主文 1 控訴人H,控訴人A,控訴人B及び控訴人Cの被控訴人Dに対する控訴(原審甲事件に関するもの)を棄却する。 2 控訴人H及び控訴人Aの被控訴人Eに対する控訴(原審乙事件に関するもの)を棄却する。 3 控訴人B及び控訴人Cの被控訴人Fに対する控訴(原審丙事件に関するもの)を棄却する。 4 控訴人Gの被控訴人Dに対する控訴(原審丁事件に関するもの)を棄却する。 5 当審で拡張追加した控訴人らの被控訴人Dに対する新たな請求を棄却する。 6 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 控訴人らア原判決主文一,二項中被控訴人Dに関する部分(原審甲及び丁事件関係)を取り消す。 イ被控訴人Dは,東京都に対して,10億7103万1835円及びこれに対する平成7年4月1日から支払済みに至るまで年5分の金員を支払え。(原審甲事件請求につき請求の減縮及び当審において新たに請求の追加)(2) 控訴人H及び控訴人Aア原判決主文二項中,被控訴人Eに関する部分(原審乙事件関係)を取り消す。 イ被控訴人Eは,世田谷区に対して,8000万円及びそのうち4000万円に対する平成11年4月1日から支払済みに至るまで年5分の金員を支払え。(請求の減縮)(3) 控訴人B及び控訴人Cア原判決主文二項中,被控訴人Fに関する部分(原審丙事件関係)を取り消す。 イ被控訴人Fは,世田谷区に対して,8000万円及びそのうち4000万円に対する平成11年4月1日から支払済みに至るまで年5分の金員を支払え。(請求の減縮)(4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨第2 事案の概要等 1 本件は,小田急小田原線及び西武池袋線の連続立体交差化事業(以下「本 減縮)(4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨第2 事案の概要等 1 本件は,小田急小田原線及び西武池袋線の連続立体交差化事業(以下「本件連立事業」という。)の実施等のための事業費を導入しようとして,「日本電信電話株式会社株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」(昭和62年法律第86号。以下「社会資本整備特別措置法」という。)2条1項に規定するいわゆるNTTーA資金の借受事業主体とするために,東京都,世田谷区,練馬区のほか,小田急電鉄株式会社(以下「小田急電鉄」という。),西武鉄道株式会社,その他の金融機関(都市銀行)等の共同出資によりいわゆる第三セクターとして平成2年8月30日に設立した東京鉄道立体整備株式会社(以下「訴外会社」という。)の設立と事業につき,本件連立事業及びその東京都の都市計画決定等には違法があり,訴外会社の設立及び事業も違法であると主張して,監査請求を経たうえ,訴外会社に出資金(株式払込金)その他の公金の支出をした被控訴人らに損害の賠償を請求した住民訴訟であり,原審においては,次の4つの事件が併合された。まず,原審甲事件は,東京都の住民である原審原告らが東京都知事であったDに対して3億5495万円等の損害賠償の東京都への支払を求め,かつ,東京都知事及び東京都建設局総務部計理課長に対して,訴外会社に対する出資金又は事業委託費の公金支出の差止めを請求した事案であり,同乙事件は,世田谷区の住民である原審原告らが,世田谷区長であるEに対して,1億円等の損害賠償の世田谷区への支払を求め,かつ,世田谷区長に対して,訴外会社に対する出資金ないしは事業委託費その他の公金支出の差止めを請求した事案であり,同丙事件は,練馬区の住民である原審原告ら 億円等の損害賠償の世田谷区への支払を求め,かつ,世田谷区長に対して,訴外会社に対する出資金ないしは事業委託費その他の公金支出の差止めを請求した事案であり,同丙事件は,練馬区の住民である原審原告らが,練馬区長であった被控訴人Fに対して,1億円等の損害賠償の練馬区への支払を求め,かつ,練馬区長に対して,訴外会社に対する出資金ないしは事業委託費その他の公金支出の差止めを請求した事案であり,丁事件は,東京都の住民である原審原告ら8名が,被控訴人Dに対して,訴外会社の設立後に東京都から支出された事業委託費等につき,1億7103万1835円等の損害賠償の東京都への支払を請求した事案である。 第1審は,甲,乙,丙各事件中の公金支出の各差止めの請求及び丁事件中の監査請求をしていないと認められた支出についての損害賠償の請求部分をいずれも不適法であるとして却下し,甲,乙,丙各事件中の各損害賠償の請求及び丁事件中のその余の請求部分をいずれも棄却した。 これに対して控訴をしたのは,本件控訴人ら5名のみであったが,控訴人H及び控訴人Aは原審甲及び乙事件の原告,控訴人B及び控訴人Cは原審甲及び丙事件の原告,控訴人Gは原審丁事件の原告であった。 なお,訴外会社が平成12年4月1日に解散し,残余財産の分配により出資金の払戻し及び配当等に相当する清算手続をも結了したことから,控訴人らは,東京都知事,東京都建設局総務部計理課長,世田谷区長及び練馬区長に対する公金支出の各差止請求の訴えを取り下げ,さらに,前記「控訴の趣旨」記載のとおり,被控訴人Dに対する損害賠償の請求につき請求額を10億7103万1835円(出資金に対する出資期間中の法定利息相当の遅延損害金及び本件連立事業のためのその他の公金支出額の合計)に増額して請求を拡張し,被控訴人Eと被控訴人Fに対する各損害 求額を10億7103万1835円(出資金に対する出資期間中の法定利息相当の遅延損害金及び本件連立事業のためのその他の公金支出額の合計)に増額して請求を拡張し,被控訴人Eと被控訴人Fに対する各損害賠償の請求につき,請求額をそれぞれ8000万円(出資金に対する出資期間中の法定利息相当の遅延損害金及びその他の公金支出額の合計額の一部)に減縮した。 2 事実関係等(当事者間に争いのない事実等及び各引用証拠によって認定した事実)事実関係等(当事者間に争いのない事実等及び各引用証拠によって認定した事実)は,次のとおり補正するほか,原判決「事実」欄の第二の二の控訴人ら及び被控訴人ら関係部分記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 原判決7頁9行目の「甲事件」から同10行目末尾までを「控訴人らはいずれも東京都の住民であり,控訴人H,控訴人A及び控訴人Gはいずれも世田谷区の住民,控訴人B及び控訴人Cはいずれも練馬区の住民である。」に,同11行目から同8頁1行目にかけての「甲事件被告都知事」を「東京都知事」に,同2行目の「であり、」を「である。」にそれぞれ改め,同行の「同事件」から同3行目末尾まで,並びに同4行目及び同6行目の各「同事件被告」をそれぞれ削る。 (2) 同8頁9行目の「都市高速鉄道」の次に「等の交通施設」を,同9頁9行目の「されている」の次に「(道路法31条1項,3項,6項)」を,同10頁1行目の「五項」の次に「〔現行法の1,2,4項〕」をそれぞれ加え,同11頁10行目の「締結されている(乙二号証)。」を「締結され(乙2号証),平成4年3月31日付けで費用負担の方法等につき一部改定がされている(甲155号証)。」に改め,同13頁8行目から9行目にかけての「(これと密接に関連する他の事業を含む。)」を削り,同9行目の「当該公共 年3月31日付けで費用負担の方法等につき一部改定がされている(甲155号証)。」に改め,同13頁8行目から9行目にかけての「(これと密接に関連する他の事業を含む。)」を削り,同9行目の「当該公共的建設事業」の次に「(これと密接に関連する他の事業を含む。)」を,同16頁8行目の「甲四六号証、」の次に「乙17号証,」をそれぞれ加える。 (3) 同19頁6行目の「小田急電鉄株式会社」から同11行目末尾までを「練馬区,西武鉄道株式会社,小田急電鉄株式会社,株式会社日本興業銀行,株式会社富士銀行等7名を発起人として設立されたいわゆる第三セクターであり,設立時の資本の額は9億円(設立時に発行する株式数1万8000株),いわゆる授権資本の額は10億円(会社の発行する株式数2万株)であったが,平成2年10月に1億円(2000株)の増資を世田谷区が引き受け,さらに平成7年8月に授権資本の額を11億9000万円(2万3800株)に変更したうえ,同年10月に1億9000万円の増資が行われ,その結果,訴外会社の株主数は17名に増加した。その筆頭株主は設立時の引受株式と合わせて合計7100株を有する東京都であり(出資額合計3億5500万円),世田谷区及び練馬区が各2000株,品川区及び目黒区が各1000株,小田急電鉄株式会社,西武鉄道株式会社及び東京急行電鉄株式会社が各1800株,株式会社日本興業銀行など都市銀行5社が合計3700株,東京海上火災保険株式会社など損害保険会社4社が合計1600株を保有する。その無報酬・非常勤の代表取締役社長には東京都建設局長が就任し,実務を担当する代表権のある専務取締役その他数名の従業員に東京都の職員が派遣されて業務を担っていた(甲1,8,9,29号証,乙,25,28号証,I証言,J証言)。」に改め,同22頁6行目「である」 実務を担当する代表権のある専務取締役その他数名の従業員に東京都の職員が派遣されて業務を担っていた(甲1,8,9,29号証,乙,25,28号証,I証言,J証言)。」に改め,同22頁6行目「である」の次に「(甲9号証,I証言)」を加え,同23頁4行目の「されている。」を「されていた(甲5号証)。」に改め,同5行目から6行目にかけての「都費、区の地方負担金及び国庫補助に係る事業の一部をも含む予定であったが、」を「本件連立事業の事業主体である東京都から1105億円もの規模の事業委託を受けて本件連立事業の施行業務をも行おうとするものであったが,結局,前記②のとおりの事業についての」に改める。 (4) 同25頁5行目の「訴外会社」から同7行目末尾までを「訴外会社が民都機構から借り入れたNTTーA資金の額は,西武鉄道池袋線関係(東京都市計画道路事業練馬区画街路第1号線及び東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第133号線)のものが,平成2年度1171万8000円,平成3年度4億1078万1000円,平成4年度5億7500万1000円,平成5年度1億0500万円,平成6年度1億円,平成7年度5億円,平成8年度3億5000万円,平成9年度2億円,平成10年度5000万円であり,小田急小田原線関係(東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第128号線)のものが,平成7年度2億5000万円,平成8年度2億4150万円,平成9年度2億円,平成10年度5000万円となっている(甲159号証の1ないし3)。」に,同28頁1行目の「乙一三号証」を「甲117号証,159号証の3,乙13号証」にそれぞれ改める。 (5) 同32頁1行目と2行目の間に次のとおり挿入する。 「8 訴外会社の解散訴外会社は,平成12年3月28日の株主総会決議に基づいて平成12年4月1日に解 の3,乙13号証」にそれぞれ改める。 (5) 同32頁1行目と2行目の間に次のとおり挿入する。 「8 訴外会社の解散訴外会社は,平成12年3月28日の株主総会決議に基づいて平成12年4月1日に解散し,その業務を終了した。民都機構から借り入れたNTTーA資金の返済は,すべて小田急電鉄が肩代わりし,残余財産が各株主に分配されて,清算が結了した(乙29,34,35号証,当審におけるK証言)。