平成12(ワ)833 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年2月27日 千葉地方裁判所 棄却
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判決文本文11,241 文字)

平成15年2月27日判決言渡 平成12年・第833号損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。) 平成13年・第2293号損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。)判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,甲事件及び乙事件ともに,原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判(甲事件) 1 請求の趣旨 (1) 甲事件被告らは,原告に対し,各自,金186万8270円及びこれに対する平成10年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は甲事件被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する甲事件被告らの答弁 (1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 (乙事件) 1 請求の趣旨 (1) 乙事件被告らは,原告に対し,各自,金186万8270円及びこれに対する平成10年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は乙事件被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する乙事件被告らの答弁 (1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(甲事件及び乙事件) (1) 当事者ア原告は,平成元年12月26日生まれの男子であり,平成10年12月12日当時,満8歳で小学校3年生であった。 (1) 当事者ア原告は,平成元年12月26日生まれの男子であり,平成10年12月12日当時,満8歳で小学校3年生であった。 イ乙事件被告Aは,昭和61年4月25日生まれの男子であり,平成10年12月12日当時,満12歳で小学校6 年生であった。 甲事件被告Bは被告Aの父,甲事件被告Cは被告Aの母である。 ウ乙事件被告Dは,昭和61年10月13日生まれの男子であり,平成10年12月12日当時,満12歳で小学校 6年生であった。 甲事件被告Eは被告Dの母であり,甲事件被告Fは,同日当時,被告Dの養父であった。 (2) 事故の発生原告は,平成10年12月12日午後3時ころから,八千代市a公園(以下「本件公園」という。)で遊んでいたところ,本件公園内に設置されたいわゆる「箱ブランコ」(以下「本件ブランコ」という。)で遊戯中に転倒し,右大腿骨骨折の傷害を負った(以下「本件事故」という。)。 (3) 事故の発生状況及び態様原告は,本件事故発生当時,乙事件被告らとともに本件ブランコで遊んでいた。被告Dは,本件ブランコの道路側の座席に被告A及び原告を背にして座り,原告は,被告Aから「一緒に押して。」と頼まれ,被告Aの隣に立ち,被告Aとともに本件ブランコを手で押して揺らしていた。被告Aは,被告Dの促しによって,本件ブランコを力の限り強く押し,自らも制御できないほどに大きく揺らし,そのため,被告Aより年下で,身長が低く,腕の長さ(リーチ)も短い原告は, 体を伸ばし,足を数歩前に出して本件ブランコを押し,本件ブランコが揺れ戻ってきたときには,足を いほどに大きく揺らし,そのため,被告Aより年下で,身長が低く,腕の長さ(リーチ)も短い原告は, 体を伸ばし,足を数歩前に出して本件ブランコを押し,本件ブランコが揺れ戻ってきたときには,足を数歩後ろに引いたり,斜め後ろに飛び上がらなければならなかった。原告は,このようにして本件ブランコを揺らしているうちに次第に恐怖心を抱くようになり,とっさに本件ブランコから遠ざかろうとしたが,揺れ戻ってきた本件ブランコを避けることができず,本件ブランコの座席後部が原告の右大腿部に衝突して不自然な格好となり,足が地面に着いた後に体が地面に着いて転倒し,前記傷害を負った。 (4) 甲事件被告ら及び乙事件被告ら(以下,合わせて「被告ら」という。)