令和6(行ケ)27 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月13日 東京高等裁判所
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判決文本文15,103 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 令和6年10月27日に施行された衆議院議員総選挙の比例代表選出議員選挙について、東京都選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 事案の概要本件は、令和6年10月27日施行の第50回衆議院議員総選挙(以下「本 件選挙」という。)について、東京都選挙区の選挙人である原告らが、衆議院比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」といい、本件選挙における比例代表選挙を「本件比例代表選挙」という。)の定数配分及び選挙区割りに関する公職選挙法(以下「公選法」という。)の規定は、選挙権(投票価値)の平等の保障に反するなど憲法に違反する無効なものであるから、これらに基づき施行さ れた本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟(公選法204条)である。 2 前提事実等(当事者間に争いがない事実、当裁判所に顕著な事実及び後掲各証拠及又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 本件選挙の施行 令和6年10月27日、本件選挙が施行された。 本件選挙施行当時、衆議院議員の定数は465人とされ、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員とされており(公選法4条1項)、小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において一人の議員を選出す るものとされ(同法13条1項、別表第1)、比例代表選挙については、全国 に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされていた(同法13条2項、別表第2)。 るものとされ(同法13条1項、別表第1)、比例代表選挙については、全国 に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされていた(同法13条2項、別表第2)。 衆議院議員総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い(同法31条)、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに一人一票とされている(同法36条)。 ⑵ 本件比例代表選挙について本件比例代表選挙は、平成6年法律第2号、同第10号、同第104号及び同第105号(以下、併せて「平成6年改正法」という。)、平成12年法律第1号、平成14年法律第95号、平成28年法律第49号、平成29年法律第58号及び令和4年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)に よって改正された公選法13条2項及び同別表第2による選挙区割り及び議員定数の定め(以下「本件区割規定」という。)に従って施行されたものである。 令和4年改正法は、令和2年に行われた統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果 (確定値)に基づき、議員定数を、東京都選挙区で17人から19人に、南関東選挙区で22人から23人にそれぞれ増加させる一方、東北選挙区で13人から12人に、北陸信越選挙区で11人から10人に、中国選挙区で11人から10人にそれぞれ減少させる定数配分の変更を行った。 その結果、令和2年国勢調査の結果(確定値)を基準とした場合の選挙区 間における議員1人当たりの当該選挙区における日本国民の人口の最大較差は、人口の最も少ない四国選挙区(61万0818人)と最も多い北関東選挙区(72万4944人)との間で1対1.187であった。なお、本件選挙当時、東京都選挙 該選挙区における日本国民の人口の最大較差は、人口の最も少ない四国選挙区(61万0818人)と最も多い北関東選挙区(72万4944人)との間で1対1.187であった。なお、本件選挙当時、東京都選挙区における議員1人当たりの人口は71万3906人であった(乙1)。 ⑶ 原告ら 原告らは、いずれも本件比例代表選挙の東京都選挙区の選挙人である。 ⑷ 公選法における重複立候補制の仕組み等ア平成6年改正法による改正後の公選法86条の2は、比例代表選挙における立候補につき、同条1項各号所定の要件のいずれかを備えた政党その他の政治団体のみが団体の名称と共に順位を付した候補者の名簿を届け出 ることができるものとし、上記の名簿の届出をした政党その他の政治団体(衆議院名簿届出政党等)のうち小選挙区選挙において候補者の届出をした政党その他の政治団体(候補者届出政党)は、その届出に係る候補者を同時に比例代表選挙の名簿登載者とすることができ、両選挙に重複して立候補する者については上記名簿における当選人となるべき順位を同一のも のとすることができるという、いわゆる重複立候補制を採用している。 重複立候補者は、小選挙区選挙において当選人とされた場合には、比例代表選挙における当選人となることはできないが、小選挙区選挙において当選人とされなかった場合には、名簿の順位に従って比例代表選挙の当選人となることができ、後者の場合に、名簿において同一の順位とされた者 の間における当選人となるべき順位は、小選挙区選挙における得票数の当該選挙区における有効投票の最多数を得た者に係る得票数に対する割合の最も大きい者から順次に定めるものとされている(公選法95条の2第3ないし第5項)。 公選法86条の2第1項各号所定の要件のう 当該選挙区における有効投票の最多数を得た者に係る得票数に対する割合の最も大きい者から順次に定めるものとされている(公選法95条の2第3ないし第5項)。 公選法86条の2第1項各号所定の要件のうち1号、2号の要件は、同 法86条1項1号、2号所定の候補者届出政党の要件と同一であるから、これらの要件を充足する政党等に所属する者は小選挙区選挙及び比例代表選挙に重複して立候補することができるが、当該政党等に所属しない者は、同法86条の2第1項3号所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属するものにあっては比例代表選挙又は小選挙区選挙のいずれかに、そ の他のものにあっては小選挙区選挙に立候補することができるにとどまり、 両方に重複して立候補することはできないものとされている。 イ前記アの名簿に登載することができる候補者の数は、各選挙区の定数を超えることができないが、重複立候補者はこの計算上除外されるので、候補者届出政党の要件を充足した政党等は、上記の定数を超える数の候補者を名簿に登載することができることとなる(公選法86条の2第5項)。そ して、衆議院名簿届出政党等のすることができる自動車、拡声機、ポスターを用いた選挙運動や新聞広告、政見放送等の規模は、名簿登載者の数に応じて定められている(同法141条3項、144条1項2号、149条2項、150条5項等)。さらに、候補者届出政党は、小選挙区選挙の選挙運動をすることができるほか、衆議院名簿届出政党等でもある場合には、 その小選挙区選挙に係る選挙運動が同法の許す態様において比例代表選挙に係る選挙運動にわたることを妨げないものとされている(同法178条の3第1項)。 ウ本件比例代表選挙において、小選挙区選挙で当選人とされなかった候補者で比例代表選挙にお 様において比例代表選挙に係る選挙運動にわたることを妨げないものとされている(同法178条の3第1項)。 ウ本件比例代表選挙において、小選挙区選挙で当選人とされなかった候補者で比例代表選挙において当選人となった候補者は130名であり、比例 代表選出議員176名(前記⑴)に占める割合は78.3%であった。 3 争点本件比例代表選挙は、憲法に違反した公選法の規定に基づくものとして、無効となるか。 4 当事者の主張 (原告らの主張)以下のとおり、公選法の規定は違憲であるから、これに基づいて施行された本件比例代表選挙は無効である。 ⑴ 小選挙区選挙と比例代表選挙が不可分一体であることによる無効(無効理由1) 憲法は、衆議院議員選挙につき「総選挙」と定め(憲法7条4号、54条1 項)、小選挙区選出議員と比例代表選出議員との間に、その地位、任期及び権能について何ら差異を設けていないこと、衆議院議員が議会で行使する投票権は全て等価値のものでなければならないこと、公選法は、小選挙区選挙と比例代表選挙の並立制を採用し、前者で民意の集約を図り、後者で民意の忠実な反映を図ることにより、両者が相まって公選法が目的とする公正かつ効 果的な代表を創出させようとしたこと、現行の衆議院議員総選挙においては重複立候補制が採用されており、小選挙区選挙と比例代表選挙の関係はより緊密なものとなっていることからすれば、小選挙区選挙と比例代表選挙は不可分一体の総選挙であり、その一部に違憲無効の重大な瑕疵があれば、これにより総選挙全体が違憲無効の瑕疵を帯びるところ、本件選挙の小選挙区選 挙は、議員定数(289人)が人口に比例して配分されていない(公選法13条1項、同別表第1)などの点において違 れば、これにより総選挙全体が違憲無効の瑕疵を帯びるところ、本件選挙の小選挙区選 挙は、議員定数(289人)が人口に比例して配分されていない(公選法13条1項、同別表第1)などの点において違憲無効であるから、本件選挙は全体として無効となり、本件比例代表選挙も当然無効となる。 ⑵ 重複立候補制の問題点(無効理由2)ア本件選挙において、小選挙区で落選した候補者が比例区で「復活当選」 した議員は130名であり、比例代表選出議員176名のうち73.8%に当たるところ、小選挙区の選挙民は候補者が当該小選挙区の代表になることを期待して投票したから、比例代表選出議員の73.8%は小選挙区の代表であるという現状は比例代表制の崩壊である。 