東京都に対する残余財産の分配額は,出資金相当額のほか配当額541万5099円の合計3億6041万5099円であり,世田谷区と練馬区に対する残余財産の分配額は,それぞれ出資金相当額のほか配当額152万5380円の合計1億0152万5380円であった(乙32号証,丙5号証,丁5号証)。」 3 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点は,訴外会社の設立後の東京都の業務委託費等に関する被控訴人Dに対する損害賠償請求について適法な事前の監査請求があったか否か,訴外会社の設立時以降の東京都,世田谷区及び練馬区の訴外会社に対する出資金その他の公金の支出の違法性,及びこれらについての被控訴人D,被控訴人E及び被控訴人Fの各損害賠償責任の有無であるが,これらの争点に対する当事者の主張は,次のとおり補正,付加するほか,原判決「事実」欄の第二の三の控訴人ら及び被控訴人ら関係部分記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 補正ア原判決32頁4行目冒頭から同34頁6行目末尾まで及び同35頁8行目冒頭から同36頁5行目の「(三)」までをそれぞれ削る。 イ同48頁4行目の「乙事件原告」の次に「であった」を加え,同50頁5行目の「(甲五五号証)」を「(甲55号証の1)及び同調査の実施要領(甲55号証の2)」にそれぞれ改める。 (2) 当審で付加した控訴人らの主張 「乙事件原告」の次に「であった」を加え,同50頁5行目の「(甲五五号証)」を「(甲55号証の1)及び同調査の実施要領(甲55号証の2)」にそれぞれ改める。 (2) 当審で付加した控訴人らの主張控訴人らが当審で付加した主張(要旨)は,別紙のとおりであるが,その要点は,次のとおりである。 ア事業委託費の損害賠償請求に関する監査請求期間の徒過について控訴人らは,平成2年9月26日に訴外会社への出資金3億5500万円の損害の填補,その後の事業委託費その他の公金の支出の差止めを求めて,東京都監査委員に監査請求をした(同監査委員は平成2年11月26日にこの請求を棄却した。)。 その後,原審甲事件が係属中に,東京都の訴外会社への事業委託費等の支出を現実に知ったので,平成6年10月6日に,①都市計画素案等説明会,②環境影響評価作業,③現地測量調査などの諸作業の各委託費の支出について,再度,東京都監査委員に監査請求をしたが,同監査委員は,平成6年11月16日付けで請求を却下した。そこで,その30日以内に,原審丁事件原告らは,被控訴人Dに対して,前記支出のうち1億7103万1835円とその遅延損害金の支払を求める原審丁事件を提起したのである。 したがって,被控訴人Dの前記1億7103万1835円とその支出に対しては,控訴人らの平成2年9月26日の最初の監査請求がされることにより,「監査請求前置」の要件を充たしているし,また,2回目の監査請求が遅滞したことについては,地方自治法242条2項の「正当な理由」があるというべきである。 イ訴外会社の設立,その事業目的及び事業執行等の違法性(ア) 東京都は,訴外会社が本件連立事業の事業主体とはなり得ないことを自覚しながら,あえてこれを事業目的として訴外会社を設立し,現に,これを事業として実施している。こ 業目的及び事業執行等の違法性(ア) 東京都は,訴外会社が本件連立事業の事業主体とはなり得ないことを自覚しながら,あえてこれを事業目的として訴外会社を設立し,現に,これを事業として実施している。このことは定款目的や証人Iの証言等により明らかであるが,このようなことは,地方自治体として許されることではなく,訴外会社の設立は違法である。また,訴外会社の設立は商業登記法19条にも違反している。 (イ) すなわち,東京都は,平成元年秋ごろまでに,建設省都市局街路課特定都市交通整備室長などからの行政指導により,建運協定が改正されて第三セクターも連続立体交差化事業の事業主体になることができると判断し,本来都市計画,環境対策,事業費等のあらゆる点から見て第三セクターが担うことができない事業であったにもかかわらず,都内の連続立体交差化事業推進のために第三セクターの設立を図ることを企図し,第三セクターを通じて,株主である関係鉄道事業者,都市銀行,損害保険会社,ゼネコンに巨利をもたらそうとしたのである。訴外会社の設立は,必ずしもNTTーA資金の利用のみを企図したものではない。このような訴外会社の設立目的は違法であり,訴外会社への出資その他の公金支出は違法である。 (ウ) 訴外会社の定款の事業目的は,明らかに本件連立事業の主体となることを予定している。しかも,「NTTーA資金等の特定財源を原資とする連続立体交差事業」と記載しているから,NTTーA資金のみを財源とするものと理解することもできない。当初の事業資金1578億円はこのことを示しているし,後に事業規模が350億円に減縮されたのは,改正が実現しなかった建運協定に合わせるためであったが,当初の設立動機には,事業規模が1兆円(鉄道事業2400億円,道路事業3000億円,再開発事業5000億円)を超える本件連 億円に減縮されたのは,改正が実現しなかった建運協定に合わせるためであったが,当初の設立動機には,事業規模が1兆円(鉄道事業2400億円,道路事業3000億円,再開発事業5000億円)を超える本件連立事業に対して,都市開発事業の受託などあらゆることを事業目的として,参加することにあったのであり,明白な建運協定違反又は違法がある。 (エ) また,訴外会社が設立される2年以上も前から,本件連立事業の対象区間の西側(喜多見から和泉多摩川までの区間)について,同様の高架式複々線化事業が建設大臣(当時の名称。以下,この判決において各大臣の名称は当時の名称を用いる。)の認可を受けて施行されていた。そこにおいては,鉄道とクロスする道路部分の施行主体は東京都,線増部分は鉄建公団であったのであり,訴外会社のような第三セクターが施行者となる余地は法律上も事実上もあり得なかったのである。 小田急小田原線において,誰が施行主体でなければならないか,現実に誰が施行主体となっているかは,財務会計上の行為を行う職員の「行為規範」に照らしても,明白であったから,訴外会社の設立とこれに対する出資が違法となることは当然である。 ウ都市計画決定及びその内容等の違法(ア) 本件連立事業の小田急小田原線の対象区間は,東北沢から喜多見までの間であるが,東京都環境影響評価条例のアセスメントをクリアすることは不可能であるなどの理由で,遅くとも平成3年(1991年)7月までには,下北沢地区(東北沢から世田谷代田)については,地下方式とすることを東京都,建設省,運輸省,小田急電鉄,鉄建公団らの関係者間で内定しており,平成7年7月にはこの方式は閣議了解されている(甲85号証)。しかし,地形を見ると,下北沢地区は明らかにその以西よりも低い。地形が高いことを理由に成城学園付近を堀割方式にする 係者間で内定しており,平成7年7月にはこの方式は閣議了解されている(甲85号証)。しかし,地形を見ると,下北沢地区は明らかにその以西よりも低い。地形が高いことを理由に成城学園付近を堀割方式にするというのであれば,地形が高い下北沢地区以西は,当然に地下化としなければならない筈である。あらゆる点で,高架式に比べて地下式が優れており,本件連立事業においては,地下方式を採用すべきであった。東京都の都市計画において高架式を採用した点で,都市計画及びこれに基づく本件連立事業は違法であり,建設大臣の平成6年5月19日の事業認可には重大明白な瑕疵があった。 (イ) 被控訴人らは,訴外会社は都市計画事業である道路整備事業の事業主体として本件連立事業に参加していると主張し,対象地として東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第128号線等であるとしているが,乙24号証の図面でも明らかなように,対象地は高架橋と街路が立体交差する限られた部分のみであり,このような場所の整備を都市計画事業とすることはあり得ない。しかも,その対象地は明らかに本件連立事業の事業地であるから,ここだけ都市計画事業が重複している。この部分を訴外会社の事業地とすることは,都市計画法59条7項に違反している。 (ウ) 訴外会社の事業費の内訳では,総事業費が120億円であるのに,道路築造費は長さ24m分の3360万円,付帯工事費が117億0590万円,事務費が2億6050万円となっている。付帯工事費とは,本件連立事業の高架施設の工事費であるが,このような事業費の使途から見て,訴外会社は実質的に本件連立事業の実施を事業目的としているのであり,これが違法であることが明らかである。 訴外会社は,本来東京都等ないし鉄建公団が負担すべき鉄道高架工事費用にNTTーA資金を投入しているのである。 (エ) 平 事業の実施を事業目的としているのであり,これが違法であることが明らかである。 訴外会社は,本来東京都等ないし鉄建公団が負担すべき鉄道高架工事費用にNTTーA資金を投入しているのである。 (エ) 平成10年(1998年)7月24日,小田急小田原線の沿線住民の申立てによりされた公害等調整委員会の裁定においては,現行の同線の対象区間の鉄道被害について,LAmax 80デシベルを超える者が約4分の1,LAeq24hで60デシベル以上の者が半数以上,70デシベル以上の者が10%になると認定されており,LAmax 85デシベル以上,LAeq 24hで70デシベル以上を違法と認めて,鉄道公害の不法行為責任を認めた。本件連立事業を高架式として施行することは,前記騒音公害を放置することとなり,違法であることは明らかである。 エ東京都,世田谷区及び練馬区の財政への悪影響高架方式と地下方式では,その事業費に多額の差異が生ずる。地下方式が低廉であることは,明らかであるにもかかわらず,東京都があえて多額の事業費を要する高架方式を選択し,そのために違法な訴外会社を設立して,これに出資したことは,濫費,浪費であり,財務会計担当者の行為規範によってもこのことは容易に判断できる。本件連立事業は地方財政に不必要な負担を強いるものであって,違法である。 オ社会資本整備特別措置法違反(ア) NTT資金は,社会資本整備特別措置法により,日本電信電話株式会社の株式売払収入を活用しようとして,国からの助成のない公共的建設事業につき,その事業及び関連する事業の収益(公共性を有する低収益型のもの)により返済能力が見込まれる特殊公法人及び公共事業を主体として施行する第三セクターに対して,無利息で貸し付けられることとなったものであるが,訴外会社は,その借受けの要件を充たして る低収益型のもの)により返済能力が見込まれる特殊公法人及び公共事業を主体として施行する第三セクターに対して,無利息で貸し付けられることとなったものであるが,訴外会社は,その借受けの要件を充たしているとはいえない。訴外会社は,本件連立事業の事業主体とはなり得ないし,訴外会社が事業目的としている関連事業は,巨大で巨利を得る不動産開発事業であり,現実に訴外会社の費用負担で建設している高架施設は,小田急電鉄の所有となるものであるほか,不動産開発に伴い,ゼネコン等に巨利を与え,訴外会社の巨利は,株主である鉄道事業者等の特定企業の利益となっているからである。 (イ) しかも,訴外会社に対するNTTーA資金の貸付けは,民法上の財団法人にすぎない民都機構から行われているが,必要とされている建設大臣の個別の同意がされていない。このような実態に照らせば,訴外会社に対するNTTーA資金の貸付けが社会資本整備特別措置法等に違反していることは明らかである。 カ複々線化事業に関する違法性(ア) 本件連立事業と同時一体的に行われる小田急小田原線の複々線化事業の事業主体は,小田急電鉄であり,東京都も小田急電鉄もその旨公言していた。