の責任ア本件ブランコは,共振現象を利用し,わずかな力で大きな揺動を引き起こすことができる上,その鉄製かごの重量が約90キログラムと非常に重いため,その揺動のさせ方によっては,揺れ幅の最下点における衝撃が極めて大きく,場合によっては死亡事故に至るおそれもあり,本件事故の際のように乱暴に揺らした場合には,本件ブランコに弾みがついて予想以上に揺れ幅が大きくなり,本件ブランコを押している者が揺れ戻ってきた本件ブランコに衝突されて傷害を負う危険性を有している。 イ乙事件被告らは,本件事故当時,小学校高学年であり,本件ブランコで日常的に遊んでいたので,上記のような本件ブランコの危険性を経験上認識し,本件ブランコを押して遊ぶ場合には,自己らより年下で,身長が低く,腕の長さも短く,運動能力も劣る原告が,揺れ戻ってくる本件ブランコから逃げ切れずに傷害を負う可能性があることを予見す ランコを押して遊ぶ場合には,自己らより年下で,身長が低く,腕の長さも短く,運動能力も劣る原告が,揺れ戻ってくる本件ブランコから逃げ切れずに傷害を負う可能性があることを予見することが可能であったのであるから,本件ブランコを強く押して大きく揺らし,原告が逃げ切れないほどの弾みがつくことを回避すべき注意義務があったにもかかわらず,同被告らは,これを怠り,上記(3)のとおり,被告Dは,被告Aに対し,本件ブランコを大きく揺らさないように注意せず,かえって,本件ブランコを大きく揺らすよう原告及び被告Aに指示し,被告Aは,本件ブランコを力の限り強く押し,自らも制御できないほどに大きく揺らしたものであって,同被告らには過失がある。したがって,乙事件被告らは,民法709条に基づき,原告が本件事故により被った後記損害を賠償する責任がある。 ウ本件公園は,原告及び乙事件被告らが通学する小学校から数分の場所にあって,同小学校の児童らの遊び場となっており,本件ブランコは以前から本件公園に設置されていた遊具であるところ,甲事件被告らは,児童らが,複数人が向かい合って席に座ってゆらゆらと揺らして楽しむという本件ブランコの本来の遊び方よりも危険性のある方法で遊ぶことが多かったこと及び上記イ記載の本件ブランコの危険性を容易に予見できたのであるから,甲事件被告らは,日頃から,自己の子である乙事件被告らに,本件ブランコの通常の使用方法や本件ブランコの危険性について教え,本件ブランコを使用する際には自己ないし他人が怪我をすることのないよう気をつけ,余り大きくブランコを揺らさないように注意すべき義務があっ や本件ブランコの危険性について教え,本件ブランコを使用する際には自己ないし他人が怪我をすることのないよう気をつけ,余り大きくブランコを揺らさないように注意すべき義務があったにもかかわらず,これを怠り,上記の教示,注意をしなかった過失がある。したがって,同被告らは,民法709条に基づき,原告が本件事故により被った後記損害を賠償する責任がある。 また,同被告らは,乙事件被告らが自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない場合には,民法71 4条に基づき,原告が本件事故により被った後記損害を賠償する責任がある。 エ本件事故は,被告らの共同の過失により発生したものであるから,被告らは,民法719条に基づき,連帯して原告の損害を賠償する責任を負う。 (5) 損害原告は,本件事故により,以下のとおりの損害を被った。 ア治療費 33万8090円原告は,本件事故による前記傷害の治療のため,本件事故当日から平成11年3月4日までG病院に入院し,退院後も同年4月26日まで同病院に通院し(通院実日数2日),治療費として33万8090円を要した。 イ看護のための交通費  5万0180円原告の父母は,原告の看護のため,平成10年12月13日から平成11年3月24日までの間13日間にわたりタクシーを利用して上記病院に赴き,その費用として2万0800円を要し,また,113回(原告の母は85回, 原告の父は28回)にわたり電車を利用して上記病院に赴き,その費用として2万9380円(1回当たり260 赴き,その費用として2万0800円を要し,また,113回(原告の母は85回, 原告の父は28回)にわたり電車を利用して上記病院に赴き,その費用として2万9380円(1回当たり260 円)を要した。 ウ入通院慰謝料 148万円原告は,前記受傷及び入通院により精神的苦痛を受けたものであり,これに対する慰謝料は148万円が相当である。 (6) よって,原告は,被告ら各自に対し,不法行為に基づき,上記損害合計186万8270円及びこれに対する不法行為の日以後の日である平成10年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する被告らの認否(1) 請求原因(1),(2)の事実は認める。 (2) 請求原因(3)の事実は否認する。 被告Aは,本件ブランコを通常の押し方で押していたのであり,ことさらに強力に押したりしていない。被告Dは, 原告及び被告Aに背を向けて本件ブランコに座っていたので,自ら本件ブランコを揺らすことはできないし,本件ブランコに力を入れたこともない。また,乙事件被告らは,1人乗りブランコから本件ブランコに移動した際,原告が後からついてきたため,被告Aが原告に対し「あっちへ行って遊べ。」と言い,同被告らが交互に「おまえは止めておけ。」と指示して原告を制止したが,原告が敢えて上級生である同被告らの遊びに加わって来た経緯がある。 原告は,本件ブランコの揺れ戻しの最中に,何らかの拍子で転倒して右股関節の後横を地面に強打し,その衝撃によって右大腿骨の中間部よりやや上方の部分を骨折する傷害を負ったの がある。 原告は,本件ブランコの揺れ戻しの最中に,何らかの拍子で転倒して右股関節の後横を地面に強打し,その衝撃によって右大腿骨の中間部よりやや上方の部分を骨折する傷害を負ったのであり,その傷害は,本件ブランコが直接原告の身体に衝突して生じたものではなく,本件ブランコの揺れの大小と直接の関連はない。 (3) 請求原因(4)アの事実は不知ないし否認する。同イの事実は否認ないし争う。同ウの事実のうち,本件公園が児童の遊び場になっていたことは認め,その余は不知,否認ないし争う。同エは争う。 本件事故の態様は,上記(2)のとおりであり,乙事件被告らには本件事故の発生に対する予見可能性がないから,不法行為責任を負うことはないし,被告Aの親権者の被告B及び被告C,被告Dの親権者の被告F及び被告Eが不法行為責任を負うこともない。 (4) 請求原因(5)の事実は不知。 理由 第1 当事者及び本件事故の発生について請求原因(1),(2)の事実は本件当事者間に争いがない。 第2 本件事故の発生状況及び態様について 1 前記争いのない事実と証拠(甲3,9ないし11,13ないし17,19,21の(1)ないし・,22,乙1,6,丙 2,原告本人,被告A本人,被告D本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故の発生状況及び態様について,次の事実が認められる。 (1) 本件ブランコは,ゆりかご型ブランコ,安全ブランコ等と呼ばれているブランコであり,対面式の座席が鉄パイプ製の円形のかごに取り付けられていることから「箱ブランコ」と通称されている。本件ブランコは,左右に「ハ」の字型の青色に塗装された鉄 ばれているブランコであり,対面式の座席が鉄パイプ製の円形のかごに取り付けられていることから「箱ブランコ」と通称されている。本件ブランコは,左右に「ハ」の字型の青色に塗装された鉄パイプ製の支柱を配し,支柱の間の青ペンキで塗装された鉄パイプ製の横棒に,黄色に塗装された鉄パイプ製の円形のかごが吊されており,かごの中には,対面式のラワン製の座席と底板が設置されている。 (2) 本件ブランコは,次のような方法で使用されていた。 ア鉄パイプ製のかご内の座席に児童が腰掛け,又は底板の上に立ってかご全体を前後に揺り動かす方法。 イ鉄パイプ製のかご内の座席に児童ないし幼児を腰掛けさせ,保護者又は年長の児童がかごの座席の横の位置から両脇をつかんでかご全体を前後に揺り動かす方法。 ウ鉄パイプ製のかご内の座席に児童を座らせ,1人ないし2人の児童がかごの外側に立ち,座席の後ろから座席背もたれのパイプの最上部に手をかけてかご全体を前後に揺り動かす方法。 エ鉄パイプ製のかご内の座席背もたれ最上段に立ち,かご全体を揺り動かす方法。 (3) 乙事件被告らは,平成10年12月12日午後4時過ぎころ,本件ブランコで遊ぶこととした。被告Dは,本件ブランコの座席の左側に1人で座り,座席の前にある鉄パイプ製のかごの中央の横棒をつかんでいた。被告Aは,被告Dの真後ろの地上に立って本件ブランコを押し,原告は,被告Aの右側に立って本件ブランコを押していた(上記(2)ウの方法。 なお,乙第2号証(被告C作成の陳述書)には,被告Aが,本件事故当日,原告が被告Aの左隣に立って本件ブランコを押していたと話していた旨の供述記載があるが,前掲 た(上記(2)ウの方法。 なお,乙第2号証(被告C作成の陳述書)には,被告Aが,本件事故当日,原告が被告Aの左隣に立って本件ブランコを押していたと話していた旨の供述記載があるが,前掲各証拠に照らして採用し得ない。)