イ重複立候補制は、小選挙区選挙における落選者が、各政党の名簿の順位 によって、同順位の場合には「惜敗率」という計数的偶然性によって、復活当選する可能性を是認するという極めて不合理かつ不可思議な制度であり、憲法前文にいう「正当に選挙された」というには程遠い。また、重複立候補制を利用する重複立候補者は、そうでない立候補者と比べると、1回の選挙において2回の立候補が認められ、被選挙権を2倍与えられたのと同一 の効果を持ち、小選挙区選挙のみに立候補した者との間で差別的取扱いを し、小選挙区選挙に落選した重複立候補者に投票した選挙人に複数の投票権を与えたのと同一の効果を認めるものであるから、憲法14条1項の法の下の平等の原則及びこれを政治の領域において具現化した憲法15条3項、44条ただし書に反する。そもそも、「選挙」ないし「投票」は、立候補者が代表者として適任であるかどうかを選挙人に判断させて適任者を当 選させることのみならず、不適格者を落選させることをもその目的とするに し書に反する。そもそも、「選挙」ないし「投票」は、立候補者が代表者として適任であるかどうかを選挙人に判断させて適任者を当 選させることのみならず、不適格者を落選させることをもその目的とするにもかかわらず、重複立候補制は、選挙人の投票による意思表示を適正に評価せず、かえってその意思に反する評価を行うものである。 このように、重複立候補制に関する平成6年改正後の公選法86条の2は、選挙人の投票意思をゆがめるものであるから、憲法前文、43条1項、 14条1項、15条3項、44条に違反する。 ウ重複立候補制は、選挙の時点で候補者名簿の順位が確定せず、その順位は小選挙区選挙の結果に左右されるという不確定的、条件付きのものであり、国民が順位の確定した名簿を見た上で投票する制度であるとはいえないから、直接選挙とはいえず、実質的には政党が当選者を選ぶ間接選挙で あって、憲法43条1項、15条1項、3項に違反する。 エ公選法86条の2第1項各号のうち、比例代表選挙の衆議院名簿届出政党等に係る同項1号及び2号の要件は、同法86条1項1号及び2号所定の小選挙区選挙における候補者届出政党の要件と同一であるから、これらの要件を充足する政党等に所属する者は、小選挙区選挙及び比例代表選挙 に重複して立候補することができるが、上記政党等に所属しない者は、両方に重複して立候補することはできない。また、前記候補者名簿(衆議院名簿)に登載することができる候補者の数は、各選挙区の定数を超えることができないが、重複立候補者はこの計算上除外されるから(公選法86条の2第5項)、候補者届出政党の要件を充足した政党等は、上記定数を超 える数の候補者を衆議院名簿に登載することができることとなる。衆議院 名簿届出政党等のすること るから(公選法86条の2第5項)、候補者届出政党の要件を充足した政党等は、上記定数を超 える数の候補者を衆議院名簿に登載することができることとなる。衆議院 名簿届出政党等のすることができる自動車等を用いた選挙運動や、新聞広告等の規模は名簿登載者の数に応じて定められていること(公選法141条3項、144条1項2号、149条2項、150条5項等)等を併せ考えると、立候補の機会において、候補者届出政党に所属する候補者は、重複立候補をすることが認められているのに対し、それ以外の候補者は、重複 立候補の機会がなく、衆議院名簿届出政党等の行うことができる選挙運動の規模においても、候補者届出政党の要件を備えたものは、これを備えないものより規模の大きな選挙運動を行うことができることになる。 このように、重複立候補をすることができる者ないし候補者届出政党の要件を充足する政党等と、重複立候補をすることができない者ないし上記 要件を充足しない政党等とを差別的に取り扱うことは、選挙人の選挙権の十全な行使を侵害するものであり、憲法15条1項、3項、44条、14条1項、47条、43条1項に違反する。 オ以上によれば、重複立候補を認めた公選法86条の2第4項の規定は違憲無効であり、同項に基づく本件比例代表選挙は違憲な選挙として、無効 とされるべきである。 ⑶ 人口比例配分違反による無効(無効理由3)令和4年改正後の公選法は、比例代表選出議員の定数配分についても、いわゆるアダムズ方式に従い、東京都選挙区で2、南関東選挙区で1増加させ、3選挙区(東北、北陸信越、中国)でそれぞれ1減少させる3増3減を行っ た。しかし、令和2年国勢調査人口(日本国民の人口)を比例代表選出議員の総定数で除し、その商(基準人数)を で1増加させ、3選挙区(東北、北陸信越、中国)でそれぞれ1減少させる3増3減を行っ た。しかし、令和2年国勢調査人口(日本国民の人口)を比例代表選出議員の総定数で除し、その商(基準人数)を求め、これに各選挙区に配分された議員定数を乗じて「必要人数」を求め、各選挙区の実際の人口と必要人数との差(絶対値)が基準人数以上であれば、このような定数配分は違憲であるところ、このような判断基準に沿って検討すると、アダムズ方式は、議員定数を 比例代表選挙区の人口に比例して配分するものではないから、本件区割規定 は民主主義憲法に違反する。 ⑷ ブロック別配分議員数の不平等(無効理由4)前記⑴のとおり、小選挙区選挙と比例代表選挙は一つの衆議院議員総選挙と考えるべきであるから、比例区に配分された比例代表選出議員数のみならず、同比例区に含まれる小選挙区選出議員数を合算した議員数(ブロック議 員数)についても、11の比例区(ブロック)に、その人口に比例して配分されなければならない。 令和4年改正後の公選法による11ブロックへの議員定数配分について、令和2年国勢調査の結果を用いて検討すると、配分議員数は、近畿ブロックで2人、南関東ブロックで1人、東京都ブロックで1人がそれぞれ不足し、 北陸信越ブロックで1人、四国ブロックで2人それぞれ過剰となっている。 また、人口8位の中国ブロックにおけるブロック議員数(比例代表選挙の定数と小選挙区選挙の議員の定数を合計したもの)が27人であるのに対し、人口9位の北陸信越ブロックにおけるブロック議員数は28人であり、逆転現象が起きている。前記⑶の判断基準に照らすと、このような議員定数配分 が憲法の投票価値の平等に違反することは明らかである。 (被告の主張)⑴ 無効理由1について は28人であり、逆転現象が起きている。前記⑶の判断基準に照らすと、このような議員定数配分 が憲法の投票価値の平等に違反することは明らかである。 (被告の主張)⑴ 無効理由1について小選挙区選挙及び比例代表選挙は、それぞれ選挙制度としての機能及び選挙の方法が異なり、両者は異なる選挙であるから、後者の無効を求める訴訟 において、前者の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできない。原告らの主張は、その前提を欠き、失当である。 ⑵ 無効理由2について公選法が衆議院議員総選挙につき重複立候補制を採用することについては、政策本位・政党本位の選挙制度の実現という政策目的に照らして十分合理性 があり、原告らが主張する事由をもって、国会が重複立候補制について具体 的に定めたところが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえないから、重複立候補制に関する公選法の規定が憲法14条1項等の規定に違反するものとはいえない。 ⑶ 無効理由3について投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となる ものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるから、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するものではない。本件比例代表選挙は、令和2年国勢調査 の結果に基づく計算により改定された定数配分によって行われたものであるところ、その最大較差は、四国選挙区と北関東選挙区との間の1対1.187にとどまっており、この程度のごく僅かな較差をもって、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとはいえ れたものであるところ、その最大較差は、四国選挙区と北関東選挙区との間の1対1.187にとどまっており、この程度のごく僅かな較差をもって、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとはいえない。 ⑷ 無効理由4について 小選挙区選挙と比例代表選挙は、選挙制度としての機能及び方法が異なる選挙であり、選挙制度に関する具体的な定めが憲法の投票価値の平等の要求に反するか否かを判断する場合において、小選挙区選挙の定数と比例代表選挙の定数とを単純に合計して比較することには意味がなく、両選挙はそれぞれ別個独立にこれを判断すべきであるから、原告らの主張は失当である。 第3 当裁判所の判断 1 無効理由1(小選挙区選挙と比例代表選挙が不可分一体であることによる無効)について⑴ 原告らは、小選挙区選挙と比例代表選挙は不可分一体であり、その一部に違憲無効の重大な瑕疵があれば、それにより総選挙全体が違憲無効の瑕疵を 帯びるところ、小選挙区選挙については、議員定数が人口に比例して配分さ れていないなどの点において違憲無効であるから、本件選挙が全体として無効となり、本件比例代表選挙も当然に無効となる旨を主張する。 ⑵ しかし、平成6年改正法により導入された小選挙区比例代表並立制において、小選挙区選挙と比例代表選挙は、それぞれの選挙ごとに、選挙区が定められており(小選挙区選挙について公選法13条1項及び同別表第1、比例 代表選挙について同条2項及び同別表第2)、また、選挙の方法についても別個のものとして施行されている。すなわち、小選挙区選挙においては、立候補は候補者個人による届出が認められ(同法86条2項、6項)、その投票は、投票用紙に公職の候補者一人の氏名を自書することとされ(同法46条1項)、当選人の決定は なわち、小選挙区選挙においては、立候補は候補者個人による届出が認められ(同法86条2項、6項)、その投票は、投票用紙に公職の候補者一人の氏名を自書することとされ(同法46条1項)、当選人の決定は、有効投票の最多数を得た者をもって当選人とするものとさ れている(同法95条1項)。