しかし,小田急電鉄は,昭和60年12月3日に日本鉄道建設公団法22条1項の規定により,運輸大臣に対して東北沢から和泉多摩川までの複々線化事業を鉄建公団に行わせるよう運輸大臣に申出をし,これを受けた運輸大臣は,昭和61年1月7日,鉄建公団に前記複々線化事業を行うよう指示をした。したがって,以後前記複々線化事業の事業主体は,その費用負担をする鉄建公団となったのであり,取得した用地は鉄建公団の所有名義となっている。鉄建公団が前記複々線化事業の事業主体となったことは,その後前記事業を小田急電鉄に委託したとしても変わらない。 したがって,小田急電鉄 となったのであり,取得した用地は鉄建公団の所有名義となっている。鉄建公団が前記複々線化事業の事業主体となったことは,その後前記事業を小田急電鉄に委託したとしても変わらない。 したがって,小田急電鉄は,事業主体ではないにもかかわらず,事業主体であるかのように装って事業を実施した違法がある。 (イ) さらに,小田急電鉄は,事業主体ではないにもかかわらず,昭和62年に特定都市鉄道整備促進特別措置法3条,5条により,事業費の一部に充てるために,運輸大臣に運賃の値上げの認定申請をし,平成9年10月にも特定都市鉄道整備促進特別措置法3条5項による「計画変更」があったとして,再度の運賃値上げを申請し,運輸大臣はいずれも小田急電鉄の申請を認可している。これらの事業主体ではない小田急電鉄による運賃値上げは違法無効である。 (ウ) また,本件連立事業はこの複々線化事業と一体となって施行されている。 しかし,本件連立事業は都市計画事業であり,国の行政機関とみなされる鉄建公団が,このような都市計画事業を行うには,建設大臣の事前の承認を要するが(都市計画法59条),鉄建公団がこのような事前の承認を受けていない。この点でも鉄建公団の複々線化事業は違法である。 (エ) さらに,東京都は,本件連立事業のための事業費として,平成6年度に8億7099万3000円,平成7年度に21億8381万2000円,平成8年度に41億0384万円,平成9年度に67億0511万円,平成10年度に76億2964万円,平成11年度に53億1900万円の合計268億1239万5000円を支出しており,そのうちの工事費は合計262億4404万円となっている。これらの工事費は,殆どが複々線化事業の工事に使用されており,本件連立事業のために使用されていないのは違法である。訴外会社も,借り入れたNTTー のうちの工事費は合計262億4404万円となっている。これらの工事費は,殆どが複々線化事業の工事に使用されており,本件連立事業のために使用されていないのは違法である。訴外会社も,借り入れたNTTーA資金を,本来(建運協定7条により)は小田急電鉄が負担しなければならない(実際には運輸大臣の指定により鉄建公団が負担している。)複々線化事業の工事費に使用している。東京都その他の本件連立事業関係者は,線増部分の工事を施工することを目的として訴外会社を設立し,訴外会社は,借り入れたNTTーA資金を線増部分の工事費に支出している。このように訴外会社の運営が違法であることは明らかである。 (オ) このような違法を重ねている前記複々線化事業と本件連立事業とは,不可分一体のものとして建設大臣の認可と実施がされており,これに参加するために設立された訴外会社の設立も違法となる。 キ細切れ認可の違法性(ア) 本件連立事業は,鉄道又は道路のみに関する事業ではなく,道路を新設拡大しながら,鉄道と道路を連続的に立体化して都市の巨大再開発を進める事業であるから,鉄道事業,道路事業,駅前広場等の再開発は,三位一体のものとして計画されなければならない(連立事業調査要綱。甲55の1)。ところが本件連立事業の事業認可においては,鉄道とクロスする道路部分は認可の対象となっていない(鉄道と側道が認可の対象となっている。)。本来,連続立体交差化事業を都市計画事業として行う限りは,都市計画法,建運協定に照らせば,有機的一体の事業として認可の対象にすべきものであり,本件連立事業の認可のような細切れ認可は,本件連立事業の総合的な評価を困難にし,建運協定及びこれに基づく調査要綱に違反し,都市計画法1条等,東京都環境影響評価条例に違反して違法である。 また,小田急小田原線の高架複々線 うな細切れ認可は,本件連立事業の総合的な評価を困難にし,建運協定及びこれに基づく調査要綱に違反し,都市計画法1条等,東京都環境影響評価条例に違反して違法である。 また,小田急小田原線の高架複々線化事業は,建運協定により鉄道事業者が行う高架鉄道工事とクロスする道路部分の都市計画事業と鉄建公団が行う複々線化事業の線増部分の事業とに観念的に分けられるが,本来一つの都市計画であって有機的一体を成すものである。これを分離して事業計画,事業認可又は環境影響評価の対象とすることが違法であることの判断は,財務会計上の担当職員の「行為規範」となる筈である。 (イ) その結果,完成後の都市に与える影響,沿線住民に対する影響を正しく評価する必要がなくなり,本件連立事業のアセスメント調査もそのような欠陥を有している。本件連立事業のアセスメント調査は,鉄道に関するものは一応されているが,道路及び再開発事業については全くされていない。鉄道と道路が連続的に立体化すれば,大気汚染,振動,騒音は鉄道のみの場合に比べて比較にならないほど大きな影響が出るのである。 (ウ) このような,違法な本件連立事業に参加する事業目的を有する訴外会社に対する設立以後の公金の支出は違法である。 ク本件出資に至る手続の違法(ア) 本件連立事業は,鉄道事業のみならず,多くの道路の新設,拡幅,高層ビル再開発を三位一体とする総額1兆円を超す巨大事業であるが,東京都,世田谷区等は,訴外会社の事業が巨大な営利事業であることを隠蔽しようとして,平成2年当時関係議会及び住民説明会において,駅ビル事業の事業費が経堂,成城学園の2か所で合計101億9800万円であると説明していた。しかし,実際には,超高層インテリジェントビルの建築には約1000億円の投資が必要である。東京都や世田谷区は,建築費を約20分 経堂,成城学園の2か所で合計101億9800万円であると説明していた。しかし,実際には,超高層インテリジェントビルの建築には約1000億円の投資が必要である。東京都や世田谷区は,建築費を約20分の1に低減して住民に説明していたのである。その後,訴外会社が設立され,小田急電鉄が高架工事を強行した後には,前記駅ビルと周辺開発事業については一切内容の公表をしなくなっている。 (イ) このような巨大営利事業にNTTーA資金を貸し付けることができないことは明らかであり,訴外会社の事業費の使途は社会資本整備特別措置法に違反することは明らかであるのに,本件連立事業の事業者である東京都等は,その違法を隠蔽するのみならず,住民の虚偽の説明をしているのであって,事業の遂行と訴外会社の設立の手続には,行政裁量を超えた違法がある。 (3) 当審で付加した被控訴人らの主張ア事業委託費の損害賠償請求に関する監査請求期間の徒過について原審丁事件についての控訴人は,控訴人G一人である。同控訴人は,最初の監査請求人には含まれていない(甲3号証)。したがって,仮に最初の監査請求が原審丁事件の監査請求前置の要件を充たしているとしても,控訴人Gの丁事件の請求についての監査請求前置となるものではない。 イ訴外会社の設立,その事業目的及び事業執行等の違法性について(ア) 訴外会社の設立前に小田急小田原線の喜多見から和泉多摩川までの区間について連続立体交差化事業が既に行われていたが,この区間は本件連立事業の対象区間の西側であり,西側で第三セクターが施行主体とならなかったからといって,本件連立事業の対象区間である東側でも第三セクターである訴外会社が道路部分の施行主体となってはならないという制約はない。第三セクターに道路の新設を行わせるか否かは,道路管理者の判断である。 (イ ,本件連立事業の対象区間である東側でも第三セクターである訴外会社が道路部分の施行主体となってはならないという制約はない。第三セクターに道路の新設を行わせるか否かは,道路管理者の判断である。 (イ) また,訴外会社の設立時に予定していた1578億円は,事業計画全体の事業費である。そのうちNTTーA資金の対象事業としては350億円を予定していたのであり,建運協定などの制約により,事業費を下方修正したものではない。 (ウ) そもそも,訴外会社が民都機構から借り入れたNTTーA資金の使途如何によって,東京都等の訴外会社の資本への出資が違法となるものではなく,東京都の事業委託費の支出は,委託事業に対する対価の支払であるから,この支出が違法ということもできない。 ウ都市計画決定及びその内容の違法について(ア) 控訴人らは,東京都環境影響評価条例のアセスメントをクリアすることは不可能であるなどの理由で,本件連立事業の区間を2つに分けて世田谷代田から東北沢までの区間(下北沢地区)については地下方式を検討していたと主張するが,この区間については,将来の複々線化や既設の都市計画との総合的な調整を図る必要から,施行方式を今後さらに検討することが望ましいとして,本件連立事業の高架方式の対象区間から除外することとしたものである。したがって,線増部分を地下方式にすると決定したものではなく,現時点でもその結論は出ていない。 (イ) 訴外会社が事業認可を受けたのは,高架橋と立体交差する道路部分のみであるが,その部分が都市計画事業である本件連立事業の事業地であって,都市計画事業が重複したとしても,それを禁じた規定はなく,何ら違法ではない。なお,都市計画法59条7項の趣旨は,施行予定者を定める都市計画においては,都市計画法60条の2第1項に規定する都市計画の告示の日か 事業が重複したとしても,それを禁じた規定はなく,何ら違法ではない。なお,都市計画法59条7項の趣旨は,施行予定者を定める都市計画においては,都市計画法60条の2第1項に規定する都市計画の告示の日から起算して2年以内に本条に基づく都市計画事業の認可又は承認申請をしなければならないという義務を明確にしたものであって,都市計画の重複を禁止したものではない。 (ウ) 控訴人らは,資金計画書の路線別事業明細表の記載から,訴外会社の付帯工事費117億0590万円が本体工事費の300倍以上となっていること,事務費が2億円以上となっていることを指摘するが,訴外会社の道路整備事業は,付帯工事として鉄道の高架化を行うものであり,付帯工事の本体工事とは工事材料や手法が異なるものであって,これを比較することは無意味である。事務費は本体工事費と付帯工事費の合算額の3%弱にすぎない。 また,控訴人らは,訴外会社に対するNTTーA資金の貸付けは,本件連立事業に対してされているともいうが,訴外会社は前記128号線の都市計画事業の認可を受けて,道路整備事業を施行しており,この事業にNTTーA資金の制度を活用しているものである。 なお,複々線化事業とともに行う本件連立事業の実際の工事は,①線増部分の立体化工事,②線増部分での運行,③既設線の立体化工事,④既設線と線増線の本格運行の順に行われ,既設線の立体化工事と線増工事は,不可分一体の関係にあり,工事費は一体ものとして共同の負担としたうえ,最終的に建運協定に従って,既設線工事は東京都等,線増工事は鉄建公団,都市計画道路128号線の街路整備工事は訴外会社が負担することになるのであり,NTTーA資金は訴外会社の負担部分に投下されることとなる。実際には,前記128号線の立体交差により,東西それぞれ300m(合計600m)の の街路整備工事は訴外会社が負担することになるのであり,NTTーA資金は訴外会社の負担部分に投下されることとなる。