。 被告A及び原告の本件ブランコの押し方は,両足を固定せずに本件ブランコの座席背もたれのパイプの最上部をつかんで本件ブランコを押し出し,いったん手を本件ブランコから離し,揺れ戻って来た本件ブランコの上記部分を再度つかむというものであった。 原告は,上記のようにして本件ブランコを何回か押していたときに地面に倒れ,被告Aは,原告が右側臥位で倒れていることに気付いて本件ブランコを押すのをやめ,本件ブランコを止めた。原告は,動こうとしたが,足が折れているような感じがして動けず,救急車が到着するまで倒れた状態でいた。 原告の父であるHは,本件事故の発生を知り,救急車が到着する前に本件公園に駆けつけ,乙事件被告らから事情を聞いた。 (4) Z市の救急隊は,同日午後4時22分に本件事故発生の通報を受け,同日午後4時32分に本件事故現場に到着した。 救急隊が到着した時,原告は,本件ブランコの脇に右側臥位で地面に倒れており,意識は清明であったが,右大腿の痛みを訴えて歩行困難な状態であった。 原告は,救急車でG病院に搬送され,医師の診察を受けた。原告は,診察の際,右大腿部に変形及び著明な腫脹が見られ,また,右下腿部には擦過傷が見られたが出血はなかった。上記医師は,右大腿骨骨幹部中央よりやや頭(近位)側で横骨折と骨の転位があり,遠位側前方が凸であると診断した。 (5) 「箱ブランコ」での遊戯中の事故として新聞 が出血はなかった。上記医師は,右大腿骨骨幹部中央よりやや頭(近位)側で横骨折と骨の転位があり,遠位側前方が凸であると診断した。 (5) 「箱ブランコ」での遊戯中の事故として新聞等で報道された事故には,以下のようなものがある。 ア箱ブランコから転落し,あるいは箱ブランコを押していて転倒した幼児・児童が,箱ブランコの底板と地面との間のすきまに体を挟まれ,あるいは箱ブランコの鉄パイプ製のかごに衝突される事故。 イ箱ブランコの背もたれ部分の上に立って箱ブランコを漕いでいて,箱ブランコから転落する事故。 ウ指が支柱に挟まれる事故。 2 本件事故の発生状況及び態様について(1) 原告は,本件事故発生当時,被告Aが,本件ブランコを強く押して自らも制御できないほどに大きく揺らしたため,原告は,体を伸ばし,足を数歩前に出して本件ブランコを押し,本件ブランコが揺れ戻ってきたときには,足を数歩後ろに引いたり,斜め後ろに飛び上がらなければならなかったと主張している。そして,原告は,その本人尋問において,上記主張に沿う供述をし,本件事故当時の本件ブランコの高さについて,押し出したときには,本件ブランコの円形のかごの中心にある,静止時に地面と垂直に配置される鉄パイプの作動角度が,30度ないし45度(角度は,鉛直線に対する角度を意味する,以下同じ。甲第10号証の写真・,・,以下,括弧内の数字は同号証の写真番号を示す。)より少し大きく,あるいは45度(・)になるまで上がり,揺れ戻ってきたときには15度ないし20度(・,・)より少し大きくなるまで上がっていたと供述している。 しかし,原告本人の供述に徴すると,原告の記憶は曖昧な部分が多 なるまで上がり,揺れ戻ってきたときには15度ないし20度(・,・)より少し大きくなるまで上がっていたと供述している。 しかし,原告本人の供述に徴すると,原告の記憶は曖昧な部分が多いことが窺われ,原告本人尋問の約2か月前に作成された原告の陳述書(甲第19号証)には,本件事故の発生状況に関し重要と思われる,原告が本件ブランコを押していた際に,揺れ戻ってきたときに斜め後ろに飛び上がっていた旨の供述は記載されていないのである。また,被告Aは,その本人尋問において,本件事故当時の本件ブランコの高さについて,押し出したときには32度ないし33度(・と・の中間)まで上がり,揺れ戻ってきたときには16度ないし17度(・と・の中間)まで上がっていた旨,原告本人の上記供述に反する供述をしている。そして,原告本人の上記供述が本件事故から3年9か月を経過した後にされており,これを客観的に裏付ける証拠も存在しないことを考慮すると,原告本人の上記供述を直ちに採用することはできない。 したがって,本件事故発生の際の本件ブランコの揺れが原告主張のとおりのものであったと認めることは困難である。 (2) 次に,原告は,被告Aの右隣で上記のようにして本件ブランコを押していたところ,予期した以上に揺動するようになり,揺れ戻ってきた本件ブランコを避けることができず,本件ブランコに衝突され,その衝撃により不自然な格好となって,足が体より先に地面に着いてその後体が落ちて転倒し,右大腿骨骨折の傷害を負ったと主張している。