これに対し、比例代表選挙においては、立候補は候補者個人による届出は認められず、一定の要件を満たす政党その他の政治団体に限り届出が認められており(同法86条の2第1項)、その投票は、投票用紙に一つの衆議院名簿届出政党等の届出に係る名称又は略称を自書することとされ(同法46条2項)、当選人の決定は、各衆議院名簿届出政党等 の得票数に基づき、いわゆる「ドント方式」により行うこととされている(同法95条の2第1項)。 このように、小選挙区選挙と比例代表選挙は、選挙制度としての機能及び選挙の方法が異なる選挙であり、選挙人は、それぞれの選挙において別個の選挙権を行使するものというべきであるから、比例代表選挙の無効を求める 訴訟において、小選挙区選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできないというべきである(最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁(以下「平成11年大法廷判決」という。)参照)。 したがって、原告らの主張はその前提を欠き採用できない。 2 無効理由2(重複立候補制の問題点)について ⑴ 原告らは、重複立候補制について、①比例代表選出議員176名のうち73.8%に当たる議員を小選挙区で落選した候補者が占めている状況は比例代表制の崩壊である、②重複立候補者が小選挙区選挙で落選しても、比例代表選挙で復活当選することができるなどの点において、選挙人の投票意思をゆがめるものであ 挙区で落選した候補者が占めている状況は比例代表制の崩壊である、②重複立候補者が小選挙区選挙で落選しても、比例代表選挙で復活当選することができるなどの点において、選挙人の投票意思をゆがめるものであり、「正当な選挙」とはいえず、法の下の平等の原則にも反 するから、憲法前文、43条1項、14条1項、15条3項、44条に違反する、③選挙の時点で候補者名簿の順位が確定しないから直接選挙とはいえず、憲法43条1項、15条1項、3項に違反する、④重複立候補をすることができる者とできない者、また、候補者届出政党の要件を充足する政党等と同要件を充足しない政党等をいずれも差別的に取り扱うものであり、選挙人の 選挙権の十全な行使を侵害するものであって、憲法15条1項、3項、44条、14条1項、47条、43条1項に違反する旨主張する。 ⑵ しかし、憲法は、国会の両議院の議員の選挙について、およそ議員は全国民を代表するものでなければならないという制約の下で、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43 条、47条)、選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の広い裁量に委ねている。したがって、国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記の制約や法の下の平等などの憲法上の要請に反するため国会の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである(平 成11年大法廷判決、最高裁平成13年(行ツ)第233号同年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1712頁(以下「平成13年判決」という。)参照)。 この観点からみると、同時に行われる二つの別個の選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否か 日第三小法廷判決・民集55巻7号1712頁(以下「平成13年判決」という。)参照)。 この観点からみると、同時に行われる二つの別個の選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、選挙制度の仕組みの一つとして、 国会が裁量により決定することができる事項である。そして、重複して立候 補することを認める制度においては、一の選挙において当選人とされなかった者が他の選挙において当選人とされること(復活当選)があり得ることは、当然の帰結であるから、本件比例代表選挙において、比例代表選出議員176名のうち小選挙区選挙で当選人とされなかった候補者が130名(73. 8%)であったことを考慮しても、重複立候補制を採用したこと自体が、憲 法前文、43条1項、14条1項、15条3項、44条に違反するとはいえない(平成11年大法廷判決、平成13年判決参照)。 また、政党等にあらかじめ候補者の氏名及び当選人となるべき順位を定めた名簿を届け出させた上、選挙人が政党等を選択して投票し、各政党等の得票数の多寡に応じて当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式は、投票 の結果、すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。