実際には,前記128号線の立体交差により,東西それぞれ300m(合計600m)の鉄道の高架化が必要となり,その費用は,道路整備費として訴外会社が負担することとなる。 (エ) 控訴人らは,建運協定により本件連立事業の道路建設及び道路整備は,東京都が事業主体とならなければならないと主張するが,本件連立事業の東京都が施行者となる都市計画事業と,第三セクターたる訴外会社が施行者となる道路整備事業とが重複しても,それが違法となるわけではない。 (オ) 東京都条例による環境影響評価の対象事業は,「その実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるものとして東京都規則で定める要件に該当するもの」(都条例2条3号)であり,鉄道事業に関しては,東京都条例上当然に該当し(別表第一上欄),「専用鉄道又は軌道の高架化」については「地表面から離隔する高架(在来地盤に盛土する部分を含む)の投影部分の水平距離が1キロメートル以上のもの」(別表第一下欄)と規定されている。道路に関しては,「道路の新設又は改築」が対象となり(別表第一上欄),「4車線以上のもので,かつ,改築する区間の長さが1キロメートル以上のもの」(別表第一下欄)と規定されている。 本件連立事業については,前記鉄道9号線が環境影響調査の対象事業であり,環境影響調査評価書が作成されている。平成4年の環境影響評価においては,昼間の平均速度80km/時,運転本数800本(現在770本)で,工事完了後の騒音の予測値は,わずかに現況値を上回る場所があるが,概ね現況と同程度かこれを下回るという結果が出ている。しかし,前記128号線については,道路の「改築」に当たり,4車線ではあるものの,改築する区間は28メ 測値は,わずかに現況値を上回る場所があるが,概ね現況と同程度かこれを下回るという結果が出ている。しかし,前記128号線については,道路の「改築」に当たり,4車線ではあるものの,改築する区間は28メートルにすぎず,「改築する区間の長さが1キロメートル以上のもの」には当たらないから,環境影響調査をする義務はないこととなる。 (カ) 本件連立事業は,多数の踏切を連続して除去することを目的としているのであるから,一部踏切の除去に伴う新たな交通量増加が発生することはなく,交通渋滞が解消されて,排ガス等の交通公害が大幅に改善されるものである。また,鉄道列車の最高速度の大幅な引上げを目的としたものでもない。 エ地方財政への悪影響について本件連立事業の前記第9号線の事業については,東京都等の財政的負担の軽減を図るために,第三セクターである訴外会社を設立し,鉄道と交差する都市計画道路にNTTーA資金を投入し,前記128号線の付帯工事として連続立体交差化の工事を実施したものである。また,NTTーA資金の返済は,訴外会社が高架下の施設等の貸付けによる収益等を財源として返還する計画であったから,本件連立事業自体及び訴外会社の設立運営が地方財政の負担増を強いるものであるとはいえない。 オ社会資本整備特別措置法違反について(ア) 訴外会社がNTTーA資金の借受資格の要件に欠けるということはない。 (イ) 民都機構が行う貸付業務は,民間都市開発の推進に関する特別措置法附則14条1項により,建設大臣の承認を受けた民都機構がNTT資金の売却収入を活用して無利子貸付けの事業を行っているものであり,貸付けについて建設大臣の個別の承認を必要とする規定はないから,控訴人らの主張は失当である。 カ複々線化事業に関する違法性について(ア) 小田急線の複々線化事業の事業主体は を行っているものであり,貸付けについて建設大臣の個別の承認を必要とする規定はないから,控訴人らの主張は失当である。 カ複々線化事業に関する違法性について(ア) 小田急線の複々線化事業の事業主体は,小田急電鉄である。すなわち,この複々線化事業は,鉄道事業法3条に基づいて鉄道事業の免許を受けた小田急電鉄が,運輸大臣から同法7条1項に基づく事業基本計画の変更認可及び同法12条の鉄道施設の変更に係る認可を受けて実施しているものである。 (イ) 日本鉄道建設公団法22条1項によれば,鉄道施設の建設又は大改良に係る鉄道事業法12条1項等の認可を受けた鉄道事業者は,運輸大臣に対して,鉄建公団が当該施設の建設又は大改良を行うよう申し出ることができ,この申出があった場合は,運輸大臣は,当該建設又は大改良が大都市圏における輸送力の増強のため緊急に必要であり,かつ,鉄建公団が行うことが適当であると認めるときは,工事計画を定め,これを鉄建公団に指示するものとし(同法22条2項),この指示があったときは,鉄建公団が当該建設又は大改良を行うものとされている(同法22条5項)。これらの規定により,鉄道事業者の申出により,運輸大臣が指示することによって,鉄建公団が鉄道施設の建設又は大改良を行うこととなるのであるが,この場合,これによって,鉄道事業法12条1項等の認可を受けた鉄道事業者の事業主体としての地位までが鉄道事業者から鉄建公団に移るというものではない。小田急線の複々線化事業も,このようにして鉄建公団が行うこととなったが,鉄道事業者としての地位が鉄建公団に移転したものではなく,小田急電鉄が特定都市鉄道整備促進特別措置法により,運輸大臣の運賃の値上げの認可を受けたとしても,同法に違反しているわけではない。 (ウ) また,前述のとおり,連続立体交差化事業と都市計画 はなく,小田急電鉄が特定都市鉄道整備促進特別措置法により,運輸大臣の運賃の値上げの認可を受けたとしても,同法に違反しているわけではない。 (ウ) また,前述のとおり,連続立体交差化事業と都市計画道路事業とは別の事業であり,それぞれ実施時期に合わせて事業認可を受け施行するものである。第三セクターたる訴外会社は,前記128号線の都市計画事業の施行者としてその「付帯工事」をもって本件連立事業に参加している関係になるのである。 キ細切れ認可及び手続に関する違法性について(ア) 本件連立事業に関する都市計画決定は,東京都市計画都市高速鉄道事業第9号線と関連側道についてされたものであり,交差する東京都市計画道路補助線街路第128号線については,別に都市計画決定がされているところ,これらを個別に都市計画決定しても,本件連立事業に関する都市計画決定自体の総合的な評価を困難にするものではなく,これらにつき一体的に都市計画決定をし,事業認可をしなければならないという法律上の規定はない。この点で各都市計画決定とこれらに関する事業認可が違法となることはない。 (イ) また,「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する細目協定(平成4年3月31日付け《運輸省鉄道局次長,建設省大臣官房技術審議官,建設省道路局次長》)の4条3項には「連続立体交差化のために必要となる交差道路の改築及び連続立体交差化と同時に行う都市計画決定された道路の新設又は改築で鉄道と交差する部分に係るものは,連続立体交差化に関する都市計画事業の範囲に含めるものとする」と規定されているが,これは,鉄道を連続立体化することに伴って交差道路の新設,付替え等が必要となる場合に,道路の鉄道と交差する部分を当該都市計画事業に係る建設工事の範囲に含めるという趣旨であり,交差する道路の整備を必ず当該都 鉄道を連続立体化することに伴って交差道路の新設,付替え等が必要となる場合に,道路の鉄道と交差する部分を当該都市計画事業に係る建設工事の範囲に含めるという趣旨であり,交差する道路の整備を必ず当該都市計画事業の範囲に含むことを規定したものではない。よって,本件連立事業の都市計画事業認可の範囲に鉄道と,鉄道と交差する都市計画道路の整備が含まれていないことを理由とする建運協定違反の主張は理由がない。 (ウ) そもそも,連続立体交差化事業は,市街地において道路と交差している鉄道を一定区間連続して高架化又は地下化することで立体化を行い,多数の踏切の除去や新設道路との立体交差を一挙に実現する都市計画事業であって,都市再開発事業とは別事業であるが,連続立体交差事業を鉄道沿線の街づくり事業と一体的に進行めることにより,総合的な都市基盤整備に貢献する事業となる。 しかし,都市再開発事業となれば,その施行者は,法律上定められた者でなければならない(都市計画法59条7項)。第三セクターである訴外会社は,さらに都市計画事業の認可を受ける予定は全くなかったし,経堂駅前,成城学園駅前の再開発事業について,事業の計画化を検討したことなく(駅ビルを建築した事実もない。),再開発事業の施行者の一員になる予定もなかったのであるから,この点の控訴人らの主張は失当である。 ク訴外会社の解散(ア) 東京都では平成8年3月以来,東京都行財政改革大綱を策定して,管理団体の見直しを行ってきたところであるが,訴外会社についても,平成11年8月,西武線,小田急線の本件連立事業の事業立ち上げの目的を達成し,事業の見通しがついたことから,解散することとし,平成11年8月27日開催の臨時株主総会において,平成11年度末をもって解散することが報告され,平成12年3月28日の株主総会において解散 を達成し,事業の見通しがついたことから,解散することとし,平成11年8月27日開催の臨時株主総会において,平成11年度末をもって解散することが報告され,平成12年3月28日の株主総会において解散決議がされ,平成12年4月1日に解散した。解散の登記は平成12年4月6日にされている(乙29号証)。 (イ) なお,訴外会社の解散の理由としては,経済情勢の変化により,訴外会社が行う高架下の店舗等の賃貸事業の収益見込みが立たなくなり,返済期限内にNTTーA資金の返済を行うことが困難になったという事情がある。 (ウ) 訴外会社の解散に伴い,東京都に対してはその所有株式7100株(1株の金額5万円)に対する出資金の返還として3億5500万円,配当金として541万5099円の合計3億6041万5099円が平成12年7月25日に支払われた。 また,世田谷区と練馬区に対しては,それぞれその所有株式2000株に対する出資金の返還として1億円,配当金として152万5380円の合計1億0152万5380円がそれぞれ平成12年7月25日に支払われた。 (エ) これらの経緯から,訴外会社の設立,これに対する公金の支出が違法ではないことは明らかである。 理由 第1 被控訴人Dに対する損害賠償請求についての監査請求の前置 1 財務会計上の行為に対する監査請求と住民訴訟地方自治体職員の財務会計上の行為に対する監査請求と住民訴訟に関する制度の趣旨及び目的並びに両者の関連性についての認定判断は,次のとおり補正するほか,原判決「理由」欄の一記載のとおりであるから,これをここに引用する。 原判決64頁9行目の「自治行政」を「地方自治体行政」に,同67頁5行目の「それ」を「それに関する判断」にそれぞれ改める。 2 被控訴人Dの本案前の主張について(1) 弁論 れをここに引用する。 原判決64頁9行目の「自治行政」を「地方自治体行政」に,同67頁5行目の「それ」を「それに関する判断」にそれぞれ改める。 2 被控訴人Dの本案前の主張について(1) 弁論の全趣旨(原審丁事件訴状等)によれば,控訴人Cを含む原審丁事件原告らは,被控訴人Dの訴外会社設立の後に東京都が平成5年3月31日までに事業委託費の名目で支出した金額は1億9300万円であるとして同事件を提起したものであるが,最終的には,原判決別紙四記載のとおり,東京都と小田急電鉄との間の平成3年6月1日付け協定書(原審丁事件乙1号証の2)に基づいて平成3年11月20日から平成5年10月14日まで計6回にわたって支出された計9641万7635円及び平成4年5月6日付け協定書(同乙1号証の3)に基づいて平成4年7月6日から平成6年5月17日まで計5回にわたって支出された計7461万4200円の合計1億7103万1835円とこれに対する遅延損害金につき,被控訴人Dに損害賠償を請求するものである。 (2) 甲2,3号証,原審丁事件甲1号証の1・2と弁論の全趣旨によれば,控訴人H,控訴人A,控訴人B及び控訴人Cを含み控訴人Gを除く原審甲事件の原告らは,平成2年9月26日に訴外会社への出資金3億5500万円についての損害の填補,その後の事業委託費その他の公金の支出の差止めを求めて東京都監査委員に監査請求をし,同監査委員は平成2年11月26日にこの請求を棄却したこと,その後,原審における証人Iの証言により,①都市計画素案等説明会,②環境影響評価作業,③現地測量調査などの事業委託費の支出があったことを知ったとして,原審甲事件が係属中の平成6年10月6日に,控訴人Hほか416名が東京都監査委員に監査請求をしたが,同監査委員は,重複監査請求であるとして平成6年11 どの事業委託費の支出があったことを知ったとして,原審甲事件が係属中の平成6年10月6日に,控訴人Hほか416名が東京都監査委員に監査請求をしたが,同監査委員は,重複監査請求であるとして平成6年11月16日付けで上記監査請求を却下したので,その30日以内に,原審丁事件原告らが,被控訴人Dに対して,前記支出のうち1億7103万1835円とその遅延利息の支払を求める原審丁事件を提起したことが認められる。 そうすると,原審丁事件の原告であった控訴人Gは,平成2年9月26日に請求された最初の監査請求の請求人とはなっていなかったのであるから,平成2年9月26日の監査請求の範囲を論ずるまでもなく,控訴人Gについては,前記監査請求をもって原審丁事件提訴について前置が要求される監査請求と認める余地はないこととなる。 (3) したがって,控訴人Gが提訴した原審丁事件については,平成6年10月6日の控訴人Gを含むと認められる控訴人Hほか416名のした監査請求が提訴要件を充たすものと認められるが,前述のとおり,原審丁事件の被控訴人Dへの損害賠償請求は,上記監査請求の日から1年以上前の支出に当たる平成3年11月20日から平成5年3月31日までの支出合計1億4052万4055円とこれに対する年5分の遅延損害金を含んでいることが明らかである(原判決別紙四参照)。 ところで,監査請求の対象となるべき財務会計上の行為等の範囲は,その性質等により一体として違法性,不当性を判断するのが相当である場合であっても,当該行為等そのものが不可分であるなど特段の事情がある場合を除き,監査請求期間は各行為について個別に判断すべきである。このように監査請求の対象行為をある程度具体的に特定することは,その後の住民訴訟の訴訟物を特定するためにも必要なものであるし,行政活動の過度の不安定を 求期間は各行為について個別に判断すべきである。このように監査請求の対象行為をある程度具体的に特定することは,その後の住民訴訟の訴訟物を特定するためにも必要なものであるし,行政活動の過度の不安定を防止しようという目的を持つ監査請求期間の限定(1年)の趣旨を生かすためにも,監査請求の対象となり得る財務会計上の行為等がある程度特定され,かつ,個別に監査請求期間の範囲内であるか否かの判定がされる必要があるということができる。このように,個別の行為等ごとに,監査請求期間の要件具備を判断するとすれば,本件の訴外会社に対する業務委託費の支出についての損害賠償の請求に関しては,各支出ごとに監査請求期間を充たしているか否かが判定されなければならない。そうすると,前述のとおり,監査請求の日から1年以上前の支出に当たる平成3年11月20日から平成5年3月31日までの支出合計1億4052万4055円については,監査請求期間の徒過により,適法な監査請求があったとはいえないことは明らかである。 (4) この点につき,控訴人Gらは,原審における証人Iの証言があった平成5年4月23日及び同年6月29日に,初めて①都市計画素案等説明会,②環境影響評価作業,③現地測量調査などに対する事業委託費の支出があったことを知ったもので,それ以前には業務委託費の支出を知り得なかった事情があると主張する。しかし,前記認定のとおり,最初の監査請求は,平成2年11月26日に前記事業委託費等の支出の差止めを求めて請求されており,弁論の全趣旨によれば,控訴人Gは加わらなかったものの,その余の原審丁事件原告らは前記最初の監査請求の請求人になっていたことが認められるところ,損害の填補を求める監査請求においては,財務会計上の行為の特定があれば足り,損害となる各支出の日時,金額を特定することまでは 件原告らは前記最初の監査請求の請求人になっていたことが認められるところ,損害の填補を求める監査請求においては,財務会計上の行為の特定があれば足り,損害となる各支出の日時,金額を特定することまでは必要とされていないのであるから,控訴人Gについても早い段階で前記1億4052万4055円の支出についての監査請求をすることが可能であったと推認される。したがって,控訴人Gにつき,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があったと認めることはできない。 (5) このようにして,控訴人Gの原審丁事件の請求のうち,被控訴人Dに対して合計1億4052万4055円とこれに対する年5分の遅延損害金の支払を求める部分は,不適法として却下すべきものである。 第2 本案についての判断 1 訴外会社の設立,その事業目的及び事業等の推移(1) 訴外会社設立の動機と目的甲5,7ないし9,39,41,45,82号証,乙4,19,21,23,25号証,証人I,原審及び当審の証人K及び証人J並びに原判決「事実及び理由」欄の二の2,3に説示した事実によれば,次の事実が認められる。 東京都においては,都内の住宅地の中を多数の踏切において道路と交差して走行する高速鉄道の連続立体交差化事業は長年の懸案であって,昭和39年から東京都市計画高速鉄道第9号線その他の連続立体交差化事業に関する都市計画を策定してこれらを推進しようとしており,小田急小田原線等の連続立体交差化事業に関する前記東京都市計画高速鉄道第9号線については,昭和61年6月に建設大臣の事業認可を受けて事業を開始していたが,昭和62年に社会資本整備特別措置法が制定され,社会資本の整備促進のために,日本電信電話株式会社の株式売却の国庫収入を一定の要件のもとに公共的建設事業に無利子で融資する制度が出現したことから, が,昭和62年に社会資本整備特別措置法が制定され,社会資本の整備促進のために,日本電信電話株式会社の株式売却の国庫収入を一定の要件のもとに公共的建設事業に無利子で融資する制度が出現したことから,建設省の指導を受けて,多額の事業資金を必要とする本件連立事業にこの資金を導入して事業の早期完成を図ろうとするに至った。まず,世田谷区の住宅地の中を走る小田急小田原線の一定区間の連続立体交差化を目的とする東京都市計画都市高速鉄道第9号線及び西武池袋線の一定区間の連続立体交差化等の事業を合わせた本件連立事業の事業費の企画が再検討されたところ,その結果,その総事業費1578億8500円におけるNTTーA資金対象事業の事業費を350億円と予定し,そのうちNTTーA資金としての融資額は183億7500円(52.5%)となる見込みとなった。そこで,この融資を受けて公共的建設事業の施行者となるために,いわゆる第三セクターである訴外会社を設立することが必要となり,その設立後には,本件連立事業の都市計画事業施行者であり,本件連立事業の事業費の大部分を負担する東京都から1105億円もの規模で事業委託を受けて本件連立事業の事業そのものを遂行することを企画していた(甲5号証)。 しかしながら,都市における道路と鉄道の連続立体交差化事業については,円滑実施と費用負担の調整のために,昭和44年9月4日,当時の建設省と運輸省との間で「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」(建運協定)と「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する細目協定」(細目協定)が締結されており(甲41号証,乙2号証),この建運協定等によれば,連続立体交差化事業については,専ら都道府県がその事業主体となることを前提として鉄道事業者との間の費用負担の方法が取り決められていた(甲8 されており(甲41号証,乙2号証),この建運協定等によれば,連続立体交差化事業については,専ら都道府県がその事業主体となることを前提として鉄道事業者との間の費用負担の方法が取り決められていた(甲82号証)。NTTーA資金の導入に関して建設省からの指導を受けた東京都の担当者らは,当初この建運協定の改正により第三セクターも連続立体交差化事業の事業主体になることができるものと推測していたが,訴外会社の設立時(平成2年8月31日)までにはその旨の改正はなく,その後の平成4年3月にされた建運協定の一部改正においても同様であった(I証言,甲155号証)。そこで,訴外会社の設立を担当した東京都の職員らは,訴外会社の設立に当たり,訴外会社の授権資本の額を40億円から10億円(平成7年に11億9000万円)に減額し,東京都から受託して施行することを予定していた本件連立事業の受託事業を専らその事業の準備又は調整の業務に限定することとし,この受託事業費を約3億円として事業計画を立てることとなった(J証言,甲9号証)。その結果,訴外会社の行う事業は,専らNTTーA資金対象事業を主体とすることとなり,その公共的建設事業に当たる東京都市計画道路事業練馬区画街路第1号線の都市計画事業が平成2年12月19日に,東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第133号線の都市計画事業が平成6年3月10日に,東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第128号線の都市計画事業が平成7年11月20日に,それぞれ東京都知事から訴外会社に認可された(乙19,21,23号証)。 (2) 訴外会社の設立行為及び出資の経緯,事業等の推移と解散に至るまでの経緯は,原判決「事実」欄第二の二の4ないし6及び8に認定(当審で補正したところを含む。)のとおりであるから,ここに引用する。 2 控訴人らは, 設立行為及び出資の経緯,事業等の推移と解散に至るまでの経緯は,原判決「事実」欄第二の二の4ないし6及び8に認定(当審で補正したところを含む。)のとおりであるから,ここに引用する。 2 控訴人らは,訴外会社の設立目的が違法であるとか,訴外会社の目的としていた事業内容あるいはそれに関わる本件連立事業の都市計画決定及びその内容となる小田急線の本件高架式化計画が違法である等と主張し,その結果,訴外会社の設立のための出資及び訴外会社に対する事業委託費の支出も違法な公金支出になると主張する。 (1) 前記1の(1)において認定した事実によれば,訴外会社の設立の動機ないし目的は,昭和61年以降施行されていた本件連立事業にNTTーA資金を導入しようとして設立が企画されたものであり,設立準備中の事業計画においても,事業主体である東京都からの委託を受けた受託業務として本件連立事業の施行に関与しようとしたものにすぎないことが認められる。訴外会社が都市計画法上施行者が法定されている都市計画事業である本件連立事業の事業主体となることを企図していたとまではいえない。したがって,本件連立事業の事業主体となることを動機ないし目的として設立されたとはいえないし,設立時の事業計画ではその受託業務でさえ大幅に縮小されるに至り,その後は,専らNTTーA資金の融資要件である公共的建設事業としての道路整備の事業主体となるに止まったものと認められる。 