そして,原告は,その本人尋問において,場所は分からないが,本件ブランコが原告に衝突した記憶がある旨の原告の上記主張に沿う供述をしており,また, 腿骨骨折の傷害を負ったと主張している。そして,原告は,その本人尋問において,場所は分からないが,本件ブランコが原告に衝突した記憶がある旨の原告の上記主張に沿う供述をしており,また,原告の陳述書(甲第19号証)には,原告が,揺れ戻ってきた本件ブランコを避けることができず,本件ブランコが原告の右大腿に衝突して転倒した旨,原告の上記主張に沿う供述記載がある。 しかし,他方,原告は,本人尋問において,本件ブランコが原告に衝突したかどうかはよく覚えていない旨の供述をしている上,本件ブランコが原告に衝突する前に転倒した覚えはないと供述する一方で,転倒した後にブランコがぶつかったかどうかは覚えていないと供述するなど,本件事故の際に原告が転倒した原因,その際における本件ブランコの状況 (本件ブランコが原告と接触したのかどうか,接触したとして,どのように接触したのか)だけでなく,転倒と衝突との先後関係,衝突の瞬間及びその直前,直後の原告の行動ないし動作あるいはこの間の具体的な事態について,上記1(3) で認定した以上に積極的に述べる部分はない。そうすると,原告本人の上記供述及び陳述書の上記供述記載を直ちに採用することはできない。 また,原告を背にする形で座っていた被告Dは,その本人尋問において,本件事故が発生した瞬間を見ていないと供述しており,証拠(丙1ないし3)によれば,被告Dは,被告Fの事情聴取に対しても同様の供述をするほか,座っていたときに何かが本件ブランコにあたったかどうかも分からない旨述べていることが認められる。原告の隣で本件ブランコを押していた被告Aは,その本人尋問において,本件事故が発生した瞬間を見ていないと供述しており,証拠 ランコにあたったかどうかも分からない旨述べていることが認められる。原告の隣で本件ブランコを押していた被告Aは,その本人尋問において,本件事故が発生した瞬間を見ていないと供述しており,証拠(乙6)によれば,被告Aは,平成14年4月ころの被告Cの事情聴取の際にも同様に述べていることが認められる。 そして,本件事故については,その発生時の様子を目撃した客観的な第三者といえる者は存在しない。 さらに,証拠(甲11ないし15,18,乙3の(1)ないし(3),4)及び弁論の全趣旨によれば,当裁判所が,原告の右大腿骨骨折の受傷原因について専門的な知識経験を有する民事調停委員の意見を聴取するため,本件を調停に付したところ,民事調停委員である医師I(以下「I医師」という。)は,原告の診療記録等及び骨折部分のレントゲン写真を検討し,原告の右大腿骨骨折は,受傷部位に外力が加わったことにより生じたものではなく,股関節付近に右横付近から外力が加わったことにより,骨が最も細く弱い箇所が骨折したものであり,原告は,不自然な体勢で体をひねって転倒し, 転倒の際,足が体よりも先に地面に着いて,その後体重が加わったことにより上記骨折が生じたものと推認され,本件ブランコが原告にぶつかったことは確認できないとの意見を述べたことが認められる。 もっとも,証拠(甲11,13ないし15,17)によれば,本件事故現場で救急活動に当たった救急隊は,その作成にかかる救急活動記録票(甲17)の「事故等の概要」欄に「ブランコが大腿部に当たり負傷した」と記載し,原告が救急車でG病院に搬入された際に作成された外来申し送り書(甲15)には,「箱形ブランコに乗っていて(押していて) )の「事故等の概要」欄に「ブランコが大腿部に当たり負傷した」と記載し,原告が救急車でG病院に搬入された際に作成された外来申し送り書(甲15)には,「箱形ブランコに乗っていて(押していて) 強く右大腿部打ち」との記載が,同病院の診療記録(甲11,13)には,「箱型ブランコで遊んでいてぶつかった」との記載が,同病院の看護記録(甲14)には,「ブランコを押していてそのブランコが右大腿部を強く打ち」との記載があり,原告又は原告の父であるHその他の者が本件事故直後に上記各記載に沿う説明をしていた可能性がある。しかし, 仮にこれらの者が上記各記載に沿う説明をしていたとしても,その説明が正確であることを裏付ける証拠はなく,かえってI医師の意見によれば,原告が本件ブランコに右大腿部を打って骨折したとの上記各記載は客観的な裏付けを欠くことになるから,いずれも採用することはできない。 また,I医師の意見を前提としても,本件事故については複数の態様を想定し得るのであって,原告主張の態様以外の事故態様を全て排斥することはできない。