平成6(オ)940 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成9年9月9日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所 平成5(ネ)130
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判決文本文2,821 文字)

主文 一原判決中、主文第二項を次のとおり変更する。 上告人らの控訴に基づき、第一審判決を次のとおり変更する。 1 被上告人は、上告人らに対し、各一〇四〇万三〇三三円及びうち九七一万三〇三三円に対する平成二年五月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 2 上告人らのその余の請求をいずれも棄却する。 二訴訟の総費用はこれを二分し、その一を上告人らの、その余を被上告人の負担とする。 理由 上告代理人徳田靖之の上告理由第一点及び同第三点について所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足り、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであって、採用することができない。 同第二点について一本件は、自動車同士の衝突事故により死亡したDの両親である上告人らが、Dが乗車していた車両に衝突した相手方車両の運転者兼運行供用者である被上告人に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づいて慰謝料、逸失利益等の損害賠償の支払を求めるものである。原審の適法に確定した事実関係の概要は、以下のとおりである。 1 Eは、平成二年五月二七日午後九時ころ、Dを助手席に同乗させ、普通乗用自動車(以下「E車」という。)を運転し、東京都豊島区ab丁目c番d号先路上において、Dの居住するマンションの前で同女を降車させるため、E車を反対車線に入れるべく転回中、反対車線を時速約九〇キロメートルで進行してきた被上告人- 1 -運転の普通乗用自動車と衝突した。 Dは、右事故により、E車の助手席左側ドアに左けい部を挟まれ、同日午後一〇時四二分、けい髄損傷により死亡した。 2 Dの死亡により生じた損害は 告人- 1 -運転の普通乗用自動車と衝突した。 Dは、右事故により、E車の助手席左側ドアに左けい部を挟まれ、同日午後一〇時四二分、けい髄損傷により死亡した。 2 Dの死亡により生じた損害は、慰謝料二〇〇〇万円、逸失利益三三五五万八七六七円、葬儀費用及び仏壇費用一五〇万円の合計五五〇五万八七六七円並びに弁護士費用上告人ら各自六九万円である。 3 本件事故の原因は、指定最高速度(五〇キロメートル毎時)をはるかに超える時速約九〇キロメートルで走行し、かつ、自車線上に進入しようとしていたE車を前方に発見しながら、自車の通過を待ってくれるものと軽信して、直ちに減速するなどの適切な措置を執らなかった被上告人の過失と、交通量の多い危険な箇所で自車を転回させるに際し、反対車線上を走行してくる自動車の有無を注視しなかったEの過失との競合によるもので、その過失割合は、被上告人六割、E四割である。 4 DとEは、本件事故の約三年前から恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもなく、本件事故は、EとDが待ち合わせてデートをした後、EがDを同女宅に送り届ける途中に発生したものである。 5 上告人らは、自賠責保険から各一七八一万六三五〇円の支払を受けている。 二原審は、EとDはいまだ正式の夫婦ではないから、Eの過失を直ちに被害者側の過失ととらえて過失相殺をすることはできないが、本件事故は、EとDが待ち合わせてデートをした後、EがDを同女宅に送り届ける途中に発生したもので、Eの過失も重大であることなどの事情にかんがみれば、なお、衡平の見地から過失相殺に関する民法七二二条二項を類推適用し、損害額から一割を減ずる限度でEの過失をしんしゃくするのが相当であるとして、損害合計額五五〇五万八七六七円を二分した二七五二万九三八三円(円未満切 から過失相殺に関する民法七二二条二項を類推適用し、損害額から一割を減ずる限度でEの過失をしんしゃくするのが相当であるとして、損害合計額五五〇五万八七六七円を二分した二七五二万九三八三円(円未満切捨て。以下同じ。)から一割を減じ、てん補額各一七八一万六三五〇円を差し引き、弁護士費用各六九万円を付加し、上告人- 2 -らに対し支払うべき賠償額を各七六五万〇〇九四円とした。 三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 不法行為に基づく損害賠償額を定めるに当たり、被害者と身分上、生活関係上一体を成すとみることができない者の過失を被害者側の過失としてしんしゃくすることは許されないところ(最高裁昭和四〇年(オ)第一〇五六号同四二年六月二七日第三小法廷判決・民集二一巻六号一五〇七頁、最高裁昭和四七年(オ)第四五七号同五一年三月二五日第一小法廷判決・民集三〇巻二号一六〇頁参照)、DとEは、本件事故の約三年前から恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもないから、身分上、生活関係上一体を成す関係にあったということはできない。DとEとの関係が右のようなものにすぎない以上、Eの過失の有無及びその程度は、上告人らに対し損害を賠償した被上告人がEに対しその過失に応じた負担部分を求償する際に考慮されるべき事柄であるにすぎず、被上告人の支払うべき損害賠償額を定めるにつき、Eの過失をしんしゃくして損害額を減額することは許されないと解すべきである。 四そうすると、Eの過失をしんしゃくし、Dの死亡により生じた損害額の全体を一割減額した金額を基に賠償額を定めた原審の判断には、民法七二二条二項の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。これと同旨をいう論旨 り生じた損害額の全体を一割減額した金額を基に賠償額を定めた原審の判断には、民法七二二条二項の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。これと同旨をいう論旨は理由がある。 そして、以上の説示に照らせば、被上告人が上告人らに支払うべき賠償額は、原審の確定した上告人ら各自の損害額二七五二万九三八三円に、弁護士費用各六九万円を加えた額から損害てん補額各一七八一万六三五〇円を控除した各一〇四〇万三〇三三円となるから、上告人らの請求は、各一〇四〇万三〇三三円及びうち九七一万三〇三三円に対する平成二年五月二八日から各支払済みまで年五分の割合によ- 3 -る遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は棄却すべきものである。 したがって、原判決中、上告人らの敗訴部分は、この限度において破棄を免れず、これを主文第一項のとおり変更するのが相当である。 よって、原判決中、主文第二項を右のとおり変更し、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、八九条、九二条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官千種秀夫裁判官園部逸夫裁判官大野正男裁判官尾崎行信裁判官山口繁- 4 -

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