行中津支店と協議している旨を発言したこと,④平成7年12月24日ころから,平成8年7月ころにかけて,被告Cや同Dらが,上記①ないし③の発言と同調した行動をとっていたこと,を指摘している。 (2) そこで検討するに,原告の指摘する上記①ないし③の発言がなされた事実については,これに沿う原告作成の報告書(甲8)がある。しかし,上記各発言がなされた事実を客観的に裏付ける証拠がないばかりか,上記各発言がいかなる状況のもとになされたものであるかの具体性に乏しく,仮に,上記①ないし③の発言の存在が認められるとしても,これらの発言によっては,原告に対して銀行融資の獲得又は予算の獲得を約する趣旨のものであるとまでは解することができず,上記各合意の存在を推認することはできないというべきである。 (3) 原告は,上記①ないし③の発言のほかに上記合意の存在を推認させる事情として,被告ら(特に被告C及び同D)の平成7年12月24日ころから平成8年7月ころの行動を指摘している(上記④)。 そこで,原告の上記主張のうち,被告らが,銀行に対して融資を依頼し,融資の実行に向けて働きかけること,及び,被告町が銀行から提示された融資の条件等を履行することを合意したとの点について検討するに,原告は,その本人尋問 張のうち,被告らが,銀行に対して融資を依頼し,融資の実行に向けて働きかけること,及び,被告町が銀行から提示された融資の条件等を履行することを合意したとの点について検討するに,原告は,その本人尋問において,平成8年3月ころまでは,被告町から,Oを通じて,被告町が融資の働きかけを行うと聞いていた旨を供述するが,この供述部分は,被告町側の発言者が誰であるのかが不明なうえ,発言内容もあいまいであり,信用することができないというべきである。 また,前記認定及び証拠(証人F)によれば,原告にP銀行耶馬渓支店を紹介したのは被告町町長のKであること,Fは,平成8年3月末から同年4月ころの間に,原告に対する融資が難航している旨をQ支店長から聞いていたこと,被告Cは,同年7月29日,原告に対する融資の条件や同銀行の稟議により融資が難しい旨の説明をP銀行から受けたことが認められるが,他方で,前記認定及び証拠(甲2の(17),6)によれば,原告は,平成8年1月末ころから,P銀行耶馬渓支店に対し,本件施設の建設資金の融資を依頼し,同年3月ころには,同支店から融資の条件の提示を受けていたこと,原告は,同年7月末には,P銀行以外の金融機関にも融資を依頼するよう被告町のS収入役から指示され,他の銀行に融資を相談していたこと,原告は,同年7月末以後もP銀行に対する融資の依頼を継続し,同年11月ころには,個人の連帯保証や物的担保の提供による融資の実行を交渉するなどしていたことが認められ,これらの事実を総合考慮すれば,被告らが原告に対する銀行融資の実行に協力的な態度を示していたことまでは認められるものの,それ以上に,被告らが,銀行から原告に対する融資を被告らにおいて依頼し,融資の実行に向けて働きかけることや,銀行から提示された条件を被告町が履行することを,明示的にある ことまでは認められるものの,それ以上に,被告らが,銀行から原告に対する融資を被告らにおいて依頼し,融資の実行に向けて働きかけることや,銀行から提示された条件を被告町が履行することを,明示的にあるいは黙示的に,原告に対して約したとの事実を推認することはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はないというべきである。 (4) 次に,原告の上記主張のうち,被告らが,原告との間で,町議会で承認を得て本件工事代金全額の予算を獲得することを合意したとの点について検討する。 前記認定及び証拠(甲2の(12),(18),6,7,12)によれば,平成8年6月に,2度にわたる全員協議会が開催され,うち1回の協議会には原告が出席し,本件計画について説明したこと,被告C及び同Eが,同年7月24日に開催された本件施設の増築工事の起工式に出席したこと,被告Cは,医療と福祉の町づくりを町長選挙の公約に掲げており,町長就任後も,本件計画の実現に積極的な意向を有していたこと,被告Cは,平成8年9月12日の耶馬渓町定例議会において,本件施設の増築工事の助成金として,被告町が1億3000万円を支出する旨の予算案を上程したが,同議会において否決されたこと,が認められ,これらの事実に照らせば,被告Cが,本件計画を実現するため,本件工事代金の予算を獲得できるよう努力する意思を有し,原告に対しても,この意思を表明していたことは窺われる。しかしながら,予算の制定には町議会の議決が必要であるという性質に照らし,被告町の執行機関にすぎない町長又は助役の地位にある被告らが,予算の獲得の実現についてまで合意することは,その権限を越える内容を合意することであって,被告らにおいては,到底なしうるところではなく,また,そのことは,原告においても当然に認識しうるところであるから,被告Cの意思の ついてまで合意することは,その権限を越える内容を合意することであって,被告らにおいては,到底なしうるところではなく,また,そのことは,原告においても当然に認識しうるところであるから,被告Cの意思の表明は,予算獲得に向けて最大限の尽力をするというに留まるものであって,予算の獲得を確約する内容の合意が成立したものとは認めることができないというべきであり,このことは,被告らが町議会において予算案が否決されるかもしれないことを想定していなかった場合であっても異ならないと解するのが相当である。 なお,被告らが,原告に対し,本件工事代金の予算を獲得できるよう努力する趣旨の発言をしていたとしても,それは,被告らにおいて,その権限内での最大限の尽力をすることを約したに留まるものであるところ,前認定のとおり,本件施設の増築工事の助成に関する予算案が町議会に上程されているのであるから,被告らとしてはなすべきことを尽くしているのであり,被告らに債務不履行や国家賠償法上の違法があると認めることはできない。 (5) したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 3 原告の主張(3)の合意の成否について原告は,被告Cが,原告との間で,町議会から予算の承認を得られない場合には,町長の専決処分により本件工事代金全額を支出することを合意したと主張し,その具体的内容として,前記2の①ないし③の発言に加えて,⑤被告Eが,平成8年10月4日,原告に対し,町が診療所の施設の整備を行うので,原告は運営のみを行えばよい旨の発言をしたこと,⑥被告C及び同Eが,同年10月16日,原告に対し,同月末日までに1億円くらいは前倒しで資金を出す旨,及び,融資が困難であれば被告町独自でL診療所を建設する旨の発言をしたこと,を指摘している。 そこで検討するに,仮に,原告の指摘する 原告に対し,同月末日までに1億円くらいは前倒しで資金を出す旨,及び,融資が困難であれば被告町独自でL診療所を建設する旨の発言をしたこと,を指摘している。 そこで検討するに,仮に,原告の指摘する上記各発言の存在が認められるとしても,これらの発言は,いかなる状況のもとになされたものであるかの具体性に欠け,したがって,町長の専決処分による支出との関連でなされた発言であるかどうかが明確でないから,これによっては,上記合意の存在を推認することはできず,他に上記合意の存在を認めるに足りる証拠はないというべきである。 4 原告の主張(4)の合意の成否についてまた,原告は,被告C,同E及び同Dが,原告との間で,平成7年12月24日ころから平成8年10月16日ころまでの間に,本件工事代金については,被告町として,町長・助役として,さらには個人としても,同被告らが責任をもって支出することを合意したと主張するが,上記合意の存在は,本件にあらわれた全証拠によっても,これを認めるに足りないというべきである。 5 結論よって,原告の本件請求は,いずれも理由がない。 (口頭弁論終結日平成14年8月22日)福岡地方裁判所小倉支部第3民事部裁判長裁判官杉本正樹裁判官田村政巳裁判官山田真依子
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