また,訴外会社の設立目的は前述のとおりであり,その事業目的及び事業執行等において,株主たる企業の利益を図ろうとした動機ないし目的があったと認めるに足りる証拠はなく,前記認定の訴外会社の株主構成及び解散後の利益配当の額に照らせば,訴外会社が参加企業の巨利を図ろうとしたとする控訴人らの主張は当たらない。 訴外会社の設立の結果,東京都, めるに足りる証拠はなく,前記認定の訴外会社の株主構成及び解散後の利益配当の額に照らせば,訴外会社が参加企業の巨利を図ろうとしたとする控訴人らの主張は当たらない。 訴外会社の設立の結果,東京都,世田谷区,練馬区等が出資金を支出する行為は,訴外会社の設立行為やその目的が公序良俗に反するなど違法でない限り,私法上の合同行為ないし契約に基づくものであって,原則として適法な先行行為に基づくものというべきであるから,これを違法ということはできない。また,訴外会社の事業目的に関係する本件連立事業の都市計画決定及びその内容,都市計画事業及び鉄道事業認可並びにそれらの内容は,訴外会社の出資金の支出の先行行為のそのまた先行行為(以下「先々行為」という。)に当たるものであって,そのうち都市計画決定は,抗告訴訟の対象ともなり得ず,その他の認可等の違法性の有無も,公金支出という財務会計上の行為をなすに当たって財務会計上の行為担当者が当然に判断すべき事柄ではないから,先々行為の違法性が当然に財務会計上の行為の違法性を招くものではない。ただ,先々行為に重大かつ明白な瑕疵があり,無効であることが財務会計上の行為担当者でも容易に判断し得る場合や,先々行為の違法のためその取消しが確定しているような場合には,先々行為は後行行為及びそのまた後行行為の権限機関を拘束しないから,後行行為である公金支出の行為は違法性を帯びることもある。 (2) そこで,まず,出資金支出の先行行為である訴外会社の設立行為自体の違法性の有無について判断する。 当裁判所は,訴外会社の設立がいわゆる第三セクターとして一般的に違法視される点があるとはいえないし,訴外会社の目的が公共性を欠くとか,その事業内容が不確実であるとはいえないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「理由」欄三 ターとして一般的に違法視される点があるとはいえないし,訴外会社の目的が公共性を欠くとか,その事業内容が不確実であるとはいえないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「理由」欄三の1の(一)ないし(五),2の(一)ないし(四)の説示と同じであるから,これを引用する。 (補正)ア原判決75頁11行目の「4」を「3,4」に,同78頁1行目の「文言」から同3行目の「認識があったものであるが、」までを「という記載があることと,訴外会社の設立概要の説明書(甲5,6号証)の事業計画にも,事業費合計350億円のNTT対象事業としての連続立体交差化事業のほかに,事業費1105億円の本件連立事業の受託事業が掲げられていたことに照らすと,訴外会社が連続立体交差化事業の施行者にもなるような誤解を与えかねないが,定款目的第一項は諸法律に適うように解釈するのは当然であるうえ,」に,同9行目の「工事と」を「在来線及び複々線化(線増)の工事と」に,同6行目から7行目にかけての「四〇〇メートルないし六〇〇メートルの鉄道建設事業の費用」を「東側,西側各300mにわたる在来線及び線増部分の鉄道用高架橋建設事業の費用」に,同8行目の「鉄道建設費用」を「鉄道用高架橋建設費用」にそれぞれ改める。 イ同83頁7行目から8行目にかけての「でないこととの関係で疑義があることは既に説示したところであるが、」を「あるような誤解を与えるものであることは前述のとおりであるが,その趣旨は,専ら受託事業として連続立体交差化事業を施行することを目的とするものであったと認められることは前述のとおりであり,」に改め,同85頁5行目の「理由に」の次に「また,その出資が巨大利益を目的としたものであり,出資している民間大企業に巨利をもたらそうとするものであることを理由に」を加え,同7 前述のとおりであり,」に改め,同85頁5行目の「理由に」の次に「また,その出資が巨大利益を目的としたものであり,出資している民間大企業に巨利をもたらそうとするものであることを理由に」を加え,同7行目から8行目にかけての「設立段階において、その対象事業について原告らが指摘する変更があったことが認められるが、」を「準備の段階においては,訴外会社のいわゆる授権資本の額を40億円と予定したものの(甲5,7号証),設立時には10億円に減額され(甲98号証),前記認定のとおり(原判決「事実」第二の二の4の(二)),平成7年8月に11億9000万円に増額されて,ほぼ同時にその授権資本の枠は増資によって充たされてしまったのであるから,訴外会社の規模に関する構想の変更があったと推認され,また,訴外会社の本件連立事業関連の受託事業についても,当初は,前述のとおり,1105億円の事業規模を予定していたものの(甲5号証),設立後の平成2年10月22日付けの『東京鉄道立体整備株式会社設立の概要』によれば,訴外会社の事業費負担分が310億円とされたうえ,本件連立事業関連の受託事業の規模はわずか約3億円に減縮されていることが認められるから,明らかに前記受託事業中心の事業から本件連立事業の施行のための事業調整業務の受託を中心とする事業に変更があったと認められるが(J証言),そもそも,NTTーA資金の借入れの要件を充たした訴外会社において,NTTーA資金対象事業のほかこれ以外の事業を施行することが禁止されるものではなく,」に,同87頁1行目から2行目にかけての「面があるとしても、そのことで、」を「面があるとは,前記受託業務が大幅に縮小したこと,事業自体が公共性を有することに照らせば,必ずしもいえず,」にそれぞれ改め,同88頁2行目の「予想され、」の次に「そもそも本件 ても、そのことで、」を「面があるとは,前記受託業務が大幅に縮小したこと,事業自体が公共性を有することに照らせば,必ずしもいえず,」にそれぞれ改め,同88頁2行目の「予想され、」の次に「そもそも本件連立事業に対しては,国の補助金が東京都に投入されるものであるから,」を加える。 ウ同92頁6行目の「地下方式と決定されれば」の次に「,地下の鉄道敷部分と地上との間の中間部分の利用構造,方法に関係する公共的収益的事業に訴外会社がNTTーA資金の返済等のために関わることも十分に考えられるから,必ずしも,」を加え,同93頁2行目の「そのものが」から同3行目の「あるから、」までを「の融資要件が,連続立体交差化事業については高架式を必須のものとしているなどとは到底いえないから(社会資本整備特別措置法2条参照),」に,同94頁3行目の「訴外会社」から同5行目の「ないこと」までを「NTTーA資金の対象事業としての要件を充たし,かつ,東京都知事の認可を受けた道路整備事業又はその付帯事業として施行される限りは,これを鉄道高架化事業又は鉄道の複々線化事業そのものの施行ということはできないこと」に,同95頁7行目の「問題であるから、」から同8行目の「格別、」までを「問題であり,鉄道事故,災害があった場合の救命,救護活動,復旧工事の難易や地上面に至るまでの諸設備の運用のランニングコスト等,極めて多面的,長期的展望に立ったうえで,技術的,政策的に決定せざるを得ないところがあるから,立体交差方式を含む都市計画の策定に当たっては考慮すべきであり,」に,同11行目の「そのことの故に」を「それは行政施策の選択に関する問題であり,それが違法としてその取消しが確定していたか,又は重大かつ明白な欠陥があるとして都市計画決定が無効と判断される蓋然性が極めて高いような特別な場合で 故に」を「それは行政施策の選択に関する問題であり,それが違法としてその取消しが確定していたか,又は重大かつ明白な欠陥があるとして都市計画決定が無効と判断される蓋然性が極めて高いような特別な場合でない限り,この都市計画等に基づく事業に対する資金調達の一方法として関連して」に,同96頁9行目の「証拠はない。」を「証拠はないし,前記認定のとおり,平成12年4月1日の解散した訴外会社の収益は,各株主に出資金のほか若干の利益配当金を分配することができたのであるから,現実にも,東京都,世田谷区及び練馬区の財政に対して悪影響を及ぼしたとは認められない。」にそれぞれ改める。 (3) なお,控訴人らは,当審において訴外会社の設立の登記の違法についても主張するが,訴外会社の設立登記事項には,官庁の許可を要する事項はないから,訴外会社の設立登記が商業登記法19条に違反するとはいえない。 (4) 次に,控訴人らの主張する訴外会社の出資金支出の先々行為である本件連立事業に関する都市計画決定及びその内容に違法,また,都市計画事業の施行者が東京都と訴外会社と重複している違法,NTTーA資金の利用につき,社会資本整備特別措置法違反の違法,本件高架化計画による小田急小田原線の複々線化事業の実施方法の違法,一体の本件連立事業が小田急小田原線複々線化事業,連続立体交差化事業及び訴外会社の行う道路整備事業の3つに分けて事業認可されていることの違法,訴外会社への出資に至る事実経緯の隠蔽等の違法が,重大かつ明白なもので,訴外会社への出資金等の支出に違法性を承継させるようなものであったか否かについて判断する。 前記認定のとおり,訴外会社の設立時には,既に本件連立事業の施行は開始されており,訴外会社は,本件連立事業にNTTーA資金を導入するために設立されたものであるが,本件連立 否かについて判断する。 前記認定のとおり,訴外会社の設立時には,既に本件連立事業の施行は開始されており,訴外会社は,本件連立事業にNTTーA資金を導入するために設立されたものであるが,本件連立事業の都市計画決定,都市計画事業,小田急小田原線の複々線化事業及びそれに関連する事業等は,訴外会社の設立ひいては訴外会社に対する公金支出の違法をもたらす先行行為であるとはいえない。しかも,控訴人らが違法をいう上記の各論点が,訴外会社の運営する事業の内容等に法律上ないし事実上の制限をもたらす場合があり得ても,訴外会社に対する本件出資金の支出や訴外会社に本件連立事業に関する一部の事業を委託してその費用を支出することにつき,先々行為として違法性の承継をもたらすような重大かつ明白な違法があったとものと認めるに足る証拠はない。 (5) したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記の点を前提とする主張は理由がない。 3 しかし,訴外会社の設立目的自体が本件連立事業に対する資金供給にあることは前記のとおりであるから,本件連立事業の都市計画決定ないし事業認可が違法であれば,東京都についていえば,都市計画決定ないしその事業認可の権限機関と出資金等の公金支出の権限機関が同じ都知事であるので,都知事は後行行為の時点で先々行為の違法性を再度吟味判断することも可能であるから,先々行為の違法が訴外会社への出資金の支出ないし業務委託費等の支出などの財務会計上の行為の違法が招来されるとする見解もあり得るので,念のために,この点についての控訴人らの主張を検討することとする。 当裁判所は,控訴人らが違法を主張する上記の各論点について,後行行為である本件出資金及び委託事業費の支出を違法ならしめるべき事由はないと判断する。その理由は,(2)のアないしカに述べると とする。 当裁判所は,控訴人らが違法を主張する上記の各論点について,後行行為である本件出資金及び委託事業費の支出を違法ならしめるべき事由はないと判断する。