そうすると,原告の主張に沿う陳述書(甲第19号証)の供述記載は客観的な裏付けを欠くものであり,この点からも容易に採用することはできない。 したがって,本件事故の態様が原告主張のとおりのものであったと認めることは困難である。 (3) 以上のとおりであるから,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のとおりのものであったと認めることはできないし,本件事故の発生状況及び態様がどのようなものであったかを確定することは困難である。 第3 被告らの責任について 1 原告は,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のようなものであることを し,本件事故の発生状況及び態様がどのようなものであったかを確定することは困難である。 第3 被告らの責任について 1 原告は,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のようなものであることを前提として,被告Aが原告において避けることができないほど本件ブランコを大きく揺らし,被告Dが被告Aに対し上記のように本件ブランコを揺らさないように注意せず,甲事件被告らが,乙事件被告らに対し,本件ブランコを使用する際には,自己ないし他人が怪我をすることのないよう気をつけて使用するように注意すべき義務を怠ったことによって本件事故が発生したと主張する。 しかし,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のようなものであったと認めることができないことは前記第2の2判示のとおりであるから,被告らにこれを前提とする原告主張の注意義務やその違反があったということはできない。 また,本件ブランコでの遊戯につき被告らに注意義務違反,すなわち,過失があったか否かは,本件ブランコの設置状況及び使用方法,揺動行為の程度,乙事件被告ら及び原告の年齢等を総合考慮して判断されるべきところ,前記のとおり,本件ブランコは児童が日常接する遊具として本件公園に設置されていたものであり,被告Aの本件ブランコの使用方法は本件ブランコの使用方法の中でも特に危険性のあるものではなく,被告Aの揺動行為も原告主張の程度であったとは認め得ないのであり,また,原告は,本件事故当時,小学校3年生であり,自ら本件ブランコの危険性を認識することのできる能力を一応備えていたと考えられるのであって,このような事実関係の下においては,乙事件被告らに過失があったということはできないし,甲事件被告らについても同様である。 2 なお,乙事件 力を一応備えていたと考えられるのであって,このような事実関係の下においては,乙事件被告らに過失があったということはできないし,甲事件被告らについても同様である。 2 なお,乙事件被告らは,その本人尋問において,いずれも,原告が本件ブランコを被告Aとともに押そうとしたとき,被告Aが原告に対して「おまえはやめておけ。」と告げるなど原告が本件ブランコを押すことを止めさせるような発言をしたと供述し,証拠(乙6,丙1)によれば,乙事件被告らは,被告Cないし被告Fの事情聴取に対しても同様の供述をしていたことが認められる。また,被告Aは,その本人尋問において,本件ブランコが非常に危険であると思っていたわけではないが,軽く思っていたと供述しており,少なくとも,被告Aは,本件ブランコが原告にとって危険なものであることを認識し,あるいは認識し得たことが窺われる。 しかし,一般に,遊具については,その性質上,通常有すべき安全性を具備しているものであっても,何らかの事故発生の危険は避けられないものであることに照らすと,被告Aの前記発言等はこのような抽象的な危険を危惧したものにすぎないと考えられるのであって,これをもって直ちに,被告Aが本件事故という具体的な事故の発生を予見し得たということはできない。 第4 結論よって,原告の本訴両請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これをいずれも棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第5部裁判長裁判官丸山昌一裁判官小濱浩庸裁 千葉地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官 丸山昌一 裁判官 小濱浩庸 裁判官 井原千恵

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