複数の重複立候補者の比例代表選挙における当選人となるべき順位が名簿において同一のものとされた場合には、それらの者の間では当選人となるべき順位が小選挙区選挙の結果を待たないと確定しないことになる(公選法95条の2 第3項)が、結局のところ当選人となるべき順位は投票の結果によって決定されるのであるから、このことをもって比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項、15条1項、3項に違反するとはいえない ところ当選人となるべき順位は投票の結果によって決定されるのであるから、このことをもって比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項、15条1項、3項に違反するとはいえない(平成11年大法廷判決、平成13年判決参照)。 さらに、衆議院議員選挙において重複立候補をすることができる者は、公 選法86条の2第1項1号及び2号所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属する者に限られており、これに所属しない者は重複立候補をすることができないこと(前提事実等⑷ア)とされている。候補者届出政党の要件については、選挙制度を施策本位、政党本位のものとするために設けられたものと解されるのであり、政党の果たしている国政上の重要な役割にかん がみれば、選挙制度を政策本位、政党本位のものとすることは、国会の裁量 の範囲に属することが明らかである。したがって、同じく政策本位、政党本位の選挙制度というべき比例代表選挙と小選挙区選挙に重複して立候補することができる者が候補者届出政党の要件と衆議院名簿届出政党等の要件の両方を充足する政党等に所属する者に限定されていることには、相応の合理性が認められるのであって、不当に立候補の自由や選挙権の行使を制限すると はいえず、これが国会の裁量権の限界を超えるものとは解されない(平成11年大法廷判決参照)。 そして、行うことができる選挙運動の規模が候補者の数に応じて拡大されるという制度(同イ)は、衆議院名簿届出政党等の間に取扱い上の差異を設けるものではあるが、選挙運動をいかなる者にいかなる態様で認めるかは、 選挙制度の仕組みの一部を成すものとして、国会がその裁量により決定することができるものというべきである。一般に名簿登載者の数が多くなるほど選挙運動の必要性が増大する かなる態様で認めるかは、 選挙制度の仕組みの一部を成すものとして、国会がその裁量により決定することができるものというべきである。一般に名簿登載者の数が多くなるほど選挙運動の必要性が増大するという面があることは否定することができないところであり、重複立候補者の数を名簿登載者の数の制限の計算上除外することにも合理性が認められるから、上記のような選挙運動上の差異を生ずる ことは、合理的理由に基づくものであって、これをもって国会の裁量の範囲を超えるとはいえず、選挙権の十全な行使を侵害するものでないことも明らかである。したがって、上記のような差異を設けたことが憲法15条1項、3項、44条、14条1項、47条、43条1項に違反するとはいえない(平成11年大法廷判決参照)。 以上のとおりであるから、原告らの主張は採用できない。 3 無効理由3(人口比例配分違反による無効)について⑴ 原告らは、令和4年改正法による改正後の公選法における本件区割規定は、議員定数を比例代表選挙区の人口に比例して配分するものではないから、民主主義憲法に違反する旨主張する。 ⑵ 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求している ものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、 選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が る事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、 選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められている というべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現す るとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記の ような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1 243 頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷 判決・民集 巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1 243 頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷 判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ) 第176号同19年6月13日大法廷判 決・民集61巻4号1617頁、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年大法廷判決・民集65巻2号755頁、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁、最高裁平成30年(行ツ)第153号同年 12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁、最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1号1頁参照)。 本件比例代表選挙は、令和2年国勢調査の結果に基づいて議員定数の配分の変更を行った令和4年改正法に基づいて行われたものであるところ、選挙区間における議員1人当たりの当該選挙区における日本国民の人口の最大較 差は、四国選挙区(61万0818人)と北関東選挙区(72万4944人)との間の1対1.187にとどまっており(前提事実等⑵)、原告らが属する東京都選挙区についてはその較差はより小さいものであったとうかがわれること(同⑶)を考慮すれば、本件比例代表選挙に係る本件区割規定が、国政遂行のための民意の的確な反映を実現すると )、原告らが属する東京都選挙区についてはその較差はより小さいものであったとうかがわれること(同⑶)を考慮すれば、本件比例代表選挙に係る本件区割規定が、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保す るという憲法上の要請に反するものであり、国会の裁量権を考慮してもなおその限界を超えているということはできないから、憲法に違反するとはいえない。 したがって、原告らの主張は採用できない。 ⑶ 原告らは、平成4年改正法における議員定数の配分はアダムズ方式によっ て行われているところ、アダムズ方式は、議員定数を比例代表選挙区の人口 に比例して配分するものではなく、民主主義憲法に違反すると主張する。 しかし、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際しては、憲法上、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素(地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況等)についても、合理性を有する限り、 国会において考慮することが許容されているものと解されることは、上記⑵に判示のとおりである。そうであれば、仮にアダムズ方式によって議員定数を配分した結果が、比例代表選挙区の人口に比例するものではなかったとしても、直ちに憲法に違反することになるものではないし、本件比例代表選挙における選挙区間の最大較差をみても、それが憲法に違反するといえないこ とは、上記⑵に判示のとおりである。 したがって、原告らの主張は採用できない。 4 無効理由4(ブロック別配分議員数の不平等)について⑴ 原告らは、小選挙区選挙と比例代表選挙は一つの衆議院議員総選挙と考えるべきであることを前提に、配分議員数が近畿ブロック等で不足する一方、 理由4(ブロック別配分議員数の不平等)について⑴ 原告らは、小選挙区選挙と比例代表選挙は一つの衆議院議員総選挙と考えるべきであることを前提に、配分議員数が近畿ブロック等で不足する一方、 北陸信越ブロック等で過剰となっていることや、人口数の多い中国ブロックに人口数の少ない北陸信越ブロックよりも少ない定数が配分されるという逆転現象が起きていることを指摘して、このような議員定数配分が憲法の投票価値の平等に反する旨を主張する。 ⑵ しかし、小選挙区選挙と比例代表選挙は、選挙制度としての機能及び選挙 の方法が異なる選挙であり、選挙人は、それぞれの選挙において別個の選挙権を行使するものというべきであるから、選挙区割りを異にする二つの選挙の議員定数を一方の選挙の選挙区ごとに合計して当該選挙区の人口と議員定数との比率の平等を問題とすることには、合理性がないことが明らかである(平成11年大法廷判決)。そして、本件比例代表選挙についてみれば、投票 価値の平等を損なうところがあるとは認められず、その定数配分や選挙区割 りに憲法に違反するところがあるとはいえないことは、前記3に判示のとおりである。 したがって、原告らの主張は採用できない。 5 原告らは、上記のほかにもるる主張するが、いずれも前記の判断を左右するものでない。 第4 結論そうすると、原告らの請求は理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官鹿子木康 裁判官坂本三郎 裁判官進藤壮一郎 康 裁判官坂本三郎 裁判官進藤壮一郎

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