その理由は,(2)のアないしカに述べるとおりである。その余の控訴人らの主張に対する判断は,次の(1)のとおり補正するほか,原判決の「理由」欄三の2の(五)ないし(八)の説示と同じであるから,これをここに引用する。 (1) 補正原判決99頁5行目から6行目にかけての「に関する要件であって」を「の収益による返還が可能であることを要求するに止まるものであって」に,同100頁2行目の「含まないこととなり」から同11行目の「のであって、」までを「含まないこととなるが(原判決「事実」欄の第二の二の4の(二),5の(一)参照),NTTーA資金の融資対象事業は国からの直接又は間接の負担又は補助を受けない公共的建設事業であれば足り,一部東京都等の負担金があることは融資要件に影響しないことは前述のとおりである。」に,同102頁7行目の「丁事件」から同9行目の「のうち」までを「原判決別紙四記載の支出のうち,監査請求を経ていないと認められる前述の合計1億4052万4055円の支出を除く,」にそれぞれ改める。 (2) 当審が念のため付加した判断ア都市計画決定とその内容等の違法性控訴人らのこの点の違法の主張は,結局,事業費,環境保全等の観点を総合して見ても,本件連立事業の小田急小田原線の対象区間は,下北沢地区(東北沢から世田谷代田)について平成7年7月に決定したように全区間地下化として都市計画を変更すべきであって,これを変更せずに高架式を維持したことは,平成10年7月24日の公害等調整委員会の裁定で違法と認められた沿線住民の鉄道騒音被害を放置することともなるから,本件連立事業の都市計画決定ひいては事 あって,これを変更せずに高架式を維持したことは,平成10年7月24日の公害等調整委員会の裁定で違法と認められた沿線住民の鉄道騒音被害を放置することともなるから,本件連立事業の都市計画決定ひいては事業認可には重大かつ明白な瑕疵があったというものである。 しかしながら,前記認定(原判決「事実」欄第二の二の5の(二))のとおり,本件連立事業の小田急小田原線の対象区間については,もともと昭和39年の東京都市計画高速鉄道第9号線の都市計画決定に源を発するものであり,昭和45年の一部変更,昭和60年の一部変更による都市計画決定により内容が具体化していったものと認められ,本件連立事業の小田急小田原線の対象区間についての高架式による連続立体交差化についての都市計画は,訴外会社が設立された平成2年8月以前には既に都市計画として決定されていたことが明らかである。したがって,控訴人らの主張は,当時決定されていた高架式連続立体交差化の本件都市計画を地下式に変更しなかったことによる違法又は維持された都市計画決定の無効をいうものにすぎないこととなる。 確かに,甲12,20の3,22の2,26の1,31,32の1,58,69の2,78の2・3,92,101,107の1,証人L,同M,同N,同Oによれば,地下式による連続立体交差化は当時の技術水準においても可能であり,各種の利点があることが認められるが,もともと連続立体交差の方式の決定は東京都の行う都市計画の内容の選択の問題であって,甲16,17,19号証,22号証の1・2,33号証の1ないし3,37号証,55号証の1・2,68号証の1,118号証の4,137,169号証,乙7号証,8号証の1ないし3,9号証の1ないし3と原審及び当審における証人Kと弁論の全趣旨によれば,東京都においては,訴外会社の設立前から,連 ,68号証の1,118号証の4,137,169号証,乙7号証,8号証の1ないし3,9号証の1ないし3と原審及び当審における証人Kと弁論の全趣旨によれば,東京都においては,訴外会社の設立前から,連続立体交差化事業に補助費を出す国がその調査内容を定めている連続立体交差事業調査要綱(甲55号証の1)に従い,所定の調査を行うとともに,本件連立事業の連続立体交差の方式についても検討し,計画的条件,地形的条件,事業的条件等諸般の事情を考慮して,一部成城学園駅付近については堀割式に変更するものの,その余の業務区域は概ね高架式を維持するとする一応の結論を得たので,これを都市計画素案にまとめて,平成3年8月ころ住民への説明会を数回にわたって実施したこと,また,鉄道事業者である小田急電鉄は,東京都環境影響評価条例に従い,本件連立事業の施行に伴う環境影響の評価を行って,平成3年11月5日に環境影響評価書案を作成して東京都に提出し,東京都はこれを東京都環境影響評価審議会の審議に付したうえ,平成4年4月9日には公聴会を開催し,同年12月ころ東京都と小田急電鉄は本件連立事業に関する環境影響評価書を作成したこと,東京都の策定した前記都市計画案については,平成4年12月18日に東京都都市計画地方審議会の審議に付され,この都市計画については平成5年2月1日に告示されたことがそれぞれ認められる。 これらの経緯によれば,本件連立事業の都市計画は訴外会社の設立の前後ころから一部見直しの手続が開始していたものと推認されるが,連続立体交差事業調査要綱,東京都環境影響評価条例に従った各種調査と東京都都市計画地方審議会の審議を経て平成5年に告示された従前の本件都市計画を一部変更する旨の都市計画決定においても,概ね高架式を維持するとする結論を変更しなかったものであることが認められ 種調査と東京都都市計画地方審議会の審議を経て平成5年に告示された従前の本件都市計画を一部変更する旨の都市計画決定においても,概ね高架式を維持するとする結論を変更しなかったものであることが認められる。 そうすると,訴外会社の設立の前後ころから,当時本件連立事業の都市計画決定を見直す契機が生まれたということはできるが,その見直しを実行した従前都市計画を一部変更する都市計画決定が平成5年に告示されるまでの間は,従前からの都市計画決定が明白かつ重大な瑕疵のために無効なものであったとはいえず,平成5年の一部変更の都市計画決定についても,これが違法としてその取消しが確定していたものではない。したがって,現在の沿線住民の鉄道騒音被害の状況が一部不法行為となる状態であって,小田急電鉄が損害賠償責任を負うことがあったとしても,訴外会社の設立から解散に至るまでの間の本件連立事業に関する都市計画決定や都市計画事業認可等が当然に違法であるとか,重大かつ明白な瑕疵があって無効であるとまではいえず,本件連立事業にNTTーA資金を導入しようとしてされた訴外会社の設立のための出資金及びこれに対する事業委託費等の公金の支出が,本件連立事業の違法を理由に違法となる余地はない。 次に,控訴人らは,訴外会社が,東京都知事から事業認可を受けて施行する東京都市計画道路事業練馬区画街路第1号線,東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第133号線及び東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第128号線の事業は,本件連立事業のうえでは東京都が施行者となる都市計画道路事業であるから,都市計画事業の重複があるとして違法であると主張する。前記認定のとおり,訴外会社の設立の動機は,本件連立事業にNTTーA資金を導入することにあり,その方法として本件連立事業のうちの高架下の道路整備事業をN 画事業の重複があるとして違法であると主張する。前記認定のとおり,訴外会社の設立の動機は,本件連立事業にNTTーA資金を導入することにあり,その方法として本件連立事業のうちの高架下の道路整備事業をNTTーA資金の融資要件たる公共的建設事業としてこれを行おうとするものであると認められる。結局,都市計画事業としては東京都が施行者として行う事業の一部を都知事の認可を受けて訴外会社が施行するものであって,その施行者ないし施行の方法に矛盾ないし衝突があるとはいえないから,これを違法ということはできない。 また,控訴人は,訴外会社の事業費中,道路築造費が3360万円であるのに対して,付帯工事費が117億0590万円と300倍以上になっているのは,訴外会社が本件連立事業の施行者となっていることを示すものであるという主張をするが,前記認定のとおり,訴外会社の公共的建設事業の施行は,結局のところ,本件連立事業中の訴外会社の施行分の費用負担に応ずるという趣旨であるところ,前記付帯工事の額は,前記認定によれば,鉄道と交差する道路については,交差する地点の前後約300mの合計600mにわたって鉄道の高架橋の建設が必要となるという計算で負担額を算定した結果であると推認され,これが合理的であるか否かは別として,この付帯工事の額をもって,訴外会社が本件連立事業の実質的な施行者であると認めることはできないし,付帯工事といえども訴外会社の事業計画内の工事であると認められるから,訴外会社が,その事業計画を逸脱した事業ないし工事をしたとまではいえない。 イ東京都,世田谷区及び練馬区の財政への悪影響訴外会社への出資と事業委託費の支出が必ずしも東京都,世田谷区及び練馬区の財政の悪影響をもたらすものとはいえないことは,前述のとおりである。また,解散した訴外会社からの東京都, 区の財政への悪影響訴外会社への出資と事業委託費の支出が必ずしも東京都,世田谷区及び練馬区の財政の悪影響をもたらすものとはいえないことは,前述のとおりである。また,解散した訴外会社からの東京都,世田谷区及び練馬区への分配金の額は,いずれもそれぞれの出資金の額を上回っていたことも前記認定のとおりである。 もともと,訴外会社の設立は,本件連立事業に対してNTTーA資金を導入しようとするものであったのであり,このような資金調達に関する行政上の工夫をすることにより,本来施行者として東京都が負担し,さらには世田谷区及び練馬区も負担に応ずべき関係にあった本件連立事業の施工費の負担割合を変更し,東京都,世田谷区及び練馬区の各負担金の軽減が実現したものと認められる。したがって,訴外会社の設立による訴外会社に対するNTTーA資金の融資の実現及び本件連立事業に対する訴外会社からの融資金の使用によって,むしろ,東京都,世田谷区及び練馬区には事業費の負担の軽減という利益がもたらされたというべきであり,本件全証拠によるも,これらの自治体の財政に悪影響がもたらされたと認めることはできない。 ウ社会資本整備特別措置法違反前記認定のとおり,社会資本整備特別措置法2条によれば,NTT資金の融資対象は,地方公共団体以外の者が国の直接又は間接の負担又は補助を受けずに実施する公共的建設事業のうち,当該公共的建設事業又はこれと密接に関連する他の事業により生ずる収益をもって当該公共的建設事業に要する費用を支弁することができると認められるものであるから,国の補助を受ける本件連立事業が融資対象事業に当たらないことは当然であるが,本件連立事業の施行者となることができない訴外会社は,これに関連する道路整備事業を前述の国の補助を受けない公共的建設事業として施行する限りは,前記融資 が融資対象事業に当たらないことは当然であるが,本件連立事業の施行者となることができない訴外会社は,これに関連する道路整備事業を前述の国の補助を受けない公共的建設事業として施行する限りは,前記融資対象の要件を充たしていると認められる。 確かに,訴外会社の設立はNTTーA資金を本件連立事業に導入して東京都の費用負担を軽減しようとする動機ないし目的を有するものであったが,そのような東京都の費用負担の軽減は,訴外会社が前記関連事業の施行者となって,その費用を訴外会社が負担することによって実現されるものであり,このような手法をとったことが社会資本整備特別措置法に違反するとまではいえず,そのために訴外会社の設立の違法が招来されるものではない。 また,本件連立事業は東京都の都市計画事業であることは前述のとおりであるから,行政施策の結果,小田急電鉄が本件連立事業の完成後の恩恵ないし利益を受けたとしても,これを不当なものということは必ずしもできない。このことは,訴外会社が本件連立事業の関連事業を施行したとしても変わるものではない。 さらに,前記認定(原判決「事実」欄第二の3の(二))のとおり,民都機構は,民都特別措置法附則14条1項の規定により,建設大臣の承認を受けて,社会資本整備特別措置法2条1項1号に該当する道路の新設又は改築等の公共的建設事業を施行する地方公共団体等の出資に係る法人にNTT資金の貸付けを行うことができるのであるから,訴外会社が民都機構からNTTーA資金の融資を受けたとしても何ら違法はない。訴外会社に対する民都機構の貸付けについて,民都特別措置法附則14条1項は,個別の融資につき建設大臣の承認を受けるべき旨を規定していると解することはできないから,この点の控訴人らの主張は失当である。 エ複々線化事業に関する違法性弁論の全趣 特別措置法附則14条1項は,個別の融資につき建設大臣の承認を受けるべき旨を規定していると解することはできないから,この点の控訴人らの主張は失当である。 エ複々線化事業に関する違法性弁論の全趣旨によれば,小田急線の複々線化事業は,本件連立事業とは別に鉄道事業者である小田急電鉄が,鉄道事業法7条の規定に基づいて,運輸大臣の認可を受けて実施している鉄道軌道の新設事業であると認められる。したがって,本件連立事業とは別個の事業であることは明らかであり,その事業主体の如何は,必ずしも本件連立事業の違法を招来するものとはいえない。しかしながら,証人J,同Iと弁論の全趣旨によれば,本件連立事業と前記複々線化事業とは,実際の施工において,新設の線増高架施設を在来線の仮設線として利用しながら在来線の高架施設を建設するという工程を踏み,また,これらの高架施設の建設は,交差道路付近においては訴外会社の道路整備事業として行われるという関係があることが認められるから,結局,本件連立事業,複々線化事業及び訴外会社の道路整備事業は,それぞれ別個の事業認可を受けているものではあるが,実際の施工においては,ほぼ完全に一体として工事が行われるものであるということができる。控訴人は,このような混然一体とした都市計画又は事業認可は違法であるとも主張するが,都市計画において総合的調整的な観点が必要であるといい得るとしても,都市計画事業と鉄道事業の事業計画とは,施行者,根拠法令,事業認可権者,事業の区域又は範囲に差異があるのであるから,鉄道事業者の事業計画と都市計画事業たる連続立体交差化事業が一つの計画として策定されなければならないものとはいえない。 また,控訴人らは,小田急小田原線の複々線化事業は鉄建公団が事業主体となっていると主張するが,日本鉄道建設公団法22条1項に 交差化事業が一つの計画として策定されなければならないものとはいえない。 また,控訴人らは,小田急小田原線の複々線化事業は鉄建公団が事業主体となっていると主張するが,日本鉄道建設公団法22条1項によれば,鉄道施設の建設又は大改良に係る鉄道事業法12条1項等の認可を受けた鉄道事業者は,運輸大臣に対して,鉄建公団が当該施設の建設又は大改良を行うよう申し出ることができ,この申出があった場合は,運輸大臣は,当該建設又は大改良が大都市圏における輸送力の増強のため緊急に必要であり,かつ,鉄建公団が行うことが適当であると認めるときは,工事計画を定め,これを鉄建公団に指示するものとし(同法22条2項),この指示があったときは,鉄建公団が当該建設又は大改良を行うものとされている(同法22条5項)。したがって,鉄建公団は,これらの規定により,鉄道事業者の申出により,運輸大臣が指示することによって,前記複々線化事業の施行者となっているものと認められるが,本件連立事業を施行しているとはいえないから,都市計画法59条に抵触する余地はない。 控訴人らは,東京都及び小田急電鉄は複々線化事業の事業主体が小田急電鉄であると虚偽の説明を住民にしてきたというが,弁論の全趣旨によれば,鉄建公団は実際の複々線化事業を小田急電鉄に委託したというのであるから,小田急電鉄を事実上の施行者として公表することが誤りとまではいえないし,また,このことが訴外会社の設立等の違法を招来するものではない。また,特定都市鉄道整備促進特別措置法3条,5条によれば,運輸大臣の認定を受けた特定都市鉄道整備事業計画の期間に係る鉄道事業者の運賃の上限については,運輸大臣は,鉄道事業法16条1項の規定による運賃の値上げの認可を行うときは,前記整備計画に記載された工事の工事費の支出に充てる資金の一部を運送収 画の期間に係る鉄道事業者の運賃の上限については,運輸大臣は,鉄道事業法16条1項の規定による運賃の値上げの認可を行うときは,前記整備計画に記載された工事の工事費の支出に充てる資金の一部を運送収入により確保することができるよう配慮するものとされているから,鉄建公団が複々線化事業を施行することとなったからといって,鉄道事業者としての地位が鉄建公団に移転するものではなく,小田急電鉄が運輸大臣の認可を受けて運賃の値上げをすることが違法であるとはいえない。 さらに,控訴人は,小田急電鉄の負担である複々線化事業の工事費を東京都と訴外会社が支出していると主張するが,複々線化事業とともに行う連続立体交差化事業における負担者と負担割合は,前記建運協定によって一定の基準が示されているところ,前記建運協定自体は,当時の建設省と運輸省との協定であって,特に法的拘束力を有するものとはいえない。しかし,これを地方自治体又は鉄道事業者が承認することにより,関係者間に成立する合意となるものであるから,最終的には,その合意によって精算することで足りるものであり,この点は本件連立事業の違法を招来するものとはいえない。 オ細切れ認可の違法性前記認定のとおり,複々線化事業と一緒に行う本件連立事業は,複々線化事業,連続立体交差化事業及び訴外会社が行う一定の場所における道路整備事業の3つに分けられることとなるが,前述のとおり,実際の建設工事においては,これらを分けることなく一体として施工するものであることは前記認定のとおりである。控訴人らは,このような本件連立事業の在り方を捉えて,都市計画等が重複しており,違法であるほか,3つの事業に分けて事業認可がされていることは違法であると主張する。しかし,もともと小田急電鉄の行う複々線化事業は鉄道事業者の事業計画によるものであり て,都市計画等が重複しており,違法であるほか,3つの事業に分けて事業認可がされていることは違法であると主張する。しかし,もともと小田急電鉄の行う複々線化事業は鉄道事業者の事業計画によるものであり,都市計画事業である本件連立事業と区別して企画ないし事業認可がされるのは,当然である。また,訴外会社の施行する前記道路整備事業は,本件連立事業の道路事業の一部と複合するものであるが,これらの都市計画,施工者が矛盾,衝突を起こしているとはいえないし,都市計画決定の複合自体は,これを違法とまではいえないことは前述のとおりである(なお,弁論の全趣旨によれば,本件連立事業の事業認可の対象には,鉄道と交差する道路部分自体はこれに含まれていないと認められる。)。したがって,上記の3つの事業が並立することとなるについて,違法があるとはいえない。 前記認定に照らせば,訴外会社の施行する道路整備事業を本件連立事業から分離し,これを別個の東京都知事の事業認可に係る事業としたのは,専らNTTーA資金の融資対象事業を特定し,その内容を融資要件に適合させるためであったと推認されるが(国からの補助があり,地方公共団体である東京都が事業主体となる本件連立事業は,社会資本整備特別措置法2条1項1号の融資要件を充たさない。),そのような動機ないし目的があったとしても,前示のような都市計画事業の分離が都市計画法上違法といえないことは,前記説示のとおりである。 また,控訴人らは,本件連立事業が実際には巨大な都市の再開発事業であるとして,これらを総合して計画され,事業認可されるべきであるとも主張するが,複々線化事業と本件連立事業との間に差異があること,及び本件連立事業と訴外会社の施行事業との間に複合があるものの,矛盾衝突がないことは前述のとおりであり,前記のとおり3つの事業が施 とも主張するが,複々線化事業と本件連立事業との間に差異があること,及び本件連立事業と訴外会社の施行事業との間に複合があるものの,矛盾衝突がないことは前述のとおりであり,前記のとおり3つの事業が施工において一体化している実情があるからといって,必ずしも3つの事業認可に区別されたことが違法であるとはいえない。また,都市計画法,建運協定及び国の定める調査要綱(甲55号証の1)が控訴人のいう細切れ認可を禁止していると解することはできず(建運協定は複数の事業が複合して施工された場合の各事業者の費用負担の在り方を合意するものである。),総合的な計画に基づかなければ,環境影響評価ができないわけではないから,この点で違法があるということもできない(本件連立事業については東京都環境影響評価条例に基づいて,環境影響評価が行われていることは前記認定のとおりであり,同条例の規定に照らせば,訴外会社の施行する道路整備事業には,環境影響評価の実施が要求されているとはいえない。)。 カ本件出資に至る手続の違法性控訴人らは,東京都,世田谷区等は,訴外会社の事業が巨大な営利事業であることを隠蔽したと主張するが,前記認定のとおり,訴外会社が都知事の認可を受けて施行したのは,本件連立事業に関連する高架下の道路の交差部分の道路整備事業であり,東京都からの受託事業としては本件連立事業の施行の準備ないし調整のための事業を実施したにすぎず(設立準備中に予定した本件連立事業の施行自体を東京都から受託する事業計画は実施されなかった。),平成12年4月1日に解散してこれらの業務も終了させていることが認められる。したがって,訴外会社の事業が約1000億円の投資を必要とする大規模事業であったというのは当たらず,東京都等に事実の隠蔽,虚偽説明があったということはできない。 また,訴外 ていることが認められる。したがって,訴外会社の事業が約1000億円の投資を必要とする大規模事業であったというのは当たらず,東京都等に事実の隠蔽,虚偽説明があったということはできない。 また,訴外会社の事業の実態は前記のとおりであって,社会資本整備特別措置法上の融資要件を具備していることは前述のとおりであるから,巨大営利企業にNTTーA資金を貸し付けているという控訴人らの主張も失当である。したがって,訴外会社の設立と事業の遂行の手続に対する東京都等の行政に,行政裁量を超えた違法があるとはいえない。 第3 結論以上によれば,訴外会社に対する東京都,世田谷区及び練馬区の出資又は事業委託費の支出に違法があるとはいえないから,事業委託費等の各公金の支出につき遅延損害金の賠償義務があるとはいえない。また,控訴人Gの原審丁事件における請求中,被控訴人Dに合計1億4052万4055円の損害賠償を請求する部分は不適法であり,これを却下した原判決は正当である。 よって,控訴人H,控訴人A,控訴人B及び控訴人Cの被控訴人Dに対する控訴(原審甲事件に関するもの),控訴人H及び控訴人Aの被控訴人Eに対する控訴(原審乙事件に関するもの),控訴人B及び控訴人Cの被控訴人Fに対する控訴(原審丙事件に関するもの)及び控訴人Gの被控訴人Dに対する控訴(原審丁事件に関するもの)をいずれも棄却し,控訴人らが当審で拡張した被控訴人Dに対する新たな請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官慶田康男裁判官河村吉晃
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